説明

有機電子装置のための電極処理方法

【課題】有機電子装置のための電極処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、有機電子(OE:organic electronic)装置、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)にける電極の処理方法と、そのような方法によって調製される装置と、そのような方法において使用される材料および配合物とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子(OE:organic electronic)装置、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)にける電極の処理方法と、そのような方法によって調製される装置と、そのような方法において使用される材料および配合物とに関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)は、ディスプレイ装置および論理能力のある回路において使用される。有機電界効果トランジスタにおいては、ソース/ドレイン電極として様々な金属が使用されてきた。広く使用されてきた電極材料は金(Au)であるが、金はコストが高く、不具合な加工特性のために、例えば、Ag、Al、Cr、Ni、Cu、Pd、Pt、NiまたはTiなどの可能な代替物へと関心が移ってきた。銅(Cu)は高い導電性を有し、比較的低価格であり、通常の製造プロセスがより容易なため、銅(Cu)はAuを代替可能な電極材料の1つである。加えて、銅は半導体工業において既に使用されており、従って、電極用に既に確立された銅の技術と組み合わせる場合、電子装置の大規模な製造プロセスを新しい技術としての有機半導体材料に移行することが、より容易である。
【0003】
しかしながら、電極として、即ち、電荷キャリア注入金属として銅を使用する場合、銅の仕事関数が低いことに起因する不具合があり、銅の仕事関数は最も最近の有機半導体のレベルよりも低い。
【0004】
ドイツ国特許出願公開第10 2005 005 089号公報(特許文献1)には、銅製のソースおよびドレイン電極を含むOFETが記載されており、電極上に酸化銅の層を提供することによって、電極は表面改質されている。しかしながら、周囲雰囲気内において銅はCuO、次いでCuO、更にはCu水酸化物へと酸化される傾向にあり、このため、Cu電極上に非金属導電層が生成されることがあり、結果として、半導体層中への電荷キャリア注入が制限される。
【0005】
先行技術においては、電荷キャリア注入を改良するために、例えば、チオール化合物を基礎とする金属または金属酸化物電極改質の既知の方法がある。
【0006】
例えば、米国特許出願公開第2008/0315191号公報(特許文献2)には、金属酸化物で形成されたソースおよびドレイン電極を含む有機TFTが開示されており、そこでは、チオール化合物、例えば、ペンタフルオロベンゼンチオール、ペルフルオロアルキルチオール、トリフルオロメタンチオール、ペンタフルオロエタンチオール、ヘプタフルオロプロパンチオール、ノナフルオロブタンチオール、ナトリウムブタンチオール、酪酸ナトリウムチオール、ナトリウムブタノールチオールまたはアミノチオフェノールの0.3〜1分子層の厚みを有する薄膜を塗工することによる表面処理が電極表面に施されている。しかしながら、金表面と比較して、銅表面上においてはチオール基がより弱い化学結合を形成するため、この手段は主に金電極に効果があるが、銅電極には効果がない。
【0007】
従って、低い仕事関数および低い酸化安定性などの先行技術より既知な金属電極の欠点を克服するために、有機電子装置における金属または金属酸化物電極または電荷注入層(限定することなく、銅電極が挙げられる。)を改質するための改良された方法を提供することを本発明の目的とする。もう一つの目的は、有機電子装置、特に、OFETおよびOLEDにおいて使用するためで金属または金属酸化物を基礎とする改良された電極および電荷注入層と、それらを調製する方法とを提供することである。もう一つの目的は、本発明により改質された金属または金属酸化物電極を含有する改良された有機電子装置、特に、OFETおよびOLEDと、それらを調製する方法とを提供することである。該方法、電極および装置は、先行技術の方法の欠点を有していてはならず、時間、コストおよび材料面で効率よく大規模な電子装置の製造ができなければならない。本発明の他の目的は、以下の詳細な記載より専門家には直ちに明らかである。
【0008】
本発明において記載される通りの電極処理の方法、その様な方法において使用される材料、その様な方法で処理された電極、その様な処理された電極を含有する装置を提供することによって、これらの目的を達成できることが見出された。特に、本発明は、金属電極の仕事関数および有機半導体中に電荷キャリアを注入する金属電極の特性を改良し、金属電極のためで、化学を基礎とする処理方法に関する。これは、ベンゾトリアゾール(BTA:benzotriazole)として既知の化学的分類の化合物、または、これらの化合物の誘導体または構造的類似体(これらは、例えば、FまたはCNなどの電子吸引基、および/または、例えば、チオールまたはペルフルオロアルキル基などの表面活性基で置換されていてもよい。)で、自己組織化単分子層(SAM:self−assembled monolayer)処理法を電極表面に施す方法を提供することによって達成される。これは、特に、銅電極に適用する場合、銅酸化物の存在下ですら電極改質の非常に効果的な方法であり、これにより電極の仕事関数が改良され、それにより、半導体層中への電極の電荷キャリア注入が改良されることが見出された。本発明による表面処理方法によって、改良されたソース/ドレイン電極を有する電子装置、特に、OFETの製造が可能となる。
【0009】
ベンゾトリアゾールは薬剤化合物として先行技術において既知であり、また、例えば、「Review on copper chemical−mechanical polishing(CMP) and post−CMP cleaning in ultra large system integrated (ULSI)−An electrochemical perspective」、E−E.Yair and Starosvetsky D.、Electrochimica Acta、52巻、2007年、1825頁(非特許文献1)に記載される通り、無機半導体工業において、主に、化学機械研磨加工における保護のためのパッシベーション材料として使用することが提案されてきた。しかしながら、有機電子装置における金属電極の仕事関数を改良するために、SAM処理については、これまでにベンゾトリアゾールは示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10 2005 005 089号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0315191号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0121192号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Review on copper chemical−mechanical polishing(CMP) and post−CMP cleaning in ultra large system integrated (ULSI)−An electrochemical perspective」、E−E.Yair and Starosvetsky D.、Electrochimica Acta、52巻、2007年、1825頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
米国特許出願公開第2009/0121192号公報(特許文献3)には、はんだ可能なCu基板上に堆積されたAgコーティングを含む物品の耐腐食性を増大する方法が開示されている。これは、多官能性分子を含む抗腐食組成物にAgコーティングを曝露することで達成され、ただし、前記多官能性分子は、Cu表面と相互作用し保護する窒素含有有機官能基を少なくとも1個含み、更に、Ag表面と相互作用し保護する硫黄含有有機官能基を少なくとも1個含む。しかしながら、該方法はAgコーティングの耐腐食性を増大する目的を有している一方で、有機電子装置において電極として使用する場合に、金属の電荷キャリア注入の改良を目的として、金属の特性を変化させる方法については、教示も示唆もない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
電子装置中に、金属または金属酸化物を含有する1個以上の電極を提供する工程と、
前記電極の表面上に、下に定義される通りの式Iの化合物を含む層を堆積する工程と、
式Iの化合物を含む前記層によって被覆されている前記電極の表面上に、有機半導体を堆積するか、または、2個以上の前記電極の間の領域に、有機半導体を堆積する工程と
を含む方法に関する。
【0014】
【化1】

式中、
、X、Xは、それぞれ互いに独立に、−N(H)−、−N=、=N−、−C(R)=、=C(R)−および−S−から選択され、ただし、X、X、Xの少なくとも1つは−C(R)=および=C(R)−と異なり、
は、それぞれの出現において同一または異なって、H、SH、NH、または、1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルであり、ただし、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−NR−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CR=CR00−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよく、
およびRは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、P−Sp−、または、1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−NR−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CR=CR00−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい。)であるか、または、2〜30個のC原子を有するアリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルまたはヘテロアリールオキシカルボニル(該基は無置換であるか、1個以上の非芳香族基Rで置換されている。)を表すか、または、RおよびRは、それぞれ互いと、および、それらが接続されている5員ヘテロ環と共に芳香族またはヘテロ芳香族環(該基は5〜7個の環原子を含み、および、無置換であるか、または、1個、2個、3個、4個または5個の基Rで置換されている。)を形成しており、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、H、または、置換されていてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよいカルビルまたはヒドロカルビルであり、
Rは、それぞれの出現において同一または異なって、H、P−Sp−、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、置換されていてもよいシリル、1〜40個のC原子を有するカルビルまたはヒドロカルビル(該基は置換されていてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもい。)であり、
Pは、重合性または架橋性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
は、ハロゲンである。
【0015】
本発明は、更に、電子装置、好ましくは、有機電子(OE:organic electronic)装置、非常に好ましくは、トップゲートまたはボトムゲート有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)において、上および下に記載される通りの方法によって得ることができるか得られる電極、電極層または電荷注入層、好ましくは、ソースおよび/またはドレイン電極に関する。
【0016】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの電極、電極層または電荷注入層を、非常に好ましくは、ソースおよび/またはドレイン電極として含む電子装置、好ましくは、OE装置、非常に好ましくは、トップゲートまたはボトムゲートOFETと、その様な装置を製造する方法とに関する。
【0017】
好ましくは、電子装置は、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、有機薄膜トランジスタ(OTFT:organic thin film transistor)、有機相補型薄膜トランジスタ(CTFT:organic complementary thin film transistor)、集積回路(IC:integrated circuitry)の部品、無線識別(RFID:radio frequency identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、エレクトロルミネセントディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、バックライト、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セル、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板またはパターン、光導電体、光受容体、電子写真記録装置およびゼログラフィック装置から成る群より選択される。
【0018】
本発明は、更に、式Iの新規な化合物に関する。本発明は、更に、式Iの1種類以上の化合物と、任意成分として1種類以上の溶媒とを含む新規な配合物に関する。本発明は、更に、上および下に記載される通りの方法における該新規な化合物および配合物の使用と、該新規な化合物または配合物を含むOE装置とに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による典型的なトップゲートOFETを模式的に図解する。
【図2】本発明による典型的なボトムゲートOFETを模式的に図解する。
【図3】例1に記載される方法に従って調製されるOFETの変換特性を示す。
【図4】例2に記載される方法に従って調製されるOFETの変換特性を示す。
【図5】例3に記載される方法に従って調製されるOFETの変換特性を示す。
【図6】比較例1に記載される方法に従って調製されるOFETの変換特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以前および以降において、用語「電極」、「電極層」および「電荷注入層」は相互交換可能に使用される。よって、電極または電極層についての言及は電荷注入層についての言及も含み、逆もまた同様である。
【0021】
上および下で使用する場合、用語「カルビル基」は、非炭素原子を一切有していない(例えば、−C≡C−など)か、または、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの少なくとも1個の非炭素原子と組み合わされていてもよい(例えば、カルボニルなど)かのいずれかで少なくとも1個の炭素原子を含む、任意の一価または多価の有機基構造成分を表す。用語「ヒドロカルビル基」は、1個以上のH原子を追加的に含有しており、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1個以上のヘテロ原子を含有していてもよいカルビル基を表す。
【0022】
また、3個以上のC原子の鎖を含むカルビルまたはヒドロカルビル基は、スピロおよび/または縮合環を含み、直鎖状、分枝状および/または環状のいずれでも構わない。
【0023】
好ましいカルビルおよびヒドロカルビル基としては、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ(それぞれの該基は置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、非常に好ましくは1〜18個のC原子を有する。)、更に、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有する置換されていてもよいアリールまたはアリールオキシ、更に、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシ(それぞれの該基は置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは7〜40個のC原子を有する。)が挙げられ、ただし、これらの全ての基は、好ましくは、N、O、S、P、Si、Se、As、TeおよびGeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。
【0024】
カルビルまたはヒドロカルビル基は、飽和または不飽和の非環式基、または、飽和または不飽和の環式基でよい。不飽和非環式または環式基、特に、アリール、アルケニルおよびアルキニル基(特に、エチニル)が好ましい。C〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基が非環式の場合、該基は直鎖状または分枝状のいずれでも構わない。C〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基としては、例えば:C〜C40アルキル基、C〜C40アルコキシまたはオキサアルキル基、C〜C40アルケニル基、C〜C40アルキニル基、C〜C40アリル基、C〜C40アルキルジエニル基、C〜C40ポリエニル基、C〜C18アリール基、C〜C40アルキルアリール基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40シクロアルキル基、C〜C40シクロアルケニル基などが挙げられる。前述の基の中で、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C20アリル基、C〜C20アルキルジエニル基、C〜C12アリール基およびC〜C20ポリエニル基がそれぞれ好ましい。また、炭素原子を有する基と、例えば、シリル基、好ましくはトリアルキルシリル基で置換されているアルキニル基、好ましくはエチニルなどのヘテロ原子を有する基との組み合せも挙げられる。
【0025】
「アリール」および「ヘテロアリール」は、単独、または、「アリールカルボニル」または「ヘテロアリールカルボニル」などの用語においての何れかで使用する場合、好ましくは、25個までのC原子を有する1環式、2環式または3環式の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し、また、該基は縮合環を含んでいてもよく、上で定義される通りの1個以上の基Lで置換されていてもよい。
【0026】
非常に好ましい置換基Lは、ハロゲン、最も好ましくは、F、または、1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、チオアルキル、フルオロアルキルおよびフルオロアルコキシ、または、2〜12個のC原子を有するアルケニル、アルキニルより選択される。
【0027】
特に好ましいアリールおよびヘテロアリール基は、フェニル(ただし加えて、1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよい。)、ナフタレン、チオフェン、セレノフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、フルオレンおよびオキサゾールであり、これらの全ては、無置換であっても、上で定義される通りのLで一置換または多置換されていてもよい。非常に好ましい環は、ピロール、好ましくは、N−ピロール、ピリジン、好ましくは、2−または3−ピリジン、ピリミジン、チオフェン、好ましくは、2−チオフェン、セレノフェン、好ましくは、2−セレノフェン、チエノ[3,2−b]チオフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾールおよびオキサジアゾール、、特に好ましくは、チオフェン−2−イル、5−置換チオフェン−2−イルまたはピリジン−3−イルより選択され、これらの全ては、無置換であっても、上で定義される通りのLで一置換または多置換されていてもよい。
【0028】
アルキルまたはアルコキシ基は、即ち、末端のCH基が−O−で置き換えられている場合、直鎖状でも分岐状でも構わない。それは、好ましくは直鎖状で、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有しており、従って、好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシまたはオクトキシであり、更に、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0029】
アルケニル基は、1個以上のCH基が−CH=CH−で置き換えられている場合、直鎖状でも分岐状でも構わない。それは、好ましくは直鎖状で2〜10個のC原子を有しており、従って、好ましくは、ビニル、プロパ−1−またはプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−またはブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−またはペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−またはヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−またはヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−またはオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−またはノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−またはデカ−9−エニルである。
【0030】
特に好ましいアルケニル基は、C2〜−1E−アルケニル、C4〜−3E−アルケニル、C5〜−4−アルケニル、C6〜−5−アルケニルおよびC7〜6−アルケニル、特に、C2〜−1E−アルケニル、C4〜−3E−アルケニルおよびC5〜−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までのC原子を有する基が一般に好ましい。
【0031】
オキサアルキル基は、即ち、1個のCH基が−O−で置き換えられている場合、好ましくは、例えば、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、2−メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニル、または、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。オキサアルキル基は、即ち、1個のCH基が−O−で置き換えられている場合、好ましくは、例えば、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、2−メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニル、または、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0032】
1個のCH基が−O−によりおよび1個が−CO−により置き換えられているアルキル基において、これらの基は、好ましくは、隣り合っている。従って、これらの基は、一緒となってカルボニルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を形成する。好ましくは、この基は直鎖状で、2〜6個のC原子を有している。それは、従って、好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0033】
2個以上のCH基が−O−および/または−COO−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状または分岐状でよい。それは、好ましくは、直鎖状で、3〜12個のC原子を有する。従って、それは、好ましくは、ビス−カルボキシ−メチル、2,2−ビス−カルボキシ−エチル、3,3−ビス−カルボキシ−プロピル、4,4−ビス−カルボキシ−ブチル、5,5−ビス−カルボキシ−ペンチル、6,6−ビス−カルボキシ−ヘキシル、7,7−ビス−カルボキシ−ヘプチル、8,8−ビス−カルボキシ−オクチル、9,9−ビス−カルボキシ−ノニル、10,10−ビス−カルボキシ−デシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス−(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0034】
チオアルキル基は、即ち、1個のCH基が−S−によって置き換えられている場合、好ましくは、直鎖状のチオメチル(−SCH)、1−チオエチル(−SCHCH)、1−チオプロピル(即ち、−SCHCHCH)、1−(チオブチル)、1−(チオペンチル)、1−(チオヘキシル)、1−(チオヘプチル)、1−(チオオクチル)、1−(チオノニル)、1−(チオデシル)、1−(チオウンデシル)または1−(チオドデシル)であり、ただし、好ましくは、sp混成ビニル炭素原子に隣接しているCH基が置き換えられている。
【0035】
フルオロアルキル基は、好ましくは、直鎖状のペルフルオロアルキルC2i+1(ただし、iは1〜15の整数である。)、特には、CF、C、C、C、C11、C13、C15またはC17、非常に好ましくは、C13である。
【0036】
上述のアルキル、アルコキシ、アルケニル、オキサアルキル、チオアルキル、カルボニルおよびカルボニルオキシ基は、アキラルでもキラル基でもよい。特に好ましいキラル基は、例えば、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。2−ヘキシル、2−オクチル、2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルおよび1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシが非常に好ましい。
【0037】
好ましいアキラルな分岐状の基は、イソプロピル、イソブチル(即ち、メチルプロピル)、イソペンチル(即ち、3−メチルブチル)、tert−ブチル、イソプロポキシ、2−メチル−プロポキシおよび3−メチルブトキシである。
【0038】
−CY=CY−は、好ましくは、−CH=CH−、−CF=CF−または−CH=C(CN)−である。
【0039】
ハロゲンは、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、F、ClまたはBrである。
【0040】
式Iおよびそれのサブ式における重合性または架橋性基Pは、ラジカルまたはイオン連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に関与できるか、または、例えば、ポリマー類似反応におけるポリマー主鎖への縮合または付加によりグラフトされ得る基である。ラジカル、カチオンまたはアニオン重合などの連鎖重合反応のための重合性基が特に好ましい。C−C二重または三重結合を含む重合性基、および、オキセタンまたはエポキシドなどの開環反応によって重合できる重合性基が非常に好ましい。
【0041】
好ましくは、重合性または架橋性基Pは、CH=CW−CO−O−、CH=CW−CO−、
【0042】
【化2】

CH=CW−(O)k1−、CW=CH−CO−(O)k3−、CW=CH−CO−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−O−CO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CH−(CO−O)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−より選択され、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子のアルキル、特に、H、ClまたはCHであり、WおよびWは、互いに独立して、Hまたは1〜5個のC原子のアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルであり、W、WおよびWは、互いに独立して、Cl、1〜5個のC原子のオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、WおよびWは、互いに独立して、H、Clまたは1〜5個のC原子のアルキルであり、Pheは、上で定義される通りの1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンであり、k1、k2およびk3は、互いに独立して、0または1であり、k3は、好ましくは、1であり、k4は、1〜10の整数である。
【0043】
特に好ましい基Pは、CH=CH−CO−O−、CH=C(CH)−CO−O−、CH=CF−CO−O−、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−O−CO−、(CH=CH)CH−O−、
【0044】
【化3】

または、それらの保護された誘導体である。更なる好ましい基Pは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシ基から成る群より、非常に好ましくは、エポキシ、オキセタン、アクリレートおよびメタクリレート基より選択される。
【0045】
基Pの重合は、通常の専門家に既知で、文献、例えば、D.J.Broer;G.Challa;G.N.Mol、Macromol.Chem、1991年、192巻、59頁に記載される方法に従って行うことができる。
【0046】
用語「スペーサー基」は先行技術において既知であり、適切なスペーサー基Spは通常の専門家に既知である(例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)参照)。スペーサー基Spは、好ましくは、P−SpがP−Sp’−X’−であるような、式Sp’−X’であり、ただし、
Sp’は30個までのC原子のアルキレンであり、該基は無置換であるか、または、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、また、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていることも可能であり、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子のアルキルであり、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNである。
【0047】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−または単結合、特には、−O−、−S−、−C≡C−、−CY=CY−または単結合である。もう一つの好ましい実施形態において、X’は、−C≡C−または−CY=CY−などの共役系を形成できる基、または、単結合である。
【0048】
典型的な基Sp’は、例えば、−(CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)−であり、ただし、pは2〜12の整数、qは1〜3の整数、および、RおよびR00は上で与えられる意味を有する。
【0049】
好ましい基Sp’は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチル−イミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0050】
好ましくは、式Iの化合物において、RおよびRは、それぞれ互いと、および、それらが接続されている5員ヘテロ環と共に芳香族またはヘテロ芳香族環を形成しており、該基は5〜7個の環原子を含んでおり、無置換であるか、1個、2個、3個、4個または5個の基Rで置換されている。非常に好ましくは、RおよびRは、それぞれ互いと、および、それらが接続されている5員ヘテロ環と共にベンゼン環(1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよい。)、最も好ましくは、ベンゼン、ピリジンまたはピリミジン環を形成しており、ただし、前記基は無置換であるか、1個、2個、3個または4個の基R(該基Rは、非常に好ましくは、非芳香族基より選択される。)で置換されている。
【0051】
式Iの化合物は、好ましくは、式I1より選択される。
【0052】
【化4】

式中、
は、−N(H)−、−C(R)=または−S−であり、
は、−N=、−N(H)−、−C(R)=または−S−であり、
は、−N=または−N(H)−であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
および、RおよびRは、上で式Iにおいて与えられる意味を有する。
【0053】
式I1の好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0054】
【化5】

式中、R、Rおよびrは式I1において定義される通りであり、Rは、好ましくは、H、SH、NH、−alkylene−SHであり、ただし、alkyleneは1〜18個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレン基、または、C〜C18チアアルキルを表す。Rは、好ましくは、それぞれの出現において同一または異なって、FまたはC〜C15ペルフルオロアルキル、非常に好ましくは、F、または、1個、2個、3個または4個のC原子を有するペルフルオロアルキルを表す。
【0055】
P−Sp(ただし、Spは上で定義される通りのスペーサー基または単結合であり、Pは上で定義される通りの重合性または架橋性基である。)を表す少なくとも1個の基Rおよび/またはRを含有する式IおよびI1およびそれらの好ましいサブ式I11〜I15の化合物が更に好ましい。
【0056】
式I11の好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0057】
【化6】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I11e、I11fおよびI11gの化合物が特に好ましい。
【0058】
式I12の好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0059】
【化7】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I12e、I12fおよびI12gの化合物が特に好ましい。
【0060】
式I13の好ましい化合物はRがHのものであり、非常に好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0061】
【化8】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I13e、I13fおよびI13gの化合物が特に好ましい。
【0062】
式I13の更に好ましい化合物はRがSHのものであり、非常に好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0063】
【化9】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I13n、I13oおよびI14pの化合物が特に好ましい。
【0064】
式I13の更に好ましい化合物はRがalkylene−SHのものであり、ただし、「alkylene」は、1〜18個のC原子、非常に好ましくは、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。これらの化合物は、非常に好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0065】
【化10】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I13u、I13vおよびI13wの化合物が特に好ましい。
【0066】
式I14の更に好ましい化合物はRがSHのものであり、非常に好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0067】
【化11】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I14e、I14fおよびI14gの化合物が特に好ましい。
【0068】
式I14の更に好ましい化合物はRがalkylene−SHのものであり、ただし、「alkylene」は、1〜18個のC原子、非常に好ましくは、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。これらの化合物は、非常に好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0069】
【化12】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有する。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I14n、I14oおよびI14pの化合物が特に好ましい。
【0070】
式I15の好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0071】
【化13】

式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、該基は、好ましくは、直鎖状であり、および/または、好ましくは、1個、2個、3個または4個のC原子を有し、Rは式I1において定義される通りであり、非常に好ましくは、H、SHまたはNHである。RがCF、C、n−Cまたはn−Cである式I15e、I15fおよびI15gの化合物が特に好ましい。RがNHである式I15a〜15gの化合物が更に好ましい。
【0072】
式Iおよびそれらのサブ式の化合物は、例えば、ACES Pharma(米国)より商業的に入手可能であるか、当業者に既知で文献に記載された従来の合成方法によって合成できる。
【0073】
もう一つの本発明の態様は、好ましくは、上述の好ましいサブ式および好ましい実施形態より選択される新規な式Iの化合物である。
【0074】
更なる本発明の態様は、上および下に記載する通りの方法における該新規な化合物および配合物の使用と、該新規な化合物または配合物を含むOE装置とである。
【0075】
本発明による方法においては、式Iの化合物は、好ましくは、電極上において自己組織化単分子層(SAM:self−assembled monolayer)を形成し、該自己組織化単分子層は、好ましくは、5員へテロ環および/または基Rを介して、好ましくは、電極表面との化学結合または静電相互作用を提供でき、ただし、基Rおよび/またはRまたはこれらの基によって形成される環はOSC層と面している。
【0076】
加えて、式Iの化合物で形成される層は、OSC層に面する表面上において改良された表面特性(限定することなく、電荷注入および輸送が挙げられる。)を有する。これは、式Iの化合物において、適切な置換基Rおよび/またはRまたはベンゼン環上の適切な置換基Rを選択することで達成され、これらの置換基は、好ましくは、ハロゲン、特には、FまたはCl、または、多フッ素化または過フッ素化されたカルビルまたはヒドロカルビル、特には、ペルフルオロアルキルまたはペルフルオロアルコキシより選択される。
【0077】
それによって、式Iの化合物のSAMを使用することにより、電極表面およびOSC層の間の接触抵抗を低下でき、OSC層中への電荷キャリア注入が改良される。
【0078】
式Iの化合物のSAMは、物理的蒸着(PVS:physical vapour deposition)または化学的蒸着(CVD:chemical vapour deposition)または昇華などの真空または蒸着堆積法によって、または、液体コーティング法によって塗工できる。好ましくは、溶媒系液体コーティング法を使用する。
【0079】
式Iの化合物のSAMは、好ましくは、式Iの1種類以上の化合物を含み、1種類以上の有機溶媒を更に含む配合物、好ましくは溶液を電極上に堆積し、次いで、溶媒(1種類または多種類)を蒸発することで塗工する。好ましい堆積技術としては、限定することなく、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、噴霧コーティング、はけ塗りコーティングまたはパッド印刷が挙げられる。
【0080】
また、式Iの化合物のSAMを電極に塗工する工程を、以降、「SAM処理」とも言う。
【0081】
適切な溶媒は、限定することなく、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどの有機ケトン、THF、ブチル−フェニルエーテル、4−メチルアニソールなどの直鎖状および環状のエーテル、トルエン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素、モノ−またはジ−またはトリ−クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、およびそれらの混合物が挙げられる溶媒から選択される。
【0082】
配合物または溶液における式Iの化合物の濃度は、好ましくは、0.01〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%、非常に好ましくは、0.05〜0.2重量%である。
【0083】
もう一つの本発明の態様は、式Iの1種類以上の化合物と、好ましくは、上記の溶媒から選択される1種類以上の溶媒とを含む配合物である。
【0084】
電極は、噴霧−、浸漬−、ウェブ−またはスピン−コーティングなどの溶媒系または液体コーティング法によって、または、物理的蒸着(PVS:physical vapour deposition)または化学的蒸着(CVD:chemical vapour deposition)または昇華などの真空または蒸着堆積法によって塗工できる。適切な堆積方法は当業者に既知で、文献に記載されている。
【0085】
適切で好ましい電極材料としては、Au、Ag、Cu、Al、Ni、および、それらの酸化物、これらの金属および/またはそれらの酸化物の混合物などの金属の粒子、Cu、Cr、Pt/Pdまたは酸化インジウムスズ(ITO:indium tin oxide)などの混合金属酸化物などのスパッタコートまたは蒸着された金属が挙げられる。好ましくは、電極は、金属および/またはそれらの酸化物を含むか、これらから成り、ただし、該金属は、Au、Ag、Cu、AlおよびNiから成る群より選択され、非常に好ましくは、Au、AgおよびCu、最も好ましくはCuから選択される。
【0086】
好ましくは、SAM処理の前に、電極に予備洗浄工程を施す。洗浄工程としては、好ましくは、例えば、酢酸、クエン酸またはHClなどの有機または無機酸での酸性洗浄が挙げられる。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、電極の洗浄およびSAM処理は、単一の工程に組み合わされる。例えば、この単一の工程は、例えば、酢酸、クエン酸またはHClなどの有機または無機酸中に溶解された式Iの化合物を電極上に塗工することで行われる。
【0088】
もう一つの本発明の態様は、式Iの1種類以上の化合物と、例えば、酢酸、クエン酸またはHClなどの1種類以上の有機または無機酸とを含む配合物である。
【0089】
もう一つの本発明の好ましい実施形態において、電極の洗浄およびSAM処理は、2つの個別のプロセス工程において行われる。例えば、電極を、例えば、酢酸などの酸で洗浄し、次いで、好ましくは、適切な溶媒中に溶解されている式Iの化合物を、洗浄された電極に塗工する。
【0090】
個別の工程において(即ち、洗浄および他のプロセス工程とは別に)SAM処理を電極に適用する場合、配合物における式Iの化合物の濃度は、好ましくは、0.01%〜5重量%である。好ましくは、溶媒は、例えば、アセトンまたはメチルブチルケトン(MBK)などの脂肪族ケトン、エタノールおよびイソプロピルアルコール(IPA)などの低級アルキルアルコール、THFなどの直鎖状または環状エーテル、および、式Iの化合物を溶解する他の有機溶媒から成る群より選択される。
【0091】
式Iの化合物を含有する配合物で電極を浸漬する時間は、好ましくは、30秒〜1時間で変化させる。任意工程として、堆積後に、昇温して、好ましくは、30〜150℃においてSAM層をアニールする。アニール時間は、好ましくは、30秒〜5分、非常に好ましくは、30秒〜2分である。
【0092】
電極の洗浄およびSAM処理が単一の工程に組み合わされている場合、式Iの化合物を、好ましくは、例えば、酢酸、クエン酸またはHClなどの希釈された有機または無機酸中に、好ましくは、0.01重量%〜10重量%の濃度において、例えば、1%酢酸中に溶解する。式Iの化合物を含有する酸配合物で電極を浸漬する時間は、好ましくは、30秒〜1時間で変化させる。任意工程として、堆積後に、昇温して、好ましくは、30〜150℃においてSAM層をアニールする。アニール時間は、好ましくは、30秒〜5分、非常に好ましくは、30秒〜2分である。
【0093】
好ましくは、本発明による方法は以下の工程を含む:
a)例えば、蒸着によって、基板上またはゲート絶縁体層上にソースおよびドレイン電極を堆積する工程と、
b)任意工程として、ソースおよびドレイン電極を洗浄する工程と、
c)式Iの化合物の層、または、式Iの化合物と、任意成分として1種類以上の溶媒とを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極の間の領域と、任意にソースおよびドレイン電極の表面上とに堆積し、任意工程として存在する任意の溶媒を除去し、任意工程として式Iの化合物の層をアニールする工程と、
d)例えば、スピンコーティングまたは液体印刷によって、有機半導体(OSC:organic semiconductor)の層またはOSCを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極上と、式Iの化合物を含有する層上に堆積し、任意工程として依然として存在する溶媒を除去し、任意工程としてOSC層をアニールする工程とで、
ただし、工程b)およびc)は単一の工程に組み合わされていてもよい。
【0094】
もう一つの本発明の好ましい実施形態は、以下の工程を含むOFETの調製方法に関する:
a)基板上にソースおよびドレイン電極を堆積する工程と、
b)任意工程として、ソースおよびドレイン電極を洗浄する工程と、
c)式Iの化合物の層、または、式Iの化合物と、任意成分として1種類以上の溶媒とを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極の間の領域と、任意にソースおよびドレイン電極の表面上とに堆積し、任意工程として存在する任意の溶媒を除去し、任意工程として式Iの化合物の層をアニールする工程と、
d)有機半導体(OSC:organic semiconductor)の層またはOSCを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極上と、式Iの化合物を含有する層上に堆積し、任意工程として依然として存在する溶媒を除去し、任意工程としてOSC層をアニールする工程と
e)OSC層上にゲート絶縁体層を堆積する工程と、
f)ゲート絶縁体層上にゲート電極を堆積する工程と、
g)任意工程として、ゲート電極上にパッシベーション層を堆積する工程とで、
ただし、工程b)およびc)は単一の工程に組み合わされていてもよい。
【0095】
例えば、式Iの化合物を含有する洗浄配合物をソースおよびドレイン電極に塗工し、任意工程として依然として存在する溶媒を除去し、任意工程として式Iの化合物の層をアニールすることにより、工程b)およびc)を単一の工程に組み合わせることができる。
【0096】
本発明による方法においては、上および下で一般的および好ましい実施形態において記載される通り、式Iの1種類のみの化合物を使用するか、または、式Iの2種類以上の化合物を使用することが可能である。
【0097】
トップゲート(TG:top gate)トランジスタを調製する場合、工程b)〜e)が後に続く上記の通りの方法の工程a)において、通常、基板上にソースおよびドレイン電極を塗工する。次いで、OSC層上にゲート絶縁体層を塗工し、ゲート絶縁体層上にゲート電極を塗工する。
【0098】
ボトムゲート(BG:bottom gate)トランジスタを調製する場合、工程b)〜e)が後に続く上記の通りの方法の工程a)において、通常、最初に基板上にゲート電極を塗工し、ゲート電極上にゲート絶縁体層を塗工し、次いで、ゲート絶縁体上にソースおよびドレイン電極を塗工する。
【0099】
正確な方法条件を容易に採用でき、使用される絶縁体およびOSC材料に対応して最適化できる。
【0100】
本発明による電子装置において電極上に提供され、式Iの化合物を含有する層の厚さ(溶媒を除去後)は、好ましくは、1〜10分子層である。
【0101】
図1は本発明による典型的なTG OFETを模式的に表したものであり、基板(1)上に提供されるソース(S)およびドレイン(D)電極(2)と、S/D電極上に提供される式Iの化合物のSAM層(3)と、S/D電極およびSAM層(3)上に提供されるOSC材料の層(4)と、OSC層(4)上に提供されるゲート絶縁体層としての誘電体材料の層(5)と、ゲート絶縁体層(5)上に提供されるゲート電極(6)と、後に提供されることがある更なる層または装置からゲート電極を保護するか、環境の影響からゲート電極を保護するためで、任意構成要素として、ゲート電極(6)上に提供されるパッシベーションまたは保護層(7)とを含む。ソースおよびドレイン電極(2)の間の領域は、両矢印で示される通り、チャネル領域である。
【0102】
図2は本発明による典型的なBGボトムコンタクトOFETを模式的に表したものであり、基板(1)上に提供されるゲート電極(6)と、
ゲート電極(4)上に提供される誘電体材料の層(5)(ゲート絶縁体層)と、
ゲート絶縁体層(6)上に提供されるソース(S)およびドレイン(D)電極(2)と、
S/D電極上に提供される式Iの化合物のSAM層(3)と、
S/D電極およびSAM層(3)上に提供されるOSC材料の層(4)と、
後に提供されることがある更なる層または装置からOSC層を保護するか、環境の影響からOSC層を保護するためで、任意構成要素として、OSC層(4)上に提供される保護またはパッシベーション層(7)とを含む。
【0103】
OSC材料およびOSC層を塗工する方法は、当業者に既知の標準的な材料および方法より選択でき、文献に記載されている。
【0104】
OSC材料はn型またはp型OSCのいずれでも構わず、OSCは真空または蒸着堆積で堆積でき、または、好ましくは、溶液より堆積できる。好ましくは、1×10−5cm−1−1より大きいFET移動度を有するOSC材料を使用する。
【0105】
OSCは、例えば、OFETにおけるアクティブチャネル材料または有機整流ダイドードの層要素として使用される。周辺の環境で加工できる液体コーティングによって堆積されるOSCが好ましい。OSCは、好ましくは、噴霧、浸漬、ウェブまたはスピンコートされるか、任意の液体コーティング技術によって堆積される。また、インクジェット堆積も適切である。OSCを真空または蒸着堆積してもよい。
【0106】
また、半導体チャネルは、同じ型の半導体の2種類以上の複合体でもよい。更に、層をドープする効果のために、例えば、p型チャネル材料をn型材料と混合してもよい。また、多層の半導体層も使用できる。例えば、絶縁体界面の近傍において半導体は真性でよく、真性層に隣接して高度にドープされた領域を追加的にコートすることもできる。
【0107】
OSCは、モノマー化合物(ポリマーまたは巨大分子と比較して、「小型分子」とも言う)またはポリマー化合物、または、モノマーおよびポリマー化合物のいずれかまたは両者より選択される1種類以上の化合物を含有する混合物、分散物またはブレンドで構わない。
【0108】
モノマー材料の場合、OSCは、好ましくは、共役芳香族分子であり、好ましくは、少なくとも3個の芳香族環を含有する。好ましいモノマーOSCは、5員、6員または7員の芳香族環を含有し、より好ましくは、5員または6員の芳香族環を含有する共役芳香族分子から成る群より選択される。
【0109】
これらの共役芳香族分子において、それぞれの芳香族環は、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはSより、好ましくは、N、OまたはSより選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。追加または代替して、これらの共役芳香族分子において、それぞれの芳香族環は、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールまたは置換アリール基、ハロゲン、特に、フッ素、シアノ、ニトロ、または、−N(R)(R)で表される置換されていてもよい2級または3級アルキルアミンまたはアリールアミンで置換されていてもよく、式中、RおよびRは、それぞれ独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、アルコキシまたはポリアルコキシ基である。RおよびRがアルキルまたはアリール基の場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0110】
これらの共役芳香族分子において、芳香族環は縮合されていてもよく、または、−C(T)=C(T)−、−C≡C−、−N(R’)−、−N=N−、(R’)=N−、−N=C(R’)−などの共役連結基で、それぞれ互いに連結されていてもよく、式中、TおよびTは、それぞれ独立に、H、Cl、F、−C≡NまたはC〜C10アルキル基、好ましくは、C1〜4アルキル基を表し;R’は、H、置換されていてもよいC〜C20アルキル基または置換されていてもよいC〜C30アリール基を表す。R’がアルキルまたはアリール基の場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0111】
本発明において使用できる更に好ましいOSC材料としては、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどの共役炭化水素ポリマー(これらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含む);テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、またはこれらの可溶性置換誘導体などの縮合芳香族炭化水素;p−クオターフェニル(p−4P)、p−クインクエフェニル(p−5P)、p−セクシフェニル(p−6P)、またはこれらの可溶性置換誘導体などのオリゴパラ置換フェニレン;ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、置換されていてもよいポリチエノ[2,3−b]チオフェン、置換されていてもよいポリチエノ[3,2−b]チオフェン、ポリ(3−置換セレノフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレンなどの共役へテロ環状ポリマー;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換されたメタロ−または金属を含まない−ポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニンまたはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレン;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフッ素化誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バソフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4−オキサジアゾール;11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン;α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b2’,3’−d]チオフェン);2,8−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’−ビベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンから成る群より選択される化合物、オリゴマーおよび誘導体が挙げられる。好ましい化合物は、上のリストからのもの、およびそれらの有機溶媒に可溶な誘導体である。
【0112】
特に好ましいOSC材料は、チオフェン−2,5−ジイル、3−置換チオフェン−2,5−ジイル、セレノフェン−2,5−ジイル、3−置換セレノフェン−2,5−ジイル、置換されていてもよいチエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、置換されていてもよいチエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、置換されていてもよい2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル、置換されていてもよい2,2’−ビセレノフェン−5,5’−ジイルから選択される1種類以上の繰返単位を含むポリマーおよびコポリマーから成る群より選択される。
【0113】
例えば、米国特許第6,690,029号明細書、国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットまたは米国特許第7,385,221号明細書に開示される通り、更に好ましいOSC材料は、ペンタセン、テトラセンまたはアントラセン、または、6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセンまたは5,11−ビス(トリアルキルシリルエチニル)アントラジチオフェンなどのそれらのヘテロ環状誘導体などの置換オリゴマーから成る群より選択される。
【0114】
もう一つの本発明の好ましい実施形態において、例えば、国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットに記載される通り、レオロジー特性を調整するために、1種類以上の有機バインダー、特に、1,000Hzにおいて3.3以下の低い誘電率εを有する有機バインダーをOSC層は含む。
【0115】
バインダーは、例えば、ポリ(アルファ−メチルスチレン)、ポリケイ皮酸ビニル、ポリ(4−ビニルビフェニル)またはポリ(4−メチルスチレン)、または、それらのブレンドから選択される。また、バインダーは、例えば、ポリアリールアミン、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリスピロビフルオレン、置換ポリビニレンフェニレン、ポリカルバゾールまたはポリスチルベン、または、それらのコポリマーから選択される半導体バインダーでもよい。本発明において使用するための好ましい誘電体材料(3)は、好ましくは、例えば、旭硝子社より商業的に入手可能なCytop(商標)809Mなどの1000Hzにおいて1.5および3.3の間の低い誘電率を有する材料を含む。
【0116】
また、本発明によるトランジスタ装置は、p型半導体チャネルおよびn型半導体チャネルの両者を含む相補型有機TFT(CTFT:complementary organic TFT)でもよい。
【0117】
本発明による方法はOFETに限らず、例えば、OLEDSまたはOPV装置などの電荷注入層を含む任意のOE装置の製造において使用できる。他のOE装置を製造するために本発明による方法を使用するため、上および下に記載される通りの方法を当業者は容易に改変または変更できる。
【0118】
例えば、また、本発明による方法は、例えば、バルクヘテロ接合(BHJ:bulk heterojunction)ソーラーセルなどのOPV装置における電極にも適用できる。OPV装置は、例えば、文献より既知の任意のタイプでよい[例えば、Waldaufら、Appl.Phys.Lett.89巻、233517頁(2006年)参照]。
【0119】
本発明による好ましいOPV装置は、
・低仕事関数電極(例えば、アルミニウムなどの金属)および高仕事関数電極(例えば、ITO)で、これらの一方は透明である、
・好ましくは、OSC材料より選択され、低仕事関数電極および高仕事関数電極の間に配置され、ホール輸送材料および電子輸送材料を含む層(「活性層」とも呼ばれる)で;活性層は、例えば、バルクヘテロ接合(BHJ:bulk heterjunction)(例えば、Coakley、K.M.およびMcGehee、M.D.Chem.Mater.2004年、16巻、4533頁を参照)を形成しているp型およびn型半導体の二重層または2つの別個の層またはブレンドまたは混合物として存在できる、
・任意の構成要素として、高仕事関数電極の仕事関数を改変し、ホールに対するオーミックコンタクトを与えるためで、活性層および高仕事関数電極の間に配置され、例えば、PEDOT:PSS(poly(3,4−ethylenedioxythiophene、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)):(poly(styrenesulfonate)、ポリスチレンスルホネート)のブレンドを含む導電性ポリマー層、
・任意の構成要素として、電子に対するオーミックコンタクトを与えるためで、低仕事関数電極の活性層に面する側上の(例えば、LiFの)コーティングを含み、
ただし、少なくとも一方の電極、好ましくは、高仕事関数電極は、上および下に記載される通りで本発明による方法が施される。
【0120】
もう一つの本発明による好ましいOPV装置は反転OPV装置で、これは、
・低仕事関数電極(例えば、金などの金属)および高仕事関数電極(例えば、ITO)で、これらの一方は透明である、
・好ましくは、OSC材料より選択され、低仕事関数電極および高仕事関数電極の間に配置され、ホール輸送材料および電子輸送材料を含む層(「活性層」とも呼ばれる)で;活性層は、例えば、BHJを形成しているp型およびn型半導体の二重層または2つの別個の層またはブレンドまたは混合物として存在できる、
・任意の構成要素として、電子に対するオーミックコンタクトを与えるためで、活性層および低仕事関数電極の間に配置され、例えば、PEDOT:PSSのブレンドを含む導電性ポリマー層、
・任意の構成要素として、ホールに対するオーミックコンタクトを与えるためで、高仕事関数電極の活性層に面する側上の(例えば、TiOの)コーティングを含み、
ただし、少なくとも一方の電極、好ましくは、高仕事関数電極は、上および下に記載される通りで本発明による方法が施される。
【0121】
よって、本発明のOPV装置においては、少なくとも一方の電極、好ましくは、高仕事関数電極は、それの活性層に面する表面上において、式Iの化合物を含むか、または、式Iの化合物を含む配合物を含む層によって覆われている。前記層は、上および下に記載される通りで本発明による方法によって、好適に塗工される。
【0122】
本発明のOPV装置は、典型的には、p型(電子ドナー)半導体およびn型(電子アクセプター)半導体を含む。p型半導体は、例えば、ポリ(3−アルキル−チオフェン)(P3AT)、好ましくは、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのポリマー、あるいは、上に列記される通りの好ましいポリマーおよびモノマーOSC材料の群より選択される他のものである。n型半導体は、酸化亜鉛またはセレン化カドミウムなどの無機材料、または、フラーレン誘導体、例えば、G.Yu、J.Gao、J.C.Hummelen、F.Wudl、A.J.Heeger、Science 1995年、270巻、1789ff頁において例えば開示される通りで、下に示す構造を有し、「PCBM」または「C60PCBM」としても既知の(6,6)−フェニル−酪酸メチルエステル誘導メタノC60フラーレン、または、例えば、C70フラーレン基(C70PCBM)を有する構造類似化合物またはポリマー(例えば、Coakley、K.M.およびMcGehee、M.D.Chem.Mater.2004年、16巻、4533頁参照)などの有機材料でよい。
【0123】
【化14】

このタイプの好ましい材料は、P3HTなどのポリマー、または、上に列記される群より選択される他のポリマーと、C60またはC70フラーレンまたはPCBMなどの修飾フラーレンとのブレンドまたは混合物である。好ましくは、ポリマー:フラーレンの比は、重量で2:1〜1:2、より好ましくは、重量で1.2:1〜1:1.2、最も好ましくは、重量で1:1である。ブレンドされた混合物については、ブレンドのモルフォロジー、および結果として、OPV装置の性能を最適化するために、任意のアニール工程が必要なこともある。
【0124】
好ましくは、上および下に記載される通りの方法において、OSC層および絶縁体層などの個々の機能層の堆積は、溶液加工技術を使用して行う。これは、例えば、それぞれ、OSCまたは誘電体材料を含み、1種類以上の有機溶媒を更に含む配合物、好ましくは、溶液を先に堆積した層上に塗工し、続いて、溶媒(1種類または多種類)を蒸発することで行うことができる。好ましい堆積技術としては、限定することなく、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、噴霧コーティング、はけ塗りコーティングまたはパッド印刷が挙げられる。非常に好ましい溶液堆積技術は、スピンコーティング、フレキソ印刷およびインクジェット印刷である。
【0125】
本発明によるOFET装置においては、ゲート絶縁体層のための誘電体材料は、好ましくは、有機材料である。誘電体層は溶液コートされることが好ましく、溶液コートによれば周囲環境で加工できるが、種々の真空堆積技術によって堆積することもできる。誘電体をパターン化する場合、誘電体は中間層絶縁体の機能を果たしてもよく、OFETのためのゲート絶縁体として働いてもよい。好ましい堆積技術としては、限定することなく、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、噴霧コーティング、はけ塗りコーティングまたはパッド印刷が挙げられる。高解像度の層および装置を調製できるため、インクジェット印刷が特に好ましい。任意工程として、より良好な溶媒に対する耐性および/または構造的完結性を達成するために、および/または、パターン化(フォトリソグラフィー)を可能とするために、誘電体材料を架橋または硬化できる。好ましいゲート絶縁体は、有機半導体に対して低誘電率の界面を提供するものである。
【0126】
適切な溶媒は、限定することなく、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、脂環式環状エーテル、環状エーテル、酢酸化物、エステル、ラクトン、ケトン、アミド、環状カーボネートまたは以上の多成分混合物が挙げられる溶媒より選択される。好ましい溶媒の例としては、シクロヘキサノン、メシチレン、キシレン、2−ヘプタノン、トルエン、テトラヒドロフラン、MEK、MAK(2−ヘプタノン)、シクロヘキサノン、4−メチルアニソール、ブチルフェニルエーテルおよびシクロヘキシルベンゼン、非常に好ましくは、
MAK、ブチルフェニルエーテルまたはシクロヘキシルベンゼンが挙げられる。
【0127】
それぞれの機能性材料(OSCまたはゲート誘電体)の配合物中における総濃度は、好ましくは、0.1〜30重量%、好ましくは、0.1〜5重量%である。特に、インクジェットおよびフレキソ印刷のための溶液において使用するためには、高い沸点を有する有機ケトン溶媒が有利である。
【0128】
堆積方法としてスピンコーティングを使用する場合、例えば、1000および2000rpmの間で、例えば、30秒の時間で、OSCまたは誘電体材料をスピンし、典型的には、0.5および1.5μmの間の層厚を有する層を与える。スピンコーティング後、昇温してフィルムを加熱し、全ての残存する揮発性溶媒を除去することもできる。
【0129】
架橋するためには、堆積後の架橋性誘電体材料を、好ましくは、例えば、X線、UVまたは可視光の放射などの電子ビームまたは電磁気(化学線)放射に曝露する。例えば、50nm〜700nm、好ましくは、200〜450nm、最も好ましくは、300〜400nmの波長を有する化学線放射を使用できる。適切な放射線量は、典型的には、25〜3,000mJ/cmの範囲内である。適切な放射線源としては、水銀、水銀/キセノン、水銀/ハロゲンおよびキセノンランプ、アルゴンまたはキセノンレーザ光源、X線、または、電子ビームが挙げられる。化学線に曝露することで、曝露された領域内の誘電体材料の架橋性基における架橋反応が誘発されることとなる。また、例えば、架橋性基の吸収バンド外の波長を有する光源を使用することや、放射線感受性の光増感剤を架橋性材料に加えることも可能である。
【0130】
任意工程として、放射線に曝露後、例えば、70℃〜130℃の温度において、例えば、1〜30分、好ましくは、1〜10分の時間において、誘電体材料層をアニールする。誘電体材料の架橋基を光放射に曝露することで誘発された架橋反応を完結するために、昇温してアニール工程を使用できる。
【0131】
上および下に記載される全ての方法工程は、先行技術において記載され当業者に良く知られている既知の技術および標準的な装置を使用して行うことができる。例えば、光照射工程においては、商業的に入手可能UVランプおよび光マスクを使用でき、オーブン内またはホットプレート上においてアニール工程を行うことができる。
【0132】
本発明による電子装置における機能層(OSC層または誘電体層)の厚みは、好ましくは、1nm(単層の場合)〜10μm、非常に好ましくは、1nm〜1μm、最も好ましくは、5nm〜500nmである。
【0133】
種々の基板を有機電子装置の製造のために使用でき、例えば、シリコンウエハー、ガラスまたはプラスチックであり、プラスチック材料が好ましく、例として、アルキド樹脂、アリルエステル、ベンゾシクロブテン、ブタジエン−スチレン、セルロース、セルロースアセテート、エポキシド、エポキシポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレン、エチレン−テトラ−フルオロエチレン、ガラス繊維強化プラスチック、フルオロカーボンポリマー、ヘキサフルオロプロピレンビニリデン−フルオリドコポリマー、高密度ポリエチレン、パリレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴムおよびシリコーンが挙げられる。
【0134】
好ましい基板材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドおよびポリエチレンナフタレートである。基板は、上の材料でコートされた任意のプラスチック材料、金属またはガラスでもよい。基板は、好ましくは、良好なパターン鮮明度を保証するために均質でなければならない。また、キャリアの移動度を高めるために、有機半導体の配向を誘発するための押出、延伸、ラビングまたは光化学的技術によって基板を均一に事前配向してもよい。
【0135】
文脈が明らかに他を示さない限り、本明細書で用いられる場合、本明細書における用語の複数形は単数形を含むものと解釈されることとし、逆もまた同様である。
【0136】
本発明の前述の実施形態は、本発明の範囲内に依然として在りながら変更できると理解されるであろう。他に明言しない限り、本明細書において開示されるそれぞれの態様を、同一、同等または同様の目的に働く代替の態様で置き換えても構わない。よって、他に明言しない限り、開示されるそれぞれの態様は、包括的で一連の同等または同様な態様の一例に過ぎない。
【0137】
本明細書において開示される態様の全ては、その様な態様および/または工程の少なくとも幾つかが互いに排他的である組み合せを除いて、任意の組み合わせで組み合わせて構わない。特に、本発明の好ましい態様は本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組み合わせにおいて使用できる。同様に、本質的でない組み合わせで記載される態様は、個別に(組み合わせずに)使用できる。
【0138】
上記の態様、特に好ましい実施形態の多くは、それ自体で発明性があり、本発明の実施形態の単なる一部分ではないことが分かるであろう。本願において特許請求される任意の発明に追加するか代わりに、これらの態様に対して独立した特許保護を求める場合がある。
【0139】
ここで、以下の例を参照して、本発明を更に詳細に記載するが、それは単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0140】
以下のパラメータを使用する:
μLNは、線形電荷キャリア移動度であり、
μSATは、飽和電荷キャリア移動度であり、
Wは、ドレインおよびソース電極の長さ(「チャネル幅」としても既知)であり、
Lは、ドレインおよびソース電極の間の距離(「チャネル長」としても既知)であり、
は、ソース−ドレイン電流であり、
OXは、ゲート誘電体の単位面積あたりの静電容量であり、
は、ゲート電圧(V)であり、
DSは、ソース−ドレイン電圧であり、
Sqrt(ID)は、線形電荷キャリア移動度である。
【0141】
他に明言しない限り、上および下で与えられる場合、誘電率(ε)、電荷キャリア移動度(μ)、溶解性パラメータ(δ)および粘度(η)などの物理的パラメータの全ての特定の値は、20℃(±1℃)の温度でのものである
【実施例】
【0142】
<例1 2段階SAM処理法が施されたCu製S/D電極を有するOTFT>
下に記載する通り、ガラス上にトップゲートOTFT装置を調製した。
【0143】
<基板の清浄>
1インチ×1インチのガラス基板(コーニング社 XG2000)を基板保持箱内に置き、メタノールを満たし、25℃において3分、超音波浴内で超音波処理した。
【0144】
基板をスピンコート器上に置き、2000rpmで20秒スピンして、基板をスピン乾燥した。
【0145】
<ソース/ドレイン(S/D)電極の調製>
Edwards306蒸着器を使用し、シャドーマスクを介してCuを熱蒸着することで、Cu製S/D電極を調製した。活性チャネルの寸法は、長/幅が50μm/1000μmであった。電極の厚さは40nmであり、蒸着速度は0.1nm/秒であった。
【0146】
<ソース/ドレインの処理>
Cu製S/D電極を有するガラス基板を5分間浸漬して1%酢酸内で清浄化し、次いで、水で濯ぎ、スピンコート器上でスピン乾燥した。次いで、スピンコート器上で1分間、基板を浸漬して、イソプロピルアルコール(IPA:isopropyl alcohol)中に溶解された式I11aの化合物(4,5,6,7−テトラフルオロ−1H−ベンゾトリアゾール、「F4BTA」)の1%溶液を塗工した。1分後、配合物をスピンして取り除き、続いて、IPAで濯ぎスピンした。次いで、試料をスピン乾燥し、100℃において1分間ホットプレート上でアニールした。
【0147】
<OSCのコーティング>
500rpm/10秒、続いて、2000rpm/60秒でスピンコートし、続いて、ホットプレート上で1分間100℃においてアニール工程を行い、商業的に入手可能なOSC配合物Lisicon S1200(登録商標)(メルク社製)をコートした。
【0148】
<誘電体のコーティング>
ゲート誘電体としてCytop(登録商標)807Mポリマー(旭硝子社製)を使用し、500rpm/10秒、続いて、1700rpm/30秒でスピンコートし、1.7nF/cmの静電容量を有する1.1μmの層厚を与えた。
【0149】
<ゲート電極の調製>
Edwards306蒸着器を使用し、シャドーマスクを介してCuを熱蒸着することで、Cu製ゲート電極を調製した。電極の厚さは40nmであり、蒸着速度は0.1nm/秒であった。
【0150】
<トランジスタの特性解析>
Karl Suss PH100プローブヘッドを備えるプローブステーションに接続されたAgilent4155C半導体解析装置を使用して、トランジスタを計測した。トランジスタは、以下の通り計測した:
VD=−5Vで、VGを+20Vから−60Vまでスキャンし、1Vステップで戻した(線形モード)、
VD=−60Vで、VGを+20Vから−60Vまでスキャンし、1Vステップで戻した(飽和モード)。
【0151】
以下の式を使用して、移動度の値を計算した。
【0152】
【数1】

図3に、上記の通りの方法によって得られたトランジスタの変換特性を示す。4FBTAでの処理を銅電極に適用することで電荷キャリア注入が可能となり、トランジスタがS1200 Lisicon配合物にとって典型的な特性を示していることが見て取れる。
【0153】
線形移動度μLN、飽和移動度μSATおよびオン−オフ比の値は、下の通り与えられる:
線形移動度:1.55cm/Vs、飽和移動度:1.45cm/Vsおよびオン−オフ比:10
【0154】
<例2 単一段階SAM処理法が施されたCu製S/D電極を有するOTFT>
下記の通りの単一の工程手順において工程「ソース/ドレインの処理」を行った以外は例1に記載する通り、ガラス上にトップゲートOTFT装置を調製し、特性解析した。
【0155】
<ソース/ドレインの処理>
1:1の体積比において1%の式I11aの化合物(F4BTA)と混合された1%酢酸を含有する配合物によって、Cu電極を有するガラス基板を1分間処理した。次いで、水およびIPAで基板を洗浄し、スピンコート器上でスピン乾燥した。
【0156】
図4に、例2による方法で得られたトランジスタの変換特性を示す。単一段階の処理を銅電極に適用することによっても電荷キャリア注入が可能となり、トランジスタがS1200 Lisicon(登録商標)配合物にとって典型的な特性を示していることが見て取れる。
【0157】
線形移動度μLN、飽和移動度μSATおよびオン−オフ比の値は、下の通り与えられる:
線形移動度:1.5cm/s、飽和移動度:0.75cm/Vsおよびオン−オフ比:10
【0158】
<例3 2段階SAM処理法が施されたCu製S/D電極を有するOTFT>
下記の通り工程「ソース/ドレインの処理」を行った以外は例1に記載する通り、ガラス上にトップゲートOTFT装置を調製し、特性解析した。
【0159】
<ソース/ドレインの処理>
Cu製S/D電極を有するガラス基板を5分間浸漬して1%酢酸内で清浄化し、次いで、水で濯ぎ、スピンコート器上でスピン乾燥した。次いで、スピンコート器上で1分間、基板を浸漬して、イソプロピルアルコール(IPA:isopropyl alcohol)中に溶解された式I15f(式中、RはCFであり、RはNHである。(5−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾール−3−アミン))の化合物の0.2%溶液を塗工した。1分後、配合物をスピンして取り除き、続いて、IPAで濯ぎスピンした。次いで、試料をスピン乾燥し、100℃において1分間ホットプレート上でアニールした。
【0160】
図5に、例3による方法で得られたトランジスタの変換特性を示す。5−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾール−3−アミンでの処理を銅電極に適用することによって電荷キャリア注入が可能となり、トランジスタがS1200 Lisicon(登録商標)配合物にとって典型的な特性を示していることが見て取れる。
【0161】
線形移動度μLN、飽和移動度μSATおよびオン−オフ比の値は、下の通り与えられる:
線形移動度:1.7cm/s、飽和移動度:1.25cm/Vsおよびオン−オフ比:10
【0162】
<比較例1 SAM処理法が施されていないCu製S/D電極を有するOTFT>
下記の通り工程「ソース/ドレインの処理」を行った以外は例1に記載する通り、ガラス上にトップゲートOTFT装置を調製し、特性解析した。
【0163】
<ソース/ドレインの処理>
Cu電極を有するガラス基板を5分間浸漬して1%酢酸内で清浄化し、次いで、水で濯ぎ、スピンコート器上でスピン乾燥した。
【0164】
図6に、比較例1による方法で得られたトランジスタの変換特性を示す。S1200 Lisicon(登録商標)配合物にとって典型的ではなく、オン電流の値が低い貧弱な性能をトランジスタが示していることが見て取れる。これは、未処理の銅電極がOSC層中に電荷キャリアを効率良く注入しないことを示す。
【0165】
線形移動度μLN、飽和移動度μSATおよびオン−オフ比の値は、下の通り与えられる:
線形移動度:0.28cm/s、飽和移動度:0.1cm/Vsおよびオン−オフ比:10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置中に、金属または金属酸化物を含有する1個以上の電極を提供する工程と、
前記電極の表面上に、式Iの化合物を含む層を堆積する工程と、および
式Iの化合物を含む前記層によって被覆されている前記電極の表面上に、有機半導体を堆積するか、または、2個以上の前記電極の間の領域に、有機半導体を堆積する工程と
を含む方法。
【化1】

(式中、
、X、Xは、それぞれ互いに独立に、−N(H)−、−N=、=N−、−C(R)=、=C(R)−および−S−から選択され、ただし、X、X、Xの少なくとも1つは−C(R)=および=C(R)−と異なり、
は、それぞれの出現において同一または異なって、H、SH、NH、または、1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルであり、ただし、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−NR−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CR=CR00−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよく、
およびRは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、P−Sp−、または、1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−NR−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CR=CR00−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい。)であるか、または、2〜30個のC原子を有するアリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルまたはヘテロアリールオキシカルボニル(該基は無置換であるか、1個以上の非芳香族基Rで置換されている。)を表すか、または、RおよびRは、それぞれ互いと、および、それらが接続されている5員ヘテロ環と共に芳香族またはヘテロ芳香族環(該基は5〜7個の環原子を含み、および、無置換であるか、または、1個、2個、3個、4個または5個の基Rで置換されている。)を形成しており、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、H、または、置換されていてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよいカルビルまたはヒドロカルビルであり、
Rは、それぞれの出現において同一または異なって、H、P−Sp−、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、置換されていてもよいシリル、1〜40個のC原子を有するカルビルまたはヒドロカルビル(該基は置換されていてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。)であり、
Pは、重合性または架橋性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
は、ハロゲンである。)
【請求項2】
式Iの化合物において、RおよびRは、それぞれ互いと、および、それらが接続されている5員ヘテロ環と共にベンゼン環を形成しており、ただし、1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよく、ただし、前記環は無置換であるか、または、1個、2個、3個または4個の基Rで置換されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの化合物において、RおよびRは、それぞれ互いと、および、それらが接続されている5員ヘテロ環と共にベンゼン、ピリジンまたはピリミジン環を形成しており、該環は無置換であるか、または、1個、2個、3個または4個の非芳香族基Rで置換されていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式Iの化合物は式I1より選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【化2】

(式中、
は、−N(H)−、−C(R)=または−S−であり、
は、−N=、−N(H)−、−C(R)=または−S−であり、
は、−N=または−N(H)−であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
および、RおよびRは、請求項1において与えられる意味を有する。)
【請求項5】
式Iの化合物は以下の式より選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【化3】

(式中、R、Rおよびrは、請求項4において定義される通りである。)
【請求項6】
式I、I1およびI11〜I15において、Rは、H、SH、NH、−alkylene−SHであり、ただし、alkyleneは1〜18個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレン基またはC〜C18チアアルキルを表し、Rは、それぞれの出現において同一または異なって、FまたはC〜C15ペルフルオロアルキルを表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式I、I1およびI11〜I15において、基RまたはRの少なくとも一方はP−Sp−を表し、式中、PおよびSpは請求項1において定義される通りであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式Iの化合物は以下の式より選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

(式中、Rは1〜15個のC原子を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキルであり、alkyleneおよびRは、請求項5、6または7において定義される通りである。)
【請求項9】
a)基板上またはゲート絶縁体層上にソースおよびドレイン電極を堆積する工程と、
b)任意工程として、ソースおよびドレイン電極を洗浄する工程と、
c)式Iの化合物の層、または、式Iの化合物と、任意成分として1種類以上の溶媒とを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極の間の領域と、任意にソースおよびドレイン電極の表面上とに堆積し、任意工程として存在する任意の溶媒を除去し、任意工程として式Iの化合物の層をアニールする工程と、
d)有機半導体(OSC:organic semiconductor)の層またはOSCを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極上と、式Iの化合物を含有する層上に堆積し、任意工程として依然として存在する溶媒を除去し、任意工程としてOSC層をアニールする工程とを含み、
ただし、工程b)およびc)は単一の工程に組み合わされていてもよいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)基板上にソースおよびドレイン電極を堆積する工程と、
b)任意工程として、ソースおよびドレイン電極を洗浄する工程と、
c)式Iの化合物の層、または、式Iの化合物と、任意成分として1種類以上の溶媒とを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極の間の領域と、任意にソースおよびドレイン電極の表面上とに堆積し、任意工程として存在する任意の溶媒を除去し、任意工程として式Iの化合物の層をアニールする工程と、
d)有機半導体(OSC:organic semiconductor)の層またはOSCを含む配合物の層を、ソースおよびドレイン電極上と、式Iの化合物を含有する層上に堆積し、任意工程として依然として存在する溶媒を除去し、任意工程としてOSC層をアニールする工程と
e)OSC層上にゲート絶縁体層を堆積する工程と、
f)ゲート絶縁体層上にゲート電極を堆積する工程と、
g)任意工程として、ゲート電極上にパッシベーション層を堆積する工程とを含み、
ただし、工程b)およびc)は単一の工程に組み合わされていてもよいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項において定義される通りの式Iの1種類以上の化合物を含み、1種類以上の有機または無機酸を更に含む配合物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られる有機電子装置。
【請求項13】
有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、有機薄膜トランジスタ(OTFT:organic thin film transistor)、集積回路(IC:integrated circuitry)の部品、無線識別(RFID:radio frequency identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、エレクトロルミネセントディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、バックライト、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)セル、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板またはパターン、光導電体、光受容体、電子写真記録装置およびゼログラフィック装置から成る群より選択されることを特徴とする請求項12に記載の有機電子装置。
【請求項14】
トップゲートまたはボトムゲートOFETであることを特徴とする請求項12または13に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520811(P2013−520811A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554236(P2012−554236)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000344
【国際公開番号】WO2011/103952
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】