説明

有機薄膜トランジスタの製造方法、有機薄膜トランジスタレイの製造方法及び表示装置の製造方法

【課題】有機薄膜トランジスタを高い歩留まりで製造する製造方法を提供する。
【解決手段】基板上又は基板上における絶縁膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する電極形成工程と、有機半導体インクが供給された際、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上における前記有機半導体インクの接触角を前記基板上又は前記絶縁膜上における接触角よりも高くする電極処理工程と、形成された前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に前記有機半導体インクを供給することにより有機半導体層を形成する半導体層形成工程と、を有し、前記ソース電極と前記ドレイン電極とにより形成されるチャネルのチャネル幅をW、前記有機半導体インクが供給される際の液滴の液滴径をφ、前記液滴が供給される位置の誤差である着弾位置誤差幅をXとした場合、W>φ+Xを満たしていることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタの製造方法、有機薄膜トランジスタアレイの製造方法及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を用いた有機薄膜トランジスタ(TFT)は、材料構成の多様性、製造方法、製品形態等でフレキシビリティが高いこと、大面積化が容易であること、単純な層構成が可能であり、製造プロセスが単純化できること安価な製造装置を用いて、製造できること等の利点があることから、精力的に研究されている。この有機TFTを構成する電極や絶縁膜、半導体層などの成膜方法としては、印刷法、スピンコート法、浸漬法等が挙げられ、有機TFTは、従来のSi半導体材料を用いたTFTより桁違いに安く製造することができる。
【0003】
また、この有機TFTを集積した有機TFTアレイを作製し、表示素子を駆動すれば、表示装置が得られる。この表示装置は、上記有機TFTの特性を備えたこれまでにない付加価値を有するものとなる。例えば非特許文献1などでは、印刷工程で作製した有機TFTアレイを電気泳動素子と組み合わせ、フレキシブルな表示装置を作製している。このような特性は、曲面を有する壁への展示パネルへの適用性や、携帯ディスプレイとしての利便性、また、落としたりした場合に壊れにくい(耐衝撃性)といった利点に直結する。さらには、印刷工程で作製することによるコストメリットも反映される。
【0004】
有機TFTを集積する場合、電極をパターン形成することが必須になる。電極のパターン形成において、印刷工程のパターン精度が低いと、電極間ショートによる有機TFTの動作不良を起こす。これに対し、特許文献1には、エネルギーの付与によって臨界表面張力が変化する材料を含む濡れ性変化層を形成する工程と、濡れ性変化層の一部分にエネルギーを付与することによってより臨界表面張力の小さい低表面エネルギー部とより臨界表面張力の大きい高表面エネルギー部とからなる臨界表面張力を異ならせたパターンを形成する工程と、導電性材料を含有する液体をパターンが形成された濡れ性変化層の表面に付与することで、高表面エネルギー部に導電層を形成する工程と、濡れ性変化層上に半導体層を形成する工程と、を有することを特徴とする積層構造体の製造方法が開示されている。
【0005】
また、有機TFTを作製する際には、有機半導体材料をパターン形成することが必須である。有機半導体層をパターン形成しないで、有機TFTを集積化すると、チャネル領域以外に成膜された有機半導体層の影響で、トランジスタの動作時にオフ電流が発生し、消費電力が上昇する。また、画素を表示する場合には、クロストークの原因にもなる。なお、Si半導体材料を用いたTFTを作製する際に、Si半導体材料は、フォトリソグラフィー・エッチングにより、パターン形成されている。
【0006】
有機半導体層のパターン形成のみに着目すれば、フォトレジストを塗布し、所望のパターンを露光・現像し、レジストパターンを形成し、これをエッチングマスクとしてエッチングを行い、レジストを剥離してパターン形成することは可能である。しかしながら、有機半導体材料として、高分子材料を用いる場合には、高分子材料上にフォトレジストを塗布してパターン形成すると、トランジスタ特性が劣化することがある。フォトレジストとしては、ナフトキノンジアジドを感光基としたノボラック系樹脂を、キシレン、セロソルブ系溶剤等の有機溶媒に溶解させたものが用いられており、高分子材料は、フォトレジストに含まれる有機溶媒等に溶解することが多い。また、有機半導体材料として、ペンタセン等の結晶性分子を用いる場合も、程度の差はあるものの、同様に、トランジスタ特性が劣化することがある。さらに、レジストを剥離する際に用いられるエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン等の剥離液により、ダメージを受けたり、レジストを剥離した後の純水リンスにより、ダメージを受けたりすることもある。以上のことから、従来のフォトリソグラフィー・エッチングによる有機半導体層のパターン形成が困難であることがわかる。
【0007】
特許文献2には、塗布対象面の所定位置に電荷を付与するとともに電荷と反対極性の電荷を塗布材料に付与してクーロン力により電荷を付与した材料を所定位置に導く方法、塗布対象面の所定位置に凹部を形成して塗布材料を塗布して凹部に堆積する方法、または、材料塗布後に溶媒を蒸発させてパターンを形成した後に、このパターンにレーザを照射して成形する方法を適宜組み合わせて有機薄膜トランジスタを作製する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、基板上に導電層を設けること、導電層上に少なくとも1つの窓を有するマスクを設けること、窓を通して導電層をエッチングして、導電層に開口を形成し、導電層の一部を画定してトランジスタのソース及びドレインを形成すること、窓を通して導電材料を堆積させて、開口内に金属のトランジスタのゲートを形成すること、ゲート上に金属酸化物の誘電層を形成すること、及びソースとドレインとの間、ゲート上、及び、ソース又はドレインとゲートとの間の空間に半導体材料を導入して、トランジスタの半導体ボディを形成することを含むトランジスタの製造方法が開示されている。なお、エッチングは、開口が基板の表面に平行な方向において窓より大きな広がりを有するように、窓の周縁部でアンダーカットを引き起こすように行われ、導電材料の堆積は、ゲートの周縁部がソース及びドレインから離隔するように、トランジスタのゲートの周縁部が開口の周縁部にぴったりと合うように、金属蒸着により行われる。
【0009】
しかしながら、これらの方法は、プロセスステップが増加することによるスループットの低下、製造コストの増加等の問題がある。
【0010】
一方、パターン形成方法としては、インクジェット法が知られている。インクジェット法は、パターンを直接描画できるため、材料使用率を格段に向上させることができる。このようなインクジェット法により有機半導体層をパターン形成すると、製造プロセスの簡略化、コストの低下を実現できる可能性がある。このとき、有機半導体材料として、有機溶媒に可溶な材料を用いると、有機半導体材料の溶液(有機半導体インク)を調製することができるため、インクジェット法により有機半導体層をパターン形成することができる。
【0011】
このような印刷方式により、トランジスタのゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極からなるチャネル部に、安定して有機半導体層を形成するためには、インクの着滴後の挙動を制御する必要がある。一般的に金属で構成されるソースおよびドレイン電極表面は表面エネルギーが高いため、有機半導体インクの接触角が小さく、濡れやすい。それに比べると、有機高分子などで構成されるゲート絶縁膜表面は表面エネルギーが相対的に電極より低く、有機半導体インクの接触角が高いことが多い。そのため、チャネル部に滴下した有機半導体インクが、着弾後により濡れやすい電極上に移動し、電極上にのみ形成されてしまい、チャネルを形成できないことがある。この傾向はゲート絶縁膜の表面エネルギーがインクの表面張力より小さい場合にはより顕著となる。チャネル部に有機半導体層が形成されないと、有機薄膜トランジスタが動作しない。有機薄膜トランジスタを複数個配置した有機薄膜トランジスタアレイと表示素子を組み合わせた表示装置において、上記の問題で動作しない有機薄膜トランジスタが存在すると、その画素は欠陥となってしまう。このため表示装置においては画素欠陥をなるべく少なくする必要がある。
【0012】
この問題を解決するための手法として、ゲート絶縁膜と、ソース電極とドレイン電極からなるチャネル部に開口部を有し、フッ素系高分子物質で形成される障壁を設置する手法が特許文献4に記載されている。これによればインクの着弾位置や、着弾後の拡がりを制御することが可能となるが、プロセスステップが増加することによるスループットの低下、製造コストの増加などの問題がある。
【0013】
また、別の方法としては、インクの物性を調整することがある。第一に溶媒の表面張力を小さくしてやることで、表面エネルギーの低いゲート絶縁膜表面にも濡れやすくしてやることが可能であるが、一方で、表面張力を下げることは、液滴の着弾後の拡がりが大きくなるため、チャネル部以外にも有機半導体層が形成されてしまい、オフリークの上昇やクロストークといった問題が発生しうる。
【0014】
あるいは第二に溶媒の沸点を下げ、インクが着弾後になるべく早く乾燥するようにしてやることで、インクが着弾後に電極上に移動することを抑制することが可能であるが、一方で、インクジェットの吐出安定性という面では、インクの沸点が低下し、乾燥しやすくなることで、ノズル面でインクが乾燥して詰まりによる吐出不安定や不吐出を招く。
【0015】
更に、別の解決手段として、電極の表面をシランカップリング剤やアルカンチオールなどに代表される自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembly Mono layer)で処理してやることで、電極の表面エネルギーを調整し、インクの接触角を制御する手法がある。
【0016】
たとえば非特許文献2には、Au電極表面をアルカンチオールで処理することで、トランジスタ特性を損なうことなく、電極の表面エネルギーの変化に伴い、有機溶媒の接触角変化が可能となることが報告されている。
【0017】
このように電極表面に結合する部位を有する分子を接触させることで、電極表面のインク接触角を制御することが可能となる。また単分子膜吸着後の電極のインク接触角は、吸着分子の分子設計によって制御することが可能となる。これによって電極表面とゲート絶縁膜表面のインク濡れ性を同等に調整することができ、チャネル部に、インクを着滴後に保持し、成膜することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、実際には、電極表面とゲート絶縁膜表面のインク濡れ性を同等に調整することは非常に困難である。なぜなら、電極のインク濡れ性を変化させるSAM処理工程の再現性、均一性が重要となるが、それらを確保するには、10時間以上の浸漬などといった処理時間が必要とされるためである。短時間の処理では、電極の処理効果の再現性、均一性は低下してしまい、その結果として電極表面とゲート絶縁膜表面の濡れ性のバランスは崩れ、安定的に有機半導体層をチャネル部に形成することが困難となる。このことから、電極表面と絶縁膜表面に対する有機半導体インクの濡れ性を、SAM処理によって同じになるように制御することで、安定的にパターニングすることは困難である。
【0019】
以上のことから、有機半導体インク接触角のより低い電極と有機半導体インク接触角ののより高いゲート絶縁膜から構成されるチャネル部に対して、インクジェット法などで有機半導体層を形成する際に、安定してパターニングする手法はこれまでに得られていない。
【0020】
本発明は、上記の従来技術に鑑み、インクジェット法による有機半導体層のパターン形成を歩留まり良くすることのできる有機薄膜トランジスタの製造方法、この有機薄膜トランジスタを複数有する有機薄膜トランジスタアレイの製造方法及びこの有機薄膜トランジスタアレイを有する表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、基板上又は基板上における絶縁膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する電極形成工程と、有機半導体インクが供給された際、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上における前記有機半導体インクの接触角を前記基板上又は前記絶縁膜上における接触角よりも高くする電極処理工程と、形成された前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に前記有機半導体インクを供給することにより有機半導体層を形成する半導体層形成工程と、を有し、前記ソース電極と前記ドレイン電極とにより形成されるチャネルのチャネル幅をW、前記有機半導体インクが供給される際の液滴の液滴径をφ、前記液滴が供給される位置の誤差である着弾位置誤差幅をXとした場合、W>φ+Xを満たしていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記基板の伸縮による誤差をYとした場合、W>φ+X+Yを満たしていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記半導体層形成工程において、前記有機半導体インクは、インクジェット方式により供給されるものであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、自己組織化単分子膜により修飾されていることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記自己組織化単分子膜は、アルカンチオールを含むことを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、前記電極形成工程の前に、前記基板上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート電極上に、ゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、を有し、前記電極形成工程における前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記ゲート絶縁膜上に形成されるものであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、有機薄膜トランジスタを複数有する有機薄膜トランジスタアレイの製造方法であって、前記有機薄膜トランジスタは、前記記載の有機薄膜トランジスタの製造方法により製造された有機薄膜トランジスタであることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記記載された有機薄膜トランジスタアレイの製造方法により製造された有機薄膜トランジスタアレイ上に、表示素子を形成する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、歩留まりの高い有機薄膜トランジスタの製造方法、有機薄膜トランジスタアレイの製造方法及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタの構造図
【図2】第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタの説明図
【図3】有機半導体インクを供給した場合(接触角:電極<ゲート絶縁膜)の説明図(1)
【図4】有機半導体インクを供給した場合(接触角:電極<ゲート絶縁膜)の説明図(2)
【図5】有機半導体インクを供給した場合(接触角:電極>ゲート絶縁膜)の説明図(1)
【図6】有機半導体インクを供給した場合(接触角:電極>ゲート絶縁膜)の説明図(2)
【図7】図6(b)における拡大図
【図8】第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタの製造方法の説明図(1)
【図9】第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタの製造方法の説明図(2)
【図10】第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタの製造方法の説明図(3)
【図11】第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタの製造方法のフローチャート
【図12】第2の実施の形態における有機薄膜トランジスタアレイの構成図
【図13】第2の実施の形態における有機薄膜トランジスタアレイ及び表示装置の製造方法のフローチャート
【図14】第2の実施の形態における表示装置の構成図
【図15】第2の実施の形態における他の表示装置の構成図
【図16】比較例1の説明図
【図17】比較例2の説明図
【図18】実施例1の説明図
【図19】比較例3及び実施例2におけるチャネル幅Wと歩留まりとの相関図
【図20】有機半導体インクの供給条件と歩留まりとの相関図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態について説明する。
【0032】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における有機薄膜トランジスタについて説明する。
【0033】
図1に、本実施の形態における有機薄膜トランジスタの構造を示す。図1(a)は、本実施の形態における有機薄膜トランジスタの上面図であり、図1(b)は、図1(a)における破線1A−1Bにおいて切断した断面図である。
【0034】
本実施の形態における有機薄膜トランジスタは、基板11上にゲート電極12が形成され、ゲート電極12上にゲート絶縁膜13が形成され、更に、ゲート絶縁膜13上にソース電極14及びドレイン電極15が形成され、ゲート絶縁膜13上のソース電極14とドレイン電極15との間には、有機半導体膜16が形成されている。ソース電極14、ドレイン電極15、有機半導体膜16は、ゲート電極12に電圧が印加された際に有機半導体膜16にチャネルが形成され、ソース電極14とドレイン電極15との間に電流が流れるように、所定の位置に形成されている。尚、有機半導体膜16は、インクジェット法等の印刷法により形成されている。
【0035】
次に、図2に基づき本実施の形態における有機薄膜トランジスタにおけるチャネルについて説明する。図2は、有機半導体膜16が形成される前の状態を示すものである。図2(a)は、この状態の上面図であり、図2(b)は、図2(a)における破線2A−2Bにおいて切断した断面図である。上述のとおり、有機半導体膜16によりチャネルが形成されるが、この際、形成されるチャネルは、ゲート絶縁膜13を介したゲート電極12上であって、ドレイン電極15とソース電極14とが対向するチャネル幅Wの領域であって、この領域におけるドレイン電極15とソース電極14との間隔がチャネル長Lである。
【0036】
次に、図3及び図4に基づき、有機半導体インクをインクジェット法により滴下することにより有機半導体層16を形成する際の過程について説明する。尚、有機半導体層16は、ゲート絶縁膜13を介したゲート電極12上であって、ドレイン電極15とソース電極14との間にチャネルを形成するため所定の位置に滴下される。このため、有機半導体層16は、ゲート絶縁膜13、ソース電極14及びドレイン電極15と接し形成される。一般に、ソース電極14及びドレイン電極15を形成している金属材料の表面は、表面エネルギーが高く、ソース電極14及びドレイン電極15の表面においては、滴下された有機半導体インクの接触角が小さく、濡れ広がりやすい。これに対し、有機高分子材料等により形成されるゲート絶縁膜13の表面は、一般的に金属材料に比べ相対的に表面エネルギーが低い場合が多く、滴下された有機半導体インクの接触角が高くなり濡れ広がり低くなる。
【0037】
このことを図3及び図4に基づき説明する。図3は、側面図であり、図4は、上面図である。
【0038】
最初、図3(a)及び図4(a)に示すように、ゲート絶縁膜13、ソース電極14及びドレイン電極15上に、有機半導体膜16を形成するための有機半導体インク16aを滴下する。この状態では、有機半導体インク16aは、着弾していない。
【0039】
次に、図3(b)及び図4(b)に示すように、有機半導体インク16aがチャネルの形成される領域となるソース電極14とドレイン電極15との間のゲート絶縁膜13に着弾する。
【0040】
次に、図3(c)及び図4(c)に示すように、滴下された有機半導体インク16aは濡れ広がり、特に、表面エネルギーの高いソース電極14及びドレイン電極15上において、よく濡れ広がる。
【0041】
次に、図3(d)及び図4(d)に示すように、滴下された有機半導体インク16aは、濡れ広がりやすい表面エネルギーの高いソース電極14及びドレイン電極15に移動してしまい、ソース電極14とドレイン電極15との間のゲート絶縁膜13上には、有機半導体インク16aが存在しない状態となる。このような状態では、ソース電極14とドレイン電極15との間において、チャネルを形成するための有機半導体層16が形成されないため、有機半導体トランジスタを形成することができなくなり、歩留まりの低下を招いてしまう。このような現象は、特に、ゲート絶縁膜13における表面エネルギーが有機半導体インクの表面張力よりも小さい場合には、より顕著に発生する。
【0042】
このため、本実施の形態においては、ソース電極14及びドレイン電極15の表面を自己組織化単分子膜により処理し、ソース電極14及びドレイン電極15の表面における有機半導体インク16aの接触角を制御し、濡れ広がり性を制御する。具体的には、各種アルカンチオールをエタノール等の可溶な溶媒に、0.1〜100mMのモル濃度に調整し、ソース電極14及びドレイン電極15の形成された基板11を10分程度浸漬させることにより、チオールとソース電極14及びドレイン電極15の表面における化学反応による表面処理を行う。これにより、ソース電極14及びドレイン電極15の表面における有機半導体インク16aの接触角を制御することができる。尚、この表面処理は、チオール溶液の蒸気による表面処理であってもよく、処理時間は、所望の表面状態となるように調整される。
【0043】
このような表面処理により、ソース電極14及びドレイン電極15の表面は各種アルキル基で表面装飾され、有機半導体インク16aとの接触角を高くすることができ、有機半導体インク16aの濡れ広がり性を制御することができる。
【0044】
一方、ソース電極14及びドレイン電極15の表面処理により、ソース電極14及びドレイン電極15における有機半導体インク16aの接触角が高くなりすぎてしまうと、同様に形成される有機薄膜トランジスタの歩留まりの低下を招いてしまう。
【0045】
このことを図5及び図6に基づき説明する。図5は、側面図であり、図6は、上面図である。
【0046】
最初、図5(a)及び図6(a)に示すように、ゲート絶縁膜13、ソース電極14及びドレイン電極15上に、有機半導体膜16を形成するための有機半導体インク16aを滴下する。この状態では、有機半導体インク16aは着弾していない。
【0047】
次に、図5(a)及び図6(b)に示すように、有機半導体インク16aがチャネルの形成される領域となるソース電極14とドレイン電極15との間のゲート絶縁膜13に着弾する。
【0048】
次に、図5(c)及び図6(c)に示すように、滴下された有機半導体インク16aは濡れ広がり、特に、相対的に表面エネルギーの低いソース電極14及びドレイン電極15上を避け、相対的に表面エネルギーの高いゲート絶縁膜13上において、よく濡れ広がる。
【0049】
次に、図5(d)及び図6(d)に示すように、滴下された有機半導体インク16aは、濡れ広がりやすい相対的に表面エネルギーの高いゲート絶縁膜13上であって、チャネルの形成されない領域に移動してしまい、ソース電極14とドレイン電極15との間のゲート絶縁膜13上には、有機半導体インク16aが存在しない状態となる。このような状態では、ソース電極14とドレイン電極15との間において、チャネルを形成するための有機半導体層16が形成されないため、有機半導体トランジスタを形成することができなくなり、歩留まりの低下を招いてしまう。
【0050】
上記について、図7に基づき説明する。図7は、図6(b)の拡大図である。図7に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15の表面における表面エネルギーが、ゲート絶縁膜13の表面における表面エネルギーよりも低い場合、滴下された有機半導体インク16aは、矢印に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15の表面よりはじかれ、相対的に表面エネルギーの高い広いゲート絶縁膜13の表面に向かって移動する。即ち、チャネルのエッジ部分における液滴が、より接触角の低いゲート絶縁膜13上に、濡れ広がろうとする力が働くため有機半導体インク16aが移動する。これをエッジ効果と称する。このため、チャネル領域が形成されるはずの領域に、有機半導体インク16aが存在しなくなり、形成される有機半導体トランジスタの歩留まりの低下を招いてしまう。
【0051】
よって、本実施の形態における有機半導体トランジスタの製造方法は、ソース電極14及びドレイン電極15の表面を自己組織化単分子膜で処理することにより、ソース電極14及びドレイン電極15の表面における有機半導体インクの接触角をゲート絶縁膜13における有機半導体インクの接触角よりも高くし、更に、チャネル幅Wが、インクジェット方式により供給される有機半導体インク16aの液滴径φと、インクジェット着弾位置誤差幅Xと、基板11の伸縮による誤差Yの総和よりも大きい、即ち、下記の(1)に示す式を満たしているものである。

W>φ+X+Y・・・・・・(1)

尚、上記(1)に示す式は、基板11の伸縮がある場合を想定したものであり、基板11の伸縮が殆どない場合には、誤差Yは考慮する必要がない。よって、このような場合には、下記の(2)に満たす式を満たしていてればよい。

W>φ+X・・・・・・・・(2)

ここで、図8に示すように、インクジェット方式による有機半導体インク16aの液滴径φとは、インク液滴を理想的な球形状と仮定した場合の直径であり、インク液滴の重量測定および溶媒の比重から求まる液滴の体積より、有機半導体インク16aのインク液滴の直径φを算出している。一般的にインクジェット法での液滴径φは、液滴の吐出速度と相関があり、吐出速度が速いほど大きくなる傾向を示す。また吐出速度はインクジェットヘッド内のピエゾの駆動電圧と相関があり、駆動電圧が高いほど吐出速度が速くなる傾向を示す。
【0052】
また、インクジェット着弾位置誤差幅Xとは、図9に示すようにインクジェットヘッドのスキャン方向に対して、垂直なラインを描画した際のライン幅aから、インクジェット液滴1滴の着弾径bを引いた値である。即ち、図9(a)に示すように、理想的に着弾位置誤差がゼロ(着弾位置誤差が0)であれば、ライン幅aはインクジェット液滴1滴の着弾径bと等しくなる。しかし実際には、液滴の吐出角度がノズルによってばらつくため、図9(b)に示すように着弾位置誤差が発生することになる。このような着弾位置誤差Xは、装置仕様などに示される値を用いてもよい。着弾位置誤差Xはヘッド固有の機械精度や、インク物性などの影響があるが、インクジェットヘッドの吐出面と基板11との距離にも依存し、ヘッドを印刷面から離すほど大きくなる。これは吐出角度のずれによる影響が、吐出面から離れるほど大きくなるためである。理想的には距離を近くするほどばらつきが小さくなるが、基板11とヘッドの吐出面が接触する危険もあるため、0.3〜1mm程度が好ましい。
【0053】
また、基板11の伸縮は、温度、湿度などの影響や、ソース電極14及びドレイン電極15の形成プロセス工程におけるアニーリングなどの影響により生じる。基板11の伸縮による誤差Yは、図10に示すように、以下の手順で算出する。ソース電極14及びドレイン電極15の形成時に、基板11上の有機半導体層形成領域20の周囲において、インクジェットヘッドの走査方向および垂直方向にマーク21を設け、相互に垂直方向となる長さC1及びD1を計測する。C1及びD1は、有機半導体層を印刷する領域のヘッド走査方向および垂直方向の長さより長いとものとする。次に有機半導体層形成時においてマーク21間における長さC2及びD2を計測し、各々の変化量の差をとることにより算出する。即ち、差ΔC=C1−C2、差ΔD=D1−D2を算出する。このようにして算出された差ΔC及びΔDのうち、絶対値の大きい方を2で割った値を基板伸縮による誤差Yとする。
【0054】
本実施の形態によれば、チャネル領域の中心を狙って吐出した際、インク液滴が必ずチャネル幅Wのエッジよりも内側に着弾するために、図7に示されるようなエッジ効果が発生しない。このため、有機半導体インク16aを歩留まりよくチャネル領域に保持させることができ、安定して有機半導体層16をチャネル部に形成することが可能となる。インク液滴は1滴でもよく、不十分な際にはチャネル部分を中心近傍に複数滴下してもよい。また、ソース電極14及びドレイン電極15とゲート絶縁膜13における有機半導体インクの接触角を同等に調整するのではなく、ソース電極14及びドレイン電極15の方を高くすることにより、SAM処理による処理効果のばらつきをある程度吸収することが可能となり、この点からも安定して有機半導体層16をチャネル部に形成することが可能となる。この際、ソース電極14及びドレイン電極15の表面とゲート絶縁膜13の表面とにおける接触角の差は5度より大きいことが望ましく、さらには10度より大きいことがより望ましい。接触角の差が5度より小さいと、SAM処理のばらつきによる影響を無視できなくなり、安定的にパターニングすることが困難となる。
【0055】
以上より、図11及び図1に基づき本実施の形態における有機薄膜トランジスタの製造方法について説明する。
【0056】
最初に、ステップ102(S102)において、基板11上の所定の領域にゲート電極12を形成する。
【0057】
次に、ステップ104(S104)において、ゲート電極12上にゲート絶縁膜13を形成する。
【0058】
次に、ステップ106(S106)において、ゲート絶縁膜13上の所定の領域にソース電極14及びドレイン電極15を形成する。
【0059】
次に、ステップ108(S108)において、形成されたソース電極14及びドレイン電極15の表面における電極処理を行う。具体的には、上述したように、ソース電極14及びドレイン電極15の表面を自己組織化単分子膜で処理することにより、ソース電極14及びドレイン電極15の表面における有機半導体インクの接触角をゲート絶縁膜13における有機半導体インクの接触角よりも高くする。
【0060】
次に、ステップ110(S110)において、ソース電極14とドレイン電極15との間の所定の領域に、有機半導体層16を形成する。具体的には、有機半導体インク16aを用い、上述したように、(1)に示す式を満たす条件、(2)に示す式を満たす条件により、有機半導体インク16aを供給し、有機半導体層16を形成する。
【0061】
これにより、本実施の形態における有機薄膜トランジスタを作製することができる。
【0062】
本実施の形態においては、有機半導体層16は、有機半導体材料を有機溶剤に溶解させることにより得られる有機半導体インクを用い、インクジェット法により有機半導体インク滴下させ印刷することにより形成する。有機半導体材料としては有機溶剤に可溶である全ての有機半導体材料及び有機半導体前駆体材料を使用することができ、特に限定されないが、高分子材料、オリゴマー材料、低分子材料などを用いることができ、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニンや、あるいは1つ以上の炭化水素芳香環および芳香族ヘテロ環、これらが縮環された化合物などの有機低分子、ポルフィリンやペンタセン前駆体に代表される半導体前駆体材料;ポリアセチレン系導電性高分子;ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子;ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子;ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等が挙げられる。トリアリールアミン骨格を有する高分子材料としては、下記の化1に示される材料を用いることが可能である。この材料は、無配向性高分子材料であり、成膜形状や方法に関わらず、特性のバラツキが非常に小さい。
【0063】
【化1】

尚、有機半導体インクは、表面張力や粘度が適していない場合は、吐出不能や吐出不良を起こし、丸い液滴になりにくく、さらに、リガメントが長くなることがある。このため、有機半導体インクは、表面張力が20〜40mN/mであることが好ましく、さらには、25〜35mN/mであることが好ましい。また、粘度は1〜20mPa・秒であることが好ましく、さらには、2〜15mPa・秒が好ましい。また、有機半導体インクを吐出する際に、溶剤が揮発して、有機半導体材料が固化しない程度の乾燥性も必要である。
【0064】
また、ゲート絶縁膜13を構成する材料としては、無機材料ではシリコン酸化膜などが挙げられる。有機材料としては、ポリイミド;ポリビニルフェノール;ポリエステル;ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;エポキシ樹脂;熱硬化型樹脂等の高分子材料が挙げられる。
【0065】
また、ソース電極14、ドレイン電極15及びゲート電極12は、フォトリソグラフィープロセスによるフォトレジストのパターニングと電極材料の真空蒸着によって所定の形状に形成することができる。電極材料としては、特に限定されないが、金属材料であるAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Cr等が挙げられ、2種以上の金属材料を混合したものまたは合金を用いてもよい。特に、Au、Ag、Cu、Niは、電気抵抗が低く、熱伝導率が高く及び腐食性が低いことから特に好ましい。
【0066】
また、ソース電極14及びドレイン電極15、または、ゲート電極12のうち、少なくともいずれか一方は、インクジェット法、ディスペンサ法等の印刷法により形成することも可能である。このとき、金属粒子又は金属錯体を含有する金属インクを用いることが好ましい。金属粒子としては、特に限定されないが、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Ir、Rh、Co、Fe、Mn、Cr、Zn、Mo、W、Ru、In、Sn等が挙げられ、2種以上の材料を混合したもの合金を用いてもよい。特に、Au、Ag、Cu、Niは、電気抵抗が低く、熱伝導率が高く及び腐食性が低いことから特に好ましい。尚、この場合において、金属粒子は、平均粒径が数nm〜数10nm程度で、溶剤中に均一に分散されていると、格段に低い温度で焼結することが知られている。これは、金属粒子の粒径が小さくなるにつれ、活性の高い表面原子の影響が大きくなることに起因している。金属錯体としては、特に限定されないが、中心金属として、Au、Pt、Ag、Cu、Pd、In、Cr、Ni等を有する錯体等が挙げられる。このような金属インクを用いて、パターン形成した後、焼結することで、ゲート電極12、ソース電極14及びドレイン電極15を形成することができる。
【0067】
なお、金属インクは、表面張力や粘度が適していない場合は、吐出不能や吐出不良を起こし、丸い液滴になりにくく、さらに、リガメントが長くなることがある。このため、金属インクは、表面張力が約30mN/mであるとともに、粘度が2〜13mPa・秒であることが好ましく、さらには7〜10mPa・秒が好ましい。また、金属インクを吐出する際に、溶剤が揮発して、金属粒子又は金属錯体が固化しない程度の乾燥性も必要である。
【0068】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、有機薄膜トランジスタアレイ(有機薄膜トランジスタ基板)及び、この有機薄膜トランジスタアレイを用いた表示装置である。
【0069】
図12に、本実施の形態における有機薄膜トランジスタアレイ100を示す。本実施の形態における有機薄膜トランジスタアレイ100は、基板上に複数の有機薄膜トランジスタ素子が形成されている。
【0070】
この有機薄膜トランジスタアレイ100の製造方法について、図13及び図12に基づき説明する。
【0071】
最初に、ステップ202(S202)において、ガラス基板、フィルム基板等の基板111に、フォトレジストを塗布し、シャドウマスクを用いたパターン露光、現像を行うことによりレジストパターンを形成する。この後、膜厚3nmのCrからなる不図示の密着層、および膜厚50nmのAuを真空蒸着法により成膜する。この後、フォトレジストを溶解する溶媒に浸漬し、レジストパターンとレジストパターン上に形成された密着層及びAuを選択的に除去することにより、走査配線となるゲート電極112を形成する。
【0072】
次に、ステップ204(S204)において、ゲート電極112上に、ゲート絶縁膜113及び走査配線/信号配線の層間絶縁膜となるポリイミド絶縁膜をスピンコートにより塗布して形成する。
【0073】
次に、ステップ206(S206)において、ソース電極114及びドレイン電極115を形成する。具体的には、ゲート電極112と同様の手順で、ゲート絶縁膜113上に、膜厚3nmのCrからなる不図示の密着層及び膜厚50nmのAuからなるソース電極114及びドレイン電極115を形成する。
【0074】
次に、ステップ208(S208)において、ソース電極114及びドレイン電極115の表面における電極処理を行う。具体的には、SAM材であるアルカンチオールをエタノールに溶解したインクに基板111を10分ほど浸漬し、ソース電極114及びドレイン電極115における表面の処理を行う。
【0075】
次に、ステップ210(S210)において、ソース電極114及びドレイン電極115が形成されたゲート絶縁膜113上に、化1に示される材料を有機溶媒に溶解した有機半導体インクを用いて、インクジェット法により印刷し、有機半導体層116をチャネル領域に形成する。さらに、最上層に厚さ2000nmのパラキシリレン膜をCVD法により成膜し、不図示の保護層を形成した。以上の工程により、本実施の形態における有機薄膜トランジスタアレイ100を作製することができる。
【0076】
この後、更に、ステップ212(S212)において、有機薄膜トランジスタアレイ100上に後述するように表示素子を形成することにより、表示装置を作成することができる。
【0077】
尚、ゲート電極112、ソース電極114、ドレイン電極115は、Agインクなどを用いて、インクジェット法などによりパターニング形成してもよい。
【0078】
上記のように製造した有機薄膜トランジスタアレイ100は、各種の表示素子と組み合わせることにより、種々の表示装置に用いることができる。
【0079】
例えば、図14に示すように、図12に示す有機薄膜トランジスタアレイ100上に、層間絶縁膜117を形成し、この層間絶縁膜117に各々の有機半導体トランジスタにおけるドレイン電極115の表面が露出するまで開口部を形成し、形成された開口部を介し、ドレイン電極115と接続される画素電極118を形成する。一方、ガラス等からなる対向基板121上に厚さ100nm程度のITO(IndiumTin Oxide)膜122をスパッタリングにより成膜し、この上にスピンコート法でポリイミド樹脂を塗布し、ラビングすることによって配向膜123を200nm程度の厚みで形成する。配向処理後、有機薄膜トランジスタアレイ100と対向基板121とを不図示のシリカスペーサーを介して接合する。具体的には、有機薄膜トランジスタアレイ100において画素電極118が形成されている面と対向基板121の配向膜123が形成されている面とが対向するように、不図示のシリカスペーサーを介して接合する。このようにして接合された有機薄膜トランジスタアレイ100と対向基板121によりギャップが形成され、このギャップ間に液晶性材料を封入することにより液晶層130を形成し、本実施の形態における表示装置となる液晶パネル140を作製することができる。
【0080】
更に、本実施の形態における他の構成の表示装置としては、図15に示されるように、対向基板151にITO膜152を成膜し、有機薄膜トランジスタアレイ100のドレイン電極115の形成されている面と対向させて、シリカスペーサーを介し接合する。このようにして接合された有機薄膜トランジスタアレイ100と対向基板151によりギャップが形成され、このキャップ間にマイクロカプセル型電気泳動素子を封入し、電気泳動層160を形成することにより、本実施の形態となる表示素子である電気泳動表示パネルを作製することができる。尚、電気泳動層160を形成するマイクロカプセル型電気泳動素子は、酸化チタン161とカーボンブラック162とウレタン樹脂163により形成されている。
【0081】
更に、本実施の形態における表示画素として有機EL素子を形成し、大気遮蔽シールドを配置させることで、有機ELパネルを作製することも可能である。
【実施例】
【0082】
(比較例1)
ガラス基板に、フォトレジストを塗布し、シャドウマスクを用いたパターン露光、現像後に、膜厚3nmのCrからなる不図示の密着層および膜厚50nmのAuを真空蒸着法により成膜した。その後、レジストを溶解する溶媒に浸漬し、レジストとレジスト上の電極を選択除去することでゲート電極をパターン形成した。次にポリイミド溶液のリカコートSN−20(新日本理化社製)をスピンコート法により塗布し、プリベークし、その後に200℃で焼成することにより、膜厚500nmのゲート絶縁膜を形成した。次にゲート電極と同様の手順でソースおよびドレイン電極をパターン形成した。チャネル幅Wは50μmとし、チャネル長Lは5μmとした。
【0083】
次に、ソース電極及びドレイン電極が形成されたゲート絶縁膜上に、化1に示される材料を高沸点溶媒であるテトラリンに溶解したインクを用いて、インクジェット法により印刷し、インク液滴の着滴の挙動を観察した。
【0084】
また、このときのインクジェットヘッドのピエゾ駆動条件は、後述する図20に示すピエゾ駆動条件1であり、液滴の体積が約7.2pLであり、液滴の直径φが約25.8μmである。
【0085】
また、このときのインクジェットヘッドと基板の距離を約0.5mmに設定し、図9に示した方式で、印刷ライン幅とインクの着弾直径から着弾位置誤差Xを測定したところ、約30μmであった。
【0086】
また、このときの基板の収縮による誤差Yを、図10に示した方式で評価したところ、ほぼゼロであった。
【0087】
また、このときのソース電極及びドレイン電極となるAu電極表面に対する有機半導体インクの接触角を評価した。その結果、インクは完全に塗れ広がってしまい評価不可能であった。
【0088】
また、このときのポリイミド絶縁膜表面に対する、有機半導体インクの接触角は、約10度であった。
【0089】
比較例1において、インクを供給した際の時間的変化を観察した結果を図16に示す。即ち、図16(a)、(b)、(c)、(d)の順に示されるように、インクは着滴後に電極上に移動してしまい、チャネル上に形成することができなかった。電極表面における有機半導体の接触角が、より低いために、インクが電極の方へ塗れ拡がってしまったためである。
【0090】
(比較例2)
比較例1と同様の手法で、ソースおよびドレイン電極まで形成した後、perfluorodecanethiolをEtOHに10mMで溶解した液体に、基板を10分ほど浸漬し、次にEtOHで洗浄、窒素ガンでブローすることで電極表面へのSAM処理工程を実施した。次に、比較例1と同様の条件で、有機半導体層をインクジェット法により印刷し、インク液滴の着滴の挙動を直接観察した。
【0091】
また、このときのSAM処理を実施したソース電極及びドレイン電極となるAu電極表面に対する、有機半導体インクの接触角を評価した結果、約80度であった。
【0092】
また、このときのポリイミド絶縁膜表面に対する、有機半導体インクの接触角は、約10度であった。
【0093】
比較例2において、インクを供給した際の時間的変化を観察した結果を図17に示す。即ち、図17(a)、(b)、(c)、(d)の順に示されるように、インクは着滴後にチャネル領域外のゲート絶縁膜上に移動してしまい、チャネル上に形成することができなかった。SAM処理によって電極表面に対する有機半導体インクの接触角がゲート絶縁膜表面に対する接触角より高いために、また着滴時に液滴がエッジ部分ではみ出していたために、インクがゲート絶縁膜上へぬれ拡がってしまったためである。
【0094】
(実施例1)
チャネル幅Wを100μmとした以外は比較例2と同様の方法でトランジスタを作製した。実施例1において、インクを供給した際の時間的変化を観察した結果を図18に示す。即ち、図18(a)、(b)の順に示されるように、インクはチャネル内に安定して保持されており、チャネル部に有機半導体層を形成することができた。チャネル幅Wを、液滴径φおよび着弾位置のばらつきXおよび基板伸縮の総和Yより大きく設定することで、液滴が安定してチャネル領域に保持されたためである。
【0095】
(比較例3)
比較例2と同様の方法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。チャネル幅W=50μmとしたものを作製した。有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル領域の印刷結果について評価した。ここで、チャネル領域に有機半導体層が成膜されているものを可、チャネル領域に有機半導体層が成膜されていないものを不可と判断した。
【0096】
その結果、チャネル幅W=50μmではチャネル形成できていないものが多く存在し、その歩留まりは70%以下であった。
【0097】
(実施例2)
比較例3と同様の方法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。ただし、チャネル幅はW=60、70、80、90、100μmとしたものを各々作製した。有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル幅W=60μm以上ではチャネル形成歩留まりは、95%程度と大きく改善されていた。
【0098】
比較例3および実施例2の結果をまとめたグラフを図19に示す。W=60μmを閾値として、歩留まりが大幅に改善されていることがわかる。インクジェット液滴φと、着弾位置誤差Xと基板収縮による誤差Yの総和は、約55.8μmであり、チャネル幅を60μm以上とすることで、安定して有機半導体層をチャネル領域に形成できることがわかった。
【0099】
(比較例4)
比較例2と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。ただし、有機半導体層の印刷時のインクジェットヘッドと基板との距離を0.8mmに設定した。このとき着弾位置誤差Xを図7に示す方式で測定したところ、約46μmであった。この結果、液滴径φと着弾位置誤差Xと基板収縮による誤差Yの総和は約71.8μmとなった。チャネル幅W=50、60、70μmとしたものを各々作製した。
【0100】
有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル形成歩留まりは75%以下であった。
【0101】
(実施例3)
比較例4と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。ただし、チャネル幅W=80、90、100μmとしたものを各々作製した。
【0102】
有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル形成歩留まりは95%以上であった。
【0103】
(比較例5)
比較例2と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。ただし、このときのインクジェットヘッドのピエゾ駆動条件は、後述する図20に示すピエゾ駆動条件2であり、液滴の体積が約15.8pLであり、液滴の直径φが約33.5μmである。この結果、液滴径φと着弾位置誤差Xと基板収縮による誤差Yの総和は約63.5μmとなった。チャネル幅W=50、60μmとしたものを各々作製した。
【0104】
有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル形成歩留まりは75%以下であった。
【0105】
(実施例4)
比較例5と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。ただし、チャネル幅W=70、80、90、100μmとしたものを各々作製した。
【0106】
有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル形成歩留まりは95%以上であった。
【0107】
(比較例6)
シャドウマスクを用いた真空蒸着法により、フィルム基板上に、膜厚3nmのCrからなる不図示の密着層及び膜厚100nmのAlからなるゲート電極を成膜した。次にポリイミド溶液のリカコートSN−20(新日本理化社製)をスピンコート法により塗布し、プリベークした後、200℃で焼成することにより、膜厚500nmのゲート絶縁膜を形成した。ゲート絶縁膜形成後は、比較例2と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。このときの基板収縮による誤差Yを図10に示した方式で評価したところ、20.7μmであった。この結果、液滴径φと着弾位置誤差Xと基板収縮による誤差Yの総和は約76.5μmとなった。チャネル幅W=50、60、70μmとしたものを各々作製した。
【0108】
有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル形成歩留まりは70%以下であった。
【0109】
(実施例5)
比較例6と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。ただし、チャネル幅W=80、90、100μmとしたものを各々作製した。
【0110】
有機半導体層のインクジェット法での印刷後に、チャネル部への有機半導体層の形成について、面内500箇所以上を観察し、チャネル形成可否について評価した。その結果、チャネル形成歩留まりは95%以上であった。
【0111】
比較例3〜6および実施例2〜5の結果含め、液滴径φ=25.8μmまたは33.5μm、着弾位置誤差X=30μmまたは46μm、基板の収縮による誤差Y=0または20.7μmの条件でチャネル幅W=50、60、70、80、90、100μmとした際の有機半導体層のチャネル形成可否の歩留まりを評価した結果一覧を図20に示す。尚、チャネル形成歩留まりにおいて、95%以上は○、95%未満は×と判断した。
【0112】
これにより、有機半導体インクの接触角が電極表面の方が、絶縁膜表面よりも高い場合において、チャネル幅Wを、インクジェット液滴φと、着弾位置誤差Xと基板収縮による誤差Yの総和より大きくすることで、安定して有機半導体層をチャネル領域に形成できることがわかった。
【0113】
(実施例6)
実施例2で作製したチャネル幅W=60μmの有機薄膜トランジスタアレイを用いて、図15に示されるアクティブマトリックス表示装置を作製した。具体的には、酸化チタン粒子とオイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセルと、ポリビニルアルコール水溶液を混合した塗布液を、ポリカーボネート基板上に設けられたITOからなる透明電極上に塗布して、マイクロカプセルとバインダーからなる層を形成した。得られた基板と、実施例2の有機薄膜トランジスタアレイを、ガラス基板及びポリカーボネート基板が最外面となるように、バインダーを介して接着させた。
【0114】
得られたアクティブマトリックス表示装置のゲート電極に繋がるバスラインに走査信号用のドライバーICを、ソース電極に繋がるバスラインにデータ信号用のドライバーICを各々接続し、0.5秒毎に画像の切り替えを行ったところ、良好な静止画像を表示することができた。
【0115】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0116】
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 有機半導体層
16a 有機半導体インク
100 有機薄膜トランジスタアレイ
111 基板
112 ゲート電極
113 ゲート絶縁膜
114 ソース電極
115 ドレイン電極
116 有機半導体層
117 層間絶縁膜
118 画素電極
121 対向基板
122 ITO膜
123 配向膜
130 液晶層
140 液晶パネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【特許文献1】特開2005−310962号公報
【特許文献2】特開2004−297011号公報
【特許文献3】特表2003−536260号公報
【特許文献4】特開2007−36259号公報
【非特許文献】
【0118】
【非特許文献1】K. Suzuki, IDW08 FLX2-3L
【非特許文献2】D. Boudinet, Journal of Applied Physics,105, 084510, (2009)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上又は基板上における絶縁膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する電極形成工程と、
有機半導体インクが供給された際、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上における前記有機半導体インクの接触角を前記基板上又は前記絶縁膜上における接触角よりも高くする電極処理工程と、
形成された前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に前記有機半導体インクを供給することにより有機半導体層を形成する半導体層形成工程と、
を有し、
前記ソース電極と前記ドレイン電極とにより形成されるチャネルのチャネル幅をW、前記有機半導体インクが供給される際の液滴の液滴径をφ、前記液滴が供給される位置の誤差である着弾位置誤差幅をXとした場合、
W>φ+X
を満たしていることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記基板の伸縮による誤差をYとした場合、
W>φ+X+Y
を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記半導体層形成工程において、前記有機半導体インクは、インクジェット方式により供給されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、自己組織化単分子膜により修飾されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記自己組織化単分子膜は、アルカンチオールを含むことを特徴とする請求項4に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記電極形成工程の前に、
前記基板上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート電極上に、ゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
を有し、前記電極形成工程における前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記ゲート絶縁膜上に形成されるものであることを特徴とする請求項1から5に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
有機薄膜トランジスタを複数有する有機薄膜トランジスタアレイの製造方法であって、
前記有機薄膜トランジスタは、請求項1から6のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタの製造方法により製造された有機薄膜トランジスタであることを特徴とする有機薄膜トランジスタアレイの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された有機薄膜トランジスタアレイの製造方法により製造された有機薄膜トランジスタアレイ上に、表示素子を形成する工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−187750(P2011−187750A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52396(P2010−52396)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】