説明

投光装置

【課題】投射光軸の走査振幅及び光軸調整を容易に行い、且つ高い調整精度を得ることのできる光レーダ用の投光装置を提供することである。
【解決手段】レーザダイオード31が放射した光線の投射方向が投射レンズ37で設定される。この投射レンズ37の位置は位置検出器43a、43bで検出される。上記光線の投光方向はスキャナ制御部25によって投射レンズ37の位置に変換される。上記スキャナ制御部25により得られた投射レンズ37の目標位置と、位置検出器43a、43bで検出された投射レンズ37の検出位置を基に、アクチュエータ40の駆動がスキャナ制御部25によって制御される。上記光線の特定の目標投射方向に対する投光装置の投射方向のずれは、スキャナ制御部25内のメモリ53に補正値として記憶され、この補正値でもって補正されて投射レンズ37の位置に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光等の光源から光束を発生し、対象物体からの反射光を受光して、対象物体からの距離を検出する自動車搭載光レーダ装置の投光装置に於ける、出射光の方向制御装置及び光軸調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車運転時のドライバの安全性向上を目指した技術開発への取り組みが進んでいる。その1つの手段として、先行車両及び自動車前方に存在する物体の位置情報を、レーダを使って検知する装置が実用化されている。具体的には、レーダ装置によって得られる車両前方物体の位置検出情報を基に、走行中、前方車両との衝突回避等の安全支援を行うといったものである。
【0003】
レーダ方式は、現在様々な方式が提案されており、装置コストを抑えつつ、十分な検出性能が得られることが要求されている。その中で1つの方式として、レーザ光を走査して物体検出する光レーダ装置が実用化されている。
【0004】
例えば、光レーダ用投光装置としては、下記特許文献1にあるように、レーザ光を所定角度で走査して前方物体に向かって投射され、物体によって発生する反射光を受光器で検出し、投射から受光検出までの時間差を検出することによって、前方物体の位置を算出する装置が提案されている。
【0005】
図8は、下記特許文献1に記載された従来技術の光レーダ装置の構成を示したブロック図である。
【0006】
図8に於いて、この物体検出装置1は、投光部2と、受光部3と、オフセット位置記憶回路5と、複数の傾きセンサ6が接続されたCPU4とを有して成る。そして、投光部2内の発振回路11により駆動されて発光素子12から出射される光を、レンズ13、アクチュエータ14及びアクチュエータ(ACT)駆動回路15によって、水平または垂直方向へ移動させることによって、投射光方向を可変させる。
【0007】
CPU4は、レンズ13が投射方向に対応した位置に移動させるに必要な、アクチュエータ駆動量の指示を与える。上記アクチュエータ14の駆動量を、逐次増加または減少させた指示をACT駆動回路15に与えることによって、レンズ13を走査させる。投射用のレンズ13の走査中に、CPU4から発振回路11を介して発光素子12から投射光を出力する。そして、反射光を受光レンズ17、受光素子18及び検出回路19によって検出することにより、物体を検出するものである。
【特許文献1】特開2002−162470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したレーダ装置の投光装置は、投射レンズを、目標となる投射方向に対応した位置へ連続的に移動させることによって、出射ビームを連続的に走査し、一定周期毎に光線を発射する方法である。上記特許文献1のレーダ装置での投光装置では、アクチュエータの駆動指示から、投射レンズ位置及びそれに対応する発射ビーム角度を推定する。このため、実際に存在する投射レンズ位置をリアルタイムに検出して、該投射レンズ位置を補正制御することができない。
【0009】
図8の構成の場合、アクチュエータ14の移動量感度特性に、温度変化、経時変化が生じる場合、駆動指示量に対するレンズ13の移動量が変化するが、実際のレンズ移動量を検出して位置を補正制御しないため、CPU4が指示する投射方向と、実際に投射される光の方向のずれを生じる。したがって、従来技術でのレーダ装置の投光装置では、投射光の光軸調整を行っても、アクチュエータ感度の温度変化、経時変化による調整ずれが発生しても、対応することができないものであった。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、投射光軸の走査振幅及び光軸調整を容易に行い、且つ高い調整精度を得ることのできる光レーダ用の投光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、第1の光源から放射される光線を走査し、物体からの反射光を受光することで物体を検出する光レーダの投光装置に於いて、上記第1の光源が放射した光線の投射方向を設定する光学素子と、上記光学素子の位置を検出する位置検出器と、上記光線の投射方向を上記光学素子の位置に変換する変換手段と、上記光学素子を移動させるアクチュエータと、上記変換手段により得られた上記光学素子の目標位置と、上記位置検出器で検出された上記光学素子の検出位置を基に、上記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、上記光線の特定の目標投射方向に対する当該投光装置によって光線が投射される方向のずれを補正する調整値を記憶する調整値記憶手段と、を具備し、上記変換手段は、投射方向を上記補正値で補正して上記光学素子の位置に変換することを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、投射レンズ位置をフィードバック制御して、位置調整によってオフセット指示をすることで、走査中心角度及び走査振幅を、容易に調整することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、上記光線の特定目標方向は、原点及び最大の振り幅に対応する角度であることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、2次元投射方向へのオフセット調整値、及び振り幅調整値を記憶手段に保持することによって、走査の原点となる方向及び投射角度の振り幅を、常に一定に保持することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、上記位置検出手段は、第2の光源と、位置検出素子と、上記光学素子と連動して移動するスリットとを有し、上記光学素子位置の検出出力を得ることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、実際の投射光学素子の位置を常時検出することで、目標投射方向に対応する位置に投射光学素子を追従制御できることから、アクチュエータ感度特性の変化の影響を受けることなく、投射角度の調整精度を向上することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、所定の光線を放射する第1の光源と、上記第1の光源から放射された光線の投射方向を設定するための移動可能な光学素子と、上記光学素子を、上記第1の光源の光軸方向に対して垂直な方向に2次元的に移動させるアクチュエータと、上記光学素子の位置を検出する位置検出手段と、上記光線の投射方向に基づいて上記光学素子を移動させるべく目標位置を算出する算出手段と、上記光線の特定の目標投射方向に対する、上記第1の光源より放射される光線の投射方向のずれを、上記算出手段により算出された上記光学素子の目標位置と、上記位置検出器で検出された上記光学素子の検出位置とに基づいて補正するべく上記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、投射光学素子の位置をフィードバック制御して、位置調整によってオフセット指示をすることで、走査中心角度及び走査振幅を、容易に調整することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記光線の特定の目標投射方向に対する、上記第1の光源より放射される光線の投射方向のずれを調整値として記憶する調整値記憶手段を更に具備し、上記駆動制御手段は、上記算出手段により算出された上記光学素子の目標位置と、上記位置検出器で検出された上記光学素子の検出位置と、上記調整値記憶手段に記憶された調整値に基づいて、上記アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、2次元投射方向へのオフセット調整値、及び振り幅調整値を記憶手段に保持することによって、走査の原点となる方向及び投射角度の振り幅を、常に一定に保持することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記光線の特定目標方向は、原点及び最大の振り幅に対応する角度であることを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、2次元投射方向へのオフセット調整値、及び振り幅調整値を記憶手段に保持することによって、走査の原点となる方向及び投射角度の振り幅を、常に一定に保持することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記位置検出手段は、上記第1の光源とは異なる光線を放射する第2の光源と、位置検出素子と、上記光学素子の移動と連動して移動するスリットと、上記第2の光源から放射された光線を上記スリットを介して受光して上記光学素子の位置を検出する位置検出素子と、を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、実際の投射光学素子の位置を常時検出することで、目標投射方向に対応する位置に投射レンズを追従制御できることから、アクチュエータ感度特性の変化の影響を受けることなく、投射角度の調整精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、投射光軸の走査振幅及び光軸調整を容易に行い、且つ高い調整精度を得ることのできる光レーダ用の投光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態を示すもので、本発明の投光装置が適用されたレーザレーダの全体構成を示すブロック構成図である。
【0028】
図1に於いて、このレーザレーダは、該レーザレーダ全体の動作を制御するレーザ制御部21と、発光素子であるレーザダイオード31の光出力をビームに成形し、光学素子であるレンズ32、33及び37を用いてビームを任意の角度に投射するスキャナ部24と、該スキャナ部24の位置検出器の出力とレーザ制御部21から指示される目標角度を比較してレンズの動き量を制御するスキャナ制御部25と、対象物体62からの反射光を検出する受光部27と、レーザダイオード31の発光動作を制御するレーザ発光装置23とから構成されている。
【0029】
上記レーザ制御装置21は、レーザ発光装置23への発光指示と、受光部27に於ける対象物体62からの反射光の検出と、スキャナ制御部25へのビーム投射方向の目標角度指示、角度オフセット指示信号の出力、スキャナ部24の移動完了信号の入力と、を行う。
【0030】
スキャナ部24は、レンズホルダ30内に固定されたレーザダイオード31及びリレーレンズ32、33と、第1の光源であるレーザダイオード31より投射された光を走査するための投射レンズ37を支持する支持部材36と、上記レンズホルダ30と支持部材36とを接続する複数のワイヤバネ35と、上記支持部材36の両側面にあって該支持部材36と共に投射レンズ37を移動させるための従動部材38a及び38bと、該従動部材38a及び38bを直接移動させるアクチュエータ40と、従動部材38a及び38bの位置を検出するための第2の光源である光源41a、41b及び位置検出器43a、43bとを有して構成される。
【0031】
スキャナ部24では、リレーレンズ32、33が用いられて、レーザダイオード31からの光出力を適当な広がり角を持ったレーザレーダに好適なビームに成形される。レーザダイオード31は、レーザ制御部21からのレーザ発光命令に従って、レーザ発光装置23の駆動により発光される。そして、レーザダイオード31からリレーレンズ32、33を介して投射されたビームは、更に支持部材36に搭載された投射レンズ37を通して、レーザレーダの外部へ投射される。
【0032】
支持部材36は、アクチュエータ40によって従動部材38a及び38bと共に、水平方向(X方向)、垂直方向(Y方向)の2次元方向へ移動される。これにより、支持部材36に搭載された投射レンズ37が2次元方向に移動されるので、投射レンズ37で屈折したビームを2次元に走査することができる。
【0033】
従動部材38a及び38bにはX方向及びY方向に、それぞれ延出された2つのスリット39a及び39bが形成されている。そして、これらスリット39a及び39bを挟んで、従動部材38a及び38bの両側には、それぞれ光源41a及び41bと、位置検出器43a及び43bが配置されている。位置検出器43a、43bは、図示されないが、PSD(Position Sensing Device)や、分割フォトダイオード等の光電変換素子で構成される。
【0034】
上記アクチュエータ40による支持部材36の動きは、X方向の動きを検出する位置検出器43aと、Y方向の動きを検出する位置検出器43bの、独立して設けられた2つの位置検出器によって検出され、スキャナ制御部25へ送られる。本実施形態では、PSD等の光学的な位置検出器を使用しているので、各位置検出器43a及び43bを照射する光源41a及び41bが配置されている。これらの光源41a及び41bは、発光ダイオード(LED)やレーザダイオードを使用するのが一般的である。
【0035】
投射レンズ37と、その支持部材36は、図2に示されるように、光軸に垂直な平面内で上下方向(Y方向)及び、左右方向(X方向)に移動が可能であり、アクチュエータ40が、投射レンズ37をそれぞれ中立位置から移動する方向に駆動すると、ワイヤバネ35によって移動方向と反対方向へ復元力を作用させる。投射レンズ37は、アクチュエータ40の駆動力と、ワイヤバネ35の復元力が平衡する位置で保持される。
【0036】
投射レンズ37は、レンズ中心に対する光線の入射位置のズレ量に比例した屈折角度を持って出射する特性を有している。アクチュエータ40は、図示されないが、ボイルコイルモータ等の電磁アクチュエータで構成され、電磁コイルヘの供給電流によって発生する磁界と、永久磁石による磁界との吸引・反発作用により、水平、上下方向に駆動力を生じる。
【0037】
投射レンズ37の支持部材36の両側面には、上述したように従動部材38a、38bが配設され、それぞれスリット形状の導光部材(スリット)39a、39bが形成されている。第2の光源41a、41bは、スリット39a、39bのそれぞれ正面となる位置に配置される。第2の光源41a、41bから発光する光線は、スリット39a、39bに入射し、透過した光線42a、42bが位置検出器43a、43bそれぞれに入射される。
【0038】
投射レンズ37が移動することによって、上記スリット39a、39bの透過光42a、42bの中心位置が変化し、位置検出器43a、43bへの入射スポット位置が変化する。位置検出器43a、43bは、上記入射スポット光を受光することによって、上記投射レンズ37の移動量を電気信号に変換し、投射レンズ37の位置に対応する検出位置信号をスキャナ制御部25に出力する。
【0039】
方向制御部であるスキャナ制御部25は、レーザ制御部21から目標角度指示値と角度オフセット指示を受け取って投射レンズ37の移動位置に変換する変換手段(算出手段)としてのレンズ位置指示演算部45と、位置検出器43a、43bの検出信号から投射レンズ37の移動量を算出する位置センサ演算部51と、位置指示値と位置検出結果のずれを検出する位置偏差検出部46と、位置ずれ量を比較判定する判定部47と、アクチュエータ40に駆動電力を供給するリニアモータドライバ50と、位置偏差量からリニアモータドライバ50へ駆動指示を与える駆動制御手段である制御演算部48と、調整値記憶手段であるメモリ53とで構成される。
【0040】
上記判定部47は、投射レンズ37の位置偏差が所定内にあるか否かを判定するためのもので、その判定結果をレーザ制御部21に出力する。
【0041】
上記レーザ発光装置23は、レーザ制御部21の指示により、所定のパルス時間幅でレーザダイオード31を点灯及び消灯させる。レーザダイオード31から発光される光束L1は、リレーレンズ32、33を透過させて、平行光束L2を得る。平行光束L2は、投射レンズ37に入射され、投射レンズ37を透過する投射光61が対象物体62に向かって照射される。投射光61は、上記平行光束L2の光軸中心と、投射レンズ37入射位置の関係によって光線が図1に矢印A方向に屈折された光束であり、投射レンズ37を、左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)へ移動させることで、出射光の投射方向を水平方向(図2に示されるAx方向)及び垂直方向(図2に示されるAy方向)の2次元に走査する。
【0042】
投射光61は対象物体62に照射され、ここで反射された反射光63が、受光部27内の受光レンズ55に入射され、光検出素子である受光センサ56にて、反射光強度の時間変化が検出される。そして、検出された受光検出信号が、レーザ制御部21に出力される。
【0043】
次に、投射レンズ37の移動方向と投射光61の方向との関係について、図2を参照して説明する。
【0044】
投射レンズ37を左右方向(図示矢印B方向)に平行移動すると、移動量に応じて水平方向(図2のAy方向)の投射方向を変えることができる。同様に、投射レンズ37を上下方向(図示矢印C方向)に平行移動すると、移動量に応じて垂直方向(図のAy方向)の投射方向を変えることができる。
【0045】
投射レンズ37の左右、上下の移動量に対して、投射角度変化量は比例関係にある。目標となる投射方向から投射レンズ37の目標移動量を算出し、投射レンズ37をアクチュエータ40によって駆動させ、上記目標位置と一致させるように移動制御することによって、投射方向を制御する。
【0046】
水平、垂直方向の走査角度は、図2に示される照射範囲65内を走査するように制御される。
【0047】
次に、投射レンズ移動動作と光源発光の制御タイミングについて、図3のタイミングチャートを参照して説明する。
【0048】
図3は本実施形態に於けるレーザレーダの投射レンズ移動制御動作と光源発光制御タイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【0049】
図3(a)は、横軸を時間、縦軸を投射レンズ位置及びそれに対応する投射角度で表しており、スキャナ制御部25の投射レンズ37の位置制御動作時の位置制御指示曲線Eと制御位置応答曲線Fの時間変化を示している。図3(a)では、投射レンズ位置を目標レンズ位置1に移動、停止動作した後に、目標レンズ位置1から目標レンズ位置2へ移動、及び停止制御する際の制御目標位置と制御位置応答を示している。
【0050】
図3(b)のグラフは、スキャナ制御装置で送受信される移動トリガ信号、移動完了信号、投射の発光、受信信号のタイミングを示している。また、図3(c)のグラフは、図3(b)のグラフの一部を拡大して示したグラフである。移動トリガ信号は、レーザ制御部21よりスキャナ制御部25に出力される論理信号であって、上記信号の論理が“L”レベルから“H”レベルへ切り替わる時を開始タイミングとし、投射レンズ37の位置の指示を目標位置となる点まで変化させ、投射レンズ37を目標位置へ移動させる。移動完了信号は、スキャナ制御部25が投射レンズ37の位置を検出し、目標位置との偏差が所定の範囲内にある場合に“H”レベル、範囲外にある場合を“L”レベルとして、レーザ制御部21に上記論理信号を出力する。
【0051】
上記移動完了信号が“H”レベルを出力する際、レーザ制御部25は、投射レンズ位置が目標位置に到達したとして、移動トリガ信号論理を“H”レベルから“L”レベルに変化させる。
【0052】
そして、図3(c)に示されるタイミングで、レーザパルス発光が行われる。受光信号としては、上記レーザパルス発光のタイミングから反射光を検出するまでの検出時間Td後に、パルス状の信号が検出される。上記レーザパルス発光と反射光の検出は、所定回数繰り返し行われる。上記発光及び検出が所定回数行われた後、レーザ制御部21は、スキャナ制御部25に対して、次の投射レンズ37の目標位置を(図3の)レンズ位置2に指示し、移動トリガ信号の論理を“L”レベルから“H”レベルに出力する。上記信号を受けて、スキャナ制御部25は、レンズ位置1からレンズ位置2へ移動開始させる。
【0053】
レーザ制御部21からスキャナ制御部25に角度オフセット指示が送信されると、目標投射角度指示に、角度オフセット指示値が加算された値を目標指示として、投射レンズ37の位置が制御される。上記操作により、出射ビームの光軸が指示角度分オフセットされた状態で、投射レンズ37の位置制御が行われる。
【0054】
上記構成の投光装置では、位置検出器43a、43bの出力オフセット、位置ずれ、レーザ光源の光軸ずれ、そして、装置全体を自動車に取り付ける際の物理的な角度ずれによって、角度指示値と実際に投射される光軸とでずれが生じる場合がある。しかしながら、角度オフセット指示値に光軸ずれ量を設定すると、走査角度中心を変えることができるため、出射光軸ずれを補正することができる。また、上記角度オフセット指示値を、メモリ53に保持することで、装置起動時に出射光軸を正しい方向へ制御することができる。
【0055】
次に、このように構成された本実施形態のレーザレーダが投射光軸を走査する処理動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
図4に於いて、左側部分がレーザ制御部21の動作フローであり、右側部分がスキャナ制御部25の動作フローである。上記レーザ制御部21とスキャナ制御部25の処理は、並行して行われるものである。
【0057】
最初に、ステップS11にて、スキャナ制御部25により、出射光軸中心ずれの補正量に対応した、投射レンズ37の原点位置補正値、振り幅補正値が、メモリ53から読み出される。次いで、ステップS12にて、サブルーチン「投射レンズ位置の追従制御」が実行される。これは、後述する追値制御ルーチン(図5のフローチャートのステップS31〜S35)の処理を、一定インターバル毎に常時行うものである。
【0058】
追値制御ルーチンは、図5のフローチャートに示されるように、先ずステップS31にて、現在の投射レンズ位置が検出され、次いでステップS32にて目標位置とのずれ量が算出される。そして、ステップS33にて、投射レンズ位置が所定範囲内にあるか否かが判定される。ステップS34では、上記ステップS32の演算結果より、制御演算部48によりアクチュエータ40の操作量が算出される。次に、ステップS35にて、上記ステップS34の結果より、リニアモータドライバ50に対して指示がなされ、アクチュエータ40に駆動出力が行われる。これによって、位置指示値に対して、投射レンズ37の位置が追従制御される。
【0059】
このように、サブルーチン「追従制御」は、図4のフローチャートに於けるステップS1に於いて、インターバル割り込み開始により実行され、インターバル割り込み解除によって元のルーチンに戻る。
【0060】
次に、ステップS1で目標投射方向となる移動角度指示が設定され、ステップS2でレーザ制御部21からスキャナ制御部25へ移動開始指令(Sig.1)が送信される。スキャナ制御部25では、ステップS13にてレーザ制御部21からの指令が受信されると、続くステップS14にて、レンズ位置指示演算部45で移動角度指示から移動目標位置指示が算出され、設定される。
【0061】
ステップS15では、上記移動目標位置指示から、現在の投射レンズ37の指示位置との移動量が算出され、移動量に応じて移動位置指示値の移動プロファイルが算出される。そして、ステップS16では、上記ステップS11の処理結果が、レンズ位置指示演算部45によって、オフセット位置指示量として出力される。次いで、ステップS17にて、スキャナ制御部25では、上記移動プロファイル演算結果に沿って位置指示値が定時間周期毎に出力される。そして、ステップS18に於いて上記位置指示値が移動目標位置と一致した時点で、ステップS19に移行して位置指示値が移動目標位置に固定される。
【0062】
上記ステップS17、S18、S19の処理と並行して、一定インターバル毎に、上述した追従制御ルーチン(図5のフローチャートのステップS31〜S35)が常時行われているため、位置指示値に対して、投射レンズ37の位置が追従移動される。
【0063】
ステップS19では、(図5のフローチャートの)ステップS33で処理された結果より、投射レンズ37が目標位置に移動され、続くステップS20に於いて、位置センサ演算部51で検出された位置と、移動目標位置とが比較される。そして、両者の偏差が、所定範囲内になった時点で、ステップS21に移行して、レーザ制御部21に移動完了信号(Sig.2)が通知される。
【0064】
上記処理の間、レーザ制御部21は、ステップS3に於いて上記移動完了信号(Sig.2)を受信待ちの状態にある。そして、上記移動完了信号が受信された後、ステップS4に移行して、レーザダイオード31の発光が実施されて投射光61が照射される。投射光61が対象物体62に照射されると、その反射光63が受光部27の受光レンズ55に入射される。ステップS5では、この受光レンズ55に入射された光が、受光センサ56によって光強度に応じた電気信号として検出される。
【0065】
一方、スキャナ制御部25では、上記ステップS21での移動完了通知後、ステップS22に移行して、投射レンズ37の位置が目標位置に保持制御される。この保持制御が実施されている間、一定インターバル毎に上述したステップS33の処理結果が確認される。その結果、ステップS23に於いて、レンズ位置ずれ量が所定範囲にある状態では、ステップS24に移行して、スキャナ制御部25からレーザ制御部21へ、移動完了通知(Sig.4)が常時出力される。
【0066】
また、上記ステップS33の処理結果より、ステップS23にて、レンズ位置ずれ量が所定範囲を超えたことが検出された場合は、ステップS25に移行して、スキャナ制御部25からレーザ制御部21へ、レンズ位置はずれ指示(Sig.5)が通知される。
【0067】
レーザ制御部21では、ステップS6に於いてレンズ位置はずれ指示(Sig.5)の受信時に、ステップS7に移行してレーザ発光が停止される。その後、上記ステップS3に移行して、再度スキャナ制御部25から移動完了通知(Sig.4)を受信するまで、待機する。一方、スキャナ制御部25では、ステップS26に於いて、レーザ制御部21から次の移動指令を受信するまで、上述したステップS22〜26の処理動作が繰り返し行われる。そして、次の移動指令が受信されたならば、上記ステップS13に移行して、以降の処理動作が繰り返される。
【0068】
その後、レーザ制御部21では、ステップS6に於いて、スキャナ制御部25からの移動完了通知(Sig.3)またはレンズ位置はずれ通知(Sig.5)の受信状態が判定される。レンズ位置ずれ量が所定範囲にある状態では、スキャナ制御部25から、レーザ制御部21へ、移動完了通知(Sig.4)が常時出力され、ステップS8に移行して上述したレーザダイオード31の発光及び受光の処理動作が所定回数実施されたか否かが判定される。そして、所定回数になるまで、上記ステップS4〜S8の処理が繰り返し行われる。
【0069】
また、上記ステップS8にて、上記処理動作が所定回数実施されたならば、ステップS9に移行して、上記ステップS5で検出された電気信号により、レーザ発光開始タイミングとから、反射光の受光タイミングの時間差が検出されて、時間差結果から、対象物体62との距離が算出される。
【0070】
レーザ制御部21では、上述したステップS9までの処理動作が完了後、上記ステップS1に移行して、以降の処理動作が行われ、スキャナ制御部25へ、次の投射角度位置に対する指示が行われる。水平及び垂直方向へ投射レンズ37を移動させ、同様の操作が繰り返し実施されることで、ビーム角度が水平及び垂直方向に走査される。
【0071】
上記処理のように、投射レンズ37に対し、移動、停止が所定回数繰り返されて実施された後、ビーム走査角度初期位置に移動され、再度走査が実施される。
【0072】
尚、上述した実施形態では、移動指示時での目標レンズ位置指示の時間変化、移動量、軌道は、毎回の走査で一定としているが、走査時の投射範囲に応じて、逐次、移動時の移動指示の時間変化、移動量、軌道を変えてもよい。
【0073】
次に、本実施形態に於ける投射ビーム光軸の調整方法について、図6及び図7を参照して説明する。
【0074】
図6は、投光装置のビーム投射光軸と対象物体との距離検出との関係を示した図であり、図7は光軸調整及び走査幅調整の流れを説明するためのフローチャートである。
【0075】
図6(a)に示されるように、投光装置20の前方で、所定距離Lとなる位置に反射平面70が設置される。先ず、ステップS41に於いて、レーザ制御部21により、角度オフセット指示が0度となるように、スキャナ制御部25から指示される。次に、ステップS42にて、レーザ制御部21により、スキャナ制御部25に対して、ビーム投射方向が走査角度中心、すなわち走査の原点方向となるように、角度指示が出される。すると、ステップS43にて、スキャナ制御部25により、ビーム角度指示に応じてレンズ位置目標が設定され、投射レンズ37の検出位置と目標位置とが一致するように、フィードバック制御により、投射レンズ37の位置が移動される。投射レンズ37が目標位置へ移動完了後、レーザ制御部21に完了信号が報告される。
【0076】
こうして、レーザ制御部21がスキャナ制御部25から移動完了信号を受けると、ステップS44にて、レーザダイオード31からパルス状の光束(L1)が出力され、投射レンズ37を通じて、反射平面70へ投射光61が投射される。対象物体62により反射された反射光(光束)63は受光部27に入射される。
【0077】
次いで、ステップS45にて、受光部27に入射された光束が、受光レンズ55を通じて、受光センサ56にて検出される。ステップS46では、レーザダイオード31が発光されてから反射光63が検出されるまでの時間差tdが測定されて、反射平面70までの距離Lが検出される。
【0078】
投射光軸が正しく調整されている時、レーザダイオード31が発光されてから、受光部27が反射光63を検出するまでの時間差tdは、物体間距離L、光束移動速度Vpとすると、下記(1)式で算出される。
td=2L/Vp …(1)
したがって、上記時間差tdを検出することにより、物体間距離Lが算出される。
【0079】
投射光軸ずれの角度をδとすると、投射光61と反射光63を加算した光路長は2L/cosδとなる。このときの時間差をtd′とすると、上記tdに対して(1/cosδ)倍に延長され、結果として、物体距離を測定すると、理論値より(1/cosδ)倍に検出される。このときの距離測定結果をL′とすると、下記(2)式の関係となる。
tan2 δ=1+(L′/L) …(2)
したがって、ステップS47に於いて、検出距離の実測値(距離測定結果)L′と理論値Lとのずれから、投射光軸ずれ量δを算出する。
【0080】
次に、投射光軸ずれ量δの方向を、検出するため、以下の処理が行われる。すなわち、ステップS48にて、レーザ制御部21からスキャナ制御部25に、投射角度がθ1となるように走査角度指示がなされる。次いで、ステップS49にて、上記投射角度指示に応じて、投射レンズ37の位置が移動される。そして、ステップS50にて、レーザダイオード31が発光されて、図6(b)に示されるように、反射平面70に光束が投射される。ステップS51では、受光部27により、反射平面70から反射された光が検出される。
【0081】
ステップS52に於いては、レーザダイオード31が発光されてから受光部27で検出されるまでの時間差が計測され、距離が検出される。ここで検出された距離がL1とされる。
【0082】
ここで、物体間距離をL、光束移動速度をvpとすると、検出時間は下記(3)式で表される。
td=2L/(vp・cosθ1) …(3)
検出距離L1は、検出時間よりL1=L/cosθ1と検出される。
【0083】
また、検出距離L1と投射方向θ1の関係は、下記(4)式で表される。これにより、ステップS53にて投射方向が算出される。
cosθ1=L/L1 …(4)
角度指示をθ1としたときに、実際に検出される角度をθ1′とする。
【0084】
同様に、θ1とは光軸中心に対し絶対値は同じで、方向が逆方向となる角度指示θ2が与えられ、距離L2が検出されて、検出距離から実際の投射角度をθ2′が検出される。これらはステップS54〜S59の処理動作により行われるが、θ2、θ2′、L2がそれぞれθ1、θ1′、L1に代わる以外は上述したステップS48〜S53と同じであるので、それぞれ対応するステップ番号を参照するものとして、ここでは説明を省略する。
【0085】
ステップS60では、上述した処理によって算出された、実際の投射角度θ1′、θ2′の大きさが比較される。そして、ステップS61にて、θ1′、θ2′の絶対値が大きい方の角度指示の方向が検出され、続くステップS62にて、光軸中心ずれδの方向がオフセット調整値指示として計算され、その調整値(オフセット調整値)がメモリ53に保持される。
【0086】
次に、ステップS63にて、上記θ1、θ2、θ1′、θ2′より、下記(5)式に従って、走査幅指示に対する実際の走査振幅の比が算出される。
走査振幅ずれの比率k=(θ1′−θ2′)/(θ1−θ2) …(5)
スキャナ制御部25では、目標指示角度に対して1/kとなる係数が乗算されることにより、走査指示角度振り幅に対する、実際の投射角度振り幅を一致させるように調整が可能である。ステップS64では、こうして算出された走査幅の比kが、走査ふり幅調整値としてメモリ53に保持される。
【0087】
そして、このメモリ53に保持されたオフセット調整値と走査ふり幅調整値に基づいて、投射光61の投光方向を補正することにより、レーザダイオード31の投光方向を常に所望の方向に合わせることが可能となる。
【0088】
以上のように本実施形態によれば、投光装置を分解することなく装置を取り付けた状態で、出射光軸のふり幅と、光軸調整を容易かつ、アクチュエータ感度特性の温度変化、および経時変化による、調整ずれの影響のない、高い調整精度を得ることができる投光装置を提供することが可能になる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能であるのは勿論である。
【0090】
更に、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【0091】
尚、本発明の上記実施形態によれば、以下の如き構成を得ることができる。
【0092】
すなわち、
(1) 光源と、
上記光源からの発光量を制御する手段と、
上下左右に移動可能な光学素子と、
上記光学素子を駆動させる手段と、
上記光学素子の位置を検出する位置検出手段と、
上記光学素子の移動量を設定する手段と、
上記位置検出手段の検出結果から、上記光学素子位置をフィードバック制御する手段と、
上記光学素子の位置を調整及び補正する手段と、
移動位置調整値の記憶手段と、
を備えたことを特徴とする投光装置。
【0093】
(2) 移動角度設定手段からの角度オフセット指示値を設定することで、上記光学素子の移動量設定値に上記角度オフセット量に相当する移動量を加算した値を設定し、投射光軸の走査角度中心をオフセットさせ、投射角度の走査角度中心を調整することができ、移動角度ふり幅の指示と、実際の投射ビーム角度のずれによる、走査角度幅のずれに対して光学素子の移動量を補正することで、水平及び垂直方向の投射ビーム角度範囲を調整することができることと、上記それぞれの調整結果を保持することを特徴とする上記(1)に記載の投光装置。
【0094】
(3) 投射光軸に対応した光学素子位置を検出する手段として、第1の光源から発する光線から、光学素子と連動した導光素子(スリット)を透過した光スポット位置を、位置検出素子によって検出することにより、常時光学素子の位置を検出できることを特徴とする上記(1)に記載の投光装置。
【0095】
上記(1)の投光装置に於いて、投射光軸の方向は、上記光学素子の移動位置によって変化させ、上記移動量を、目標となる位置に移動させ、停止制御させることにより、任意の角度に投射角度を変化させる。上記光学素子位置の上下左右方向の移動量設定値を、定時間毎に変化させて指示し、目標位置指示に停止させたときに、光源からのビーム発射と、反射光の検出を行うことで、投射光を任意角度で、走査できるようにしたものである。
【0096】
上記投光装置では、位置検出手段の出力オフセット、検出感度誤差によって、制御する光学素子の位置と、目標となる位置指示値にずれを生じ、その結果、投射角度指示と、実際に投射される光線の方向のずれを生じる場合があるが、投射角度指示と、実際の投射方向のずれを検出し、ずれ量から補正量を算出し、補正量を記憶手段に保持することができる。また、上記光学素子を位置制御する際、補正量を記憶手段から参照し、制御指示値に補正を与えることによって、投射角度指示と、実際の投射角度とのずれを、解消することができる。
【0097】
上記投光装置にあっては、光源から発生する光束は、光学素子に入射し、透過した光を投射光として対象物体に向けて投射する。上記光学素子は、入射光の中心位置と、光学素子の中心位置の位置ずれ量に応じて入射光を屈折させ、反射光として投射する。投射光は、光学素子の入射光の進行方向に対して、屈折角度分ずれた方向に投射される。上記屈折角は、入射光の中心位置と、光学素子の中心位置の位置ずれ量が大きくなるに従って、増大する。光学素子を上下方向、左右方向に移動することにより、投射光の進行方向を、水平方向、垂直方向共に、目標となる方向へ向けることができる。
【0098】
移動位置検出部は、第1の光源からの光線を光学素子と連動する導光素子に入射させ、透過光のスポット中心位置を位置検出素子によって検出して、光学素子の移動量を求める。制御手段は、上記検出された位置と、目標移動値との偏差に対し、偏差を補正する方向へ、光学素子を移動させるようにフィードバック制御を行う。制御手段は、目標位置とのずれが所定の範囲に入ると、上記光学素子位置を保持するように動作しつつ、光レーダ制御部へ移動完了の通知を行う。光レーダ制御部は、上記通知を受け、対象物体に向けてビーム光を発光し物体からの反射光を検出し、投射から受光までの時間差を計測することにより、物体までの距離を検出する。
【0099】
次に、投射ビーム光軸の調整方法を説明する。
【0100】
光軸ずれの原因には、角度によらず定量の偏差を発生するオフセット誤差と、角度指示値に略比例して増加(減少)する振幅依存誤差の2通りが存在する。
【0101】
オフセット誤差の補正値を決める方法は次の通りである。投射ビームの制御手段に対して投射ビームの投光方向が光軸中心となるような指示を与えたときの、実際の投射ビームの投光方向と光軸中心とのずれ量を計測し、このずれが無くなるように光学素子のオフセットを調整する。このオフセット調整値をオフセット誤差補正値として記憶手段に記録しておく。
【0102】
振幅依存誤差の補正値を決める方法は次の通りである。投射ビームの走査範囲の始めとなる角度を投射角度指示として制御手段に与えた時の、実際の投射ビームの投光角度を検出する。同様に、投射ビームの走査範囲の終わりとなる角度を投射角度指示として制御手段に与えた時の、実際の投射ビームの投光角度を検出する。これより、投射ビームの走査範囲の始めから終わりについて、制御手段に与えたビーム走査範囲の角度幅と、実際の投射ビームの投光角度幅を検出する。この角度幅が一致するように、光学素子の振り幅を調整する。この振り幅調整値を振幅依存誤差補正値として記憶手段に記録しておく。上記のオフセット誤差補正値と振幅依存誤差補正値を制御手段に与え、投射ビームの投光方向を補正することにより、投射ビームの投光方向を常に所望の方向に合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、本発明の投光装置が適用されたレーザレーダの全体構成を示すブロック構成図である。
【図2】投射レンズ37の移動方向と投射光61の方向との関係について説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に於けるレーザレーダの投射レンズ移動制御動作と光源発光制御タイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の一実施形態のレーザレーダが投射光軸を走査する処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートに於けるステップS12のサブルーチン「追従制御」の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】投光装置のビーム投射光軸と対象物体との距離検出との関係を示した図である。
【図7】光軸調整及び走査幅調整の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】従来技術の光レーダ装置の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0104】
21…レーザ制御部、23…レーザ発光装置、24…スキャナ部、25…スキャナ制御部、27…受光部、30…レンズホルダ、31…レーザダイオード、32、33…リレーレンズ、35…ワイヤバネ、36…支持部材、37…投射レンズ、38a、38b…従動部材、39a、39b…スリット、40…アクチュエータ、41a、41b…光源、43a、43b…位置検出器(PSD)、45…レンズ位置指示演算部、46…位置偏差検出部、47…判定部、48…制御演算部、50…リニアモータドライバ、51…位置センサ演算部、53…メモリ、61…投射光、62…対象物体、63…反射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源から放射される光線を走査し、物体からの反射光を受光することで物体を検出する光レーダの投光装置に於いて、
上記第1の光源が放射した光線の投射方向を設定する光学素子と、
上記光学素子の位置を検出する位置検出器と、
上記光線の投射方向を上記光学素子の位置に変換する変換手段と、
上記光学素子を移動させるアクチュエータと、
上記変換手段により得られた上記光学素子の目標位置と、上記位置検出器で検出された上記光学素子の検出位置を基に、上記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、
上記光線の特定の目標投射方向に対する当該投光装置によって光線が投射される方向のずれを補正する調整値を記憶する調整値記憶手段と、
を具備し、
上記変換手段は、投射方向を上記補正値で補正して上記光学素子の位置に変換することを特徴とする投光装置。
【請求項2】
上記光線の特定目標方向は、原点及び最大の振り幅に対応する角度であることを特徴とする請求項1に記載の投光装置。
【請求項3】
上記位置検出手段は、第2の光源と、位置検出素子と、上記光学素子と連動して移動するスリットとを有し、上記光学素子位置の検出出力を得ることを特徴とする請求項1に記載の投光装置。
【請求項4】
所定の光線を放射する第1の光源と、
上記第1の光源から放射された光線の投射方向を設定するための移動可能な光学素子と、
上記光学素子を、上記第1の光源の光軸方向に対して垂直な方向に2次元的に移動させるアクチュエータと、
上記光学素子の位置を検出する位置検出手段と、
上記光線の投射方向に基づいて上記光学素子を移動させるべく目標位置を算出する算出手段と、
上記光線の特定の目標投射方向に対する、上記第1の光源より放射される光線の投射方向のずれを、上記算出手段により算出された上記光学素子の目標位置と、上記位置検出器で検出された上記光学素子の検出位置とに基づいて補正するべく上記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、
を具備することを特徴とする投光装置。
【請求項5】
上記光線の特定の目標投射方向に対する、上記第1の光源より放射される光線の放射方向のずれを調整値として記憶する調整値記憶手段を更に具備し、
上記駆動制御手段は、上記算出手段により算出された上記光学素子の目標位置と、上記位置検出器で検出された上記光学素子の検出位置と、上記調整値記憶手段に記憶された調整値に基づいて、上記アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項4に記載の投光装置。
【請求項6】
上記光線の特定の目標投射方向は、走査の原点及び最大の振り幅に対応する角度であることを特徴とする請求項4に記載の投光装置。
【請求項7】
上記位置検出手段は、上記第1の光源とは異なる光線を放射する第2の光源と、位置検出素子と、上記光学素子の移動と連動して移動するスリットと、上記第2の光源から放射された光線を上記スリットを介して受光して上記光学素子の位置を検出する位置検出素子と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の投光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−191099(P2008−191099A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28271(P2007−28271)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】