説明

搬送手段の高さ移動量設定方法

【課題】支持テーブル上のワークを搬送する際の搬送手段の高さ移動量を自動的に設定すること。
【解決手段】ワークを支持する支持テーブルと、支持テーブル上のワークを吸引保持する吸引パッドを備える搬送手段とを備える研削装置1において、吸引パッドに発生した負圧の値を読み取りながら吸引パッドを降下させ(S1:降下工程)、負圧の値があらかじめ設定したしきい値を超えた際にその吸引パッドの高さ位置を記録し(S5:記録工程)、その吸引パッドの高さ位置に基づいて支持テーブルに支持されたワークを搬送手段が搬出する際の吸引パッドの高さ移動量を設定する(S6:設定工程)ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送手段の高さ移動量設定方法に関し、特に、支持テーブル上のワークを搬送する際の搬送手段の高さ移動量を自動的に設定することができる搬送手段の高さ移動量設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、半導体ウェーハなどのワーク(被加工物)の表面にIC,LSIなどのデバイスを形成した後、研削装置によって裏面を研削することによりワークを所定の厚みに加工している。このような研削装置には、ワーク着脱域と研削加工域に沿って回転可能に配設されたターンテーブルと、このターンテーブルに配設され順次研削加工域に移動される複数個のチャックテーブルと、研削加工域に位置付けられたチャックテーブル上に保持されたワークを研削する研削ホイールと、が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、支持テーブル上に吸引保持されたワークを回転させ、撮像手段でこのワークのエッジを順次撮像することによって、チャックテーブルにワークを搬入する前にワークの位置や向きを検出する機構を備えた研削装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−086048号公報
【特許文献2】特開2010−147134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研削装置において、チャックテーブルにワークを搬入するためには、搬送手段の高さ移動量を適切に設定したうえで、支持テーブル上に置かれたワークを搬送手段によって搬出する必要がある。しかしながら、使用するワークの板厚の変更や、搬送手段や検出手段などの部品の交換を目的とするメンテナンスのたびに搬送手段の高さ移動量の設定が必要となり作業が煩雑であった。また、搬送手段の高さ移動量を作業者の目視によって設定した場合、人為的なミスによって装置やワークが破損する事態が生じていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、支持テーブル上のワークを搬送する際の搬送手段の高さ移動量を自動的に設定することができる搬送手段の高さ移動量設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送手段の高さ移動量設定方法は、ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記ワークを研削加工する加工手段と、前記ワークを支持する支持テーブルを有し、前記保持手段に前記ワークを搬入する前に前記ワークの位置を検出する検出手段と、前記支持テーブルに支持された前記ワークを吸引保持する吸引パッドと、前記吸引パッドを鉛直方向に移動させる移動部と、前記吸引パッドに負圧を作用させる吸引部と、前記吸引パッドに作用させる負圧を検出する圧力計と、を有する搬送手段と、を有する研削装置において、前記支持テーブルに支持された前記ワークを前記搬送手段が搬出する際の前記吸引パッドの高さ移動量を設定する設定方法であって、前記吸引パッドを前記支持テーブル上に位置付ける位置付け工程と、前記吸引パッドに負圧を発生させる負圧発生工程と、前記位置付け工程と前記負圧発生工程との後に前記吸引パッドに発生した負圧の値を読み取りながら前記吸引パッドを降下させる降下工程と、前記降下工程の最中に、前記吸引パッドが前記支持テーブルに支持されたワークまたは前記支持テーブルに接近することによって前記吸引パッドに発生した負圧があらかじめ設定した閾値を超えた際の前記吸引パッドの高さ位置を記録する記録工程と、前記記録工程で記録した前記吸引パッドの高さ位置に基づいて前記支持テーブルに支持された前記ワークを前記搬送手段が搬出する際の前記吸引パッドの高さ移動量を設定する設定工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記搬送手段の高さ移動量設定方法によれば、吸引パッドに発生した負圧の値を読み取りながら吸引パッドを降下させ、負圧の値があらかじめ設定した閾値を超えた際にその吸引パッドの高さ位置を記録する。そして、その吸引パッドの高さ位置に基づいて支持テーブルに支持されたワークを搬送手段が搬出する際の吸引パッドの高さ移動量を設定する。これにより、支持テーブル上のワークを搬送する際の搬送手段の高さ移動量を自動的に設定することができる。この結果、搬送手段等の部品の交換を目的とするメンテナンスのたびに搬送手段の高さ移動量を設定するという煩雑な作業を省略できる。また、このような設定作業における作業者の人為的なミスに起因して研削装置やワークが破損する事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持テーブル上のワークを搬送する際の搬送手段の高さ移動量を自動的に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る研削装置の外観斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る研削装置の搬出手段の構成の説明図である。
【図3】上記実施の形態に係る研削装置の吸引パッドの高さ移動量の設定方法を示すフローチャートである。
【図4】上記実施の形態に係る研削装置の吸引パッドと、支持テーブルに支持されたワークとの位置関係を示す説明図である。
【図5】上記実施の形態に係る研削装置の吸引パッドと、支持テーブルに支持されたワークとの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る研削装置1の外観斜視図である。図2は、本実施の形態に係る研削装置1が有する搬送手段の構成の説明図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す左下方側を研削装置1の前方側と呼び、同図に示す右上方側を研削装置1の後方側と呼ぶものとする。さらに、図1に示す上下方向を研削装置1の上下方向と呼ぶものとする。
【0012】
図1に示すように、研削装置1は、裏面側を上向きにしたワークWが保持されたチャックテーブル3と研削ユニット(加工手段)4の研削ホイール59とを相対回転させることによって、ワークWの裏面を研削するように構成されている。ワークWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された図示しない分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインによって区画された各領域には、IC,LSIなどのデバイスが形成されている。
【0013】
また、ワークWの裏面加工時にデバイスを保護するため、ワークWの表面には保護テープが貼着されている。ワークWの外周縁部には、一部をフラットに切り欠いて、結晶方位を示すオリエンテーションフラット71が形成されている。このように構成されたワークWは、搬入側のカセット6に収容された状態で研削装置1に搬入される。
【0014】
ワークWは、特に限定されないが、例えば、シリコン(Si),ガリウムヒソ(GaAs),シリコンカーバイト(SiC)などの半導体ウェーハや、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:Total Thickness Variation)が要求される各種加工材料が挙げられる。なお、ここでいう平坦度とは、ワークの被研削面を基準面として厚み方向を測定した高さのうち、最大値と最小値との差を示している。
【0015】
研削装置1は、略直方体状の基台2を有し、基台2にはカセット6,7が載置される一対のカセット載置部11,12が前面8から前方に突出するように設けられている。カセット載置部11は、搬入口として機能し、加工前のワークWが収容された搬入側のカセット6が載置される。カセット載置部12は、搬出口として機能し、加工後のワークWが収容される搬出側のカセット7が載置される。
【0016】
基台2の上面には、カセット載置部11,12に面して、カセット6,7に対してワークWの搬入および搬出を行う搬入搬出アーム13が設けられている。搬入搬出アーム13の一方側には、加工前のワークWの中心位置およびオリエンテーションフラット71を検出する検出手段としてのワーク位置検出部14が設けられている。また、搬入搬出アーム13の他方側には、加工済みのワークWを洗浄する洗浄部15が設けられている。
【0017】
ワーク位置検出部14と洗浄部15との間には、保持手段としてのチャックテーブル3に加工前のワークWを供給する搬送手段としてのワーク供給部16と、チャックテーブル3から加工済みのワークWを回収するワーク回収部17が設けられている。また、基台2の上面には、ワーク供給部16およびワーク回収部17に隣接して、前後方向に延在する矩形状の開口部21が形成され、開口部21の後方に研削ユニット4を支持する支柱部22が立接されている。また、基台2の内部には、研削装置1を統括制御する制御部23が設けられている。
【0018】
開口部21は、チャックテーブル3とともに移動可能な移動板24および蛇腹状の防水カバー25により被覆されている。防水カバー25の下方には、チャックテーブル3を前後方向に移動させる図示しないボールねじ式の移動機構が設けられている。チャックテーブル3は、移動機構により、ワーク供給部16およびワーク回収部17にワークWが載置される移載位置と、研削ユニット4による加工位置との間を前後方向に往復移動可能に構成されている。
【0019】
搬入搬出アーム13は、上下方向に移動可能な図示しない支持台と、支持台上に設けられた多節リンク機構31と、多節リンク機構31の先端に設けられ、ワークWを保持する保持部32と、を備えている。支持台は、図示しないZ軸モータにより上下に移動し、保持部32の高さ方向の位置合わせを行う。多節リンク機構31は、3節リンク機構で構成され、保持部32を水平方向に移動可能としている。保持部32は、略U字状に形成され、各分岐部分の上面には、それぞれワークWを吸着するための図示しない吸着部が設けられている。各吸着部は、基台2内に配置された図示しない吸着源に接続されている。搬入搬出アーム13は、制御部23により駆動制御されている。搬入搬出アーム13は、搬入側のカセット6内からワークWを吸着保持して取り出し、ワーク位置検出部14に搬入する。また、搬入搬出アーム13は、洗浄部15からワークWを吸着保持して搬出し、搬出側のカセット7内に収容する。
【0020】
ワーク位置検出部14は、搬入搬出アーム13によりワークWが載置される支持テーブル35と、支持テーブル35に載置されたワークWを撮像する撮像部36と、を備えている。支持テーブル35は、ワークWよりも小径の円板状に形成されており、基台2の内部に設けられた図示しない回転部により所定の角度間隔で断続的に回転される。撮像部36は、L字状の支持アーム66を介して支持テーブル35の上方に支持され、撮像範囲をワークWの外周縁部に位置付けている。撮像部36は、支持テーブル35の断続的な回転に合わせてワークWの外周縁部を逐次撮像する。撮像部36の撮像結果は、制御部23に出力されてワークWの中心位置およびオリエンテーションフラット71の形成位置の算出処理に用いられる。このような構成により、支持テーブル35上のワークWの位置ズレおよびワークWの向きが検出される。
【0021】
図2に示すように、ワーク供給部16は、上下方向に延在する移動部としての回動軸41と、回動軸41の上端に支持された旋回アーム42と、旋回アーム42の先端に設けられたワークWを吸引保持する吸引パッド43と、吸引パッド43に作用させる負圧を検出する圧力計64と、吸引パッド43に負圧を作用させる吸引部65と、を備えている。吸引部65が作動すると、回動軸41および旋回アーム42を通る吸引通路を通して吸引パッド43の下面である吸引保持面43aに負圧が発生する。回動軸41は、上下および前後移動可能、かつ、回動可能に構成されている。吸引パッド43は、回動軸41の前後移動および回動により水平面内における位置調整がなされ、回動軸41の上下移動により高さ方向における位置調整がなされる。
【0022】
また、ワーク供給部16は、制御部23により駆動制御されており、制御部23により回動軸41の上下方向の移動量、前後方向の移動量、回動量が調整される。そして、ワーク供給部16は、制御部23に制御されて、支持テーブル35からワークWを吸引保持して持ち上げ、チャックテーブル3に供給する。このとき、制御部23は、支持テーブル35に対するワークWの位置ズレ量を考慮しつつ、回動軸41の前後方向の移動量及び回動量を調整する。よって、ワークWの中心は、チャックテーブル3の中心に一致するように位置合わせされる。
【0023】
ワーク回収部17は、前後移動しない点を除いてはワーク供給部16と略同一に構成されている。ワーク回収部17は、制御部23に制御されて、チャックテーブル3からワークWを吸引保持して回収し、洗浄部15の洗浄テーブル51に載置する。このとき、チャックテーブル3の中心および洗浄テーブル51の中心がワーク回収部17の旋回軌跡上に位置するため、ワークWの中心が洗浄テーブル51の中心に位置合わせされる。
【0024】
洗浄テーブル51は、ワークWよりも小径な円板状に形成されている。洗浄テーブル51は、加工済みのワークWが載置されると、開口部52を介して基台2内に下降する。そこで洗浄テーブル51が高速回転し、図示しない洗浄ノズルよりワークWに向かって洗浄水が噴射されることによって、ワークWに洗浄処理が施される。その後、洗浄水の噴射が停止され、高速回転する洗浄テーブル51上でワークWに乾燥処理が施される。
【0025】
チャックテーブル3は、円板状に形成されており、上面にワークWを吸着保持する吸着面27を有している。吸着面27は、例えば、ポーラスセラミック材により形成されており、基台2内に配置された図示しない吸引源に接続されている。また、吸着面27は、ワークWの外形形状に沿ってオリエンテーションフラット71に対応する部分を切り欠いた形状を有している。このオリエンテーションフラット71に対応する部分の向きによりチャックテーブル3の向きが規定される。
【0026】
チャックテーブル3は、図示しない回転駆動機構に接続され、回転駆動機構により起点可能に構成されている。回転駆動機構は、制御部23により制御されて、チャックテーブル3の駆動量を調節する。チャックテーブル3は、ワーク供給部16によるワークWの載置時に、回転駆動機構により回転駆動されてワークWの向きに対して吸着面27の向きを合わせている。このとき、制御部23は、上記したオリエンテーションフラット71の形成位置に基づいて、チャックテーブル3の駆動量を調節する。このため、チャックテーブル3の吸着面27の外形形状は、ワークWの外形形状に一致するように形成されている。
【0027】
支柱部22の前面には、研削ユニット4を上下方向に移動させる研削ユニット移動機構54が設けられている。研削ユニット移動機構54は、上下方向に延在する互いに平行な一対のガイドレール55と、一対のガイドレール55にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル56と、を備えている。Z軸テーブル56の背面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールねじ57が螺合されている。ボールねじ57の一端には駆動モータ58が連結され、駆動モータ58によりボールねじ57が回転駆動される。
【0028】
Z軸テーブル56の前面には、支持部53を介して研削ユニット4が支持されている。研削ユニット4は、図示しないスピンドルの下端に着脱自在に装着された研削ホイール59を有している。研削ホイール59は、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンドなどの結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成されている。そして、研削ユニット4は、図示しないノズルから研削液を噴射しつつ、チャックテーブル3上のワークWを研削加工する。
【0029】
制御部23は、ワーク位置検出部14による検出処理のほか、ワーク供給部16によるワークWの位置合わせ処理、チャックテーブル3によるワークWに対する向き合わせ処理などの各処理を実行する。また、制御部23は、研削装置1の稼働前のメンテナンス時には、搬入搬出アーム13による搬入動作の調整処理を実行する。なお、制御部23は、各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)などの1つまたは複数の記憶媒体で構成される。また、メモリには、各処理の制御プログラム等が記憶されている。
【0030】
このように構成された研削装置1では、ワーク位置検出部14の支持テーブル35に支持されたワークWを、ワーク供給部16の吸引パッド43によって吸引保持して持ち上げ、チャックテーブル3に供給する。このように、ワークWを支持テーブル35から搬出する際には、ワーク供給部16の吸引パッド43によってワークWを吸引保持するために、吸引パッド43を上下方向に移動させ、吸引パッド43の吸引保持面43aをワークWの上面に密着させるか、あるいは吸引保持可能な距離まで接近させる必要がある。吸引パッド43の高さ移動量が適切に設定できていないと、吸引パッド43の吸引保持面43aがワークWの上面に密着せずに、あるいは吸引保持可能な距離まで接近せずに、吸引パッド43による吸引力が不足してワークWを支持テーブル35から落下させ、ワークWを破損させてしまうおそれがある。また、吸引パッド43の高さ移動量が適切に設定できていないと、吸引パッド43が支持テーブル35上のワークWや支持テーブル35に接触し、研削装置1を破損させてしまうおそれがある。そこで、本実施の形態に係る研削装置1は、ワーク供給部16における吸引パッド43の高さ移動量を以下のように設定する。
【0031】
図3は、ワーク位置検出部14の支持テーブル35に支持されたワークWを、ワーク供給部16の吸引パッド43によって搬出する際の、吸引パッド43の高さ移動量の設定方法を示すフローチャートである。図4は、ワーク供給部16の吸引パッド43と、支持テーブル35に支持されたワークWとの位置関係を示す説明図である。
【0032】
搬入搬出アーム13によりワークWがワーク位置検出部14の支持テーブル35に載置されると、ステップS1において、制御部23は、ワーク供給部16の回動軸41を作動して、吸引パッド43を所定位置に位置付ける位置付け工程を実施する。この位置付け工程においては、図4(a)に示すように、吸引パッド43を支持テーブル35の上方の待機位置に位置付ける。
【0033】
次に、ステップS2において、制御部23は、ワーク供給部16の吸引部65を作動して、吸引パッド43に負圧を発生させる負圧発生工程を実施する。
【0034】
次に、ステップS3において、制御部23は、ワーク供給部16の回動軸41を作動して、吸引パッド43を支持テーブル35に支持されたワークWに徐々に接近させる降下工程を実施する。このとき、ワーク供給部16の圧力計64によって吸引パッド43に発生した負圧の値を読み取りながら降下工程を実施する。この降下工程における吸引パッド43の降下速度は、通常の量産時における降下速度よりも低速とする。
【0035】
次に、ステップS4において、制御部23は吸引パッド43に発生する負圧を検出する
圧力計64からの検出信号に基づいて、圧力計64の検出圧力(P1)が、設定された所定の設定圧力(P0)以下か否かをチェックする。ステップS4において、圧力計64からの検出圧力(P1)が設定圧力(P0)以下でない場合には、制御部23は吸引パッド43の吸引保持面43aがワークWの上面に密着していない、あるいは吸引保持可能な距離まで接近していないと判断し、ステップS3に戻って、ステップS3およびステップS4を繰り返し実行する。
【0036】
一方、ステップS4において、圧力計64からの検出圧力(P1)が設定圧力(P0)以下である場合には、制御部23は、吸引パッド43が保持位置に達したためワークWが吸引パッド43に確実に吸引保持されたものと判断し、ステップS5に進んで吸引パッド43の降下を停止する。このとき、図4(b)に示すように、吸引パッド43の吸引保持面43aはワークWの上面に密着しているか、あるいは吸引保持可能な距離まで接近している。
【0037】
なお、ステップS4おいて、検出圧力(P1)と設定圧力(P0)との関係を検出するためには、吸引パッド43の面積と等しい面積のワークWか、あるいは吸引パッド43の面積よりも大きい面積のワークWを用いる必要がある。
【0038】
次に、ステップS5において、圧力計64からの検出圧力(P1)が設定圧力(P0)以下となった時点の、すなわち、吸引パッド43に発生した負圧があらかじめ設定したしきい値を超えた時点の吸引パッド43の高さ位置を記録する記録工程を実施する。
【0039】
最後に、ステップS6において、記録工程で記録した吸引パッド43の高さ位置に基づいて、支持テーブル35に支持されたワークWをワーク供給部16が搬出する際の吸引パッド43の高さ移動量を設定する設定工程を実施する。ここで、支持テーブル35に支持されたワークWをワーク供給部16が搬出する際の吸引パッド43の高さ移動量は、図4(a)に示す吸引パッド43の待機位置の高さと、図4(b)に示す吸引パッド43の保持位置の高さから算出できる。このような一連の工程を経て、研削装置1においては、吸引パッド43の高さ移動量が設定される。
【0040】
なお、上記設定方法の説明においては、吸引パッド43が支持テーブル35に支持されたワークWに接近する場合について説明したが、吸引パッド43が支持テーブル35に接近する構成とすることもできる。この場合は、ステップS4において、検出圧力(P1)と設定圧力(P0)との関係を検出するために、吸引パッド43の面積と等しい面積の支持テーブル35か、あるいは吸引パッド43の面積よりも大きい面積の支持テーブル35を用いる必要がある。
【0041】
続いて、上記設定方法によりワークWを支持テーブル35から搬出する際の吸引パッド43の高さ移動量の設定後における、量産時のワーク供給部16の動作について説明する。図5は、ワーク供給部16の吸引パッド43と、支持テーブル35に支持されたワークWとの位置関係を示す説明図である。量産時においても、図5に示すように、まず吸引パッド43を支持テーブル35の上方の待機位置に位置付ける。
【0042】
この後、吸引パッド43を設定した高さ移動量分だけ降下させるが、このとき、所定の位置(図5に示す距離d1分)までは高速で吸引パッド43を降下させ、所定の位置に達した後は保持位置に達する(図5に示す距離d2分)までは低速で吸引パッド43を降下させる。このように吸引パッド43の降下速度を設定することで、量産時における生産性を上げるとともに、吸引パッド43の接触によるワークWや研削装置1の破損を防止することができる。
【0043】
ここで、量産時における距離d1分を降下する際の吸引パッド43の降下速度は、例えば、設定時における吸引パッド43の降下速度、並びに、量産時における距離d2を降下する際の吸引パッド43の降下速度よりも高速とする。また、設定時における吸引パッド43の降下速度と、量産時における距離d2を降下する際の吸引パッド43の降下速度は、ほぼ等しい速度とする。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る研削装置1においては、吸引パッド43に発生した負圧の値を読み取りながら吸引パッド43を降下させ、負圧の値があらかじめ設定した閾値を超えた際にその吸引パッド43の高さ位置を記録する。そして、その吸引パッド43の高さ位置に基づいて支持テーブル35に支持されたワークWを搬送手段としてのワーク供給部16が搬出する際の吸引パッド43の高さ移動量を設定する。これにより、支持テーブル35上のワークWを搬送する際の搬送手段としてのワーク供給部16の高さ移動量を自動的に設定することができる。この結果、搬送手段等の部品の交換を目的とするメンテナンスのたびに搬送手段の高さ移動量を設定するという煩雑な作業を省略できる。また、このような設定作業における作業者の人為的なミスに起因して研削装置やワークが破損する事態を防止することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0046】
例えば、上記実施の形態においては、ワーク位置検出部14は、撮像部36の撮像によってワークWの中心位置を検出する構成としたが、この構成に限定されるものではない。ワーク位置検出部14は、ワークWの中心位置を検出可能であれば、どのような構成でもよい。また、ワーク位置検出部14が、ワークWの中心位置とオリエンテーションフラット71の形成位置(ワークWの向き)を検出する構成としたが、この構成に限定されるものではない。ワーク位置検出部14が、ワークWの中心位置または向きのいずれか一方のみを検出する構成としてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態においては、ワーク供給部16が上下および前後移動可能、かつ、回動動作可能な構成としたが、この構成に限定されるものではない。ワーク供給部16は、支持テーブル35からチャックテーブル3に対してワークWを供給可能であればよく、例えば、回動操作のみで支持テーブル35からチャックテーブル3に対してワークWを供給する構成としてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、搬入搬出アーム13が3節リンク機構の駆動によってワークWの搬入搬出動作を行う構成としたが、この構成に限定されるものではない。搬入搬出アーム13は、少なくとも搬入用のカセット6と支持テーブル35との間でワークWを移載可能な構成であればよく、例えば、3節以上の多節リンク機構によりワークWの搬入搬出動作を行う構成としてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態においては、保持手段がチャックテーブル3で構成されたが、この構成に限定されるものではない。保持手段は、ワークWを保持可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0050】
また、上記実施の形態においては、ワークWの向きを規定する異形状部としてオリエンテーションフラット71を例示して説明したが、この構成に限定されるものではない。ワークWの外周縁部においてワークWの向きを特定可能なものであればよく、オリエンテーションフラット71のかわりにノッチとする構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、支持テーブル上のワークを搬送する際の搬送手段の高さ移動量を自動的に設定できるという効果を有し、特に、研削装置などの加工装置においてワーク変更後やメンテナンス後の搬送手段の高さ移動量を設定する際に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 研削装置
2 基台
3 チャックテーブル
4 研削ユニット
6,7 カセット
11,12 カセット載置部
13 搬入搬出アーム
14 ワーク位置検出部
15 洗浄部
16 ワーク供給部
17 ワーク回収部
21 開口部
22 支柱部
23 制御部
24 移動板
25 防水カバー
27 吸着面
31 多節リンク機構
32 保持部
35 支持テーブル
36 撮像部
41 回動軸
42 旋回アーム
43 吸引パッド
43a 吸引保持面
51 洗浄テーブル
52 開口部
53 支持部
54 研削ユニット移動機構
55 ガイドレール
57 ボールねじ
58 駆動モータ
59 研削ホイール
64 圧力計
65 吸引部
66 支持アーム
71 オリエンテーションフラット
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記ワークを研削加工する加工手段と、
前記ワークを支持する支持テーブルを有し、前記保持手段に前記ワークを搬入する前に前記ワークの位置を検出する検出手段と、
前記支持テーブルに支持された前記ワークを吸引保持する吸引パッドと、前記吸引パッドを鉛直方向に移動させる移動部と、前記吸引パッドに負圧を作用させる吸引部と、前記吸引パッドに作用させる負圧を検出する圧力計と、を有する搬送手段と、を有する研削装置において、
前記支持テーブルに支持された前記ワークを前記搬送手段が搬出する際の前記吸引パッドの高さ移動量を設定する設定方法であって、
前記吸引パッドを前記支持テーブル上に位置付ける位置付け工程と、
前記吸引パッドに負圧を発生させる負圧発生工程と、
前記位置付け工程と前記負圧発生工程との後に前記吸引パッドに発生した負圧の値を読み取りながら前記吸引パッドを降下させる降下工程と、
前記降下工程の最中に、前記吸引パッドが前記支持テーブルに支持されたワークまたは前記支持テーブルに接近することによって前記吸引パッドに発生した負圧があらかじめ設定した閾値を超えた際の前記吸引パッドの高さ位置を記録する記録工程と、
前記記録工程で記録した前記吸引パッドの高さ位置に基づいて前記支持テーブルに支持された前記ワークを前記搬送手段が搬出する際の前記吸引パッドの高さ移動量を設定する設定工程と、
を含むことを特徴とする搬送手段の高さ移動量設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−71376(P2012−71376A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217110(P2010−217110)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】