説明

搬送装置

【課題】クリーンプロセスにおける真空雰囲気下で熱の影響に耐えうる板状ワークの搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置A1は、固定ベース1と、固定ベース1に対して旋回可能に保持された旋回ベース2と、この旋回ベース2に対して揺動可能に支持されたリンクアーム機構3と、リンクアーム機構3に支持されたハンド4とを備え、旋回ベース2およびリンクアーム機構3の動作に伴いハンド4でワークを水平に保持しながら搬送するものである。旋回ベース2と固定ベース1との間には、気密シール23Aが設けられているとともに、固定ベース1および旋回ベース2には、冷媒循環路が設けられており、この冷媒循環路の一部は、気密シール23Aの近傍に配置されている一方、冷媒循環路は、固定ベース1と旋回ベース2との境界に形成した環状空間110A,210Aを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば加熱された基板を真空雰囲気下において搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱された基板を真空雰囲気下において搬送するための搬送装置としては、たとえば日本国特開2005−186259号公報に開示されたものがある。この搬送装置は、旋回ベース上に一対のリンクアーム機構が設けられ、これらリンクアーム機構の各先端部に基板等の板状ワークを水平に保持可能なハンドが設けられたものである。固定ベース上で旋回ベースが鉛直軸周りに旋回すると、それに伴って一対のリンクアーム機構が旋回させられ、リンクアーム機構が揺動すると、ハンドに保持された板状ワークが水平面内で直線的に移動させられる。これにより、板状ワークが所定位置から他の位置へと搬送させられる。
【0003】
他の搬送装置としては、たとえば日本国特開2005−125479号公報に開示されたものがある。この搬送装置の旋回ベースには、リンクアーム機構が揺動する際にハンドを支持しながら所定の方向に移動案内するためのガイドレールが固定されている。この構成によれば、板状ワークを保持したハンドをより安定した姿勢で直線的に移動させることができる。
【0004】
しかしながら、従来の搬送装置では、クリーンプロセスにおける真空雰囲気下で板状ワークを搬送したり、加熱された板状ワークを搬送する場合、雰囲気条件や熱的条件の面で過酷な使用環境に耐えることができないおそれがあった。
【0005】
たとえば、大気圧雰囲気下に固定ベースを設置した状態で旋回ベースを真空状態に保たれた空間に配置し、雰囲気条件として真空雰囲気下で板状ワークを搬送する場合、旋回ベースの周部に気密性を保持するための真空シールが設けられる。しかし、その板状ワークがたとえば200℃前後まで加熱されている場合には、真空シールが板状ワークからの熱を受けるため、真空シールの機能が低下して気密性が損なわれるおそれがある。
【0006】
また、リンクアーム機構が上記のような200℃前後の熱を受けると、変形するおそれがあり、これによって搬送精度を確保することが困難になる問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開2005−186259号公報
【特許文献2】特開2005−125479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記した問題を解消あるいは少なくとも低減しうる搬送装置を提供することにある。
【0009】
本発明により提供される搬送装置は、固定ベースと、この固定ベースに対して旋回可能に保持された旋回ベースと、この旋回ベースに対して揺動可能に支持されたリンクアーム機構と、このリンクアーム機構に支持されたハンドとを備え、上記旋回ベースおよびリンクアーム機構の動作に伴い上記ハンドで板状ワークを水平に保持しながら搬送する搬送装置であって、上記旋回ベースと上記固定ベースとの間には、気密シールが設けられているとともに、上記固定ベースおよび上記旋回ベースには、冷媒循環路が設けられており、この冷媒循環路の一部は、上記気密シールの近傍に配置されている一方、上記冷媒循環路は、上記固定ベースと上記旋回ベースとの境界に形成した環状空間を含んで構成されていることを特徴としている。
【0010】
好ましくは、上記環状空間としては、往路用の環状空間と復路用の環状空間とが同心円状に設けられている。
【0011】
好ましくは、上記環状空間は、上記固定ベースまたは上記旋回ベースに設けた環状溝によって形成されている。
【0012】
好ましくは、上記環状空間としては、往路用の環状空間と復路用の環状空間とが気密シールを介して互いに分離した空間をなすように設けられている。
【0013】
好ましくは、上記冷媒循環路は、上記往路用の環状空間に連通する往路用の通路と、上記復路用の環状空間に連通する復路用の通路とを備えている。
【0014】
好ましくは、上記往路用および復路用の通路は、上記旋回ベースから上記リンクアーム機構まで延びて互いに連通している。
【0015】
好ましくは、上記旋回ベースには、上記リンクアーム機構に駆動力を伝えるための減速機が設けられており、この減速機の周部に上記往路用および復路用の通路が設けられている。
【0016】
好ましくは、上記旋回ベースには、上記リンクアーム機構が揺動する際に上記ハンドを支持しながら所定の方向に移動案内するためのガイドレールが固定されており、上記往路用および復路用の通路は、上記ガイドレールの周囲まで延びて互いに連通している。
【0017】
好ましくは、上記気密シールは、真空シールである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
まず、図1〜図3を参照して説明する。図1〜図3は、本発明の第1実施形態に基づく搬送装置を示す図である。
【0020】
この搬送装置A1は、たとえば液晶パネル用のガラス基板等といった薄板状のワーク(図示略)を搬送するためのものである。搬送装置A1は、図1に示すように、固定ベース1と、固定ベース1に対して鉛直軸周りに旋回可能に保持された旋回ベース2と、旋回ベース2に対して水平面内で揺動可能に支持された一対のリンクアーム機構3と、各リンクアーム機構3に支持されたハンド4とを備えている。ハンド4は、上記ガラス基板等の薄板状のワークを水平に保持するものである。
【0021】
なお、搬送装置A1は、基準面B(図2参照)より上方で真空状態に保たれたチャンバー等の空間内においてワークを搬送するものとし、基準面Bより下方の空間は、大気圧に保たれているものとする。
【0022】
固定ベース1は、図2に示すように、略円柱状のハウジング10を備えている。ハウジング10は、その上壁部11がフランジ部11Bを介して基準面Bに沿うように固定されている。ハウジング10全体は、基準面Bの下方に配置されるようになっている。ハウジング10の上壁部11には、中心開口11Aが形成されている。
【0023】
ハウジング10の内部には、昇降ベース12が設けられている。昇降ベース12は、その上端部が中心開口11Aを通じて上方に突出している。昇降ベース12の全体は、たとえばボールネジスライド機構13によって上下方向に移動させられるように構成されている。
【0024】
ハウジング10の上壁部11と昇降ベース12の下端フランジ部12Aとの間には、この昇降ベース12全体を取り囲むようにベローズ14が設けられている。ベローズ14は、昇降ベース12の上下移動に伴い伸縮するものである。ベローズ14は、ハウジング10の内部空間(基準面Bより下方の空間)と基準面Bより上方のチャンバー空間との気密性を保持する役割を果たしている。
【0025】
搬送装置A1の内部には、図2に矢印で冷媒の流れる方向を示すように冷媒循環路が設けられている。なお、本実施形態では、冷媒としてたとえば空気が用いられる。
【0026】
昇降ベース12の内部から上端部にかけては、冷媒循環路を形成する往路用の通路100aおよび復路用の通路200aが設けられている。往路用の通路100aの下端部には、冷媒としての空気を送出するエアーポンプ300が接続されている。復路用の通路200aの下端部は、昇降ベース12の内部空間に空気を吐出するように設けられている。
【0027】
昇降ベース12の上端部には、図3に示すように、往路用の通路100aに連続する往路用の環状溝110Aと復路用の通路200aに連続する復路用の環状溝210Aとが同心円状に形成されている。環状溝110A,210Aは、固定ベース1と旋回ベース2との境界において環状空間をなしている。
【0028】
旋回ベース2は、ハウジング20の有孔底部20Aに中空軸21を一体化した構造からなる。中空軸21は、昇降ベース12の上端部に設けられた開口にベアリング22aを介して回転可能に支持されている。
【0029】
昇降ベース12の開口における内周壁と有孔底部20Aの外周壁との間には、基準面Bより下方の空間と基準面Bより上方のチャンバー空間とを遮蔽して気密性を保持する真空シール(気密シール)23Aが設けられている。真空シール23Aは、環状溝110A,210Aの近傍に位置している。そのため、真空シール23Aは、環状溝110A,210Aを流れる空気によって効率良く冷却される。
【0030】
中空軸21の下端部には、旋回用モータM1からの回転駆動力がプーリベルトおよびプーリギヤを介して伝えられる。これにより、旋回ベース2が昇降ベース12上において鉛直軸周りに旋回する。
【0031】
上記中空軸21の内部には、各リンクアーム機構3を揺動させるための伝動軸24,25が設けられている。一方のリンクアーム機構3に対応する伝動軸24は、中空状を呈している。伝動軸24は、中空軸21の内周壁にベアリング22bを介して回転可能に支持されている。他方のリンクアーム機構3に対応する伝動軸25は、伝動軸24の内周壁にベアリング22cを介して回転可能に支持されている。
【0032】
各伝動軸24,25の上端部には、プーリベルトおよびプーリギヤを介して各リンクアーム機構3の回転軸3Aが連結されている。伝動軸24,25の下端部には、揺動用モータM2,M3からの回転駆動力がプーリベルトおよびプーリギヤを介して伝えられる。これにより、各リンクアーム機構3が揺動する。
【0033】
旋回ベース2には、各リンクアーム機構3まで冷媒循環路を延ばして形成するように往路用の通路100b,100cおよび復路用の通路200b,200cが設けられている。往路用および復路用の各通路100b,200bの下端部は、有孔底部20Aを貫通して環状溝110A,210Aまで達し、これら環状溝110A,210Aに対して連通するように設けられている。ハウジング20の内部においては、往路用および復路用の各通路100c,200cがジョイント410,420を介して各通路100b,200bに接続されている。各通路100c,200cの上端部は、リンクアーム機構3の基端部まで延ばされている。
【0034】
旋回ベース2が旋回するとき、通路100b,200bの下端部は、環状溝110A,210Aに添いながら円を描くように移動する。そのため、通路100b,200bと環状溝110A,210Aとは、相対的に回転しつつも常に連通した状態にある。
【0035】
リンクアーム機構3は、複数のアーム30〜33を連結して構成されたものであり、その主な構成および動作については、従来のものと同様であるため、詳細な説明を省略する。アーム30の基端部30Aは、図2に示すように、旋回ベース2のハウジング20の上部に設けられた開口にベアリング22dを介して回転可能に支持されている。基端部30Aの下端には、回転軸3Aが設けられている。
【0036】
基端部30Aの内周壁とハウジング20の上部における外周壁との間には、気密性を保持するための真空シール23Bが設けられている。ハウジング20の上部には、往路用の通路100cに通じる往路用の環状溝110Bと復路用の通路200cに通じる復路用の環状溝210Bとが同心円状に形成されている。アーム30の内部には、図外の先端まで延びるように往路用の通路100dおよび復路用の通路200dが設けられている。各通路100d,200dの下端部は、環状溝110B,210Bまで達し、これら環状溝110B,210Bに対して連通するように設けられている。
【0037】
アーム30の先端部においては、往路用および復路用の通路100d,200dが互いに接続されている(図示略)。アーム30が回転軸3Aを中心として回転するとき、各通路100d,200dの下端部が環状溝110B,210Bに添いながら円を描くように移動する。そのため、通路100d,200dと環状溝110B,210Bとは、相対的に回転しつつも常に連通した状態で冷媒としての空気を循環させる。したがって、アーム30の内部まで延ばされた通路100d,200dによれば、これらを流れる空気によってアーム30全体が効率良く冷却される。
【0038】
往路用および復路用の通路100a〜100d,200a〜200dは、たとえば部材を貫通して形成された貫通路や金属管で構成されており、これらの貫通路および金属管は、気密性を損なわないように確実に接続されている。
【0039】
搬送装置A1では、真空雰囲気下においてたとえば200℃前後まで加熱されたワークを繰り返し搬送する場合、ワークからの熱を旋回ベース2やリンクアーム機構3が受けやすい。旋回ベース2やリンクアーム機構3の回転部分(ハウジング20の有孔底部20Aやアーム30の基端部30A)に設けられた真空シール23A,23Bは、ある程度の温度までは気密性を保つが、所定の耐用温度を越えると気密性を損なうおそれがある。また、アーム30等は、ステンレス等の金属からなるため、高温になればなるほど熱膨張によって寸法に大きな誤差が生じるおそれがある。
【0040】
そこで、本第1実施形態では、真空シール23A,23Bの近傍に冷媒循環路を構成する環状溝110A,110B,210A,210Bが設けられている。これらの環状溝110A,110B,210A,210Bを流れる空気(冷媒)によって放熱効果が高められるため、真空シール23A,23Bが耐用温度を越えるまで過熱されることはない。
【0041】
アーム30等の内部には、その基端部から先端部にかけて冷媒循環路を構成する通路100d,200dが設けられている。冷媒として通路100d,200dを流れる空気によって放熱効果が高められるため、たとえばアーム30が熱膨張による大きな寸法誤差が生じるまで過熱されることはなく、アーム30の動作に支障をきたすようなことはない。
【0042】
したがって、第1実施形態の搬送装置A1によれば、真空雰囲気下で加熱されたワークを搬送するといった過酷な使用環境においても、真空シール23A,23Bによる気密性を損なうことなくワークを搬送することができる。アーム30等は、冷媒循環路を構成する通路100d,200dによって効率良く放熱され、過度に熱膨張するようなことはない。そのため、アーム30等は、リンクアーム機構3を介してハンド4を正確に動かすことができ、ワークを精度良くかつスムーズに搬送することができる。
【0043】
図4〜図6は、本発明の第2実施形態に基づく搬送装置を示している。なお、先述した第1実施形態と同一または類似の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
第2実施形態の搬送装置A2は、図4に示すように、固定ベース1、旋回ベース2、一対のリンクアーム機構3、および一対のハンド4を備えている。さらに、搬送装置A2は、一対のハンド4を所定の水平直線方向に沿って移動させるように案内するための2組のガイドレール5を備えている。これらの固定ベース1、旋回ベース2、およびリンクアーム機構3は、先述した第1実施形態と同様の構成からなり、ハンド4およびガイドレール5の構成が先述した第1実施形態によるものと異なる。
【0045】
ガイドレール5は、図5に示すように、旋回ベース2の中央上蓋部20Bに支持枠50を介して支持されている。各ガイドレール5は、図6に示すように、複数のレール5Aを継ぎ合わせて構成されている。なお、図6においては、一つのガイドレール5を省略している。
【0046】
下側のハンド4は、内側2つのガイドレール5にスライドブロック40を介して支持されている。上側のハンド4は、下側のハンド4の側方を迂回して外側2つのガイドレール5にスライドブロック40を介して支持されている。上側のハンド4には、一方のリンクアーム機構3のアーム31(図5において左側のもの)の先端部が回転可能に連結されている。下側のハンド4には、外側のガイドレール5の下方を通って外側に延びる延長部4Aが設けられている。延長部4Aには、他方のリンクアーム機構3のアーム31(図5において右側のもの)の先端部が回転可能に連結されている。
【0047】
一方のリンクアーム機構3が揺動すると、それに連動して上側のハンド4が内側2つのガイドレール5に支持されながら水平にスライドする。他方のリンクアーム機構3が揺動すると、上側のハンド4に干渉することなく下側のハンド4が外側2つのガイドレール5に支持されながら水平にスライドする。その際、下側のハンド4とリンクアーム機構3とを連結する延長部4Aは、支持枠50に妨げられることなくスライドする。これにより、ハンド4に載せられたワークが安定した姿勢で搬送される。
【0048】
各ガイドレール5には、図6に示すように、その周囲全体を環状に取り囲んで冷媒循環路を形成するように環状パイプ500が付設されている。ガイドレール5の前端側となる環状パイプ500の一部には、下方に延びるように金属管からなる往路用の通路100eが接続されている。ガイドレール5の後端側となる環状パイプ500の他部には、同様の構成からなる復路用の通路200eが接続されている。
【0049】
各環状パイプ500に接続された往路用の通路100eは、延長部4Aと干渉しないようにガイドレール5の前端側下方においてジョイント430に接続されている。復路用の通路200eは、延長部4Aと干渉しないようにガイドレール5の後端側下方においてジョイント440に接続されている。各ジョイント430,440は、延長部4Aと干渉しないようにガイドレール5の中央付近まで延びた通路100f,200fに接続されている。通路100f,200fの下端部は、図5に示すように、旋回ベース2の中央上蓋部20Bを貫通して旋回ベース2の内部におけるジョイント410,420に接続されている。すなわち、冷媒循環路を構成する往路用および復路用の通路100e,100f,200e,200fは、各ガイドレール5の周囲に配置された環状パイプ500を介して互いに連通している。
【0050】
搬送装置A2では、ワークからの熱をガイドレール5が受けると、熱膨張によって変形するおそれがある。第2実施形態では、ガイドレール5の周囲に冷媒循環路を構成する環状パイプ500が設けられており、環状パイプ500を流れる空気(冷媒)によってガイドレール5付近の放熱効果が高められている。そのため、ガイドレール5が熱膨張によって変形する程まで過熱されることはない。
【0051】
また、真空シール23A,23Bの近傍やアーム30の内部には、先述した第1実施形態と同様に冷媒循環路が設けられている。そのため、これら真空シール23A,23Bやアーム30付近の放熱効果についても高められている。
【0052】
したがって、第2実施形態の搬送装置A2によれば、先述した第1実施形態による効果が得られるのに加え、ハンド4を支持するガイドレール5の熱膨張による変形を防止することができる。そのため、加熱されたワークを真空雰囲気下で搬送するといった過酷な使用環境でも、ガイドレール5を介してより安定した姿勢でワークを搬送することができる。
【0053】
図7および図8は、本発明の第3実施形態に基づく搬送装置を示している。なお、本実施形態の搬送装置は、先述した第1実施形態と類似の構成からなるため、第1実施形態と同一または類似の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
第3実施形態の搬送装置A3は、図7に示すように、リンクアーム機構(図示略)に駆動力を伝えるための減速機60を旋回ベース2に備えたものであり、この点で先述した第1実施形態によるものと大きく異なる。その他、細部についても、第1実施形態によるものと若干異なる。
【0055】
昇降ベース12の内部には、中空軸21や伝動軸24,25を組み込んだ駆動ユニット15が設けられており、この駆動ユニット15の壁部などに往路用の通路100aおよび復路用の通路200aが形成されている。駆動ユニット15の上蓋15Aは、旋回ベース2の有孔底部20Aや中空軸21に結合されており、この上蓋15Aは、旋回ベース2と一体になって回転する。そのため、昇降ベース12の上部開口の内周壁と有孔底部20Aの外周壁との間には、気密性を保持する真空シール23Aが設けられているほか、上蓋15Aの外周壁との間にも真空シール23A’が設けられている。
【0056】
有孔底部20Aに接する上側の真空シール23Aは、気密性を高めるために二重に設けられている。上蓋15Aに接する下側の真空シール23A’と上側の真空シール23Aとの間には、復路用の通路200aに連続する復路用の環状空間210A’が形成されている。下側の真空シール23A’よりもさらに下側において、昇降ベース12の上部開口の内周壁と上蓋15Aの外周壁との隙間には、往路用の通路100aに連続する往路用の環状空間110A’が形成されている。これら往路用および復路用の環状空間110A’,210A’は、真空シール23A’を介して互いに分離した空間をなしており、冷媒としての空気を漏れなく循環させるように構成されている。
【0057】
このような環状空間110A’,210A’は、真空シール23A,23A’に隣接するため、真空シール23A,23A’は、環状空間110A’,210A’を流れる空気によって効率良く冷却される。また、駆動ユニット15の内部には、中空軸21などを回転可能に支持するためのベアリング22a〜22cが設けられており、これらのベアリング22a〜22cも、往路用および復路用の通路100a,200aや環状空間110A’,210A’を流れる空気によって効率良く冷却される。
【0058】
伝動軸24,25の上端部には、プーリベルト24A,25Aおよびプーリギヤ24B,25Bを介して減速機60の主軸60Aが連結されている。減速機60は、遊星歯車機構からなる。図8に示すように、減速機60は、主軸60A、外向フランジ60Bを有する内歯車(図示略)、主軸60Aと内歯車との間にベアリング60Cを介して組み込まれたキャリア60D、キャリア60Dにベアリング60Eを介して支持され、主軸60Aの太陽歯車(図示略)と内歯車とに噛み合わされた複数の遊星歯車(図示略)とを有して構成されている。外向フランジ60Bの適部には、往路用および復路用の通路100c,200cが設けられている。キャリア60Dの適部にも、往路用の通路100cが設けられている。
【0059】
このような減速機60は、図7に示すように、旋回ベース2の有孔上蓋部20C,20Dに外向フランジ60Bを介して固定されている。キャリア60Dは、アーム(全体を図示略)の基端部30Aに連結されている。主軸60Aが回転すると、遊星歯車が太陽歯車の周りを自転しながら公転することにより、キャリア60Dが主軸60Aの周りで回転する。これにより、アームの基端部30Aが回転し、アームがスムーズに揺動する。
【0060】
そのため、旋回ベース2の有孔上蓋部20C,20Dの内周壁とアームの基端部30Aの外周壁との間にも、気密性を保持する真空シール23B,23B’が設けられている。上側の真空シール23Bは、気密性を高めるために二重に設けられている。下側の真空シール23B’は、キャリア60Dの上面一部にも接しており、この真空シール23B’と上側の真空シール23Bとの間には、復路用の通路200c,200dに連続する復路用の環状空間210B’が形成されている。下側の真空シール23B’よりもさらに下側において、旋回ベース2の有孔上蓋部20C,20Dの内周壁と減速機60の外周壁との隙間には、往路用の通路100cに連続する往路用の環状空間110B’が形成されている。これら往路用および復路用の環状空間110B’,210B’は、真空シール23B’を介して互いに分離した空間をなしており、冷媒としての空気を漏れなく循環させるように構成されている。
【0061】
このような環状空間110B’,210B’も、真空シール23B,23B’に隣接するため、真空シール23B,23B’は、環状空間110B’,210B’を流れる空気によって効率良く冷却される。また、減速機60も、往路用および復路用の通路100c,200cや環状空間110B’,210B’を流れる空気によって効率良く冷却されることとなり、減速機60の内部に設けられたベアリング60C,60Eなども冷媒としての空気によって効率良く冷却される。
【0062】
したがって、第3実施形態の搬送装置A3によれば、先述した第1実施形態による効果が得られるのに加え、減速機60に対する熱の影響についても最小限に抑えられるので、加熱されたワークをよりスムーズに搬送することができる。
【0063】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の態様に限定されるものではない。
【0064】
たとえば冷媒としては、ヘリウム等の不活性ガスを用いてもよく、あるいは水等の液体を循環させるようにしてもよい。
【0065】
冷媒循環路は、環状パイプや通路を介してリンクアーム機構からハンドの下面にまで形成してもよい。
【0066】
環状溝は、通路に対して相対的に回転しつつも常に連通するような構成であればよく、たとえば、旋回ベースの有孔底部に環状溝を設け、この環状溝に対して連通するように昇降ベースの内部に通路を設けるようにしてもよい。
【0067】
環状空間は、相対的に回転する部材と部材との間において、往路用のものと復路用のものとで互いに独立した密閉空間をなすように設ければよい。
【0068】
減速機は、ガイドレールを備えた搬送装置に設けてもよく、第2実施形態によるものと同様に減速機の近傍に環状空間を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく搬送装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示す搬送装置の要部断面図である。
【図3】図1に示す搬送装置の要部分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に基づく搬送装置の全体斜視図である。
【図5】図4に示す搬送装置の要部断面図である。
【図6】図4に示す搬送装置の要部斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に基づく搬送装置の要部断面図である。
【図8】図7に示す搬送装置に備えられた減速機の斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
A1,A2,A3 搬送装置
1 固定ベース
2 旋回ベース
23A,23’,23B,23B’ 真空シール(気密シール)
3 リンクアーム機構
4 ハンド
5 ガイドレール
60 減速機
100a〜100f 往路用の通路
110A,110B 往路用の環状溝
110A’,110B’往路用の環状空間
200a〜200f 復路用の通路
210A,210B, 復路用の環状溝
210A’,210B’復路用の環状空間
500 環状パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースと、この固定ベースに対して旋回可能に保持された旋回ベースと、この旋回ベースに対して揺動可能に支持されたリンクアーム機構と、このリンクアーム機構に支持されたハンドとを備え、上記旋回ベースおよびリンクアーム機構の動作に伴い上記ハンドでワークを水平に保持しながら搬送する搬送装置であって、
上記旋回ベースと上記固定ベースとの間には、気密シールが設けられているとともに、上記固定ベースおよび上記旋回ベースには、冷媒循環路が設けられており、この冷媒循環路の一部は、上記気密シールの近傍に配置されている一方、
上記冷媒循環路は、上記固定ベースと上記旋回ベースとの境界に形成した環状空間を含んで構成されていることを特徴とする、搬送装置。
【請求項2】
上記環状空間としては、往路用の環状空間と復路用の環状空間とが同心円状に設けられている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
上記環状空間は、上記固定ベースまたは上記旋回ベースに設けた環状溝によって形成されている、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記環状空間としては、往路用の環状空間と復路用の環状空間とが気密シールを介して互いに分離した空間をなすように設けられている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
上記冷媒循環路は、上記往路用の環状空間に連通する往路用の通路と、上記復路用の環状空間に連通する復路用の通路とを備えている、請求項2または4に記載の搬送装置。
【請求項6】
上記往路用および復路用の通路は、上記旋回ベースから上記リンクアーム機構まで延びて互いに連通している、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
上記旋回ベースには、上記リンクアーム機構に駆動力を伝えるための減速機が設けられており、この減速機の周部に上記往路用および復路用の通路が設けられている、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項8】
上記旋回ベースには、上記リンクアーム機構が揺動する際に上記ハンドを支持しながら所定の方向に移動案内するためのガイドレールが固定されており、上記往路用および復路用の通路は、上記ガイドレールの周囲まで延びて互いに連通している、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項9】
上記気密シールは、真空シールである、請求項1に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−118171(P2007−118171A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227300(P2006−227300)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】