説明

排ガス後処理装置

【課題】排ガスの高温域においてNOxの低減効率を向上する。
【解決手段】銅系触媒、鉄系触媒、亜鉛系触媒又はコバルト系触媒からなる第1選択還元型触媒21がエンジン11の排気管16に設けられ、銀系触媒からなる第2選択還元型触媒22が第1選択還元型触媒21より排ガス下流側の排気管16に設けられる。第1選択還元型触媒21に向けて炭化水素系液体24を噴射可能な液体噴射ノズル26が第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16に設けられ、炭化水素系液体供給手段27が液体噴射ノズル26に液体噴射量調整弁31を介して上記液体24を供給するように構成される。第1選択還元型触媒21に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサ41の検出出力に基づいてコントローラ38が液体噴射量調整弁31を制御するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を低減して排ガスを浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排ガス後処理装置として、ディーゼルエンジンの排気管系中に炭化水素吸蔵材及びNOx低減触媒が直列に配置され、その炭化水素吸蔵材が複数の直列配置耐火セラミック製ハニカム担体をそれぞれ細孔寸法の異なるゼオライトで被覆して構成されるディーゼルエンジン排ガス浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この排ガス浄化装置では、各上流側のハニカム担体の被覆に用いられるゼオライトの細孔寸法が下流側の隣接ハニカム担体の被覆に用いられるゼオライトの細孔寸法よりも大きく形成される。具体的には、炭化水素吸蔵材は、3個のコージェライト製の第1〜第3ハニカム担体を直列に接続して構成され、上流側から第1ハニカム担体がY型ゼオライト(細孔径約10Å)で被覆され、第2ハニカム担体がモルデナイト(細孔径約8Å)で被覆され、第3ハニカム担体がZSM−5(細孔径約5Å)で被覆される。またNOx低減触媒としては、白金−アルミナ系、銅−ゼオライト系等の触媒が使用される。
【0003】
このように構成されたディーゼルエンジン排ガス浄化装置では、細孔径の異なるゼオライトを別々のハニカム担体に被覆して、排ガスの流れの上流側から細孔径が次第に縮小するように配置して炭化水素吸蔵材とし、排ガス中のHCを低温時に吸蔵し、保留しておき、高温時に脱離させてNOxと反応させることにより、排ガス中のHCとNOxの両者を効率的に低減できる。また排ガス流の上流側ほど大きな細孔寸法を有するゼオライトを配置し、下流へ向うに従って細孔寸法が小さいゼオライトを配置して、細孔寸法の段差を設けたので、炭素原子数が1から約30程度にまで及ぶような種々のHCの貯蔵及び脱離が目詰まり等の障害を生じることなく、円滑に行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−192810号公報(請求項1、段落[0008]、[0014]、[0022])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示されたディーゼルエンジン排ガス浄化装置では、NOx低減触媒として例えば白金−アルミナ系触媒を用いると、その活性温度域が200℃前後であり、温度活性域が狭いという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、排ガスの高温域においてNOxの低減効率を向上できる、排ガス後処理装置を提供することにある。本発明の別の目的は、排ガスの広い温度域にわたってNOxを大幅に低減できる、排ガス後処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々のガス成分を計測できる分析計を用いてエンジンの排ガス成分を分析したところ、銅系触媒を通過したエンジンの排ガス中にホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が含まれていることが分かった。このため、上記アルデヒド類を種々の触媒と組合せてNOx低減性能などを向上できないか調べたところ、銅系触媒の排ガス下流側に銀系触媒を設置すると、この銀系触媒上でアルデヒド類とNOxが反応してNOxを低減できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
本発明の第1の観点は、図1に示すように、エンジン11の排気管16に設けられ銅系触媒、鉄系触媒、亜鉛系触媒又はコバルト系触媒からなる第1選択還元型触媒21と、第1選択還元型触媒21より排ガス下流側の排気管16に設けられ銀系触媒からなる第2選択還元型触媒22と、第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16に設けられ第1選択還元型触媒21に向けて炭化水素系液体24を噴射可能な液体噴射ノズル26と、液体噴射ノズル26に液体噴射量調整弁31を介して上記液体24を供給する炭化水素系液体供給手段27と、第1選択還元型触媒21に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサ41と、第1温度センサ41の検出出力に基づいて液体噴射量調整弁31を制御するコントローラ38とを備えた排ガス後処理装置である。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、第2選択還元型触媒22より排ガス下流側の排気管16に設けられ白金系触媒からなる第3選択還元型触媒53を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、第3選択還元型触媒53が第2選択還元型触媒22より排ガス下流側の排気管16に設けられ、第2選択還元型触媒22と第3選択還元型触媒53との間の排気管16に設けられ第3選択還元型触媒53に向けて炭化水素系液体24を噴射可能な補助液体噴射ノズル56と、補助液体噴射ノズル56に補助液体噴射量調整弁61を介して上記液体24を供給する補助炭化水素系液体供給手段57と、第3選択還元型触媒53に関係する排ガスの温度を検出する第2温度センサ72とを更に備え、コントローラ38が第1及び第2温度センサ41,72の検出出力に基づいて液体噴射量調整弁31及び補助液体噴射量調整弁61を制御するように構成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、第1選択還元型触媒21がハニカム担体に銅ゼオライト、銅アルミナ、鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト又はコバルトゼオライトをコーティングして構成され、第2選択還元型触媒22がハニカム担体に銀ゼオライト又は銀アルミナをコーティングして構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、第2又は第3の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、第3選択還元型触媒53が貴金属系触媒をコーティングして構成されたことを特徴する。
【0013】
本発明の第6の観点は、第1ないし第5の観点に基づく発明であって、更に液体噴射ノズル26より排ガス上流側の排気管にパティキュレートフィルタが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の観点の排ガス後処理装置では、排ガスの高温域において、エンジンの排ガスとともに、液体噴射ノズルから噴射された炭化水素系液体が銅系、鉄系、亜鉛系又はコバルト系の第1選択還元型触媒に流入すると、この第1選択還元型触媒上でホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が生成され、このアルデヒド類を含む排ガスが銀系の第2選択還元型触媒に流入すると、この第2選択還元型触媒上でアルデヒド類とNOxが反応して、NOxの還元反応とアルデヒド類の酸化反応とが促進される。この結果、排ガスの高温域における排ガス中のNOxの低減効率を向上できる。
【0015】
本発明の第2の観点の排ガス後処理装置では、排ガスの低温域において、炭化水素系液体を液体噴射ノズルから噴射すると、炭化水素系液体が第1及び第2選択還元型触媒で反応することなく、排ガス中のNOxの還元性能を発現する貴金属系の第3選択還元型触媒上で排ガス中のNOxと反応して、NOxが速やかに還元されるので、排ガスの低温域においてNOxを効率良く低減できる。一方、排ガスの高温域において、エンジンの排ガスとともに、液体噴射ノズルから噴射された炭化水素系液体が第1選択還元型触媒に流入すると、この第1選択還元型触媒上でホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が生成され、このアルデヒド類を含む排ガスが第2選択還元型触媒に流入すると、この第2選択還元型触媒上でアルデヒド類とNOxが反応して、NOxの還元反応とアルデヒド類の酸化反応とが促進されるので、排ガスの高温域においてNOxを効率良く低減できる。この結果、幅広い温度域にわたってNOxを大幅に低減できる。
【0016】
本発明の第3の観点の排ガス後処理装置では、第2選択還元型触媒と第3選択還元型触媒との間に設けられた補助液体噴射ノズルから炭化水素系液体を噴射すると、液体噴射ノズルから噴射された炭化水素系液体の不足分を補うことができる。この結果、貴金属系の第3選択還元型触媒の性能を更に向上させることができる。
【0017】
本発明の第6の観点の排ガス後処理装置では、液体噴射ノズルより排ガス上流側の排気管に設けられたパティキュレートフィルタにより排ガス中のパティキュレートを捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の排ガス後処理装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態の排ガス後処理装置を示す構成図である。
【図3】銅系触媒及び銀系触媒からなる実施例1と銅系触媒のみからなる比較例1の排ガス温度の変化に対するNOx低減率の変化、ホルムアルデヒドの排出量の変化及びアセトアルデヒドの排出量の変化を示す図である。
【図4】鉄系触媒及び銀系触媒からなる実施例2と鉄系触媒のみからなる比較例2の排ガス温度の変化に対するNOx低減率の変化、ホルムアルデヒドの排出量の変化及びアセトアルデヒドの排出量の変化を示す図である。
【図5】亜鉛系触媒及び銀系触媒からなる実施例3と亜鉛系触媒のみからなる比較例3の排ガス温度の変化に対するNOx低減率の変化、ホルムアルデヒドの排出量の変化及びアセトアルデヒドの排出量の変化を示す図である。
【図6】コバルト系触媒及び銀系触媒からなる実施例4とコバルト系触媒のみからなる比較例4の排ガス温度の変化に対するNOx低減率の変化、ホルムアルデヒドの排出量の変化及びアセトアルデヒドの排出量の変化を示す図である。
【図7】銅系触媒、銀系触媒及び白金系触媒からなる実施例5と白金系触媒のみからなる比較例5の排ガス温度の変化に対するNOx低減率の変化、ホルムアルデヒドの排出量の変化及びアセトアルデヒドの排出量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
図1に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド12を介して吸気管13が接続され、排気ポートには排気マニホルド14を介して排気管16が接続される。吸気管13には、ターボ過給機17のコンプレッサハウジング17aと、ターボ過給機17により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ18とがそれぞれ設けられ、排気管16にはターボ過給機17のタービンハウジング17bが設けられる。コンプレッサハウジング17aにはコンプレッサ回転翼(図示せず)が回転可能に収容され、タービンハウジング17bにはタービン回転翼(図示せず)が回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼とタービン回転翼とはシャフト(図示せず)により連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼及びシャフトを介してコンプレッサ回転翼が回転し、このコンプレッサ回転翼の回転により吸気管13内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0020】
排気管16の途中には銅系触媒、鉄系触媒、亜鉛系触媒又はコバルト系触媒からなる第1選択還元型触媒21が設けられ、第1選択還元型触媒21より排ガス下流側の排気管16には銀系触媒からなる第2選択還元型触媒22が設けられる。第1及び第2選択還元型触媒21,22は排気管16より大径のケース23に収容される。第1選択還元型触媒21はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に銅ゼオライト、銅アルミナ、鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト又はコバルトゼオライトをコーティングして構成される。具体的には、銅ゼオライトからなる第1選択還元型触媒21は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また銅アルミナからなる第1選択還元型触媒21は、銅を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。更に鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト又はコバルトゼオライトからなる第1選択還元型触媒21は、鉄、亜鉛又はコバルトをイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にそれぞれコーティングして構成される。
【0021】
第2選択還元型触媒22はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に銀ゼオライト又は銀アルミナをコーティングして構成される。具体的には、銀ゼオライトからなる第2選択還元型触媒22は、銀をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また銀アルミナからなる第2選択還元型触媒22は、銀を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。
【0022】
一方、第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16には、第1選択還元型触媒21に向けて炭化水素系液体24を噴射可能な液体噴射ノズル26が設けられる。この液体噴射ノズル26には炭化水素系液体供給手段27が接続される。炭化水素系液体供給手段27は、液体噴射ノズル26に一端が接続された液体供給管28と、この液体供給管28の他端に接続され液体24が貯留されたタンク29と、液体噴射ノズル26から噴射される液体24の噴射量を調整する液体噴射量調整弁31とを有する。上記炭化水素系液体24は、この実施の形態では、軽油等の燃料である。また液体噴射量調整弁31は、液体供給管28に設けられ液体噴射ノズル26への液体24の供給圧力を調整する圧力調整弁32と、液体噴射ノズル26の基端に設けられ液体噴射ノズル26を開閉するノズル開閉弁33とからなる。更に圧力調整弁32とタンク29との間の液体供給管28にはタンク29内の液体24を液体噴射ノズル26に供給可能なポンプ30が設けられる。
【0023】
圧力調整弁32は第1〜第3ポート32a〜32cを有する三方弁であり、第1ポート32aはポンプ30の吐出口に接続され、第2ポート32bは液体噴射ノズル26に接続され、第3ポート32cは戻り管34を介してタンク29に接続される。圧力調整弁32がオンすると、ポンプ30により圧送された液体24が第1ポート32aから圧力調整弁32に流入し、この圧力調整弁32で所定の圧力に調整された後、第2ポート32bから液体噴射ノズル26に圧送される。また圧力調整弁32がオフすると、ポンプ30により圧送された液体24が第1ポート32aから圧力調整弁32に流入した後、第3ポート32cから戻り管34を通ってタンク29に戻される。
【0024】
第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16には、第1選択還元型触媒21に関係する排ガスの温度、この実施の形態では、第1選択還元型触媒21を流れる直前の排ガスの温度を検出する第1温度センサ41が設けられる。またエンジン11の回転速度は回転センサ36により検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ37により検出される。第1温度センサ41、回転センサ36及び負荷センサ37の各検出出力はコントローラ38の制御入力に接続され、コントローラ38の制御出力は圧力調整弁32、ポンプ30及びノズル開閉弁33にそれぞれ接続される。コントローラ38にはメモリ39が設けられる。このメモリ39には、エンジン回転速度、エンジン負荷、第1選択還元型触媒21入口(第1選択還元型触媒を流れる直前)の排ガス温度等に応じた圧力調整弁32の圧力、ノズル開閉弁33の開閉回数、ポンプ30の作動の有無が予め記憶される。
【0025】
なお、この実施の形態では、第1温度センサを第1選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に設けたが、第1選択還元型触媒より排ガス下流側であって第2選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に第1温度センサを設けたり、或いは第1選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管と、第1選択還元型触媒より排ガス下流側であって第2選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管とに第1温度センサをそれぞれ設けてもよい。第1選択還元型触媒より排ガス下流側であって第2選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に第1温度センサを設けた場合、この第1温度センサにより第1選択還元型触媒出口(第1選択還元型触媒を流れた直後)の排ガスの温度が検出される。また第1選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管と、第1選択還元型触媒より排ガス下流側であって第2選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管とに第1温度センサをそれぞれ設けた場合、即ち第1選択還元型触媒の直前及び直後に第1温度センサをそれぞれ設けた場合、第1選択還元型触媒入口(第1選択還元型触媒を流れる直前)の排ガス温度と第1選択還元型触媒出口(第1選択還元型触媒を流れた直後)の排ガス温度とがそれぞれ検出されるため、両温度の平均値を算出することにより、第1選択還元型触媒を流れている排ガスの温度を検出できる。
【0026】
このように構成された排ガス後処理装置の動作を説明する。排ガスが高温域(例えば、250〜500℃)にあることを第1温度センサ41が検出すると、コントローラ38は、第1温度センサ41、回転センサ36及び負荷センサ37の各検出出力に基づいて炭化水素系液体供給手段27のポンプ30を作動させ、圧力調整弁32をオンし、かつノズル開閉弁33のオンオフを繰返すことにより、液体噴射ノズル26から炭化水素系液体24を間欠的に噴射する。この液体噴射ノズル26から噴射された炭化水素系液体24がガス化して銅系、鉄系、亜鉛系又はコバルト系の第1選択還元型触媒21に流入すると、この触媒21上でホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が生成される。これは、軽油等の炭化水素系液体24を構成するHC成分(アルカン)が、第1選択還元型触媒21上における酸素による酸化反応でHC成分の末端が脱水し、炭素同士の二重結合ができて、この二重結合部に酸素が求電子付加して部分酸化が起こったために、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が生成されたものと推定される。
【0027】
第1選択還元型触媒21で生成されたアルデヒド類を含む排ガスが銀系の第2選択還元型触媒22に流入すると、この第2選択還元型触媒22上でアルデヒド類とNOxが反応して、NOxの還元反応とアルデヒド類の酸化反応とが促進される。具体的には、アルデヒド類が第2選択還元型触媒22上でNOxから酸素原子を奪って酸化される(還元剤として作用する)一方で、NOxがアルデヒド類に酸素原子を与えて還元されることで、N2を生成されるために、排ガス中のNOxが低減される。なお、アルデヒド類の酸化により二酸化炭素や水が生成される。この結果、排ガスの高温域における排ガス中のNOxの低減効率を向上できる。
【0028】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態を示す。図2において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、第2選択還元型触媒22より排ガス下流側の排気管16に白金ゼオライトや白金アルミナ等の貴金属系触媒からなる第3選択還元型触媒53が設けられる。この第3選択還元型触媒53は排気管16より大径のケース54に収容される。また第3選択還元型触媒53はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に白金ゼオライト又は白金アルミナ等の貴金属をコーティングして構成される。具体的には、白金ゼオライトからなる第3選択還元型触媒53は、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また白金アルミナからなる第3選択還元型触媒53は、白金を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。
【0029】
一方、第2選択還元型触媒22と第3選択還元型触媒53との間の排気管16には、第3選択還元型触媒53に向けて炭化水素系液体24を噴射可能な補助液体噴射ノズル56が設けられる。この補助液体噴射ノズル56には補助炭化水素系液体供給手段57が設けられる。補助炭化水素系液体供給手段57は、補助液体噴射ノズル56に一端が接続された補助液体供給管58と、補助液体噴射ノズル56から噴射される液体24の噴射量を調整する補助液体噴射量調整弁61とを有する。上記補助液体供給管58の他端はポンプ30と圧力調整弁32との間の液体供給管28に接続される。また補助液体噴射量調整弁61は、補助液体供給管58に設けられ補助液体噴射ノズル56への液体24の供給圧力を調整する補助圧力調整弁62と、補助液体噴射ノズル56の基端に設けられ補助液体噴射ノズル56を開閉する補助ノズル開閉弁63とからなる。
【0030】
補助圧力調整弁62は第1〜第3ポート62a〜62cを有する三方弁であり、第1ポート62aはポンプ30の吐出口に接続され、第2ポート62bは補助液体噴射ノズル56に接続され、第3ポート62cは補助戻り管64を介してタンク29に接続される。補助圧力調整弁62がオンすると、ポンプ30により圧送された液体24が第1ポート62aから補助圧力調整弁62に流入し、この補助圧力調整弁62で所定の圧力に調整された後、第2ポート62bから補助液体噴射ノズル56に圧送される。また補助圧力調整弁62がオフすると、ポンプ30により圧送された液体24が第1ポート62aから補助圧力調整弁62に流入した後、第3ポート62cから補助戻り管64を通ってタンク29に戻される。
【0031】
第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16には、第1選択還元型触媒21に関係する排ガス温度、この実施の形態では、第1選択還元型触媒21を流れる直前の排ガスの温度を検出する第1温度センサ41が設けられる。また第2選択還元型触媒22より排ガス下流側であって第3選択還元型触媒53より排ガス上流側の排気管16には、第3選択還元型触媒53に関係する排ガスの温度、この実施の形態では、第3選択還元型触媒53を流れる直前の排ガスの温度を検出する第2温度センサ72が設けられる。またエンジン11の回転速度は回転センサ36により検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ37により検出される。第1温度センサ41、第2温度センサ72、回転センサ36及び負荷センサ37の各検出出力はコントローラ38の制御入力に接続され、コントローラ38の制御出力は圧力調整弁32、ポンプ30、ノズル開閉弁33、補助圧力調整弁62及び補助ノズル開閉弁63にそれぞれ接続される。コントローラ38に設けられたメモリ39には、エンジン回転速度、エンジン負荷、第1選択還元型触媒21入口(第1選択還元型触媒21を流れる直前)の排ガス温度等に応じた圧力調整弁32の圧力、ノズル開閉弁33の開閉回数、ポンプ30の作動の有無が予め記憶されるとともに、エンジン回転速度、エンジン負荷、第3選択還元型触媒53入口(第3選択還元型触媒53を流れる直前)の排ガス温度等に応じた補助圧力調整弁62の圧力、補助ノズル開閉弁63の開閉回数、ポンプ30の作動の有無が予め記憶される。
【0032】
なお、この実施の形態では、第2温度センサを第2選択還元型触媒より排ガス下流側であって第3選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に設けたが、第3選択還元型触媒より排ガス下流側に第2温度センサを設けたり、或いは第2選択還元型触媒より排ガス下流側であって第3選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管と、第3選択還元型触媒より排ガス下流側の排気管とに第2温度センサをそれぞれ設けてもよい。第3選択還元型触媒より排ガス下流側の排気管に第2温度センサを設けた場合、この第2温度センサにより第3選択還元型触媒出口(第3選択還元型触媒を流れた直後)の排ガス温度が検出される。また第2選択還元型触媒より排ガス下流側であって第3選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管と、第3選択還元型触媒より排ガス下流側の排気管とに第2温度センサをそれぞれ設けた場合、即ち第3選択還元型触媒の直前及び直後に第2温度センサをそれぞれ設けた場合、第3選択還元型触媒入口(第3選択還元型触媒を流れる直前)の排ガス温度と第3選択還元型触媒出口(第3選択還元型触媒を流れた直後)の排ガス温度とがそれぞれ検出されるため、両温度の平均値を算出することにより、第3選択還元型触媒を流れている排ガスを検出できる。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0033】
このように構成された排ガス後処理装置の動作を説明する。エンジン11の始動直後のように、排ガス温度が150℃未満と極めて低い場合には、第1選択還元型触媒21の入口側の排ガス温度が低過ぎて第1〜第3選択還元型触媒21,22,53によりNOxを殆ど還元できないので、コントローラ38は、第1温度センサ41、第2温度センサ72、回転センサ36及び負荷センサ37の各検出出力に基づいて、炭化水素系液体供給手段27のポンプ30は不作動状態にし、圧力調整弁32及びノズル開閉弁33をオフにして、液体噴射ノズル26から炭化水素系液体24を噴射しない状態に保つとともに、補助圧力調整弁62及び補助ノズル開閉弁63をオフにして、補助液体噴射ノズル56から炭化水素系液体24を噴射しない状態に保つ。
【0034】
排ガス温度が上昇して低温域(例えば150〜250℃)になると、コントローラ38は、第1温度センサ41、第2温度センサ72、回転センサ36及び負荷センサ37の各検出出力に基づいて、炭化水素系液体供給手段27のポンプ30を作動させ、圧力調整弁32をオンし、かつノズル開閉弁33のオンオフを繰返して、液体噴射ノズル26から比較的少量の炭化水素系液体24を間欠的に噴射するとともに、補助圧力調整弁62をオンし、かつ補助ノズル開閉弁63のオンオフを繰返して、補助液体噴射ノズル56から比較的少量の炭化水素系液体24を間欠的に噴射する。液体噴射ノズル26から噴射された炭化水素系液体24は、ガス化して第1選択還元型触媒21に流入するけれども、排ガスの低温域における第1選択還元型触媒21上での排ガス中のNOxの還元性能の発現が僅かであるため、第1選択還元型触媒21での炭化水素系液体24の消費は少なく、ガス化した炭化水素系液体24の大部分は第1選択還元型触媒21を通過して、第2選択還元型触媒22に流入する。排ガスの低温域における第2選択還元型触媒22上での排ガス中のNOxの還元性能の発現も僅かであるため、第2選択還元型触媒22での炭化水素系液体24の消費は少なく、ガス化した炭化水素系液体24の大部分は第2選択還元型触媒22を通過して、第3選択還元型触媒53に流入する。
【0035】
上記液体噴射ノズル26から噴射された殆ど全ての炭化水素系液体24は、補助液体噴射ノズル56から噴射された炭化水素系液体24とともに、ガス化して第3選択還元型触媒53に流入する。この第3選択還元型触媒53は排ガスの低温域においてNOxの還元性能を大きく発現するので、上記ガス化した炭化水素系液体24は第3選択還元型触媒53上で排ガス中のNOxと反応して、NOxが速やかに還元される。この結果、排ガスの低温域においてNOxが効率良く低減される。
【0036】
排ガス温度が更に上昇して高温域(例えば、250〜500℃)になると、コントローラ38は、第1温度センサ41、第2温度センサ72、回転センサ36及び負荷センサ37の各検出出力に基づいて圧力調整弁32及びノズル開閉弁33を制御して、液体噴射ノズル26から比較的多量の炭化水素系液体24を間欠的に噴射するとともに、補助圧力調整弁62及び補助ノズル開閉弁63を制御して、補助液体噴射ノズル56から比較的少量の炭化水素系液体24を間欠的に噴射する。なお、排ガス温度が300℃以上になったときに補助液体噴射ノズル56からの炭化水素系液体24の噴射を停止する。
【0037】
液体噴射ノズル26から噴射された炭化水素系液体24がガス化して銅系、鉄系、亜鉛系又はコバルト系の第1選択還元型触媒21に流入すると、この触媒21上でホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が生成される。このアルデヒド類を含む排ガスが銀系の第2選択還元型触媒22に流入すると、この第2選択還元型触媒22上でアルデヒド類とNOxが反応して、NOxの還元反応とアルデヒド類の酸化反応とが促進される。なお、アルデヒド類の酸化により二酸化炭素や水が生成される。この結果、排ガスの高温域における排ガス中のNOxの低減効率を向上できる。また補助液体噴射ノズル56から噴射された炭化水素系液体24が第3選択還元型触媒53に流入すると、この炭化水素系液体24は排ガス温度300℃未満の低温域における第3選択還元型触媒53上でのNOx低減に寄与することができる。この結果、排ガスの低温域から高温域の幅広い温度域にわたってNOxを大幅に低減できる。また第2選択還元型触媒22から余剰の炭化水素系液体24や余剰のアルデヒド類が排出された場合、これらの炭化水素系液体24やアルデヒド類の余剰分は第3選択還元型触媒53で酸化されるため、大気中に排出されることはない。
【0038】
なお、上記第1及び第2の実施の形態では、本発明の排ガス後処理装置をディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス後処理装置をガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記第1及び第2の実施の形態では、本発明の排ガス後処理装置をターボ過給機付ディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス後処理装置を自然吸気型ディーゼルエンジン又は自然吸気型ガソリンエンジンに適用してもよい。
【0039】
また、上記第2の実施の形態では、排ガスの低温域において液体噴射ノズルから少量の炭化水素系液体を噴射し、補助液体噴射ノズルから少量の炭化水素液体を噴射し、排ガスの高温域において液体噴射ノズルから多量の炭化水素系液体を噴射し、補助液体噴射ノズルから少量の炭化水素液体を噴射し、排ガス温度300℃以上で補助液体噴射ノズルからの炭化水素液体の噴射を停止したが、排ガスの低温域で補助液体噴射ノズルのみから炭化水素系液体を噴射し、排ガスの高温域で液体噴射ノズルのみから炭化水素液体を噴射してもよい。
【0040】
更に、上記第1及び第2の実施の形態の排ガス後処理装置において、液体噴射ノズルより排ガス上流側の排気管にパティキュレートフィルタを設けてもよい。この場合、パティキュレートフィルタにより排ガス中のパティキュレートを捕集することができるので、第1〜第3選択還元型触媒にパティキュレートが付着するのを防止できる。
【実施例】
【0041】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図1に示すように、排気量8000ccのターボ過給機付ディーゼルエンジン11の排気管16に、排ガス上流側から順に第1選択還元型触媒21及び第2選択還元型触媒22を設けた。また第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16に、炭化水素系液体24を噴射する液体噴射ノズル26を設けた。なお、第1選択還元型触媒21は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した銅系の触媒であった。また第2選択還元型触媒22は、銀をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した銀系の触媒であった。この排ガス後処理装置を実施例1とした。
【0042】
<実施例2>
第1選択還元型触媒として、鉄をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した鉄系の触媒を用いた。上記以外は、実施例1と同様にして排ガス後処理装置を構成した。この排ガス後処理装置を実施例2とした。
【0043】
<実施例3>
第1選択還元型触媒として、亜鉛をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した亜鉛系の触媒を用いた。上記以外は、実施例1と同様にして排ガス後処理装置を構成した。この排ガス後処理装置を実施例3とした。
【0044】
<実施例4>
第1選択還元型触媒として、コバルトをイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製したコバルト系の触媒を用いた。上記以外は、実施例1と同様にして排ガス後処理装置を構成した。この排ガス後処理装置を実施例4とした。
【0045】
<実施例5>
図2に示すように、排気量8000ccのターボ過給機付ディーゼルエンジン11の排気管16に、排ガス上流側から順に第1選択還元型触媒21、第2選択還元型触媒22及び第3選択還元型触媒53を設けた。また第1選択還元型触媒21より排ガス上流側の排気管16に、炭化水素系液体24を噴射する液体噴射ノズル26を設けた。更に第2選択還元型触媒22と第3選択還元型触媒53との間の排気管16に、炭化水素系液体24を噴射する補助液体噴射ノズル56を設けた。なお、第1選択還元型触媒21としては実施例1と同一の銅系の触媒を用い、第2選択還元型触媒22としては実施例1と同一の銀系の触媒を用いた。また第3選択還元型触媒53としては、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した白金系の触媒を用いた。この排ガス後処理装置を実施例5とした。
【0046】
<比較例1>
排気量8000ccのターボ過給機付ディーゼルエンジンの排気管に、第1選択還元型触媒を設けた。また第1選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に、炭化水素系液体を噴射する液体噴射ノズルを設けた。なお、第1選択還元型触媒は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した銅系の触媒であった。この排ガス後処理装置を比較例1とした。
【0047】
<比較例2>
第1選択還元型触媒として、鉄をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した鉄系の触媒を用いた。上記以外は、比較例1と同様にして排ガス後処理装置を構成した。この排ガス後処理装置を比較例2とした。
【0048】
<比較例3>
第1選択還元型触媒として、亜鉛をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した亜鉛系の触媒を用いた。上記以外は、比較例1と同様にして排ガス後処理装置を構成した。この排ガス後処理装置を比較例3とした。
【0049】
<比較例4>
第1選択還元型触媒として、コバルトをイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製したコバルト系の触媒を用いた。上記以外は、実施例1と同様にして排ガス後処理装置を構成した。この排ガス後処理装置を比較例4とした。
【0050】
<比較例5>
排気量8000ccのターボ過給機付ディーゼルエンジンの排気管に、第3選択還元型触媒を設けた。また第3選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に、炭化水素系液体を噴射する補助液体噴射ノズルを設けた。なお、第3選択還元型触媒は、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した白金系の触媒であった。この排ガス後処理装置を比較例5とした。
【0051】
<比較試験1及び評価>
エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度を室温から600℃まで徐々に上昇させたときの、実施例1及び比較例1の排ガス後処理装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図3(a)に示す。また、実施例1の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるホルムアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図3(b)に示す。更に、実施例1の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるアセトアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図3(c)に示す。
【0052】
図3(a)から明らかなように、比較例1の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約40%であったのに対し、実施例1の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約60%と高くなり、実施例1の排ガス後処理装置の方が比較例1の排ガス後処理装置より排ガス温度200〜600℃にわたって、NOx低減率が向上したことが分かった。また図3(b)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたホルムアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。更に図3(c)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたアセトアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。
【0053】
<比較試験2及び評価>
エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度を室温から600℃まで徐々に上昇させたときの、実施例2及び比較例2の排ガス後処理装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図4(a)に示す。また、実施例2の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるホルムアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図4(b)に示す。更に、実施例2の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるアセトアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図4(c)に示す。
【0054】
図4(a)から明らかなように、比較例2の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約15%であったのに対し、実施例2の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約40%と高くなり、実施例2の排ガス後処理装置の方が比較例2の排ガス後処理装置より排ガス温度200〜600℃にわたって、NOx低減率が向上したことが分かった。また図4(b)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたホルムアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。更に図4(c)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたアセトアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。
【0055】
<比較試験3及び評価>
エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度を室温から600℃まで徐々に上昇させたときの、実施例3及び比較例3の排ガス後処理装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図5(a)に示す。また、実施例3の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるホルムアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図5(b)に示す。更に、実施例3の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるアセトアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図5(c)に示す。
【0056】
図5(a)から明らかなように、比較例3の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約20%であったのに対し、実施例3の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約40%と高くなり、実施例3の排ガス後処理装置の方が比較例3の排ガス後処理装置より排ガス温度200〜600℃にわたって、NOx低減率が向上したことが分かった。また図5(b)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたホルムアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。更に図5(c)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたアセトアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。
【0057】
<比較試験4及び評価>
エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度を室温から600℃まで徐々に上昇させたときの、実施例4及び比較例4の排ガス後処理装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図6(a)に示す。また、実施例4の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるホルムアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図6(b)に示す。更に、実施例4の第1及び第2選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるアセトアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図6(c)に示す。
【0058】
図6(a)から明らかなように、比較例4の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約17%であったのに対し、実施例4の排ガス後処理装置ではNOx低減率が最大で約37%と高くなり、実施例4の排ガス後処理装置の方が比較例4の排ガス後処理装置より排ガス温度200〜600℃にわたって、NOx低減率が向上したことが分かった。また図6(b)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたホルムアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。更に図6(c)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は比較的多いのに対し、第2選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は極めて少なくなった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたアセトアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費されたものと考えられる。
【0059】
<比較試験5及び評価>
エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度を室温から600℃まで徐々に上昇させたときの、実施例5及び比較例5の排ガス後処理装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図7(a)に示す。また、実施例5の第1、第2及び第3選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるホルムアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図7(b)に示す。更に、実施例5の第1、第2及び第3選択還元型触媒を通過した直後の排ガスに含まれるアセトアルデヒドの量をそれぞれ測定した。その結果を図7(c)に示す。
【0060】
図7(a)から明らかなように、比較例5の排ガス後処理装置では200℃前後では高いNOx低減性能を発揮できたけれども、300℃を越えるとNOxの低減性能を全く発揮しなかったのに対し、実施例5の排ガス後処理装置では排ガス温度150〜600℃にわたって、高いNOx低減性能を発揮することが分かった。また図7(b)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は比較的多く、第2選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は極めて少なくなり、更に第3選択還元型触媒からのホルムアルデヒドの排出量は殆どなかった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたホルムアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費され、余剰のホルムアルデヒドが第3選択還元型触媒で酸化されたものと考えられる。更に図7(c)から明らかなように、第1選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は比較的多く、第2選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は極めて少なくなり、第3選択還元型触媒からのアセトアルデヒドの排出量は殆どなかった。このことから第1選択還元型触媒により生成されたアセトアルデヒドが第2選択還元型触媒におけるNOxの還元反応に消費され、余剰のアセトアルデヒドは第3選択還元型触媒で酸化されたものと考えられる。
【符号の説明】
【0061】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
16 排気管
21 第1選択還元型触媒
22 第2選択還元型触媒
24 炭化水素系液体
26 液体噴射ノズル
27 炭化水素系液体供給手段
31 液体噴射量調整弁
38 コントローラ
41 第1温度センサ
53 第3選択還元型触媒
56 補助液体噴射ノズル
57 補助炭化水素系液体供給手段
61 補助液体噴射量調整弁
72 第2温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の排気管(16)に設けられ銅系触媒、鉄系触媒、亜鉛系触媒又はコバルト系触媒からなる第1選択還元型触媒(21)と、
前記第1選択還元型触媒(21)より排ガス下流側の前記排気管(16)に設けられ銀系触媒からなる第2選択還元型触媒(22)と、
前記第1選択還元型触媒(21)より排ガス上流側の前記排気管(16)に設けられ前記第1選択還元型触媒(21)に向けて炭化水素系液体(24)を噴射可能な液体噴射ノズル(26)と、
前記液体噴射ノズル(26)に液体噴射量調整弁(31)を介して前記液体(24)を供給する炭化水素系液体供給手段(27)と、
前記第1選択還元型触媒(21)に関係する排ガスの温度を検出する第1温度センサ(41)と、
前記第1温度センサ(41)の検出出力に基づいて前記液体噴射量調整弁(31)を制御するコントローラ(38)と
を備えた排ガス後処理装置。
【請求項2】
前記第2選択還元型触媒(22)より排ガス下流側の前記排気管(16)に設けられ白金系触媒からなる第3選択還元型触媒(53)を更に備えた請求項1記載の排ガス後処理装置。
【請求項3】
前記第3選択還元型触媒(53)が前記第2選択還元型触媒(22)より排ガス下流側の前記排気管(16)に設けられ、
前記第2選択還元型触媒(22)と前記第3選択還元型触媒(53)との間の前記排気管(16)に設けられ前記第3選択還元型触媒(53)に向けて炭化水素系液体(24)を噴射可能な補助液体噴射ノズル(56)と、
前記補助液体噴射ノズル(56)に補助液体噴射量調整弁(61)を介して前記液体(24)を供給する補助炭化水素系液体供給手段(57)と、
前記第3選択還元型触媒(53)に関係する排ガスの温度を検出する第2温度センサ(72)と
を更に備え、
前記コントローラ(38)が前記第1及び第2温度センサ(41,72)の各検出出力に基づいて前記液体噴射量調整弁(31)及び前記補助液体噴射量調整弁(61)をそれぞれ制御するように構成された請求項2記載の排ガス後処理装置。
【請求項4】
前記第1選択還元型触媒(21)がハニカム担体に銅ゼオライト、銅アルミナ、鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト又はコバルトゼオライトをコーティングして構成され、前記第2選択還元型触媒(22)がハニカム担体に銀ゼオライト又は銀アルミナをコーティングして構成された請求項1ないし3いずれか1項に記載の排ガス後処理装置。
【請求項5】
前記第3選択還元型触媒(53)がハニカム担体に貴金属系触媒をコーティングして構成された請求項2又は3記載の排ガス後処理装置。
【請求項6】
前記液体噴射ノズル(26)より排ガス上流側の排気管にパティキュレートフィルタが設けられた請求項1ないし5いずれか1項に記載の排ガス後処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−82727(P2012−82727A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228329(P2010−228329)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】