説明

接着フィルム、多層回路基板、電子部品及び半導体装置

【課題】電気的接続信頼性及び接着後の耐イオンマイグレーション性に優れ、接着フィルムの脆性改善と良好なタック性を両立させた接着フィルム、多層回路基板、電子部品および半導体装置を提供する。
【解決手段】接着フィルム2を、(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂と、(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂と、(C)フラックス活性化合物と、(D)成膜性樹脂と、を含む組成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム、多層回路基板、電子部品及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化及び軽薄短小化の要求に伴い、半導体パッケージ等の電子部品の高密度集積化、高密度実装化が進んでおり、これら電子部品の小型化、多ピン化が進んでいる。これら電子部品の電気的な接続を得るためには、半田接合が用いられている。この半田接合としては、例えば半導体チップ同士の導通接合部、フリップチップで搭載したパッケージのような半導体チップと回路基板間との導通接合部、回路基板同士の導通接合部等が挙げられる。この半田接合部には、電気的な接続強度及び機械的な接続強度を確保するために、一般的にアンダーフィル材と呼ばれる封止樹脂が注入されている(アンダーフィル封止)。
【0003】
この半田接合部よって生じた空隙(ギャップ)を液状封止樹脂(アンダーフィル材)で補強する場合、半田接合後に液状封止樹脂(アンダーフィル材)を供給し、これを硬化することによって半田接合部を補強している。しかしながら、電子部品の薄化、小型化に伴い、半田接合部は狭ピッチ化/狭ギャップ化しているため、半田接合後に液状封止樹脂(アンダーフィル材)を供給してもギャップ間に液状封止樹脂(アンダーフィル材)が行き渡らなく、完全に充填することが困難になるという問題が生じている。
【0004】
このような問題に対して、異方導電フィルムを介して端子間の電気的接続と接着とを一括で行う方法が知られている。例えば半田粒子を含む接着フィルムを、部材間に介在させて熱圧着させることにより、両部材の電気接続部間に半田粒子を介在させ、他部に樹脂成分を充填させる方法や、金属粒子を接触させることによって電気的接続をとる方法が記載されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
しかしこの方法では、電気的接続信頼性や接着後の樹脂の耐イオンマイグレーション性を確保することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−276873号公報
【特許文献2】特開平9−31419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電気的接続信頼性及び接着後の耐イオンマイグレーション性に優れ、接着フィルムの脆性改善と良好なタック性を両立させた接着フィルム、多層回路基板、電子部品および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(17)により達成される。
(1)支持体の第一の端子と、被着体の第二の端子を、半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルムであって、(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂と、(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂と、(C)フラックス活性化合物と、(D)成膜性樹脂と、を含むことを
特徴とする接着フィルム、
(2)前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂の含有量が、3〜30重量%である、(1)に記載の接着フィルム、
(3)前記(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂の重量平均分子量が300〜1500である、(1)または(2)に記載の接着フィルム、
(4)前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂の1核体含有量が1%以下である、(1)ないし(3)のいずれかに記載の接着フィルム、
(5)前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂中の2核体と3核体の合計の含有量が30〜70%である、(1)ないし(4)のいずれかに記載の接着フィルム、
(6)前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂が、フェノールノボラック樹脂および/又はクレゾールノボラック樹脂である、(1)ないし(5)のいずれかに記載の接着フィルム、
(7)前記(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂の25℃における粘度が、500〜50,000mPa・sである、(1)ないし(6)のいずれかに記載の接着フィルム、
(8)前記(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂の含有量が、10〜80重量%である、(1)ないし(7)のいずれかに記載の接着フィルム、
(9)前記(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂と、前記(C)フラックス活性化合物の配合比((B)/(C))が、0.5〜12.0である、(1)ないし(8)のいずれかに記載の接着フィルム、
(10)前記(C)フラックス活性化合物が、1分子中に2個のフェノール性水酸基と、少なくとも1個の芳香族に直接結合したカルボキシル基とを含むフラックス活性化合物である、(1)ないし(9)のいずれかに記載の接着フィルム、
(11)前記(C)フラックス活性化合物が、フェノールフタリンを含むものである、(1)ないし(10)のいずれかに記載の接着フィルム、
(12)前記(D)成膜性樹脂が、フェノキシ樹脂を含むものである、(1)ないし(11)のいずれかに記載の接着フィルム、
(13)さらに、硬化促進剤を含むものである、(1)ないし(12)のいずれかに記載の接着フィルム、
(14)さらに、シランカップリング剤を含むものである、請求項1ないし13のいずれかに記載の接着フィルム、
(15)(1)ないし(14)のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする多層回路基板、
(16)(1)ないし(14)のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする電子部品、
(17)(1)ないし(14)のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気的接続信頼性及び接着後の耐イオンマイグレーション性に優れ、接着フィルムの脆性改善と良好なタック性を両立させた接着フィルム、多層回路基板、電子部品および半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の接着フィルム、多層回路基板、電子部品及び半導体装置とその製造方法に関して説明する。
本発明の接着フィルムは、(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂と、(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂と、(C)フラックス活性化合物と、(D)成膜性樹脂と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の多層回路基板、電子部品及び半導体装置は、第一の端子を有する支持体と、第二の端子を有する被着体と、を上記接着フィルムを用いて、電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着したものである。
【0012】
以下、本発明の接着フィルム、多層回路基板、電子部品及び半導体装置とその製造方法について詳細に説明する。
【0013】
(接着フィルム)
【0014】
本発明の接着フィルムは、(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂(以下、化合物(A)とも記載する。)を含む。これにより、接着フィルムの硬化物のガラス転移温度を高めること、および、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を低減することができ、さらに、耐イオンマイグレーション性を向上させることが可能となる。また、接着フィルムに適度な柔軟性を付与することができるため、接着フィルムの脆性を改善することが可能となる。さらに、接着フィルムに適度なタック性を付与することができるため、作業性に優れた接着フィルムを得ることができる。
【0015】
前記化合物(A)としては、特に限定されるわけではないが、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ビスフェノールAF型ノボラック樹脂等が挙げられるが、接着フィルムの硬化物のガラス転移温度を効果的に高めることができ、また、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を低減することができる、フェノールノボラッック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0016】
前記化合物(A)の含有量は、特に限定されるわけではないが、接着フィルム中に3〜30重量%含まれることが好ましく、5〜25重量%含まれることが特に好ましい。化合物(A)の含有量を上記範囲とすることで、接着フィルムの硬化物のガラス転移温度を効果的に高めること、さらに、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を効果的に低減することを両立することができる。
【0017】
前記1核体から3核体の合計の含有量が30%より小さい(4核体以上の合計の含有量が70%以上)場合、(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂との反応性が低下し、接着フィルムの硬化物中に未反応のフェノール系ノボラック樹脂が残留するため、耐マイグレーション性が低下、また、接着フィルムが脆くなり作業性が低下してしまうといった問題が生じる。また、前記1核体から3核体の合計の含有量が70%より大きい(4核体以上の合計の含有量が30%以下)場合、接着フィルムを硬化させる際のあるとガス量が増大し、支持体または被着体の表面を汚染してしまうのでったり、耐マイグレーション性が低下してしまったり、さらに、接着フィルムのタック性が大きくなり、接着フィルムの作業性が低下してしまうといった問題が生じる。
【0018】
前記化合物(A)中の2核体と3核体の合計の含有量は、特に限定されるわけではないが、30〜70%であることが好ましい。上記下限値以上とすることで、接着フィルムを硬化させる際のアウトガス量が増大し、支持体または被着体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。また。上記上限値以下とすることで、接着フィル
ムの柔軟性と屈曲性をより効果的に確保することができる。
【0019】
前記化合物(A)中の1核体の含有量は、特に限定されるわけではないが、接着フィルム中に1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることが特に好ましい。前記1核体の含有量を、上記範囲とすることで、接着フィルムを硬化する際のアウトガス量を低減することができ、支持体または被着体の汚染を抑制することができ、さらに、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0020】
前記化合物(A)の重量平均分子量は、特に限定されるわけではないが、300〜1,500であることが好ましく、400〜1400であることが特に好ましい。上記下限値以上とすることで、接着フィルムを硬化させる際のアウトガス量が増大し、支持体または被着体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。また。上記上限値以下とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性をより効果的に確保することができる。
【0021】
本発明の接着フィルムは、(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂(以下、化合物(B)とも記載する。)を含む。これにより、接着フィルムに柔軟性および屈曲性を付与することができるため、ハンドリング性に優れた接着フィルムを得ることができる。
【0022】
前記化合物(B)としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着フィルムの支持体および被着体に対する密着性、さらに、接着フィルム硬化後の機械特性に優れる、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
また、前記化合物(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂としては、より好ましくは、25℃における粘度が、500〜50,000mPa・sであるもの、さらに好ましくは、800〜40,000mPa・sであるものが挙げられる。25℃における粘度を上記下限値以上とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性を確保することができる。また、25℃における粘度を上記上限値以下とすることで接着フィルムのタック性が強くなり、ハンドリング性が低下することを防止することができる。
【0024】
また、前記化合物(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜80重量%が好ましく、15〜75重量%が特に好ましい。上記下限値以上とすることで、接着フィルムの柔軟性と屈曲性をより効果的に発現させることができる。また、上記上限値以下とすることで、接着フィルのタック性が強くなり、ハンドリング性が低下することをより効果的に防止することができる。
【0025】
本発明の接着フィルムは、(C)フラックス活性化合物(以下、化合物(C)とも記載する。)を含む。これにより、支持体の第一の端子および被着体の第二の端子の少なくとも一方の半田表面の酸化膜を除去すること、また、場合によっては、支持体の第一の端子または被着体の第二の端子表面の酸化膜を除去することができ、確実に前記第一の端子と前記第二の端子を確実に半田接合することができるため、接続信頼性の高い多層回路基板、電子部品、半導体装置等を得ることができる。
【0026】
前記化合物(C)としては、半田表面の酸化膜を除去する働きがあれば、特に限定されるものではないが、カルボキシル基又はフェノール性水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びフェノール水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
【0027】
前記化合物(C)の配合量は、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%が特に好ま
しい。化合物(C)の配合量が、上記範囲であることにより、フラックス活性を向上させることができるとともに、接着フィルムを硬化した際に、未反応の化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)が残存するのを防止することができ、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0028】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物の中には、(C)フラックス活性化合物が存在する(以下、このような化合物を、フラックス活性硬化剤とも記載する。)。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等は、フラックス作用も有している。本発明では、このような、フラックスとしても作用し、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用するようなフラックス活性硬化剤を、好適に用いることができる。
【0029】
なお、カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物とは、分子中にカルボキシル基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、フェノール性水酸基を備える(C)フラックス活性化合物とは、分子中にフェノール性水酸基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、カルボキシル基及びフェノール性水酸基を備える(C)フラックス活性化合物とは、分子中にカルボキシル基及びフェノール性水酸基がそれぞれ1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。
【0030】
これらのうち、カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0031】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物に係る脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0032】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物に係る脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0033】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物に係る芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等が挙げられる。
【0034】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物に係る脂肪族カルボン酸としては、下記一般式(1)で示される化合物や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
HOOC−(CH−COOH (1)
(式(1)中、nは、1以上20以下の整数を表す。)
【0035】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物に係る芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、トリイル酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮
酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられる。
【0036】
これらの前記カルボキシル基を備える(C)フラックス活性化合物のうち、(C)フラックス活性化合物が有する活性度、接着フィルムの硬化時におけるアウトガスの発生量、及び硬化後の接着フィルムの弾性率やガラス転移温度等のバランスが良い点で、前記一般式(1)で示される化合物が好ましい。そして、前記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物が、硬化後の接着フィルムにおける弾性率が増加するのを抑制することができるとともに、支持体と被着体の接着性を向上させることができる点で、特に好ましい。
【0037】
前記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物としては、例えば、n=3のグルタル酸(HOOC−(CH−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH−COOH)及びn=10のHOOC−(CH10−COOH−等が挙げられる。
【0038】
前記フェノール性水酸基を備える(C)フラックス活性化合物としては、フェノール類が挙げられ、具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−ターシャリブチルフェノール、カテコール、p−ターシャリアミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノール等のフェノール性水酸基を含有するモノマー類等が挙げられる。
【0039】
上述したようなカルボキシル基又はフェノール水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びフェノール水酸基の両方を備える化合物は、エポキシ樹脂との反応で三次元的に取り込まれる。
【0040】
そのため、硬化後のエポキシ樹脂の三次元的なネットワークの形成を向上させるという観点からは、(C)フラックス活性化合物としては、フラックス作用を有し且つエポキシ樹脂の硬化剤として作用するフラックス活性硬化剤が好ましい。フラックス活性硬化剤としては、例えば、1分子中に、エポキシ樹脂に付加することができる2つ以上のフェノール性水酸基と、フラックス作用(還元作用)を示す芳香族に直接結合した1つ以上のカルボキシル基とを備える化合物が挙げられる。このようなフラックス活性硬化剤としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)等の安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;及びジフェノール酸等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上を組み合わせでもよい。
これらの中でも、半田表面の酸化膜を除去する効果とエポキシ樹脂との反応性に優れる、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸、フェノールフタリンが好ましい。
【0041】
また、接着フィルム中、フラックス活性硬化剤の配合量は、1〜30重量%が好ましく
、3〜20重量%が特に好ましい。接着フィルム中のフラックス活性硬化剤の配合量が、上記範囲であることにより、接着フィルムのフラックス活性を向上させることができるとともに、接着フィルム中に、エポキシ樹脂と未反応のフラックス活性硬化剤が残存するのが防止される。なお、未反応のフラックス活性硬化剤が残存すると、マイグレーションが発生する。
【0042】
前記化合物(B)と前記化合物(C)の配合比は、特に限定されるわけではないが、((B)/(C))が0.5〜12.0であることが好ましく、2.0〜10.0であることが特に好ましい。((B)/(C))を上記下限値以上とすることで、接着フィルムを硬化させる際に、未反応の化合物(C)を低減することができるため、耐マイグレーション性を向上することができる。また、上記上限値以下とすることで、接着フィルムを硬化させる際に、未反応の化合物(B)を低減することができるため、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0043】
本発明の接着フィルムは、接着フィルムの成膜性を向上する(D)成膜性樹脂を含む。これにより、フィルム状態にするのが容易となる。また、接着フィルムの機械的特性にも優れる。
【0044】
前記(D)成膜性樹脂としては、特に限定されるわけではないが、例えば、(メタ)ア
クリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等を挙げることができる。これらは、1種で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
前記(D)成膜性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるわけではないが、1万以上が好ましく、より好ましくは2万〜100万、更に好ましくは3万〜90万である。重量平均分子量
が前記範囲であると、接着フィルムの成膜性をより向上させることができる。
【0046】
前記(D)成膜性樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記接着フィルム中の10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましく、特に20〜35重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、接着フィルムの流動性を抑制することができ、接着フィルムの取り扱いが容易になる。
【0047】
また、前記接着フィルムは、硬化促進剤を更に含んでもよい。硬化促進剤は硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。硬化促進剤としては、例えば融点が150℃以上のイミダゾール化合物を使用することができる。使用される硬化促進剤の融点が150℃以上であると、接着フィルムの硬化が完了する前に、半田バンプを構成する半田成分が半導体素子に設けられた内部電極表面に移動することができ、内部電極間の電気的接続を良好なものとすることができる。融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられる。
【0048】
前記硬化促進剤の含有量は、特に限定されるわけではないが、接着フィルム中0.005〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5重量%である。イミ
ダゾール化合物の配合量を0.005重量%以上とすることにより、硬化促進剤としての機能を更に効果的に発揮させて、接着フィルムの硬化性を向上させることができる。また、イミダゾールの配合量を10重量%以下とすることにより、半田バンプを構成する半田成分の溶融温度における樹脂の溶融粘度が高くなりすぎず、良好な半田接合構造が得られる。また、接着フィルムの保存性を更に向上させることができる。
これらの硬化促進剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、前記接着フィルムは、シランカップリング剤を更に含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、半導体素子、基板等の支持体または被着体に対する接着フィルムの密着性を高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が使用できる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。シランカップリング剤の配合量は、適宜選択すればよいが、前記樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
【0050】
前記接着フィルムは、無機充填材を更に含んでも良い。これにより、接着フィルムの線膨張係数を低下することができ、それによって信頼性を向上することができる。
前記無機充填材としては、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ等を挙げることができるが、これらの中でもシリカが好ましい。また、シリカフィラーの形状としては、破砕シリカと球状シリカがあるが、球状シリカが好ましい。
【0051】
前記無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上、20μm以下が好ましく、0.1μm以上、5μm以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、接着フィルム内でフィラーの凝集を抑制し、外観を向上させることができる。
【0052】
前記無機充填材の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体に対して10〜60重量%が好ましく、特に20〜50重量%が好ましい。上記範囲とすることで、硬化後の接着フィルムと被接着物との間の線膨張係数差が小さくなり、熱衝撃の際に発生する応力を低減させることができるため、被接着物の剥離をさらに確実に抑制することができる。さらに、硬化後の接着フィルムの弾性率が高くなりすぎるのを抑制することができるため、半導体装置の信頼性が上昇する。
【0053】
上述したような各樹脂成分を、溶媒中に混合して得られたワニスをポリエステルシート等の剥離処理を施した基材上に塗布し、所定の温度で、実質的に溶媒を含まない程度にまで乾燥させることにより、接着フィルムを得ることができる。ここで用いられる溶媒は、使用される成分に対し不活性なものであれば特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK (ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノ
ン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DBE(ニ塩基酸エステル)、EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等が好適に用いられる。溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分が10〜60重量%となる範囲であることが好ましい。
【0054】
得られた接着フィルムの厚さは、特に限定されないが、1〜300μmであることが好ましく、特に5〜200μmであることが好ましい。厚さが前記範囲内であると、接合部の間隙に樹脂成分を十分に充填することができ、樹脂成分の硬化後の機械的接着強度を確
保することができる。
【0055】
このようにして得られた接着フィルムは、フラックス活性を有しているものである。したがって、半導体素子と基板、基板と基板、半導体素子と半導体素子、半導体ウエハと半導体ウエハ等の半田接続を必要とされる部材の接続において好適に用いることができるものである。
【0056】
次に、上述した接着フィルムを用いた多層回路基板、電子部品および半導体装置について説明する。
図1は、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図1に示すように、半田バンプ11を有する半導体素子1を用意する(図1(a))。この半導体素子1の半田バンプ11を覆うように、上述したフラックス機能を有する接着フィルム2をラミネートする(図1(b))。
【0057】
このフラックス機能を有する接着フィルム2を半導体素子1にラミネートする方法としては、例えばロールラミネーター、平板プレス、ウエハーラミネーター等が挙げられる。これらの中でもラミネート時に空気を巻き込まないようにするため、真空下でラミネートする方法(真空ラミネーター)が好ましい。
【0058】
また、ラミネートする条件としては、特に限定されず、ボイドなくラミネートできればよいが、具体的には60〜150℃×1秒〜120秒間が好ましく、特に80〜120℃×5〜60秒間が好ましい。ラミネート条件が前記範囲内であると、貼着性と、樹脂のはみ出しの抑制効果と、樹脂の硬化度とのバランスに優れる。
また、加圧条件も特に限定されないが、0.2〜2.0MPaが好ましく、特に0.5〜1.5MPaが好ましい。
【0059】
次に、上述した半導体素子1の半田バンプ11と対応する位置にパッド部(不図示)を有する基板3を用意し、半導体素子1と基板3とを位置合わせしながら、フラックス機能を有する接着フィルム2を介して仮圧着する(図1(c))。仮圧着する条件は、特に限定されないが、60〜150℃×1秒〜120秒間が好ましく、特に80〜120℃×5〜60秒間が好ましい。また、加圧条件も特に限定されないが、0.2〜2.0MPaが好ましく、特に0.5〜1.5MPaが好ましい。
【0060】
次に、半田バンプ11を溶融してパッドと半田接合する半田接続部111を形成する(図1(d))。
半田接続する条件は、使用する半田の種類にもよるが、例えばSn−Agの場合、220〜260℃×5〜500秒間加熱して半田接続することが好ましく、特に230〜240℃×10〜100秒間加熱することが好ましい。
この半田接合は、半田バンプ11が融解した後に、接着フィルム2が硬化するような条件で行うことが好ましい。すなわち、半田接合は、半田バンプ11を融解させるが、接着フィルム2の硬化反応があまり進行させないような条件で実施することが好ましい。これにより、半田接続する際の半田接続部の形状を接続信頼性に優れるような安定した形状とすることができる。
【0061】
次に、接着フィルム2を加熱して硬化させる。硬化させる条件は、特に限定されないが、130〜220℃×30〜500分間が好ましく、特に150〜200℃×60〜180分間が好ましい。
【0062】
このようにして、半導体素子1と基板3とが接着フィルム2の硬化物で接着された半導体装置10を得ることができる。半導体装置10は、上述したような接着フィルム2の硬
化物で接着されているので電気的接続信頼性に優れている。
また、同様の方法により、回路基板と、回路基板とを接着フィルム2の硬化物で接合して多層回路基板を得ることができる。
また、同様の方法により、半導体素子と半導体素子とを接着フィルム2の硬化物で接着されている電子部品を得ることができる。
また、同様の方法により、半導体素子と半導体素子とを接着フィルム2の硬化物で接着されている半導体装置を得ることができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
<接着フィルムの調製>
フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)15.0重量部と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−840S)45.0重量部と、フラックス活性化合物であるフェノールフタリン(東京化成工業社製)15.0重量部と、成膜性樹脂としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)24.4重量部と、硬化促進剤として2―フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.1重量部と、シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−303)0.5重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した。
【0064】
<接着フィルムの製造>
得られた樹脂ワニスを、基材ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)に厚さ50μmとなるように塗布して、100℃、5分間乾燥して、厚さ25μmのフラックス活性を有する接着フィルムを得た。
【0065】
<半導体装置の製造>
半田バンプを有する半導体素子(サイズ10mm×10mm、厚さ0.3mm)に、得られた接着フィルムを真空ロールラミネーターで、100℃でラミネートして、接着フィルム付きの半導体素子を得た。
次に、パッドを有する回路基板のパッドと、半田バンプとが当接するように位置あわせを行いながら回路基板に半導体素子を100℃、30秒間で仮圧着した。
次に、235℃、30秒間加熱して、半田バンプを溶融させて半田接続を行った。
そして、180℃、60分間加熱して、接着フィルムを硬化させて、半導体素子と、回路基板とが接着フィルムの硬化物で接着された半導体装置を得た。
【0066】
(実施例2)
樹脂ワニスの調製において、フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)15.0重量部を、フェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR−9305)15.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0067】
(実施例3)
樹脂ワニスの調製において、フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)15.0重量部を5.0重量部へ、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPPICLON−840S)45.0重量部を35.0重量部へ、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)24.4重量部を44.4重量部へ配合量を変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0068】
(実施例4)
樹脂ワニスの調製において、フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)15.0重量部を25.0重量部へ、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−840S)45.0重量部を50.0重量部へ、フェノールフタリン(東京化成工業社製)15.0重量部を10.0重量部へ、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)24.4重量部を14.4重量部へ配合量を変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0069】
(実施例5)
樹脂ワニスの調製において、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPPICLON−840S)45.0重量部を50.0重量部へ、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)24.4重量部を19.4重量部へ配合量を変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0070】
(実施例6)
樹脂ワニスの調製において、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−840S)45.0重量部を液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−830LVP)に変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0071】
(実施例7)
樹脂ワニスの調製において、フェノールフタリン(東京化成工業社製)15.0重量部を、セバシン酸(東京化成工業社製)15.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0072】
(実施例8)
樹脂ワニスの調製において、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)24.4重量部をビスフェノールF型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−70)に変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0073】
(比較例1)
樹脂ワニスの調製において、フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)15.0重量部を、フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業社製、LV70S)15.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に接着フィルムおよび半導体装置の製造を行った。
【0074】
各実施例および比較例の樹脂ワニスの調整で使用したフェノール系ノボラック樹脂の物性を表1に示す。
【0075】
【表1】

また、各実施例および比較例で得られた接着フィルム、半導体装置について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表2に示す。
【0076】
1.接着フィルム作業性
各実施例および比較例で得られた接着フィルムについて、25℃雰囲気下、4mm径の円柱に巻きつけ接着フィルムの接着層の割れ、欠けを確認した。
○:接着フィルムの接着層に割れ、欠けが全く発生しない。
×:接着フィルムの接着層の一部に割れ、欠けが発生している。
【0077】
2.接着フィルムタック性
各実施例および比較例で得られた接着フィルムについて、接着フィルムの接着層同士を25℃で重ね合わせ、0.1MPaで圧着し、接着フィルムの接着層が融合するかどうかを測定した。各符号は以下の通りである。
○:お互いの接着フィルムを剥がしたとき、接着フィルムの接着層表面がなめらかでつやがある場合
×:お互いの接着フィルムを剥がしたとき、表面にこまかい凹凸が生じたりつやが無くなった場合、また、接着層同士が融着して剥がすことができなかった場合
【0078】
3.イオンマイグレーション性
各実施例および比較例で得られた半導体装置について、130℃、85%RHの環境下で5Vの電圧を印加しながら、隣接バンプ間の絶縁抵抗値を連続測定し、イオンマイグレーションを評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:500時間後の絶縁抵抗値が1.0E+06以上であった。
○:100〜250時間で絶縁抵抗値が1.0E+06以下に低下した。
△:24時間〜100時間未満で絶縁抵抗値が1.0E+06以下に低下した。
×:0〜24時間未満で絶縁抵抗値が1.0E+06以下に低下した。
【0079】
4.接続信頼性
各実施例および比較例で得られた半導体装置それぞれ20個ずつについて、−55℃の条件下に30分、125℃の条件下に30分ずつ交互に晒すことを1サイクルとする、温度サイクル試験を100サイクル行い、試験後の半導体装置について、半導体素子と回路基板の接続抵抗値をデジタルマルチメーターで測定し、接続信頼性を評価した。各符号は、以下の通りである。
○:20個すべての半導体装置の接続抵抗値が10Ω以下であった。
×:1個以上の半導体装置の接続抵抗値が10Ω以上であった。
【0080】
【表2】

【符号の説明】
【0081】
1 半導体素子
2 接着フィルム
3 基板
10 半導体装置
11 半田バンプ
111 半田接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の第一の端子と、被着体の第二の端子を、半田を用いて電気的に接続し、該支持体と該被着体とを接着する接着フィルムであって、
(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂と、
(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂と、
(C)フラックス活性化合物と、
(D)成膜性樹脂と、
を含むことを特徴とする接着フィルム。
【請求項2】
前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂の含有量が、3〜30重量%である、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記(A)1核体から3核体の合計の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂の重量平均分子量が300〜1500である、請求項1または2に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂の1核体含有量が1%以下である、請求項1ないし3のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂中の2核体と3核体の合計の含有量が30〜70%である、請求項1ないし4のいずれかに記載の
接着フィルム。
【請求項6】
前記(A)1核体から3核体の含有量が、30〜70%であるフェノール系ノボラック樹脂が、フェノールノボラック樹脂および/又はクレゾールノボラック樹脂である、請求項1ないし5のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項7】
前記(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂の25℃における粘度が、500〜50,000mPa・sである、請求項1ないし6のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂の含有量が、10〜80重量%である、請求項1ないし7のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項9】
前記(B)25℃で液状であるエポキシ樹脂と、前記(C)フラックス活性化合物の配合比((B)/(C))が、0.5〜12.0である、請求項1ないし8のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項10】
前記(C)フラックス活性化合物が、1分子中に2個のフェノール性水酸基と、少なくとも1個の芳香族に直接結合したカルボキシル基とを含むフラックス活性化合物である、請求項1ないし9のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項11】
前記(C)フラックス活性化合物が、フェノールフタリンを含むものである、請求項1ないし10のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項12】
前記(D)成膜性樹脂が、フェノキシ樹脂を含むものである、請求項1ないし11のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項13】
さらに、硬化促進剤を含むものである、請求項1ないし12のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項14】
さらに、シランカップリング剤を含むものである、請求項1ないし13のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする多層回路基板。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【請求項17】
請求項1ないし14のいずれかに記載の接着フィルムの硬化物を有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−14717(P2011−14717A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157618(P2009−157618)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】