説明

搬送装置

【課題】真空雰囲気下で加熱された板状ワークを搬送する場合において、当該ワークからの熱による不都合を解消ないし低減する。
【解決手段】搬送装置Aは、固定ベース1と、固定ベース1に対して旋回可能に支持された旋回ベース2と、旋回ベース2に支持され、ガイドレール32A,32Bを含んで構成された直線移動機構3と、ガイドレール32A,32Bに支持され、直線移動機構3の作動によりワークWを水平直線状の移動行程に沿って搬送するハンド4A,4Bとを備える。ハンド4A,4Bとガイドレール32A,32Bとの間には熱反射板8が設けられる一方、固定ベース1および旋回ベース2には、固定ベース1側と旋回ベース2側とを常に連通させる空間502,602を含んで構成された冷媒循環路が設けられている。上記冷媒循環路は、上記熱反射板8に接するように取り回された冷却管71,73,74,76を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば加熱された基板等の薄板状のワークを真空雰囲気下において搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板状のワークを真空雰囲気下において搬送するための搬送装置としては、たとえば下記の特許文献1に開示されたものがある。この搬送装置は、同文献の図17〜図25に表れているように、旋回ベース上に一対のリンクアーム機構が設けられ、これらリンクアーム機構の各先端部に液晶表示パネル用のガラス基板等の板状ワークを水平に保持可能なハンドが設けられたものである。固定ベース上で旋回ベースが旋回軸周りに旋回すると、それに伴って一対のリンクアーム機構が旋回させられ、リンクアーム機構が駆動すると、ハンドに保持された板状ワークが水平面内で直線的に移動させられる。これにより、板状ワークが所定位置から他の位置へと搬送させられる。また、旋回ベースには、ガイド部材を介してガイドレールが支持されている。このガイドレールは、リンクアーム機構が駆動する際にハンドを支持しながら所定の方向に移動案内するためのものである。この構成によれば、板状ワークを保持したハンドをより安定した姿勢で直線的に移動させることができる。
【0003】
このような搬送装置は、たとえば液晶表示パネルの製造工程において、各処理室への板状ワークの搬入あるいは搬出用として多用されている。かかる製造工程では、上記搬送装置は、たとえばクリーンプロセスにおける真空雰囲気下で加熱されたガラス基板を搬送するのに使用される。
【0004】
しかしながら、上記従来の搬送装置では、真空雰囲気下で加熱された板状ワークを搬送する場合、熱的条件の面で使用環境に耐えることができないおそれがあった。すなわち、このような搬送装置の使用においては、たとえば、固定ベースを大気雰囲気下に設置した状態で旋回ベースを真空状態に保たれた搬送室の内部空間に配置する。そして、板状ワークの搬送時には、加熱された当該ワークがハンドに保持されると、当該ワークから放射される輻射熱によってハンドに近接するガイドレールが変形するおそれがあり、これによって搬送精度を確保することが困難になるおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−125479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、真空雰囲気下で加熱された板状ワークを搬送する場合において、当該ワークからの熱による不都合を解消ないし低減することができる搬送装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
本発明によって提供される搬送装置は、固定ベースと、この固定ベースに対して旋回可能に支持された旋回ベースと、この旋回ベースに支持され、ガイドレールを含んで構成された直線移動機構と、上記ガイドレールに支持され、上記直線移動機構の作動によりワークを水平直線状の移動行程に沿って搬送するハンドと、を備えた搬送装置であって、少なくとも上記ハンドと上記ガイドレールとの間には、上記ハンド側からの熱を反射するための熱反射板が設けられる一方、上記固定ベースおよび上記旋回ベースには、上記固定ベースに対する上記旋回ベースの旋回位置にかかわらず上記固定ベース側と上記旋回ベース側とを連通させる空間を含んで構成された冷媒循環路が設けられており、上記冷媒循環路は、上記熱反射板に接するように取り回されていることを特徴としている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記熱反射板は、上記ガイドレールを包囲するように設けられることにより区画室を構成している。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記冷媒循環路のうち上記熱反射板に接するように取り回された部分の少なくとも一部は、上記ガイドレールの近傍に配置されている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記直線移動機構は、駆動プーリと、この駆動プーリに掛け回されて上記移動行程の平行線に沿う所定の区間を往復動するとともに上記ハンドに連結された出力ベルトと、を含んで構成されており、上記冷媒循環路のうち上記熱反射板に接するように取り回された部分の一部は、上記出力ベルトの近傍に配置されている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記熱反射板は、上記ハンドから離間する方向に重なるように複数設けられている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記固定ベース側と上記旋回ベース側とを連通させる空間は、上記固定ベースと上記旋回ベースとの間に形成された環状空間である。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記環状空間としては、往路用の環状空間と復路用の環状空間とを備え、これらの環状空間は、気密シールを介して互いに分離した空間をなすように設けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る搬送装置の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0016】
図1〜図7は、本発明に係る搬送装置を示している。搬送装置Aは、たとえば液晶表示パネル用の基板等といった薄板状のワークWを搬送するためのものである。この搬送装置Aは、図1〜図3に表れているように、固定ベース1と、この固定ベース1に対して垂直状の旋回軸線Os周りに旋回可能に支持された旋回ベース2と、旋回ベース2に支持された直線移動機構3と、直線移動機構3に各別に支持された一対のハンド4A,4Bとを備えている。ハンド4A,4Bは、上記薄板状のワークWを水平姿勢で保持するためのものである。
【0017】
図3によく表れているように、固定ベース1は、底壁部11と、円筒状の側壁部12と天井壁13とを備えた、略円柱状の外形を有するハウジング1Aを備えており、天井壁13には、中心開口13Aが形成されている。
【0018】
固定ベース1の内部には、昇降ベース14が支持されている。昇降ベース14は、中心開口13Aよりも小径の外径をもち、上下方向に所定の寸法を有する円筒部141と、この円筒部141の下端に形成された外向フランジ部142とを有している。ハウジング1Aの側壁部12の内壁には、上下方向の直線ガイドレール15が複数取り付けられているとともに、昇降ベース14の外向フランジ部142に設けた複数のガイド部材16が直線ガイドレール15に対して上下方向スライド移動可能に支持されている。これにより、昇降ベース14は、固定ベース1に対し、上下方向に所定範囲内で移動可能であり、このとき、昇降ベース14の円筒部141の上部がハウジング1Aの中心開口13Aから出没する。
【0019】
固定ベース1の天井壁13と昇降ベース14の外向フランジ部142との間には、この昇降ベース14の円筒部141を取り囲むようにして配置されたベローズ17の両端が連結されている。このベローズ17は、昇降ベース14の上下方向の移動にかかわらず、固定ベース1の天井壁13と昇降ベース14の外向フランジ部142との間を気密シールする。
【0020】
固定ベース1の内部にはまた、ベローズ17の外側において、鉛直方向に配置されて回転するネジ軸181と、このネジ軸181に螺合され、かつ昇降ベース14の外向フランジ部142に貫通状に固定されたナット部材182とからなるボールネジ機構18が配置されている。ネジ軸181は、その下端に取付けたプーリ183に掛け回されたベルト184によってモータM1に連係されており、このモータM1の駆動により、正逆方向に回転させられる。このようにしてネジ軸181を回転することにより、昇降ベース14が昇降させられる。
【0021】
搬送装置Aの内部には、固定ベース1と旋回ベース2とに跨るようにして冷媒循環路が設けられている。冷媒循環路は、適所に冷却用媒体(以下、冷媒という。)を通流させるためのものであり、後述する通路、環状空間、および冷却管を含んで構成されている。図3、図4、および図6においては、冷媒の流れる方向を矢印で示す。冷媒としては、たとえば空気、ヘリウムなどの気体や水などの液体が用いられる。
【0022】
昇降ベース14の内部には、図3に表れているように、冷媒循環路を構成する往路用の通路501および復路用の通路601が設けられている。往路用の通路501の下端には、たとえば冷媒としての空気を送出するポンプ(図示せず)が固定ベース1のハウジング1Aの外部において接続されている。復路用の通路601の下端は、ハウジング1Aの外部に通じており、搬送装置Aの外部に空気を吐出するように構成されている。
【0023】
旋回ベース2は、図3に表れているように、円筒軸21と、その上方に一体的につながる上板22とを備えている。円筒軸21は、昇降ベース14の円筒部141の内部にベアリング231,232を介して旋回軸線Osを中心として回転可能に支持されており、円筒部141と円筒軸21との間には所定の間隙が形成されている。円筒部141と円筒軸121との間にはまた、上方から下方へ向かう順にシール機構241,242,243が介装されている。
【0024】
シール機構241とベアリング231との間には、復路用の環状空間602が形成されている。この環状空間602には、復路用の通路601の上端がつながっている。また、シール機構242とシール機構243との間には、往路用の環状空間502が形成されている。この環状空間502には、往路用の通路501の上端がつながっている。これらの環状空間502,602は、シール機構242を介して互いに分離した空間をなしており、冷媒を漏れなく循環させるように構成されている。また、上記のシール機構241,242,243によって、昇降ベース14の円筒部141の外側空間と内側空間とが遮蔽され、これら空間の間の気密性が保持される。
【0025】
円筒軸21の内部には、冷媒循環路を構成する往路用の通路503と復路用の通路603とが設けられている。往路用および復路用の通路503,603の下端はそれぞれ往路用および復路用の環状空間502,602に通じる一方、上記通路503,603の上端は、後述する直線移動機構3のガイド部材31内まで延びている。
【0026】
円筒軸21の下端には、プーリ211が一体的に形成されており、このプーリ211と円筒部141内に支持されたモータM2の出力軸に取り付けたプーリとの間にベルト251が掛け回されている。これにより、モータM2を駆動させると、旋回ベース2が旋回軸線Os周りに旋回する。ここで、通路503,603の下端は、環状空間502,602に沿いながら移動する。このため、通路503,603と通路501,601とは、それぞれ、固定ベース1に対する旋回ベース2の旋回位置にかかわらず、環状空間502,602を介して常に連通した状態にある。
【0027】
図3および図4に表れているように、旋回ベース2の円筒軸21には、後述する第1および第2の駆動機構33A,33Bに駆動力を伝達するための第1および第2の伝動軸26,27が旋回軸線Osに沿って同軸状に挿通されている。第2の伝動軸27は、円筒状の軸とされ、円筒軸21の内側にベアリング233を介して回転可能に支持されている。第1の伝動軸26は、第2の伝動軸27の内側にベアリング234を介して回転可能に支持されている。第1の伝動軸26の下端は、円筒部141内に支持されたモータM3の出力軸に連結されている。また、第1の伝動軸26の上端には、ベベルギア262が設けられている。一方、第2の伝動軸27の下端には、プーリ271が設けられており、このプーリ271と、円筒部141内に支持されたモータM4の出力軸に取り付けたプーリとの間にベルト252が掛け回されている。第2の伝動軸27の上端には、ベベルギア272が設けられている。
【0028】
直線移動機構3は、ハンド4A,4Bを水平直線状の移動行程GLに沿って搬送するためのものであり、図3に表れているように、ガイド部材31と、このガイド部材31上に設けられたガイドレール32A,32Bと、ハンド4A,4Bに水平方向の駆動力を伝達する第1および第2の駆動機構33A,33Bとを有する。
【0029】
ガイド部材31は、水平方向に延びる長手軸線(移動行程GL)を有する平面視長矩形状をしているとともに、底壁311、側壁312、および上壁313を備えている。このガイド部材31はまた、旋回ベース2の上板22に固定されており、旋回ベース2が旋回させられると、これにともなって旋回する。ガイド部材31の底壁311と旋回ベース2の上板22との間は図示しないシール部材によって気密シールされている。内側の一対のガイドレール32Aは、上壁313に支持され、外側の一対のガイドレール32Bは、側壁312に支持されている。
【0030】
図3および図4に表れているように、ハンド4Aは、その下部に形成された一対の支持アーム41a、および支持アーム41aに設けられたスライダ321Aを介して、一対のガイドレール32Aに支持されている。支持アーム41aには連結部材42aが設けられており、この連結部材42aは、後述する第1の駆動機構33Aの出力ベルト337に連結されている。ハンド4Bは、ハンド4Aの側方を迂回するように形成された一対の支持アーム41b、および支持アーム41bに設けられたスライダ321Bを介して、一対のガイドレール32Bに支持されている。支持アーム41bには連結部材42bが設けられており、この連結部材42bは、後述する第2の駆動機構33Bの出力ベルト337に連結されている。
【0031】
図1〜図3によく表れているように、ハンド4A,4Bには、ガイド部材31の長手方向に延びる複数のホーク状の保持片43a,43bが一体形成されており、これらの保持片43a,43b上に上記薄板状のワークWが載置保持される。なお、図3〜図5においては、図1および図2と異なり、ハンド4A,4Bの双方が固定ベース1の上方に位置する状態を示している。
【0032】
図3〜図5に表れているように、ガイド部材31には、適所に取り付けられた支持部を介して熱反射板8が設けられている。熱反射板8は、ハンド4A,4Bの保持片43a,43b上に加熱されたワークWが載置された場合にワークWからの熱を反射するためのものであり、ハンド4A,4Bの支持アーム41a,41bおよび連結部材42a,42bと干渉しないように複数片に分割されて設けられている。熱反射板8はまた、一対ずつのガイドレール32A,32B、および第1および第2の駆動機構33A,33Bの出力ベルト337,337を包囲するように設けられ、これら熱反射板8とガイド部材31とにより区画室81〜85が形成されている。熱反射板8は、たとえばステンレス製である。熱反射板8のうち、ハンド4A,4Bとガイドレール32A,32Bとの間に水平姿勢で設けられている部分は、ハンド4A,4B側からの熱を直接的に遮る部分である。当該部分は、ハンド4A,4Bから離間する方向(旋回軸線Osに沿う方向)において複数枚(本実施形態では2枚)重なるように設けられている。
【0033】
図4〜図6に表れているように、ガイド部材31の内部ないし区画室81〜85の内部においては、冷媒循環路を構成する往路用の通路511〜513,521〜526、復路用の通路611〜613,621〜626、冷却管71〜76が設けられている。これらの部材は、ハンド4A,4Bの支持アーム41a,41bおよび連結部材42a,42bと干渉しないように配されている。冷却管71〜76は、それぞれ熱反射板8に接するように取り付けられている。冷却管73,74は、それぞれ、ガイドレール32Aの近傍において、各ガイドレール32Aの平行線に沿って配されている。これと同様に、冷却管71,76は、それぞれ、ガイドレール32Bの近傍において、各ガイドレール32Bの平行線に沿って配されている。冷却管72,75は、それぞれ、第1および第2の駆動機構33A,33Bの各出力ベルト337の平行線に沿って配されている。
【0034】
図6において模式的に示すように、冷却管71〜76のそれぞれの一端部(図1および図2に表されたガイド部材31の前端31a側)には、往路用の通路521〜526が接続されている。冷却管71,72に接続された通路521,522は、それぞれ、ガイド部材31の前端31a側に設けられたジョイント520aを介して通路511に接続されている。また、これと同様にして、冷却管73,74に接続された通路523,524は、ジョイント520bを介して通路512に接続され、冷却管75,76に接続された通路525,526は、ジョイント520cを介して通路513に接続されている。通路511,512,513は、ガイド部材31の中央付近に設けられたジョイント510を介して通路503に接続されている。
【0035】
冷却管71〜76のそれぞれの他端部(ガイド部材31の後端31b側)には、復路用の通路621〜626が接続されている。冷却管71,72に接続された通路621,622は、それぞれ、ガイド部材31の後端31b側に設けられたジョイント620aを介して通路611に接続されている。これと同様にして、冷却管73,74に接続された通路623,624は、ジョイント620bを介して通路612に接続され、冷却管75,76に接続された通路625,626は、ジョイント620cを介して通路613に接続されている。通路611,612,613は、ガイド部材31の中央付近に設けられたジョイント610を介して通路603に接続されている。
【0036】
冷媒循環路を構成する各通路は、たとえば部材を貫通して形成された貫通路や金属管で構成されており、これらの貫通路および金属管は、気密性を損なわないように確実に接続されている。そして、冷媒循環路においては、図外のポンプから通路501へ冷媒が送出されると、当該冷媒は、環状空間502、通路503、通路511〜513、通路521〜526、冷却管71〜76、通路621〜626、通路611〜613、通路603、環状空間602、通路601の順に通流し、搬送装置Aの外部に排出される。
【0037】
第1および第2の駆動機構33A,33Bは、ハンド4A,4Bを各別に移動行程GLに沿って移動させるためのものである。第1および第2の駆動機構33A,33Bは、基本的に同様の構成を有しているので、以下に第1の駆動機構33Aの構成について具体的に説明し、第2の駆動機構33Bについては適宜説明を省略する。
【0038】
第1の駆動機構33Aは、図4に表れているように、伝動軸331,332と、減速機構334と、駆動プーリ335と、出力ベルト337とを備え、ガイド部材31内に収容されている。伝動軸331は、ガイド部材31によって、旋回軸線Osに対して直交する水平軸線O1周りに回転可能に支持されている。伝動軸331の一端(図中右側)には、ベベルギア331aが設けられており、このベベルギア331aは、第1の伝動軸26の上端に設けられたベベルギア262と噛み合っている。伝動軸331の他端は減速機構334の入力軸に連結されている。
【0039】
伝動軸332は、ガイド部材31によって水平軸線O1周りに回転可能に支持されている。伝動軸332の一端は、減速機構334の出力軸に連結されている。伝動軸332の他端(図中左側)には駆動プーリ335が設けられている。また、伝動軸332とガイド部材31との間には、シール機構338が介装されている。このシール機構338によって、ガイド部材31の内部から旋回ベース2を介して連通する昇降ベース14の内側空間は、外部に対して気密シールされている。なお、必要に応じて伝動軸331および伝動軸332の間に図示しないカップリングジョイントを設けてもよい。
【0040】
図7に表れているように、出力ベルト337は、駆動プーリ335、およびプーリ336a〜336fに対し、垂直面内に沿うように掛け回されている。プーリ336a,336bは、ガイド部材31の長手方向(移動行程GLに沿う方向)の両端部近傍に設けられている。一方、プーリ336c,336d,336e,336fは、駆動プーリ335の近傍に設けられており、そのうちのプーリ336c,336dは、出力ベルト337の外側に配置されている。これにより、出力ベルト337には、適度な張力が付与されている。出力ベルト337としては、たとえばタイミングベルトが好適に用いられる。
【0041】
このような構成により、モータM3を駆動させると、モータM3の回転駆動力は第1の伝動軸26を介して第1の駆動機構33Aに伝達される。当該駆動機構33Aにおいては、ベベルギア262,331aによって旋回軸線Os周りの回転から水平軸線O1周りの回転へと回転の軸方向が変換されるとともに、減速機構334によって減速されたうえで、駆動プーリ335が回転させられる。この駆動プーリ335の回転に伴って出力ベルト337が垂直面内において往復動する。
【0042】
プーリ336a,336bは、移動行程GLの平行線に沿って配置されている。そして、図7において出力ベルト337におけるプーリ336a,336bの上方に位置する領域は、移動行程GLと平行な区間34aとなっており、出力ベルト337は、この区間34aにおいて往復動しうるように構成されている。出力ベルト337における上記区間34aの所定部位には、ハンド4Aの支持アーム41aから延びる連結部材42aが連結されている。これにより、ハンド4Aは、第1の駆動機構33Aの駆動により、内側2つのガイドレール32Aに支持されながら移動行程GLに沿って水平にスライドする。
【0043】
第2の駆動機構33Bにおいては、図4に表れているように、伝動軸331,332は、旋回軸線Osを挟んで第1の駆動機構33Aの伝動軸331,332に対向するように配置され、それぞれ水平軸線O1周りに回転可能とされている。伝動軸331の一端(図中左側)にはベベルギア331aが設けられており、このベベルギア331aは、第2の伝動軸27の上端に設けられたベベルギア272と噛み合っている。モータM4を駆動させると、モータM4の回転駆動力は、ベルト252、第2の伝動軸27を介して第2の駆動機構33Bに伝達される。当該駆動機構33Bにおいては、ベベルギア272,331aによって旋回軸線Os周りの回転から水平軸線O1周りの回転へと回転の軸方向が変換されるとともに、減速機構334によって減速されたうえで、駆動プーリ335が回転させられる。この駆動プーリ335の回転に伴って出力ベルト337が垂直面内において往復動する。また、出力ベルト337における所定部位には、ハンド4Bの支持アーム41bから延びる連結部材42bが連結されている。これにより、ハンド4Bは、第2の駆動機構33Bの駆動により、外側2つのガイドレール32Bに支持されながら移動行程GLに沿って水平にスライドする。
【0044】
上記構成の搬送装置Aは、たとえば液晶表示パネルの製造工程において、プロセスチャンバへワークを搬入し、あるいは搬出するために用いられる。この場合、搬送装置Aは、たとえば、周部に複数のプロセスチャンバが配置されたトランスポートチャンバ内に真空雰囲気下で配置される。
【0045】
搬送装置Aの稼動時において、たとえば250〜400℃程度に加熱されたガラス基板等のワークWを真空雰囲気下で繰り返し搬送すると、ワークWからの輻射熱をこれに近接するガイドレール32A,32Bが受けやすい。ガイドレール32A,32Bは、当該輻射熱を受けて高温状態に加熱されると、熱膨張によって、寸法に大きな誤差が生じる、または変形するおそれがある。このような場合には、ワークWの搬送精度が低下し、あるいはワークWの搬送に支障を来たすおそれがある。
【0046】
これに対し、本実施形態の搬送装置Aにおいては、ハンド4A,4Bとガイドレール32A,32Bとの間には、ハンド4A,4Bに保持されたワークWからの熱を反射するための熱放射板8が設けられている。このため、ワークWから放射される輻射熱は、当該熱反射板8によって反射され、ガイドレール32A,32Bが近接するワークWからの輻射熱によって不当に過熱されることは防止される。特に、ハンド4A,4Bとガイドレール32A,32Bとの間に位置する熱反射板8については、ハンド4A,4Bから離間する方向に重なるように複数設けられているため、ワークWからガイドレール32A,32Bに向けて直進する輻射熱を効率よく反射させることができる。
【0047】
また、熱反射板8の下面には、ガイドレール32A,32Bの近傍において、冷却用媒体を通流させる冷却管73,74,71,76が設けられている。このため、ワークWからの輻射熱を熱反射板8自体が吸収したとしても、当該吸収された熱は、冷却管73,74,71,76内の冷媒によって速やかに搬送装置Aの外部に放出される。しがって、かかる構成は、ガイドレール32A,32Bの過熱を防止するうえで好適である。また、本実施形態では、出力ベルト337を利用したベルト式の駆動機構33A,33Bを採用しつつ、熱反射板8の下面の出力ベルト337の近傍においても、冷却管72,75が設けられている。このため、出力ベルト337の過熱をも防止することができ、出力ベルト337の熱膨張による搬送精度の低下を回避することができる。
【0048】
また、搬送装置Aにおいては、熱反射板8とガイド部材31とによって区画室81〜85が形成されており、この区画室81〜85の内部にガイドレール32A,32B、出力ベルト337、および冷却管71〜76が配置されている。したがって、ガイドレール32A,32Bや出力ベルト337の周囲にあたる区画室81〜85内部の雰囲気温度を区画室81〜85外部の雰囲気温度よりも低下させることができ、かかる観点によっても、ガイドレール32A,32Bおよび出力ベルト337が過熱されるのをより適切に防止することができる。
【0049】
このように、本実施形態の構成によれば、搬送装置Aによって加熱されたワークWを搬送する場合においても、熱反射板8によってワークWからの輻射熱がガイドレール32A,32Bや出力ベルト337に伝わるのを防止しつつ、冷媒循環路によってガイドレール32A,32Bや出力ベルト337の周囲の雰囲気温度を外部よりも低下させることができる。このため、ガイドレール32A,32Bおよび出力ベルト337が熱膨張によって大きな寸法誤差を生じるまで過熱されることはない。したがって、ハンド4A,4Bは正確に作動させられ、真空雰囲気下において加熱されたワークWを精度よく、かつ、スムーズに搬送することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る搬送装置の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0051】
直線移動機構としては、上記実施形態のようにベルトによって駆動させる機構に代えて、リンクアーム機構を採用してもよい(特許文献1に示された搬送装置を参照)。リンクアーム機構の場合、冷媒循環路を構成する冷却管は、ガイドレールの近傍にのみ設けられていればよい。
【0052】
また、ワークを載置するハンドとしては、上記実施形態のように2つのハンド4A,4Bを備えるものに限定されず、たとえば、1つのハンドのみを備えたいわゆるワンハンド式の構成としてもよい。
【0053】
上記実施形態では、真空雰囲気下で用いることを前提として説明をしたが、もちろん、本発明に係る搬送装置は、大気圧下で用いるものとして構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る搬送装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示す搬送装置の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図である。
【図6】冷媒循環路の概略構成を示す模式図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0055】
A 搬送装置
GL 移動行程
W ワーク
1 固定ベース
2 旋回ベース
3 直線移動機構
4A,4B ハンド
8 熱反射板
32A,32B ガイドレール
81〜85 区画室
335 駆動プーリ
337 出力ベルト
502 往路用の環状空間
602 復路用の環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースと、この固定ベースに対して旋回可能に支持された旋回ベースと、この旋回ベースに支持され、ガイドレールを含んで構成された直線移動機構と、上記ガイドレールに支持され、上記直線移動機構の作動によりワークを水平直線状の移動行程に沿って搬送するハンドと、を備えた搬送装置であって、
少なくとも上記ハンドと上記ガイドレールとの間には、上記ハンド側からの熱を反射するための熱反射板が設けられる一方、
上記固定ベースおよび上記旋回ベースには、上記固定ベースに対する上記旋回ベースの旋回位置にかかわらず上記固定ベース側と上記旋回ベース側とを連通させる空間を含んで構成された冷媒循環路が設けられており、
上記冷媒循環路は、上記熱反射板に接するように取り回されていることを特徴とする、搬送装置。
【請求項2】
上記熱反射板は、上記ガイドレールを包囲するように設けられることにより区画室を構成している、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
上記冷媒循環路のうち上記熱反射板に接するように取り回された部分の少なくとも一部は、上記ガイドレールの近傍に配置されている、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記直線移動機構は、駆動プーリと、この駆動プーリに掛け回されて上記移動行程の平行線に沿う所定の区間を往復動するとともに上記ハンドに連結された出力ベルトと、を含んで構成されており、
上記冷媒循環路のうち上記熱反射板に接するように取り回された部分の一部は、上記出力ベルトの近傍に配置されている、請求項2または3に記載の搬送装置。
【請求項5】
上記熱反射板は、上記ハンドから離間する方向に重なるように複数設けられている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
上記固定ベース側と上記旋回ベース側とを連通させる空間は、上記固定ベースと上記旋回ベースとの間に形成された環状空間である、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
上記環状空間としては、往路用の環状空間と復路用の環状空間とを備え、これらの環状空間は、気密シールを介して互いに分離した空間をなすように設けられている、請求項6に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−279538(P2008−279538A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125504(P2007−125504)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】