説明

携帯型4サイクルエンジン及びこれを搭載した作業機

【課題】動弁室内の潤滑オイルをいかなる姿勢でも過度に滞留させず、種類の異なる作業機でも搭載可能な4サイクルエンジンを提供する。
【解決手段】4サイクルエンジンは、動弁室20内に、これに送られた潤滑オイルを循環させる戻し油路27,28,29を3つ以上の複数設け、これら複数の戻し油路は動弁室20の外側で一つの油路に合流し、複数の戻し油路の少なくとも一つの吸入口は、動弁室内で貯留する潤滑オイルの油面下に設けられ、ブリーザ通路42の動弁室20に連通する開口は、動弁室20の中央付近に設けられ、4サイクルエンジンが使用される姿勢において、ブリーザ通路42の動弁室20に連通する開口の下方に複数の戻し油路の吸入口の少なくとも一つが位置する。戻し油路27,28,29はエンジンの油溜室に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型4サイクルエンジン及びこれを搭載した作業機に関し、さらに詳細には、様々な姿勢で使用しても潤滑性能が低下しない携帯型4サイクルエンジン及びこれを搭載した作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンを携帯型の作業機に搭載する場合、様々な向きで使用されることが想定されるので、4サイクルエンジンは、様々な姿勢で作業機が使用されても潤滑性能が低下しないことが要求される。そこで、特許文献1や特許文献2に記載の潤滑装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の4サイクルエンジンは、動弁室と油溜室を連通する戻し油路を備え、この戻し油路から分岐して上死点位置にあるピストンの直下部に設けた開口と連通する吸油路を備え、戻し油路の油溜室に繋がる開口に、エンジンが正立すると開き、倒立や傾斜時に閉じる逆止弁を備えて構成されている。このような4サイクルエンジンは、エンジンが傾き又は倒立状態になると、逆止弁が開口を閉鎖して、油溜室から戻し油路に潤滑オイルが逆流して動弁室内への潤滑オイルの過剰供給が防止される。
【0004】
特許文献2に記載の4サイクルエンジンは、油溜室とクランク室とを連通可能な送油通路と、動弁室と油溜室とを連通する戻し油路を備え、送油通路はクランク室内が負圧になったときに連通して油溜室からクランク室への潤滑オイルの供給を許容するように構成されている。このため、作業機の姿勢の変化に拘わらずに送油通路からクランク室及びこれに連通する動弁室に供給される潤滑オイルの過剰供給が防止される。
【0005】
【特許文献1】特開平11−343822号公報
【特許文献2】特開2004−251231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の携帯型4サイクルエンジンは、動弁室に貯留する潤滑オイルを油溜室に戻す戻し油路が2本設けられており、特許文献2に記載の携帯型4サイクルエンジンには、この戻し油路が1本設けられている。このため、いずれの携帯型4サイクルエンジンも、エンジンが傾斜すると、戻し油路の端部の吸入口が、貯留する潤滑オイルの油面上に移動して、動弁室内の潤滑オイルが油溜室に戻らなくなる場合が発生する。潤滑オイルが油溜室に戻らなくなると、ミスト化した潤滑オイルがエンジンの駆動部分を潤滑する過程で、動弁室内で液化して滞留し、この液化した潤滑オイルが過度に滞留すると、循環不良が発生して駆動部分の潤滑不良が生じたり、ブリーザ口から液化した潤滑オイルが放出されて潤滑オイルの消費量が増大したりする虞が生じる。このように、従来の携帯型4サイクルエンジンは、いかなる姿勢でも動弁室内に貯留する潤滑オイルを正常に循環させることが必ずしもできないという課題があった。
【0007】
このため、これら従来の携帯型4サイクルエンジンは、基本的にエンジンの基本姿勢からある許容傾斜範囲内でしか使用できないのが現状であった。そのため、作業機の種類によっては、異なるエンジンの基本姿勢に応じて潤滑方式を変える必要があり、刈払機等はホリゾンタル仕様、カルチベータ等はバーチカル仕様というように幾つもの仕様の4サイクルエンジンを準備する必要があり、種類の異なる作業機でも搭載可能な携帯型4サイクルエンジンの提供が望まれている。
【0008】
本発明は、動弁室内に貯留する潤滑オイルをいかなる姿勢でも正常に循環させことができ、種類の異なる作業機でも搭載可能な携帯型4サイクルエンジン及びこれを搭載した作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明は、クランク室の近傍に配設された油溜室に貯留する潤滑オイルをクランク室の圧力変動を利用してクランク室及び動弁室等に収容された駆動部品(例えば、実施形態におけるクランク軸15,吸気バルブ20a,排気バルブ20b,バルブ駆動ギヤ35,カムギヤ36,ロッカーアーム37)に送って潤滑して循環させ、動弁室とエアクリーナを連通するブリーザ通路を備え、ブローバイガスを動弁室からブリーザ通路に流してエアクリーナに送る携帯型4サイクルエンジンにおいて、動弁室内に、該動弁室に送られた潤滑オイルを循環させる戻し油路を3つ以上の複数設け、これらの複数の戻し油路は、動弁室の外側で一つの油路に合流し、ブリーザ通路の動弁室に連通する開口は、該動弁室の中央付近に設けられ、携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢において、開口の下方に複数の戻し油路の吸入口の少なくとも一つが位置することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、動弁室内に、動弁室内の潤滑オイルを循環させる戻し油路を3つ以上の複数設け、これらの戻し油路は、動弁室の外側で一つの油路に合流し、ブリーザ通路の動弁室に連通する開口を動弁室の中央付近に設け、携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢において、開口の下方に複数の戻し油路の吸入口の少なくとも一つが位置するように配置することで、携帯型4サイクルエンジンが使用されるいかなる姿勢でも、動弁室に潤滑オイルが滞留することが防止され、潤滑オイルの循環が良好で駆動部分の潤滑状態が常に良好な携帯型4サイクルエンジンを提供することができ、クランク室の圧力変動を利用して動弁室に滞留する状態を動弁室から送出することができる。さらにブリーザ通路の開口は液状の潤滑オイルの液面下になりにくいので、ブリーザ通路から潤滑オイルの放出が防止されて、潤滑オイルの消費量の増大を防止することができる。
【0011】
また本発明の戻し油路は、油溜室に接続されることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、戻し油路を油溜室に接続することで、潤滑オイルを動弁室から油溜室に送ることができ、潤滑オイルの劣化を抑制することができる。
【0013】
また本発明は、潤滑オイルの循環経路の途中に一方向弁を設けて、油溜室は、携帯型4サイクルエンジンが駆動中に動弁室及び大気圧より常に負圧化傾向となり、油溜室とクランク室とを連通する潤滑オイルの送油通路に小孔を設け、該小孔は、携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢において、油溜室に貯留する潤滑オイルの油面上に位置し、小孔のサイズ調整によって動弁室に流入する潤滑オイルの油量調整が可能であり、塵等によって戻し油路が詰まらない範囲の該戻し油路の内径調整によって、動弁室内の圧力は、大気圧と同等又はこれよりやや正圧となることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、潤滑オイルの循環経路の途中に一方向弁を設け、油溜室はエンジン駆動中に動弁室及び大気圧より常に負圧化傾向となり、油溜室とクランク室とを連通する送油通路に小孔を設け、小孔は、携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢において、油溜室内の潤滑オイルの油面上に位置し、小孔のサイズ調整によって動弁室に流入する潤滑オイルの油量調整が可能であり、塵等によって戻し油路が詰まらない範囲の戻し油路の内径調整によって、動弁室内の圧力は、大気圧と同等又はこれよりやや正圧となることで、塵等による潤滑オイルの潤滑系の循環不良が起きる事態が防止され、動弁室と油溜室の圧力調整が容易になるとともに、動弁室への潤滑オイルの流入量も容易に調整でき、潤滑状態が常に良好な携帯型4サイクルエンジンを提供することができる。またブリーザ通路を介してブローバイガスを潤滑系から放出できるとともに、過度の潤滑オイルの送出を抑制することができる。
【0015】
さらに、本発明の複数の戻し油路の吸入口は、動弁室内であってクランク室内のクランク軸からの動力を受けて回転する回転軸(例えば、実施形態におけるドライブシャフト)を回転自在に連結支持する軸連結部側の動弁室の幅方向両端部と、動弁室内の軸連結部側と反対側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、複数の戻し油路の吸入口は、軸連結部側の動弁室の幅方向両端部と動弁室内の軸連結部側と反対側に設けられることにより、軸連結部側を下方に傾斜させて使用されるカルチベータ等のような作業機に本発明の携帯型4サイクルエンジンを搭載すると、潤滑性能の良い作業機を提供することができる。
【0017】
また本発明は、動弁室内の軸連結部側と反対側に設けられた戻し油路の吸入口が、動弁室の幅方向中央付近に設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、動弁室内の軸連結部側と反対側に設けられた戻し油路の吸入口を動弁室の幅方向中央付近に設けることにより、戻し油路の吸入口を少なく且つ効果的に配置することができ、携帯型4サイクルエンジンのコストの上昇を抑制することができる。
【0019】
また本発明は、動弁室内に設けられた戻し油路の吸入口が、該動弁室内の底面の近傍位置に設けられることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、戻し油路の吸入口を動弁室内の底面の近傍位置に設けることにより、携帯型4サイクルエンジンの軸連結部側をホリゾンタルの姿勢から下方に傾斜させ、更にクランク軸に対して横方向に±90°程度向きを変えて使用したり、軸連結部側をホリゾンタルの姿勢から上方に傾斜させて使用しても、吸入口を潤滑オイルの液面下に位置することができ、潤滑性能が良好な携帯型4サイクルエンジンを提供することができる。このため、各種の作業機の殆どに本発明の携帯型4サイクルエンジンを搭載することができる。
【0021】
さらに本発明は、携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢に応じて、複数の戻し油路の吸入口のうちの、鉛直方向下側に位置する吸入口を油溜室に連通し、鉛直方向上側に位置する吸入口を油溜室と非連通状態にする油路切替弁(例えば、実施形態における切替装置70,切替部品77)を設けることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢に応じて、鉛直方向下側に位置する吸入口が油溜室に連通し、鉛直方向上側に位置する吸入口が油溜室と非連通状態になる油路切替弁を設けることにより、携帯型4サイクルエンジンをどのような向きで使用しても、常にブリーザ通路の開口の下に戻し通路の吸入口が位置するので、動弁室に潤滑オイルが滞留する事態を防止することができる。同時に鉛直方向上側に位置する吸入口が油溜室と非連通状態になるように戻し油路の切り替えが行われるので、動弁室と油溜室を連通する戻し油路の数を少なくすることができ、動弁室と油溜室の圧力調整が容易となる。このため、どのような姿勢で使用しても潤滑性能が良好な携帯型4サイクルエンジンを提供することができ、あらゆる作業機に本発明の携帯型4サイクルエンジンを搭載することができる。
【0023】
また本発明は、請求項1から7のいずれかに記載の携帯型4サイクルエンジンを搭載した作業機であることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、請求項1から7のいずれかに記載の携帯型4サイクルエンジンを搭載した作業機であることで、潤滑性能が良好で潤滑オイルの劣化が少ない携帯型4サイクルエンジンによって作業機が駆動され、作業性能が常に良好でメンテナンスの少ない作業機を提供することができる。
【0025】
また本発明は、作業機が刈払機であることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、作業機を刈払機にすることにより、様々な姿勢で使用される刈払機であっても、作業姿勢に拘わらずに携帯型4サイクルエンジンの性能は安定し、作業性能が常に良好でメンテナンスの少ない刈払機を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係わる携帯型4サイクルエンジンによれば、動弁室内に、動弁室内の潤滑オイルを循環させる戻し油路を3つ以上の複数設け、これらの戻し油路は、動弁室の外側で一つの油路に合流し、複数の戻し油路の少なくとも一つの吸入口を過度の潤滑オイルの滞留が起こる前に動弁室内の潤滑オイルの油面下になる様に設けることにより、動弁室内での過度の滞留を防止し、潤滑オイルをいかなる姿勢でも正常に循環させことができ、種類の異なる作業機でも搭載可能な携帯型4サイクルエンジン及びこれを搭載した作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の携帯型4サイクルエンジン及びこれを搭載した作業機の好ましい実施の形態を図1から図13に基づいて説明する。先ず、本発明の作業機を説明する前に、この作業機に搭載する携帯型4サイクルエンジンについて説明する。なお、携帯型4サイクルエンジンは、ホリゾンタの姿勢にあるときの状態で説明する。
【0029】
[第1の実施の形態]
携帯型4サイクルエンジン(以下、単に「4サイクルエンジン1」と記す。)は、図1(潤滑状態説明図)及び図2(断面図)に示すように、シリンダヘッド3aが一体化されているシリンダブロック3と、シリンダブロック3の下部に取り付けられてクランク室5aを形成するクランクケース5と、クランクケース5の下部に取り付けられた油溜室7とを備える。油溜室7は、潤滑オイルAを貯留し、クランクケース5に対して仕切られて、全体として密閉空間となっている。
【0030】
油溜室7内には、これに貯留する潤滑オイルAを吸入する吸入筒部8が設けられ、吸入筒部8とクランク室5を接続する送油通路9の途中に一方向弁10が設けられている。この一方向弁10は、クランク室5aの圧力変化に応じて開閉可能に構成されている。吸入筒部8は、ゴム等の弾性材料により形成されて容易に撓むことができる管体8aと、管体8aの先端部に取り付けられた吸入口付きの錘8bとを有してなる。つまり、吸入筒部8の錘8bは、その重力により常に鉛直下方に移動可能に取り付けられており、これにより油溜室7が傾いても潤滑オイルAの油面下に吸入筒部8の吸入口を没入させることができる。
【0031】
送油通路9の油溜室側の開口は、油溜室7の上部中央付近に設けられ、4サイクルエンジン1が反転して使用されない限り、どのような姿勢で使用されても、常に油面上に位置し、吸入筒部8と接続されている。送油通路9の開口の近傍位置には、小孔9aが形成されている。小孔9aの径の大きさについては後述する。油溜室7とクランク室5aはさらに圧力調整通路12を介して連通している。圧力調整通路12には一方向弁13が設けられ、この一方向弁13はクランク室5の圧力変化に応じて開閉可能に構成されている。圧力調整通路12の油溜室側の開口は、油溜室7の上部中央付近に形成され、4サイクルエンジン1が反転して使用されない限り、どのような姿勢で使用されても、常に油面上に位置するようになっている。
【0032】
クランクケース5にはクランク軸15が回転自在に支持され、ピストン16はクランク軸15の回転に連動して往復動するように繋がっている。ピストン16はシリンダブロック3の内部に設けられたシリンダ3b内に摺動自在に挿嵌されている。
【0033】
クランク軸15の一方側端部の先端側には、図示しない作業機の作業軸を連結支持する軸連結部18が設けられている。シリンダブロック3には、図示しない気化器及び排気マフラのそれぞれに連通する吸気ポート及び排気ポートが形成されている。これらの各ポートには、ポートを開閉する吸気バルブ20a及び排気バルブ20bが配設され、各バルブの開閉によって、各ポートは燃焼室3cと連通する。気化器にはエアクリーナ50が装着されている。
【0034】
これらのバルブは、バルブ駆動ギヤ35、カムギヤ36、カムフォロワー、ブッシュロッド、ロッカーアーム37等の部品を介して駆動される。シリンダブロック3の上部には、動弁室20が形成され、動弁室20内にはロッカーアーム37等の部品が収容されている。動弁室20とクランク室5aはカムギヤ室38を介して連通し、カムギヤ室38にバルブ駆動ギヤ35、カムギヤ36等が収容される。なお、クランク室5aとカムギヤ室38の間にはリード弁5bが設けられている。
【0035】
動弁室20と油溜室7は戻し油路40を介して連通しており、戻し油路40の油溜室側の開口は、油溜室7の上部中央付近に形成され、4サイクルエンジン1が反転して使用されない限り、どのような姿勢で使用されても、常に油面上に位置するようになっている。
【0036】
送油通路9及び圧力調整通路12の各クランク室側の接続口は、ピストン16の上昇によりクランク室5aが負圧化傾向になると、クランク室5aに開口するようになっている。接続口の位置は、ピストン16が上死点近傍に達した時点で全開し、この状態をピストン16が上死点に達するまでの間、維持されるようにするのがよい。送油通路9と圧力調整通路12がクランク室5aと連通したときには、クランク室5aは負圧化傾向となっているので、一方向弁10,13は開弁し、油溜室7とクランク室5aは、送油通路9及び圧力調整通路12を介して連通する。このとき、油溜室7から送油通路9を介して潤滑オイルAが吸い上げられてクランク室5aに供給される。
【0037】
油溜室7とクランク室5aに供給される潤滑オイルAの供給量は、前述した圧力調整通路12及び小孔9aによって調整される。圧力調整通路12は、油溜室7内の空気を十分にクランク室5aに送ることで、クランク室5aにおいて十分な圧力を得ることが可能となり、また送油通路9における吸入圧力を制限できるようになる。さらに、小孔9aの径の大きさを任意の大きさにすることで、クランク室5aに供給する潤滑オイルAの量を容易に調整することができる。
【0038】
クランク室5aに導入された潤滑オイルAは、クランク室5aの駆動部品によってミスト化してオイルミストとなり、クランク室5a内を十分に潤滑する。クランク室5aが正圧化傾向となると、リード弁5bが開弁し、負圧化傾向となるとリード弁5bが閉弁する。ピストン16が上死点から下死点に移動するにともない、クランク室5aが正圧化傾向となり、クランク室5a内のオイルミストはカムギヤ室38、動弁室20に送出され、カムギヤ室38及び動弁室20の駆動部品を潤滑する。動弁室20に送出されたオイルミストは、動弁室20と油溜室7の圧力差を利用して、戻し油路40を介して油溜室7に戻される。
【0039】
なお、クランク室5aでは大きな圧力変化が得られるが、一方向弁10,13及びリード弁5bの作用により、動弁室20は油溜室7に対して常に正圧化傾向となり易くなっている。動弁室20と油溜室7の圧力差は、クランク室5aの圧力変化に応じて変化するが、クランク室5aの圧力変化の大きさほどに大きく変化しない。
【0040】
動弁室20はブリーザ通路42を介してエアクリーナ50に連通している。ブリーザ通路42には一方向弁43が設けられている。ブリーザ通路42はブローバイガスを排出することを目的として設けられており、動弁室20内のオイルミストやブローバイガスを含んだ空気は、ブリーザ通路42を流れてエアクリーナ50に供給される。一方向弁43はエアクリーナ50から動弁室20側への空気の逆流を規制する。
【0041】
エアクリーナ50には、オイルセパレータ50aにより気液分離された潤滑オイルをクランク室5aに環流するための戻し油路45が設けられており、この戻し油路45は送油通路9の一方向弁10より下流側の送油通路9に連通する。戻し油路45には送油通路側への流れのみを許容する一方向弁46が設けられている。
【0042】
動弁室20からブリーザ通路42を通ってエアクリーナ50に流れ込んだオイルミスト及びブローバイガスを含む空気は、エアクリーナ50内で液化した潤滑オイルとブローバイガスとに分離され、ブローバイガスは空気とともに気化器に送られ、液化した潤滑オイルはクランク室5aに送出される。なお、ブリーザ通路42の動弁室20側の開口42aは、動弁室20の上部中央付近に形成され、動弁室20内でオイルミストが液化して滞留しても、容易にブリーザ通路42からエアクリーナ50に送出されない構造となっていて、潤滑オイルの消費量の増大を防ぐことが可能になっている。
【0043】
動弁室20は、図1、図3(a)(断面図)、図3(b)(平面図)、図4(図3(a)のIII−III矢視相当の平面図)に示すように、その下部がシリンダブロック3により仕切られている。動弁室20には、ロッカーアーム37が前述したクランク軸15を中央にしてその両側にクランク軸15に沿って一対配置され、各ロッカーアーム37にバルブ20a,20b、バルブスプリング20c等が装着されている。動弁室20は、ロッカーアーム37の周りを囲む側板部22とロッカーアーム37の上方に配置されて側板部22の上部開口を塞ぐ天板部23とを有して有頂箱状に形成されたハウジング21内の内部空間であり、ハウジング21はシリンダブロック3の上部に装着されている。ハウジング21の上部には蓋部材25が載せられて、ボルト26等により蓋部材25及びハウジング21がシリンダブロック3に締結されている。
【0044】
天板部23には動弁室20内に延びる戻し油路27,28,29が設けられている。戻し油路27,28は、図2に示す軸連結部18側の端部に設けられ、戻し油路29は軸連結部側と反対側に設けられている。戻し油路27はロッカーアーム37が並設された幅方向の一端側近傍に設けられ、戻し油路28は幅方向の他端側近傍に設けられ、戻し油路29は幅方向の中央付近に設けられており、それぞれは底面となるシリンダブロック3の上面近傍位置まで延びて、各先端部に吸入口が開口している。
【0045】
戻し油路27,28,29はそれぞれが同一内径を有して、蓋部材25と天板部23との間に形成された戻し油路30と連通する。この戻し油路30は合流して一つとなって戻し油路40に接続される。戻し油路30と戻し油路40の接続は、図示しないが、耐熱性のゴム等の弾性材料管体を用いれば容易になる。戻し油路40の内径の断面積は、3つの戻し油路27,28,29の各内径の断面積の合計よりも大きい。
【0046】
天板部23の中央付近にはブリーザ口24が設けられている。このブリーザ口24は動弁室20の中央付近まで延び、蓋部材25に形成されたブリーザ通路31と連通している。ブリーザ通路31とブリーザ通路42の接続は、図示しないが、耐熱性のゴム等の弾性材料管体を用いれば容易になる。なお、蓋部材25と天板部23、及び側板部22とシリンダブロック3の上面との間に耐熱性のパンッキンを入れてもよい。
【0047】
前述したように、動弁室20は油溜室7に対して常に正圧化傾向となり易くなっているが、動弁室20は大気圧と同等又は大気圧よりやや正圧にするのがよい。この条件下で、動弁室20を油溜室7に対して正圧化傾向を強めるようにするとよい。また4サイクルエンジン1の駆動部品の潤滑状態を維持できる範囲で、潤滑オイルの動弁室20への流入量を極力減らすとよい。
【0048】
動弁室20への潤滑オイルの流入量の調整は、主に圧力調整通路12及び小孔9aの径の調整により行われる。前述したように油溜室7からクランク室5aへ送油する潤滑オイルの量が調整されて、クランク室5aからカムギヤ室38を経由して動弁室20への潤滑オイルの流入量が制限される。このように、動弁室20と油溜室7と大気圧との関係を調整し、さらに動弁室20への潤滑オイルの流入量の調整がなされることで、動弁室20に滞留する潤滑オイルの油溜室7への排出が容易となる。
【0049】
動弁室20に流入するオイルミストは、動弁室20に長時間滞留すると液化して滞留し、この潤滑オイルが過度に滞留すると、前述したように問題が起きるが、3つの戻し油路27,28,29の吸入口のうち少なくとも1つが滞留した潤滑オイルの油面下となると、動弁室20への潤滑オイルの流入量より流出量が高まり、動弁室20で潤滑オイルが過度に滞留することを防ぐことができる。
【0050】
そして、ブリーザ口24よりも下方に、3つの戻し油路27,28,29の吸入口のうち少なくとも1つが位置すれば、動弁室20で潤滑オイルが過度に滞留することを防ぐことができるとともに、ブリーザ口24から液化した潤滑オイルが放出され難くなり、潤滑オイルの消費量の増大を防止することができる。
【0051】
このように構成された4サイクルエンジン1を作業機の一例である刈払機に搭載すると、前述した4サイクルエンジン1の効果を顕著にあげることができる。この4サイクルエンジン1を搭載した刈払機60は、図5(側面図)に示すように、操作杆61の後端部に装着された4サイクルエンジン1と、操作杆61の前端部に回転自在に取り付けられた円板状の刈刃62と、刈刃62を覆うようにして操作杆61の前端部に装着された安全カバー63とを有して構成される。
【0052】
操作杆61の前端部にはギヤヘッド64が取り付けられており、4サイクルエンジン1の図示しない駆動軸とギヤヘッド64は、操作杆61内に設けられた図示しないドライブシャフトを介して連結されて、ギヤヘッド64に4サイクルエンジン1からの動力が伝達可能になっている。ギヤヘッド64には刈刃62が装着され、ギヤヘッド64を介して刈刃62に4サイクルエンジン1の動力が伝達されて回転するようになっている。
【0053】
操作杆61の中間部にはハンドル65が取り付けられており、このハンドル65には4サイクルエンジン1の動力を調整するための図示しないコントロールレバーが装着されている。作業者Mはハンドル65を把持して操作することによって、刈払作業を行う。
【0054】
ここで、図6(a)〜(d)及び図7(e)〜(k)は、4サイクルエンジン1を搭載した刈払機60の想定される作業姿勢を説明するための側面図を示し、図8(a)〜(d)及び図9(e)〜(k)は、図6及び図7に示す刈払機60の作業姿勢に対応する動弁室20内の潤滑オイルの滞留状態を説明するための断面図を示す。なお、図7(h)に示す刈払機60が通常の作業状態の姿勢である。
【0055】
図6(a)〜(d)及び図7(e)〜(k)に示す刈払機60の想定される作業姿勢では、図8(a)〜(d)及び図9(e)〜(k)に示すように、常にブリーザ口24よりも下方に、3つの戻し油路27,28,29の吸入口うち少なくとも1つが位置する。また動弁室20の内部で潤滑オイルAの滞留が起きたとしても、潤滑オイルAの滞留がブリーザ口24に被る前に、潤滑オイルAが図1に示す油溜室7に排出されて、動弁室20での過度の潤滑オイルの滞留を防止することができる。
【0056】
特に、図6(c)及び図6(d)に示す作業姿勢では、図8(c)及び図8(d)に示すように、想定される滞留する潤滑オイルAの油面とブリーザ口24の間隔は最も狭くなるが、容易にはブリーザ口24に滞留する潤滑オイルAが被ることはないので、ブリーザ口24から液化した潤滑オイルAが放出されることはない。
【0057】
このように、作業姿勢が大きく変化する刈払機60に前述した4サイクルエンジン1を搭載しても、想定される作業姿勢において、動弁室20において過度の潤滑オイルの滞留が起きることはなく、またブリーザ口24から液化した潤滑オイルが放出されることもない。なお、前述した4サイクルエンジン1は、軸連結部18が下方へ延びるいわゆるバーチカルの姿勢で通常使用されるカルチベータに使用することも可能である。
【0058】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の4サイクルエンジン1の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態においては、前述した第1の実施の形態の相違部分のみを説明し、第1の実施の形態と同一態様部分については同一符号を附してその説明を省略する。
【0059】
4サイクルエンジン1の動弁室20には、図1、図10(a)(断面図)及び図10(b)(平面図)に示すように、4つの戻し油路27,28,52,53が設けられている。戻し油路52及び戻し油路53は軸連結部側と反対側に設けられ、戻し油路52はロッカーアーム37が並設された幅方向の一端側近傍に設けられ、戻し油路53は幅方向の他端側近傍に設けられている。4つの戻し油路27,28,52,53は、それぞれが底面となるシリンダブロック3の上面の近傍位置まで延びて、各油路の先端部に吸入口が開口している。4つの戻し油路27,28,52,53はそれぞれが同一内径を有して、蓋部材25と天板部23との間に形成される戻し油路30'と連通し、戻し油路30'は合流して一つとなって図1に示す戻し油路40と接続される。戻し油路40の内径の断面積は、4つの戻し油路27,28,52,53の各内径の断面積の合計よりも大きい。
【0060】
動弁室20の圧力調整は、主に圧力調整通路12及び4つの戻し油路27,28,52,53の内径の調整により行われる。また動弁室20への潤滑オイルAの流入量の調整は、主に圧力調整通路12及び小孔9aの径の調整により行われる。
【0061】
第2の実施の形態は、戻し油路を3本から4本に増やし、そのうちの1つの吸入口が滞留する潤滑オイルAの油面下にあれば、動弁室20での過度の潤滑オイルAの滞留が防げるようになり、第1の実施の形態に示す作業姿勢よりも様々な作業姿勢で作業を可能にすることができる。
【0062】
但し、戻し油路を3本から4本に増やすと、4つの戻し油路27,28,52,53の吸入口のうちの1つが潤滑オイルAの油面下にあっても、そのままでは容易に潤滑オイルAを動弁室20から排出することができない。これは、残り3本の戻し油路の吸入口から吸入される空気の量が多くなって、油面下にある吸入口の戻し油路の吸引能力が低下するからである。
【0063】
そこで、潤滑オイルAの吸引能力を高めるために、4つの戻し油路27,28,52,53又は戻し油路30',40に潤滑オイルAを溜める図示しない溜部を設けるとよい。各戻し油路の内面には粘性の高い潤滑オイルAが付着しており、実質的に戻し油路の断面積は狭くなって、各戻し油路の吸入圧力は高められるが、溜部は、戻し油路の吸入口が油面下にない場合には、重力によって溜部に溜まった潤滑オイルAが戻し油路側に逆流し又は溜部側に移動して溜部に溜まるように形成すると、戻し油路の断面積を実質的により狭くすることができる。その結果、4つの戻し油路27,28,52,53の相互間で圧力バランスがとれ、4つの戻し油路27,28,52,53の吸入口のうちの1つが潤滑オイルAの油面下にあれば、潤滑オイルAを動弁室20から排出することができる。
【0064】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の4サイクルエンジンの第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態においては、前述した第2の実施の形態との相違部分のみを説明し、第2の実施の形態と同一態様部分については同一符号を附してその説明を省略する。
【0065】
4サイクルエンジン1の動弁室20には、図11(a)(断面図)、図11(b)(平面図)、図12(a)(部分側面図)、図12(b)(図11(a)のXI−XI矢視に相当する平面図)に示すように、6つの戻し油路27,28,29,52,53,54が設けられている。戻し油路29は、軸連結部側と反対側であってロッカーアーム37が並設された幅方向の中央付近に設けられ、戻し油路54は軸連結部側の端部近傍であって幅方向の中央付近に設けられている。戻し油路27,28,29は、底面となるシリンダブロック3の上面近傍位置まで延び、蓋部材25と天板部23との間に形成された戻し油路32と連通し、戻し油路32は合流して一つとなっている。また戻し油路52,53,54は、上面となる天板部23近傍で開口し、蓋部材25と天板部23との間に形成された戻し油路33と連通し、戻し油路33は合流して一つとなっている。
【0066】
戻し油路32と戻し油路33は切替装置70と接続され、切替装置70は戻し油路40に接続されている。切替装置70は、図12(c)(断面図)に示すように、切替装置70内に錘71を移動自在に設けており、4サイクルエンジン1の作業姿勢に応じて重力により移動可能である。この錘71は、動弁室20の底面よりも上面が上となる姿勢では、錘71が移動して、3つの戻し油路27,28,29と戻し油路40を連通し、動弁室20の底面よりも上面が下となる姿勢では、錘71が移動して、3つの吸入口52,53,54と戻し油路40を連通する。
【0067】
このように第3の実施の形態における6つの戻し油路27,28,29,52,53,54が設けられているが、切替装置70が作動することにより、6つの戻し油路27,28,29,52,53,54のうち3つの戻し油路が自動的に塞がれる。このため、第1の実施の形態と同様に動弁室20の圧力と潤滑オイルAの流入量を設定すれば、第2の実施の形態のような溜部を設ける必要はない。
【0068】
本実施の形態では、6つの戻し油路27,28,29,52,53,54の吸入口うち少なくとも1つが滞留した潤滑オイルAの油面下になると、動弁室20で潤滑オイルAが過度に滞留することを防止することができる。また常にブリーザ口24よりも下に6つの戻し油路27,28,29,52,53,54の吸入口のうち少なくとも1つが位置するので、ブリーザ口24から液化した潤滑オイルAが放出され難くなり、潤滑オイルAの消費が増大することを防止することができ、あらゆる作業姿勢で作業をすることが可能になる。
【0069】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の4サイクルエンジンの第4の実施の形態を説明する。第4の実施の形態においては、前述した第1の実施の形態の相違部分のみを説明し、第1の実施の形態と同一態様部分については同一符号を附してその説明を省略する。
【0070】
4サイクルエンジン1の動弁室には、図13(a)(断面図)及び図13(b)(平面図)に示すように、3つの吸入管73,74,75のそれぞれに切替部品77が挿着されている。吸入管73及び吸入管74は軸連結部側に設けられ、吸入管73はロッカーアーム37が並設された幅方向の一端側近傍に設けられ、吸入管74は幅方向の他端側近傍に設けられている。また吸入管75は、軸連結部側と反対側であって幅方向の中央付近に設けられている。吸入管73,74,75は上下方向に延び、これらの両端部は動弁室20の底面及び上面の近傍位置に延びて開口している。各吸入管73,74,75は、ハウジング21の側板部22に形成された対応する戻し油路78,79,80に連通している。各戻し油路78,79,80は四つ又形状の連結通路81に接続され、連結通路81は戻し油路40に接続される。
【0071】
各吸入管73,74,75内には切替部品77が挿着されている。切替部品77は棒状のステム77aとこの両端部に設けられたヘッド77bとを有してなり、ステム77aは吸入管73,74,75の内径よりも十分に小さく、ヘッド77bは吸入管73,74,75の両端部の開口を閉じることができる大きさに形成されている。つまり、切替部品77は吸入管73,74,75内を移動することで、吸入管両端の開口のいずれかを閉じる。この切替部品77は、4サイクルエンジン1の作業姿勢に応じて重力により移動する。この切替部品77は、動弁室20の底面よりも上面が上となる姿勢では、切替部品77が移動して、各吸入管73,74,75の底面側の開口を開いて各吸入管73,74,75と戻し油路40を連通し、動弁室20の底面よりも上面が下となる姿勢では、切替部品77が移動して、各吸入管73,74,75は上面側の開口が開いて各吸入管73,74,75と戻し油路40を連通する。
【0072】
本実施の形態では、3つの吸入管73,74,75を用意し6つの開口を備えるが、切替部品77の作動により開口のうち3つは自動的に塞がれる。このため、第1の実施の形態と同様に動弁室20の圧力と潤滑オイルAの流入量を設定すれば、第2の実施の形態のような溜部を設ける必要はない。
【0073】
また本実施の形態では、6つの開口のうち少なくとも1つが滞留した潤滑オイルAの油面下になると、動弁室20で潤滑オイルAが過度に滞留することを防止することができる。また常にブリーザ口24よりも下に6つの開口のうち少なくとも1つが位置するので、ブリーザ口24から液化した潤滑オイルAが放出され難くなり、潤滑オイルAの消費が増大することを防止することができ、あらゆる作業姿勢で作業をすることが可能になる。
【0074】
このように前述したこれらの実施の形態では、動弁室20と油溜室7が戻し油路40を介して連通し、動弁室20から油溜室7への潤滑オイルAを直接に戻すので、動弁室20からクランク室5aに潤滑オイルAを戻す場合と比較して、潤滑オイルの劣化を抑制することができ、動弁室20と油溜室7との圧力調整が容易であり、ブリーザ通路42を介してブローバイガスを潤滑系から容易に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる4サイクルエンジンの潤滑状態説明図を示す。
【図2】本発明の4サイクルエンジンの断面図を示す。
【図3】4サイクルエンジンの動弁室を示し、同図(a)は動弁室の断面図であり、同図(b)は動弁室の平面図である。
【図4】図3(a)のIII−III矢視相当の動弁室の平面図を示す。
【図5】本発明の4サイクルエンジンを搭載した刈払機の側面図を示す。
【図6】刈払機の想定される作業姿勢の側面図を示す。
【図7】刈払機の想定される作業姿勢の側面図を示す。
【図8】刈払機の作業姿勢に対応する動弁室内の潤滑オイルの滞留状態を表す断面図である。
【図9】刈払機の作業姿勢に対応する動弁室内の潤滑オイルの滞留状態を表す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係わる4サイクルエンジンの動弁室を示し、同図(a)は動弁室の断面図であり、同図(b)は動弁室の平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係わる4サイクルエンジンの動弁室を示し、同図(a)は動弁室の断面図であり、同図(b)は動弁室の平面図である。
【図12】第3の実施の形態に係わる4サイクルエンジンの動弁室を示し、同図(a)は動弁室の側面図であり、同図(b)は図11(a)のXI−XI矢視相当の動弁室の平面図であり、同図(c)は切替装置の断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係わる4サイクルエンジンの動弁室を示し、同図(a)は動弁室の断面面であり、同図(b)は動弁室の平面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 携帯型4サイクルエンジン
5a クランク室
7 油溜室
9 送油通路
9a 小孔
10,13 一方向弁
15 クランク軸(駆動部品)
18 連結軸部
20 動弁室
20a 吸気バルブ(駆動部品)
20b 排気バルブ(駆動部品)
27,28,29,52,53,54 戻し油路
35 バルブ駆動ギヤ(駆動部品)
36 カムギヤ(駆動部品)
37 ロッカーアーム(駆動部品)
42 ブリーザ通路
50 エアクリーナ
60 刈払機
70 切替装置(油路切替弁)
77 切替部品(油路切替弁)
A 潤滑オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク室の近傍に配設された油溜室に貯留する潤滑オイルを前記クランク室の圧力変動を利用して前記クランク室及び動弁室等に収容された駆動部品に送って潤滑して循環させ、前記動弁室とエアクリーナを連通するブリーザ通路を備え、ブローバイガスを前記動弁室から前記ブリーザ通路に流して前記エアクリーナに送る携帯型4サイクルエンジンにおいて、
前記動弁室内に、該動弁室に送られた潤滑オイルを循環させる戻し油路を3つ以上の複数設け、
これらの複数の戻し油路は、前記動弁室の外側で一つの油路に合流し、
前記ブリーザ通路の前記動弁室に連通する開口は、該動弁室の中央付近に設けられ、前記携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢において、前記開口の下方に前記複数の戻し油路の吸入口の少なくとも一つが位置することを特徴とする携帯型4サイクルエンジン。
【請求項2】
前記戻し油路は、前記油溜室に接続されることを特徴とする請求項1に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項3】
前記潤滑オイルの循環経路の途中に一方向弁を設けて、前記油溜室は、前記携帯型4サイクルエンジンが駆動中に前記動弁室及び大気圧より常に負圧化傾向となり、
前記油溜室と前記クランク室とを連通する潤滑オイルの送油通路に小孔を設け、該小孔は、前記携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢において、前記油溜室に貯留する潤滑オイルの油面上に位置し、前記小孔のサイズ調整によって前記動弁室に流入する潤滑オイルの油量調整が可能であり、
塵等によって前記戻し油路が詰まらない範囲の該戻し油路の内径調整によって、前記動弁室内の圧力は、大気圧と同等又はこれよりやや正圧となることを特徴とする請求項2に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項4】
前記複数の戻し油路の吸入口は、前記動弁室内であって前記クランク室内のクランク軸からの動力を受けて回転する回転軸を回転自在に連結支持する軸連結部側の前記動弁室の幅方向両端部と、前記動弁室内の前記軸連結部側と反対側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項5】
前記動弁室内の前記軸連結部側と反対側に設けられた戻し油路の吸入口は、前記動弁室の幅方向中央付近に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項6】
前記動弁室内に設けられた戻し油路の吸入口は、該動弁室内の底面の近傍位置に設けられることを特徴とする請求項4又は5に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項7】
前記携帯型4サイクルエンジンが使用される姿勢に応じて、前記複数の戻し油路の吸入口のうちの、鉛直方向下側に位置する吸入口を前記油溜室に連通し、鉛直方向上側に位置する吸入口を前記油溜室と非連通状態にする油路切替弁を設けることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれかに記載の携帯型4サイクルエンジンを搭載したことを特徴とする作業機。
【請求項9】
前記作業機が刈払機であることを特徴とする請求項8に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−263069(P2007−263069A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91990(P2006−91990)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000237215)株式会社マキタ沼津 (27)
【Fターム(参考)】