説明

接着剤組成物、回路接続材料、接続体及び半導体装置

【課題】 ラジカル硬化型接着剤でありながら、リペア性に十分優れる接着剤組成物、及びこれを用いた回路接続材料、接続体及び半導体装置を提供すること。
【解決手段】 (a)熱可塑性樹脂と、(b)2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤と、を含有する接着剤組成物であって、上記ラジカル重合性化合物が有する(メタ)アクリロイルオキシ基の一部又は全部が2級炭素又は3級炭素に直接結合している接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料、接続体及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に要求される特性は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に亘る。また、接着される被着体としては、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、Si、SiO等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられている。そのため、接着剤は、各被着体に合わせた分子設計が必要である。
【0003】
従来、半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、接着性に優れ、かつ高い信頼性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。上記接着剤の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は、接着剤の硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温(25℃)での貯蔵安定性及び加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられている。係る接着剤は、通常170〜250℃の温度で1〜3時間加熱することにより硬化し、これにより接着性が得られる。
【0004】
最近では、低温でかつ短時間での硬化が可能なラジカル硬化型接着剤が注目されている(例えば、特許文献2、3参照)。このラジカル硬化型接着剤は、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体(以後(メタ)アクリレート誘導体と呼ぶ)等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物から構成される。これらの構成材を最適化することで低温(100〜170℃)、短時間(1時間以内)の硬化で高い接着性と良好な信頼性が得られることが報告されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【特許文献3】国際公開第98/044067号パンフレット
【特許文献4】特開2002−285128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような接着剤を用いた半導体素子や液晶表示素子の一般的な実装方法において、実装を行う一方の回路基板上に上記接着剤を配置した後、相対向する回路基板を双方の電極が重なるように位置合わせし、加熱加圧することで接着剤を硬化させる。この時、回路電極が位置ずれし、素子の動作不良を発生することがある。この場合には、実装した回路基板を剥離し、電極上の接着剤残渣を有機溶剤で除去した後、再度接続する方法が取られている(以降リペアと呼ぶ)。
【0006】
しかしながら、接着剤としてラジカル硬化型接着剤を用いる場合、機械的に回路基板を剥離することは可能だが、電極上に残存した接着剤残渣を有機溶剤によって除去することが難しい傾向にある。そのため、接着剤のリペア性の向上が要求されている。
【0007】
そこで本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ラジカル硬化型の接着剤組成物でありながら、リペア性に十分優れる接着剤組成物、並びにこれを用いた回路接続材料、接続体及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)熱可塑性樹脂と、(b)2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物であって、上記ラジカル重合性化合物が有する(メタ)アクリロイルオキシ基の一部又は全部が2級炭素又は3級炭素に直接結合している接着剤組成物を提供する。
【0009】
この接着剤組成物は、上記(a)〜(c)を全て含有していることにより、ラジカル硬化型の接着剤組成物でありながら、リペア性に十分優れるものとなった。
【0010】
本発明の接着剤組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、ラジカル重合性化合物5〜250質量部及びラジカル重合開始剤0.05〜30質量部を含有していることが好ましい。本発明の接着剤組成物は、その構成材料を上記の範囲の配合割合とすることによって、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0011】
更に、本発明の接着剤組成物は、(d)リン酸基を有するビニル化合物を熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部含有することが好ましい。これにより、本発明の接着剤組成物は、リペア性に十分優れるとともに、より接着性を向上させることができる。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、導電性粒子を更に含有することが好ましい。このような接着剤組成物はそれ自体導電性を容易に有することができる。そのため、この接着剤組成物は、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることができるようになる。
【0013】
本発明は、上記接着剤組成物からなり、回路電極を有する回路部材同士を、それぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように接着するために用いられる回路接続材料を提供する。このような回路接続材料は、本発明の接着剤組成物を含有することから、リペア性に十分優れるものとなる。
【0014】
本発明は、対向配置された一対の回路部材と、上記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように当該回路部材同士を接着する接続部材とを備え、上記接続部材が、上述の回路接続材料の硬化物からなる接続体を提供する。これにより、本発明の接続体は、接続部材が本発明の回路接続材料の硬化物からなるため、十分なリペア性を有する。
【0015】
本発明は、基板及び該基板上に設けられた回路電極を有する半導体素子搭載用基板と、上記半導体素子搭載用基板に半導体素子接続部材を介して搭載され、上記回路電極と電気的に接続された半導体素子とを備え、上記半導体素子接続部材が、上述の接着剤組成物の硬化物からなる半導体装置を提供する。このような半導体装置は、良好な接着性を示しながらも、半導体素子接続部材が本発明の接着剤組成物からなるため、十分なリペア性を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ラジカル硬化型の接着剤組成物でありながら、リペア性に優れる接着剤組成物、並びにこれを用いた回路接続材料、接続体及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリロイルオキシ」とは、「アクリロイルオキシ」及びそれに対応する「メタクリロイルオキシ」を意味する。
【0018】
(接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性化合物と、(c)ラジカル重合開始剤とを含有するものであり、上記ラジカル重合性化合物が有する(メタ)アクリロイルオキシ基の一部又は全部が2級炭素又は3級炭素に直接結合している。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリアミド類、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリエステルウレタン類、ポリビニルブチラール類等を用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。更に、これらの樹脂は分子内にシロキサン結合やフッ素置換基が含んでいてもよい。これらは混合する樹脂同士が完全に相溶するか、又はミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
【0020】
上記熱可塑性樹脂の分子量は特に制限はないが、熱可塑性樹脂の分子量が大きいほどフィルムを容易に形成することができ、接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定することも可能となる。一般的な重量平均分子量としては、5000〜150000が好ましく、10000〜80000が特に好ましい。重量平均分子量が5000未満では、フィルム形成性が不十分となる傾向があり、重量平均分子量が150000を超えると、他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0021】
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)分析により下記条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することにより求められる。
(GPC条件)
使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所製、商品名)
検出器:L−3300RI((株)日立製作所製、商品名)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75ml/min
【0022】
ラジカル重合性化合物としては、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基の一部又は全部が2級炭素又は3級炭素に直接結合している化合物であれば、特に制限はなく公知のものを使用することができる。本明細書において、2級炭素とは、2個の炭素原子及び1個の水素原子と結合している炭素原子をいい、3級炭素とは、3個の炭素原子と結合している炭素原子をいう。(b)成分として用いるラジカル重合性化合物は、以下の一般式(A)、(B)又は(C)で表される基を有することが好ましい。
【化1】



【0023】
ここで、式(A)、(B)及び(C)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【0024】
上述のような基を有する化合物として、具体的には、以下の一般式(1)〜(21)で表されるラジカル重合性化合物が挙げられる。
【化2】



【0025】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは0〜20の整数を示し、mは1〜20の整数を示す。式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、n及びmはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、n及びmはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。
【化3】



【0026】
式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、n、m、j及びhはそれぞれ独立に1〜10の整数を示す。式(5)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、n、m及びjはそれぞれ独立に1〜10の整数を示し、aは0〜4の整数を示す。式(6)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、n、m及びjはそれぞれ独立に1〜10の整数を示す。
【化4】



【0027】
式(7)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜20の整数を示す。式(8)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びmはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。式(9)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びmはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。式(10)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n10及びm10はそれぞれ独立に1〜5の整数を示す。
【化5】



【0028】
式(11)、(12)及び(13)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。式(14)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【化6】



【0029】
(15)及び(16)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。(17)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。式(18)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは2価の有機基を示し、n18及びm18はそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。
【化7】



【0030】
式(19)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは2価の有機基を示し、n19及びm19はそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。式(20)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n20は1〜20の整数を示す。式(21)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n21及びm21はそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。
【0031】
(b)ラジカル重合性化合物の配合割合は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、5〜250質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物の配合割合が5質量部未満であると、十分なリペア性を得ることが困難となる傾向にあり、また、250質量部を超えると、フィルムとして使用する場合にフィルム形成性が不十分となる傾向がある。
【0032】
ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができる。具体的には、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、ジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ−(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
これらの中でも、安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ重量平均分子量が180〜1000の過酸化物が好ましい。
【0034】
(c)ラジカル重合開始剤の配合割合は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.05〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の配合割合が0.05質量部未満であると、接着剤組成物の硬化物が硬化不足となる傾向があり、また、30質量部を超えると、接着剤組成物の貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、本発明者らの知見によれば、接着性を向上する目的で、リン酸基を有するビニル化合物を含有することが好ましい。リン酸基を有するビニル化合物としては、特に制限なく公知のものを使用することができる。その具体例としては、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物が挙げられる。
【化8】



【0036】
式(I)中、Rはアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、p及びqはそれぞれ独立に1〜8の整数を示し、rは1又2の整数を示す。
【化9】



【0037】
式(II)中、Rはアクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を示し、s及びtはそれぞれ独立に1〜8の整数を示す。
【0038】
より具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
(d)リン酸基を有するビニル化合物の配合割合は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。上記リン酸基を有するビニル化合物の配合割合が0.1質量部未満であると、高い接着強度が得られにくい傾向があり、また、15質量部を超えると、接着剤組成物の硬化物のリペア性が低下する傾向にある。
【0040】
本発明の接着剤組成物は、導電性粒子を含有することが好ましい。導電性粒子を含有することによって、接着剤組成物に導電性を付与することができる。これにより、本発明の接着剤組成物は、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることが可能となる。
【0041】
本発明に用いる導電性粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有するものであれば特に制限されない。この導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu及びはんだ等の金属粒子、又はカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核の表面に上記金属、金属粒子又はカーボンを被覆したものであってもよい。後者は加熱加圧により変形性を有するので、回路接続材料として用いられたときに、電極との接触面積が増加し信頼性が向上するのでより好ましい。また、これらの導電性粒子の表面を、更に高分子樹脂等で被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した際に生じる粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性を向上させることができる。このような微粒子は、単独で又は他の導電性粒子と混合して用いてもよい。
【0042】
この導電性粒子の平均粒径は、分散性及び導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。導電性粒子の配合割合は、特に制限は受けないが、接着剤組成物100体積%に対して、0.1〜30体積%であることが好ましく、0.1〜10体積%であることがより好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性が得られない傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、導電性粒子の配合割合(体積%)は、23℃における接着剤組成物を硬化させる前の各成分の体積に基づいて決定される。各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算する方法や、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等の容器にその成分を投入し、増加した体積から算出する方法によって求めることができる。
【0043】
本発明の接着剤組成物は、上述した1つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基が2級炭素又は3級炭素に直接結合しているラジカル重合性化合物とともに、他のラジカル重合性化合物を併用することができる。このようなラジカル重合性化合物としては、スチレン誘導体やマレイミド誘導体のように、ラジカルによって重合する化合物であれば、特に制限は無く公知のものを使用することができる。
【0044】
具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等に代表されるオリゴマータイプの(メタ)アクリレートの他、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0045】
また、本発明の接着剤組成物は、単官能(メタ)アクリレート等の化合物を併用してもよい。これにより、接続時の接着剤組成物の流動性をより向上させることができる。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。なお、これらの化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
本発明の接着剤組成物には、この他にも使用目的に応じて別の材料を添加することができる。例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に加え、アリル基、マレイミド基、ビニル基等のラジカル重合可能な官能基を有する化合物を適宜添加してもよい。具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドアクリルアミドが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明の接着剤組成物には、カップリング剤及び密着性向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。これにより、更に良好な密着性や取扱い性を付与することができるようになる。具体的には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体が挙げられる。それらの中でも、下記一般式(IV)で表される化合物を添加することが好ましい。
【化10】



【0048】
式(IV)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、又はアリール基を示し、R14はアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基、グリシジル基、又はイミダゾリル基を示し、bは1〜10の整数を示す。
【0049】
なお、一般式(IV)で表される化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
接着剤組成物は、ゴムを含有してもよい。これにより、応力緩和及び接着性向上させることができる。具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
【0051】
上記ゴムは、接着性向上の観点から、極性が高い官能基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム系の材料であることが好ましく、さらに流動性向上の観点から、液状であることがより好ましい。具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量がこれらのゴム系材料全体の10〜60重量%であることが更に好ましい。なお、これらのゴム系材料は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
本発明の接着剤組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。このような安定化剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができる。具体的には、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体、4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が挙げられる。
【0053】
安定化剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましい。安定化剤の添加量が0.01質量部未満であると、添加効果が低下する傾向があり、また、30質量部を超えると、他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0054】
接着剤組成物は、常温(25℃)で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱してペースト化する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物と反応せず、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満であると、室温(25℃)で放置すると溶剤が揮発してしまうため、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0055】
接着剤組成物は、フィルム状にしてから用いることも可能である。このフィルム状接着剤は、接着剤組成物に必要により溶剤等を加えた混合液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、又は不織布等の基材に上記混合液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することによって得ることができる。このように接着剤組成物をフィルム状とすると、取扱性に優れ一層便利である。
【0056】
接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して被着体を接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜250℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。例えば、温度140〜200℃、圧力3MPaの条件下で、10秒間加熱及び加圧を行うことで接着剤組成物と被着体を接着させることが可能である。
【0057】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の回路接続材料として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィルム材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0058】
(接続体)
図1は、本発明に係る接続体の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す接続体1は相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを接続する接続部10が設けられている。
【0059】
第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、第1の回路基板21の主面21a上に形成された第1の回路電極22とを有する。第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成された第2の回路電極32とを有する。第1の回路基板21の主面21a上、および第2の回路基板31の主面31a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0060】
第1及び第2の回路基板21,31としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、TCP、FPC、COFに体表されるポリイミド基材、ポリカーボネート、ポリエステルスルホン等の有機物、これらの無機物や有機物を複合化した材料からなる基板が挙げられる。
【0061】
第1及び第2の回路部材20,30の具体例としては、液晶ディスプレイに用いられている、ITO等で回路電極が形成されたガラス基板又はプラスチック基板や、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらは必要に応じて組み合わせて使用される。
【0062】
接続部10は、導電性粒子を含有する上記接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物から形成されている。接続部10は、絶縁層11と、絶縁層11内に分散している導電性粒子7とから構成される。接続部10中の導電性粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21a,31a同士間にも配置されている。接続体1においては、導電性粒子7が第1及び第2の回路電極22,32の双方に直接接触している。これにより、第1及び第2の回路電極22,32が、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の接続抵抗が十分に低減される。従って、第1及び第2の回路電極22,32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。なお、接続部10が導電性粒子7を含有していない場合には、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが直接接触することで、電気的に接続される。
【0063】
接続部10は、後述するように上記接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1の回路部材20及び第2の回路部材30に対する接続部10の接着力が高いにもかかわらず、回路電極の位置ずれが生じた場合、十分にリペア可能である。
【0064】
(回路部材の接続方法)
図2は、本発明に係る回路部材の接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【0065】
本実施形態では、先ず、上述した第1の回路部材20と、フィルム状の回路接続材料40を用意する。回路接続材料40は、導電性粒子7を含有する上記接着剤組成物からなる。
【0066】
なお、導電性粒子7を含有しない接着剤組成物を回路接続材料として用いることもできる。この場合、回路接続材料はNCP(Non-Conductive Paste)と呼ばれることもある。導電性粒子7を含有する回路接続材料40は、ACP(AnisotropicConductivePaste)と呼ばれることもある。
【0067】
回路接続材料40の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。回路接続材料40の厚さが5μm未満では、第1及び第2の回路電極22,32間に回路接続材料40が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、第1及び第2の回路電極22,32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0068】
次に、回路接続材料40を第1の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。そして、回路接続材料40を、図2(a)の矢印A及びB方向に加圧し、回路接続材料40を第1の回路部材20に仮接続する(図2(b))。
【0069】
このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は回路接続材料40が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜190℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0070】
次いで、図2(c)に示すように、第2の回路部材30を、第2の回路電極32を第1の回路部材20の側に向けるようにして回路接続材料40上に載せる。なお、回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状回路接続材料40上に載せる。そして、回路接続材料40を加熱しながら、図2(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。
【0071】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0072】
回路接続材料40の加熱により、第1の回路電極22と第2の回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で回路接続材料40が硬化して、第1の回路部材20と第2の回路部材30とが接続部10を介して強固に接続される。
【0073】
回路接続材料40の硬化により接着部10が形成されて、図1に示すような接続体1が得られる。なお、接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。
【0074】
本実施形態によれば、得られる接続体1において、導電性粒子7を対向する第1及び第2の回路電極22,32の双方に接触させることが可能となり、第1及び第2の回路電極22,32間の接続抵抗を十分に低減することができる。そして、接続部10が上記接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1及び第2の回路部材20又は30に対する接続部10の接着力が高いにもかかわらず、回路電極の位置ずれが生じた場合、十分にリペアが可能である。
【0075】
(半導体装置)
図3は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図3に示すように、本実施形態の半導体装置2は、半導体素子50と、半導体の支持部材となる基板60及び基板60上に設けられた回路パターン61を有する半導体素子搭載用基板65を備えている。半導体素子50及び半導体素子搭載用基板65の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材80が設けられている。また、半導体素子接続部材80は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材80上に積層されている。
【0076】
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体接続部材80を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置2が形成される。
【0077】
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの4族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsPなどのIII-V族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTeなどのII-VI族化合物半導体素子、そして、CuInSe(ClS)などの種々のものを用いることができる。
【0078】
半導体素子接続部材80は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。本実施形態の半導体装置2においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0079】
なお、半導体素子接続部材80が導電性粒子7を含有していない場合には、半導体素子50と回路パターン61とを所望の量の電流が流れるように直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0080】
半導体素子接続部材80は、上記接着剤組成物を含む接着剤組成物の硬化物により構成されている。このことから、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材80の接着強度が十分に高いにもかかわらず、半導体素子50と回路パターン61との位置ずれが生じた場合、十分にリペアが可能である。
【0081】
次に、本発明の接着剤組成物を使用して相対向する回路基板を実装した素子のリペア方法について説明する。リペア方法の一例としては、以下のように行うことができる。まず、接着剤組成物が存在する実装部分をスポットヒーターやホットプレート等を用いて150〜250℃で3秒〜10分間加熱後、一方の回路基板を剥離する。次に、溶剤を染込ませた綿棒や竹串等を使用し、回路電極上及び回路間の接着剤残渣を擦りながら除去する。
【0082】
使用する溶剤としては、回路基板に悪影響を及ぼさないものであれば公知のものが使用できる。接着剤組成物の溶解性の観点から、溶解性パラメータ(SP値)が8〜15のものが好ましい。具体的には、シクロヘキサン(SP値:8.2)、トルエン(同:8.9)、酢酸エチル(同:9.1)、メチルエチルケトン(同:9.3)、アセトン(同:10.0)、メタノール(同:14.5)、エタノール(同:12.7)、プロパノール(同:11.5〜11.9)が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0083】
上記のように接着剤残渣を除去した後、再び本発明の接着剤組成物を使用して、回路電極を有する回路基板同士又は半導体素子が再接着可能となる。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
(ラジカル重合性化合物(RA−1)の合成)
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に窒素ガスを導入した後、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(東京化成製)10.00g(0.068モル)、トリエチルアミン(東京化成製)16.60g(0.164モル)及び4−ジメチルアミノピリジン(東京化成製)2.00g(0.016モル)をテトラヒドロフラン100gに反応容器内で溶解し、氷浴にて冷却した。そこへ、アクリロイルクロライド(東京化成製)14.85gをテトラヒドロフラン20gで希釈した溶液を30分間かけて滴下した。滴下後、氷冷しながら2時間撹拌し、室温(25℃)で更に5時間撹拌した。その後、反応系に析出した沈殿を濾別し、テトラヒドロフランを留去し粗成生物を得た。次に、この粗成生物にジエチルエーテル100gを加えて溶解し、蒸留水で2度、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で2度洗浄した後、ジエチルエーテルを留去し、オイル状の生成物7.78gを得た(収率45%)。得られた生成物の同定は、H−NMR及び13C−NMRで行い、2つのアクリロイルオキシ基が3級炭素に直接結合したラジカル重合性化合物(RA−1)であることを確認した。
【0087】
(熱可塑性樹脂の準備)
フェノキシ樹脂(重量平均分子量45000、ユニオンカーバイト社製、商品名:PKHC)40質量部を、メチルエチルケトン60質量部に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を調整した。また、ポリブチレンアジペートジオール(重量平均分子量2000)450質量部とポリオキシテトラメチレングリコール(重量平均分子量2000)450質量部及び1,4−ブチレングリコール100質量部をメチルエチルケトン4000質量部に溶解し、ジフェニルメタンジイソシアネート390質量部を加え、70℃で反応させてウレタン樹脂を得た。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量をGPCで測定したところ、15万であった。
【0088】
(ラジカル重合性化合物の準備)
RA−1:上述のとおり合成したラジカル重合性化合物、RA−2:プロピレングリコール変性ジアクリレート(新中村化学工業株式会社、商品名:APG−400)、RA−3:ビスフェノールAのプロピレングリコール変性ジアクリレート(共栄社株式会社製、商品名:ライトアクリレートBP−4PA)、RA−4:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業株式会社、商品名:A−HD)、RA−5:ビスフェノールAのエチレングリコール変性ジアクリレート(共栄社株式会社製、商品名:ライトアクリレートBP−4EA、)、多官能ウレタンアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名:ヒタロイド4861)及び2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(共栄社株式会社製、商品名:ライトエステルP−2M)を準備した。
【0089】
(ラジカル重合開始剤の準備)
t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製、商品名:パーヘキシルO)を準備した。
【0090】
(導電性粒子の作製)
ポリスチレン粒子の表面上に、厚み0.2μmのニッケルからなる層を設け、更にこのニッケルからなる層の表面上に、厚み0.02μmの金からなる層を設けた。こうして平均粒径4μm及び比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0091】
(実施例1)
上記フェノキシ樹脂溶液87.5質量部(フェノキシ樹脂を35質量部含有)に、上記ウレタン樹脂を固形分で15質量部、ラジカル重合性化合物として、RA−1を5質量部、ヒタロイド4861を45質量部及びライトエステルP−2Mを5質量部、ラジカル重合開始剤としてパーヘキシルOを3質量部配合した。得られた溶液に上述の導電性粒子を配合分散させて、接着剤組成物の溶液を得た。導電性粒子の配合割合は、接着剤組成物の全量に対して1.5体積%であった。
【0092】
次いで、得られた接着剤組成物の溶液を、厚さ80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布して塗膜を得た。次にその塗膜を70℃で10分間熱風乾燥を行うことにより、厚さが15μmのフィルム状回路接続材料を得た。
【0093】
(実施例2)
ラジカル重合性化合物として、RA−1を5質量部配合することに代えてRA−2を5質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材料を得た。
【0094】
(実施例3)
ラジカル重合性化合物として、RA−1を5質量部、ヒタロイド4861を45質量部配合することに代えてRA−3を10質量部、ヒタロイド4861を40質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材料を得た。
【0095】
(比較例1)
ラジカル重合性化合物として、RA−1を5質量部、ヒタロイド4861を45質量部配合することに代えて、RA−1を配合せず、ヒタロイド4861を50質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材料を得た。
【0096】
(比較例2)
ラジカル重合性化合物として、RA−1を5質量部配合することに代えてRA−4を5質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材料を得た。
【0097】
(比較例3)
ラジカル重合性化合物として、RA−1を5質量部、ヒタロイド4861を45質量部配合することに代えてRA−5を10質量部、ヒタロイド4861を40質量部配合した以外は実施例1と同様にして、フィルム状回路接続材料を得た。
【0098】
上記実施例及び比較例で得られた接着剤組成物の各成分の配合比を、表1に示す。
【0099】
【表1】



【0100】
(接続体の作製)
上記実施例及び比較例で得られたフィルム状回路接続材料を30mm×1.5mmに切り出し、ライン幅25μm、ピッチ50μm及び厚み8μmの銅回路配線を500本有するフレキシブル回路板(FPC基板)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス基板(ITO基板、厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)を準備した。次に、上記FPC基板とITO基板との間に、上述のようにして得られたフィルム状回路接続材料を配置した。そして、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、温度160℃、圧力3MPaの条件下、それらの積層方向に10秒間の加熱加圧を行い、接続体を作製した。
【0101】
(接続抵抗の測定)
得られた接続体の回路間の接続抵抗をマルチメータ(アドバンテスト社製、商品名:TR6848)で測定した。なお、抵抗値は隣接する回路間の抵抗37点の平均で示した。得られた結果を表2に示す。
【0102】
(接着強度の測定)
得られた接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置はテンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃、東洋ボールドウィン株式会社製)を使用した。得られた結果を表2に示す。
【0103】
(リペア性の評価)
得られた接続体のFPC基板裏面を下にしてホットプレートにて200℃、10秒間加熱した後、FPC基板を剥離した。そして、アセトンを染み込ませた綿棒を用い、ITO基板に付着した接着剤残渣を擦って、完全に除去するのに要した時間(リペア時間)を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0104】
【表2】



【0105】
実施例及び比較例で得られたフィルム状回路接続材料は、いずれも良好な接続抵抗と接着強度を示した。一方、リペア性については、実施例で得られたフィルム状回路接続材料を用いた場合、45〜67秒でリペアが完了した。比較例で得られたフィルム状回路接続材料を用いた場合、300秒以上綿棒で擦っても、完全に接着剤組成物の硬化物を除去することができなかった。以上の結果から、本発明の接着剤組成物を用いることで、良好なリペア性を付与できることが明らかになった。本発明によれば、リペア性に十分優れる接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る接続体の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る回路部材接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【図3】本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0107】
1…接続体、2…半導体装置、5…接着剤組成物、7…導電性粒子、10…接続部、11…絶縁層、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、21a…第1の回路基板主面、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、31a…第2の回路基板主面、32…第2の回路電極、40…回路接続材料、50…半導体素子、60…基板、60a…基板主面、61…回路パターン、65…半導体素子搭載用基板、70…封止材、80…半導体素子接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂と、
(b)2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性化合物と、
(c)ラジカル重合開始剤と、
を含有する接着剤組成物であって、
前記ラジカル重合性化合物が有する(メタ)アクリロイルオキシ基の一部又は全部が、2級炭素又は3級炭素に直接結合している接着剤組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記ラジカル重合性化合物5〜250質量部及び前記ラジカル重合開始剤0.05〜30質量部を含有する、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
(d)リン酸基を有するビニル化合物を、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部含有する、請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
導電性粒子を更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなり、回路電極を有する回路部材同士を、それぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように接着するために用いられる回路接続材料。
【請求項6】
対向配置された一対の回路部材と、
前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように当該回路部材同士を接着する接続部材と、
を備え、
前記接続部材が、請求項5に記載の回路接続材料の硬化物からなる、接続体。
【請求項7】
基板及び該基板上に設けられた回路電極を有する半導体素子搭載用基板と、
前記半導体素子搭載用基板に半導体素子接続部材を介して搭載され、前記回路電極と電気的に接続された半導体素子と、
を備え、
前記半導体素子接続部材が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物からなる、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−297579(P2007−297579A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178590(P2006−178590)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】