説明

接続構造体

【課題】フレキシブル配線板等の接続信頼性を維持しつつ、薄型化,小型化が可能な接続構造体を提供する。
【解決手段】接続構造体は、リジッド基板10上に配線11が形成されたリジッドプリント配線板と、フレキシブル基板20上に配線21が形成されたフレキシブルプリント配線板と、貫通電極36を有する異方導電性シート30とを備えている。リジッド基板10には、支持部12と、支持部12の軸16の回りに回動可能に取り付けられたロック部15とが接着剤等により連結されている。ロック部15を軸16の回りに回動させて、フレキシブルプリント配線板をリジッドプリント配線板に押圧すると、異方導電性シート30の貫通電極36がリジッド基板10上の配線11に接触した状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の各種電気機器に用いられる配線同士、特にフレキシブル配線板を他の配線板に接続するための接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特に携帯電話等の小型軽量電気機器には、フィルム状配線体、いわゆるフレキシブル配線板が配置されることが多い。フレキシブル配線板は、携帯電話などの開閉機構や回転機構を有する機器中の電気的接続を行うために、極めて便利なものであることから、近年使用頻度が高まっている。フレキシブル配線板は、可撓性に富む反面、剛体構造のリジッド配線板とは異なり、コネクタの挿入口に挿入する際の挿入力を大きくすることは困難である。そこで、フレキシブル配線板を他の配線板に接続する接続構造体(コネクタ)として、無挿入力コネクタ(ZIF:Zero Interpose Force)が汎用されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
図4(a),(b)は、一般的なZIF構造のコネクタの構造を示す平面図、および側面図である。同図に示すように、リジッドプリント配線板において、配線101が形成された剛体構造のリジッド基板100の上にZIFコネクタ110が配置されている。フレキシブルプリント配線板においては、フレキシブル基板200の上に配線201が形成されている。ZIFコネクタ110には、配線101に各々接続される金属ワイヤ状の複数の接触子103が設けられている。接触子103は、側方から見てコ字状に設けられおり、そのうち上側先端部は、鈎状となっている。接続を行う際には、フレキシブルプリント配線板は、ZIFコネクタ110の接触子103のコ字状開口部に、ほとんど無挿入力で挿入される。そして、接触子103と配線201とを接触させた状態でロック部105を軸106の回りに回動させて、接触子103の鈎状の上側先端部をフレキシブル基板200に食い込ませるように押圧することで、配線同士の接続が完了する。ロック部105は、その先端部が最下方まで移動したときにZIFコネクタ110の側方に延びる両腕部によって係止される。
【0004】
上記ZIFコネクタ110の作動により、フレキシブル基板200上の配線201と、マザーボードであるリジッド基板100上の配線101とが電気的に接続された状態となる。そして、接触子103とフレキシブル基板200上の配線201との接続状態が保持されるように、フレキシブルプリント配線板が把持された状態になる。特許文献1,2には、ロック部105や接触子103の各種構造が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公平6−65090号公報
【特許文献2】特公平7−24230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、最近のように、携帯電話等の各種電気機器類の小型化の進展に伴い、ZIFコネクタの薄型化,小型化が求められると、上記ZIFコネクタ110における電気的な接続の信頼性を維持することが困難となってきている。
【0007】
すなわち、ワイヤ状の接触子103や、接触子103を支持する部分の厚みや幅寸法を、形状を設定状態に保つための機械的強度を保ちつつ、低減すること自体に限界がある。
【0008】
また、ZIFコネクタ110や接触子103などの厚みや幅寸法を低減すると、上記ZIFコネクタ110の接触子103によるフレキシブルプリント配線板の把持力を十分高く維持することが困難である。反面、この把持力を十分高く維持して接続の信頼性を確保しようとすると、ZIFコネクタ100の薄型化,小型化が困難である。たとえば、配線101,201の幅が0.1mm程度で、挟ピッチ化によって配線間の隙間が0.1mm程度になると、接触子103の幅もそれに対応させる必要が生じるが、その場合には、把持力が弱くなって、フレキシブルプリント配線板が非常に外れやすい。
【0009】
上述のような不具合は、フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板との接続だけでなく、フレキシブルプリント配線板同士の接続においても生じており、かつ、各種フレキシブル配線板についても生じうる。
【0010】
本発明の目的は、フレキシブル配線板と他の配線板との電気的接続を保持するための接続構造体として、薄型化,小型化が可能で、かつ、接続の信頼性を維持することが可能な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の接続構造体は、フレキシブル配線板等である2つの配線体の間に、貫通電極を有する板状の中間部材を挟んで、2つの配線基板同士を押圧する構造としたものである。
【0012】
これにより、従来のZIFコネクタに存在していた,配線の数に対応した数の金属ワイヤからなる接触子が不要になり、かつ、ZIFコネクタにおける,接触子を支持する部分も不要になる。そして、板状の中間部材の各貫通電極の寸法を低減しても、接続構造体の形状を維持するための強度に悪影響を与えることはほとんどない。したがって、各部の機械的強度を高く保ちつつ、接続構造体全体の厚みや幅寸法を低減することが可能であり、薄型化,小型化の進展に対応することができる。
【0013】
中間部材が弾性体であることにより、中間部材を押圧したときの中間部材の弾性変形によって、第1の配線体および第2の配線体の各配線の凹凸などによる接触不良を防止することができる。また、配線体に対する把持力も向上する。したがって、接続の信頼性を確保することができる。
【0014】
中間部材が、複数の微細孔を有する多孔質樹脂を基材とし、貫通電極が基材の各微細孔内を含む内壁部に形成されている構造を採ることにより、中間部材の弾性を保持しつつ、貫通電極における導通不良の発生を抑制することができ、接続の信頼性をより高めることができる。
【0015】
本発明の接続構造体は、第1の配線体および第2の配線体のうち、少なくともいずれか一方がフレキシブル配線板である場合に、特に効果がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接続構造体によると、従来のZIFコネクタのようなワイヤ状の接触子ではなく、貫通電極を有する板状の中間部材を用いる構造としたので、薄型化,小型化の進展に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
−接続構造体全体の構造−
図1(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る接続構造体の接続前、および接続後の構造を示す断面図である。図1(a)に示すように、接続構造体は、リジッド基板10上に配線11が形成された第1の配線体であるリジッドプリント配線板と、フレキシブル基板20上に配線21が形成された第2の配線体であるフレキシブルプリント配線板と、貫通電極36を有する中間部材である異方導電性シート30とを備えている。また、リジッド基板10には、支持部12と、支持部12の軸16の回りに回動可能に取り付けられたロック部15とが接着剤等により連結されている。図1(a)に示す状態では、異方導電性シート30はフレキシブル基板20に接着剤等によって固着されており、貫通電極36と配線21とが接触している。図1(a),(b)には図示されていないが、支持部12には、図4(a)に示す構造と同様に、側方に延びる両腕部が設けられている。
【0018】
リジッド基板10としては、ガラスエポキシ板に限らず、紙フェノール板,紙エポキシ板,フッ素樹脂板,アルミナ板等が用いられる。配線11の材料としては、銅合金を用いるのが一般的であるが、これに限定されるものではない。フレキシブル基板20としては、ポリイミド板に限らず、ポリエステル板(低温使用),ガラスエポキシ板(薄板)等が用いられる。配線21の材料としては、銅合金を用いるのが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
そして、図1(b)に示すように、フレキシブルプリント配線板と異方導電性シート30とをリジッド基板上の所定の位置に設置した状態で、ロック部15を軸16の回りに回動させて、フレキシブルプリント配線板をリジッドプリント配線板に押圧すると、異方導電性シート30の貫通電極36がリジッド基板10上の配線11に接触した状態となる。ロック部15の先端部は、最下方位置において、図4(a)に示す構造と同様に、支持部12の側方に延びる両腕部に係止される。また、周知慣用の手段により、ロック部15の係止は、解除可能に設けられている。
【0020】
上述の動作からわかるように、支持アーム12,軸16およびロック部15により、中間部材である異方導電性シート30(中間部材)を挟んでフレキシブルプリント配線板(第2の配線体)をリジッドプリント配線板(第1の配線体)に押圧する押圧手段が構成されている。なお、図1(a)に示す状態で、中間部材である異方導電性シート30は、フレキシブル基板20に接着されている必要はなく、自由な状態であってもよいし、リジッド基板10に接着されていてもよい。
【0021】
図2は、リジッド基板10上の配線11と、フレキシブル基板20上の配線21とを重ね合わせたときの両者の位置と、貫通電極36の位置との関係を概念的に示す平面図である。本実施形態では、異方導電性シート30は、フレキシブルプリント配線板の各種規格に対して汎用できる構造としている。基本的には、図2に示す状態とは異なり、配線11,12の幅方向において、1個または数個の貫通電極36が存在していればよく、配線間の隙間には貫通電極36が存在している必要はない。ただし、1つの貫通電極36に、同じ配線基板上の配線11(または21)が複数本接触することは、短絡を生じるので、避ける必要がある。
【0022】
また、図2に示すように、平面視において、貫通電極36の存在領域と配線11,21の存在領域とは、オーバーラップしていればよく、配線11,21の幅方向において、貫通電極36が配線11,21内に包含されている必要はない。また、配線間の隙間に貫通電極36が存在していても問題はない。各配線11,21ごとに、貫通電極36との接触が確保されていれば、配線11と配線12とは、短絡することなく電気的に接続される。また、各配線11,21について、少なくとも1つの貫通電極36によって電気的に接続されていればよい。
【0023】
さらに、貫通電極36の径を配線11,21の幅に比べて大幅に小さくして、各配線11,21ごとに、多数の貫通電極36によって接続される構造を採用してもよい。後述するように、異方導電性シートの場合、貫通孔の径は、10μm(0.01mm)以下まで、ピッチが25μm(0.025mm)以下まで、十分にファインピッチ化することができる。したがって、配線幅が0.1mm以下で、配線同士の間隔が0.1mm以下にファインピッチ化されていっても、十分な余裕を持って対応することがきる。
【0024】
以上のことからわかるように、本実施の形態における貫通電極36を有する異方導電シート30を中間部材として用いることにより、異方導電性シート36中の貫通電極36の形成パターンは一律にしておいて、各種配線基板同士の接続構造体に汎用することができる。また、このような接続構造体を用いると、貫通電極36の配置を工夫することにより、配線11と配線21との位置が多少ずれても、短絡を回避しつつ、配線11−配線21間の電気的接続を確保することは容易である。
【0025】
−異方導電性シートの構造−
図3(a)〜(e)は、異方導線性シートの製造工程を示す断面図である。以下、図3(a)〜(e)を参照しつつ、異方導電性シートの製造工程について説明する。
【0026】
図3(a)に示す工程では、多孔質PTFE膜であるフレーム板30aを準備する。一般に、合成樹脂を用いて多孔質膜を作製する方法としては、造孔法、相分離法、溶媒抽出法、延伸法、レーザ照射法などが挙げられる。合成樹脂を用いて多孔質膜を形成することにより、板厚方向に弾性を持たせることができるとともに、誘電率をさらに下げることができる。特に、延伸法により得られた多孔質膜(本実施の形態では多孔質PTFE膜)は、耐熱性、加工性、機械的特性、誘電特性などに優れ、しかも均一な孔径分布を有する多孔質膜が得られ易いため、異方導電性シートの基材には最適の材料である。
【0027】
本実施の形態の多孔質PTFE膜は、例えば、特公昭42−13560号公報に記載の方法により製造することができる。まず、PTFEの未焼結粉末に液体潤滑剤を混合し、ラム押し出しによってチューブ状または板状に押し出す。厚みの薄いシートが所望な場合は、圧延ロールによって板状体の圧延を行う。押出圧延工程の後、必要に応じて、押出品または圧延品から液体潤滑剤を除去する。こうして得られた押出品または圧延品を少なくとも一軸方向に延伸すると、未焼結の多孔質PTFEが膜状で得られる。未焼結の多孔質PTFE膜は、収縮が起こらないように固定しながら、PTFEの融点である327℃以上の温度に加熱して、延伸した構造を焼結・固定すると、強度の高い多孔質PTFE膜が得られる。多孔質PTFE膜がチューブ状である場合には、チューブを切り開くことにより、平らな膜にすることができる。
【0028】
次に、図3(b)に示す工程では、延伸法により得られた多孔質PTFE膜であるフレーム板30aの両面に、マスク膜31,32を融着させて3層構成の積層体33を形成し、積層体33全体に貫通孔35を形成する(破線参照)。マスク膜31,32は、フレーム板30aと同じ材質のPTFE膜、好ましくは多孔質PTFE膜を用いる。このとき、たとえば、積層された3枚の多孔質PTFE膜の両面を2枚のステンレス板で挟み、各ステンレス板を高温に加熱することにより、3層の多孔質PTFE膜を互いに融着させることができる。
【0029】
一般に、合成樹脂の特定位置の膜厚方向に貫通孔を形成する方法としては、例えば、化学エッチング法、熱分解法、レーザ光や軟X線照射によるアブレーション法、超音波法などが挙げられる。延伸法による多孔質PTFE膜からなる積層体33については、シンクロトロン放射光または波長250nm以下のレーザ光を照射する方法、及び超音波法が好ましい。レーザ方法による貫通孔35の径は、一般的には、5〜100μm程度である。本実施の形態では、貫通孔35の径は数十μmである。
【0030】
超音波法により貫通孔35を形成する方法についての説明は省略するが、特開2004−265844号公報(段落[0042]〜[0051]参照)に開示されている通りである。貫通孔35の断面形状は、円形、星型、八角形、六角形、四角形、三角形など任意である。また、ドリルなどを用いた機械加工によって、貫通孔35を形成してもよい。
【0031】
次に、図3(c)に示す工程では、積層体33のコンディショニング、水洗、プレディップを経て、触媒の付与を施す。コンディショニングの目的は、撥水性を有するPTFEの表面にできるだけ親水性を持たせること、および後の工程における触媒(Pd)の付着を容易化することにある。多孔質PTFE膜に対しては、コンディショナーとして、エタノール等のアルコールや、界面活性剤などを含む溶液を用い、コンディショナーを多孔質構造中の各繊維まで浸透させる。
【0032】
そして、プレディップ工程の終了後に、積層体33を、Pdを含む触媒液(たとえば塩化スズ−塩化パラジウムコロイド液)に浸して、積層体33を構成するPTFEの各繊維の表面にPd化合物からなるコロイド粒子を付着させて、貫通孔35の内壁部などの表面領域に、各繊維表面にコロイド粒子が付着してなるコロイド粒子付着領域34を形成する。コロイド粒子付着領域34において、コロイド粒子は連続した層になることは少なく、島状の層となっていることが多い。このとき、各マスク膜31,32の露出している部分の表面領域(図3(c)に示すハッチング領域)にもコロイド粒子付着領域34が形成されることになる。なお、プレディップ工程を省略しても、本発明の効果を発揮することはできる。
【0033】
次に、図3(d)に示す工程で、フレーム板30aの両面からマスク膜31,32をはがす。このとき、フレーム板30aの両面にはコロイド粒子形成領域34は形成されていない。一方、フレーム板30aの側端部もコロイド粒子付着領域34が形成されているが、この部分に形成されているコロイド粒子付着領域34は、この工程の終了後、または無電解めっきの終了後に適宜除去される。
【0034】
次に、図3(e)に示す工程で、無電解めっきを行なって、貫通電極36を形成するが、その前に、希塩酸、希硫酸等を用いて、Pd化合物からなるコロイド粒子付着領域34中のPdを活性化する処理を行う。これにより、活性化された触媒粒子が形成される。この触媒粒子は、Pd化合物(たとえばパラジウム−塩化スズ)と、Pd単体とを含んでいるのが一般的であり、すべてのコロイド粒子がPd単体に変化していなくても、Pdが表面に露出していれば、無電解めっきの触媒としての機能は発揮することができる。その後、フレーム板30aの表面に付着している処理液を水洗により洗い落とす。
【0035】
無電解めっき工程では、硫酸銅などの銅イオンを含む溶液と、ホルムアルデヒドなどの還元剤とを用いた無電解Cuめっきにより、硫酸銅溶液などから触媒粒子の周囲にCuを析出させる。析出したCuも触媒活性を有しているので、めっき時間に応じた厚みのCu層が形成されることになる。Cuの無電解めっきが終了すると、水洗をしてから、次工程に進む。
【0036】
次に、Cu層の表面に触媒を付着させるために、再びフレーム板30aを触媒液に浸漬する。ここでは、触媒液として塩化パラジウム溶液を用いる。プレディップやコンディショニングを行なわず、かつ、触媒液が塩化スズを含んでいないので、Cu層で覆われていない,PTFEが露出している部分には、触媒粒子はほとんど付着しない。その後、水洗を行なって、表面に残留する触媒液を除去する。
【0037】
次に、硫酸ニッケル等のNiイオンを含む溶液と、ホスフィン酸イオンを含む還元剤とを用いた無電解Niめっき(実際にはNi−P合金めっき)により、Cu層上にNi合金層(実際にはNi−P合金層)を堆積する。その後、水洗を行う。
【0038】
その後、置換金めっきにより、Au層を形成する。電気化学的に貴な金属(Au)のイオンを含む溶液に、電気化学的に卑な金属(Ni)を浸すと、卑な金属の溶解で放出される電子によって貴な金属イオンが還元され、貴な金属(Au)の被膜が卑な金属(Ni)表面上に析出する。以上の工程により、触媒粒子,Cu層,Ni−P合金層およびAu層からなる貫通電極36を形成する。なお、置換めっきの後、自己触媒型の無電解めっきによりAu層を形成してもよい。その後、水洗、アルコール置換を経て乾燥することにより、無電解めっき工程を終了する。
【0039】
上記異方導電性シート30の製造工程においては、フレーム板30aを両面からマスク膜31,32で挟んで、積層体33を形成してから、貫通孔の形成、触媒液への浸漬を行なったが、積層体33は必ずしも形成する必要はない。たとえば、フレーム板単独で、貫通孔の形成、触媒付与、活性化処理、無電解めっきなど、図3(c)−(e)に示す工程を施してもよい。その場合、フレーム板の板面にも無電解めっき層が形成されるが、研磨などによって除去すればよい。ただし、本実施の形態のように、積層体33に貫通孔35を形成することにより、高精度の貫通孔35が得られる。また、余分な無電解めっき層を形成しないことで、製造コストも削減することができる。
【0040】
以上の工程によって形成された異方導電性シート30は、貫通孔35の内壁部に形成された導通部となる貫通電極36とを備えている。これにより、板厚方向に導電性を有し板面方向には導通性がないという、異方導電性機能が付与される。導通部となる各貫通電極36間の電気的短絡を防ぐために、フレーム板30aは絶縁体であることが必要である。本実施の形態では、異方導電性シート30に弾性と高強度とを併せてもたせるために、フレーム板30aを多孔質膜の合成樹脂によって構成している。
【0041】
本実施の形態の多孔質膜のフレーム板30aを構成する合成樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、ポリふっ化ビニリデン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)などのフッ素樹脂;ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、液晶ポリマー(LCP)などのエンジニアリングプラスチック、などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、誘電特性などを総合的に考慮すると、PTFEが優れた特性を有している。したがって、本実施の形態においては、フレーム板30aとして、多孔質PTFE膜(多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜)を用いている。本実施の形態においては、後述するように、延伸法により得られた多孔質PTFE膜を用いているので、フレーム板30aは、それぞれPTFEにより形成された非常に細い繊維(フィブリル)と該繊維によって互いに連結された結節(ノード)とからなる微細繊維状組織(多孔質構造)を有している。
【0042】
本実施の形態においては、フレーム板30aとして使用する多孔質PTFE膜は、気孔率が20〜80%程度であることが好ましい。多孔質PTFE膜は、微細孔の平均孔径が10μm以下あるいはバブルポイントが2kPa以上であることが好ましく、導通部のファインピッチ化の観点からは、平均孔径が1μm以下あるいはバブルポイントが10kPa以上であることがより好ましい。多孔質PTFE膜の膜厚は、使用目的や使用箇所に応じて適宜選択することができるが、通常、0.05〜3mmである。
【0043】
貫通電極36は、貫通孔35の内壁面および微細孔内を含む内壁部に、管厚が0.2〜5μmの多層金属めっき層(無電解めっき層)を有している。つまり、無電解めっきの際に、内壁面から微細孔内に侵入した触媒粒子や金属によって、多孔質PTFE膜の繊維も含まれる表面領域に貫通電極36が形成されている。本実施の形態では、貫通電極36は、繊維の表面に付着した触媒粒子を核として堆積したCu層,Ni合金層(Ni−P合金層)およびAu層によって構成されている。ただし、Cu層は、必ずしもなくてもよい。
【0044】
上述のように、無電解めっきの際、触媒粒子は貫通孔35の内壁面だけでなく多孔質PTFE膜の微細孔から内部に侵入して繊維の表面に付着するので、多層金属めっき層も、多孔質PTFE膜の微細孔から内部に浸透して堆積されている。すなわち、貫通電極36には、多層金属めっき層だけでなく多孔質PTFE膜の繊維も混在していることになる。この貫通電極36は、多孔質構造の樹脂部の表面に付着して形成されているため、貫通電極36自体も多孔質としての特性を有している。そして、異方導電性シート30の板厚方向に圧縮荷重を加えることにより、各貫通電極36間の絶縁性を維持しつつ、異方導電性シート30の板厚方向のみに導電性が付与される(異方導電性)。また、圧縮荷重を除去すると、貫通電極36を含む異方導電性シート30全体が弾性回復するので、本実施の形態の異方導電性シート30は、繰り返して使用することができる。
【0045】
貫通電極36の管厚は、所定の圧縮量(30μm程度)を加えた時に導通部である貫通電極36の抵抗値が0.1Ω以下になるようにすることが好ましい。なお、圧縮量は、通常、フレーム板30aの厚さの1/4程度に設定することが好ましく、本実施の形態においては、厚さ約120μmのフレーム板30aを用いているために、圧縮量を30μmとしている。ただし、異方導電性シート30のタイプや搭載される機器の種類によって抵抗値の上限は異なっているので、接触度合いにばらつきのある各貫通電極36の抵抗値が、いずれも所望の抵抗値以下に収まる圧縮量であればよい。
【0046】
本実施の形態によると、従来採用されていたZIFコネクタの金属ワイヤからなる接触子に代えて、板状の異方導電性シート30(中間部材)を介して、リジッド基板10およびフレキシブル基板20上の配線11,21間の電気的接続を行うようにしたので、薄型化,小型化に容易に対応することができる。すなわち、接触子を支持する部分が不要となり、板状の異方導電性シート30の厚み,貫通電極36の径,間隔などの寸法は、0.1mm以下まで小さくしても十分高い強度が得られる。そして、図1(b)に示すように、ロック部15でフレキシブルプリント配線板を押圧する際に、広い面積でフレキシブルプリント配線板を押圧することができるので、摩擦力によってフレキシブルプリント配線板に対する把持力を大きく確保することができる。
【0047】
特に、本実施の形態では、異方導電性シート30のように、弾性体である多孔質PTFEを異方導電性シート30の基材として用いているので、ロック部15によって異方導電性シート30を押圧することにより、配線11と配線21との表面に凹凸があっても、異方導電性シート30の弾性変形によって、配線11と貫通電極36との間の接触、および配線21と貫通電極36との間の接触を確保することができる。したがって、接触不良を確実に抑制することができる。また、異方導電性シート30の弾性変形によって、フレキシブルプリント配線板に対する把持力も向上する。したがって、接続構造体による電気的接続の信頼性がさらに向上する。
【0048】
また、多孔質樹脂の中でも、特に多孔質PTFEは、強度や耐熱性が大きく、繰り返し加重による弾性の劣化もほとんどないことから、長期間使用しても弾性の劣化による把持力の低下防止することができる。
【0049】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、中間部材として、多孔質PTFE膜からなるフレーム板30aの貫通孔35の内壁部に、触媒粒子と無電解めっき層とを形成してなる異方導電性シート30を用いたが、本発明の中間部材は、このような異方導電性シート30に限定されるものではない。たとえば、多孔質ではない汎用樹脂からなる板に貫通孔を形成して、無電解めっきなどにより、貫通電極を設けたものでもよい。
【0050】
一方、中間部材を構成する樹脂が弾性を有していることにより、フレキシブル基板20を把持する把持力を高めることができるが、金属からなる貫通電極36の弾性は小さい。そこで、中間部材を構成する樹脂が多孔質であることにより、貫通電極36も多孔質になるので、貫通電極36全体としてはバネのような弾性を有することになる。よって、中間部材の基材樹脂として、多孔質樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
多孔質樹脂の中でも多孔質PTFEは、上述のように、長期間の使用における信頼性が高いが、反面高価であることから、コストを低減する目的で、他の安価な多孔質樹脂を用いることも可能である。
【0052】
上記実施の形態では、第1の配線体としてリジッドプリント配線板(略称PCB)を用い、第2の配線体としてフレキシブルプリント配線板(略称FPC)を用いた例について説明したが、本発明の第1の配線体は、リジッドプリント配線板12に限らず、フレキシブルプリント配線板であってもよい。また、フレキシブル配線板であっても、フレキシブルフラットケーブル(FFC)と呼ばれるものがあり、これら各種配線基板同士の接続に用いることができる。ただし、一方は、フレキシブル配線板であることが望ましい。リジッド配線基板同士の電気的接続を行う場合には、本発明よりも簡素な構造を採りうるからである。
【0053】
上記実施の形態では、支持部12,ロック部15および軸16により、2つの配線体を互いに押圧する押圧手段を構成したが、本発明の押圧手段はこの構造に限定されるものではない。押圧手段の構成には、周知慣用の手段として、極めて多数のバリエーションがあり、いずれの構成を採用してもよい。
【0054】
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、携帯電話などの電気機器に搭載されるフレキシブル配線板と他の配線板との配線間の電気接続を行うコネクタとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る接続構造体の接続前、および接続後の構造を示す断面図である。
【図2】リジッド基板上の配線と、フレキシブル基板上の配線とを重ね合わせたときの両者の位置と、貫通電極の位置との関係を概念的に示す平面図である。
【図3】(a)〜(e)は、実施の形態に係る異方導電性シートの製造工程を示す断面図である。
【図4】(a),(b)は、一般的なZIF構造のコネクタの構造を示す平面図、および側面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 リジッド基板
11 配線
12 支持部
15 ロック部
16 軸
20 フレキシブル基板
21 配線
30 異方導電性シート
30a フレーム板
31 マスク膜
32 マスク膜
35 貫通孔
36 貫通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線が形成された第1の配線体と、
第2の配線が形成された第2の配線体と、
前記第1の配線体と前記第2の配線体との間に介在する板状の中間部材と、
前記中間部材を挟んで前記第2の配線体と第1の配線体とを互いに押圧する押圧手段とを備え、
前記中間部材は、前記第1の配線と前記第2の配線とに接続される貫通電極を有している、接続構造体。
【請求項2】
請求項1記載の接続構造体において、
前記中間部材は弾性体である、接続構造体。
【請求項3】
請求項1または2記載の接続構造体において、
前記中間部材は、
複数の微細孔を有する多孔質樹脂を基材としており、
前記貫通電極は、前記基材の前記各微細孔内を含む内壁部に形成されている、接続構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の接続構造体において、
前記第1の配線体および第2の配線体のうち、少なくともいずれか一方はフレキシブル配線板である、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−98258(P2008−98258A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275896(P2006−275896)
【出願日】平成18年10月9日(2006.10.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】