説明

有機高分子、電子デバイス、および方法

電子デバイスに使用する有機高分子であって、この高分子は、式(a)および(b)の反復単位を含む。式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、各R1が、独立してH、アリール基、Cl、Br、I、または架橋可能な基を含む有機基であり、各R2が、独立してH、アリール基、またはR4であり、各R3が、独立してHまたはメチルであり、各R5が、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、各R4が、独立して、少なくとも1個のCN基を含み、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり、n=0〜3である。これらの高分子は、有機薄膜トランジスタなどの電子デバイスに有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスに使用するのに適する高分子を目的とする。より詳しくは、本発明は、シアノ官能基(好ましくはシアノ官能性スチレンの)高分子、好ましくは比較的誘電率の高い高分子を提供する。こうした高分子は、標準の化学技術(例えば、対応するモノマーからのフリーラジカル重合または既存高分子の化学的改質)によって調製することができ、電子デバイス内の誘電層として、ある場合には表面改質フィルムの付加なしで使用できる。
【背景技術】
【0002】
有機誘電体などの有機高分子材料は、光電子デバイスを含めて、多種多様な電子デバイスに使用される。具体例には、トランジスタ、ダイオード、キャパシタ(例えば埋め込み型キャパシタ)、抵抗体が含まれ、それらを種々の配列で使用して、例えば増幅器、受信器、発信器、インバータ、および発振器を作成することができる。
【0003】
テトラセン、ペンタセン、およびセキシチオフェンなどの有機半導体は、現在、様々な電子装置の応用分野向けに非常に関心がもたれている。有機半導体を使用することの鍵となる利点の一つは、標準のシリコンベースの材料と対比して、溶液堆積技術を使用する可能性である。しかし、この利点が完全に実現されるためには、誘電層を含めてデバイスの全ての構成要素を溶液から堆積しなければならない。
【0004】
さらに、有用なデバイス(例えばトランジスタ)を得るためには、デバイス内で合理的な、好ましくは1.0cm2/V・sを超える電荷キャリア移動度を有することが重要である。歴史的には、有機高分子誘電体では、移動度の低いデバイスが製造されてきた。しかし、有機高分子誘電体を使用する利点は、それらが、溶液処理可能で光パターン化可能なことである。有機高分子の薄層では、Al23またはSiO2などの無機酸化物上に作成されたデバイス内の移動度が改良されることが示され、それは、大部分の有機高分子より高い誘電率を有する。
【0005】
相当数の有機高分子が誘電材料として検討されてきた。これらには、ポリイミド、パリレンC、架橋ベンゾシクロブテン、およびシアノエチルプルランが含まれる。例えば、C.D.シェロー(Sheraw)ら著「高性能有機薄膜トランジスタ用のスピンオン高分子ゲート誘電体(Spin−on polymer gate dielectric for high performance organic thin film transistors)」(マテリアル・リサーチ・ソサエティー・シンポジウム会議録(Materials Research Society Symposium Proceedings)、v 558、材料研究学会(Materials Research Society)、USAペンシルバニア州ウォーレンデイル(Warrendale)、ページ403〜408(2000))、米国特許第6,265,243号明細書(カッツ(Katz))、および米国特許第5,347,144号明細書(ガルニエ(Garnier))を参照されたい。しかし、これらの高分子を使用して作成したデバイスで測定した移動度は、通常0.7cm2/V・sを超えることはない。
【0006】
加えて、比較的厚いフィルムは、薄膜に比べてピンホール欠陥の確率が比較的小さいが、厚いフィルムの使用を可能にするには高い誘電率が望ましい。また、同じ誘電分極を維持しながらデバイスの動作電圧を下げるには高い誘電率が望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、様々な電子デバイス(例えばトランジスタ、キャパシタなど)用の有機高分子が要望されている。特に、比較的高い誘電率と共に比較的高い実際のデバイス移動度を併せもつ有機高分子、および、好ましくは、例えばスピン被覆または類似の技術によって溶液堆積できる有機高分子が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
デバイスに使用するのに適切な高分子は、シアノ官能基部分、および、高分子全体に比較的高い誘電率を付与する部分を含むことが好ましく、その部分は同じかもしくは異なっていてもよい。この高分子は、ホモポリマーまたは共重合体とすることができる。共重合体は、2種類以上のモノマーから調製される高分子であり、三元重合体、四元重合体等が含まれる。モノマーが結合して、ランダム共重合体、ブロック共重合体、セグメント化共重合体、並びに、他の様々な構造的配置のどれでも形成できる。
【0009】
一実施形態では、本発明は、有機高分子誘電層を含む電子デバイスを提供する。この誘電層は、次式の反復単位を有する実質的に非フッ素化有機高分子を含む。
【化1】

式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、各R1は、独立してH、アリール基(アラルキルおよびアルカリルを含む)、Cl、Br、I、または架橋可能な基(すなわち1個または複数の架橋可能な基)を含む有機基であり、各R2は、独立してH、アリール基(アラルキルおよびアルカリルを含む)、またはR4であり、各R3は、独立してHまたはメチルであり、各R5は、芳香環上の置換基であって、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、n=0〜3であり、各R4は、独立して、少なくとも1個のCN基を含み、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基である。少なくとも1個のR1が架橋可能な基を含むことが好ましい。2個の反復単位が同じでもよく、それによってホモポリマーを形成することができよう。ある特定の実施形態では、実質的に非フッ素化の誘電性高分子が架橋される。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、光パターン化可能な有機高分子誘電層を含む電子デバイスを提供し、有機高分子誘電層は、次式の反復単位を有する有機高分子(好ましくは実質的に非フッ素化有機高分子)を含む。
【化2】

式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、各R1は、独立して架橋可能な基を含む有機基(すなわち1個または複数の架橋可能な基)であり、各R2は、独立してH、アリール基(アルカリルおよびアラルキルを含む)、またはR4であり、各R3は、独立してHまたはメチルであり、各R5は、芳香環上の置換基であって、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、n=0〜3であり、各R4は、独立して少なくとも1個のCN基を含み、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基である。2個の反復単位が同じでもよく、それによってホモポリマーを形成することができよう。ある特定の実施形態では、光パターン化すると有機高分子が架橋される。
【0011】
デバイスのある特定の実施形態、方法、および好ましい高分子も提供される。
【0012】
例えば、特に好ましいデバイスには、キャパシタ(例えば埋め込み型キャパシタ)、薄膜トランジスタまたはトランジスターアレイ、およびエレクトロルミネセンスランプが含まれる。デバイスは、その表面にスチレン単位体(好ましくはシアノ官能性スチレン単位体)を有する有機高分子誘電層を含むことが好ましい。
【0013】
本明細書に記載した有機高分子の層(すなわちフィルム)を形成することによって、任意選択で有機高分子をアニールすることによって、および任意選択で有機高分子を架橋することによって、多種多様な電子デバイスが作成できる。
【0014】
電子デバイスを作成する特に好ましい方法には次が含まれる:少なくとも約3.5の誘電率を有する有機高分子の層を形成する工程であって、有機高分子には、シアノ官能基およびスチレン単位体(これはシアノ官能基を含むことができる)が含まれる工程、有機高分子をアニールして、スチレン単位体を層の表面に移動させる工程、および、任意選択で有機高分子を架橋して、有機高分子誘電層を形成する工程。本発明はまた、この方法によって作成された電子デバイスを提供する。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「高分子」には2個以上の反復単位(例えばホモポリマーおよび共重合体)が含まれ、「共重合体」には2種類以上の異なる反復単位が含まれ、三元重合体、四元重合体などを包含する。共重合体は、ランダム、ブロック、交互などとすることができる。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「a」、「an」、または「the」は互換性があるように使用され、「少なくとも1個」は、改質される元素が「1個または複数」であることを意味する。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「有機基」は、(任意選択で、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、およびハロゲンなどの、炭素および水素以外の元素を有する)炭化水素基を意味し、それは、脂肪族基、環式の基、または、脂肪族と環式の基の組合せ(例えばアルカリルおよびアラルキル基)として分類される。本発明との関連で、この有機基は、有機誘電層のフィルム形成特性、および/または有機誘電層に隣接する半導体層の形成または機能を干渉しないものである。用語「脂肪族基」は、飽和または不飽和の線状もしくは分岐した炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を包含するのに使用される。用語「アルキル基」は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシル等を含めて、飽和の線状もしくは分岐した炭化水素基を意味する。用語「アルケニル基」は、ビニル基などの1個または複数の炭素−炭素二重結合を有する不飽和の線状もしくは分岐した炭化水素基を意味する。用語「アルキニル基」は、1個または複数の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の線状もしくは分岐した炭化水素基を意味する。用語「環式の基」は、脂環式の基、芳香族基、または複素環基として分類される閉じた環の炭化水素基を意味する。用語「脂環式の基」は、脂肪族基の特性に似た特性を有する環式炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」または「アリール基」は、その範囲のアルカリルおよびアラルキル基を含めて、モノまたは多核芳香族炭化水素基を意味する。用語「複素環基」は、環の原子の1個または複数が炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)である閉じた環の炭化水素を意味する。
【0018】
本発明の高分子の有機基には置換が予想される。議論を単純化し、かつ本出願全体にわたり使用される特定の専門用語を詳述する方法として、用語「基」と「部分」は、置換が可能であるか、または置換されることがある化学種と、置換が不可能か、またはそのように置換されることはない化学種との間で区別して使用される。すなわち、用語「基」を使用して化学置換基を説明するとき、記載した化学物質には、非置換の基、および、例えば(アルコキシ基内のように)分子鎖内にO、N、Si、またはS原子を有する基、並びに、カルボニルまたは他の通常の置換基が含まれる。用語「部分」を使用して化合物または置換基を説明する場合、非置換の化学物質だけが含まれると意図されている。例えば、フレーズ「アルキル基」は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル等の純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどの当技術分野で知られている置換基をさらに保持しているアルキル置換基も含むと意図されている。したがって、「アルキル基」には、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどが含まれる。一方、フレーズ「アルキル部分」は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル等の純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基だけを含むことに限定される。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「層」は、例えば溶液被覆プロセスまたは蒸着プロセスを使用して前駆体化合物から基板上に形成できる任意の層を指す。用語「層」は、「バリヤー層」、「誘電層」、「絶縁層」、および「導電層」などの半導体工業に特有の層を含むことを意味する。(用語「層」は、半導体工業においてしばしば使用される用語「フィルム」と同義語である。)用語「層」はまた、ガラスへの被覆などの半導体技術以外の技術に見られる層を含むことを意味する。「誘電層」は、本明細書で使用されるとき、シアノ官能性高分子、好ましくはスチレンの高分子を含む比較的誘電率の高い層(またはフィルム)を指す。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための最良の形態および特許請求の範囲から明らかになるだろう。本開示の諸原理の上記解決手段は、本開示の例示した各実施形態またはすべての実施態様を説明することを意図しない。以下の発明を実施するための最良の形態では、本明細書に開示した諸原理を利用した特定の好ましい実施形態がより詳しく例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、光電子デバイスを含めて、電子デバイスに使用するのに適する高分子を目的とする。より詳しくは、本発明は、比較的誘電率の高い(好ましくは少なくとも約3.5、より好ましくは少なくとも約4.0、さらにより好ましくは少なくとも約4.5)シアノ官能性高分子を提供する。特定の好ましい実施形態では、この高分子は、シアノ官能基およびスチレン単位体を含む。スチレン単位体はシアノ官能基を含んでもよく、および/またはシアノ官能基は他のインター重合する単位体の一部であってもよい。
【0022】
本明細書に記載した高分子は、標準の化学技術(例えば、対応するモノマーからのフリーラジカル重合または既存の高分子の化学的改質)によって調製することができ、電子デバイス(例えば、電界効果薄膜トランジスタ、キャパシタ、埋め込み型キャパシタ、またはエレクトロルミネセンスランプ)の誘電層として、あるいは、集積回路(例えば、インバータまたは発振器)の構成要素として使用されるデバイスの誘電層として使用できる。本明細書に記載した(他の有機高分子を有するかもしくは有さない)シアノ官能性高分子の種々の組合せ(例えば混合物)が、本発明のデバイスに使用できる。
【0023】
電子デバイスには、回路を形成するのに使用されるトランジスタ、トランジスタアレイ、ダイオード、キャパシタ、埋め込み型キャパシタ、および抵抗体などの構成要素が含まれる。電子デバイスには、電子的機能を行う回路配列も含まれる。これらの配列または集積回路の例は、増幅器、受信器、発信器、インバータ、および発振器である。
【0024】
これらのデバイスおよび配列の用途には、高周波同定デバイス(RFID)、スマートカード、ランプ、ディスプレイ等がある。本発明のデバイスはまた、カメラ・フラッシュキャパシタ、エネルギー貯蔵キャパシタなどを含むことができる。本発明は、デバイスのタイプによっては制限されない。
【0025】
特に好ましいデバイスのタイプには、薄膜トランジスタ、キャパシタ、埋め込み型キャパシタ、およびエレクトロルミネセンスランプが含まれる。薄膜トランジスタ(TFT)では、本発明の高分子層は、通常導電性ゲート電極層と半導体層の間に、または代わりに、導電性ゲート電極層と第2の導電性ソース/ドレーン層の間に挿入されることになる。キャパシタの場合、本発明の高分子層は、通常2つの導電層の間に挿入されることになる。
【0026】
埋め込み型キャパシタは、回路、好ましくは可撓性回路の構成要素として埋め込まれた、または一体化されたキャパシタである。このタイプのデバイスでは、本発明の高分子層は、銅箔などの可撓性で導電性の2つの基板間にはさみ込まれることになる。エレクトロルミネセンスランプ(EL)は、電流がそこを通過したとき光を発生する電子デバイスである。かかるデバイスでは、本発明の高分子層は、発光層と一方または両方の電極との間に挿入されることになる。
【0027】
本発明の材料を使用して作成したトランジスタ、例えばペンタセンベースのトランジスタは、好ましくは約0.5cm2/V・sを超える、より好ましくは約1.5cm2/V・sを超える、さらにより好ましくは約3.0cm2/V・sを超える電荷キャリア移動度を有する。こうしたトランジスタは、好ましくは許容可能な範囲内(例えば、+15ボルト(v)と−15Vの間の閾値電圧、少なくとも103のオン/オフ比、および約2.5V/10年未満のサブスレッショルド勾配)の適切なデバイスパラメータを有する。
【0028】
加えて、本発明の材料はまた、オリゴチオフェン、アセン、ペリレン、フラーレン、フタロシアニンなどを含めて、他の種類の有機半導体に概ね有用である。本発明の材料はまた、例えば、非晶質Si、CdS、CdSe、および当技術分野でよく知られている他の半導体などの無機半導体に概ね有用である。
【0029】
この有機高分子誘電体はまた、これらに限定されないが、本出願人の譲受人の同時係属出願である2001年9月27日出願の米国特許出願第09/966,954号明細書および米国特許出願第09/966,961号明細書、並びに、2002年9月27日出願の米国特許出願第10/256,489号明細書において議論された高分子半導体などの高分子半導体を使用する有機薄膜トランジスタを作成する際に有用なはずである。
【0030】
本発明の材料を使用して作成されるキャパシタの特定の実施形態では、好ましくは、高い絶縁破壊電圧(例えば、層厚2000オングストローム(Å)の場合に50Vを超える)、および/または周波数の関数として比較的一定の誘電損失を示す。
【0031】
特定の実施形態では、比較的誘電率の高い本発明の高分子は、次の1つもしくはそれ以上の特性を有する:溶液からの被覆が可能、架橋が可能、光パターン化が可能、熱安定性が高い(例えば、約250℃の温度まで安定である)、処理温度が低い(例えば、約150℃より低く、好ましくは約100℃より低い)、および、可撓性基板と相溶性がある。
【0032】
架橋可能および/または光パターン化可能な高分子が特に望ましい。これは、その高分子が、製造手順に柔軟性を提供し、溶液処理したデバイス層と容易に一体化し、かつ、高速ロールツーロール処理を可能にするからである。高分子は、それらが1個または複数の架橋(すなわち架橋可能な)基を含み、放射線(最も一般には紫外線)に暴露した際、架橋した網目構造の形成を引き起こせる場合、光パターン化が可能である。暴露されたもの(高分子の架橋部分)は特定の溶剤に不溶性になり、高分子の暴露されていない部分は、展開溶媒を使用して洗い流すことができる。これは、ネガ型光パターン化可能な高分子の例である。最初のうちは特定の溶剤に不溶性であるが、UV暴露すると暴露区域が可溶性になる高分子を光パターン化することもまた可能である。これは、ポジ型光パターン化可能な高分子の例である。
【0033】
光パターン化は、当業者に周知の様々な技術によって行なうことができる。光パターン化は、通常紫外線およびフォトマスクを用いて行われる。光パターン化は、1997年4月24日発行の国際公開第97/15173号パンフレットにより詳しく記載されている。また、マスクおよびパターンを使用しないで光パターン化可能な高分子をデバイスの表面全体にわたり均一に被覆することが望ましい場合がある。次いで、パターンの形成に関係なく、高分子層を上記したように架橋することができる。
【0034】
本発明の高分子は、溶液被覆技術を使用して堆積するのが好ましい。かかる技術の例には、ナイフ被覆、スピン被覆、滴下被覆、浸漬被覆、インク噴射、輪転グラビア被覆、吹付被覆、およびロール被覆が含まれる。本発明の高分子に使用するのに適する溶液被覆用の溶剤には、上記方法のいずれかによって被覆するのに適する高分子を溶解して、粘度の低い溶液を形成することになる適宜の溶剤または溶剤混合物が含まれる。有用な溶剤の例には、炭化水素、塩素化溶剤、およびケトン化合物の溶剤が含まれる。特に有用なのは、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、トルエン、およびクロロホルムなどの溶剤である。加えて、本発明の高分子は、転写印刷することができる。
【0035】
TFTの場合、本発明の高分子誘電層は、約5000オングストローム(Å)未満、より好ましくは約3000Å未満、最も好ましくは約2000Å未満の厚さを有する。本発明の高分子誘電層は、好ましくは少なくとも約500Å、より好ましくは少なくとも約1000Åの厚さを有する。厚さは、周知の方法、例えばエリプソメトリおよびプロフィルメトリ(profilometry)によって決定することができる。埋め込み型キャパシタおよびプリント基板用途の場合、厚さは、TFTの場合に上記したものを含むことができるが、10ミクロン、20ミクロン(すなわちマイクロメートルまたはμm)、またはもっと厚い厚さをさらに含むことができる。
【0036】
CN含有高分子および調製方法
本発明の高分子は、シアノ官能基およびスチレン単位体を含み、スチレン単位体はシアノ官能基を含んでもよい。本発明の好ましい高分子は、次式の反復単位を含む。
【化3】

式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、各R1は、独立してH、アリール基、Cl、Br、I、または架橋可能な基(すなわち1個または複数の架橋可能な基)を含む有機基であり、各R2は、独立してH、アリール基、またはR4であり、各R3は、独立してHまたはメチルであり、各R5は、芳香環上の置換基であって、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、n=0〜3であり、各R4は、少なくとも1個のCN基を含み(特定の実施形態の場合窒素および酸素原子を含む)、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基である。2つの反復単位が同じであってもよく(例えば、R1およびR3が水素であり、R2がフェニル(R5n基と同じである場合)、それによってホモポリマーが形成される。本発明の高分子は、他のモノマー、例えば、上記反復単位を形成する1個または複数のモノマーと共重合(例えば、イオン共重合、フリーラジカル共重合)できるスチレンを含むことができる。
【0037】
ある特定の実施形態では高分子が架橋される。架橋高分子は、通常、非架橋のその類似物に比べて高い破壊電界強度に耐える。また、通常、架橋高分子と非架橋高分子の誘電率には差異がある。
【0038】
ある特定の実施形態では、高分子は実質的に非フッ素化のものである。本明細書では、「実質的に非フッ素化」は、高分子層中の炭素の約5%未満(より好ましくは約1%未満、いっそう好ましくは0%)がフッ素置換基を有することを意味する。したがって、ある種の高分子には、少量のフッ素を有することができる(例えばR5中に)。
【0039】
ある特定の実施形態では、少なくとも1個のR1が少なくとも1個の架橋可能な基を含む。架橋可能な基の例には、例えば、(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレートおよびメタクリレート)、アミン、ヒドロキシル、チオール、オキシラン、アジリジン、クロロシラン(例えばトリアルコキシシラン)、ビニル、およびアルコキシシラン(例えばトリアルコキシシラン)がある。架橋可能な基がアクリレートであることが好ましい。架橋可能な基の種々の組合せが、適宜の1つの高分子内にあってもよい。通常、この架橋可能な基は有機基に組み込まれ、それは、大きさが最高で約20個の炭素原子とすることができる。加えて、架橋可能な基は、O、N、S、P、およびSiなどのヘテロ原子を含むことができる。
【0040】
ある特定の実施形態では、R1およびR2には、大きさが最高で18個の炭素原子を含み得るアリール基が含まれる。R1およびR2用のアリール基は、(C5〜C8)アリール基であるのが好ましく、その例としては、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、またはそのアルキル置換誘導体がある。R1およびR2用の好ましいアリール基としてはフェニルが挙げられる。こうした基は、1〜3個のR5基で置換することができる。
【0041】
ある特定の実施形態では、R5は、(C1〜C20)アルキル基、より好ましくは(C1〜C12)アルキル基、さらに好ましくは(C1〜C8)アルキル基、さらに好ましくは(C1〜C4)アルキル基とすることができ、その例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチルが含まれる。他の特定の実施形態では、R5は、ハロゲン、好ましくはCl、Br、またはIとすることができる。他の特定の実施形態では、R5はR4とすることができ、この場合、R4は、少なくとも1個のCN基を有し、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C12)有機基である。
【0042】
ある特定の実施形態では、各R4は、少なくとも1個のCN基を含み、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C20)有機基、より好ましくは(C2〜C12)有機基である。ある特定の実施形態では、R4は1個または複数の芳香族基を含む。分子量は、CN基あたり約30〜約150であるのが好ましい。R4用のCN含有基の例には、これらに限定されないが、N−メチル−(2−シアノエチル)カルバミド、N−ビス(2−シアノエチル)カルバミド、p−(2−シアノエチル)フェニル、p−(2,2−ジシアノプロピル)フェニル、p−(1,2−ジシアノプロピオニトリロ)フェニル、N−メチル−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、ビス−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、シアノメチル、2,2’−ジシアノプロピル、1,2,2’−トリシアノエチル、およびN,N’−ビス(2−シアノエチル)アミノエチルが含まれる。
【0043】
ある特定の実施形態では、R2は、独立してH、(C5〜C8)アリール基、またはR4であり、R4は、少なくとも1個のCN基を有し、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C20)有機基、より好ましくは(C2〜C12)有機基である。
【0044】
好ましい高分子には、スチレンをインター重合した単位体が含まれる。特定の実施形態では、かかるスチレン単位体(任意選択でシアノ官能性)を、高分子フィルムの表面に移動させて、それによって相分離した高分子を形成することことができる。次いで、必要に応じて高分子を架橋することができる。かかる相分離した高分子は、覆い被さる表面改質層なしで使用することができる(以下に議論される)。スチレン単位体の高分子フィルムの表面へのかかる移動は、アニールプロセスの際に行うことができる。アニール条件は、アニール条件を受ける高分子または他の材料を劣化させずに、またはこれに損傷を与えずに、この移動を行なうのが可能になるように選択される。かかるアニール条件は、過度の実験を行わずに当業者によって決定することができる。少なくとも120℃の温度で少なくとも10分の時間でアニーリングを行うのが好ましい。160℃以下の温度で60分を超えない時間でアニーリングを行うのが好ましい。
【0045】
本発明の高分子を設計する際、いくつかの手法を使用して、得られるデバイスにおいて比較的高い移動度を維持しながら同時に、比較的誘電率の高い高分子を得ることができる。通常、これらの高分子は、対応するモノマーからのフリーラジカル重合、または既存の高分子の化学的改質などの標準の化学技術によって調製することができる。こうした手法により、これらの望ましい特性を得るための実質的に異なる材料が提供される。
【0046】
一手法では、スキーム1に示すように、スチレン無水マレイン酸(SMA)共重合体を、架橋目的でメタクリレート官能基を加えることによって、および、非置換のポリ(スチレン)と比較して誘電率を増加させるためにCN官能基を取り付けることによって、改質することができる(高分子系列1および2)(好ましくは約1000〜約500,000の数平均分子量を有する)。
【化4】

【0047】
すなわち、本発明は、次式の反復単位が含まれる高分子を提供する。
【化5】

式中、Rは、CH3またはCH2CH2CNであり、各R5は、独立してアルキル基、ハロゲン、または、少なくとも1個のCN基を含んでなり、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり、n=0〜3である。
【0048】
他の手法は、誘電率の高い高分子をベースにしており、それは、良好な有機半導体フィルムを成長させる基板として適していない。例えば、多くのエステル含有およびアミド含有材料では、表面エネルギー、粗度、並びに/あるいは、暴露された官能基、または、例えば、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、およびポリビニルアセテートを含む化学基などの因子のため、ペンタセン成長用には不十分な基板が形成される。しかし、この高分子へのポリスチレンブロックの導入またはグラフト化により、それは有機半導体を堆積する前のアニーリング時に自由表面に移動することができるが、誘電率を低下させることなくデバイス性能の改良が可能になる。これらは、例えば、リビング重合法を使用した逐次重合によって、または、官能性マクロマを用いた共重合によって調製し、グラフト化共重合体を形成することができる。
【0049】
第3の手法は、有機半導体フィルムを成長させるのに本来的により適する高分子を調製するものである。例えば、エステルおよびアミド基をなくすことによって、並びに、誘電率を増加させるためにシアノ基、並びに半導体のフィルム成長および周波数非依存性の改良のための芳香族基を含むモノマーを調製することによって、適切な高分子を直接製造することができる。その後、共重合によって他の基を組み込み、架橋性などの追加の機能を付与することができる。
【0050】
これらの手法のいずれかによって様々な材料を作り出すことができる。特に有用な高分子の例は、ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドとポリスチレン(PS)マクロマとの共重合体である(高分子3)。
【化6】

この高分子は、n−ブチルリチウムへのスチレンのアニオン添加によって製造されるアクリル化ポリスチレン・マクロマを共重合することによって製造され、多分散性の低いポリスチレンが製造される。続いて、米国特許第4,554,424号明細書(ハスマン(Husman))に記載されている手順に従って、リビングポリマーがエチレンオキシドでクエンチされ、2−イソシアナトエチルメタクリレートと反応して、アクリル化ポリスチレン・マクロマが形成される。その後、アクリル化ポリスチレン・マクロマは、ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドと共重合される(シューラーらの手順に従って調製される、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリ(J.Org.Chem.)、23、1047(1958))。
【0051】
エステル結合またはフリーヒドロキシル基がなく、シアノ官能性スチレンを含む他の材料の例は、4−ビニルベンジルシアニド(高分子4)、4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン(高分子5)、4−(1,1’,2−トリシアノエチル)スチレン(高分子6)、および/または4−(ビス−シアノエチル)アミノメチル)スチレン(高分子7)の重合から誘導した高分子(例えば、共重合体またはホモポリマー)である。その他のそのような材料には、4−ビニルベンジルシアニドと4−ビニルベンジルアクリレートとの比が1:1の共重合から製造される共重合体(共重合体8)、または、かかるモノマーと他のモノマーの有無には関係のない他の共重合体が含まれる。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0052】
電子デバイスに使用するのに適切な高分子は、スチレン部分(好ましくはシアノ官能性スチレン部分)、および、高分子全体に比較的高い誘電率を付与する部分を含むのが好ましく、その部分は同じかまたは異なっていてもよい。したがって、この高分子は、ホモポリマーまたは共重合体とすることができる。共重合体は、2種類以上のモノマーから調製される高分子であり、三元重合体、四元重合体等を含む。このモノマーは結合して、ランダム共重合体、ブロック共重合体、セグメント化共重合体、並びに、他の様々な構造的配置のいずれかを形成できる。好ましい高分子は、スチレンのブロック(好ましくはシアノ官能性スチレンのブロック)、および、比較的誘電率の高いブロックを有するブロック共重合体である。
【0053】
スチレンの部分(すなわち、スチレンのインター重合した単位体、好ましくはシアノ官能性スチレン単位体)を含む共重合体は、これらの高分子が高分子フィルムの表面に移動し、それによって相分離した高分子を形成できるので、特に望ましい。かかる相分離した高分子は、覆い被さる表面改質層なしで使用することができる(以下に議論される)。高分子フィルムの表面へのスチレン単位体のかかる移動は、アニールプロセスの際に行うことができる。
【0054】
シアノ基結合性が異なる他の多くの類似構造体もまた調製することができる。これらの材料の合成は、実施例セクションで詳述される。
【0055】
必要に応じて、本発明の高分子を、例えば放射線(例えば、紫外(UV)、e−ビーム、ガンマ)または熱エネルギーを使用して架橋することができる。必要に応じて化学架橋剤も使用できる。具体例には、これらに限定されないが、1,6−ヘキサンジオール・ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレート、エチレン・ジ(メタ)アクリレート、グリセリル・ジ(メタ)アクリレート、グリセリル・トリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールトリアクリレート、および1,3,5−トリ(2−メタクリロキシエチル−s−トリアジンが含まれる。また、小量のジエポキシドの添加によって架橋を行うことができる。あるいは、ペンダント・エポキシド官能基を有する高分子は、ジオール、トリオールなどの添加によって化学的に架橋することができよう。
【0056】
適切な反応性希釈剤を用いると、本発明の高分子を100%の固体調合物として調合することが可能である。この手法で有用な反応性希釈剤には、架橋剤として上述したものが含まれ、これらに限定されないが、高分子を溶解でき、かつ架橋反応の際高分子と重合できる粘度の低い適宜のモノマーも含むことができる。反応性希釈剤の例には、アクリル酸などのエチレン性不飽和のモノマー、並びに、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート、およびシクロヘキシルアクリレートなどのアクリレートエステルが含まれる。
【0057】
必要に応じて、本発明の高分子を光重合開始剤と混合して、架橋を増強することができる。フリーラジカル重合を開始させる有用な光重合開始剤は、例えば、カルバート(Calvert)およびピッツ(Pitts)著「光化学(Photochemistry)」の第II章(ジョン・ワイリー(1966))に記載されている。これらの光重合開始剤の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチル・エーテル、および(アルファ)−メチルベンゾインなどのアクリロインおよびその誘導体、ベンジルおよびジアセチルなどのジケトン、ジフェニルモノスルフィド、ジフェニルジスルフィド、デシルフェニルスルフィド、およびテトラメチルチウラムモノスルフィドなどの有機スルフィド、S−ベンゾイル−N,N−ジメチルジチオカルバメートなどのS−アシルチオカルバメート、並びに、アセトフェノン、ベンゾフェノン、および誘導体などのフェノンが含まれる。
【0058】
その他の添加剤も本発明の高分子に使用できる。これらには、例えば、充填材、希釈剤(例えばモノアクリレート)、流動学的増粘剤、着色剤、界面活性剤、酸化防止剤等が含まれる。
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明のCN含有高分子は、硬化したとき高分子複合材料になる分散液を形成するため、充填材と混合するのが好ましい。こうした高分子複合材料は、ベースの高分子が誘電率の高い場合、および、充填材が誘電率の高い材料からなる場合、高い誘電率を有することができる。非常にきめ細かいセラミック微粒子を組み込んだ誘電体を使用して、有機薄膜トランジスタ(OTFT)が作成されてきた。これは、本出願人の譲受人の同時係属出願である2000年7月19日出願の米国特許出願第09/619,302号明細書で議論されている。誘電率の高いその他の有用な充填材には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコニウム酸鉛などの強誘電セラミックス充填材、または、米国特許第6,159,611号明細書(リー(Lee))に開示されているものなどの誘電率の高い他の多くの充填材が含まれる。充填材をポリマー系と相溶にするために、充填材をカップリング剤(例えばシランカップリング剤)で被覆することが有用な場合もある。その他の適切な充填材には、金属酸化物(例えば、SiO2、Al23、およびTiO2)、窒化物(例えば、Si34)など、並びに、米国特許第5,126,915号明細書(ピピン(Pepin)ら)、米国特許第5,739,193号明細書(ウォルピタ(Walpita)ら)、および米国特許第5,358,775号明細書(ホーン(Horn)、III)に開示されているものが含まれる。かかる調合された好ましい複合材は、少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも40の誘電率を有することができる。
【0060】
薄膜トランジスタ
図1に示すように、本発明は、薄膜トランジスタ(TFT)10を提供し、それは、基板12、基材上に配置されたゲート電極14、ゲート電極上に配置された本発明の誘電材料16、ゲート誘電体上に配置された任意選択の表面改質フィルム18、表面改質フィルムに隣接する半導体層20、並びに、半導体層に近接するソース電極22およびドレイン電極24を含む。図1は、1つの可能な薄膜トランジスタ構成を示す。本発明の材料を用いて、周知の他のいかなる薄膜トランジスタの構成も可能である。例えば、ソースおよびドレイン電極が誘電材料と隣接し、半導体層がソースおよびドレイン電極を覆うことができ、または、半導体層を、ソースおよびドレイン電極と誘電体との間に挿入することができる。
【0061】
埋め込み型キャパシタ
図2に示すように、本発明は、埋め込み型キャパシタ213を提供し、それは、2つの可撓性導電性基板214および216、2つの可撓性基板間に挿入される本発明の誘電材料218を含む。キャパシタ213は、ファイバーグラス/エポキシ複合体212などの材料の中に埋め込まれる。活性電子デバイス220は、埋め込み型キャパシタ213の上に位置し、導電性基板214および216のそれぞれに対する電気的接続部222aおよび222bを有する。埋め込み型キャパシタは、高速電子デバイスにおいて低インピーダンスの配電のために使用される。埋め込み型キャパシタのより詳しい説明は、米国特許第6,274,224号明細書(オブライアン(O’Bryan)ら)に見出すことができる。
【0062】
エレクトロルミネセンスランプ
図3に示すように、本発明は、エレクトロルミネセンスランプ310を提供し、それは、(ポリエチレンテレフタレートなどの)絶縁透明フィルム312の上表面に形成される(インジウムスズ酸化物などの)透明導電性フィルム314を含む。発光層315が、例えばスクリーン印刷によって、透明導電性フィルム314上にパターン印刷される。発光層315の組成物は、シアノエチルプルランまたはフッ化ビニリデン系ゴムなどの高誘電体樹脂を、ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジノンなどの有機溶剤に溶解させ、その後、その中に硫化亜鉛などの発光体を拡散させることによって、製造される。本発明の誘電材料316は発光層315上に形成される。背面電極322は、炭素樹脂系ペーストまたは銀樹脂系ペーストを使用することによって誘電層316の上に形成される。絶縁被覆層326は、例えば絶縁ペーストを使用することによって背面電極層322の上に形成される。電極314aおよび322aは、図示のように、導電層314および322それぞれの上に形成される。これらのデバイスのより詳しい説明は、例えば米国特許第5,844,362号明細書(タナベ(Tanabe)ら)に見出すことができる。
【0063】
表面改質フィルム
本発明のいくつかの実施形態では、有機薄膜トランジスタなどのデバイスの性能を改良するために、表面改質フィルム(すなわち表面処理)が使用され、本発明の高分子誘電体を用いて製造される。例えば、かかる表面処理により、最適にはトランジスタ移動度を3倍以上増加させることができ、これらのデバイスを、標準の金属酸化物誘電層を用いて製造されるデバイスに匹敵するものにする。この移動度の増加により、本発明の電子デバイスがより複雑な回路に使用されることが可能になる。
【0064】
かかる表面処理は、誘電層の少なくとも一部に配置される高分子表面改質フィルムという形をとることができる。代表的なデバイスは、有機半導体層をさらに含む可能性があり、この場合、高分子表面改質フィルムは、誘電層と有機半導体層の間に挿入される。
【0065】
表面改質フィルム用の適切な材料の例は、本出願人の譲受人の同時係属出願である2001年11月5日出願の米国特許出願第10/012,655号明細書に開示されており、そこには、インター重合したシロキサン単位体を含む高分子が開示されており、2001年11月5日出願の米国特許出願第10/012,654号明細書には、スチレンをインター重合した単位体を含む高分子が開示されている。他の表面改質材料の例には、H.クローク(Klauk)らのジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(J.Applied Physics)(92(9)、5259〜5263、(2002))に記載されているように、オクタデシルトリクロロシランが含まれる。
【0066】
ある特定の実施形態では、スチレン含有表面改質高分子は、スチレン、α−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、または4−メチルスチレンのホモポリマー;スチレンと(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートの共重合体;シリル含有末端基を有するポリスチレン;あるいは、スチレン、シリル含有コモノマ、α−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、および4−メチルスチレンから選択される少なくとも2種の異なるモノマーの共重合体などが使用される。
【0067】
本発明の高分子表面改質フィルムは、好ましくは約400オングストローム(Å)未満、より好ましくは約200Å未満、最も好ましくは約100Å未満の厚さを有する。本発明の高分子表面改質フィルムは、好ましくは少なくとも約5Å、より好ましくは少なくとも約10Åの厚さを有する。厚さは、周知の方法、例えばエリプソメトリによって決定できる。
【0068】
基板
基板は、例えば、製造、試験、保管、使用、またはそれらの任意の組合せの際、デバイスを支持するのに使用できる。あるいは、この誘電層は、他の基板を必要としないように、得られたデバイスの意図した用途のために十分な支持体を提供することができる。特定の実施形態では、種々の実施形態の試験またはスクリーニング用にある基板を選択し、一方、商用の実施用には他の基板を選択することができる。他の実施形態では、支持体を、着脱可能に固着し、または、一時的な目的で支持体を必要とするときなどに基板に機械的に貼り付けることができる。例えば、可撓性高分子基板を剛性ガラス支持体に固着し、その支持体を取り外し可能にしておける。いくつかの実施形態では、基板は、デバイスに必要な電気的機能は全く提供しない。このタイプの基板は「非関与基板」と称される。
【0069】
有用な基板材料としては、有機および/または無機材料を挙げることができる。例えば、基板としては、無機ガラス、セラミック箔、高分子材料、調合された高分子材料、被覆または被覆してない金属性の箔、アクリル、エポキシ、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(しばしばポリ(エーテルエーテルケトン)またはPEEKと呼ばれる)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレン・ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、および繊維強化プラスチックを挙げることができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態においては可撓性基板が使用される。これにより、ローラー処理が可能になるが、それは連続式にすることができ、平坦および/または剛性基板の場合より、規模の経済および製造の経済を実現することが可能になる。好適に選択した可撓性基板は、直径約50センチメートル(cm)未満のシリンダの周囲のまわりを、変形または破損することなく巻きつけることができる。より好適に選択した基板は、直径約25cm未満のシリンダの周囲のまわりを、基板を変形または破損することなく巻きつけることができる。いくつかの実施形態では、最も好適に選択した基板は、直径約10cm未満、さらには直径約5cmのシリンダの周囲のまわりを、基板を変形または破損することなく巻きつけることができる。本発明の可撓性基板を特定のシリンダのまわりに巻きつけるのに使われる力は、手動単独、すなわちテコ、機械、油圧等を用いないので、一般には小さい。好ましい可撓性基板は、それ自体に巻きつけることができる。
【0071】
半導体
半導体層用の有用な材料としては、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、および置換ペンタセンなどのアセンを含む有機半導体が挙げられる。本発明において有機半導体として有用な置換ペンタセン化合物には、電子供与置換基(例えば、アルキル、アルコキシ、またはチオアルコキシ)、ハロゲン置換基、およびそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの置換基が含まれる。有用な置換ペンタセンには、これらに限定されないが、アルキル基が1〜12個の炭素を有する2,9−ジアルキルペンタセン、2,9−ジフルオロペンタセン、および2,10−ジアルキルペンタセン、2,10−ジアルコキシペンタセン、並びに、1,4,8,11−テトラアルコキシペンタセンが含まれる。かかる置換ペンタセンは、本出願人の譲受人の同時係属出願であり、両方とも2001年9月26日出願の米国特許出願第09/966,954号明細書および米国特許出願第09/966,961号明細書に教示されている。
【0072】
他の有用な半導体の例としては、ペリレン、フラーレン、フタロシアニン、オリゴチオフェン、およびそれらの置換された誘導体が挙げられる。具体的な有機半導体化合物には、セキシチオフェン、α,ω−ジヘキシルセキシチオフェン、キンクチオフェン、クアテルチオフェン(quaterthiophene)、α,ω−ジヘキシルクアテルチオフェン、α,ω−ジヘキシルキンクチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ビス(ジチエノチオフェン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、アントラジチオフェン、ジヘキシルアントラジチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリ(フェニレンビニレン)、C60、銅(II)ヘキサデカフルオロフタロシアニン、およびN,N’−ビス(ペンタデカフルオロヘプチルメチル)ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドがある。
【0073】
例えば、蒸着、溶液堆積、スピン被覆、および印刷技術などの適宜の有用な手段によって有機半導体層を提供することができる。有機半導体層は、アパーチャーマスクを通じての堆積によりパターン化することができる。この目的に有用なアパーチャーマスクは、本出願人の譲受人の同時係属出願であり、両方とも2002年2月14日出願の米国特許出願第10/076,003号明細書および米国特許出願第10,076,174号明細書に記載されている。
【0074】
本発明のデバイスに無機半導体を含むことも本発明の範囲内である。かかる半導体の例には、アモルファスシリコン、および、硫化カドミウムまたはセレン化カドミウムなどの無機ナノ粒子ベースの半導体が含まれる。
【0075】
ゲート電極
ゲート電極は、有用な導電材料なら適宜のものでよい。例えば、ゲート電極は、ドープしたシリコン、あるいは、アルミニウム、クロム、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、タンタル、またはチタンなどの金属を含むことができる。導電性高分子もまた使用でき、例えば、ポリアニリン、または、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)がある。加えて、これらの材料の合金、組合せ、および多層化したものが有用である場合がある。
【0076】
ソースおよびドレイン電極
ソース電極およびドレイン電極は、本発明の誘電材料(例えばゲート誘電体)によってゲート電極から隔てられ、一方、有機半導体層は、ソース電極およびドレイン電極の上でもその下でもよい。ソースおよびドレイン電極は、有用な導電材料なら適宜のものでよい。有用な材料には、ゲート電極用として上記したものが含まれる。例えば、有用な材料には、アルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、ポリアニリン、PEDOT:PSS、その他の導電性ポリマー、それらの合金、それらの組合せ、およびそれらの多層化したものがある。
【0077】
薄膜電極(例えば、ゲート電極、ソース電極、およびドレーン電極)は、物理的蒸着法(例えば、加熱蒸発、スパッタリング)、めっき、またはインクジェット印刷などの適宜の有用な手段によって提供することができる。これらの電極のパターン化は、シャドウマスキング、エッチング、加法フォトリソグラフィ、減法フォトリソグラフィ、印刷、ミクロ接触印刷、転写印刷、およびパターン被覆などの周知の方法によって達成することができる。
【0078】
本発明の目的および利点は、以下の実施例でさらに例示されるが、しかし、これらの実施例で詳述される特定の材料およびその量、並びに、その他の条件および詳細は、本発明を不当に制限するように解釈すべきでない。
【実施例】
【0079】
これらの実施例において使用される全ての材料は、特に明記しない限りアルドリッチケミカル(Aldrich Chemical)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手できる。溶剤を含む材料の全ては、特に明記しない限り受領状態のまま使用した。
【0080】
ガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)は、変調DSC(モデルQ1000、TAインストルメンツ(TA Instruments)、デラウェア州ニューキャッスル(New Castle))を使用して決定した。60秒毎に±0.796℃の摂動振幅を伴いながら、毎分5℃の線形加熱速度を適用した。試料には、15℃〜265℃の範囲の加熱−クエンチ−加熱プロファイルをかけた。
【0081】
分子量および分子量分布
分子量は、モデルRID−10A屈折率検出器(Model RID−10A Refractive Index Detector)(メリーランド州コロンビア(Columbia)のシマズN.A.(Shimadzu N.A.)から入手できる)と共に、モデル2695分離モジュール(Model 2695 Separation Module)(マサチューセッツ州ミルフォード(Milford)のウォーターズ社(Waters,Inc.)から入手できる)を使用し、内標準としてポリスチレンを使用してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【0082】
フーリエ変換赤外分光分析
赤外分光分析は、ネクサス670フーリエ変換赤外線分光器(NEXUS 670 Fourier Transform Infrared Spectrometer)(ウィスコンシン州マディソン(Madison)のサーモ−ニコレ(Thermo−Nicolet)から入手できる)で行った。スペクトルは、塩化ナトリウム板の上にキャストした高分子フィルム上で伝送モードで測定した。
【0083】
実施例1.高分子1の合成
磁気攪拌器および窒素入口を備えた250ミリリットル(mL)の三つ口フラスコに、3−メチルアミノプロピオニトリル(アルドリッチ)8.32グラム(g)、および、無水ジメチルアクリルアミド(DMAc、アルドリッチ)50mL中のスチレン−無水マレイン酸共重合体20.00g(ペンシルバニア州エクストン(Exton)のサートマー(Sartomer)から入手できるSMA1000樹脂)の溶液を仕込んだ。この混合物を室温で30分間撹拌した後、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.18g、99%、アルドリッチ)を加え、次いでこの溶液を110℃で17時間(h)加熱した。溶液を室温に冷却させ、イソプロパノール1.5リットル(L)の中に機械的に撹拌しながらゆっくり注いだ。形成された黄色の析出物をろ過によって回収し、減圧下(約30ミリメートル(mm)Hg)に80℃で48時間乾燥させた。収率:26.0g。
【0084】
この材料20グラム(20g)を無水DMAc50mLに溶解させ、続けてグリシジルメタクリレート(GMA)28.00g(サートマー)、ヒドロキノン0.20g(J.T.ベーカー(Baker)、ニュージャージー州フィリップスバーグ(Phillipsburg))、およびN,N−ジメチルベンジルアミン0.5g(アルドリッチ)を添加した。混合物を窒素で急速に気化させ、次いで55℃で20時間加熱した。この溶液を室温に冷却させた後、それを、ヘキサンとイソプロパノールの混合物(2:1、体積:体積(v/v)、GR、E.M.サイエンス(Science))1.5Lの中に、機械的に攪拌しながらゆっくり注いだ。形成された析出物をアセトン50mL中に溶解させ、まず上記使用したものと同じ溶剤混合物の中に、次いで、イソプロパノールを使用して2回析出させた。ろ過によって固体を回収し、減圧下(約30mmHg)に50℃で24時間乾燥させた。収率:22.30g。FT−IR(フィルム):3433、2249、1723、1637、1458、1290、1160、および704cm-1。Mn(数平均分子量)=モルあたり8000グラム(g/mol)、Mw(重量平均分子量)=22,000g/mol。Tg=105℃。
【0085】
実施例2.高分子2の合成
25.00gのSMA1000、22.84gの3,3’−イミノジプロピオニトリル(アルドリッチ)、および28.00gのGMAを使用し、実施例1で使用したのと同じ手順を使用して高分子2を調製し、20.00gのきつね色粉末が生成された。FT−IR(フィルム):3457、2247、1700、1632、1494、1454、1292、および1166cm-1。Mn=6500g/mol、Mw=47,100g/mol。Tg=117℃。
【0086】
実施例3.ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドとポリスチレンのグラフト共重合体の合成(高分子3)
ビス(2−シアノエチル)アクリルアミド205g(シューラーらの手順(ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリ(J.Org.Chem.)、23、1047(1958))に従って調製した)と、メチルエチルケトン10.82g中のポリスチレン−メタクリレート・マクロマ2.06g(米国特許第4,554,324号明細書(ハスマン)の実施例セクションのセクション「モノマー「C−4(a)」において詳細に記載されている手順に従って製造した)の溶液を調製した。これに、0.02gのVAZO67(デュポンケミカルズ(Dupont Chemicals)、デラウェア州)を加えた。この溶液を、窒素で20分間噴霧し、70℃の振とう器浴中で一晩加熱した。過剰メタノール中での析出によって高分子を回収し、続けて減圧ろ過し、減圧下に室温で一晩乾燥させた。得られた高分子は、GPCのテトラヒドロフラン中ポリスチレン標準を基準にして、140,000g/molの重量平均分子量(Mw)および5.5の多分散性を有していた。
【0087】
実施例4.ポリ(4−ビニルベンジルシアニド)の合成(高分子4)
4−ビニルベンジルクロリド22.2g(0.131mol)、ジメチルスルホキシド60mL、およびシアン化カリウム12.8g(0.196mol)の混合物を、室温で17時間撹拌した。混合物を500mLの水に注ぎ、酢酸エチルで数回抽出した。化合した有機層をブラインで洗浄し、減圧下で濃縮した。粗赤油を、7/93の酢酸エチル/ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィのシリカゲル上で精製し、4−ビニルベンジルシアニドを得た。黄色の油(18.03g、96%)。
【0088】
その後、4−ビニルベンジルシアニド(1.0g)、シクロペンタノン(18.0g)、およびVAZO67(0.04g)を含む溶液を調製した。この溶液を、窒素ガスで10分間噴霧し、次いで65℃の振とう器浴で一晩加熱した。ポリ(4−ビニルベンジルシアニド)高分子を過剰メタノールの中への析出によって回収し、続けて減圧ろ過し、減圧オーブン中室温で一晩乾燥させた。それは、GPCのTHF中ポリスチレン標準を基準にして、23,500g/molの重量平均分子量および2.75の多分散性を有していた。
【0089】
実施例5.ポリ(4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン)の合成(高分子5)
モノマーの(4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン)を後述のような反応系列によって調製した。
【0090】
メチルマロンアミドの合成
0℃に冷却したアンモニアで飽和したメタノール200mLとナトリウム0.40g(17mmol)の混合物に、メタノール100mL中のジメチルメチルマロネート32.15g(0.22mol)の溶液を加えた。この混合物を室温まで暖め、3日間静置させた。析出した白い固体をろ過し、メタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させた(17.0g、67%)。
【0091】
モノメチルマロニトリルの合成
メチルマロンアミド9.50g(82mmol)と五酸化リン62g(0.22mol)の混合物を、減圧下(2mmHg)に200℃まで加熱した。反応混合物から生成物を蒸留し、コールドトラップに回収した。生成物は、融点の低い無色の固体であった(3.35g、51%)。
【0092】
4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレンの合成
トリエチルアミン(25mmol)の試料(2.53g)を、4−ビニルベンジルクロリド4.01g(25mmol)、モノメチルマロニトリル2.00g(25mmol)、およびDMSO15mLの混合物に室温で滴下した。この混合物を室温で17時間撹拌し、次いで水100mLの中へ注いだ。ピンク色の固体が析出し、これをろ過した。メタノールと水の混合物から固体を再結晶させ、ピンクがかった結晶3.141gが得られた(64%)。
【0093】
ポリ(4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン)の合成
今度は、4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン1.0g、シクロペンタノン9.0g、および0.0195gのVAZO67を含む溶液を調製した。この溶液を窒素ガスで10分間噴霧し、その後65℃の振とう器浴中で一晩加熱した。過剰メタノール中への析出によって高分子を回収し、続けて減圧ろ過し、減圧オーブン中室温で一晩乾燥させた。それは、GPCのTHF中ポリスチレン標準を基準にして、18,300g/molの重量平均分子量および2.58の多分散性を有していた。
【0094】
実施例6.ポリ(4−(1,1’,2−トリシアノエチル)スチレン)の合成(高分子6)
モノマーの4−(1,1’,2−トリシアノエチル)スチレンを、後述のような反応系列によって調製した。
【0095】
4−ビニルベンズアルデヒドの合成
p−テレフタルデヒド(terepthaldehyde)26.82g(0.20mol)、メチルトリフェニル臭化ホスホニウム47.63g(0.13mol)、および乾燥テトラヒドロフラン300mLの混合物に、1モル濃度(M)のテトラヒドロフラン(0.13mol)中カリウムt−ブトキシド溶液130mLを1時間かけて加えた。室温で17時間撹拌した後、減圧下で溶剤を除去した。残留分を50/50のエチル酢酸/ヘキサン100mLに混合し、ろ過した。ろ液を減圧下に濃縮し、ヘキサン中の5%酢酸エチルを使用してカラムクロマトグラフィのシリカゲル上で精製した。生成物は、黄色の油として得られた(11.51g、67%)。
【0096】
4−(2,2’−ジシアノエテニル)スチレンの合成
4−ビニルベンズアルデヒド5.00g(38mmol)、マロニトリル2.50g(38mmol)、およびエタノール20mLの混合物に、1滴のピペリジンを加えた。2時間撹拌した後、析出した固体をろ過し、エタノールで洗浄した。その後黄色の固体を減圧下で乾燥させた(5.62g、83%)。
【0097】
4−(1,2,2’−トリシアノエチル)スチレンの合成
4−(2,2’−ジシアノエテニル)スチレン2.00g(11mmol)とエタノール30mLの混合物に、水3mL中のシアン化カリウム1.45g(22mmol)溶液を加えた。混合物を、室温で17時間撹拌した。次いで、濃縮HCl1.8mL(22mmol)を加え、この混合物を減圧下で濃縮した。水10ミリリットル(10mL)を残留分に加え、混合物を酢酸エチルで抽出した。化合した有機層を減圧下で濃縮し、ヘキサン中の20%酢酸エチルを使用してカラムクロマトグラフィのシリカゲル上で生成物を精製した。この分離から回収された生成物を、ジクロロメタン1.5mLおよびヘキサン10mLと混合し、次いでろ過した。白い固体が得られた(1.009g、44%)。
【0098】
ポリ(4−(1,2,2’−トリシアノエチル)スチレン)の合成
4−(1,2,2’−トリシアノエチル)スチレン0.50g、シクロペンタノン4.53g、および0.01gのVAZO67を含む溶液を調製した。これを、窒素ガスで10分間噴霧し、次いで65℃の振とう器浴中で一晩加熱した。過剰ヘキサンへの析出によって高分子を回収し、続けて減圧ろ過し、減圧オーブン中室温で一晩乾燥させた。
【0099】
実施例7.ポリ(4−(ビス−シアノエチル)アミノメチル)スチレンの合成)(高分子7)
4−ビニルベンジルクロリド5.00g(32.8mmol)、ビス(シアノエチル)アミン8.97g(65.5mmol)、およびクロロホルム11mLの混合物を、65℃に8時間加熱した。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル20mLで希釈し、その後ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残留物を、酢酸エチルとヘキサンの1:1混合物を使用してカラムクロマトグラフィのシリカゲル上で精製した。生成物は、粘稠な黄色の油として分離された(4.10g、収率52%)。
【0100】
この材料の試料(2.68g)を、0.0149gのVAZO52の存在下に、メチルエチルケトン6.04gに溶解させた。この溶液を窒素ガスで20分間噴霧し、その後、ガラス瓶に密封した。次いでそれを、水浴中で撹拌しながら50℃で36時間加熱した。溶液をメタノール約100mLの中に析出させた。上澄みをデカントすることによって高分子析出物を回収し、減圧下に約50℃で一晩乾燥させた。
【0101】
実施例8.ポリ(4−ビニルベンジルシアニド−co−4−ビニルベンジルアクリレート)の合成(高分子8)
4−ビニルベンジルシアニド2.06g、4−ビニルベンジルクロリド0.51g、メチルエチルケトン10.04g、および0.0143gのVAZO67を含む溶液を調製した。この溶液を、窒素ガスで20分間噴霧し、その後65℃の振とう器浴で一晩加熱した。過剰メタノール中への析出によって高分子を回収し、続けて減圧ろ過し、減圧オーブン中室温で一晩乾燥させた。
【0102】
この高分子の試料(0.40g)を、ジメチルホルムアミド4.66g中に溶解させた。この溶液に、アクリル酸0.09g、ヒドロキノン0.01g、およびトリエチルアミン0.20gを加えた。この溶液を、室温で一晩撹拌した。この間に析出物が形成された。ろ過の後、水中への析出によって高分子を回収し、続けて減圧オーブン中室温で一晩乾燥させた。
【0103】
誘電率測定
本発明の高分子誘電体の誘電率は、図4に示したように、試験装置(キャパシタ)410を組み立てることによって決定した。<100>方位、裏面上に5000オングストローム(Å)のAl414、前面側上に5000ÅのTa415の多量にドープしたシリコンウェーハ412を、シリコンバレー・マイクロエレクトロニクス(Silicon Valley Microelectronics)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose))から購入し、これを四分して、薄い(10000Å未満)高分子誘電層416を、Ta層の上面にスピン被覆した。スピン被覆溶液は、表1に示すように、シクロペンタノンまたはジメチルホルムアミドのいずれかの中に、高分子負荷5〜15重量%で調製した。毎分500回転(rpm)で20秒間、続けて1000rpmで40秒間、溶液にスピンをかけた。被覆した高分子を、オーブン中140℃で35分間アニールした。各高分子誘電試料の上面に、金属ステンシルマスク(開口は形状が矩形で、寸法を8〜18ミリメートル(mm)変化させた)を通して、1000オングストローム(1000Å)のAu422を、5×10-6トール未満の圧力、2.5Å/秒の速度で加熱堆積した。直列のキャパシタンス測定値は、アジレント4396Bネットワーク/スペクトル/インピーダンス分析計(Agilent 4396B Network/Spectrum/Impedance Analyzer)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)のアジレントから入手できる)、および、43961A RFインピーダンステストアダプタ(Impedance Test Adapter)(アジレント)を使用し、インピーダンス・モードで得た。各組の測定値を得る前、43961Aインピーダンステストキット(Impedance Test Kit)を使用して分析計を較正し、分析計およびテスト治具の内部キャパシタンスを明らかにするため補償ルーチンを行った。また、補償ルーチンにより、テスト治具の有効電気的長さを定めることが可能になる。各ウェーハのAl層はテスト治具の接地面と接触させて配置し、テスト治具のプローブはAuフィルムと接触させて配置した。キャパシタンスは、特に断らない限り、各試料について100キロヘルツ(kHz)の周波数で測定した。測定は別々に3回行い、これを平均して、以下の表1に示す最終的な値を得た。高分子層の厚さは、デクタック(Dektak)3030のプロフィルメータ(ニューヨーク州プレーンビュー(Plainview)のベッコ(Veeco)から入手できる)を使用して測定し、その後、これらの値を使用して誘電率を算出した。この計算は、以下の式に基づく:εr=Cs*t/A*εo(全てSI単位であり、Csは測定された直列のキャパシタンスであり、tは誘電層の厚さであり、AはAu接触面積であり、εoは自由空間の誘電率であって、8.85x10-12F/m2とした)。これらの測定値の結果を以下の表1にまとめた。
【0104】
【表1】

【0105】
デバイス移動度の測定
上記と類似したやり方で調製した誘電体フィルムを基準として使用して、米国特許第6,433,359号明細書(ケリー(Kelley)に記載されているように、有機トランジスタデバイスを製作および試験した。記載のように製作したデバイス510が図5に示されている。<100>方位、裏面(ゲート電極)上に5000ÅのAl514、前面側上に5000ÅのTa515の多量にドープしたシリコンウェーハ512を、シリコンバレー・マイクロエレクトロニクス(カリフォルニア州サンノゼ)から購入し、これを四分して、上記誘電率測定に関して前のセクションに記載したものと同一のスピン被覆手順を使用して、高誘電体高分子516のフィルムをウェーハの前面側の上に堆積した。この高分子を、オーブン中140℃で35分間アニールした。600Åのペンタセン520を、(水晶結晶板微量天秤で測定して)2×10-6トールの圧力で基板の前面側の上に約0.1Å/秒の速度で直接堆積した。最後に、600Åの金ソース・パッド522およびドレーン・パッド524を、シャドウマスクを通してペンタセン520の上に2×10-6トールの圧力、2.5Å/秒の速度で堆積した。測定された各高分子のトランジスタ性能特性が、以下の表2にまとめられている。
【0106】
【表2】

【0107】
実施例9.有機誘電体の光パターン化
高分子1の光パターン化可能な溶液は、3.00gの高分子1(12.80部)、0.3gのペンタエリトリトールトリアクリレート(1.30部、アルドリッチ)、および0.17gのイルガキュア(IRGACURE)819光開始剤(0.70部、チバ(Ciba)、スイス国バーゼル(Basel))を、20gのシクロペンタノン(85.20部)に溶解することによって製造した。溶液は、暗所に保存し、使用前、0.45マイクロメートル(μmまたはミクロン)フィルタに通してろ過した。
【0108】
スピンコーターに載置したシリコンウェーハをおおうのに十分な量のこの溶液をピペットで移した。ウェーハに、指触乾燥状態になるまで6000rpmのスピンをかけた。被覆したウェーハは、ホットプレート上80℃で5分間ベークして、残留溶媒を除去した。長方形のバーが1ミリメートル(mm)×0.2mmの寸法を有し、バー間に40μmの間隔を加えたものに切削したシリコン・シャドウマスクを、基板の上面に固定した。基板を窒素環境で紫外線に暴露し、暴露した領域の高分子を架橋した。線量は、紫外スペクトルのCバンドにおいて、平方センチメートルあたり300ミリジュール(mJ/cm2)のエネルギーであった。
【0109】
シャドウマスクを取り外し、基板を、後−暴露ベーキングにかけ(ホットプレート上約150℃で5秒)、システムの感度を強化した。暴露されていない光重合体を、テトラヒドロフラン中で20秒未満の間、ウェーハを現像することによって取り除いた。最後に、架橋を完全なものにするため、残存している光パターン化高分子を165℃で約2分間、後−ベーキングした。結果は、光パターン化された誘電性架橋重合体の長方形のバーがシャドウマスクの空隙スペースに整合したシリコンウェーハであった。
【0110】
実施例10.光パターン化可能な誘電層の高周波安定性
実施例2に記載した手順に従って調製した高分子1の光パターン化可能な溶液を、厚さ35μmの銅箔(表面は酸素プラズマで処理した)の上に500rpmで40秒間スピン被覆した。この試料を80℃で4分間ソフト−ベーキングした後、紫外スペクトルのCバンドの550mJ/cm2のエネルギーでそれを紫外線に暴露し、続けて110℃で2分間、後−ベーキングした。この試料の高周波数範囲でのキャパシタンスの応答特性および発散損を、43961A RFインピーダンステスト・アダプタ(アジレント)と連結したアジレント4396Bネットワーク/スペクトル/インピーダンス分析計(カリフォルニア州パロアルトのアジレントから入手できる)に、インピーダンス・モードで記録した。結果は表3にまとめられている。
【0111】
【表3】

【0112】
実施例11.光パターン化可能な誘電層を有するパターン化したトランジスタの製作
パターン化したトランジスタアレイ610(図4)を、次のようにガラス基板上に作成した。15Åのチタンおよび600Åの金のパターン化したゲート層614を、シリコン(Si)シャドウマスクを通してクリーンなガラススライド612の上に堆積した。次いで、上記実施例9に記載したように調製した高分子1の溶液を、ガラス基板の上にスピン被覆し、光重合体層を、適切なシリコン・シャドウマスクを通して紫外線に暴露し、パターン化した誘電層616を形成した。非架橋誘電性高分子層を取り除き、実施例9に記載したように後−ベーキングした後、図示のように、600Åのペンタセン620を、続けて600Åの金ソース622およびドレーン624電極をパターン化蒸着して、トランジスタ610を完成させた。全ての層は適切に整列配置されており、そのデバイスを、上記したように試験した。
【0113】
蒸着したアルミナを有するトランジスタアレイを、上記と同じ方法で作成した。ただし、アルミナは、シリコン・シャドウマスクを通して電子ビーム蒸着で堆積し、本出願人の譲受人の同時係属出願である2001年11月5日出願の米国特許出願第10/012,654号明細書に記載されているように、ポリ(α−メチルスチレン)で表面処理したことを除く。表面処理の後、ペンタセンを、シリコン・シャドウマスクを通して最終的な厚さ600Åまで蒸着し、600Åの金を、シリコン・シャドウマスクを通して加熱蒸発することによってトランジスタを完成させた。
【0114】
各グループから作成した薄膜トランジスタの1つを、前に記載したように試験した。その結果は表4に示されている。
【0115】
【表4】

【0116】
実施例12.移動度に関する誘電体の表面処理の効果
誘電層716とペンタセン半導体層720の間に位置するポリ(α−メチルスチレン)層718を有する一連の試験構造体710を作成した(図5)。デバイスは次のように製作した。<100>方位、裏面上に5000ÅのAl(ゲート電極)714、前面側の上に5000ÅのTa715の多量にドープしたシリコンウェーハ712を、シリコンバレー・マイクロエレクトロニクス(カリフォルニア州サンノゼ)から購入し、これを四分して、高分子1の光パターン化可能なフィルム716を、実施例9に記載した調合物を使用して基板の上にスピン被覆した。前述したように窒素雰囲気下でのUV光へのブランケット暴露によって高分子誘電層716を架橋させた。対照として、Al23被覆シリコンウェーハをシリコンバレー・マイクロエレクトロニクスから入手した。
【0117】
トルエン、キシレン、またはシクロヘキサン中の0.1%ポリ(α−メチルスチレン)で表面処理したもの718を、誘電体716の上に配置した。表面処理層718は、500rpmで20秒間、続けて2,000rpmで40秒間スピンをかけたスピンコータを使用して塗布した。次いで、被覆した試料を、120℃で約30分間オーブン中に置いた。次いで、600Åのペンタセン720を、処理した表面上に0.2Å/秒の速度で堆積した。最後に、600Åの金ソースおよびドレーン・パッド(722および724)を、シャドウマスクを通してペンタセンの上に堆積した。このデバイスを試験した。結果は以下の表5に示されている。
【0118】
【表5】

【0119】
実施例13.高分子/セラミック誘電材料の調製
以下の成分、すなわち2.00gの高分子1または2、20.0gのシクロペンタノン、および0.20gのペンタエリトリトールトリアクリレート(アルドリッチ)を混合することによって溶液を調製した。この混合物を0.45μmのろ過カートリッジに通してろ過した。このろ過した溶液2.0gに、メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトンに分散したチタン酸バリウムの分散液1.0g(2:3v/v、60重量パーセント(wt−%)の固形分)を加えた。最終的な混合物は、高分子に対して体積負荷37%のBaTiO3を有する。この混合物は、使用前超音波で撹拌した。
【0120】
異なる体積負荷のBaTiO3を有する追加の分散液を調製する際、同じ手順を続けた。
【0121】
他の高分子系について上記したようなキャパシタンス試験を行った。結果は以下の表6に示されている。
【0122】
【表6】

【0123】
本発明の様々な修正形態および変更形態は、前記記載からみて本発明の範囲および諸原理から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。したがって、本発明が上述した例示的な実施形態に不当に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】有機薄膜トランジスタの概略図である。
【図2】埋め込み型キャパシタの概略図である。
【図3】エレクトロルミネセンスランプの概略図である。
【図4】パターン化してない電極、パターン化してない誘電層、およびパターン化した電極を有する試験構造体(キャパシタ)の概略図である。
【図5】パターン化してないゲート電極、パターン化してない誘電層、パターン化してない半導体層、およびパターン化したソース/ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタ用の試験構造体の概略図である。
【図6】パターン化したゲート電極、パターン化した誘電層、パターン化した半導体層、およびパターン化したソース/ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタアレイの概略図である。
【図7】パターン化してないゲート電極、パターン化してない誘電層、パターン化してない不活性化層、パターン化してない半導体層、およびパターン化したソース/ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタ用の試験構造体の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の反復単位
【化1】

(式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、
各R1が、独立してH、Cl、Br、I、アリール基、または架橋可能な基を含む有機基であり、
各R2が、独立してH、アリール基、またはR4であり、
各R3が、独立してHまたはメチルであり、
各R5が、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、
各R4が、独立して、少なくとも1個のCN基を含んでなり、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり、
n=0〜3である)
を有する実質的に非フッ素化有機高分子を含む有機高分子誘電層を含んでなる電子デバイス。
【請求項2】
各R1が、独立してH、(C5〜C8)アリール基、Cl、Br、I、あるいは、(メタ)アクリレート、アミン、ヒドロキシル、チオール、オキシラン、アジリジン、クロロシラン、ビニル、またはアルコキシシラン基を含む有機基である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
各R2が、独立してH、(C5〜C8)アリール基、またはR4であり、各R4が、少なくとも1つのCN基を含んでなり、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C20)有機基である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つのR1が、架橋可能な基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記有機高分子誘電層が、光パターン化可能である、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項6】
4が、N−メチル−(2−シアノエチル)カルバミド、N−ビス(2−シアノエチル)カルバミド、p−(2−シアノエチル)フェニル、p−(2,2−ジシアノプロピル)フェニル、p−(1,2−ジシアノプロピオニトリロ)フェニル、N−メチル−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、ビス−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、シアノメチル、2,2’−ジシアノプロピル、1,2,2’−トリシアノエチル、またはN,N’−ビス(2−シアノエチル)アミノエチルである、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項7】
薄膜トランジスタまたはトランジスタアレイである、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項8】
約0.5cm2/V・sを超える電荷キャリア移動度を有する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
キャパシタ、トランジスタ、またはエレクトロルミネセンスランプである、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項10】
集積回路である、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項11】
有機半導体をさらに含んでなる、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項12】
前記高分子誘電層が、充填材をさらに含んでなる、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項13】
前記高分子誘電層が、高分子の混合物を含んでなる、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項14】
前記誘電層が、少なくとも約3.5の誘電率を有する、請求項1または5に記載のデバイス。
【請求項15】
前記有機高分子が、実質的に非フッ素化有機高分子である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項16】
次式の反復単位
【化2】

(式中、
Rが、CH3またはCH2CH2CNであり、
各R5が、独立してアルキル基、ハロゲン、または、少なくとも1個のCN基を含んでなり、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり、
n=0〜3である)
を含んでなる高分子。
【請求項17】
ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドとポリスチレン・マクロマの共重合体。
【請求項18】
次式の反復単位
【化3】

を含んでなる高分子。
【請求項19】
次式の反復単位
【化4】

を含んでなる高分子。
【請求項20】
次式の反復単位
【化5】

を含んでなる高分子。
【請求項21】
ホモポリマーである、請求項18、19、または20に記載の高分子。
【請求項22】
次式の反復単位
【化6】

を含んでなる共重合体。
【請求項23】
請求項18、19、または20に記載の高分子を含む有機高分子誘電層を含んでなる、電子デバイス。
【請求項24】
電子デバイスの製造方法であって、
次式の反復単位
【化7】

(式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、
各R1が、独立してH、Cl、Br、I、アリール基、または架橋可能な基を含む有機基であり、
各R2が、独立してH、アリール基、またはR4であり、
各R3が、独立してHまたはメチルであり、
各R5が、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、
各R4が、独立して、少なくとも1個のCN基を含んでなり、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり、
n=0〜3である)
を有する実質的に非フッ素化有機高分子を含んでなる有機高分子誘電層を形成する工程を含んでなる、方法。
【請求項25】
電子デバイスの製造方法であって、
次式の反復単位
【化8】

(式中、高分子内の少なくとも1個の反復単位がR4を含むことを条件として、
各R1が、独立して架橋可能な基を含む有機基であり、
各R2が、独立してH、アリール基、またはR4であり、
各R3が、独立してHまたはメチルであり、
各R5が、独立してアルキル基、ハロゲン、またはR4であり、
各R4が、独立して、少なくとも1個のCN基を含んでなり、CN基あたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり、
n=0〜3である)
を有する有機高分子を含んでなる有機高分子誘電層を形成する工程と、
前記有機高分子を架橋する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項26】
架橋する工程の前に有機高分子をアニールする工程をさらに含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電子デバイスの製造方法であって、
少なくとも約3.5の誘電率を有する有機高分子の層を形成する工程であって、前記有機高分子がシアノ官能基およびスチレン単位体を含んでなる工程と、
前記有機高分子をアニールして、スチレン単位体を層の表面に移動させる工程と、
場合により前記有機高分子を架橋して、有機高分子誘電層を形成する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法によって作成される電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−538381(P2007−538381A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532428(P2006−532428)
【出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/011986
【国際公開番号】WO2004/102652
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】