説明

排気ガス浄化装置を備えた建設機械用油圧駆動システム

【課題】ロードセンシング制御を行う油圧駆動システムにおいて、アクチュエータ操作がない場合にポンプ出力上昇制御により排気ガス浄化装置のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去し、アクチュエータ操作とポンプ出力上昇制御を同時に行っても互いに影響し合わず、かつ簡便で低コストな構成とする。
【解決手段】エンジン回転数検出弁13の上流側のパイロットポンプ30の吐出圧とタンク圧を切り換えてシャトル弁45に出力する電磁切換弁46と、差圧減圧弁11の出力圧をLS制御弁17bに導く油路12bに配置され、ロードセンシング制御の有効、無効を切り換える電磁切換弁48を備え、コントローラ49は、排気ガス浄化装置42が再生を必要とするときに、電磁切換弁46がパイロットポンプ30の吐出圧を疑似負荷圧として出力し、電磁切換弁48がロードセンシング制御を無効するように切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に用いられ、油圧ポンプの吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようにロードセンシング制御を行う建設機械の油圧駆動システムに係わり、特に、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター)を浄化するための排気ガス浄化装置を備えた建設機械の油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプの吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようにロードセンシング制御を行う油圧駆動システムはロードセンシングシステムと呼ばれており、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の油圧駆動システムは、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、油圧ポンプから複数のアクチュエータへ供給される圧油の流量を制御する複数の流量・方向制御弁と、複数のアクチュエータの最高負荷圧を検出する検出回路と、油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御する制御手段と、油圧ポンプを複数の流量・方向制御弁に接続する管路に設けられ、油圧ポンプの吐出圧が最高負荷圧に設定圧を加算した圧力よりも高くなると開状態になって油圧ポンプの吐出油をタンクに戻し、油圧ポンプの吐出圧の上昇を制限するアンロード弁とを備えている。
【0004】
また、ロードセンシングシステムであって排気ガス浄化装置を備えたものとして、特許文献2に記載のものがある。このものでは、排気管に設けられた排気ガス浄化装置に排気抵抗センサを設け、センサの検出値が所定レベル以上になったときに、制御装置から信号を出力して、メインポンプのレギュレータとアンロード弁を制御し、油圧ポンプの吐出量と吐出圧を同時に上昇させてエンジンに油圧的な負荷をかける。これによりエンジンの出力を高くして排気ガス温度を上昇させ、酸化触媒を活性化してフィルタ堆積物を燃焼させフィルタを再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−193705号公報
【特許文献2】特許第3073380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ショベル等の建設機械はその駆動源としてディーゼルエンジンを搭載している。ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(以下PMという)の排出量は、NOx、CO、HC等とともに年々規制が強化されてきている。このような規制に対して、エンジンに排気ガス浄化装置を設け、エンジン排気ガス浄化装置内のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter )と呼ばれるフィルタでPMを捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減することが一般的に行われている。この排気ガス浄化装置では、フィルタのPM補足量が増加してくるとフィルタは目詰まりを起こしてゆき、そのことによりエンジンの排圧が上昇して、燃費の悪化等を誘発するため、フィルタに捕集したPMを適宜燃焼してフィルタの目詰まりを除去し、フィルタを再生することが必要である。
【0007】
フィルタの再生には、通常、酸化触媒を用いる。酸化触媒はフィルタの上流側に配置される場合と、フィルタに直接担持される場合と、その両方の場合とがあるが、いずれの場合も酸化触媒を活性化するためには、排気ガスの温度が酸化触媒の活性温度よりも高くなければならず、そのために排気ガス温度を強制的に酸化触媒の活性温度よりも高い温度に上昇させる必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の油圧駆動システムでは、可変容量型のメインポンプはロードセンシング制御を行うため、例えば全ての操作レバーが中立にあるときには、メインポンプの傾転角(容量)は最小となり、吐出流量も最少となる。また、メインポンプの吐出圧はアンロード弁により制御され、全ての操作レバーが中立にあるときはメインポンプの吐出圧はアンロード弁の設定圧とほぼ等しい最小圧力となる。その結果、メインポンプの吸収トルクも最小となる。
【0009】
このようなロードセンシング制御を行う油圧駆動システムのエンジンに排気ガス浄化装置を設けた場合は、全ての操作レバーが中立にあるときは、エンジンの負荷は低くなり、エンジンの排気ガスの温度は低くなってしまう。
【0010】
特許文献2に記載の油圧駆動システムでは、排気ガス浄化装置のフィルタの再生が必要になると、そのことを排気抵抗センサで検出し、メインポンプの吐出流量と吐出圧を同時に上昇させる制御(以下、ポンプ出力上昇制御という)を行うことでエンジンに油圧的な負荷をかけ、エンジンの出力を高くして排気ガス温度を上昇させ、酸化触媒を活性化してフィルタ堆積物を燃焼させている。このため全ての操作レバーが中立にあるときでも、メインポンプの吸収馬力は小さくならず、フィルタの再生を行うことができる。
【0011】
しかし、特許文献2の技術では、いずれかの操作レバーを操作してアクチュエータを動作している状態でポンプ出力上昇制御を行ったり、ポンプ出力上昇制御中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させたりするなど、アクチュエータ操作とポンプ出力上昇制御とを同時に行った場合には、互いに影響し合い、アクチュエータの操作性を損ねたり、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じてしまう可能性があった。
【0012】
すなわち、特許文献2では、排ガス浄化装置が再生を必要とする条件のときに、制御装置から信号を出力してメインポンプのレギュレータを直接制御することによって目標流量Q2を得る一方、制御装置からの信号でアンロード弁を直接制御することにより、目標圧力P2を得ている。これにより全ての操作レバーが中立にあり、アクチュエータ操作がない場合は、目標圧力P2と目標流量Q2が得られるので、メインポンプの吸収トルクをポンプ出力上昇制御に必要な目標値に合わせこむことが可能である。
【0013】
しかし、例えばポンプ出力上昇制御中に、低負荷・大流量のアクチュエータ操作(例えばアームクラウド操作など)を行うと、メインポンプから吐出された圧油は、アームシリンダに流入するが、ポンプ出力上昇制御によるレギュレータの制御で得られるメインポンプの目標流量Q2よりもアームシリンダの要求流量が多い場合には、アームシリンダが目標のスピードに達しなくなる。また、メインポンプの吐出圧も低下して目標圧力P2に達しなくなり、メインポンプの吸収トルクも最適値から減少してしまう。
【0014】
また、例えばポンプ出力上昇制御中に、高負荷・小流量のアクチュエータ操作(例えばバケットダンプ操作など)を行うと、アンロード弁には制御装置からの信号と本来のアクチュエータの負荷圧とが作用するので、アンロード弁によって制御されるメインポンプの吐出圧が目標圧力P2よりも高くなり、メインポンプの吸収トルクも最適値から増加してしまう。
【0015】
このような理由から、特許文献2では、ポンプ出力上昇制御を操作レバーが中立にあるときに限って行うことを推奨している。
【0016】
また、アンロード弁は、比較的高圧であるメインポンプの吐出圧とアクチュエータの負荷圧とが作用する構成であり、制御装置から信号を出力してアンロード弁を電気的に制御するためには、電機制御部が非常に高価なものになってしまうという問題もある。
【0017】
本発明の目的は、ロードセンシング制御を行う油圧駆動システムにおいて、アクチュエータ操作がない場合にポンプ出力上昇制御により排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができ、かつアクチュエータ操作とポンプ出力上昇制御を同時に行っても互いに影響し合わず、アクチュエータの操作性が損なわれたり、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じることがなく、しかも簡便かつ低コストで実現することができる建設機械の油圧駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプから複数のアクチュエータへ供給される圧油の流量を制御する複数の流量・方向制御弁と、前記複数のアクチュエータの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出回路と、前記油圧ポンプの吐出圧が高くなるにしたがって前記油圧ポンプの容量を減らし、前記油圧ポンプの吸収トルクが予め設定した最大トルクを超えないように制御する吸収トルク一定制御を行うトルク制御部及び前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう制御するロードセンシング制御部を有するポンプ制御装置と、前記油圧ポンプを前記複数の流量・方向制御弁に接続する管路に設けられ、前記油圧ポンプの吐出圧が前記最高負荷圧に設定圧を加算した圧力よりも高くなると開状態になって前記油圧ポンプの吐出油をタンクに戻し、前記油圧ポンプの吐出圧の上昇を制限するアンロード弁とを備えた油圧駆動システムにおいて、所定圧力とタンク圧のいずれか一方を切り換えて出力し、その出力圧を疑似負荷圧として前記最高負荷圧検出回路に導く第1切換弁と、前記ポンプ制御装置の前記ロードセンシング制御部によるロードセンシング制御の有効、無効を切り換える第2切換弁と、前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、前記排気ガス浄化装置が再生を必要としないときは、前記第1切換弁が前記タンク圧を疑似負荷圧として出力し、前記第2切換弁が前記ポンプ制御装置によるロードセンシング制御を有効とし、前記排気ガス浄化装置が再生を必要とするときは、前記第1切換弁が前記所定圧力を疑似負荷圧として出力し、前記第2切換弁が前記ポンプ制御装置によるロードセンシング制御を無効するように前記第1及び第2切換弁を切り換える制御装置とを備えるものとする。
【0019】
このように構成した本発明の作用は次のようである。
【0020】
排気ガス浄化装置のフィルタのPM堆積量が増加し、排気ガス浄化装置が再生を必要とする状態になると、制御装置は第1及び第2切換弁を切り換え、第1切換弁は、アクチュエータ操作がない場合、所定圧力を疑似負荷圧として出力し、第2切換弁はロードセンシング制御を無効とする。
【0021】
第1切換弁が所定圧力を疑似負荷圧として出力することで、最高負荷圧検出回路は、最高負荷圧として、疑似負荷圧(所定圧力)と実際の複数のアクチュエータの最も高い負荷圧の高い方を選択する。このためアンロード弁の働きにより、油圧ポンプの吐出圧は、疑似負荷圧(所定圧力)と実際の複数のアクチュエータの最高負荷圧との高い方の圧力に、アンロード弁の設定圧とアンロード弁のオーバーライド特性によって決まる圧力を加算した圧力に保たれる。また、ロードセンシング制御が無効となることで、ポンプ制御装置はトルク制御部だけが機能するようになり、油圧ポンプの容量はトルク制御部の吸収トルク一定制御の最大トルクの範囲内で増加する。このため所定圧力(疑似負荷圧)を適切な値に設定しておくことで、油圧ポンプの吸収トルクはトルク制御部による吸収トルク一定制御の最大トルクまで上昇する。すなわち、トルク制御部による吸収トルク一定制御を利用したポンプ出力上昇制御(ポンプ吸収トルク上昇制御)が行われる。
【0022】
このように油圧ポンプの吸収トルクが上昇すると、それに応じてエンジンの負荷が高くなり、排気温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置に設けられた酸化触媒が活性化するため、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度が上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMが燃焼除去される。
【0023】
また、ポンプ出力上昇制御中に低負荷・大流量のアクチュエータ操作を行い、油圧ポンプから吐出された圧油がアクチュエータに流入したとしても、ロードセンシング制御を無効としているため、ポンプ制御装置は、トルク制御部の吸収トルク一定制御の最大トルクの範囲内で油圧ポンプ2の容量を増加させるよう制御し続ける。その結果、アクチュエータには必要な流量が供給され、ポンプ出力上昇制御の影響を受けることなく、アクチュエータ操作を行うことができる。
【0024】
また、アクチュエータの負荷圧が疑似負荷圧(所定圧力)よりも低い場合であっても、最高負荷圧として疑似負荷圧(所定圧力)が選択され、油圧ポンプの吐出圧は、アンロード弁の働きにより、アクチュエータ操作が行われる前と同じ値に保たれる。このためアクチュエータ操作の影響を受けて油圧ポンプの吐出圧が低下することはなく、アクチュエータ操作が行われる前と同様のポンプ出力上昇制御を行うことができる。
【0025】
また、ポンプ出力上昇制御中に、高負荷・小流量のアクチュエータ操作を行った場合は、そのアクチュエータの負荷圧が最高負荷圧として選択され、油圧ポンプの吐出圧は、アンロード弁の働きにより、アクチュエータの負荷圧に応じて上昇する。このとき、油圧ポンプの吸収トルクは、トルク制御部の吸収トルク一定制御により最大トルクを超えないように制御される。これによりアクチュエータ操作の影響を受けることなく、アクチュエータ操作が行われる前と同様のポンプ出力上昇制御を行うことができる。一方、油圧ポンプの吐出圧は負荷圧に応じて上昇するため、ポンプ出力上昇制御の影響を受けることなく、アクチュエータ操作を行うことができる。
【0026】
以上のようにアクチュエータ操作とポンプ出力上昇制御を同時に行っても互いに影響し合わず、アクチュエータの操作性が損なわれたり、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じることを防止することができる。
【0027】
更に、第1切換弁と第2切換弁は比較的安価な切換弁であるため、上記効果を簡便かつ低コストで実現することができる。
【0028】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプと、このパイロットポンプに接続され、前記複数の流量・方向制御弁を制御するための圧油を供給するパイロット圧供給油路と、前記パイロット圧供給油路に設けられた絞り部を有し、この絞り部の圧損により前記エンジン回転数に依存する油圧信号を生成するエンジン回転数検出弁とを更に備え、前記ポンプ制御装置のロードセンシング制御部は、前記エンジン回転数検出弁が生成する前記油圧信号を前記ロードセンシング制御の目標差圧として設定するように構成されており、前記第1切換弁は、前記所定圧力として、前記エンジン回転数検出弁の上流側の圧力である前記パイロットポンプの吐出圧を出力する。
【0029】
これによりエンジン回転数検出弁の上流側の圧力という既存の圧力を利用して疑似圧力としての所定圧力を生成することができる。
【0030】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記ポンプ制御装置に前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁を更に備え、前記第2切換弁は、前記ポンプ制御装置のロードセンシング制御部に前記差圧減圧弁の出力圧を導く油路に配置され、前記排気ガス浄化装置が再生を必要としないときは前記差圧減圧弁の出力圧を出力し、前記排気ガス浄化装置が再生を必要とするときは前記タンク圧を出力するよう切り換えられる。
【0031】
これにより差圧減圧弁の出力圧をポンプ制御装置のロードセンシング制御部に導く油路に第2切換弁を介在させるだけの簡単な構成で、ロードセンシング制御の有効、無効を切り換えることができる。
【0032】
(4)また、上記(1)〜(3)において、好ましくは、前記排気ガス浄化装置の排気抵抗を検出するための圧力検出装置を更に備え、前記制御装置は、前記圧力検出装置の検出結果に基づいて、前記第1及び第2切換弁を同時に切り換えるように制御する。
【0033】
これにより圧力検出装置を用いて排気ガス浄化装置の再生の要否を検出し、第1及び第2切換弁を切り換えることができる。
【0034】
(5)また、上記(1)〜(4)において、好ましくは、前記ポンプ制御装置のトルク制御部は、前記油圧ポンプの吐出圧と容量との関係を示す特性であって、最大容量一定特性と最大吸収トルク一定特性とで構成される特性が予め設定され、前記油圧ポンプの吐出圧が、前記最大容量一定特性から最大吸収トルク一定特性への移行点の圧力である第1の値以下にあるときは、前記油圧ポンプの吐出圧が上昇しても前記油圧ポンプの最大容量を一定とし、前記油圧ポンプの吐出圧が前記第1の値を超えて上昇すると、前記油圧ポンプの最大容量が最大吸収トルク一定特性に応じて減少するように前記油圧ポンプの容量を制御するように構成されており、前記所定圧力は、この所定圧力に前記アンロード弁の設定圧と前記アンロード弁のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力が、前記最大容量一定特性から最大吸収トルク一定特性への移行点付近の圧力以上の値になるように設定されている。
【0035】
これにより疑似負荷圧が最高負荷圧として選択された場合と実際の負荷圧が最高負荷圧として選択された場合のいずれの場合も、トルク制御部による吸収トルク一定制御を利用した最大トルクでポンプ出力上昇制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
ロードセンシング制御を行う油圧駆動システムにおいて、アクチュエータ操作がない場合にポンプ出力上昇制御により排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができ、かつアクチュエータ操作とポンプ出力上昇制御を同時に行っても互いに影響し合わず、アクチュエータの操作性が損なわれたり、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じることを防止することができる。また、そのような効果を簡便かつ低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
【図2】馬力制御傾転ピストンによるメインポンプのPq(圧力−ポンプ容量)特性を示す図である。
【図3】メインポンプの吸収トルク特性を示す図である。
【図4】本実施の形態における油圧駆動システムが搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
【図5】排気ガス浄化装置内のPM堆積量と排気抵抗センサによって検出される排気抵抗(フィルタの前後差圧)との関係を示す図である。
【図6】コントローラの処理機能を示すフローチャートである。
【図7】タンク圧が0MPaであると仮定した場合のアンロード弁の動作特性を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は本発明の第1の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。本実施の形態は、本発明をフロントスイング式の油圧ショベルの油圧駆動システムに適用した場合のものである。
【0039】
図1において、本実施の形態に係わる油圧駆動システムは、エンジン1と、このエンジン1により駆動されるメインポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ(以下メインポンプという)2及び固定容量型のパイロットポンプ30と、メインポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3c…と、メインポンプ2の吐出油の供給油路5に接続されたアクチュエータ3b,3c…に対応する油路8a,8b,8c…に接続され、メインポンプ2からアクチュエータ3a,3b,3c…に供給される圧油の流量と方向をそれぞれ制御するクローズドセンタ型の複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…の上流側において油路8a,8b,8c…に接続され、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧を制御する圧力補償弁7a,7b,7c…と、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧のうちの最高圧力を選択して出力するシャトル弁9a,9b,9c…と、メインポンプ2の吐出圧と前記最高負荷圧との差圧を絶対圧として油路12a,12bに出力する差圧減圧弁11と、メインポンプ2の吐出油の供給油路5に接続され、供給油路5の圧力(メインポンプ2の最高吐出圧−最高回路圧力)が設定圧力以上にならないように制限するメインリリーフ弁14と、メインポンプ2の吐出油の供給油路5に接続され、供給油路5の圧力が最高負荷圧にバネ15aで設定されたクラッキング圧(設定圧)Punを加算した圧力よりも高くなると、開状態になって供給油路5の圧油をタンクTに戻し、最高負荷圧に対する供給油路の圧力の上昇を制限するアンロード弁15と、メインポンプ2の傾転角(容量或いは押しのけ容積)を制御するポンプ制御装置17と、パイロットポンプ30に接続され、複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…を制御するための圧油を供給するパイロット圧供給油路31と、パイロット圧供給油路31に配置され、エンジン1の回転数に比例するパイロットポンプ30の吐出流量に基づいて、エンジン回転数に依存する油圧信号を絶対圧Pgrとして出力するエンジン回転数検出弁13と、パイロット圧供給油路31のエンジン回転数検出弁13の下流側油路部分であるパイロット油路31bに接続され、パイロット油路31bの圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁32と、ゲートロックレバー24によって操作され、パイロット圧供給油路31の更に下流側の油路部分であるパイロット油路31cをパイロット油路31b及びタンクTの一方に選択的に連通させる安全弁としてのゲートロック弁100と、パイロット油路31cに接続され、流量・方向制御弁6a,6b,6c…を操作して対応するアクチュエータ3a,3b,3c…を動作させるための指令パイロット圧(指令信号)を生成する操作レバー装置122,123(図4参照)とを備えている。
【0040】
アクチュエータ3a,3b,3cは例えば油圧ショベルの旋回モータ、ブームシリンダ及びアームシリンダであり、流量・方向制御弁6a,6b,6cはそれぞれ例えば旋回用、ブーム用、アーム用の流量・方向制御弁である。図示の都合上、バケットシリンダ、ブームスイングシリンダ、走行モータ等のその他のアクチュエータ及びこれらアクチュエータに係わる流量・方向制御弁の図示は省略している。
【0041】
圧力補償弁7a,7b,7c…は、その目標補償差圧として差圧減圧弁11の出力圧が油路12dを介して導かれる開方向作動の受圧部21a,21b,21c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧を検出する受圧部22a,23a、22b,23b,22c,23c…を有し、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧が差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧)に等しくなるように制御する。すなわち、圧力補償弁7a,7b,7c…のそれぞれの目標補償差圧はメインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧に等しくなるように設定されている。
【0042】
流量・方向制御弁6a,6b,6c…はそれぞれ負荷ポート26a,26b,26c…を有し、これらの負荷ポート26a,26b,26c…は、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にあるときはタンクTに連通し、負荷圧としてタンク圧を出力し、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置から図示左右の操作位置に切り換えられたときは、それぞれのアクチュエータ3a,3b,3c…に連通し、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧を出力する。
【0043】
シャトル弁9a,9b,9c…はトーナメント形式に接続され、負荷ポート26a,26b,26c…とともに最高負荷圧検出回路を構成する。すなわち、シャトル弁9aは、シャトル弁45(後述)を経由して導かれる流量・方向制御弁6aの負荷ポート26aの圧力と流量・方向制御弁6bの負荷ポート26bの圧力との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9bは、シャトル弁9bの出力圧と流量・方向制御弁6cの負荷ポート26cの圧力との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9cは、シャトル弁9bの出力圧と図示しない他の同様なシャトル弁の出力圧との高圧側を選択して出力する。シャトル弁9cは最後段のシャトル弁であり、その出力圧は最高負荷圧として信号油路27,27aを介して差圧減圧弁11及びアンロード弁15に導かれる。
【0044】
差圧減圧弁11は、パイロット油路31bの圧力が油路33,34を介して導かれ、その圧力を元圧としてメインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧を絶対圧として生成するバルブであり、メインポンプ2の吐出圧が導かれる受圧部11aと、最高負荷圧が導かれる受圧部11bと、自身の出力圧が導かれる受圧部11cとを有している。
【0045】
アンロード弁15は、アンロード弁のクラッキング圧Punを設定する閉方向作動の上述したバネ15aと、供給油路5の圧力(メインポンプ2の吐出圧)が導かれる開方向作動の受圧部15bと、最高負荷圧が信号油路27aを介して導かれる閉方向作動の受圧部15cとを有し、供給油路5の圧力が最高負荷圧にバネ15aの設定圧Punを加算した圧力よりも高くなると、開状態になって供給油路5の圧油をタンクTに戻し、供給油路5の圧力の上昇を制限する。アンロード弁15のバネ15aの設定圧は、一般的に、エンジン1が定格最高回転数にあるときのエンジン回転数検出弁13の差圧減圧弁13bの出力圧により設定されるロードセンシング制御の目標差圧(後述)と概ね同じ値か、それよりも少し高い圧力に設定されており、本実施の形態では、ロードセンシング制御の目標差圧と同じ値に設定されている。
【0046】
流量・方向制御弁6a,6c,6c…と、圧力補償弁7a,7b,7c…と、シャトル弁9a,9b,9c…及び後述するシャトル弁45と、差圧減圧弁11と、メインリリーフ弁14と、アンロード弁15とは、コントロールバルブ4内に配置されている。
【0047】
エンジン回転数検出弁13は、パイロットポンプ30からの吐出流量に応じてその絞り量が可変となる特性を持つ可変絞り弁13aと、その可変絞り弁13aの前後差圧を絶対圧Pgrとして出力する差圧減圧弁13bとから構成される。パイロットポンプ30の吐出流量はエンジン回転数に依存して変化するため、可変絞り弁13aの前後差圧もエンジン回転数に依存して変化し、その結果、差圧減圧弁13bが出力する絶対圧Pgrもエンジン回転数に依存して変化する。差圧減圧弁13bの出力圧(可変絞り弁13aの前後差圧の絶対圧)は、油路40を介してロードセンシング制御の目標差圧としてメインポンプ2の傾転角(容量或いは押しのけ容積)を制御するポンプ制御装置17に導かれる。これによりエンジン回転数に応じたサチュレーション現象の改善が図れ、エンジン回転数を低く設定した場合に良好な微操作性が得られる。この点は特開平10−196604号公報に詳しい。
【0048】
ポンプ制御装置17はトルク制御傾転ピストン17a(トルク制御部)と、LS制御弁17b及びLS制御傾転ピストン17c(ロードセンシング制御部)とを有している。
【0049】
トルク制御傾転ピストン17aはメインポンプ2の吐出圧が高くなるにしたがってメインポンプ2の傾転角を減らして、メインポンプ2の吸収トルク(入力トルク)が予め設定した最大トルクを超えないように制御し、これによりメインポンプ2の吸収トルクがエンジン1の制限トルク(図2の制限トルクTEL)を越えないように制御され、メインポンプ2の消費馬力を制限し、過負荷によるエンジン1の停止(エンジンストール)が防止される。
【0050】
LS制御弁17bは対向する受圧部17d,17eを有し、受圧部17dには油路40を介してエンジン回転数検出弁13の差圧減圧弁13bの出力圧がロードセンシング制御の目標差圧(目標LS差圧)として導かれ、受圧部17eに油路12bを介して差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)が導かれる。LS制御弁17bは、差圧減圧弁11の出力圧が差圧減圧弁13bの出力圧よりも高くなると、パイロット油路31bの圧力を油路33を介してLS制御傾転ピストン17cに導いてメインポンプ2の傾転角を減らし、差圧減圧弁11の出力圧が差圧減圧弁13bの出力圧よりも低くなると、LS制御傾転ピストン17cをタンクTに連通してメインポンプ2の傾転角を増やし、これによりメインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧よりも差圧減圧弁13bの出力圧(目標差圧)だけ高くなるようにメインポンプ2の傾転角を制御する。これによりLS制御弁17b及びLS制御傾転ピストン17cは、メインポンプ2の吐出圧Pdが複数のアクチユエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧PLmaxよりも目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御する。
【0051】
図2及び図3を用いてトルク制御傾転ピストン17aのトルク制御の詳細を説明する。図2はトルク制御傾転ピストン17aによるメインポンプ2の吐出圧と容量(傾転角)との関係を示す特性(以下、Pq(圧力−ポンプ容量)特性という)を示す図であり、図3はメインポンプ2の吸収トルク特性を示す図である。図2及び図3の横軸はメインポンプ2の吐出圧Pを示している。図2の縦軸はメインポンプ2の容量(或いは傾転角)qを示し、図3の縦軸はメインポンプ2の吸収トルクTpを示している。
【0052】
図2において、メインポンプ2のPq特性は、最大容量一定特性Tp0と最大吸収トルク一定特性Tp1,Tp2とで構成されている。
【0053】
メインポンプ2の吐出圧Pが、最大容量一定特性Tp0から最大吸収トルク一定特性Tp1,Tp2に移行する折れ点(移行点)の圧力である第1の値P0以下にあるとき、メインポンプ2の吐出圧Pが上昇してもメインポンプ2の最大容量はq0で一定である。このとき、図3に示すように、メインポンプ2の吐出圧Pが上昇するにしたがって、ポンプ吐出圧とポンプ容量との積であるメインポンプ2の最大吸収トルクは増加する。メインポンプ2の吐出圧Pが第1の値P0を超えて上昇すると、メインポンプ2の最大容量は最大吸収トルク一定特性TP1,TP2の特性線に沿って減少し、メインポンプ2の吸収トルクはTP1,TP2の特性によって決まる最大トルクTmaxに保たれる。TP1,TP2の特性線は吸収トルク一定曲線(双曲線)を近似するよう図示しない2つのバネによって設定されており、最大トルクTmaxはほぼ一定である。また、その最大トルクTmaxエンジン1の制限トルクTELよりも小さくなるように設定されている。これによりメインポンプ2の吐出圧Pが第1の値P0を超えて上昇するとメインポンプ2の最大容量を減らして、メインポンプ2の吸収トルク(入力トルク)が予め設定した最大トルクTmaxを超えないように制御し、メインポンプ2の吸収トルクがエンジン1の制限トルクTELを越えないように制御される。この特性TP1,TP2による最大吸収トルクの制御を吸収トルク一定制御(或いは吸収馬力一定制御)という。
【0054】
図1に戻り、本実施の形態の油圧駆動システムは、上述した構成に加えて更に下記の構成を備えている。
【0055】
すなわち、油圧駆動システムは、エンジン1の排気系を構成する排気管路41に配置された排気ガス浄化装置42と、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗を検出する排気抵抗センサ43と、排気ガス浄化装置42を強制的に再生することを指令する強制再生スイッチ44と、流量・方向制御弁6aの負荷ポート26aの圧力をシャトル弁9aに導く油路に配置され、負荷ポート26aの圧力と外部圧力(後述)との高圧側を選択して出力するシャトル弁45と、パイロット圧供給油路31のエンジン回転数検出弁13の上流側油路部分であるパイロットポンプ30の吐出圧(パイロット油路31aの圧力)とタンク圧とを切り換えて、その一方の圧力を出力し、その出力圧を外部圧力としてシャトル弁45に導く電磁切換弁46(第1切換弁)と、差圧減圧弁11の出力圧をLS制御弁17bの受圧部17eに導く油路12bに配置され、差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)とタンク圧とを切り換えて、その一方の圧力をLS制御弁17bの受圧部17eに導く電磁切換弁48(第2切換弁)と、排気抵抗センサ43の検出信号と強制再生スイッチ44の指令信号を入力して所定の演算処理を行い、電磁切換弁46,48を切り換えるための電気信号を出力するコントローラ49(制御装置)とを備えている。
【0056】
排気ガス浄化装置42は内蔵するフィルタによって排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集する。また、排気ガス浄化装置42は酸化触媒を備えており、排気ガス温度が所定温度以上になると酸化触媒が活性化し、その酸化触媒で排気ガス中に添加された未燃燃料を燃焼させることで排気ガス温度を上昇させ、フィルタに捕集され堆積したPMを燃焼処理する。
【0057】
排気抵抗センサ43は、例えば、排気ガス浄化装置42のフィルタの上流側と下流側の前後差圧(排気ガス浄化装置42の排気抵抗)を検出する差圧検出装置である。
【0058】
電磁切換弁46は、コントローラ49から出力される電気信号がOFFのときは図示の位置にあり、タンク圧を外部圧力として出力し、電気信号がONになると図示の位置から切り換わり、パイロットポンプ30の吐出圧(所定圧力)を外部圧力として出力する。電磁切換弁48は、コントローラ49から出力される電気信号がOFFのときは図示の位置にあり、差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)を出力し、電気信号がONになると図示の位置から切り換わり、タンク圧を出力する。
【0059】
パイロット圧供給油路31には、エンジン回転数に比例した圧力を絶対圧Pgrとして出力するエンジン回転数検出弁13が設けられており、エンジン回転数検出弁13の上流側の圧力であるパイロット油路31aの圧力は、パイロットリリーフ弁32によって決まるパイロット油路31bの圧力(例えば3.9MPa)に、エンジン回転数検出弁13が出力する絶対圧Pgr(例えば2.0MPa)を加算した圧力(例えば3.9MPa+2.0MPa=5.9MPa)に保たれている。このパイロットポンプ30の吐出圧は、全ての操作レバーが中立にあるときに、その圧力(5.9MPa)にアンロード弁15の設定圧(例えば2.0MPa)とアンロード弁のオーバーライド特性の圧力(例えば2.0MPa)を加算した圧力(約10MPa)が、トルク制御傾転ピストン17aによるメインポンプ2の最大容量一定特性から最大吸収トルク一定特性への移行点付近の圧力(約10MPa)に等しいかそれよりも高い値となる圧力であり、これにより全ての操作レバーが中立にあるときにその圧力(パイロットポンプ30の吐出圧)を疑似負荷圧として出力することで、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御を利用した最大トルクTmaxでポンプ吸収トルク上昇制御を実施することが可能となる(後述)。
【0060】
図4は、本実施の形態における油圧駆動システムが搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
【0061】
油圧ショベルは、下部走行体101と、この下部走行体101上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の先端部分にスイングポスト103を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されたフロント作業機104とを備えている。下部走行体101はクローラ式であり、トラックフレーム105の前方側に上下動可能な排土用のブレード106が設けられている。上部旋回体102は基礎下部構造をなす旋回台107と、旋回台107上に設けられたキャノピタイプの運転室108とを備えている。フロント作業機104はブーム111と、アーム112と、バケット113とを備え、ブーム111の基端はスイングポスト103にピン結合され、ブーム111の先端はアーム112の基端にピン結合され、アーム112の先端はバケット113にピン結合されている。
【0062】
上部旋回体101は下部走行体100に対して旋回モータ3aにより旋回駆動され、ブーム111、アーム112、バケット113は、それぞれ、ブームシリンダ3b、アームシリンダ3c、バケットシリンダ3dを伸縮することにより回動する。下部走行体101は左右の走行モータ3f,3gにより駆動される。ブレード106はブレードシリンダ3hにより上下に駆動される。図1ではバケットシリンダ3d、左右の走行モータ3f,3g、ブレードシリンダ3hやそれらの回路要素の図示を省略している。
【0063】
運転室108には、運転席121、操作レバー装置122、123(図2では右側のみ図示)及びゲートロックレバー24が設けられている。
【0064】
図5は、排気ガス浄化装置42内のPM堆積量と排気抵抗センサ43によって検出される排気抵抗(フィルタの前後差圧)との関係を示す図である。
【0065】
図5において、排気ガス浄化装置42内のPM堆積量が増加するにしたがって排気ガス浄化装置42の排気抵抗は上昇する。図中、Wbは自動再生制御が必要となるPM堆積量であり、ΔPbはPM堆積量がWbであるときの排気抵抗である。Waは再生制御を終了させてもよいPM堆積量であり、ΔPaはPM堆積量がWaであるときの排気抵抗である。
【0066】
コントローラ49の記憶装置(図示せず)には、ΔPbが自動再生制御を開始するためのしきい値として記憶され、ΔPaが再生制御を終了させるためのしきい値として記憶されている。
【0067】
図6は、コントローラ49の処理機能を示すフローチャートである。コントローラ49による排気ガス浄化装置42の再生処理手順を、図6にしたがって説明する。
【0068】
まず、コントローラ49は、排気抵抗センサ43からの検出信号と強制再生スイッチ44からの指令信号に基づいて、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を開始するためのしきい値ΔPbとを比較し、ΔP>ΔPbかどうかを判定するとともに、強制再生スイッチ91がOFFからONに切り換わったかどうかを判定する(ステップS100)。ΔP>ΔPbとなった場合、或いは強制再生スイッチ91がONの場合には、次の処理に進む。ΔP>ΔPbでなく、強制再生スイッチ91がONでない場合は、何もせず、その判定処理を繰り返す。
【0069】
ΔP>ΔPbとなった場合、或いは強制再生スイッチ44がONの場合、コントローラ49は、電磁切換弁46,48に出力する電気信号をONにし、電磁切換弁46,48を図示の位置から切り換えて、ポンプ吸収トルク上昇制御を開始する(ステップS110)。また、コントローラ49は、排気ガス中に未燃燃料を供給する処理を行う。この処理は、例えば、エンジン1の電子ガバナ(図示せず)を制御して、エンジン主噴射後の膨張行程におけるポスト噴射(追加噴射)を実施することにより行う。
【0070】
ポンプ吸収トルク上昇制御はメインポンプ2の吐出圧と容量を制御してメインポンプ2の吸収トルクを増加させる制御であり(後述)、メインポンプ2の吸収トルクを増加させることによりメインポンプ2の出力(馬力)も増加する。すなわち、ポンプ吸収トルク上昇制御はポンプ出力上昇制御と同義である。
【0071】
ポンプ吸収トルク上昇制御が開始されるとエンジン1の油圧負荷が高くなり、エンジン1の排気ガスの温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化する。このような状況下で、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度を上昇させ、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMを燃焼除去する。
【0072】
なお、未燃燃料の供給は、排気管に再生制御用の燃料噴射装置を設け、この燃料噴射装置を作動させることにより行ってもよい。
【0073】
ポンプ吸収トルク上昇制御の間、コントローラ49は、排気ガス浄化装置42に設けられた排気抵抗センサ43からの検出信号に基づいて、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を終了するためのしきい値ΔPaとを比較し、ΔP<ΔPaとなったかどうかを判定し(ステップS120)、ΔP<ΔPaでない場合、ステップS110に戻り、ポンプ吸収トルク上昇制御を継続する。ΔP<ΔPaとなると、コントローラ49は電磁切換弁46,48に出力する電気信号をOFFにし、電磁切換弁46,48を図示の位置に切り換えて、ポンプ吸収トルク上昇制御を停止する(ステップS130)。また、これと同時に未燃燃料の供給を停止する。
〜動作〜
次に、ポンプ吸収トルク上昇制御(ポンプ出力上昇制御)の詳細を含め本実施の形態の動作を説明する。
【0074】
1.全操作レバー中立かつ電磁切換弁46,48OFFの場合
まず、全ての操作レバー(操作レバー装置122,123等の操作レバー)が中立にあり、図6のステップS100の判定が否定されたときは、電磁切換弁46,48はそれぞれ図示の位置にある。電磁切換弁46が図示の位置にあるとき、電磁切換弁46はタンク圧を外部圧力として出力し、そのタンク圧がシャトル弁45に導かれる。全ての操作レバーが中立にあるときは、流量・方向制御弁6a,6b,6c…は図示の中立位置に保持され、それらの負荷ポート26a,26b,26c…の圧力もタンク圧となる。このため、シャトル弁45及びシャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧はタンク圧となる。一方、電磁切換弁48が図示の位置にあるときは、電磁切換弁48は差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)を出力し、この出力圧がLS制御弁17bの受圧部17eに導かれる。このため、LS制御弁17bの受圧部17eに導かれる圧力は差圧減圧弁11の出力圧となる。したがって、このときの油圧駆動システムの動作は従来のシステムと同様であり、メインポンプ2の傾転角(容量)は最小となり、吐出流量も最少となる。また、メインポンプ2の吐出圧はアンロード弁15により制御され、メインポンプ2の吐出圧はアンロード弁15の設定圧とほぼ等しい最小圧力となる。その結果、メインポンプ2の吸収トルクも最小となる。
【0075】
このときの各部の動作の詳細は次のようである。
【0076】
シャトル弁45及びシャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧はタンク圧であり、差圧減圧弁11は、メインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)とタンク圧との差を絶対圧力として出力し、ポンプ制御装置17のLS切換弁17bには、エンジン回転数検出弁13の出力圧と差圧減圧弁11の出力圧とが導かれている。メインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)が上昇し、エンジン回転数検出弁13の出力圧よりも大きくなると、LS切換弁17bは図示右側の位置に切り換わり、メインポンプ2の傾転角制御ピストン17cに導かれる圧力が上昇し、メインポンプ2の傾転角が小さくなるよう制御される。しかし、メインポンプ2には、その最小傾転角を規定するストッパが設けられるため、メインポンプ2はストッパにより規定される最小傾転角に保持され、最少流量を吐出する。
【0077】
一方、供給油路5にはアンロード弁15が設けられており、アンロード弁15の受圧部15cにタンク圧(最高負荷圧)が導かれ、アンロード弁15は、供給油路5の圧力がタンク圧(最高負荷圧)にバネ15aの設定圧Punを加算した圧力よりも高くなると、開状態になって供給油路5の圧油をタンクTに戻し、供給油路5の圧力の上昇を制限する。
【0078】
図7は、タンク圧が0MPaであると仮定した場合のアンロード弁15の動作特性を示す図である。図中、タンク圧がアンロード弁15の受圧部15cに導かれた場合の供給油路5の通過流量(メインポンプ2の吐出流量)と圧力(メインポンプ2の吐出圧)との関係を、破線で示している。供給油路5の圧力は、図7にA点で示すように、最高負荷圧として検出されたタンク圧(0MPa)にアンロード弁15の設定圧(クラッキング圧)Punとアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力Praとなるよう制御される。
【0079】
一例として、エンジン回転数検出弁13がロードセンシング目標差圧として出力する絶対圧Pgrを2.0MPaとし、アンロード弁15の設定圧(クラッキング圧)Punを差圧減圧弁13bが出力する絶対圧Pgr(ロードセンシング目標差圧)と等しい2.0MPaとする。アンロード弁15のオーバーライド特性は、メインポンプ2の吐出流量によって変化する。このときはメインポンプ2の吐出流量は最少流量Qra(Qmin)であるので、アンロード弁15のオーバーライド特性の圧力は僅かである。その結果、供給油路5の圧力(メインポンプ2の吐出圧)Praは、2.0MPaより僅かに高い圧力となる。この圧力は、図2及び図3にA点で示す圧力であり、最小圧力Pminに相当する。また、このときのメインポンプ2の吸収トルクは最小トルクTminとなる。
【0080】
2.全操作レバー中立かつ電磁切換弁46,48ONの場合
全ての操作レバー(操作レバー装置122,123等の操作レバー)が中立にあるときに、排気ガス浄化装置42の再生が必要となり、図6のステップS100の判定が肯定された場合、電磁切換弁46,48はそれぞれONの電気信号により図示の位置から切り換えられる。
【0081】
パイロット圧供給油路31の油路部分(パイロット油路)31bには、パイロットリリーフ弁32が設けられ、パイロット圧油路31bの圧力を、ある一定の圧力(例えば3.9MPa)に保っている。また、パイロット圧供給油路31には、エンジン回転数に比例した圧力を絶対圧Pgrとして出力するエンジン回転数検出弁13が設けられている。エンジン回転数検出弁13の上流側に位置するパイロットポンプ30の吐出圧(パイロット油路31aの圧力)は、パイロットリリーフ弁32のセット圧Pioによって決まるパイロット油路31bの圧力(例えば3.9MPa)に、エンジン回転数検出弁13が出力する絶対圧Pgr(例えば2.0MPa)を加算した圧力(例えば3.9MPa+2.0MPa=5.9MPa)に保たれている。
【0082】
電磁切換弁46が図示の位置から切り換わると、電磁切換弁46はパイロットポンプ30の吐出圧を出力し、シャトル弁45にはその圧力が導かれる。このため、シャトル弁45及びシャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧は、複数のアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧と、パイロットポンプ30の吐出圧の高い方の圧力が選択される。このときは、全ての操作レバー装置が中立であり、流量・方向制御弁6a,6b,6c…の負荷ポート26a,26b,26c…の圧力がタンク圧であるため、最高負荷圧として、パイロットポンプ30の吐出圧が検出され、この圧力が疑似負荷圧としてアンロード弁15の受圧部15cに導かれる。
【0083】
図7の実線は、疑似負荷圧がアンロード弁15の受圧部15cに導かれた場合の供給油路5の通過流量(メインポンプ2の吐出流量)と圧力(メインポンプ2の吐出圧)との関係を示している。供給油路5の圧力は、図7にB点で示すように、疑似負荷圧(パイロットポンプ30の吐出圧)に、アンロード弁15の設定圧(クラッキング圧)Punとアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力Prbとなるように制御される。
【0084】
一例として、パイロットリリーフ弁32のセット圧Pioを3.9MPaとする。また、前述したように、エンジン回転数検出弁13がロードセンシング目標差圧として出力する絶対圧Pgrを2.0MPaとし、アンロード弁15の設定圧(クラッキング圧)Punを絶対圧(ロードセンシング目標差圧)Pgrと等しい2.0MPaとする。また、このときのアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を約2.0MPa程度だったとする。この場合は、供給油路5の圧力(メインポンプ2の吐出圧)Prbは、約10MPaに達する。
【0085】
一方、電磁切換弁48が図示の位置から切り換わると、メインポンプ2のロードセンシング制御を司るLS制御弁17bの受圧部17eにはタンク圧が導かれ、LS制御弁17bは、図示左側の位置に切り換わる。これによりロードセンシング制御が無効となるとともに、LS制御傾転ピストン17cの圧油は、LS制御弁17bを介してタンクTに戻され、メインボンプ2の傾転(容量)はバネ力によって増加し、メインポンプ2の吐出流量が増加する。
【0086】
ここで、通常、油圧ショベルなどの建設機械の場合、トルク制御傾転ピストン17aによるメインポンプ2のPq(圧力−ポンプ容量)特性における折れ点の圧力P0は、10MPa程度に設定することが多い。結果的に、電磁切換弁46と電磁切換弁48を図示位置から切り換えたときのメインポンプ2の吐出圧(図2、図3、図7でPrb)は、メインポンプ2のPq特性の折れ点付近の圧力となり、図2のB点に示すように、メインポンプ2の容量は、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御により決まる値qbとなり、メインポンプ2の吐出流量は図7のB点の値Qrbとなる。また、このときのメインポンプ2の吸収トルクは、図3にB点で示すように最大トルクTmaxとなる。
【0087】
このように電磁切換弁46と電磁切換弁48を切り換えることでメインポンプ2の吸収トルクは吸収トルク一定制御の最大トルクTmaxまで上昇し、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御を利用した最大トルクTmaxでのポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0088】
このようにメインポンプ2の吸収トルクが上昇すると、それに応じてエンジン1の負荷が高くなり、排気温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化するため、前述したように、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度が上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMが燃焼除去される。
【0089】
このポンプ吸収トルク上昇制御は、排気ガス浄化装置42に設けられた排気抵抗センサ43で検出した排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPがしきい値ΔPaより小さくなるまで継続される。
【0090】
3.電磁切換弁46,48ONで操作レバーを操作した場合
次に、上記2の電磁切換弁46,48がONの状態の再生中に操作レバーを操作した場合について説明する。
【0091】
任意のアクチュエータ、例えばブーム用の操作レバーを操作した場合は、流量・方向制御弁6bが切り換わり、ブームシリンダ3bに圧油が供給され、ブームシリンダ3bが駆動される。このとき、流量・方向制御弁6bの負荷ポート26bはブームシリンダ3bの負荷圧となる。
【0092】
また、電磁切換弁46,48は図示の位置から切り換えられているため、シャトル弁45及びシャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧は、ブームシリンダ3bの負荷圧とパイロットポンプ30の吐出圧の高い方の圧力となる。
【0093】
まず、ブームシリンダ3bの負荷圧がパイロットポンプ30の吐出圧より低い場合について説明する。
【0094】
ブームシリンダ3bの負荷圧がパイロットポンプ30の吐出圧より低い場合は、全ての操作レバーが中立である上記2の場合と同様、最高負荷圧としてパイロットポンプ30の吐出圧が疑似負荷圧として検出され、この疑似負荷圧がアンロード弁15の受圧部15cに導かれる。このとき、メインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15の働きにより、アクチュエータ操作が行われる前と同じ値に保たれる。また、電磁切換弁48が図示の位置から切り換わっているため、

上記2の場合と同様に、メインポンプ2のロードセンシング制御を司るLS制御弁17bの受圧部17eにタンク圧が導かれ、ロードセンシング制御が無効となるとともに、メインボンプ2の容量が増加し、メインポンプ2の吐出流量が増加する。このためメインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)と吐出流量(供給油路5の通過流量)は、アクチュエータ操作が行われる前と同様に、図2及び図7にB点で示すように制御され、アクチュエータ操作が行われる前と同様の吸収トルク一定制御を利用したポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0095】
また、ロードセンシング制御が無効となり、メインポンプ2の吐出流量が増加するため、ブームシリンダ3bには必要な流量が供給され、ポンプ吸収トルク上昇制御の影響を受けることなく、アクチュエータ操作を行うことができる。
【0096】
更に、流量・方向制御弁6bを流れる流量は、流量・方向制御弁6bのメータイン絞りの開口面積とメータイン絞りの前後差圧によって決まり、メータイン絞りの前後差圧は圧力補償弁7bによって差圧減圧弁11の出力圧と等しくなるように制御されるため、流量・方向制御弁6bを流れる流量(したがってブームシリンダ3bの駆動速度)は操作レバーの操作量に応じて制御される。
【0097】
次に、ブームシリンダ3bの負荷圧がパイロットポンプ30の吐出圧より高い場合について説明する。
【0098】
ブームシリンダ3bの負荷圧がパイロットポンプ30の吐出圧より高い場合は、最高負荷圧としてブームシリンダ3bの負荷圧PLが検出され、この負荷圧PLがアンロード弁15の受圧部15cに導かれる。このため、供給油路5の圧力(メインポンプ2の吐出圧)は、図7にC点で示すように、ブームシリンダ3bの負荷圧PLにアンロード弁15の設定圧(クラッキング圧)Punとアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力Prcとなるように制御され、全操作レバーが中立時の圧力Prbより高くなる。一方、電磁切換弁48は図示の位置から切り換わっているため、上記2の場合と同様に、メインポンプ2のロードセンシング制御を司るLS制御弁17bの受圧部17eにタンク圧が導かれ、ロードセンシング制御が無効となるとともに、メインボンプ2の容量は増加する。
【0099】
その結果、メインポンプ2の吸収トルクは、トルク制御傾転ピストン17a(トルク制御部)の吸収トルク一定制御により最大トルクTmaxを超えないように制御され、図2のC点に示すように、メインポンプ2の容量は、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御により決まる値qcとなり、メインポンプ2の吐出流量は図7のC点に示すQrcとなる。このためアクチュエータ操作の影響を受けることなく、アクチュエータ操作が行われる前と同様のポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0100】
一方、メインポンプ2の吐出圧は負荷圧に応じて上昇するため、ポンプ吸収トルク上昇制御の影響を受けることなく、アクチュエータ操作を行うことができる。
【0101】
更に、流量・方向制御弁6bを流れる流量は、流量・方向制御弁6bのメータイン絞りの開口面積とメータイン絞りの前後差圧によって決まり、メータイン絞りの前後差圧は圧力補償弁7bによって差圧減圧弁11の出力圧と等しくなるように制御されるため、流量・方向制御弁6bを流れる流量(したがってブームシリンダ3bの駆動速度)は操作レバーの操作量に応じて制御される。
【0102】
ブーム以外の操作レバーを単独で操作した場合の動作も同様である。
【0103】
次に、2つ以上のアクチュエータの操作レバーを操作した場合について説明する。
【0104】
2つ以上のアクチュエータの操作レバー、例えばブーム用の操作レバーとアーム用の操作レバーを操作した場合は、流量・方向制御弁6b,6cが切り換わり、ブームシリンダ3b及びアームシリンダ3cに圧油が供給され、ブームシリンダ3b及びアームシリンダ3cが駆動される。
【0105】
また、電磁切換弁46は図示の位置から切り換えられているため、シャトル弁45及びシャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧は、ブームシリンダ3b及びアームシリンダ3cの負荷圧とパイロットポンプ30の吐出圧の高い方の圧力となる。
【0106】
ここで、ブームシリンダ3b及びアームシリンダ3cの負荷圧がパイロットポンプ30の吐出圧より低い場合は、最高負荷圧としてパイロットポンプ30の吐出圧が疑似負荷圧として検出されるため、このときのメインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)と容量と吐出流量(供給油路5の通過流量)の制御は、上述したアクチュエータの単独操作においてアクチュエータの負荷圧が疑似負荷圧より低い場合と同様となる。
【0107】
また、ブームシリンダ3b及びアームシリンダ3cの負荷圧がパイロットポンプ30の吐出圧より高い場合は、最高負荷圧としてブームシリンダ3bとアームシリンダ3cの負荷圧のうちの高い方の負荷圧PLHが検出され、この負荷圧PLHがアンロード弁15の受圧部15cに導かれる。このときのメインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)と容量と吐出流量(供給油路5の通過流量)の制御は、上述したアクチュエータの単独操作においてアクチュエータの負荷圧が疑似負荷圧より高い場合と同様であり、メインポンプ2の吐出圧と容量と吐出流量は、そのときの負荷圧PLHの大きさに応じて、例えば、図2及び図7にD点で示すように制御され、メインポンプ2の吸収トルクは図3にD点で示すようにほぼ最大トルクTmaxとなるよう制御される。
【0108】
また、流量・方向制御弁6b,6cを流れる流量は、流量・方向制御弁6b,6cのメータイン絞りの開口面積とメータイン絞りの前後差圧によって決まり、メータイン絞りの前後差圧は圧力補償弁7b,7cによって差圧減圧弁11の出力圧と等しくなるように制御される。これによりブームシリンダ3bとアームシリンダ3cの負荷圧の大小に係わらず、流量・方向制御弁6b,6cのメータイン絞り部の開口面積に応じた比率でブームシリンダ3bとアームシリンダ3cに圧油を供給することができる。
【0109】
更に、このとき、メインポンプ2の吐出流量が流量・方向制御弁6b,6cが要求する流量に満たないサチュレーション状態になっても、サチュレーションの程度に応じて差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧)が低下し、これに伴って圧力補償弁7a,7b,7c…の目標補償差圧も小さくなるので、メインポンプ2の吐出流量を流量・方向制御弁6b,6cが要求する流量の比に再分配できる。
【0110】
ブームとアーム以外の複数の操作レバーを同時に操作した場合の動作も同様である。
【0111】
以上のように、排気ガス浄化装置42の再生中にどのようにアクチュエータが操作された場合でも、アクチュエータ操作がない場合と同様、吸収トルク一定制御を利用したポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができ、エンジン1の負荷を増加させて排気温度を上昇させることができる。
〜効果〜
以上のように構成した本実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0112】
1.排気ガス浄化装置42のフィルタのPM堆積量が増加し、排気ガス浄化装置42が再生を必要とする状態になると、コントローラ49は電磁切換弁46,48を切り換え、電磁切換弁46は、パイロットポンプ30の吐出圧(所定圧力)を疑似負荷圧として出力し、電磁切換弁48はロードセンシング制御を無効とする。これにより前述したように、全ての操作レバーが中立にあり、アクチュエータ操作がない場合であっても、メインポンプ2の吸収トルクはトルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御の最大トルクTmaxまで上昇する。すなわち、吸収トルク一定制御を利用したポンプ吸収トルク上昇制御(ポンプ出力上昇制御)が行われる。このようにメインポンプ2の吸収トルクが上昇すると、エンジン1の負荷が高くなり、排気温度が上昇し、排気ガス浄化装置42内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができる。
【0113】
2.ポンプ吸収トルク上昇制御中に低負荷・大流量のアクチュエータ操作(例えばアームシリンダ3cによるアームクラウド操作など)を行い、メインポンプ2から吐出された圧油がアクチュエータに流入したとしても、ロードセンシング制御を無効としているため、ポンプ制御装置17は、トルク制御傾転ピストン17a(トルク制御部)の吸収トルク一定制御の最大トルクの範囲内でメインポンプ2の容量を増大させるよう制御し続ける。その結果、アクチュエータには必要な流量が供給され、ポンプ吸収トルク上昇制御の影響を受けることなく、アクチュエータ操作を行うことができる。
【0114】
また、アクチュエータの負荷圧が疑似負荷圧(所定圧力)よりも低い場合であっても、最高負荷圧として疑似負荷圧が選択され、メインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15の働きにより、アクチュエータ操作が行われる前と同じ値に保たれる。このためアクチュエータ操作の影響を受けてメインポンプ2の吐出圧が低下することはなく、アクチュエータ操作が行われる前と同様のポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0115】
また、ポンプ吸収トルク上昇制御中に、高負荷・小流量のアクチュエータ操作(例えばバケットシリンダ3dによるバケットダンプ操作など)を行った場合は、シャトル弁9a,9b,9c…からなる最高負荷圧検出回路によりそのアクチュエータの負荷圧を最高負荷圧として選択され、メインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15の働きにより、アクチュエータの負荷圧に応じて上昇する。このとき、メインポンプ2の吸収トルクは、トルク制御傾転ピストン17a(トルク制御部)の吸収トルク一定制御により最大トルクTmaxを超えないように制御される。これによりアクチュエータ操作の影響を受けることなく、アクチュエータ操作が行われる前と同様のポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。一方、メインポンプ2の吐出圧は負荷圧に応じて上昇するため、ポンプ吸収トルク上昇制御の影響を受けることなく、アクチュエータ操作を行うことができる。
【0116】
以上のようにアクチュエータ操作とポンプ吸収トルク上昇制御(ポンプ出力上昇制御)を同時に行っても互いに影響し合わず、アクチュエータの操作性が損なわれたり、ポンプ吸収トルク上昇制御に不具合を生じることを防止することができる。
【0117】
3.電磁切換弁46と電磁切換弁48は比較的安価な切換弁であるため、上記効果を簡便かつ低コストで実現することができる。
【0118】
4.電磁切換弁46は、パイロット圧供給油路31のエンジン回転数検出弁13の上流側油路部分であるパイロットポンプ30の吐出圧(パイロット油路31aの圧力)とタンク圧とを切り換えて、その一方の圧力を出力し、その出力圧を外部圧力としてシャトル弁45に導く構成としたため、ポンプ吸収トルク上昇制御のための疑似負荷圧(所定圧力)として既存の圧力を利用することができ、システム構成を更に安価にできる。
【0119】
5.差圧減圧弁11の出力圧をポンプ制御装置17のLS制御弁17bの受圧部17eに導く油路12bに電磁切換弁48を介在させ、差圧減圧弁11の出力圧とタンク圧とを切り換えてLS制御弁17bの受圧部17eに導くようにしたので、ロードセンシング制御を確実に停止し、トルク制御のみとすることができる。また、簡単な構成で、ロードセンシング制御の有効、無効を切り換えることができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図8を用いて説明する。図8は本発明の第2の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。本実施の形態は、ロードセンシング制御の有効/無効を切り換える第2切換弁の他の例を示すものである。
【0120】
図8において、油圧駆動システムは、エンジン回転数検出弁13の差圧減圧弁13bの出力圧PgrをLS制御弁17bの受圧部17dに導く油路40に配置され、差圧減圧弁13bの出力圧とパイロット油路31bの圧力とを切り換えて、その一方の圧力をLS制御弁17bの受圧部17dに導く電磁切換弁51を備えている。図1の油圧駆動システムにおいて油路12bにあった電磁切換弁48は備えていない。前述したように、差圧減圧弁13bの出力圧Pgrは、例えば、2.0MPa程度であり、パイロット油路31bの圧力は、例えば、3.9MPa程度である。
【0121】
コントローラ49は、図6に示すステップS110において、ΔP>ΔPbとなった場合、或いは強制再生スイッチ44がONの場合、電磁切換弁46と電磁切換弁51に出力する電気信号をONにし、電磁切換弁46,51を図示の位置から切り換える。また、図6に示すステップS130において、ΔP<ΔPaとなると、電磁切換弁46と電磁切換弁51に出力する電気信号をOFFにし、電磁切換弁46,51を図示の位置に切り換える。
【0122】
電磁切換弁51は、コントローラ49から電気信号がOFFであるときは図示の位置にあり、差圧減圧弁13bの出力圧Pgrをロードセンシング制御の目標差圧としてLS制御弁17bの受圧部17dに出力する。コントローラ49から電気信号がONに切り換わると、電磁切換弁51は図示の位置から切り換わり、パイロット油路31bの圧力をLS制御弁17bの受圧部17dに出力する。前述したように、パイロット油路31bの圧力は、差圧減圧弁13bの出力圧Pgr(2.0MPa)より高い3.9MPa程度であり、この圧力はLS制御弁17bの受圧部17eに導かれる減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧)より高い圧力である。その結果、LS制御弁17bは図示右側の位置に切り換わり、ロードセンシング制御が無効となるとともに、LS制御傾転ピストン17cがタンクTに連通し、メインボンプ2の傾転(容量)が増加するように制御される。
【0123】
しかして、電磁切換弁46,51を図示の位置から切り換えたときは、第1の実施の形態と同様に、メインポンプ2の吐出圧(供給油路5の圧力)と容量と吐出流量(供給油路5の通過流量)は、図2及び図7にB点、C点、D点で示すように制御され、メインポンプ2の吸収トルクは図3にB点、C点、D点で示すようにほぼ最大トルクTmaxとなるよう制御される。
【0124】
これにより本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様にポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができ、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図9を用いて説明する。図9は本発明の第3の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
【0125】
第1及び第2の実施の形態では、電磁切換弁46が図示の位置から切り換えられたときに疑似負荷圧として出力する所定圧力としてパイロットポンプ30の吐出圧を利用した。本実施の形態は、所定圧力発生源の他の例を他の例を示すものである。
【0126】
図9において、油圧駆動システムは、パイロットリリーフ弁32によって生成されるパイロット油路31bの圧力(通常、前述したように3.9MPa程度)を所定圧力まで増圧する増圧器52を備え、増圧機52の出力圧Piohが電機切換弁46の入力の1つとして、図1の油圧駆動システムにおけるパイロットポンプ30の吐出圧(パイロット油路31aの圧力)の代わりに導かれる。
【0127】
増圧器52が出力する所定圧力は、その圧力に、アンロード弁15の設定圧(クラッキング圧)Punとアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力が、トルク制御傾転ピストン17aによるメインポンプ2のPq(圧力−ポンプ容量)特性における最大容量一定特性Pt0から最大吸収トルク一定特性Pt1,Pt2への移行点付近の圧力に等しいかそれよりも高い値になるように設定されており、図示の例では、パイロットポンプ30の吐出圧と圧力と同じ例えば5.9MPaである。
【0128】
コントローラ49は、図6に示すステップS110において、ΔP>ΔPbとなった場合、或いは強制再生スイッチ44がONの場合、電磁切換弁46,48に出力する電気信号をONにし、電磁切換弁46,48を図示の位置から切り換える。また、図6に示すステップS130において、ΔP<ΔPaとなると、電磁切換弁46,48に出力する電気信号をOFFにし、電磁切換弁46,48を図示の位置に切り換える。
【0129】
電機切換弁46は、図示の位置にあるときは、タンク圧を疑似負荷圧としてシャトル弁45に出力し、図示の位置から切り換えられると、増圧器52の出力圧Piohを疑似負荷圧としてシャトル弁45に出力する。
【0130】
このように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様にポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができ、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0131】
また,本実施の形態では、全操作レバー中立時の擬似負荷圧として、パイロットリリーフ弁32によって生成されるような比較的低圧を利用できるようになり、エンジン回転数検出弁13を備えない油圧駆動システムに対しても、本発明が適用可能となる。
<その他の実施の形態>
なお、上記実施の形態では、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧を差圧減圧弁11の出力圧により絶対圧として出力し、圧力補償弁7b,7c…の受圧部21b、21c…及び切換弁17bの受圧部17eに導いたが、圧力補償弁7b,7c…及び切換弁17bにそれぞれ受圧部21b、21c…及び受圧部17eに代えて対向する受圧部を設け、油圧ポンプ2の吐出圧と最高負荷圧を別々にそれらの受圧部に導くようにしてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態では、旋回モータ3aに係わる圧力補償弁7aに負荷依存特性を持たせたが、旋回モータ3aの負荷圧が一時的に高くなったときに旋回モータ3aへの供給流量を減少させなくてもよい場合、或いは他の手段により同様の機能を持たせた場合は、圧力補償弁7aは負荷依存特性のない通常の圧力補償弁であってもよい。
【0133】
更に、上記実施の形態では、ポンプ傾転変更部90にストッパ91を設け、メインポンプ2の最少吐出流量が流量制御弁39の最大開口面積に対応する旋回モータ3aの最大流量より大きくなるようにメインポンプ2の最小傾転を制限したが、油圧ポンプのロードセンシング制御と圧力補償弁の制御との干渉によるシステムの不安定性を別の手段で解消できるようにする場合は、メインポンプ2の最少吐出流量を旋回モータ3aの最大要求流量より小さい通常の値に設定してもよい。
<その他の実施の形態>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)を圧力補償弁7a,7b,7c…とLS制御弁17bに導いたが、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧を別々に圧力補償弁7a,7b,7c…とLS制御弁17bに導いてもよい。この場合は、メインポンプ2の吐出圧をLS制御弁17bに導く油路に電磁切換弁48を配置すれば、第1の実施の形態の電磁切換弁48と同様、電磁切換弁48を切り換えることで、ロードセンシング制御の有効、無効を切り換えることができる。
【0134】
また、上記実施の形態は、建設機械が油圧ショベルである場合について説明したが、油圧ショベル以外建設機械(例えば油圧クレーン、ホイール式ショベル等)であっても、ディーゼルエンジンと排気ガス浄化装置を備え、かつロードセンシング制御とトルク制御を行う油圧駆動システムを搭載するものであれば、上記実施の形態と同様に本発明を適用し、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0135】
1 エンジン
2 油圧ポンプ(メインポンプ)
3a,3b,3c… アクチュエータ
4 コントロールバルブ
5 供給油路
6a,6b,6c… 流量・方向制御弁
7a,7b,7c… 圧力補償弁
8a,8b,8c… 油路
9a,9b,9c… シャトル弁(最高負荷圧検出回路)
11 差圧減圧弁
12a,12b 油路
13a 可変絞り弁
13b 差圧減圧弁
14 メインリリーフ弁
15 アンロード弁
15a バネ
17 ポンプ制御装置
17a トルク制御傾転ピストン17a(トルク制御部)
17b LS制御弁(ロードセンシング制御部)
17c LS制御傾転ピストン17c(ロードセンシング制御部)
17d,17e 受圧部
24 ゲートロックレバー
26a,26b,26c… 負荷ポート(最高負荷圧検出回路)
30 パイロットポンプ
31 パイロット圧供給油路
31a〜31c パイロット油路
32 パイロットリリーフ弁
33,34 油路
40 油路
41 排気管路
42 排気ガス浄化装置
43 排気抵抗センサ
44 強制再生スイッチ
45 シャトル弁
46 電磁切換弁(第1切換弁)
48 電磁切換弁(第2切換弁)
49 コントローラ(制御装置)
51 電磁切換弁(第1切換弁)
52 増圧器
100 ゲートロック弁
122,123 操作レバー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、
前記油圧ポンプから複数のアクチュエータへ供給される圧油の流量を制御する複数の流量・方向制御弁と、
前記複数のアクチュエータの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出回路と、
前記油圧ポンプの吐出圧が高くなるにしたがって前記油圧ポンプの容量を減らし、前記油圧ポンプの吸収トルクが予め設定した最大トルクを超えないように制御する吸収トルク一定制御を行うトルク制御部及び前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう制御するロードセンシング制御部を有するポンプ制御装置と、
前記油圧ポンプを前記複数の流量・方向制御弁に接続する管路に設けられ、前記油圧ポンプの吐出圧が前記最高負荷圧に設定圧を加算した圧力よりも高くなると開状態になって前記油圧ポンプの吐出油をタンクに戻し、前記油圧ポンプの吐出圧の上昇を制限するアンロード弁とを備えた油圧駆動システムにおいて、
所定圧力とタンク圧のいずれか一方を切り換えて出力し、その出力圧を疑似負荷圧として前記最高負荷圧検出回路に導く第1切換弁と、
前記ポンプ制御装置の前記ロードセンシング制御部によるロードセンシング制御の有効、無効を切り換える第2切換弁と、
前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、
前記排気ガス浄化装置が再生を必要としないときは、前記第1切換弁が前記タンク圧を疑似負荷圧として出力し、前記第2切換弁が前記ポンプ制御装置によるロードセンシング制御を有効とし、前記排気ガス浄化装置が再生を必要とするときは、前記第1切換弁が前記所定圧力を疑似負荷圧として出力し、前記第2切換弁が前記ポンプ制御装置によるロードセンシング制御を無効するように前記第1及び第2切換弁を切り換える制御装置とを備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプと、
このパイロットポンプに接続され、前記複数の流量・方向制御弁を制御するための圧油を供給するパイロット圧供給油路と、
前記パイロット圧供給油路に設けられた絞り部を有し、この絞り部の圧損により前記エンジン回転数に依存する油圧信号を生成するエンジン回転数検出弁とを更に備え、
前記ポンプ制御装置のロードセンシング制御部は、前記エンジン回転数検出弁が生成する前記油圧信号を前記ロードセンシング制御の目標差圧として設定するように構成されており、
前記第1切換弁は、前記所定圧力として、前記エンジン回転数検出弁の上流側の圧力である前記パイロットポンプの吐出圧を出力することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記ポンプ制御装置に前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁を更に備え、
前記第2切換弁は、前記ポンプ制御装置のロードセンシング制御部に前記差圧減圧弁の出力圧を導く油路に配置され、前記排気ガス浄化装置が再生を必要としないときは前記差圧減圧弁の出力圧を出力し、前記排気ガス浄化装置が再生を必要とするときは前記タンク圧を出力するよう切り換えられることを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記排気ガス浄化装置の排気抵抗を検出するための圧力検出装置を更に備え、
前記制御装置は、前記圧力検出装置の検出結果に基づいて、前記第1及び第2切換弁を同時に切り換えるように制御することを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の建設機械の油圧駆動システムにおいて、
前記ポンプ制御装置のトルク制御部は、前記油圧ポンプの吐出圧と容量との関係を示す特性であって、最大容量一定特性と最大吸収トルク一定特性とで構成される特性が予め設定され、前記油圧ポンプの吐出圧が、前記最大容量一定特性から前記最大吸収トルク一定特性への移行点の圧力である第1の値以下にあるときは、前記油圧ポンプの吐出圧が上昇しても前記油圧ポンプの最大容量を一定とし、前記油圧ポンプの吐出圧が前記第1の値を超えて上昇すると、前記油圧ポンプの最大容量が前記最大吸収トルク一定特性に応じて減少するように前記油圧ポンプの容量を制御するように構成されており、
前記所定圧力は、この所定圧力に前記アンロード弁の設定圧と前記アンロード弁のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力が、前記最大容量一定特性から前記最大吸収トルク一定特性への移行点付近のの圧力以上の値になるように設定されていることを特徴とする建設機械の油圧駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−97890(P2012−97890A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248797(P2010−248797)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】