説明

検査レシピ自動生成装置、ならびに検査レシピ自動生成プログラムおよびそれを記録した記録媒体

【課題】基板処理装置を検査するためのレシピを自動生成することによって、基板処理装置の検査工程を確実かつ簡単にする。
【解決手段】基板処理装置の制御装置15は、コンピュータ16と記憶装置19とを備えている。記憶装置19には、基板処理制御プログラムおよび検査レシピ自動生成プログラムが格納されており、さらに、レシピ、構成定義データおよび動作条件データを記憶できるようになっている。コンピュータ16は、検査レシピ自動生成プログラムを実行することにより、基板処理装置が備える複数の構成要素を動作させるための処理手順を記述した検査レシピを生成して記憶装置19に登録する。その際、コンピュータ16は、構成定義データおよび動作条件データに基づいて、検査レシピを構成する処理手順を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置に備えられる複数の構成要素を検査するために当該基板処理装置において実行させるべき検査レシピを自動生成する装置、ならびに検査レシピ自動生成プログラムおよびそれを記録した記録媒体に関する。基板処理装置の処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板を処理する基板処理装置は、たとえば、基板を保持して回転するスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に対して処理液を供給する複数の処理液ノズルと、基板から排除される使用済み処理液を受ける複数の排液ポートと、これらを制御する制御装置とを含む。たとえば、処理液と排液ポートとの対応関係を予め定めておき、特定種類の処理液を対応する排液ポートで回収して再利用することができる。
【0003】
制御装置は、基板の処理手順を記述したレシピに従って、スピンチャック、処理液ノズル、排液ポートその他の構成要素を制御する。レシピに記述される処理手順は、例えば、複数のステップを含む。各ステップには、たとえば、処理液吐出の開始/停止、選択される排液ポートなどが記述される。
基板処理装置のハードウェア仕様は、目的とする処理内容により異なり、現実には、個々のユーザが実行しようとする処理内容に応じたカスタムメードとなっている。したがって、個々の基板処理装置に対応した処理内容を定義するレシピの作成には、相応の知識が必要であり、時間もかかる。より具体的には、様々な制限事項を守りながら、目的とする処理を実行できるようにレシピを記述しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−10029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板処理装置の製造工程の最終段階では、基板処理装置に備えられた構成要素の動作を確認するための検査工程が実行される。この検査工程を自動化するためには、一定の知識を有する技術者が、所定の制限事項を守り、かつ、基板処理装置の全構成要素を動作させるための検査用のレシピ(検査レシピ)を作成し、これを基板処理装置で実行すればよい。しかし、検査レシピを作成するにも、むろん相応の知識が必要であり、時間もかかる。そこで、現実には、基板処理装置の個々のハードウェアを直接操作するツール(リモコン)を用いて、個々の構成要素を順に動作させて検査する手順が一般的である。この検査方法の欠点は、多数の構成要素の検査に膨大な作業工数と時間とを要することである。しかも、作業者間で、検査方法のばらつきが生じるおそれもあるから、より確実な検査を行ううえで、改善の余地がある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、基板処理装置を検査するためのレシピを自動生成することができ、これによって、基板処理装置の検査工程を確実かつ簡単にすることができる検査レシピ自動生成装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、基板処理装置を検査するためのレシピを自動生成することができ、これによって、基板処理装置の検査工程を確実かつ簡単にすることができる検査レシピ自動生成プログラムを提供することである。
【0007】
この発明のさらに他の目的は、前記のような検査レシピ自動生成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を処理するための複数の構成要素(1,N1,N2,N3,P1,P2,P3)を含む基板処理装置のための検査レシピ自動生成装置(15)であって、前記複数の構成要素を定義した構成定義データを記憶する構成定義データ記憶手段(193)と、前記複数の構成要素の動作条件を記述した動作条件データを記憶する動作条件データ記憶手段(194)と、前記複数の構成要素を動作させるための処理手順を記述した検査レシピを記憶する検査レシピ記憶手段(192)と、前記構成定義データ記憶手段に記憶された構成定義データおよび前記動作条件データ記憶手段に記憶された動作条件データに基づいて、前記検査レシピを構成する処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する検査レシピ生成手段(16)とを含む、検査レシピ自動生成装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
【0009】
構成定義データは、基板処理装置の構成要素を定義する。基板処理装置の構成要素の例としては、基板保持回転機構(1)、処理流体ノズル(N1,N2,N3)、および排液ポート(P1,P2,P3)を挙げることができる。構成定義データには、当該基板処理装置に備えられる全ての構成要素(ただし動作確認が必要なもの)に関して、当該構成要素の種類、当該構成要素の有効/無効(当該構成要素が存在するか否か)を表す情報が記述される。
【0010】
基板保持回転機構は、基板(典型的には1枚の基板)を保持して回転させるものである。基板保持回転機構は、たとえば、鉛直軸線周りに回転可能な回転軸(5)と、回転軸の上端に水平に固定されたスピンベース(6)と、スピンベースに備えられた基板保持機構(8)と、回転軸を回転駆動する回転駆動機構(7:たとえば電動モータ)とを含む。基板保持機構は、基板の下面を吸引して保持する吸引保持機構(いわゆるバキュームチャック)であってもよいし、基板の端面に当接する保持部材によって基板を握持(挟持)するもの(いわゆるメカチャック)であってもよい。
【0011】
処理流体ノズルは、流体を吐出する吐出部(11,12,13)と、流体の流通路を開閉するバルブ(21,22,23)とを含む。複数の流通路が一つの吐出部へと合流し、各流通路に個別にバルブが設けられる場合、個々のバルブと共通の吐出部とが個々の処理流体ノズルを形成しているとみなすことができる。処理流体は、気体(処理ガス)であってもよいし、液体(処理液)であってもよい。処理ガスの例は、窒素ガス等の不活性ガス、フッ酸蒸気等の腐食性ガスを含む。処理液の例は、洗浄液、エッチング液、ポリマー除去液、レジスト剥離液、リンス液を含む。洗浄液とは、基板表面の異物を除去する薬液であり、アンモニア過酸化水素水や塩酸過酸化水素水などが該当する。エッチング液とは、基板表面の薄膜を除去する薬液であり、フッ酸、塩酸、硫酸等が該当する。ポリマーとは、ドライエッチングやイオン注入のマスクとして用いられたフォトレジストから生じた変質物(レジスト残渣)である。このポリマーを除去するための薬液がポリマー除去液であり、有機アルカリ液を含む液体、有機酸を含む液体、無機酸を含む液体、フッ化アンモン系物質を含む液体などで構成される。レジスト剥離液は、たとえば、硫酸と過酸化水素水との混合液からなり、基板表面のレジスト(たとえばドライエッチングやイオン注入のマスクとして使用された後のレジスト)を剥離するために用いられる。
【0012】
排液ポートは、基板から排出される使用後の処理液を受け止めて排出するためのものである。複数の排液ポートを選択的に用いることによって、複数種類の処理液を分離して排液させることができる。排液された処理液は、必要に応じて、再利用のために回収されてもよい。
たとえば、或る処理液ノズルから吐出される処理液を或る排液ポートで回収して再利用するとすれば、当該処理液ノズルから処理液を吐出するときには、当該排液ポート以外の排液ポートが選択されてはならない。これが動作条件(制限事項)となり、動作条件データとして動作条件記憶手段に記憶されることになる。動作条件データのその他の例は、基板保持回転機構による基板回転の回転数に関するデータである。たとえば、最高基板回転数や、特定の処理液ノズルから処理液を吐出するときの最低回転数に関するパラメータが動作条件データに記述されてもよい。
【0013】
検査レシピ生成手段は、動作条件データ(制限事項)を守りながら、複数の(好ましくは全ての)構成要素を動作させるための処理手順を生成し、検査レシピ記憶手段に登録する。こうして、検査レシピ記憶手段に複数の構成要素を検査するための検査レシピが登録されることになる。検査レシピ生成手段が生成する処理手順は、複数の構成要素を順次動作させる手順であってもよいし、2つ以上の構成要素を同時に動作させる手順であってもよい。いずれの場合にも、動作条件データに記述された動作条件(制限事項)は守られなければならない。
【0014】
このように、この発明によれば、構成定義データにより定義された複数の構成要素に関して、各構成要素の動作条件を定義した動作条件データに従って、それらの構成要素の動作を検査するための検査レシピが自動生成される。これにより、人的負担を最小限に留めながら、検査漏れのないように、制限事項を遵守しながら、適切な検査レシピを短時間で生成することができる。そして、この検査レシピを用いて基板処理装置を動作させることによって、複数の構成要素に関する動作を確認することができる。こうして、基板処理装置の検査工程を確実かつ簡単にすることができる。
【0015】
前記構成定義データ記憶手段、前記動作条件データ記憶手段、および検査レシピ記憶手段は、個別の記憶媒体で構成されてもよいし、同一記憶媒体の異なる記憶領域を用いて構成されてもよい。
請求項2記載の発明は、前記複数の構成要素が、基板を保持して回転させる基板保持回転機構(1)、前記基板保持回転機構に保持された基板に処理液を供給する複数の処理液ノズル(N1,N2,N3)、および前記基板保持回転機構に保持された基板から排除される処理液をそれぞれ受け容れる複数の排液ポート(P1,P2,P3)を含む、請求項1記載の検査レシピ自動生成装置である。
【0016】
この場合、検査対象の基板処理装置は、たとえば、基板保持回転機構に基板を保持して回転させている状態で、処理液ノズルから基板に向けて処理液を吐出するように動作する。また、基板の回転に伴う遠心力によって基板表面から外方へと排除される処理液は、排液ポートに受け容れられて排液される。
このような基板処理装置を検査するために、基板保持回転機構の回転動作、処理液ノズルからの処理液吐出動作、および排液ポートの動作等を確認するための検査レシピが生成される。
【0017】
構成定義データは、基板保持回転機構、複数の処理液ノズル、および複数の排液ポートに関する記述(パラメータ)を含むことになる。
動作条件データは、基板保持回転機構による基板回転の回転数に関する処理ユニットパラメータを含んでいてもよい。処理ユニットパラメータは、たとえば、基板の最高基板回転数や、特定の処理液ノズルから処理液を吐出するときの基板の最低回転数に関するパラメータを含んでいてもよい。
【0018】
また、動作条件データは、たとえば、各処理液ノズルとの同時吐出が禁止される他の処理液ノズルを記述した同時吐出禁止パラメータを含んでいてもよい。同時吐出禁止パラメータは、結果的に、同時吐出を許可する処理液ノズルを特定することになるから、同時吐出を許可する他の処理液ノズルを記述した同時吐出許可パラメータと言い換えることもできる。むろん、同時吐出を許可する他の処理液ノズルを直接的に記述した同時吐出許可パラメータを動作条件データに含ませてもよい。この場合は、同時吐出許可パラメータに記述された処理液ノズル以外の処理液ノズルについては、同時吐出が禁止される。
【0019】
さらに、動作条件データは、各処理液ノズルからの処理液を受け容れるために用いることが禁止される排液ポートを記述した禁止排液ポートパラメータを含んでいてもよい。禁止排液ポートパラメータは、結果的に、処理液受け容れを許可する排液ポートを特定することになるから、処理液受け容れを許可する排液ポートを記述した許可排液ポートパラメータと言い換えることもできる。むろん、処理液受け容れを許可する排液ポートを直接的に記述した許可排液ポートを記述した許可排液ポートパラメータを動作条件データに含ませてもよい。この場合は、許可排液ポートパラメータに記述された排液ポート以外の排液ポートについては、その選択が禁止される。
【0020】
請求項3記載の発明は、前記動作条件データは、前記構成定義データによって定義されたすべての処理液ノズルに関して、各処理液ノズルとの同時吐出が禁止される他の処理液ノズルを記述した同時吐出禁止パラメータを含み、前記検査レシピ生成手段は、前記同時吐出禁止パラメータによって同時吐出が禁止されている複数の処理液ノズルの同時吐出および連続吐出を回避するように、すべての処理液ノズルから順次処理液を吐出させる処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する手段(S3〜S12)を含む、請求項2記載の検査レシピ自動生成装置である。
【0021】
この構成では、動作条件データは、全ての処理液ノズルに関する同時吐出禁止パラメータを含む。検査レシピ生成手段は、同時吐出禁止パラメータを参照することにより、同時吐出禁止が禁止された処理液ノズルからの同時吐出または連続吐出がされないように、処理手順を生成する。これにより、同時吐出禁止パラメータ(制限事項)に従う検査レシピが自動生成されるから、複数の処理液ノズルの動作確認を漏れなく適切に行うことができる。
【0022】
同時吐出が禁止される処理液ノズルとは、たとえば、吐出される処理液同士の接触を回避すべき処理液ノズルである。たとえば、第1処理液ノズルが酸を吐出するものであり、第2処理液ノズルがアルカリを吐出するものであるとする。この場合、第1処理液ノズルに関する動作条件データは、第2処理液ノズルの同時吐出を禁止する同時吐出禁止パラメータを含む。同様に、第2処理液ノズルに関する動作条件データは、第1処理液ノズルの同時吐出を禁止する同時吐出禁止パラメータを含む。これにより、酸とアルカリとが同時に基板上に供給されたり、酸とアルカリとが相前後して基板上に供給(連続供給)されたりすることを回避できるように、検査レシピが作成される。
【0023】
請求項4記載の発明は、前記動作条件データは、前記構成定義データによって定義されたすべての処理液ノズルに関して、各処理液ノズルから吐出された処理液の受け容れが禁止される排液ポートを記述した禁止排液ポートパラメータを含み、前記検査レシピ生成手段は、処理液ノズルから処理液を吐出させるときに、当該処理液ノズルから吐出された処理液の受け容れが禁止される排液ポート以外の排液ポートを選択して当該処理液を受け容れる処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する手段(S5,S6,S9,S10,S11))を含む、請求項2または3記載の検査レシピ自動生成装置である。
【0024】
この構成により、個々の処理液ノズルに対して適切な排液ポートを選択すべきことを記述した検査レシピを自動生成することができる。たとえば、第1処理液ノズルから吐出される第1処理液を第1排液ポートを介して回収し、第2処理液ノズルから吐出される第2処理液を第2排液ポートを介して回収する場合を想定する。この場合、第1処理液ノズルに対応する動作条件データは、第1排液ポート以外の排液ポート(第2排液ポートを含む)を禁止排液ポートとして記述した禁止排液ポートパラメータを含む。また、第2処理液ノズルに対応する動作条件データは、第2排液ポート以外の排液ポート(第1排液ポートを含む)を禁止排液ポートとして記述した禁止排液ポートパラメータを含む。これにより、複数種類の処理液を分離して排液するように、検査レシピが生成される。
【0025】
請求項5記載の発明は、基板を処理するための複数の構成要素を含む基板処理装置のための検査レシピ自動生成プログラムであって、前記基板処理装置が、前記複数の構成要素を定義した構成定義データを記憶する構成定義データ記憶手段(193)と、前記複数の構成要素の動作条件を記述した動作条件データを記憶する動作条件データ記憶手段(194)と、前記複数の構成要素を動作させるための処理手順を記述した検査レシピを記憶する検査レシピ記憶手段(192)とを含み、前記プログラムは、コンピュータを、前記構成定義データ記憶手段に記憶された構成定義データを読み取る手段(S1,S3,S8)、前記動作条件データ記憶手段に記憶された動作条件データを読み取る手段(S1,S4,S9)、ならびに前記読み取られた構成定義データおよび動作条件データに基づいて前記検査レシピを構成する処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する検査レシピ生成手段(S2,S6,S10,S11,S13)として機能させるためのプログラムである。
【0026】
このプログラムをコンピュータで実行させることにより、請求項1の発明と同様の効果を得ることができる。このコンピュータプログラムに関しても、検査レシピ自動生成装置の発明に関連してのべた変形を施すことができる。
請求項6記載の発明は、請求項5記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(19,80)である。記録媒体の例としては、固体メモリ、データ記録ディスクなどが挙げられ、固定メディアおよびリムーバブルメディアのいずれも該当する。固体メモリとしては、一般的なメモリであるROMおよびRAMのほか、フラッシュデバイスを例示できる。フラッシュデバイスとしては、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード(SDメモリカードなど)を例示できる。データ記録ディスクは、固定ディスク(ハードディスク装置等)であってもよいし、リムーバブルディスクであってもよい。リムーバブルディスクの例は、CD−ROMディスク、DVD−ROMディスクなどである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係る検査レシピ自動生成装置が適用される基板処理装置を示す図解的な構成図である。
【図2】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図3】基板処理装置の構成要素を定義する構成定義データの一例を示す図である。
【図4】動作条件データの一例を説明するための図である。
【図5】コンピュータによる検査レシピの自動生成動作の例を説明するためのフローチャートである。
【図6】自動生成された検査レシピの一例を示す図である。
【図7】この発明の他の実施形態に係る検査レシピ自動生成装置が適用された基板処理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る検査レシピ自動生成装置が適用される基板処理装置の構成を示す図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉型の装置である。この基板処理装置は、スピンチャック1と、複数(この実施形態では3個)の処理液ノズルN1,N2,N3と、スプラッシュガード2と、排液カップ3とを備えている。
【0029】
スピンチャック1は、1枚の基板Wを水平姿勢で保持して回転する基板保持回転機構である。より具体的には、スピンチャック1は、鉛直方向に沿って延びる回転軸5と、回転軸5の上端に水平姿勢で固定されたスピンベース6と、回転軸5を鉛直軸線周りに回転駆動する回転駆動機構7とを有している。スピンベース6は、たとえば、円盤状に形成されており、その周縁部には、周方向に間隔を開けて複数の保持部材8が設けられている。この複数の保持部材8によって、基板Wが握持(挟持)されて保持されるようになっている。この構成により、基板Wを水平姿勢で保持し、鉛直軸線周りに回転させることができる。
【0030】
処理液ノズルN1,N2,N3は、それぞれ、吐出部11,12,13および処理液バルブ21,22,23を有している。処理液バルブ21,22,23は、それぞれ、処理液流路31,32,33の途中に介装されており、これらの処理液流路31,32,33の先端に吐出部11,12,13が設けられている。処理液バルブ21,22,23を開閉することにより、吐出部11,12,13から処理液を吐出させたり、その吐出を停止させたりすることができる。吐出部11,12,13は、それぞれ、スピンチャック1に保持された基板Wに向けて処理液を吐出するように配置されている。
【0031】
吐出部11,12,13は、固定ノズルの形態を有していてもよいし、基板Wの上方で水平方向に移動する移動ノズル(いわゆるスキャンノズル)の形態を有していてもよい。むろん、3つの吐出部11,12,13が同一のノズル形態を有している必要はない。
処理液ノズルN1には、処理液タンク41に貯留された処理液が、処理液ポンプ51により汲み出され、処理液流路31を介して供給されるようになっている。同様に、処理液ノズルN2には、処理液タンク42に貯留された処理液が、処理液ポンプ52によって汲み出され、処理液流路32を介して供給されるようになっている。処理液ノズルN3には、この実施形態では、リンス液供給源43からのリンス液が処理液流路33を介して供給されるようになっている。リンス液は、純水(脱イオン水:DIW)であってもよい。
【0032】
スプラッシュガード2は、スピンベース6を取り囲むように配置された筒状体である。このスプラッシュガード2の下方に、排液カップ3が配置されている。これにより、スプラッシュガード2および排液カップ3は、基板Wの処理のための処理液およびそのミストを含む雰囲気の拡散を防ぐ処理カップ10を形成している。
排液カップ3は、有底円筒状容器を形成しており、その底部の中央を回転軸5が鉛直方向に貫通している。排液カップ3は、底壁部65の外周縁に鉛直方向に沿って立設された円筒状の外壁64を有している。排液カップ3は、さらに、回転軸5を中心軸として同軸円筒状に形成された3つの排液分離壁61,62,63を有している。これにより、外側の排液分離壁61と外壁64との間に、第1排液溝61Aが形成されている。また、第1排液溝61Aの内側に、排液分離壁61,62によって第2排液溝62Aが区画されている。さらに、第2排液溝62Aの内側に、内側の2つの排液分離壁62,63によって第3排液溝63Aが区画されている。
【0033】
第1排液溝61Aは、第1回収配管45に接続されている。第1回収配管45は、処理液タンク41に接続されている。したがって、第1排液溝61Aに導かれた液は、処理液タンク41に回収されて再利用される。同様に、第2排液溝62Aは、第2回収配管46に接続されている。第2回収配管46は、処理液タンク42に接続されている。したがって、第2排液溝62Aに導かれた液は、処理液タンク42に回収されて再利用される。回収配管45,47には、必要に応じて、液中の異物を除去するためのフィルタが介装されることが好ましい。第3排液溝63Aは、ドレン配管47に接続されている。したがって、第3排液溝63Aに導かれた液は、廃棄される。
【0034】
スプラッシュガード2は、複数(この実施形態では3つ)の排液ガイド71,72,73を備えている。この実施形態では、これらの排液ガイド71,72,73は、一体化されており、昇降駆動機構9によって一体的に上下動されるようになっている。排液ガイド71,72,73は、回転軸5を中心軸とした同軸形状に形成されており、それぞれ、円筒状の下方部と、この下方部の上端縁から回転軸5側に向かって斜め上方に傾斜した円錐面形状の上方部とを有している。これにより、スプラッシュガード2は、回転軸5側に開口した複数(この実施形態では3つ)の排液ポートP1,P2,P3を有している。すなわち、排液ガイド71,72の各上端縁の間に排液ポートP1が形成されている。その下方には、排液ガイド72,73の各上端縁の間に排液ポートP2が区画されている。さらに、その下方には、排液ガイド73の下方側に排液ポートP3が形成されている。
【0035】
昇降駆動機構9によってスプラッシュガード2が上下動されることにより、3つの排液ポートP1,P2,P3のうちのいずれかを、スピンベース6の側方(より正確には、スピンチャック1に保持された基板Wの側方)に対向させることができる。これにより、基板Wから遠心力によって排除される処理液を、いずれかの排液ポートP1,P2,P3に導入することができる。
【0036】
排液ポートP1に導入された処理液は、排液ガイド71,72によって、第1排液溝61Aに案内される。この処理液は、第1回収配管45を通って、処理液タンク41に収容される。同様に、排液ポートP2に導入された処理液は、排液ガイド72,73によって、第2排液溝62Aに案内される。この処理液は、第2回収配管46を通って、処理液タンク42に収容される。排液ポートP3に導入された処理液は、排液ガイド73によって、第3排液溝63Aに案内される。この処理液は、ドレン配管47を通って廃棄される。
【0037】
回転駆動機構7、昇降駆動機構9および処理液バルブ21,22,23の動作を制御するために、マイクロコンピュータ等を含む制御装置15が備えられている。制御装置15は、予め設定される処理レシピに従って、基板処理装置の構成要素を制御する。処理レシピは、基板処理の処理手順を記述した複数のステップを含む。各ステップには、スピンチャック1の回転速度、処理液吐出すべき処理液ノズル、吐出停止すべき処理液ノズル、選択すべき排液ポート、その他の制御情報が記述される。たとえば、処理液ノズルN1から処理液を吐出するときには、排液ポートP1が選択され、この排液ポートP1がスピンチャック1の側方に対向するように昇降駆動機構9が制御される。また、処理液ノズルN2から処理液を吐出するときには、排液ポートP2が選択され、この排液ポートP2がスピンチャック1の側方に対向するように昇降駆動機構9が制御される。
【0038】
図2は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図であり、主として、制御装置15の構成が示されている。制御装置15は、コンピュータ16と、入力装置17と、表示装置18と、記憶装置19と、ハードウェアインタフェース20とを備えている。
コンピュータ16は、CPUを含み、記憶装置19から必要なプログラムおよびデータを読み込んで基板処理のための演算処理および制御処理を実行する。これにより、コンピュータ16は、装置制御手段および検査レシピ生成手段として機能することができる。装置制御手段としてのコンピュータ16の働きは、記憶装置19に記憶されたレシピに従って、基板処理装置の各部を制御することである。また、検査レシピ生成手段としてのコンピュータ16の働きは、基板処理装置の構成要素の動作を確認する際に実行すべき検査レシピを自動生成して記憶装置19に登録することである。
【0039】
入力装置17は、コンピュータ16に接続されており、操作者によって操作されるキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルその他の入力インタフェースからなる。表示装置18は、コンピュータ16に接続されており、入力装置17とともに操作者に対するインタフェースを提供する。表示装置18は、たとえば、液晶表示装置等の二次元表示装置からなる。操作者は、表示装置18の表示を参照しながら入力装置17を操作することにより、コンピュータ16に対して、予め作成されたレシピの選択、基板処理の開始、その他の指令を与えることができる。また、レシピの作成も、入力装置17および表示装置18を用いて行うことができる。
【0040】
記憶装置19は、コンピュータ16に接続されており、固体メモリ装置、ハードディスク装置その他の記憶装置からなる。記憶装置19は、基板処理制御プログラムを記憶した記憶領域190、検査レシピ自動生成プログラムを記憶した記憶領域191、レシピを記憶するための記憶領域192(レシピ記憶手段、検査レシピ記憶手段)、構成定義データを記憶するための記憶領域193(構成定義データ記憶手段)、および動作条件データを記憶するための記憶領域194(動作条件データ記憶手段)を有している。レシピには、基板処理装置の構成要素の動作確認のための検査レシピが含まれる。検査レシピは、入力装置17の操作によって呼び出して、コンピュータ16に実行させることができる。この検査レシピの実行によって、基板処理装置各部の動作を確認することができる。
【0041】
基板処理制御プログラムは、記憶領域192に記憶されたレシピに従って基板処理装置の各部を動作させるためのプログラムである。コンピュータ16は、このプログラムを読み取って実行することにより、レシピに従って基板処理装置の各部の動作を制御する装置制御手段として機能する。
検査レシピ自動生成プログラムは、検査レシピをコンピュータ16によって自動生成させるためのプログラムである。コンピュータ16は、このプログラムを読み取って実行することにより、検査レシピを自動生成して記憶装置19に登録する検査レシピ生成手段として機能する。
【0042】
ハードウェアインタフェース20は、基板処理装置に備えられた制御対象(構成要素)に対するインタフェースを提供する。すなわち、コンピュータ16は、ハードウェアインタフェース20を介して、回転駆動機構7、昇降駆動機構9、処理液ノズルN1,N2,N3(より具体的にはバルブ21,22,23)などを制御する。また、詳細な図示は省略するが、基板処理装置に備えられた各種のセンサ類25からの検出信号は、ハードウェアインタフェース20を介して、制御装置15に取り込むことができるようになっている。
【0043】
図3は、基板処理装置の構成要素を定義する構成定義データの一例を示す図である。この実施形態では、構成定義データは、処理ユニットパラメータ、ノズルパラメータおよび排液ポートパラメータを含む。処理ユニットパラメータは、「スピンチャック」が備えられていることを表す記述を含む。
ノズルパラメータは、「ノズル1」〜「ノズル5」について、「有効/無効フラグ」の値を含む。この実施形態において、コンピュータ16が基板処理装置の制御のために実行する基板処理制御プログラム(図2参照)は、5つの「ノズル1」〜「ノズル5」の制御に対応している。しかし、図1に示す基板処理装置は、実際には、3つの処理液ノズルN1,N2,N3を有しているに過ぎない。そこで、図3の例では、3つの「ノズル1」(たとえば処理液ノズルN1に対応)、「ノズル3」(たとえば処理液ノズルN2に対応)、および「ノズル5」(たとえば処理液ノズルN3に対応)について、「有効/無効フラグ」の値が「有効」となっていて、他の「ノズル2」および「ノズル4」に関しては、「有効/無効フラグ」の値が「無効」となっている。
【0044】
排液ポートパラメータは、「ポートA」〜「ポートC」について、「有効/無効フラグ」の値を含む。この実施形態において、コンピュータ16が基板処理装置の制御のために実行する基板処理制御プログラム(図2参照)は、3つの「ポートA」〜「ポートC」の制御に対応している。そして、図1に示す基板処理装置は、3つの排液ポートP1,P2,P3を有している。そこで、図3の例では、3つの「ポートA」(たとえば排液ポートP1に対応)、「ポートB」(たとえば排液ポートP2に対応)、および「ポートC」(たとえば排液ポートP3に対応)について、「有効/無効フラグ」の値が「有効」となっている。
【0045】
図4は、動作条件データの一例を説明するための図である。動作条件データは、基板処理装置に備えられた構成要素の動作条件を記述したデータである。図4に示されているように、この実施形態では、動作条件データは、処理ユニットパラメータと、同時吐出禁止パラメータと、禁止排液ポートパラメータとを含む。
処理ユニットパラメータは、たとえば、スピンチャックの最高回転数を一つの動作条件として定義している。また、この実施形態では、処理ユニットパラメータは、いずれかの処理液ノズルから処理液を吐出しているときのスピンチャックの最低回転数を他の動作条件として定義している。
【0046】
同時吐出禁止パラメータは、各処理液ノズルに関して、同時吐出が禁止される処理液ノズルを記述したパラメータである。図4の例では、「ノズル1」(処理液ノズルN1)に関して、「ノズル3」(処理液ノズルN2)の同時吐出を禁止することが記述されている。また、「ノズル3」(処理液ノズルN2)に関して、「ノズル1」(処理液ノズルN1)の同時吐出を禁止することが記述されている。「ノズル5」(処理液ノズルN3)に関しては、同時吐出を禁止するノズルが記述されていない。したがって、「ノズル1」(処理液ノズルN1)と「ノズル3」(処理液ノズルN2)との同時吐出は禁止されるけれども、「ノズル1」(処理液ノズルN1)と「ノズル5」(処理液ノズルN3)との同時吐出、および「ノズル3」(処理液ノズルN2)と「ノズル5」(処理液ノズルN3)との同時吐出は、いずれも許可されることになる。
【0047】
たとえば、「ノズル1」(処理液ノズルN1)は処理液として第1薬液を吐出する薬液ノズルであり、「ノズル3」(処理液ノズルN2)は処理液として第2薬液を吐出する薬液ノズルであり、「ノズル5」(処理液ノズルN3)は処理液としてリンス液(この実施形態では純水)を吐出するリンス液ノズルであってもよい。この場合、「ノズル1」(処理液ノズルN1)と「ノズル3」(処理液ノズルN2)との同時吐出を禁止することによって、基板W上で第1および第2薬液が混合することを回避できる。たとえば、第1薬液が酸であり、第2薬液がアルカリであるような場合に、これらの薬液を吐出する2つの処理液ノズルの同時吐出が禁止されるように同時吐出禁止パラメータが設定される。
【0048】
操作者が入力装置17および表示装置18を用いてレシピを作成するとき、「ノズル1」(処理液ノズルN1)からの処理液の吐出と「ノズル3」(処理液ノズルN2)からの処理液の吐出とが同時に生じるステップを誤って作成するかもしれない。この場合、コンピュータ16は、動作条件データを参照することにより、当該ステップの登録が制限事項に抵触することを見いだす。そして、コンピュータ16は、たとえば、表示装置18に、「ノズル1」(処理液ノズルN1)と「ノズル3」(処理液ノズルN2)との同時吐出が禁止されていることを表示して、操作者に注意を促す。
【0049】
同時吐出の禁止が動作条件データに記述されている2つのノズルは、同時吐出が禁止されるだけでなく、連続吐出も禁止される。連続吐出とは、この場合、2つのノズルからの処理液の吐出が相前後して行われることを意味する。連続吐出が禁止される理由は、基板上で2つの処理液が混ざり合うおそれがあるからである。したがって、使用者が、連続吐出が生じるようなステップを登録しようとすると、コンピュータ16は、同時吐出のステップを登録しようとした場合と同様に動作して、操作者に注意を促す。
【0050】
禁止排液ポートパラメータは、個々のノズルに対して、禁止ポートを記述したパラメータである。図4の例では、「ノズル1」(処理液ノズルN1)に対する禁止ポートとして、「ポートB」(排液ポートP2)および「ポートC」(排液ポートP3)が記述されている。また、「ノズル3」(処理液ノズルN2)に対する禁止ポートとして、「ポートA」(排液ポートP1)および「ポートC」(排液ポートP3)が記述されている。また、「ノズル5」(処理液ノズルN3)に対する禁止ポートとして、「ポートA」(排液ポートP1)および「ポートB」(排液ポートP2)が記述されている。
【0051】
したがって、「ノズル1」(処理液ノズルN1)に対しては「ポートA」(排液ポートP1)のみが許容され、「ノズル3」(処理液ノズルN2)に対しては「ポートB」(排液ポートP2)のみが許容され、ノズル5」(処理液ノズルN3)に対しては「ポートC」(排液ポートP3)のみが許容される。このように、処理液ノズルに応じて排液ポートを分けているのは、排液ポート内での処理液の混合を回避するためである。処理液の混合を回避することで、薬液の回収および再利用の効率が高まる。また、意図しない化学反応を生じるおそれのある複数種類の薬液の混合を回避できる。
【0052】
操作者が入力装置17および表示装置18を用いて処理レシピを作成するとき、たとえば、「ノズル1」(処理液ノズルN1)からの処理液吐出がされている状態で、「ポートA」(排液ポートP1)以外の排液ポートへの切り換えを指示するステップを誤って作成するかもしれない。この場合、コンピュータ16は、動作条件データを参照することにより、当該ステップの登録が制限事項に抵触することを見いだす。そして、コンピュータ16は、たとえば、表示装置18に、「ノズル1」(処理液ノズルN1)に対しては、当該排液ポートの選択が禁止されていることを表示して、操作者に注意を促す。
【0053】
図5は、コンピュータ16による検査レシピ自動生成動作の例を説明するためのフローチャートである。また、図6は、自動生成された検査レシピの一例を示す図である。図5および図6には、処理液ノズルN1,N2,N3および排液ポートP1,P2,P3の動作確認を行う場合の例が示されている。
使用者が、入力装置17から、所定の入力操作を行うことによって、コンピュータ16は、検査レシピ自動生成プログラムを起動して、検査レシピの自動生成を開始する。コンピュータ16は、動作条件データのうち「処理ユニットパラメータ」に規定されているノズル吐出時のスピンベース最低回転数(たとえば1000rpm)を取得する(手順S1)。そして、コンピュータ16は、検査レシピの先頭ステップ(ステップ1)として、スピンチャックをノズル吐出時の最低回転数で回転開始させることを記述し、これを記憶装置19に登録する(手順S2)。
【0054】
次に、コンピュータ16は、構成定義データの「ノズルパラメータ」を参照し、「有効」なノズル(すなわち、基板処理装置に実際に備えられているノズル)のリストを取得する(手順S3)。さらに、コンピュータ16は、取得したリスト中のノズルについて、動作条件データの「同時吐出禁止パラメータ」を参照して、同時吐出が禁止されるノズルの記述のないノズル(禁止条件のないノズル)を特定する(手順S4)。通常は、リンス液ノズルが特定されることになる。さらに、コンピュータ16は、動作条件データの「禁止排液ポートパラメータ」を参照して、当該禁止条件無しのノズル(「ノズル5」:処理液ノズルN3)に対応した排液ポート(ポートC:排液ポートP3)を特定する(手順S5)。そして、コンピュータ16は、禁止条件無しのノズルからの吐出(所定時間の吐出)、および対応する排液ポートの使用を、検査レシピの次ステップ(ステップ2)として登録する(手順S6)。これにより、禁止条件無しのノズルについての動作確認のためのステップが登録されることになる。
【0055】
さらに、コンピュータ16は、検査レシピの次のステップ(ステップ3)として、禁止条件無しのノズル(「ノズル5」:処理液ノズルN3)からの吐出が正常に行われたかどうかを検出し、吐出不良があればアラームを発生して以後の処理手順を行わずに自動停止させることを登録する(手順7)。処理液吐出が正常か否かは、たとえば、処理液流路31,32,33に流量計を設けておき、この流量計の出力を、ハードウェアインタフェース20を介してコンピュータ16に取り込むことによって判断できる。このような流量計は、図2に示すセンサ類25の一例である。禁止条件無しのノズル(通常はリンス液ノズル)の動作確認を始めに行うことによって、その後に、他のノズルから薬液を吐出させた場合に、その後のリンス処理を確実に行うことができる。
【0056】
さらに、コンピュータ16は、禁止条件無しのノズルからの処理液吐出に異常がないときに実行する次ステップを作成するために、有効ノズルリストから、未抽出のノズル(たとえば「ノズル1」)を取り出す(手順S8)。そして、動作条件データを参照して、当該ノズルに対して許容される排液ポート(たとえば「ポートA」)を特定する(手順S9)。さらに、コンピュータ16は、検査レシピの次のステップ(ステップ4)として、当該取り出されたノズルからの処理液吐出(所定時間の吐出)、および当該特定された排液ポートの使用を記述し、これを記憶装置19に登録する(手順S10)。
【0057】
次に、コンピュータ16は、禁止条件無しのノズル(「ノズル5」:処理液ノズルN3)からの処理液の吐出(所定時間の吐出)、および対応する排液ポート(ポートC:排液ポートP3)の使用を、検査レシピの次ステップ(ステップ5)として記述し、これを記憶装置19に登録する(手順S11)。これは、薬液の使用の後に、基板上の薬液をリンス液に置換するためのステップである。
【0058】
そして、有効なノズルの全てに関して処理液の吐出を記述するまで、手順S8〜S11を繰り返す(手順S12:YES)。これにより、図6のステップ6,7が記憶装置19に登録される。
有効なノズルの全てに関して処理液を吐出させるためのステップ(ステップ4〜7)を記述し終えると(手順S12:NO)、コンピュータ16は、スピンチャックを最高回転数(たとえば3000rpm)で回転開始させることを記述したステップ(ステップ8)を検査レシピの次ステップとして記述し、これを記憶装置19に登録する(手順S13)。これは、検査の最後に、基板を高速回転させ、遠心力によって基板表面の液成分を振り切る乾燥処理を実行するためである。そして、コンピュータ16は、検査レシピの最後のステップ(ステップ9)として、スピンチャックの回転停止を記述し、これを記憶装置19に登録する(手順S14)。こうして、すべての処理液ノズルの動作を確認するための検査レシピ(図6参照)が自動生成され、記憶装置19に登録される。
【0059】
操作者が入力装置17を操作して検査レシピの実行を指示すると、コンピュータ16は、記憶装置19から検査レシピを読み出し、これを実行する。これにより、まず、スピンチャック1がノズル吐出時の最低回転数(たとえば1000rpm)で回転される(図6のステップ1)。この状態で、昇降駆動機構9が制御されて「ポートC」に対応する排液ポートP3がスピンベース6の側方に配置される。また、「ノズル5」に対応する処理液ノズルN3のバルブ23が開かれ、吐出部13からリンス液が基板Wに向けて吐出される(ステップ2)。こうして、処理液ノズルN3の動作確認を行える。このとき、リンス液の吐出に不良があれば、コンピュータ16は、表示装置18にアラーム表示を出力させるとともに、処理を自動停止する(ステップ3)。
【0060】
リンス液が正常に吐出されれば、所定時間のリンス液吐出の後、バルブ23が閉じられる。そして、次に、「ポートA」に対応する排液ポートP1がスピンベース6の側方に位置するように昇降駆動機構9が制御される。この状態で、「ノズル1」に対応する処理液ノズルN1のバルブ21が開かれる(ステップ4)。これにより、処理液ノズルN1から処理液が吐出され、遠心力によって基板Wから排除される処理液は排液ポートP1に受け容れられる。こうして、処理液ノズルN1の動作確認を行える。
【0061】
所定時間後に処理液ノズルN1のバルブ21が閉じられると、次に、昇降駆動機構9が制御されて「ポートC」に対応する排液ポートP3がスピンベース6の側方に配置される。また、「ノズル5」に対応する処理液ノズルN3のバルブ23が開かれ、吐出部13からリンス液が基板Wに向けて吐出される(ステップ5)。所定時間のリンス液吐出の後、バルブ23が閉じられる。これにより、基板W表面の、処理液ノズルN1から吐出された処理液がリンス液で置換される。
【0062】
次に、「ポートB」に対応する排液ポートP2がスピンベース6の側方に位置するように昇降駆動機構9が制御される。この状態で、「ノズル3」に対応する処理液ノズルN2のバルブ22が開かれる(ステップ6)。これにより、処理液ノズルN2から処理液が吐出され、遠心力によって基板Wから排除される処理液は排液ポートP2に受け容れられる。こうして、処理液ノズルN2の動作確認を行える。
【0063】
所定時間後に処理液ノズルN2のバルブ22が閉じられると、次に、昇降駆動機構9が制御されて「ポートC」に対応する排液ポートP3がスピンベース6の側方に配置される。また、「ノズル5」に対応する処理液ノズルN3のバルブ23が開かれ、吐出部13からリンス液が基板Wに向けて吐出される(ステップ7)。
所定時間のリンス液吐出の後、コンピュータ16は、処理液ノズルN3のバルブ23を閉じ、スピンチャック1を最高回転数(たとえば3000rpm)で回転させる(ステップ8)。これにより、基板W表面の液成分を遠心力によって排除する乾燥処理が行われる。所定時間の乾燥処理の後、コンピュータ16は、スピンチャック1の回転を停止し(ステップ9)、検査レシピの実行を終える。
【0064】
こうして、自動生成された検査レシピの実行によって、全ての処理液ノズルN1,N2,N3の動作確認を、適切な排液ポートP1,P2,P3を選択しながら漏れなく行うことができる。その際に、処理液ノズルN1,N2から吐出される処理液(薬液)の混合を確実に回避できる。
なお、検査レシピの自動生成処理において、同時吐出が許容される複数の処理液ノズルに関しては、同時吐出の検査を行うステップが検査レシピに追加されてもよい。具体的には、たとえば、図5の手順8において、同時吐出が許容されるノズルの組み合わせを取り出すこととし、同時吐出が許容される全てのノズルの組み合わせについて、手順8〜S11を行えばよい。この場合、同時吐出のときには、たとえば、禁止条件無しのノズルに対応する排液ポートを使用することとしてもよい。このようにして作成された検査レシピを基板処理装置で実行させることによって、同時吐出時の動作確認を行うことができる。その結果、たとえば、ソフトウェアの不具合によって同時吐出がされなかったり、同時吐出時にいずれかの処理液の流量に不足が生じたりしていれば、このような不具合をも、自動生成された検査レシピを用いて確認することができる。
【0065】
なお、薬液を基板に吐出した後、その薬液をリンス液に置換する場合において、リンス液吐出初期には、薬液の濃度が比較的高い。そこで、薬液ノズルからリンス液ノズル(禁止条件無しのノズル)に切り換えた当初の期間には、当該薬液ノズルに対応した排液ポートを選択し、その後(一定時間経過後)に、リンス液ノズルに対応した排液ポートを使用するように記述したステップを、検査レシピに登録してもよい。
【0066】
図7は、この発明の他の実施形態に係る検査レシピ自動生成装置が適用された基板処理装置の構成を説明するためのブロック図である。この図7において、前述の図2に示された各部に対応する部分には、同一参照符号を付して示す。
この実施形態では、外部記憶装置80に、検査レシピ自動生成プログラムが格納されている。この外部記憶装置80は、USBメモリ、CD−ROM、DVD−ROMその他のコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。この外部記憶装置80に格納された検査レシピ自動生成プログラムを制御装置15に備えられた適切な読み取り手段を介して読み取り、コンピュータ16で実行させることにより、コンピュータ16が検査レシピ自動生成機能を有することになる。こうして、前述の実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0067】
この実施形態による利点は、必要なときに検査レシピ自動生成機能を付加できることである。これにより、検査レシピ自動生成プログラムを制御装置15の記憶装置19に格納しておく必要がないから、記憶装置19の記憶容量を節約できる。また、制御装置15が予め検査レシピ自動生成機能を有している必要がないから、このような機能のない制御装置15に対して、事後的に検査レシピ自動生成機能を付加することができる。さらに、外部記憶装置80を適切に管理しておくことにより、検査レシピの自動生成機能の使用者を限定することができる。
【0068】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、薬液を吐出する処理液ノズルN1,N2の使用の後に、リンス液を吐出する処理液ノズルN3からの吐出を行うようにしている。しかし、たとえば、第3の薬液ノズルが備えられていて、この薬液ノズルから吐出される薬液が処理液ノズルN1から吐出される薬液との混合が許されるものである場合もあり得る。このような場合には、処理液ノズルN1からの処理液吐出後に、前記第3の薬液ノズルからの薬液の吐出が行われるように記述した検査レシピが生成されてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、3つの処理液ノズルおよび3つの排液ポートを備えた基板処理装置を例に取ったが、これらの数は、むろん、一例に過ぎない。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0070】
N1,N2,N3 処理液ノズル
11,12,13 吐出部
21,22,23 処理液バルブ
P1,P2,P3 排液ポート
1 スピンチャック
2 スプラッシュガード
3 排液カップ
5 回転軸
6 スピンベース
7 回転駆動機構
8 保持部材
9 昇降駆動機構
10 処理カップ
15 制御装置
16 コンピュータ
17 入力装置
18 表示装置
19 記憶装置
190〜194 記憶領域
20 ハードウェアインタフェース
25 センサ類
31,32,33 処理液流路
41,42 処理液タンク
43 リンス液供給源
45 第1回収配管
46 第2回収配管
47 ドレン配管
51,52 処理液ポンプ
61,62,63 排液分離壁
61A 第1排液溝
62A 第2排液溝
63A 第3排液溝
64 外壁
65 底壁部
71,72,73 排液ガイド
80 外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための複数の構成要素を含む基板処理装置のための検査レシピ自動生成装置であって、
前記複数の構成要素を定義した構成定義データを記憶する構成定義データ記憶手段と、
前記複数の構成要素の動作条件を記述した動作条件データを記憶する動作条件データ記憶手段と、
前記複数の構成要素を動作させるための処理手順を記述した検査レシピを記憶する検査レシピ記憶手段と、
前記構成定義データ記憶手段に記憶された構成定義データおよび前記動作条件データ記憶手段に記憶された動作条件データに基づいて、前記検査レシピを構成する処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する検査レシピ生成手段とを含む、検査レシピ自動生成装置。
【請求項2】
前記複数の構成要素が、基板を保持して回転させる基板保持回転機構、前記基板保持回転機構に保持された基板に処理液を供給する複数の処理液ノズル、および前記基板保持回転機構に保持された基板から排除される処理液をそれぞれ受け容れる複数の排液ポートを含む、請求項1記載の検査レシピ自動生成装置。
【請求項3】
前記動作条件データは、前記構成定義データによって定義されたすべての処理液ノズルに関して、各処理液ノズルとの同時吐出が禁止される他の処理液ノズルを記述した同時吐出禁止パラメータを含み、
前記検査レシピ生成手段は、前記同時吐出禁止パラメータによって同時吐出が禁止されている複数の処理液ノズルの同時吐出および連続吐出を回避するように、すべての処理液ノズルから順次処理液を吐出させる処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する手段を含む、請求項2記載の検査レシピ自動生成装置。
【請求項4】
前記動作条件データは、前記構成定義データによって定義されたすべての処理液ノズルに関して、各処理液ノズルから吐出された処理液の受け容れが禁止される排液ポートを記述した禁止排液ポートパラメータを含み、
前記検査レシピ生成手段は、処理液ノズルから処理液を吐出させるときに、当該処理液ノズルから吐出された処理液の受け容れが禁止される排液ポート以外の排液ポートを選択して当該処理液を受け容れる処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する手段を含む、請求項2または3記載の検査レシピ自動生成装置。
【請求項5】
基板を処理するための複数の構成要素を含む基板処理装置のための検査レシピ自動生成プログラムであって、
前記基板処理装置が、前記複数の構成要素を定義した構成定義データを記憶する構成定義データ記憶手段と、前記複数の構成要素の動作条件を記述した動作条件データを記憶する動作条件データ記憶手段と、前記複数の構成要素を動作させるための処理手順を記述した検査レシピを記憶する検査レシピ記憶手段とを含み、
前記プログラムは、コンピュータを、前記構成定義データ記憶手段に記憶された構成定義データを読み取る手段、前記動作条件データ記憶手段に記憶された動作条件データを読み取る手段、ならびに前記読み取られた構成定義データおよび動作条件データに基づいて前記検査レシピを構成する処理手順を生成して前記検査レシピ記憶手段に登録する検査レシピ生成手段として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−66235(P2011−66235A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216022(P2009−216022)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】