説明

新規スルホン酸塩、スルホン酸オニウム塩及びスルホン酸誘導体とその製造方法

【課題】炭素数5以上のパーフルオロアルカンスルホン酸を含まずに、十分に強い酸を発生する酸発生剤を提供する。更には、ArFエキシマレーザー光に対して高感度で、露光時の露光量のズレに対しても解像性の劣化を伴わない、露光余裕度を有するレジスト組成物を構成する酸発生剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩によって、前記課題は解決する。


(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。) 一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩は3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを出発原料に用い、アルコーリシス(第1工程)、加水分解(第2工程)、塩交換(第3工程)の3工程で製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工技術、特にフォトリソグラフィーに適した化学増幅レジスト材料として有用な、光酸発生剤及びそれを構成する含フッ素スルホン酸オニウム塩とそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には露光光源の短波長化があり、例えば水銀灯のi線(365nm)からKrFエキシマレーザー(248nm)への短波長化により64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産が可能になった。更に集積度256M及び1G以上のDRAM製造を実現するため、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが本格的に検討されており、高NAのレンズ(NA≧0.9)と組み合わせることにより65nmノードのデバイスの検討が行われている。その次の45nmノードのデバイス製作には波長157nmのF2レーザーの利用が候補に挙げられたが、スキャナーのコストアップ、光学系の変更、レジストの低エッチング耐性等に代示される多くの問題により適用が先送りされた。そして、F2リソグラフィーの代替として提案されたのがArF液浸リソグラフィーであり、現在その早期導入に向けて開発が進められている。
【0003】
このような露光波長に適したレジストとして、「化学増幅型レジスト材料」が注目されている。これは、放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を形成する感放射線性酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という)を含有し、露光により発生した酸を触媒とする反応により、露光部と非露光部との現像液に対する溶解度を変化させてパターンを形成させるパターン形成材料である。
【0004】
このような化学増幅型レジスト材料に用いられる光酸発生剤に関しても種々の検討がなされてきた。従来のKrFエキシマレーザー光を光源とした化学増幅型レジスト材料に用いられてきたようなアルカンあるいはアレーンスルホン酸を発生する光酸発生剤を上記のArF化学増幅型レジスト材料の成分として用いた場合には、樹脂の酸不安定基を切断するための酸強度が十分でなく、解像が全くできない、あるいは低感度でデバイス製造に適さないことがわかっている。
【0005】
このため、ArF化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤としては、酸強度の高いパーフルオロアルカンスルホン酸を発生するものが一般的に使われているがパーフルオロオクタンスルホン酸、あるいはその誘導体は、その頭文字をとりPFOSとして知られており、C−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっている。更に炭素数5以上のパーフルオロアルカンスルホン酸、あるいはその誘導体も上記問題が提起され始めている。
【0006】
このようなPFOSに関する問題に対処するため、各社よりフッ素の置換率を下げた部分フッ素置換アルカンスルホン酸の開発が行われている。例えば、特許文献1には、α,α−ジフルオロアルケンと硫黄化合物によりα,α−ジフルオロアルカンスルホン酸塩を開発し、露光によりこのスルホン酸を発生する光酸発生剤、具体的にはジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム=1,1−ジフルオロ−2−(1−ナフチル)エタンスルホナートを含有するレジスト材料が公開されており、更に、特許文献2には、α,α,β,β−テトラフルオロ−α−ヨードアルカンと硫黄化合物によるα,α,β,β−テトラフルオロアルカンスルホン酸塩の開発とこのスルホン酸を発生する光酸発生剤及びレジスト材料が公開されている。また、特許文献3には、合成方法の記載の無いものの本文中にはジフルオロスルホ酢酸アルキルエステル(1−(アルコキシカルボニル)−1,1−ジフルオロメタンスルホナート)、ジフルオロスルホ酢酸アミド(1−カルバモイル−1,1−ジフルオロメタンスルホンネート)などを有する光酸発生剤が開示され、更に、特許文献4には、合成例の記載のないもののトリフェニルスルホニウム (アダマンタン−1−イルメチル)オキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート、特許文献5にはラクトン骨格を有するトリフェニルスルホニウム アルキルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナートなどが開示されている。また特許文献6にはトリフェニルスルホニウム 2−アシルオキシ−1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホナートなども開示されている。
【0007】
しかし、上記特許文献の物質は共に実質上アルカンスルホン酸塩のα位はフッ素置換であり、一般式上はフルオロアルキル基置換も記載されているものの、原料を含めフルオロアルキル置換のアルカンスルホン酸塩の具体例はない。尚、ポリ(t−ブトキシカルボニル−オキシ−スチレン)及び特定のフッ素含有アニオンを有するスルホン酸塩のレジスト組成物が開示されている。合成例の記載は無いものの1−ペンタフルオロエトキシカルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸 ジフェニル−(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウムが特許文献7により開示されているがフッ素含有量が高い為、疎水性、親油性に由来する生体濃縮性、蓄積性の懸念があり好ましくない。
【0008】
また、液浸露光においては露光後のレジストウエハー上に微少な水滴が残ることによる欠陥に起因するレジストパターン形状の不良、現像後のレジストパターンの崩壊やT−top形状化といった問題点があり、液浸リソグラフィーにおいても現像後に良好なレジストパターンを得られるパターン形成方法が求められている。
【0009】
更に実際のデバイス作成の際にはある程度の露光量のズレが有り得る為、露光量が多少ずれた時でもほぼ同一のパターン形状を保つ露光余裕度を持つことが求められている。パターンルールのより一層の微細化が求められる中、感度、基板密着性、エッチング耐性において優れた性能を発揮することに加え、解像性の劣化を伴わない、露光余裕度を有する事が必要とされているのである。
【特許文献1】特表2004−531749号公報
【特許文献2】特開2004−2252号公報
【特許文献3】特開2002−214774号公報
【特許文献4】特開2004−4561号公報
【特許文献5】特開2006−306856号公報
【特許文献6】欧州公開特許1710230A1号公報
【特許文献7】東独公開特許DD295421A5号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、炭素数5以上のパーフルオロアルカンスルホン酸を含まずに、十分に強い酸を発生する酸発生剤を提供することを目的とする。更には、ArFエキシマレーザー光に対して高感度で、基板密着性、エッチング耐性において優れた性能を発揮することに加え、露光時の露光量のズレに対しても解像性の劣化を伴わない、露光余裕度を有するレジスト組成物を構成する酸発生剤を提供することを目的とする。また、より具体的に、該酸発生剤として使用できるスルホン酸オニウム塩を提供することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、上記スルホン酸オニウム塩を簡便に効率よく製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
光酸発生剤から発生する酸としては、十分な酸強度があること、レジスト組成物中で適切な拡散があること、十分高い沸点を有し揮発性が少ないこと、水への溶出が少ないこと、使用後は環境に付加をかけずに分解できること等、様々なことが求められる。その中でも、酸強度と環境負荷の問題は重要である。これまで、酸強度と環境負荷の双方を共に制御することは困難であった。具体的には、フッ素含量を上げれば上げるほど酸強度は高くなる傾向にあるが、それにともなって生態濃縮性、蓄積性といった環境負荷の問題が大きくなってしまう。このようなことから、従来の光酸発生剤から発生した酸は上記の要求を全て満たすには至っていない。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、スルホン酸塩のα位に1つのトリフルオロメチル基と1つのフッ素原子有する、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸類を発生する酸発生剤、特に下記一般式(1)で示されるスルホン酸が、フッ素含量が少ないにもかかわらず、十分に強い酸であることを知見した。さらに該スルホン酸を発生する酸発生剤が、ArFエキシマレーザー光に対して高感度であり、かつ基板密着性、エッチング耐性において優れた性能を発揮することに加え、露光時の露光量のズレに対しても解像性の劣化を伴わない、露光余裕度を有するレジスト組成物を構成することができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0014】
本発明の光酸発生剤は、スルホン酸塩のα-位にフッ素基(−F)と、トリフルオロメチル基を、同時に有するのが最大の特徴である。前述したように、フッ素含量が高く、C−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が懸念されるようなスルホン酸オニウム塩(特許文献7など)の中にはスルホン酸塩のα-位にトリフルオロメチル基を有するものが知られているが、このような光酸発生剤は現在使用するのが困難である。そして、ArF化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤として従来知られていた、フッ素の置換率を下げた部分フッ素置換アルカンスルホン酸オニウム塩類(特許文献1乃至特許文献6)はいずれもスルホン酸塩のα-位には2つのフッ素原子しか存在しない。本発明の光酸発生剤はこれら従来の光酸発生剤(特許文献1乃至特許文献6)に比べ、光を照射することで発生する酸(光発生酸)の酸強度に関して、有意に強い酸が発生する。本発明では、少ないフッ素数(スルホン酸塩のα-位のフッ素基(−F)と、トリフルオロメチル基でフッ素原子として合計4個)で、従来のものより強い酸を発生させることができる。こうした特徴のある酸を発生させる酸発生剤を使用することで、上記課題を解決できた。
【0015】
また、本発明のスルホン酸オニウム塩類は、末端にエステル部位を有するため、対応するアルコールがあれば必要に応じて構造の異なるエステルを導入でき、自由に性能を制御することができる。具体的には、分子量の大きなエステル類や嵩高いエステル類を導入することによって発生するスルホン酸の沸点を適度に調節することが可能であり、また、脂溶性の高いエステル類を導入することによって、レジスト溶剤に対する溶解性やベース樹脂との相溶性を適度に調節することが可能であるため、上記課題の解決に寄与できる。
【0016】
更に、本発明のスルホン酸オニウム塩類の製造方法はこれまでほとんど知られていなかったが、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、入手が容易な3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを原料としてわずか3工程で簡便に製造する方法を見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は、
[発明1]
下記一般式(6)で示されるスルホン酸塩。
【0018】
【化24】

【0019】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオンを示す。)
[発明2]
下記一般式(6’)で示されるスルホン酸塩。
【0020】
【化25】

【0021】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオンを示す。)
[発明3]
下記一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩。
【0022】
【化26】

【0023】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0024】
+は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0025】
【化27】

【0026】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【0027】
【化28】

【0028】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0029】
【化29】

【0030】
前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
[発明4]
下記一般式(2’)で示されるスルホン酸オニウム塩。
【0031】
【化30】

【0032】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0033】
+は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0034】
【化31】

【0035】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【0036】
【化32】

【0037】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0038】
【化33】

【0039】
前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
[発明5]
下記一般式(3a)で示されるN−スルホニルオキシイミド化合物。
【0040】
【化34】

【0041】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
[発明6]
下記一般式(3a’)で示されるN−スルホニルオキシイミド化合物。
【0042】
【化35】

【0043】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
[発明7]
下記一般式(3b)で示されるオキシムスルホナート化合物。
【0044】
【化36】

【0045】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。qは0又は1を示すが、qが0の場合、pは置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基を示し、qが1の場合には、pは単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリーレン基を示す。EWGはシアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ニトロ基又はメチル基を示し、qが1の場合、互いのEWGが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数6の環を形成しても良い。)
[発明8]
下記一般式(3b’)で示されるオキシムスルホナート化合物。
【0046】
【化37】

【0047】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。qは0又は1を示すが、qが0の場合、pは置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基を示し、qが1の場合には、pは単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリーレン基を示す。EWGはシアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ニトロ基又はメチル基を示し、qが1の場合、互いのEWGが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数6の環を形成しても良い。)
[発明9]
次の3工程よりなる、一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩の製造方法。
第1工程:3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを下記一般式(4)で示されるアルコール
【0048】
【化38】

【0049】
でアルコーリシスして、下記一般式(5)で示されるスルホニルフルオリド
【0050】
【化39】

【0051】
を得る工程。
第2工程:第1工程で得られたスルホニルフルオリドに対し、下記一般式(8)で示される強塩基
【0052】
【化40】

【0053】
を、該スルホニルフルオリドに対して1当量よりも少ない量を使用して加水分解を実施し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸塩
【0054】
【化41】

【0055】
を得る工程。
第3工程:第2工程で得られたスルホン酸塩を、一般式(7)で示される一価のオニウム塩
【0056】
【化42】

【0057】
を用いて塩交換し、一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩を得る工程。
(前記一般式(4)から一般式(6)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。一般式(8)において、Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンまたはバリウムイオンを示し、Bはヒドロキシイオン、ヒドリド、炭素数1〜12のアルカニド(アルキルアニオン)を示す。一般式(6)において、Mは一般式(8)に同じである。一般式(7)においてQは下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0058】
【化43】

【0059】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【0060】
【化44】

【0061】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0062】
【化45】

【0063】
前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Xは1価のアニオンを示す。)
[発明10]
第1工程において、該アルコールが下記一般式(4’)で示されるアルコール
【0064】
【化46】

【0065】
であることを特徴とする発明9に記載のスルホン酸オニウム塩の製造方法。
(前記一般式(4’)において、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
[発明11]
強塩基が水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであることを特徴とする発明10に記載のスルホン酸オニウム塩の製造方法。
【0066】
[発明12]
発明9乃至11のいずれかにおいて、第2工程の加水分解反応で得られた反応液に、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のニトリル類を添加して、生成したスルホン酸塩を抽出分離し、該スルホン酸塩を続く第3工程に供することを特徴とする発明9乃至11のいずれかに記載のスルホン酸オニウム塩の製造方法。
【0067】
[発明13]
発明9乃至12のいずれかにおいて、第2工程における強塩基が、スルホニルフルオリドに対して0.3から0.7当量の水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであり、
それらの強塩基が水溶液として反応に供され、かつ第2工程の反応終了後に、得られた反応液を炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のエーテル類で洗浄した後に、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のニトリル類を用いて得られたスルホン酸塩を抽出し分離することを特徴とする、発明12に記載の方法。
【0068】
[発明14]
1−(1−アダマンチル)メトキシカルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸 トリフェニルスルホニウム。
【発明の効果】
【0069】
本発明のスルホン酸オニウム塩は、構造中のフッ素原子の割合が少ないために生態濃縮性、蓄積性に関する懸念が小さく、スルホン酸塩のα−位にトリフルオロメチル基を有するため、露光により発生する酸の酸性度が十分高い。さらにこのスルホン酸オニウム塩を光酸発生剤としてレジスト組成物を形成させた場合、ArFエキシマレーザー光に対して高感度で、基板密着性、エッチング耐性において優れた性能を発揮することに加え、解像性の劣化を伴わない、露光余裕度を有するレジスト組成物を構成することができる。また、このスルホン酸オニウム塩を簡便に製造することができる。本発明は以上のような優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0071】
[スルホン酸塩]
本発明のスルホン酸塩は、下記一般式(6)もしくは下記一般式(6’)で示されるものである。
【0072】
【化47】

【0073】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、またはテトラメチルアンモニウムイオンを示す。)
【0074】
【化48】

【0075】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、またはテトラメチルアンモニウムイオンを示す。)
ここで一般式(6)におけるRをより具体的に示すと、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、1−アダマンタンメチル基、2−アダマンタンメチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アントラニル基、2−フラニル基などが挙げられ、置換基としてカルボニル基、ラクトン、ヒドロキシル基を含むものの例としては下記のものが挙げられる。
【0076】
【化49】

【0077】
一般式(6’)におけるR’の具体例としては水素原子及び上述したRを再び挙げることができる。
【0078】
一般式(6)もしくは一般式(6’)におけるMとしてはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、またはテトラメチルアンモニウムイオンを示したが、これは合成の簡便さ、スルホン酸の単離のしやすさを考慮してのものである。これ以外のカチオン、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン等を用いても良く、安定なスルホン酸として存在できるものであれば特に制限されるものではない。
【0079】
[光酸発生剤]
本発明の光酸発生剤は、上記一般式(6)もしくは一般式(6’)のスルホン酸塩を原料として誘導されたスルホニウム塩、ヨードニウム塩、オキシムスルホナート、スルホニルオキシイミドに代表される化合物であり、これは紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線照射の高エネルギー線に感応し、下記一般式(1)もしくは一般式(1’)で示されるスルホン酸を発生するもので、化学増幅レジスト組成物用の光酸発生剤として用いられるものである。
【0080】
【化50】

【0081】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
【0082】
【化51】

【0083】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い)
ここで一般式(1)におけるRは、上記一般式(6)におけるRと同じであり、また、一般式(1’)におけるR’は水素原子及び上記一般式(6)におけるRと同じである。
【0084】
一般式(1)で示されるスルホン酸を具体的に下記に示す。
【0085】
【化52】

【0086】
この中でも一般式(1’)で示されるスルホン酸である下記のスルホン酸が好ましい。
【0087】
【化53】

【0088】
より好ましくは下記のスルホン酸である。
【0089】
【化54】

【0090】
[スルホン酸オニウム塩]
本発明のスルホン酸オニウム塩は、下記一般式(2)もしくは下記一般式(2’)で示されるものである。
【0091】
【化55】

【0092】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Q+に関しての詳細は後述する。)
【0093】
【化56】

【0094】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Q+に関しての詳細は後述する。)
ここで一般式(2)におけるRは、上記一般式(6)におけるRと同じであり、また、一般式(2’)におけるR’は水素原子及び上記一般式(6)におけるRと同じである。
【0095】
一般式(2)もしくは一般式(2’)におけるQ+は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)もしくは下記一般式(d)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0096】
【化57】

【0097】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【0098】
【化58】

【0099】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0100】
【化59】

【0101】
前記一般式(c)において、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR及びRが相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成しても良い。
【0102】
【化60】

【0103】
前記一般式(d)において、Rは一般式(b)におけるR置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
以下に一般式(a)および一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、一般式(c)および一般式(d)で示されるヨードニウムカチオンについて詳述する。
【0104】
一般式(a)で示されるスルホニウムカチオン
一般式(a)におけるR、R及びRとしては具体的に以下のものが挙げられる。アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、1−アダマンタンメチル基、2−アダマンタンメチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等やp−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。また、R、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子を介して環状構造を形成する場合には、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等が挙げられる。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−(アクリロイルオキシ)フェニル基、4−(メタクリロイルオキシ)フェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。
【0105】
より具体的に一般式(a)で示されるスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブチルフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブチルフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブチルフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、(4−メトキシフェニル)ジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、(2−オキソシクロヘキシル)シクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル 2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0106】
更には、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルジメチルスルホニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルジメチルスルホニウム等が挙げられる。これら重合可能なスルホニウムカチオンに関しては、特開平4−230645号公報、特開2005−84365号公報等を参考にすることができる。
【0107】
一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン
一般式(b)におけるR−(O)n−基の置換基位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。ここでnは0(零)又は1である。Rとしては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アントラニル基、2−フラニル基、更にn=1の場合に、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0108】
具体的なスルホニウムカチオンとしては、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−エチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−シクロヘキシルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−オクチル)フェニルジフェニルスルホニウム、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−エトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−シクロヘキシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−トリフルオロメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−トリフルオロメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0109】
一般式(c)で示されるヨードニウムカチオン
一般式(c)におけるR−(O)n−基の置換基位置は特に限定されるものではないが、フェニル基の4位あるいは3位が好ましい。より好ましくは4位である。ここでnは0(零)又は1である。Rの具体例は上述した一般式(b)におけるRと同じものを再び挙げることができる。
【0110】
具体的なヨードニウムカチオンとしては、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム等が挙げられるが、中でもビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムが好ましく用いられる。
【0111】
[N−スルホニルオキシイミド化合物]
本発明は、下記一般式(3a)もしくは下記一般式(3a’)で示されるN−スルホニルオキシイミド化合物をも提供する。
【0112】
【化61】

【0113】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
【0114】
【化62】

【0115】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
ここで一般式(3a)におけるRは、上記一般式(6)におけるRと同じであり、また、一般式(3a’)におけるR’は水素原子及び上記一般式(6)におけるRと同じである。
【0116】
スルホン酸部位を除くイミド骨格を下記に例示する。また、イミド骨格は特開2003−252855号公報を参考にできる。
【0117】
【化63】

【0118】
次いで、一般式(3a)もしくは一般式(3a’)で示されるN−スルホニルオキシイミド化合物の合成方法について説明する。これらの化合物の合成方法は、前述した特開2003−252855号公報や、該公報に記載の特開2001−199955号公報等を参考にすることができる。具体的には、まず、一般式(6)もしくは一般式(6’)で示されるスルホン酸塩を、五塩化リン、塩化チオニル、オキシ塩化リン等を用いてスルホニルクロリドに変換する。次いで、市販の、もしくは対応するジカルボン酸とヒドロキシルアミンから合成した一般式(i)で示されるN−ヒドロキシジカルボキシイミド
【0119】
【化64】

【0120】
(式中、T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
と反応させる。N−ヒドロキシジカルボキシイミドとしては下記に示すものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
【化65】

【0122】
目的のN−スルホニルオキシイミド化合物は、上述したスルホニルクロリドと一般式(i)で示されるN−ヒドロキシジカルボキシイミドとを、THF、ジクロロメタン等の溶剤に溶解し、塩基性条件下で反応させるか、トリエチルアミンやピリジンのような塩基性溶媒中で反応させることによって得ることができる([反応式a]及び[反応式a’])。
【0123】
【化66】

【0124】
【化67】

【0125】
[オキシムスルホナート化合物]
本発明は、また、下記一般式(3b)もしくは下記一般式(3b’)で示されるオキシムスルホナート化合物を提供する。
【0126】
【化68】

【0127】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。qは0又は1を示すが、qが0の場合、pは置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基を示し、qが1の場合には、pは単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリーレン基を示す。EWGはシアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ニトロ基又はメチル基を示し、qが1の場合、互いのEWGが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数6の環を形成しても良い。)
【0128】
【化69】

【0129】
(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。qは0又は1を示すが、qが0の場合、pは置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基を示し、qが1の場合には、pは単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリーレン基を示す。EWGはシアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ニトロ基又はメチル基を示し、qが1の場合、互いのEWGが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数6の環を形成しても良い。)
ここで一般式(3b)におけるRは、上記一般式(6)におけるRと同じであり、また、一般式(3b’)におけるR’は水素原子及び上記一般式(6)におけるRと同じである。
【0130】
これらオキシムスルホナートの骨格は米国特許6261738号明細書、特開平9−95479号公報、特開平9−208554号公報、特開平9−230588号公報、特許第2906999号公報、特開平9−301948号公報、特開2000−314956号公報、特開2001−233842号公報、国際公開第2004/074242号公報に記載されている。
【0131】
スルホン酸部位を除くより具体的なオキシムスルホナートの骨格を下記に示す。
【0132】
【化70】

【0133】
次いで、一般式(3b)もしくは一般式(3b’)で示されるオキシムスルホナート化合物の合成方法について説明する。これらの化合物の合成方法は、前述した特許文献等を参考にすることができる。具体的には、まず、一般式(6)もしくは一般式(6’)で示されるスルホン酸塩を、五塩化リン、塩化チオニル、オキシ塩化リン等を用いてスルホニルクロリドに変換する。次いで、市販の、もしくは対応するケトンとヒドロキシルアミンから合成した一般式(ii)で示されるオキシム
【0134】
【化71】

【0135】
と反応させる。オキシムとしては下記に示すものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
【化72】

【0137】
目的のオキシムスルホナート化合物は、上述したスルホニルクロリドと一般式(ii)で示されるオキシムとを、THF、ジクロロメタン等の溶剤に溶解し、塩基性条件下で反応させるか、トリエチルアミンやピリジンのような塩基性溶媒中で反応させることによって得ることができる([反応式b]及び[反応式b’])。
【0138】
【化73】

【0139】
【化74】

【0140】
[スルホン酸オニウム塩の製造方法]
次に一般式(2)で示される含フッ素スルホン酸オニウム塩の製造方法について説明する。
【0141】
一般式(2)で示される含フッ素スルホン酸オニウム塩の製造方法はこれまで殆ど知られていない。前述したように、類似した構造を有する、1−ペンタフルオロエトキシカルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸 ジフェニル−(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウムが東独公開特許DD295421A5号公報に開示されているが、該文献には該オニウム塩の製造法が記載されていない。
【0142】
また、一般式(6)で示されるスルホン酸塩、すなわち、スルホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、またはバリウム塩もこれまで殆ど知られておらず、従って製造方法も知られていない。
【0143】
そこで本発明者らは、従来知られていた、アルキルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホン酸オニウム塩の製造方法を、本発明の一般式(2)もしくは一般式(2’)で示される含フッ素スルホン酸オニウム塩の製造に適用しようと試みた。
【0144】
特開2004−117959号公報には、2−(フルオロスルホニル)ジフルオロ酢酸メチルを、4.8%の炭酸水素ナトリウム水溶液(3当量)を用いてメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホン酸ナトリウムへと変換し、更にトリフェニルスルホニウムクロライドの水溶液を用いてスルホニウム塩へと変換し、トリフェニルスルホニウム メトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナートを得る方法が開示されている[反応式1]。
【0145】
【化75】

【0146】
そこで本発明者らは、3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを出発原料に用い、Izvestiya AkademiiNauk SSSR, Seriya Khimicheskaya、1967年、第8号、1754頁〜1758頁に開示されている方法を用い、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸メチルを得、上記特許文献の反応条件に準じて、4.8%の炭酸水素ナトリウム水溶液(3当量)を用いて反応を試みたが、反応は進行せず、目的とする1−メトキシカルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは得られなかった[反応式2][比較例1]。
【0147】
【化76】

【0148】
特開2006−306856号公報(特許文献5)には、2−(フルオロスルホニル)ジフルオロ酢酸メチルを、30%の水酸化ナトリウム水溶液(3.3当量)を用いてジフルオロ−ヒドロキシカルボニルメタンスルホン酸ナトリウムへと変換した後に、1−アダマンタンメタノールなどを用いてエステル化を行い、更にトリフェニルスルホニウムクロライドを用いてスルホニウム塩へと変換し、トリフェニルスルホニウム 1−アダマンチルメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナートを得る方法が開示されている[反応式3]。
【0149】
【化77】

【0150】
そこで2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸メチルを用い、上記特許文献の反応条件に準じて、30%の水酸化ナトリウム水溶液(3.3当量)を用いて反応を試みたところ、目的とする1,2,2,2−テトラフルオロ1−ヒドロキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウム(下式(i))
【0151】
【化78】

【0152】
は得られず、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−スルホプロピオン酸二ナトリウム塩と1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムの混合物が得られた。この混合物を酸を用いて処理したところ、やはり1,2,2,2−テトラフルオロ1−ヒドロキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウム(式(i))は得られず、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムのみが得られた[反応式4][比較例2]。
【0153】
【化79】

【0154】
更に、式(i)で示される、1,2,2,2−テトラフルオロ1−ヒドロキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを得るために、3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを出発原料に用い、Inorganic Chemistry、1991年、第30巻、第25号、4821頁〜4826頁に開示されている方法を用いて、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸フルオリドを得、これを水酸化ナトリウムで処理した後、酸を用いて処理したところ、やはり1,2,2,2−テトラフルオロ1−ヒドロキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウム(式(i))は得られず、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムのみが得られた[反応式5][比較例3]。
【0155】
【化80】

【0156】
また、Journal of American Chemical Society、1960年、第82巻、6181頁に、3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを加水分解すると、プロピオン酸類縁体は得られず、脱炭酸反応が生じて、専ら1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸フルオリドが得られることが開示されている[反応式6]。
【0157】
【化81】

【0158】
以上のことから、式(i)で示される、1,2,2,2−テトラフルオロ1−ヒドロキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを得た後に、エステル化反応を行って本発明の一般式(2)で示される含フッ素スルホン酸オニウム塩を得る方法は困難であることが確かめられた。
【0159】
次に、予めエステル部位を構築しておいてスルホナート部位を最後に導入する検討を行った。具体的には2−ブロモ−2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸1−アダマンタンメチルを原料に用い、特開2004−117959号公報に開示されているのと同様のスルフィン化・酸化反応の条件の下、反応を実施した。その結果、原料は消費されたものの、専ら脱臭素化が発生し、目的とする1−アダマンタンメトキシカルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは得られなかった[反応式7][比較例4]。
【0160】
【化82】

【0161】
ところで、米国特許2,852,554号公報には、3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを2−エチルヘキサノールを用いてアルコーリシスを行い、対応する2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸(2−エチルヘキシル)を得る方法が開示されている[反応式8]が、
【0162】
【化83】

【0163】
このスルホニルフルオリドをスルホン酸に変換する方法は開示されていない。
【0164】
本発明者らは、上記特許文献(米国特許2,852,554号公報)に記載のアルコーリシス反応を参考にした上で、続く加水分解反応の条件検討を鋭意実施した。その結果、下記[反応式9]に従って、第1工程から第3工程の3工程を経ることによって、簡便に一般式(2)で示される含フッ素スルホン酸オニウム塩が得られることを見出した。
【0165】
【化84】

【0166】
即ち、これらの工程とは、以下の通りである。
第1工程:3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを下記一般式(4)で示されるアルコール
【0167】
【化85】

【0168】
でアルコーリシスして、下記一般式(5)で示されるスルホニルフルオリド
【0169】
【化86】

【0170】
を得る工程。
第2工程:第1工程で得られたスルホニルフルオリドに対し、下記一般式(8)で示される強塩基
【0171】
【化87】

【0172】
を、該スルホニルフルオリドに対して1当量よりも少ない量を使用して加水分解を実施し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸塩
【0173】
【化88】

【0174】
を得る工程。
第3工程:第2工程で得られたスルホン酸塩を、一般式(7)で示される一価のオニウム塩
【0175】
【化89】

【0176】
を用いて塩交換し、一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩を得る工程。
(前記一般式(4)から一般式(6)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。一般式(8)において、Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンまたはバリウムイオンを示し、Bはヒドロキシイオン、ヒドリド、炭素数1〜12のアルカニド(アルキルアニオン)を示す。一般式(6)において、Mは一般式(8)に同じである。一般式(7)においてQは下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【0177】
【化90】

【0178】
前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【0179】
【化91】

【0180】
前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【0181】
【化92】

【0182】
前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Xは1価のアニオンを示す。)
なお、本発明のスルホン酸オニウム塩を製造するためには、上記3つの反応工程を、この順序に従って実施することが重要であり、前述したとおり、これ以外の方法では、目的とするスルホン酸オニウム塩を製造することは困難である。
【0183】
以下各工程について詳細に説明する。
【0184】
第1工程
まず第1工程につき説明する。第1工程は3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを一般式(4)で示されるアルコールでアルコーリシスして、一般式(5)で示されるスルホニルフルオリドを得る工程である。
【0185】
ここで一般式(4)におけるRは、上述したRと同じである。具体的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール及び下記に示すアルコールが例示できる。
【0186】
【化93】

【0187】
この中でも一般式(4’)で示されるアルコール
【0188】
【化94】

【0189】
(前記一般式(4’)において、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
である下記のアルコールが好ましい。すなわち、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール及び下記に示すアルコールが例示できる。
【0190】
【化95】

【0191】
より好ましくは下記に示すアルコールである。
【0192】
【化96】

【0193】
一般式(4)もしくは一般式(4’)で示されるアルコールの使用量は、3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドに対して、通常0.5〜3.0倍当量、好ましくは0.7〜1.3倍当量である。
【0194】
本工程は溶媒を使用しなくても実施できるが、溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類などが例示でき、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等のアルカン類が好ましいが、これらに限られない。
【0195】
また、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。溶媒の使用量は、3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドに対して、通常0.2〜10倍容量、好ましくは0.5〜5倍容量の範囲から適宜選択される。
【0196】
反応温度は、−50℃から100℃であり、好ましくは0℃から使用する溶媒の還流温度程度であり、より好ましくは10℃から40℃である。また、反応時間は1〜24時間程度であるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し、原料である3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドが消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0197】
反応終了後の反応物の処理は、通常の有機合成の処理法に基づいて行えばよい。例えば、反応液に水を添加し、酢酸エチル、トルエン、ジイソプロピルエーテルなどの有機溶媒にて抽出した後、乾燥剤等で水分を除去、溶媒留去することもできる。
【0198】
第2工程
次いで第2工程について説明する。本工程は第1工程で得られたスルホニルフルオリドを、該スルホニルフルオリドに対して1当量よりも少ない量の強塩基の存在下、加水分解し、一般式(6)で示されるスルホン酸塩を得る工程である。
【0199】
本工程で使用される一般式(8)で示される強塩基としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのような無機塩基や、n−ブチルリチウムやs−ブチルリチウムなどの有機リチウム試薬のような有機塩基が例示できるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのような弱塩基を使用した場合には反応が進行しない[比較例6〜8]。
【0200】
本工程で使用される強塩基の使用量は、スルホニルフルオリドに対して1当量よりも少ない量であり、0.2から0.9当量が好ましく、より好ましくは0.3から0.7当量である。1当量以上使用すると、目的とするスルホン酸塩が分解してしまい、収率が低下する。[比較例5及び比較例9]、0.2当量より少ないと反応が十分進行せず、目的とするスルホン酸塩があまり得られない。
【0201】
強塩基は希釈せずに使用することもできるが、3から40%重量濃度の水溶液としてスルホニルフルオリドに対して添加するのが好ましく、5から20%重量濃度の水溶液がより好ましい。
【0202】
本工程は溶媒を使用しなくても実施できるが、溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、例えば水や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のアルキルケトン類、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリルなどのニトリル類などが例示でき、水もしくはアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類が好ましいが、これらに限られない。
【0203】
また、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。溶媒の使用量は、スルホニルフルオリドに対して、通常0.2〜20倍容量、好ましくは1〜10倍容量の範囲から適宜選択される。
【0204】
反応温度は、−50℃から100℃であり、好ましくは0℃から使用する溶媒の還流温度程度であり、より好ましくは10℃から40℃である。また、反応時間は1〜24時間程度であるが、GCやNMRなどの分析機器を使用し、原料であるスルホニルフルオリドが消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0205】
反応終了後の反応物の処理は、通常の有機合成の処理法に基づいて行えばよいが、本工程では下記の処理を行うことが好ましい。
【0206】
まず、NMRなどの分析機器を使用し、目的とするスルホン酸塩が反応液中に完全に溶存しているか、固体として一部もしくは全てが析出しているかを確認する。
【0207】
反応液中に完全に溶存している場合、まず反応液を濾過して析出している固形分を除去することが好ましい。得られた濾液はそのまま次の操作に供することもできるが、この時点で溶媒を留去し、スルホン酸塩の粗体を得ることが好ましい。次いで、得られた濾液もしくはスルホン酸塩の粗体に対し、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のエーテル類を添加する。炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のエーテル類としては、具体的に、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、シクロペンチル メチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が例示されるが、ジイソプロピルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、シクロペンチル メチルエーテルが好ましい。使用するエーテル類の量は、反応に使用したスルホニルフルオリドに対して、0.1倍重量から10倍重量であり、1倍重量から5倍重量が好ましい。
【0208】
さらに、スルホン酸塩の粗体を使用する場合には水を加える。濾液を使用する場合でも水を加えることが好ましい。使用する水の量は、反応に使用したスルホニルフルオリドに対して、0.1倍重量から10倍重量であり、1倍重量から5倍重量が好ましい。
【0209】
次いで、このスルホン酸塩の粗体もしくは濾液、エーテル及び水の混合物をよく混合した後、水層と有機層を分離する。そして得られた水層に対し、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のニトリル類を添加する。炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のニトリル類としてはアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル等が例示されるが、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、が好ましい。使用するニトリル類の量は、反応に使用したスルホニルフルオリドに対して、0.1倍重量から10倍重量であり、1倍重量から5倍重量が好ましい。
【0210】
次いで、この水層とニトリルの混合物をよく混合した後、水層と有機層を分離する。最後に、得られた有機層からニトリル等の揮発成分を留去することによって、目的とするスルホン酸塩が得られる。
【0211】
固体として一部もしくは全てが析出している場合には、まず反応液から溶媒等の揮発成分を留去するのが好ましい。次いで得られた残渣に対し、上述したスルホン酸塩の粗体と同様に水とエーテル類を加え、上述した操作を実施することによって、目的とするスルホン酸塩が得られる。
【0212】
第3工程
次いで、第3工程について説明する。本工程は第2工程で得られたスルホン酸塩を、一般式(7)で示される一価のオニウム塩
【0213】
【化97】

【0214】
を用いて塩交換し、一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩を得る工程である。
【0215】
一般式(7)に含まれるオニウムカチオンQについては前述した通りである。一般式(7)におけるXの1価のアニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、ClO、HSO、HPO、BF、PF、SbF、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、フルオロカルボン酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン等を挙げることができ、好ましくは、Cl、Br、HSO、BF、脂肪族スルホン酸イオン等であり、さらに好ましくは、Cl、Br、HSOである。
【0216】
一般式(7)で示される一価のオニウム塩のスルホン酸塩(6)に対するモル比は、通常、0.5〜10.0、好ましくは0.8〜2.0であり、さらに好ましくは0.9〜1.2である。
【0217】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。前記反応溶媒としては、水や、例えば、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくは、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等であり、特に好ましくは水である。
【0218】
また必要に応じて、水と有機溶媒とを併用することができ、この場合の有機溶媒の使用割合は、水と有機溶媒との合計100重量部に対して、通常、5重量部以上、好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは20〜90重量部である。反応溶媒の使用量は、対イオン交換前駆体100重量部に対して、通常、5〜100、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。
【0219】
反応温度は、通常、0〜80℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間である。
【0220】
このようにして得られたスルホン酸オニウム塩(6)は、必要に応じて、有機溶剤で洗浄したり、抽出して精製したりすることもできる。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等の、水と混合しない有機溶剤が好ましい。[実施例]
以下、合成例、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0221】
スルホン酸オニウム塩の製造
[合成例1−1]トリフェニルスルホニウムクロリドの合成
ジフェニルスルホキシド40g(0.2モル)をジクロロメタン400gに溶解させ、氷冷下撹拌した。トリメチルシリルクロリド65g(0.6モル)を20℃を超えない温度で滴下し、更にこの温度で30分間熟成を行った。次いで、金属マグネシウム14.6g(0.6モル)とクロロベンゼン67.5g(0.6モル)、テトラヒドロフラン(THF)168gから別途調製したGrignard試薬を、20℃を超えない温度で滴下した。反応の熟成を1時間行った後、20℃を超えない温度で水50gを加えて反応を停止し、更に水150gと12規定塩酸10gとジエチルエーテル200gを加えた。
【0222】
水層を分取し、ジエチルエーテル100gで洗浄し、トリフェニルスルホニウムクロリド水溶液を得た。これは、これ以上の単離操作をせず水溶液のまま次の反応に用いた。
【0223】
[合成例1−2]4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム臭化物の合成
合成例1のクロロベンゼンの代わりに4−tert−ブチルブロモベンゼンを用い、抽出の際の水の量を増やす以外は合成例1と同様にして目的物を得た。
【0224】
[合成例1−3]4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム塩化物の合成
合成例1のクロロベンゼンの代わりに4−tert−ブトキシクロロベンゼンを、溶剤にトリエチルアミンを5質量%含むジクロロメタン溶剤を用い、抽出の際の水の量を増やす以外は合成例1と同様にして目的物を得た。
【0225】
[合成例1−4]トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム塩化物の合成
合成例1のジフェニルスルホキシドの代わりにビス(4−メチルフェニル)スルホキシドを用い、クロロベンゼンの代わりに4−クロロトルエンを用い、抽出の際の水の量を増やす以外は合成例1と同様にして目的物を得た。
【0226】
[合成例1−5]トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム臭化物の合成
合成例1のジフェニルスルホキシドの代わりにビス(4−tert−ブチルフェニル)スルホキシドを、クロロベンゼンの代わりに4−tert−ブチルブロモベンゼンを用い、抽出の際の水の量を増やす以外は合成例1と同様にして目的物を得た。
【0227】
[合成例1−6]ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロジェンスルフェートの合成
tert−ブチルベンゼン84g(0.5モル)、ヨウ素酸カリウム53g(0.25モル)、無水酢酸50gの混合物を氷冷下撹拌し、無水酢酸35gと濃硫酸95gの混合物を30℃を超えない温度で滴下した。次いで室温で3時間熟成を行い、再度氷冷して水250gを滴下し、反応を停止した。この反応液をジクロロメタン400gを用いて抽出し、有機層に亜硫酸水素ナトリウム6gを加えて脱色した。更にこの有機層を水250gで洗浄することを3回繰り返した。洗浄した有機層を減圧濃縮することで、目的の粗生成物を得た。これ以上の精製はせずこのまま次の反応に用いた。
【0228】
[合成例1−7]フェナシルテトラヒドロチオフェニウムブロミドの合成
フェナシルブロミド88.2g(0.44モル)、テトラヒドロチオフェン39.1g(0.44モル)をニトロメタン220gに溶解し、室温で4時間撹拌を行った。反応液に水800gとジエチルエーテル400gを加え、分離した水層を分取し、目的のフェナシルテトラヒドロチオフェニウムブロミド水溶液を得た。
【0229】
[合成例1−8]ジメチルフェニルスルホニウム硫酸塩の合成
チオアニソール6.2g(0.05モル)とジメチル硫酸6.9g(0.055モル)を室温で12時間撹拌した。反応液に水100gとジエチルエーテル50mlを加えて水層を分取し、目的のジメチルフェニルスルホニウム硫酸塩水溶液を得た。
【実施例1】
【0230】
「第1工程」
2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸 1−アダマンタンメチルの製造
【0231】
【化98】

【0232】
温度計を備えたガラスのフラスコに3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシド33.4g(0.143mol,1.0当量)およびヘキサン20.0gを投入し撹拌した。その後、室温で1−アダマンタンメタノールを19.8g(0.110mol,0.77当量)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌を継続し、反応液が均一となったところで終了した。反応終了後、水10.0gを追加し、抽出操作を行った。二層分離を行い、得られた水層をジイソプロピルエーテル30.0gで抽出した。得られた有機相を合わせ、水を10.0g加えて洗浄した。再度二層分離を行い、得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過で無水硫酸ナトリウムを除去した後、溶媒を留去し、白色固体41.0gを得た。H NMRにて、この固体の組成を分析したところ、変換率99%、選択率99%で2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸 1−アダマンタンメチルが生成していることを確認した。
H NMR:(DMSO−d) d 4.03(d,2H),2.00(brs,3H),1.75−1.62(m,6H),1.55−1.54(m,6H)
19FNMR:(DMSO−d) d −73.10(t,3F;CF),−160.64(q,1F;F)
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1):2899,2852,1786,1451,1302,1233,1160,1018,979,929,905
「第2工程」
1−(1−アダマンタンメチルオキシカルボニル)―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムの製造
【0233】
【化99】

【0234】
200mlナスフラスコに2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸 1−アダマンタンメチル20.0g(0.053mol,1.0当量)およびアセトニトリル130.0g、水10.0gを添加し撹拌した。その後、室温で15%水酸化ナトリウム水溶液を6.9g(0.026mol,0.5当量)滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌を継続した。19F NMRを用いて反応液を分析したところ30%が目的とする1−(1−アダマンチルメトキシ)カルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムであることを確認した。反応液を濾過して固体を除去し、得られた濾液から溶媒を留去したところ、白色固体が得られた。この白色固体をジイソプロピルエーテル30.0g、水30.0gの混合溶媒中で撹拌した後、二層分離した。得られた水層に再度ジイソプロピルエーテル30.0gを加えさらに洗浄した。再度二層分離を行い、得られた水層をプロピオニトリル30.0gで2回抽出した。得られた有機層を合わせ、溶媒を留去したところ、白色固体が3.6g得られた。H NMR及び19F NMRを用いて、この固体の組成を分析したところ1−(1−アダマンタンメチルオキシカルボニル)―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(収率17%)であることを確認した。
H NMR:(DMSO−d) d 3.78(dd,2H),1.91(brs,3H),1.67−1.47(m,12H)
19FNMR:(DMSO−d) d −71.34(d,3F;CF),−163.85(q,1F;F)
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1):2902,1739,1455,1308,1278,1249,1207,1177,1137,1082,1026,1006
「第3工程−1」
1−(1−アダマンタンメチルオキシカルボニル)―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PAG−1)の製造
【0235】
【化100】

【0236】
合成例1−1のトリフェニルスルホニウムクロリド水溶液(0.005モル相当)と実施例1「第2工程」の1−(1−アダマンタンメチルオキシカルボニル)―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウム2.0g(0.005モル)をジクロロメタン20gとメチルイソブチルケトン20gに溶解させ、水20gで4回有機層を洗浄した後、有機層を濃縮し、残渣にジエチルエーテル40gを加えて結晶化させた。その結晶を濾過、乾燥することで目的物を得た[白色結晶3.0g(収率93%)]。融点145℃。
H NMR:(DMSO−d) d 7.88−7.50(m,15H;Ph),3.79(dd,2H;CH−O),1.92(brs,3H),1.67−1.47(m,12H)
19FNMR:(DMSO−d) d −71.30(d,3F;CF),−163.86(q,1F;F)
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
2906、2859、1756、1477、1448、1322、1301、1274、1265、1209、1168、1126、1051、1022、754、684、620
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+263(Ph相当)
NEGATIVE M-373(C1015-CHO−COCF(CF)SO相当)
「第3工程−2〜第3工程−8」
合成例1−2〜1−8で調製したスルホニウム塩を用いる以外は実施例1「第3工程−1」と同様にして目的物を合成した。これらのスルホン酸オニウム塩(PAG−2〜PAG−8)を下記に示す。
【0237】
【化101】

【0238】
[比較例1]
炭酸水素ナトリウム2.52g(30mmol、3.0当量)を水50gに溶解した溶液を、200mlナスフラスコに入れて、室温で攪拌しつつ、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸メチル2.42g(10mmol、1.0当量)を滴下した後、室温でさらに5時間攪拌した。その後、水を減圧留去し、NMRを用いて残渣の組成を分析したところ、ほとんど原料である2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸メチルが回収され、目的とする1−メチルオキシカルボニル―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは全く得られなかった。
【0239】
[比較例2]
30mlナスフラスコに、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸メチル2.42g(10mmol、1.0当量)と水6.0gを入れて室温で攪拌しつつ、水酸化ナトリウム1.32g(33mmol、3.3当量)を水3gに溶解した溶液をゆっくり滴下した後、100℃で3時間還流し冷却した。NMRを用いて反応液の組成を分析したところ、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−スルホプロピオン酸二ナトリウム塩が42%、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムが58%生成していた。この反応液を濃塩酸3mlで中和し、再度NMRを用いて反応液の組成を分析したところ、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムがほぼ100%生成しており、目的とする1−メチルオキシカルボニル―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは全く得られなかった。
【0240】
[比較例3]
100mlのオートクレーブに3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシド4.00g(17.4mmol)を添加した後、−78℃まで冷却した。次いでトリエチルアミン0.0315g(0.312mmol)を添加して密封し、120℃まで昇温した。その後、2時間攪拌し、再度−78℃に冷却した。続いて、30%水酸化ナトリウム水溶液9.00g(67.5mmol)を添加し室温で2時間攪拌した。その後、濃塩酸6.0mlでpH1に調整後、溶媒留去したところ白色固体が得られた。NMRを用いて反応液の組成を分析したところ、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムがほぼ100%生成しており、目的とする1−メチルオキシカルボニル―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは全く得られなかった。
【0241】
【化102】

【0242】
[比較例4]
50mlのナスフラスコに2−ブロモ−2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸 1−アダマンタンメチル1.05g(2.81mmol)およびアセトニトリル10.0gを添加し撹拌した。その後、室温で亜ジチオン酸ナトリウム0.328g(1.83mmol)、炭酸水素ナトリウム0.303g(4.39mmol)、水10.0gを添加した。添加終了後、40℃にて16時間撹拌を行なった。二層の懸濁液となった反応液を二層分離し、得られた水層をアセトニトリル10.0gで抽出した。続いて、得られた有機層を合わせ、濾過して固体を除いた後、溶媒を留去したところ、白色固体が得られた。NMRを用いて反応液の組成を分析したところ、2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸 1−アダマンタンメチルがほぼ100%生成しており、目的とする1−メチルオキシカルボニル―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは全く得られなかった。
【0243】
【化103】

【0244】
[比較例5]
20mlナスフラスコに2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル0.407g(1.2mmol,1.0当量)、水1.00gを添加し、氷浴にて5℃以下まで冷却した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液0.16g(4.0mmol,3.3当量)を添加し、1時間攪拌した。NMRを用いて反応液の組成を分析したところ、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−スルホプロピオン酸二ナトリウム塩が43%、1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムが57%生成しており、目的とする1−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウムは全く得られなかった。
【0245】
[比較例6〜9]
2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸2−エチルヘキシルもしくは2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)プロピオン酸1−アダマンタンメチルを使用し、塩基の種類、濃度、当量を変える以外は比較例5と同様に反応を行った。結果を下記の反応式10と表1に示す。
【0246】
【化104】

【0247】
なお、表1において、NDは非検出を意味する。
【0248】
【表1】

【0249】
上の表1に示したとおり、いずれの場合にも、目的とするアルキルオキシカルボニル―1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(化合物[4])は全く検出されなかった。
【0250】
光酸発生剤の評価
本発明の光酸発生剤を評価するため、レジスト材料を調整した。レジスト材料に用いる高分子化合物は以下に示す処方で合成した。
【0251】
[参考例1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気としたフラスコに168.6gのメタクリル酸2−エチルアダマンタンー2−イル、85.5gのメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、172.1gのメタクリル酸2−オキソテトラヒドロフランー3−イル、510gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり単量体溶液を調製した。14.86gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2.6gの2−メルカプトエタノール、127gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり開始剤溶液とした。窒素雰囲気とした別のフラスコに292gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液と開始剤溶液を同時に4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した12kgのメタノールに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をメタノール3kgで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して384gの白色粉末状の共重合体を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で33/18/49モル%であった。GPCにて分析したところポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6000であった。
【0252】
【化105】

【0253】
[参考例2及び比較例10〜12]
レジスト材料の解像性の評価
上記実施例で製造した光酸発生剤と、上記参考例1で合成したポリマー1をベース樹脂として使用し、クエンチャーを表2に示す組成でKH−20(セイミケミカル(株)製)0.01質量%を含む溶媒中に溶解してレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト液をそれぞれ調製した。
【0254】
なお、表2において、溶剤及びクエンチャー、比較例で用いた光酸発生剤、酸架橋剤は下記の通りである。
P−1は上記合成例で合成したポリマーを示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
Base−1:トリス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミン
PAG―A:トリフェニルスルホニウム パーフルオロ−1−ブタンスルホネート
PAG−B:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート (欧州公開特許1710230A1号公報記載化合物)
PAG−C:トリフェニルスルホニウム (アダマンタン―1−イル)メトキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート (特開2004−4561号公報記載化合物)
【0255】
【表2】

【0256】
[参考例3及び比較例13〜15]
解像性及び露光余裕度の評価:ArF露光
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(78nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて120℃で60秒間ベークし、160nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザーマイクロステッパー((株)ニコン製、NSR−S307E、NA=0.85、4/5輪帯照明、Crマスク)を用いて露光し、表7内に示した温度で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0257】
レジストの評価は、80nmのグループのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅(nm)を評価レジストの解像度とした。露光余裕度の評価は、上記最適露光量を変化させた際にパターンサイズが80nm±10%を許容する露光量幅を求め、この値を最適露光量で割って百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、露光余裕度が良好である。
【0258】
各レジスト材料の評価結果を表3に示す。
【0259】
【表3】

【0260】
[参考例4及び比較例16]
次に、R−1及びR−C1のレジスト材料を用いて、疑似的な液浸露光を行った。具体的には上記と同様なプロセスで125nmのレジスト膜を形成し、ArFエキシマレーザーマイクロステッパー((株)ニコン製、S307E、dipole)を用いて露光した。露光を行った直後にウエハー全面に純水を盛り、60秒間レジスト露光面を純水に浸漬した(パドル)。ウエハースピンにより純水を振り切った後、通常通りのPEB工程、次いで現像を行った。現像後に形成されたパターン中の欠陥数を欠陥検査装置WINWIN50−1200L(東京精密(株)製)により検査し、次式に従って欠陥密度を求めた。結果を表8に示す。
【0261】
欠陥密度(個/cm)=検出された総欠陥数/検査面積
形成したパターン:80nm/ピッチ160nmラインアンドスペースの繰り返しパターン
欠陥検査条件:光源UV、検査ピクセルサイズ0.125μm、セルツーセルモード
また、走査型電子顕微鏡を用いてレジスト断面のパターンの形状を観察した。結果を表4に示す。
【0262】
【表4】

【0263】
表3,4の結果より、本発明のレジスト材料が高感度及び高解像性で、露光余裕度が良好で従来品に比べて水による長時間のリンスに対しても形状変化、欠陥の発現がなく、液浸露光に十分対応できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(6)で示されるスルホン酸塩。
【化1】

(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオンを示す。)
【請求項2】
下記一般式(6’)で示されるスルホン酸塩。
【化2】

(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオンを示す。)
【請求項3】
下記一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩。
【化3】

(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
+は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【化4】

前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【化5】

前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【化6】

前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
【請求項4】
下記一般式(2’)で示されるスルホン酸オニウム塩。
【化7】

(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
+は、下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【化8】

前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【化9】

前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【化10】

前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
【請求項5】
下記一般式(3a)で示されるN−スルホニルオキシイミド化合物。
【化11】

(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
【請求項6】
下記一般式(3a’)で示されるN−スルホニルオキシイミド化合物。
【化12】

(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。T、Yは相互に独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示すか、あるいはT及びYが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に飽和もしくは不飽和の炭素数6〜12の環を形成しても良い。Zは単結合、二重結合、メチレン基、又は酸素原子を示す。)
【請求項7】
下記一般式(3b)で示されるオキシムスルホナート化合物。
【化13】

(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。qは0又は1を示すが、qが0の場合、pは置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基を示し、qが1の場合には、pは単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリーレン基を示す。EWGはシアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ニトロ基又はメチル基を示し、qが1の場合、互いのEWGが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数6の環を形成しても良い。)
【請求項8】
下記一般式(3b’)で示されるオキシムスルホナート化合物。
【化14】

(式中、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。qは0又は1を示すが、qが0の場合、pは置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基を示し、qが1の場合には、pは単結合、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリーレン基を示す。EWGはシアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ニトロ基又はメチル基を示し、qが1の場合、互いのEWGが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数6の環を形成しても良い。)
【請求項9】
次の3工程よりなる、一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩の製造方法。
第1工程:3,3,4−トリフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−オキサチエタン−2,2−ジオキシドを下記一般式(4)で示されるアルコール
【化15】

でアルコーリシスして、下記一般式(5)で示されるスルホニルフルオリド
【化16】

を得る工程。
第2工程:第1工程で得られたスルホニルフルオリドに対し、下記一般式(8)で示される強塩基
【化17】

を、該スルホニルフルオリドに対して1当量よりも少ない量を使用して加水分解を実施し、下記一般式(6)で示されるスルホン酸塩
【化18】

を得る工程。
第3工程:第2工程で得られたスルホン酸塩を、一般式(7)で示される一価のオニウム塩
【化19】

を用いて塩交換し、一般式(2)で示されるスルホン酸オニウム塩を得る工程。
(前記一般式(4)から一般式(6)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。一般式(8)において、Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンまたはバリウムイオンを示し、Bはヒドロキシイオン、ヒドリド、炭素数1〜12のアルカニド(アルキルアニオン)を示す。一般式(6)において、Mは一般式(8)に同じである。一般式(7)においてQは下記一般式(a)もしくは下記一般式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記一般式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
【化20】

前記一般式(a)において、R、R及びRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
【化21】

前記一般式(b)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。
【化22】

前記一般式(c)において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。mは1〜5の整数、nは0(零)又は1を示す。Rの置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。Xは1価のアニオンを示す。)
【請求項10】
第1工程において、該アルコールが下記一般式(4’)で示されるアルコール
【化23】

であることを特徴とする請求項9に記載のスルホン酸オニウム塩の製造方法。
(前記一般式(4’)において、R’は水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜19の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を示す。R’の置換基としてカルボニル基、ヒドロキシル基、エステル、ラクトン、アミノ基、アミド基、エーテル結合性酸素原子などを含んでいても良い。)
【請求項11】
強塩基が水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであることを特徴とする請求項10に記載のスルホン酸オニウム塩の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかにおいて、第2工程の加水分解反応で得られた反応液に、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のニトリル類を添加して、生成したスルホン酸塩を抽出分離し、該スルホン酸塩を続く第3工程に供することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載のスルホン酸オニウム塩の製造方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかにおいて、第2工程における強塩基が、スルホニルフルオリドに対して0.3から0.7当量の水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであり、
それらの強塩基が水溶液として反応に供され、かつ第2工程の反応終了後に、得られた反応液を炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のエーテル類で洗浄した後に、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のニトリル類を用いて得られたスルホン酸塩を抽出し分離することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1−(1−アダマンチル)メトキシカルボニル−1,2,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸 トリフェニルスルホニウム。

【公開番号】特開2008−297255(P2008−297255A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145730(P2007−145730)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】