説明

校正原器、形状計測装置、横座標校正方法及び光学素子の製造方法

【課題】汎用性の高い校正原器を提供し、一つの校正原器で種々の形状計測装置の横座標の校正を可能にする。
【解決手段】形状計測装置の横座標を校正する際にワークの代わりに配置される校正原器20に、入射角度に係わらず光を元来た方向に反射する再帰性光学素子21を設け、この再帰性光学素子21によって測定光Lmを反射させる。校正原器20は、再帰性光学素子21によって反射するため、種々の曲率半径の測定光を元来た方向に反射することができ、これによって、種々の形状計測装置の横座標の校正に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計などの光を用いた形状計測装置の横座標校正に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精度光学装置は微細化及び高度化が進んでおり、例えば、半導体露光装置では、露光光源波長がKrFエキシマレーザ(λ=248nm)、ArFエキシマレーザ(λ=193nm)、F2レーザ(λ=157nm)と短波化してきている。更には、露光光として、EVU光(Extreme Ultra Vioret:λ=13.6nm)までもが使用されるに至っている。そのため、この半導体露光装置において使用される投影光学レンズや、ミラーなどの光学素子は、1nm〜0.1nmオーダーの形状精度が求められる。
【0003】
上述した高精度光学素子を製造するためには、求められる形状精度以上の精度でワークの表面形状や波面収差を計測し、修正加工を施す必要がある。一般に、このような高精度な表面形状や波面収差の計測が可能な装置として、干渉計などの光を用いて表面形状、波面収差を計測する形状計測装置が広く知られている。
【0004】
ところで、上述した光を用いた形状計測装置によって形状計測をした場合、得られた形状データに横座標の歪みが生じていることがある。形状データの横座標にズレが生じると、ワークの修正加工の際に、実際の横座標に対して横座標のズレ分だけ修正加工箇所がズレてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、従来、このような形状計測装置の横座標の校正方法として、特許文献1(特開2002―206915号公報)記載の方法が知られている。この方法は、所定パターンが形成されると共に、被検面と入れ替えた場合に測定光と略等しい反射波面を生成する反射光学素子を用いて横座標を校正する方法である。具体的には、上記反射光学素子を被検面の位置に配置し、反射光学素子に反射された測定光と参照光との干渉像を検出器の検出面上に形成する。この検出面上には、上記反射光学素子の所定パターンが結像するため、検出面に結像した所定パターンの横座標と、予め別の座標測定機などによって高精度に測定した上記所定パターンの横座標と、を比較することによって横座標の校正を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−206915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の横座標校正方法は、測定光の球波面と略同じ反射波面を有する反射光学素子を用いて、横座標校正用の所定パターンを形成している。そのため、曲率半径の異なる被検面や、フィゾーレンズごとに、対応した反射光学素子を用意する必要がある。
【0008】
また、走査型干渉計のように、測定光の光軸方向にワークもしくはフィゾーレンズを走査する形状計測装置では、走査位置によって測定光の曲率が異なる。そのため、このような走査型の形状計測装置では、各走査位置ごとに校正原器が必要となり、被検面のスキャン領域全てにおいて横座標を校正するには、多数の反射光学素子が必要となるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、汎用性の高い校正原器を提供し、一つの校正原器で種々の形状計測装置の横座標の校正を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ワークの被検面で反射された測定光を解析して形状計測を行う形状計測装置の横座標を校正する際に、ワークの代わりに配置されて測定光を反射すると共に所定の校正パターンが形成された校正原器であって、測定光を、入射角度に係わらず元来た方向に反射する再帰性光学素子を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、形状計測装置の横座標を校正する際に、ワークの代わりに配置される校正原器を、入射角度に係わらず元来た方向に光を反射する再帰性光学素子によって測定光を反射するように構成する。上記校正原器は、再帰性光学素子によって測定光を反射するため、測定光の曲率や被検面の曲率の変化によらず、測定光を元来た方向へと反射することができ、種々の形状計測装置の横座標の校正に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測装置の模式図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る校正原器を示す模式図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る校正原器を示す模式図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る校正原器を示す模式図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る演算装置を示すブロック図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測装置の横座標校正方法を示すフローチャート図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る校正原器の走査状態を示す模式図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る校正原器を示す模式図。
【図9】(a)本発明の第3の実施の形態に係る形状計測装置を示す模式図、(b)(a)の形状計測装置の校正原器を示す模式図、(c)(a)の形状計測装置の撮像素子上でのスポットの状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る形状計測装置について図1乃至図9に基づいて説明をする。なお、以下の説明中において、測定光の光軸方向とは、参照球面から被検面に向う方向(図1中のZ軸方向)を言う。また、横座標とは、測定光の光軸方向Zに対して垂直平面上の座標(図1のXY軸座標)を言うこととする。
【0014】
[第1の実施の形態]
[形状測定装置の概略構成]
図1は、半導体露光装置の投影レンズやミラーなど高精度の光学素子の形状を計測する形状計測装置1であり、本実施の形態では、フィゾー型の干渉計によって構成されている。この形状計測装置1は、光源2とワークWとの間に参照球面3aを有するフィゾーレンズ3を配設しており、この参照球面3aによって反射された参照光Lrと、参照球面3aを透過してワークWの被検面Swに反射された測定光Lmとで干渉光Liを形成する。そして、この干渉光Liによって結像された干渉縞を解析することによって、被検面Swの形状を計測するように構成されている。
【0015】
具体的には、上記形状計測装置1は、直線偏光のレーザ光を出射する光源2と、フィゾーレンズ(基準レンズ)3と、CCDカメラからなる撮像素子5と、を備えている。また、この撮像素子5によって検出された光を表示するモニタ6と、撮像素子上に結像した画像を解析するコンピュータからなる演算装置7と、を備えている。
【0016】
更に、光源2とフィゾーレンズ3との間には、レンズ9、開口10及びコリメータレンズ11が配置されており、フィゾーレンズ3に入射する光が、平行光となるように調整されている。更に、開口10とコリメータレンズ11との間には、偏光ビームスプリッタ12及び1/4波長板13が配設されており、干渉光Liを撮像素子5へと反射するように構成されている。
【0017】
そのため、光源2から射出された光は、レンズ9、開口10、偏光ビームスプリッタ12、1/4波長板13及びコリメータレンズ11を経て平面波へと変換されてフィゾーレンズ3に入射する。そして、このフィゾーレンズ3の参照球面3aで上述した参照光Lrと測定光Lmとに分離される。
【0018】
上記参照球面3aは、非常に精度良く研磨された球面であり、この参照球面3aに反射された参照光Lrは球面波となる。一方、測定光Lmも同様に参照球面3aを透過して球面波となるが、例えば自由曲面などの非球面形状のワークWの被検面Swで反射されることで、非球面波となって参照球面3aへと戻る。そして、この参照球面3aにおいて、再度、参照光Lrと測定光Lmとが重ね合わされて干渉光Liが形成される。この干渉光Liは、球面波の参照光Lrと非球面波の測定光Lmとによって形成されており、1/4波長板13を2回通過することにより偏光方位が光源2から偏光ビームスプリッタ12へ入射した時の偏光方位に対し90度回転することで偏光ビームスプリッタ12によって反射され、レンズ15を介して撮像素子5に入射する。
【0019】
上記参照球面3aと被検面Swとの間には空気間隔しかなく、参照光Lrと測定光Lmとの参照球面3a以前の光路は同一である。そのため、この干渉光Liを検出する上記撮像素子5では、参照球面3aと被検面Swとの差が光強度として検出され、モニタ6には干渉縞が表示される。
【0020】
上記演算装置7は、参照光Lrと測定光Lmとの光路差を形状情報として使用し、上述した干渉縞(干渉光の位相、光強度、反射光位置)を解析することによって、被検面Swの形状を計測するようになっている。このように、形状計測装置1は、参照光Lrと測定光Lmとの光路差を形状情報として使用しているため、着目する点の明るさが分かれば、位相を計算し、更に高さ情報に換算することができる。
【0021】
ところで、演算装置7が干渉縞を解析して位相を精密に求めるには、干渉縞の幅が撮像素子5の分解能以上(以下、この状態を干渉縞が疎であるという)である必要がある。しかしながら、干渉縞が疎の状態であるためには、参照光Lrと測定光Lmとの進行方向が略平行である必要があるが、参照光Lrは球面波であり、ワークで反射された測定光Lmは非球面波であるため、干渉光波面全域に亘ってこの条件が満たされることはない。
【0022】
そこで、形状計測装置1は、上記構成に加え、ワークWを保持すると共に測定光Lmの光軸Aに沿ってZ方向に駆動可能な駆動ステージ16を有しており、測定光Lmの光軸方向ZにワークWを走査することが可能な走査型干渉計となっている。これにより、演算装置7からの駆動指令によって駆動ステージ16を光軸A方向に移動させ、光軸方向の各位置において形状計測を行うことによって、干渉縞の疎の部分の径方向位置が遷移し、被検面の全面を正確に測定することができるようになっている。
【0023】
なお、上記駆動ステージ16は、アライメント調整機構を有しており、ワークWは常に測定光の光軸Aに対して垂直になるように調整されている。
【0024】
[横座標校正装置の構成]
ところで、上記形状計測装置1によって計測されたワークWは、演算装置7によって、計測値と設計値との差分が演算され、加工装置40(図5参照)により修正加工が施される。そして、設計値通りワークWが修正加工されたことを確認することによってワークWの加工が終了する。この修正加工では、横座標を基準として高さ位置が修正されて行くため、形状計測装置1の横座標位置にズレがあると、修正加工するべき場所と、加工装置が実際に加工する場所にズレが生じる虞がある。
【0025】
そのため、形状計測装置1は、横座標校正装置17を有しており、以下、この形状計測装置1の横座標校正装置17について図1を参照しつつ、図2〜図4に基づいて詳しく説明をする。図1に示すように、横座標校正装置17は、上述した撮像素子5、演算装置7の他に、形状計測されるワークWの代わりに配置されて光源2から出射された測定光Lmを反射する校正原器20を備えて構成されている。
【0026】
上記校正原器20は、図2及び図3に示すように、参照球面3aに対向する面20aに再帰性光学素子21,22が配置されて構成されている。なお、再帰性光学素子21,22とは、入射角度に係わらず元来た方向に光を反射する光学素子であり、例えば、一部(例えば原器側半分)に反射コートが施されたガラスビーズ21(図2参照)である。また、光を反射する性質を有する3枚の平面を互いに直角に組み合わせたコーナーキューブプリズム22(図3参照)も再帰性光学素子である。
【0027】
更に、校正原器20は、上記再帰性光学素子21,22によって、所定の校正パターンPがその表面に形成されている。より詳しくは、図2に示すように、一方向にガラスビーズ21が整列された複数の第1列r1と、第1列r1と交差(本実施形態では直行)する方向にガラスビーズが整列された複数の第2列r2と、を交差するように配置して、格子状の校正パターンを形成している。また、図3では、ガラスビーズ21の代わりにコーナーキューブプリズム22を用いて格子状の校正パターンを形成している。
【0028】
一方、図4では、各1つの再帰性光学素子21,22が校正パターンのパターン模様を形成するのではなく、複数の再帰性光学素子21,22の集合をパターンの1単位とし、この再帰性光学素子の集合を組み合わせて校正パターンを形成している。具体的には、複数のガラスビーズ21によって1つの円形の模様P1を形成し、この円形の模様を格子状に並べて校正パターンPを形成している。
【0029】
上記演算装置7は、図5に示すように、撮像素子5から取得した干渉縞の画像データを解析して被検面Swの形状を計測する計測部30、駆動ステージ16の駆動を制御する駆動指令部31を有している。また、一回の計測中における光軸方向への移動数(撮像回数)及び駆動ステージ16の移動距離を設定するステップ設定部32、及び記憶部33を有している。更に、計測部30が演算した被検面Swの形状データと記憶部33に記憶されている被検面Swの設計データとの差分を演算する誤差演算部34を有している。
【0030】
また、上記演算装置7は、形状計測装置1の横座標校正を行う部分として、校正部35を有している。この校正部35は、撮像素子5が測定光Lmを検出することによって取得された画像上の校正パターンPの横座標位置を演算する横座標演算部35aを有している。また、この横座標演算部35aによって算出された校正パターンPの横座標位置と、予め別の3次元計測装置によって計測され、記憶部33に格納されていた校正パターンPの基準横座標位置と、を比較する比較演算部35bを備えている。比較演算部35bは、基準横座標に対する計測された校正パターンの横座標のズレを演算し、誤差演算部34へ校正データとして出力する。
【0031】
[横座標校正方法]
ついで、上述した横座標校正装置17を用いた形状計測装置1の横座標校正方法について図1乃至図5を参照しつつ、図6及び図7に基づいて説明をする。非球面形状の光学素子を製造するにあたり、まず、作業者は、形状計測されるワークW(光学素子)の代わりに駆動ステージ16に校正原器20を配置し(図6のS1、第1工程)、形状計測装置1の横座標を校正するように演算装置7に指令する(S2)。
【0032】
横座標の校正が指令されると、演算装置7の校正部35からステップ設定部32及び駆動指令部31に電気指令が出され、走査する際の原点位置である計測基準位置(図7(a)の位置)に駆動ステージ16が移動させられる(S3)。そして、駆動ステージ16が計測基準位置に位置すると光源2からレーザ光が出射される(S4)。
【0033】
上記光源2から出射されたレーザ光は、フィゾーレンズ3の参照球面に3aよって参照光Lrと測定光Lmとに分離され、フィゾーレンズ3を透過して測定光Lmとなったレーザ光は校正原器20の表面20aに照射される。校正原器20の表面20aに測定光Lmが照射されると、校正原器表面に配置された再帰性光学素子21,22内で反射され、入射角度に係わらず元来た方向へと戻り、参照球面3aに再入射する。そして、この校正原器20の再帰性光学素子21,22によって反射された測定光Lmは、偏光ビームスプリッタ12によって反射されて撮像素子5に入射して、この撮像素子上で校正パターンPを結像する。
【0034】
測定光Lmを撮像素子5によって検出すると、この検出した測定光Lmが撮像素子上にて結像した校正パターンPの画像を演算装置7は取り込む(S5、第2工程)。そして、横座標演算部35aによって校正パターンPを形成する各再帰性光学素子21,22の重心位置を演算し、校正パターンPの横座標を取得する(S6、第3工程)。なお、校正パターンPが複数の再帰性光学素子21,22の集合をパターンの1単位としている場合には、横座標演算部35aは各再帰性光学素子21,22の集合ごとに横座標位置を演算する。
【0035】
次に、比較演算部35bによって、上記横座標演算部35aで求められた校正原器20からの反射光の横座標関係は、あらかじめ別の座標計測器等で高精度に計測されている校正パターンの横座標関係と比較され、両者の対応関係が算出される。得られた座標関係を用いフィッティングなどのデータ処理によって、倍率、ディストーションが求められ、計測基準位置での横座標が校正される(S7、第4工程)。
【0036】
一つの位置での横座標の校正が終了すると、校正部35はステップ設定部32から取得した情報に基づいて、現在の駆動ステージ16の位置が形状計測終了時の位置となる最終ステップ位置かを判定する(S8)。そして、最終ステップ位置でない場合には(S8のNo)、次のステップ位置(例えば図7の(b),(c)位置)へと移動して、計測基準位置と同様の方法(第2乃至第4工程)で横座標を校正する(S5〜S9、第5工程)。
【0037】
上述した工程を駆動ステージ16が最終ステップ位置となるまで繰り返すことによって、ワークWの形状計測が行われる光軸方向の各位置にて横座標の校正が行われる。これにより、形状計測が行われる全ての位置にて横座標の校正が行われ、形状計測装置1の横座標の校正を終了する(S10)。
【0038】
上述したように、測定光Lmを再帰性光学素子21,22によって反射するように校正原器20を構成したことによって、測定光束の曲率半径や、ワークの被検面の曲率半径によらず単一の校正原器20を用いて形状計測装置の横座標を校正することができる。これにより、一つの校正原器20によって種々の形状計測装置の横座標を校正することができようになり、測定光Lmや被検面Swの曲率半径ごとに校正原器20を作成する必要がないため、横座標の校正に掛かるコストを削減することができる。
【0039】
特に、測定光Lmの光軸方向ZにワークWを走査する走査型干渉計のような形状計測装置では、被検面Swの全面を形状計測するために多数のステップを光軸方向Zに走査するため、コスト削減効果が大きい。また、いちいち校正原器20を交換せずに光軸方向Zの各位置において、横座標の校正を行うことができるため、作業効率も向上させることができる。
【0040】
更に、校正パターンPを再帰性光学素子の配列によって形成することにより、この校正パターンPを形成するのに他の部材を必要とせず、校正原器20の構成を簡単にすることができる。
【0041】
また、複数の再帰性光学素子21,22の集合を組み合わせて校正パターンPを形成し、再帰性光学素子21,22の集合ごとに横座標位置を演算することによって横座標の演算精度を向上することができる。
【0042】
また、再帰性光学素子にガラスビーズ21を用いることで、直径10um以下の微小な再帰性光学素子を得ることができ、精度の良い校正原器20を製作することができる。この校正原器20を用いることで高精度な横座標校正を行うことが可能となる。
【0043】
更に、再帰性光学素子にコーナーキューブプリズム22を用いることで、精度の良い再帰性光学素子を容易に得ることができるため安価に校正原器20を製作することが可能となる。
【0044】
[第2の実施の形態]
ついで、本発明に係る第2の実施の形態について説明をする。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態と校正パターンPを形成するのにアパーチャー板25からなるマスクを使用する点で異なっており、第1の実施の形態と同一の構成についてはその説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、この校正原器20は、参照球面3aに対向する面(以下反射面という)20aに再帰性光学素子21(例えばガラスビーズ)が一様に配列されて形成された本体部24と、アパーチャー板25と、から構成されている。
【0046】
上記アパーチャー板25は、光源2と反射面20aとの間で反射面20aに近接して配置されていると共に、任意のパターンの複数の開口25aが形成されている。そして、このアパーチャー板25の開口25aによって、校正パターンPが形成されている。即ち、このアパーチャー板25により入射光束及び反射光束を制限することによって、撮像素子上に任意の校正パターンPを結像することができる。このように、アパーチャー板25を使用して校正パターンPを形成することによって、再帰性光学素子21,22の大きさ、配置によらず任意の形状、サイズで校正パターンPを形成することができる。
【0047】
[第3の実施の形態]
ついで、本発明の第3の実施の形態について説明をする。この第3の実施の形態は、上述した校正原器20を、シャック・ハルトマン型の形状計測装置1に適用した点において相異しており、第1及び第2の実施の形態と同一の構成についてはその説明を省略する。
【0048】
図9に示すように、レーザ光源100から射出された光は、レンズ101、開口102、レンズ103、偏光ビームスプリッタ104、1/4波長板105を経てビームエキスパンダ106でビーム径を拡大される。ビームエキスパンダ106を通過した光は、レンズ(基準レンズ)107を透過して球面波に変換されることで測定光Lmとなり、校正原器20に入射する。校正原器20はアライメント機構をもつ駆動ステージ16により保持され、干渉計(測定光)の光軸Aに対して垂直になるように調整されて設置されている。上記駆動ステージ16により校正原器20は測定光Lmの光軸方向に移動することができる。校正原器20には再帰性光学素子21,22が配置されており、この再帰性光学素子21,22により測定光Lmは反射される。反射された測定光Lmは再帰性光学素子21,22の特性により入射角度に依らず、元来た方向に反射される。そのため、校正原器20で反射された測定光Lmは再びレンズ107、ビームエキスパンダ106、1/4波長板105を経て偏光ビームスプリッタ104で反射される。偏光ビームスプリッタ104で反射された測定光Lmはマイクロレンズアレイ109でCCDカメラからなる撮像素子5上に集光される。
【0049】
図9(b)、(c)にそれぞれ校正原器20と撮像素子上でのスポットの状態を示す。校正原器20は第2実施形態と同様にガラスビーズ21とアパーチャー板25を用いたものである。この校正原器20のアパーチャー板25の開口25aから反射した測定光Lmは、撮像素子上では図9(c)のように複数のスポットSpをつくる。一つの開口25aに対応するスポット数は開口サイズとマイクロレンズアレイ109のサイズ、光学系の倍率によって決まる。この時のスポット群の形状はアパーチャー板25の開口形状によるので、スポットSpの中心位置から撮像素子上での横座標を求めることができる。
【0050】
またアパーチャー板25の開口25aの横座標は第2の実施の形態と同様に別の座標計測器等で高精度に計測されている。したがって第2の実施の形態と同様にスポット群の横座標と開口25aの横座標の関係が求まり、フィッティングなどのデータ処理によって、倍率、ディストーションを求めて横座標の校正用データを取得することができる。
【0051】
なお、上述した第1乃至第3の形態の形状計測装置1では、光源2,100から出射された光を透過させて測定光Lmとする基準レンズ3,107と校正原器20との相対距離を測定光Lmの光軸方向に変化させる駆動装置として駆動ステージ16を設けている。しかしながら、この駆動装置として、基準レンズ3,107を測定光Lmの光軸方向に移動させるピエゾ素子を設けても良い。また、この校正原器20と基準レンズ3,107の両方を移動可能に構成しても良い。
【0052】
更に、演算装置7は、必ずしもワークWの形状計測が行われる駆動装置の光軸方向の全ての位置にて横座標の校正を行わなくても良く、ステップ数などを考慮して測定精度を保持できる複数位置にて横座標の校正を行うようにしても良い。
【0053】
また、校正パターンPは、横座標の校正が出来れば、どのような形状でも良く、例えば、菱形や、十字形状に再帰性光学素子21,22やアパーチャー板25の開口25aを配置しても良い。更に、校正パターンの横座標は、撮像素子5が検出した測定光Lmの重心を検出する以外に、既存のどのような方法を用いても良い。
【0054】
更に、上記第1乃至第3の実施形態では、撮像素子5としてCCDカメラを使用したが、CMOSカメラなど、どのような既知の撮像装置を使用しても良い。
【0055】
また、上述した第1乃至第3の実施の形態に記載された発明は、どのように組み合わされて良いことは当然である。
【符号の説明】
【0056】
1:形状計測装置、20:校正原器、21,22:再帰性光学素子、W:ワーク、Ws:被検面、Lm:測定光、P:校正パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被検面で反射された測定光を解析して形状計測を行う形状計測装置の横座標を校正する際に、ワークの代わりに配置されて測定光を反射すると共に所定の校正パターンが形成された校正原器であって、
測定光を、入射角度に係わらず元来た方向に反射する再帰性光学素子を有する、
ことを特徴とする校正原器。
【請求項2】
光源と、
請求項1記載の校正原器と、
前記光源と前記校正原器との間に配置され、前記光源から出射された光を透過させて測定光とする基準レンズと、
前記校正原器が反射した測定光を検出する撮像素子と、
予め計測されている前記校正パターンの基準横座標位置と、前記撮像素子上にて検出された前記校正パターンの横座標位置とを比較して、横座標の校正を行う演算装置と、を備えた、
ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項3】
前記基準レンズと前記校正原器との相対距離を測定光の光軸方向に変化させる駆動装置を備え、
前記演算装置は、ワークの形状計測が行われる前記駆動装置の光軸方向の複数位置にて、前記撮像素子上における前記校正パターンの横座標位置を演算し、この演算された横座標位置と前記基準横座標位置とを比較して横座標の校正を行う、
請求項2記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記校正原器は、前記再帰性光学素子の配列によって、前記校正パターンを形成する、
請求項2又は3記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記校正原器は、複数の再帰性光学素子の集合をパターンの1単位とし、この再帰性光学素子の集合を組み合わせて前記校正パターンを形成し、
前記演算装置は、各前記再帰性光学素子の集合ごとに横座標位置を演算する、
請求項4記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記校正原器は、
前記再帰性光学素子が表面に一様に配列されて形成された反射面を有する本体部と、
前記基準レンズ及び前記反射面の間で前記反射面に近接して配置されるとともに、複数の開口が形成されたアパーチャー板と、を有し、
前記アパーチャー板の開口の配列によって、前記校正パターンを形成する、
請求項2又は3記載の形状計測装置。
【請求項7】
前記再帰性光学素子は、ガラスビーズである、
請求項2乃至6のいずれか1項記載の形状計測装置。
【請求項8】
前記再帰性光学素子は、コーナーキューブプリズムである、
請求項2乃至6のいずれか1項記載の形状計測装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載の校正原器を、形状計測されるワークの代わりに配置する第1工程と、
被検面に照射される測定光を前記校正原器によって反射させ、この校正原器により反射された測定光を撮像素子によって検出する第2工程と、
前記撮像素子によって検出された前記校正パターンの横座標位置を演算する第3工程と、
前記演算した校正パターンの横座標位置と、予め計測されている校正パターンの基準横座標位置とを比較して、横座標の校正を行う第4工程と、
前記校正原器を測定光の光軸方向に移動させ、ワークの形状計測が行われる光軸方向の複数位置にて、前記第2乃至第4工程を行い横座標の校正をする第5工程と、を備えた、
横座標校正方法。
【請求項10】
請求項9記載の横座標校正方法によって形状計測装置の横座標位置を校正する工程と、
横座標が校正された前記形状計測装置によって光学素子の形状を計測する工程と、
計測された光学素子の形状とこの光学素子の設計値との差分を演算し、演算した設計値との差分だけ修正加工を施す工程と、
を備えた光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−40803(P2013−40803A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176474(P2011−176474)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】