説明

成膜装置

【課題】サセプタからの熱逃げが抑制され、かつサセプタ支持部材の熱による破損を防止できる成膜装置を提供する。
【解決手段】
ヒーター23によってサセプタ21を加熱し、原料ガス導入部13から真空槽11内に原料ガスを導入し、サセプタ21の板部21aの表面に配置された基板51に薄膜を形成する成膜装置10であって、サセプタ21の筒部21bの端部とサセプタ支持部材31との間には、サセプタ21とは別の材質である熱抵抗部材22が配置されており、サセプタ21の熱が熱抵抗部材22で遮られてサセプタ支持部材31に伝わりづらくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を加熱しながら成膜する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、LEDは白熱電球に比べて消費電力が小さく、寿命が長いという特質を持ち、次世代照明として注目されている。LEDはサファイア基板上にn層と発光層とp層とからなる積層膜がエピタキシャル結晶成長により形成される。エピタキシャル成長にはMOVPE法(有機金属気相成長法)がよく用いられている。
【0003】
図7はMOVPE法に用いられる従来の成膜装置100の内部構成図である。
従来の成膜装置100は、真空槽111と、真空槽111内を真空排気する真空排気部112と、真空槽111内に原料ガスを導入する原料ガス導入部113と、底部表面に基板151が載置される椀状のサセプタ121と、サセプタ121の内側に配置され、サセプタ121の底部裏面に対向されたヒーター123と、サセプタ121の底部側とは逆側の端部に設けられ、サセプタ121を支持するサセプタ支持部材131とを有している。
サセプタ121の材質はグラファイトであり、サセプタ支持部材131の材質は石英である。
【0004】
この成膜装置100を用いて薄膜を形成するには、まず複数枚の基板151を真空槽111内に搬入し、サセプタ121の底部表面に配置する。
真空排気部112により真空槽111内を真空排気して真空雰囲気を形成する。以後真空排気を継続して真空槽111内の真空雰囲気を維持する。
【0005】
ヒーター123には加熱用電源133が電気的に接続されている。加熱用電源133からヒーター123に電力を供給して、ヒーター123を発熱させる。
ヒーター123からの熱輻射によりサセプタ121が加熱され、サセプタ121からの熱伝導により基板151が加熱される。
原料ガス導入部113から真空槽111内に原料ガスを導入すると、導入された原料ガスは基板151上で熱により化学反応して結晶化し、薄膜が形成される。
【0006】
基板151を加熱する工程では、サセプタ121の底部表面を900℃以上1300℃以下に加熱する必要があるのだが、サセプタ121の外周側面からの熱輻射やサセプタ支持部材131への熱伝導により熱が逃げるため、サセプタ121の底部表面では外周に近いほど温度が下がりやすく、基板151が配置される範囲内を温度差1℃以内の均一な温度に維持することは困難であった。また、サセプタ121のうち底部部分と側面部分の温度差が500℃以上になるとサセプタ121が破損するおそれがあった。
【0007】
そこで、ヒーター123のうち側面部分に近い位置のヒーターの負荷を大きくして、サセプタ121の側面部分の温度を上げる方法が考えられるが、サセプタ支持部材131の材質は石英であり、900℃以上のサセプタ121と接触するとサセプタ支持部材131が熱で破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−18811号公報
【特許文献2】再公表特許2008/016047号公報
【特許文献3】再公表特許2007/066472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、サセプタからの熱逃げが抑制され、かつサセプタ支持部材の熱による破損を防止できる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気部と、前記真空槽内に原料ガスを導入する原料ガス導入部と、前記真空槽内に配置され、表面に基板が配置される板部と、前記板部の前記表面とは逆の裏面で一端の開口が蓋された筒部とからなるサセプタと、前記筒部の内側に配置され、前記板部の前記裏面と前記筒部の内周面とにそれぞれ対向されたヒーターと、前記筒部の前記一端とは逆の他端に設けられ、前記サセプタを支持するサセプタ支持部材と、を有し、前記ヒーターによって前記サセプタを加熱し、前記原料ガス導入部から前記真空槽内に原料ガスを導入し、前記板部の前記表面に配置された基板に薄膜を形成する成膜装置であって、前記筒部の前記他端と前記サセプタ支持部材との間には、前記サセプタとは別の材質である熱抵抗部材が配置された成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記熱抵抗部材の線膨張率は前記サセプタの線膨張率より小さく、前記熱抵抗部材の熱伝導率は前記サセプタの熱伝導率より小さい成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記サセプタの材質はグラファイトであり、前記熱抵抗部材の材質はSiCである成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記板部のうち、前記基板が配置される範囲より外側には、前記基板が配置される範囲の厚みより厚みが薄い熱抵抗部分が環状に設けられた成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記板部と前記筒部は分離可能に構成された成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記板部は、900℃以上1300℃以下に加熱される成膜装置である。
【発明の効果】
【0011】
サセプタからの熱逃げが抑制されるので、板部のうち基板が配置される範囲内を均一な温度に維持することができる。そのため、各基板に形成される薄膜の膜質差が小さくなり、歩留まりが向上する。
【0012】
サセプタ支持部材に熱が伝わりにくくなるため、サセプタ支持部材の熱による破損を防止できる。サセプタ支持部材の熱破損をおそれずに筒部を加熱することができ、筒部と板部との温度差を小さくして、板部からの熱逃げを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の成膜装置の内部構成図
【図2】サセプタの板部の裏面の平面図
【図3】熱抵抗部分の断面形状の別例を説明をするための図
【図4】熱抵抗部分と接触部との位置関係の別例を説明するための図
【図5】サセプタの板部と筒部とが分離された状態を説明するための図
【図6】本発明の成膜装置の別例の内部構成図
【図7】従来の成膜装置の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<成膜装置の構造>
本発明の成膜装置の構造を説明する。
図1は成膜装置10の内部構成図である。
【0015】
成膜装置10は、真空槽11と、真空槽11内を真空排気する真空排気部12と、真空槽11内に原料ガスを導入する原料ガス導入部13と、真空槽11内に配置され、表面に基板51が配置される板部21aと、板部21aの表面とは逆の裏面で一端の開口が蓋された筒部21bとからなるサセプタ21と、筒部21bの内側に配置され、板部21aの裏面と筒部21bの内周面とにそれぞれ対向されたヒーター23と、筒部21bの前記一端とは逆の他端に設けられ、サセプタ21を支持するサセプタ支持部材31とを有している。
【0016】
原料ガス導入部13はここでは、一面に複数の放出孔13cが設けられた放出容器13aと、放出容器13aに接続され、放出容器13a内に原料ガスを供給する原料ガス源13bとを有している。
放出容器13aのうち、放出孔13cが設けられた面は真空槽11内に露出されており、原料ガス源13bから放出容器13a内に原料ガスを供給すると、供給された原料ガスは各放出孔13cから真空槽11内に放出されるようになっている。
【0017】
サセプタ21の材質はここでは表面がSiCで覆われたグラファイトであり、900℃以上1300℃以下の温度に加熱されても損傷しないようになっている。なお、グラファイトの350℃以上400℃以下の温度範囲での線膨張率は5.0×10-6/Kであり、熱伝導率は130W/(m・K)である。
【0018】
図2は板部21aの裏面の平面図である。
板部21aはここでは円板形状であり、表面に複数枚の基板51が配置される範囲が設けられた基板配置部45を有している。
【0019】
また、板部21aの裏面のうち基板配置部45より外側の外周部分には後述する筒部21bの長手方向の一端と環状に接触できる環状の接触部46が設けられている。図1を参照し、接触部46の厚みは基板配置部45の厚みと同じか基板配置部45の厚みより薄くされている。
【0020】
板部21aは放出容器13aの放出孔13cが設けられた面と対面する位置に配置され、板部21aの表面は放出孔13cが設けられた面と対向されている。
筒部21bはここでは内周直径が板部21aの直径より小さい円筒形状であり、中心軸線が板部21aの中心を通り板部21aの表面に対して直角な中心軸線と一致された状態で、長手方向の一端が板部21aの裏面の接触部46に環状に接触されて取り付けられ、筒部21bの一端の開口は板部21aの裏面で蓋されている。
【0021】
サセプタ支持部材31の材質はここでは石英であり、筒形状に形成されている。
筒部21bのうち板部21aとは逆側の端部には後述する熱抵抗部材22が固定され、サセプタ支持部材31は、中心軸線が筒部21bの中心軸線と一致された状態で、長手方向の一端が熱抵抗部材22に固定されている。
【0022】
サセプタ支持部材31のうち熱抵抗部材22とは逆側の端部は、真空槽11の壁面に設けられた開口を通って真空槽11の外側まで延ばされており、サセプタ支持部材31の当該端部には、サセプタ支持部材31を回転させる回転部32が接続されている。
【0023】
回転部32はここではモーターであり、動力をサセプタ支持部材31に伝達して、サセプタ支持部材31をサセプタ支持部材31の中心軸線を中心に回転できるように構成されている。
回転部32によりサセプタ支持部材31を回転させると、サセプタ21と熱抵抗部材22もサセプタ支持部材31と一緒にサセプタ支持部材31の中心軸線を中心に回転するようになっている。
【0024】
真空槽11の壁面の開口とサセプタ支持部材31の外周側面との間の隙間には磁気シール34が配置されて隙間は塞がれており、サセプタ支持部材31を回転させても真空槽11の気密性が維持されるようになっている。
【0025】
ヒーター23はここでは、円板形状の第一のヒーター23aと、内周直径が第一のヒーター23aの直径より大きいリング状の第二のヒーター23bと、内周直径が第二のヒーター23bの外周直径より大きい筒状の第三のヒーター23cとを有している。第三のヒーター23cの長手方向の長さは、筒部21bの長手方向の長さより短くされている。
【0026】
第一〜第三のヒーター23a〜23cは、それぞれの中心軸線が一致された状態で、筒部21bの内側に配置され、第一、第二のヒーター23a、23bの表面は板部21aの裏面とそれぞれ対面され、第三のヒーター23cの外周側面は筒部21bの内周面と対面されている。
【0027】
第一〜第三のヒーター23a〜23cは板部21aと筒部21bとからそれぞれ離間されており、回転部32によりサセプタ21を回転させても、第一〜第三のヒーター23a〜23cは真空槽11に対して静止するようになっている。
【0028】
第一〜第三のヒーター23a〜23cには加熱用電源33が電気的に接続されている。加熱用電源33から第一〜第三のヒーター23a〜23cに電力を供給すると、第一〜第三のヒーター23a〜23cは発熱して輻射熱を放出するようになっている。板部21aの裏面と筒部21bの内周面は放出された輻射熱を受けるとそれぞれ加熱される。
【0029】
第一、第二のヒーター23a、23bと板部21aの裏面との間の間隔と、第三のヒーター23cと筒部21bの内周面との間の間隔はそれぞれ狭いほど、輻射熱による加熱効率が大きいため好ましい。
【0030】
板部21aは中心からの距離に応じて異なる複数のヒーターで加熱されることにより、板部21aのうち基板配置部45より外側の外周部分から熱が失われやすい場合でも、外周側のヒーター(ここでは第二のヒーター23b)の出力を増加させれば、基板配置部45内を均一な温度に加熱できるようになっている。
【0031】
板部21aが第一、第二のヒーター23a、23bにより加熱されるだけでなく、筒部21bも第三のヒーター23cにより加熱されることにより、板部21aと筒部21bの温度差を小さくすることができ、板部21aから筒部21bに移動する熱量を少なくできる。
【0032】
筒部21bのうち板部21a側とは逆側の端部とサセプタ支持部材31との間には、サセプタ21とは別の材質である熱抵抗部材22が配置されている。
熱抵抗部材22の材質はここではSiC(炭化ケイ素)であり、1300℃以上の高温に加熱されても損傷しないようになっている。なお、SiCの25℃(室温)以上400℃以下の温度範囲での線膨張率は4.0×10-6/Kであり、熱伝導率は84W/(m・K)である。
【0033】
熱抵抗部材22の形状はここではリング状の板であり、表面はサセプタ21の筒部21bの一端に環状に接触して固定され、裏面はサセプタ支持部材31の一端に環状に接触して固定されている。
【0034】
熱抵抗部材22と筒部21bとの接触面積は、サセプタ支持部材31と筒部21bとの接触面積より大きく、ここではサセプタ支持部材31と筒部21bとは非接触にされている。
【0035】
900℃以上1300℃以下の温度範囲での熱抵抗部材22の線膨張率はサセプタ21の線膨張率より小さくされており、熱抵抗部材22が第三のヒーター23cからの熱輻射や筒部21bからの熱伝導により加熱されても、熱抵抗部材22と筒部21bとの間の固定部分や熱抵抗部材22とサセプタ支持部材31との間の固定部分が緩まないようになっている。
【0036】
また、900℃以上1300℃以下の温度範囲での熱抵抗部材22の熱伝導率はサセプタ21の熱伝導率より小さくされており、筒部21bの熱は熱抵抗部材22に遮られてサセプタ支持部材31に伝わりにくくなっている。そのため、第三のヒーター23cにより筒部21bが加熱されても、サセプタ支持部材31が熱により損傷することが防止される。
【0037】
また、サセプタ支持部材31と第三のヒーター23cとの間の距離は熱抵抗部材22の厚みだけ余分に離間されており、第三のヒーター23cの熱輻射がサセプタ支持部材31に伝わりにくくなっている。
【0038】
本実施例ではサセプタ21の材質はグラファイトであり、熱抵抗部材22の材質はSiCであるが、900℃以上1300℃以下の温度範囲での線膨張率がサセプタ21の線膨張率より小さく、900℃以上1300℃以下の温度範囲での熱伝導率がサセプタ21の熱伝導率より小さければ、熱抵抗部材22の材質はSiCに限定されず、例えばPBN(熱分解窒化ホウ素)でもよい。できるだけ900℃以上1300℃以下の温度範囲での線膨張率の小さい材料が好ましい。
【0039】
なお、熱抵抗部材22の形状はリング状に限定されるものではない。各ヒーター23a〜23cとサセプタ支持部材31との間を遮蔽する形状であれば、各ヒーター23a〜23cからの熱輻射によりサセプタ支持部材31が加熱されることを防止できて好ましい。
【0040】
本実施例では、サセプタ21の板部21aのうち、基板配置部45より外側には、基板配置部45の厚みより厚みが薄い熱抵抗部分41が環状に設けられている。
ここでは熱抵抗部分41は、板部21aのうち、裏面側が窪む形状で設けられているが、表面側が窪む形状で設けられていてもよいし、表面側と裏面側の両方から窪む形状で設けられていてもよい。窪みの断面形状は、ここでは図1に示すように「コ」字形状(一辺が欠けた四角形状)であるが、図3に示すように「U」字形状(円弧形状)でもよい。
【0041】
また、ここでは熱抵抗部分41は接触部46の内周より内側に設けられているが、図4に示すように熱抵抗部分41の一部が接触部46にされていてもよい。
基板配置部45内から基板配置部45より外側の外周部分に向かって径方向に移動する熱に対して、熱抵抗部分41では基板配置部45よりも厚みが薄いために熱のコンダクタンスが小さくなっており、熱の移動速度が低下するようになっている。
【0042】
そのため、基板配置部45内から熱が逃げにくく、基板配置部45内はヒーター23で加熱されることにより均一な温度に維持できるようになっている。
本実施例では、サセプタ21の板部21aと筒部21bは分離可能に構成されている。図5は板部21aと筒部21bとが分離された状態の概略図である。板部21aの接触部46は板部21aと筒部21bとの間の切れ目になっている。
【0043】
そのため、板部21aと筒部21bとが一体に形成されて切れ目が存在しない場合に比べて、板部21aと筒部21bとの接触面積が小さく、板部21aから筒部21bに向かって移動する熱に対して熱のコンダクタンスが小さくなっており、板部21aのうち基板配置部45より外側の外周部分から熱が逃げにくくなっている。
【0044】
接触部46が板部21aの裏面の外周まで延ばされている場合には、接触部46の厚みが薄いほど板部21aの外周側面の面積が小さくなるため、板部21aの外周側面からの熱輻射が少なくなり、板部21aのうち基板配置部45より外側の外周部分からはさらに熱が逃げにくくなって好ましい。
【0045】
また後述する成膜工程により板部21a表面に付着物が付着して汚れても、板部21aと筒部21bは分離可能であり、成膜工程後に板部21aだけを真空槽11の外側に搬出して洗浄したり、別の板部21aに交換することができるため、メンテナンスが容易である。
【0046】
<成膜装置を用いた成膜方法>
上述の成膜装置10を用いて基板51に薄膜を形成する成膜方法を説明する。
真空槽11内に基板51を搬入し、サセプタ21の板部21aのうち基板配置部45表面に接触して、基板51を配置する。本実施例では基板51にサファイア基板を使用するが、本発明は基板51の材質がサファイアの場合に限定されない。
【0047】
真空排気部12により真空槽11内を真空排気して、真空雰囲気を形成する。以後、真空排気部12による真空排気を継続して、真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
回転部32によりサセプタ21をサセプタ支持部材31と熱抵抗部材22と一緒に、サセプタ支持部材31の中心軸線を中心に回転させる。すると、基板51もサセプタ21と一緒にサセプタ支持部材31の中心軸線を中心に回転する。以後、回転部32によるサセプタ21の回転を継続する。
【0048】
加熱用電源33から第一〜第三のヒーター23a〜23cに電力を供給して、第一〜第三のヒーター23a〜23cを発熱させる。
サセプタ21の板部21aの裏面と筒部21bの内周面のうち第一〜第三のヒーター23a〜23cと対面する部分は、第一〜第三のヒーター23a〜23cからの輻射熱を受けて加熱される。サセプタ21は回転部32により回転されており、第一〜第三のヒーター23a〜23cの配置に関わらずサセプタ21のうちサセプタ支持部材31の中心軸線から同一距離の部分は均一な熱量で加熱される。
【0049】
板部21aの内部では熱伝導により裏面から表面に向かって熱が伝わる。ここでは板部21a表面が900℃以上1300℃以下になるように加熱する。基板51は板部21a表面に接触して配置されており、板部21a表面からの熱伝導により基板51が加熱される。
筒部21b内部でも熱伝導により内周面から外周面に向かって熱が伝わる。
【0050】
板部21aの外周側面と筒部21bの外周面は真空槽11内に露出されており、板部21aの外周側面と筒部21bの外周側面から熱輻射により熱が失われるものの、筒部21bとサセプタ支持部材31との間には熱抵抗部材22が配置され、筒部21bの熱は熱抵抗部材22に遮られてサセプタ支持部材31に逃げにくくなっている。そのため、筒部21bの温度低下が熱抵抗部材22を持たない従来の構成より抑制され、板部21aと筒部21bとの温度差を従来の構成より小さくでき、板部21aから筒部21bへの熱伝導による熱逃げを防止できる。
また、筒部21bからの熱伝導によるサセプタ支持部材31の加熱が抑制され、サセプタ支持部材31が熱により損傷することを防止できる。
【0051】
板部21aのうち基板配置部45は熱抵抗部分41で取り囲まれている。熱抵抗部分41の厚みは基板配置部45の厚みより薄く、板部21aのうち基板配置部45より外側の外周部分の温度が熱輻射により下がっても、基板配置部45内から外周部分には熱が逃げにくくなっている。そのため、基板配置部45内は温度差1℃以内の均一な温度に維持され、各基板51は均一な温度に加熱される。
【0052】
原料ガス源13bから放出容器13a内に原料ガスを供給する。原料ガスには加熱された基板51上で化学反応できるガスを使用し、ここではTMG(トリメチルガリウム)ガスとNH3ガスを使用するが、本発明は原料ガスがTMGガスとNH3ガスの場合に限定されない。
【0053】
供給された原料ガスは放出孔13cから真空槽11内に放出され、加熱された基板51の表面に到達し、基板51の熱により化学反応して結晶化し、基板51の表面に薄膜が形成される。ここではGaNの薄膜が形成される。
【0054】
回転部32によりサセプタ21を回転させており、板部21a表面の中心から同一距離に配置された複数の基板51には均一な量の原料ガスが到達して均一な膜厚の薄膜が形成される。
板部21aのうち基板配置部45内は均一な温度に維持されており、各基板51は均一な温度に加熱され、各基板51に形成される薄膜の膜質差は小さくなる。
【0055】
各基板51の表面に所定の膜厚の薄膜を形成したのち、原料ガス源13bからの原料ガスの放出を停止させる。加熱用電源33から第一〜第三のヒーター23a〜23cへの電力の供給を停止する。回転部32によるサセプタ21の回転を停止する。
【0056】
真空排気部12による真空排気を停止し、真空槽11内を大気に曝す。成膜済みの基板51を真空槽11の外側に搬出し、後工程に回す。
未成膜の基板51を真空槽11内に搬入し、上述の成膜工程を繰り返す。
【0057】
なお、本発明は図6を参照し、サセプタ21の板部21aに熱抵抗部分41が設けられていない構成も含まれるが、板部21aに熱抵抗部分41が設けられている構成の方が基板配置部45内を均一な温度に維持し易いため好ましい。
【0058】
また、サセプタ21の板部21aと筒部21bとが密着して固定され、又は一体成形されて分離できない構成も本発明に含まれるが、板部21aと筒部21bとが互いに分離できる構成の方が、板部21aから筒部21bへの熱逃げをより効果的に抑制でき、またメンテナンスが容易であるため好ましい。
【符号の説明】
【0059】
10……成膜装置
11……真空槽
12……真空排気部
13……原料ガス導入部
21……サセプタ
21a……板部
21b……筒部
22……熱抵抗部材
23……ヒーター
31……サセプタ支持部材
41……熱抵抗部分
51……基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気部と、
前記真空槽内に原料ガスを導入する原料ガス導入部と、
前記真空槽内に配置され、表面に基板が配置される板部と、前記板部の前記表面とは逆の裏面で一端の開口が蓋された筒部とからなるサセプタと、
前記筒部の内側に配置され、前記板部の前記裏面と前記筒部の内周面とにそれぞれ対向されたヒーターと、
前記筒部の前記一端とは逆の他端に設けられ、前記サセプタを支持するサセプタ支持部材と、
を有し、
前記ヒーターによって前記サセプタを加熱し、前記原料ガス導入部から前記真空槽内に原料ガスを導入し、前記板部の前記表面に配置された基板に薄膜を形成する成膜装置であって、
前記筒部の前記他端と前記サセプタ支持部材との間には、前記サセプタとは別の材質である熱抵抗部材が配置された成膜装置。
【請求項2】
前記熱抵抗部材の線膨張率は前記サセプタの線膨張率より小さく、
前記熱抵抗部材の熱伝導率は前記サセプタの熱伝導率より小さい請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記サセプタの材質はグラファイトであり、前記熱抵抗部材の材質はSiCである請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項4】
前記板部のうち、前記基板が配置される範囲より外側には、前記基板が配置される範囲の厚みより厚みが薄い熱抵抗部分が環状に設けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
前記板部と前記筒部は分離可能に構成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項6】
前記板部は、900℃以上1300℃以下に加熱される請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93461(P2013−93461A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235126(P2011−235126)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】