説明

検査装置、検査方法、転がり軸受の製造装置、及び転がり軸受の製造方法

【課題】保持器及び転動体における潤滑剤の塗布状態の検査を行う際の撮像処理回数を低減させること。
【解決手段】パレット上のベアリングに対して上方から紫外光を照射し、下方から赤色の可視光を照射した状態で、上方からベアリングのカラー画像を撮像する。ボール上の潤滑剤は紫外光を受けて蛍光を発する。そこでボールにおける潤滑剤の付着状態を、撮像画像における、ボール上の潤滑剤付着領域と非付着領域とを色の違いに基づいて判断する。保持器における潤滑剤が塗布されていない領域は、紫外光による励起光と、赤色の可視光との混色により紫色に映し出される。保持器における潤滑剤の塗布されている領域は、赤色の可視光を透過せず、紫外光を受けて蛍光を発するため青色に映し出される。そこで保持器における潤滑剤の塗布状態を、保持器上の潤滑剤付着領域と非付着領域との色の違いに基づいて判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受におけるグリスの塗布状態を検査する検査装置及び検査方法、また、転がり軸受を製造する転がり軸受の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータのハードディスクには、磁気ディスクを回転自在に支持するためにベアリングが用いられている。
一般にベアリングは、2つの軌道輪(外輪、内輪)、転動体(ころ、又はボール)及び保持器で構成されている。
また、ベアリングには、転動体の摩擦を低減するために、グリス(グリース)等の潤滑剤が塗布されている。
【0003】
従来、ベアリングにおけるグリスの塗布状態を検査する技術が下記の特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2000−343024公報
【特許文献2】特開2007−240526公報
【0004】
特許文献1には、紫外光を照射した状態でベアリングを撮像し、撮像画像に基づいて転がり軸受における潤滑剤の塗布状態を検査する技術が提案されている。
詳しくは、軌道輪(外輪、内輪)及び金属製の転動体(ボール)、樹脂製の保持器から構成されるベアリングに近紫外線を照射して撮像する。
潤滑剤は、紫外光を受けて発光するため白く映し出され、転動体は、黒く映し出される。そして、撮像画像における白色領域の面積に基づいて、転動体に塗布された潤滑剤の状態を検査するようになっている。
【0005】
特許文献2には、ベアリングに可視光照明を照射して、その透過像をモノクロカメラで撮像し、可視光の透過領域と非透過領域の検出結果に基づいて、保持器における潤滑剤の塗布状態を判定する技術が提案されている。また、特許文献2には、上記検査とは別に、ベアリングに紫外光照明を照射して、その照射像をモノクロカメラで撮像し、金属製の転動体におけるグリス付着の有無の判定を行う技術が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検査方法では、紫外光を照射した場合、樹脂製の保持器も潤滑剤も共に紫外光の励起光により白く映し出されるため、撮像画像において、保持器と潤滑剤とを区別することが困難であった。
また、特許文献2に記載の検査方法では、可視光を照射することにより、保持器とグリスとの区別が容易になるものの、保持器と転動体の2カ所におけるグリスの塗布状態の判定を行うために、可視光と紫外光のそれぞれを単独で照射した状態で撮像する必要があった。即ち、グリスの塗布状態の検査の際に2回の撮像処理を行う必要があった。
【0007】
そこで本発明は、保持器及び転動体に対する潤滑剤の塗布状態の検査を行う際の撮像処理回数を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪の間に配設される複数の転動体と、前記転動体を分離し、光透過性を有する保持器と、を備えた転がり軸受における蛍光成分を有する潤滑剤の塗布状態を検査する検査装置であって、可視光を照射する第1光源と、紫外光を照射する第2光源と、前記可視光及び前記紫外光をそれぞれ対向方向から検査対象となる転がり軸受に照射した状態で、前記紫外光の照射側から前記検査対象となる転がり軸受のカラー画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像した撮像画像から、前記転動体に対する第1検査領域を特定する第1検査領域特定手段と、前記撮像画像の色情報及び輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記第1検査領域における潤滑剤の付着状態を検査する第1検査手段と、前記撮像画像から、前記保持器に対する第2検査領域を特定する第2検査領域特定手段と、前記撮像画像の色情報に基づいて、前記第2検査領域における潤滑剤の塗布状態を検査する第2検査手段と、を備えたことを特徴とする検査装置を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記第2検査手段は、前記紫外光による励起光と前記可視光との混色領域と、潤滑剤の発光領域との色の違いに基づいて潤滑剤の塗布領域を検出し、この検出結果に基づいて、前記第2検査領域における潤滑剤の塗布状態を検査することを特徴とする請求項1記載の検査装置を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記撮像画像における、前記転動体の頂点の座標を認識する座標認識手段を備え、前記認識した転動体の頂点座標に基づいて、前記第1検査領域及び前記第2検査領域のうちの少なくとも一方を特定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の検査装置を提供する。
(4)前記目的を達成するために、請求項4に記載の発明では、可視光を照射する第1光源と、紫外光を照射する第2光源と、カラー画像の撮像手段と、を備えた検査装置において、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪の間に配設される複数の転動体と、前記転動体を分離し、光透過性を有する保持器と、を備えた転がり軸受における蛍光成分を有する潤滑剤の塗布状態を検査する検査方法であって、前記可視光及び前記紫外光をそれぞれ対向方向から検査対象となる転がり軸受に照射した状態で、前記紫外光の照射側から前記検査対象となる転がり軸受のカラー画像を撮像する第1ステップと、前記第1ステップにより撮像した撮像画像から、前記転動体に対する第1検査領域を特定する第2ステップと、前記撮像画像の色情報及び輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記第1検査領域における潤滑剤の付着状態を検査する第3ステップと、前記撮像画像から、前記保持器に対する第2検査領域を特定する第4ステップと、前記撮像画像の色情報に基づいて、前記第2検査領域における潤滑剤の塗布状態を検査する第5ステップと、を有することを特徴とする検査方法を提供する。
(5)前記目的を達成するために、請求項5に記載の発明では、少なくとも、外輪、内輪、複数の転動体、光透過性を有する保持器、を備えた転がり軸受を組み立てる組立装置と、前記組み立てられた転がり軸受の所定の位置に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記潤滑剤が塗布された転がり軸受における潤滑剤の塗布状態を検出する検査装置と、を備えた転がり軸受の製造装置であって、前記検査装置は、請求項1から請求項3のうちのいずれか1の請求項に記載の検査装置であることを特徴とする転がり軸受の製造装置を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記潤滑剤塗布装置は、前記検査装置における検査結果に基づいて、潤滑剤の塗布位置を調整することを特徴とする請求項5記載の転がり軸受の製造装置を提供する。
(7)前記目的を達成するために、請求項7に記載の発明では、少なくとも、外輪、内輪、複数の転動体、光透過性を有する保持器、を備えた転がり軸受を組み立てる第11ステップと、前記組み立てられた転がり軸受の所定の位置に潤滑剤を塗布する第12ステップと、請求項4に記載の検査方法により、前記潤滑剤が塗布された転がり軸受における潤滑剤の塗布状態を検出する第13ステップと、前記第13ステップによる潤滑剤の塗布状態の検出結果に基づいて、潤滑剤の塗布位置を調整する第14ステップと、を備え、前記第12ステップは、前記第14ステップで調整された塗布位置で潤滑剤を塗布することを特徴とする転がり軸受の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光による透過光と、紫外光による励起光とにより映し出されたベアリング像をカラー画像として撮像することにより、一枚の撮像画像において、転動体及び保持器における潤滑剤が存在する部分をそれぞれ特徴的に写し出すことができる。これにより、保持器及び転動体における潤滑剤の状態検査を1回の撮像処理で行うことができるため、検査時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1〜図12を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
ベアリング製造ラインでは、組立工程において、ベアリングを構成する内輪、外輪、ボール及び保持器を組み立てた後に、保持器に設けられた所定の潤滑剤塗布位置に潤滑剤を塗布する。次に、潤滑剤が塗布されたベアリングにおける潤滑剤の塗布状態を検査する。
潤滑剤の塗布状態の検査工程では、保持器における潤滑剤の塗布状態の検査、及びボールにおける潤滑剤の付着状態の検査を行う。
ここでは、パレット上に置かれたベアリングに対して上方から紫外光を照射し、下方(背面側)から赤色の可視光を照射した状態で、パレットの上方からベアリングのカラー画像を撮像する。ここで撮像された1枚のカラー撮像画像には、可視光による透過光と、紫外光による励起光とにより映し出されたベアリング像が写し出される。そして、この撮像されたカラー画像に基づいて潤滑剤の塗布状態の検査を行う。
【0011】
ベアリングに塗布される潤滑剤には、予め蛍光成分を有する添加剤が混ぜられている。そのため、ボール上の潤滑剤は、紫外光を受けて蛍光を発する。そこで、ボールにおける潤滑剤の付着状態(例えば、ボール上の潤滑剤の有無)を、撮像画像における、ボール上の潤滑剤付着領域と非付着領域とを色の違いに基づいて判断する。
保持器は透過性を有する樹脂で構成されているため、保持器における潤滑剤が塗布されていない領域は、紫外光による励起光(青色光)と、赤色の可視光との混色により紫色に映し出される。また、保持器における潤滑剤の塗布されている領域は、赤色の可視光を透過せず、紫外光を受けて蛍光を発するため青色に映し出される。そこで、保持器における潤滑剤の塗布状態(例えば、潤滑剤が多い、少ない、適量、全くなし)を、撮像画像における、保持器上の潤滑剤付着領域と非付着領域との色の違いに基づいて判断する。
本実施形態では、潤滑剤の塗布状態の検査工程の結果に基づいて、ベアリングの良品、不良品を判断するだけでなく、潤滑剤の塗布装置のノズルの位置調整を行う。
【0012】
(2)実施形態の詳細
図1は、ベアリング製造ラインの概略構成を示した図である。
図1に示すように、ベアリング製造ラインは、内輪供給装置41、外輪供給装置42、ボール供給装置43、ボール等配装置44、保持器組込装置45、潤滑剤塗布装置46、潤滑剤検査装置1、潤滑剤不良排出装置47、トルク検査装置48、音響検査装置49、不良排出装置50、良品回収装置51、表示装置52、制御装置60を備えている。
【0013】
また、ベアリング製造ラインにおいて製造されるベアリング2は、搬送パレット17に搭載される。搬送パレット17は、パレット搬送コンベア19によってそれぞれの装置の配置場所まで搬送される。
1つの搬送パレット17には、1つのベアリング2が搭載される。また、各搬送パレット17には、ベアリング2を識別するパレット番号70が付されている。なお、このパレット番号70は、光学的に読み取り可能な状態でシール上に印字され、このシールは各搬送パレット17の所定の部位に貼付される。
また、潤滑剤塗布装置46、潤滑剤検査装置1、潤滑剤不良排出装置47、トルク検査装置48、音響検査装置49、不良排出装置50、良品回収装置51の各装置には、パレット番号70を光学的に読み取る読取装置が設けられている。
【0014】
ここで、本実施形態に係るベアリング製造ラインで製造されるベアリング2について説明する。
図2(a)はベアリング2の概略構成を示した図であり、図2(b)は図2(a)に示すA−A’部における断面を示した図である。
図に示されるように、ベアリング2は、外輪21、内輪22、ボール23、保持器24を備えた転がり軸受である。
外輪21は、内輪22の外側に配設され、内輪22より大きい径を有する金属製の環状の部材であり、その内周面には、周方向に沿ってボール23の軌道を構成する溝が形成されている。
内輪22は、外輪21の内側に配設され、外輪21より小さい径を有する金属製の環状の部材であり、その外側面には、周方向に沿ってボール23の軌道を構成する溝が形成されている。
【0015】
ボール23は、外輪21と内輪22の間に配設される金属製の球状の転動体であり、その一部は、外輪21及び内輪22に形成された軌道を構成する溝に嵌められている。
外輪21と内輪22の間には、複数のボール23が配設されている。
保持器24は、外輪21と内輪22の間に配設された複数のボール23を、互いに接触しないように一定間隔を保たせて配置するための環状の部材であり、可視光を透過する(光透過性を有する)樹脂により形成されている。保持器24の内側面には、周方向に沿ってボール23の軌道を構成する溝が形成されている。
【0016】
図2(c)は、保持器24の概略構成を示した斜視図である。
図に示されるように、保持器24には、ボール23を嵌め込むポケット241、潤滑剤が塗布される潤滑剤溜242が設けられている。
ポケット241は、ボール23を保持するための溝であり、保持器24の周方向に沿って等間隔に設けられている。
潤滑剤溜242は、ボール23の摩擦を低減するための、例えば、グリス(グリース)、潤滑油等の潤滑剤を塗布する部位であり、隣接するポケット241の間に設けられている。
【0017】
本実施形態においてベアリング2に塗布される潤滑剤(グリス)には、紫外光を受けて蛍光を発する、例えばアミン系の酸化防止剤等が予め添加されている。即ち、ベアリング2に塗布される潤滑剤には蛍光成分が含まれている。
潤滑剤に添加される酸化防止剤は、一次酸化防止剤(ラジカル連鎖禁止剤)と二次酸化防止剤(過酸化物分解剤)の2種類の酸化防止剤を用いることにより安定な形になる。
熱や光等でラジカル(遊離基)が発生すると酸素によりパーオキシラジカルが発生する。このパーオキシラジカルを安定なラジカルにするものが一次酸化防止剤であり、フェノール系やアミン系の酸化剤がこれに相当する。この後に発生した過酸化物を分解するものが二次酸化防止剤であり、イオウ系やリン系の酸化剤がこれに相当する。
本実施形態では、フェノール系とアミン系の酸化防止剤が添加された潤滑剤がベアリング2に塗布される。
なお、フェノール系の酸化剤は、着色性が少なく、比較的低い温度で使用される。また、アミン系の酸化剤は酸化防止効果が高く比較的高い温度で使用される。
【0018】
図1の説明に戻り、ベアリング製造ラインに設けられている装置について説明する。
内輪供給装置41、外輪供給装置42、ボール供給装置43は、それぞれベアリング2の構成部材である、内輪22(図2参照)、外輪21、ボール23を搬送パレット17上に供給する装置である。
なお、本実施形態では、ベアリング2を組み立てる際に偏心組立法を用いている。この偏心組立法とは、外輪21を内輪22の外側に偏心して置き、ボール23を外から順次軌道溝に入れた後、内輪22を偏心の位置から同心の位置まで移動させることによってボール23を組み込む方法である。
ボール等配装置44は、内輪22と外輪21との間に供給されたボール23を等間隔に配置(配列)する装置である。ボール等配装置44では、例えば、ボール23の間隔と対応する位置に櫛歯がセットされた位置決め用の治具が用いられている。
保持器組込装置45は、内輪22と外輪21との間に保持器24を組み込む装置である。
【0019】
潤滑剤塗布装置46は、保持器24の潤滑剤溜242に潤滑剤を塗布する装置である。潤滑剤塗布装置46には、潤滑剤を塗布するノズルが複数設けられており、潤滑剤溜242に同時に潤滑剤を塗布することができるように構成されている。
潤滑剤塗布装置46は、ノズルの開口時間、即ち、塗布時間や注入圧力(押圧力)を調節することによって塗布する潤滑剤の量を制御する。
潤滑剤を塗布する複数のノズルは、潤滑剤溜242の形成部位に対応して、円周方向に沿って配列固定されている。従って、本実施形態では、塗布位置の回転方向のずれ、また、中心位置のずれに対する位置補正制御を行うことができる。
なお、潤滑剤を塗布する際のノズルの位置は、ボール等配装置44又は保持器組込装置45によって特定されるボール23の絶対位置情報に基づいて設定される。
【0020】
潤滑剤検査装置1は、潤滑剤溜242に塗布された潤滑剤の塗布状態を検査する、即ち、適量の潤滑剤が適切な位置に塗布されているか否かを判断する装置である。なお、潤滑剤検査装置1の詳細については後述する。
潤滑剤不良排出装置47は、潤滑剤検査装置1の検査により潤滑剤の塗布状態が不良であると判断されたベアリング2を搬送パレット17ごと所定の不良排出エリアに排出する装置である。
この潤滑剤不良排出装置47によって排出されたベアリング2は、潤滑剤の塗布状態の検査結果に基づいて処理が決定される。例えば、潤滑剤が未塗布である場合には、再度、潤滑剤塗布装置46へ投入され、その他の不良である場合には、オフライン修正、即ち、作業者による手修正(マニュアル修正)が施される。
【0021】
トルク検査装置48は、ベアリング2の回転トルクを測定する装置である。トルク検査装置48では、測定結果が所定のトルク値の範囲内である場合に良品であると判断し、測定結果が範囲外である場合にはトルク不良であると判断する。
音響検査装置49は、ベアリング2の回転時における静かさを判断する検査装置である。音響検査装置49では、軌道溝の研磨の状態を高速回転により起こるノイズのレベルに基づいて判断し、ノイズレベルが所定の閾値を超えるものを不良と判断する。
不良排出装置50は、トルク検査装置48又は音響検査装置49の検査により不良であると判断されたベアリング2を搬送パレット17ごと所定の不良排出エリアに排出する装置である。
【0022】
良品回収装置51は、トルク検査装置48及び音響検査装置49の検査に合格した、良品と判断されたベアリング2を搬送パレット17ごと所定の良品回収エリアに格納する装置である。
表示装置52は、潤滑剤塗布装置46の近傍に配設された、潤滑剤塗布装置46の動作処理に関する表示を行う装置であり、赤・黄・緑の三色の表示灯と、情報を表示する表示器を備えている。表示装置52では、潤滑剤の塗布不良が発生した場合には、発生条件に応じて黄色又は赤色の表示灯が点灯され、通常時には緑色の表示灯が点灯される。
制御装置60は、ベアリング製造ラインに設けられた各種装置及びパレット搬送コンベア19の動作管理を行う装置であり、入力、記憶、演算、制御、出力の機能を有するコンピュータによって構成されている。なお、制御装置60の記憶部には、組立、潤滑剤の塗布、検査等の一連の処理の手順を示したプログラムが格納されており、制御装置60のCPUは、このプログラムを実行する。
【0023】
次に、以上の通り構成されたベアリング製造ラインにおける、ベアリング2の製造処理について説明する。
図3は、ベアリング製造ラインにおけるベアリング2の製造処理の手順を示したフローチャートである。
まず、ベアリング製造ラインでは、内輪供給装置41、外輪供給装置42、ボール供給装置43、ボール等配装置44、保持器組込装置45によって、ベアリング2を構成する部材の組立処理が行われる(ステップ11)。
詳しくは、パレット搬送コンベア19によって搬送される、パレット番号70が貼付された搬送パレット17に、内輪供給装置41が内輪22を搭載する。続いて、外輪供給装置42が、外輪21を内輪22の外側に偏心して配置する。そして、ボール供給装置43が、ボール23を外輪21と内輪22の間に供給する。
ボール23を供給し終えた後、ボール供給装置43は、内輪22を偏心の位置から同心の位置まで移動させる。そして、ボール等配装置44が、内輪22と外輪21との間に供給されたボール23を等間隔に配置した後、保持器組込装置45によって内輪22と外輪21との間に保持器24が組み込まれる。
【0024】
次に、組み立てられたベアリング2は、パレット搬送コンベア19によって潤滑剤塗布装置46まで搬送される。そして、潤滑剤塗布装置46によって、ベアリング2の保持器24における潤滑剤溜242に潤滑剤を塗布する処理が行われる(ステップ12)。
なお、潤滑剤塗布装置46では、潤滑剤を塗布する前(又は、後)に、読取装置によってパレット番号70を読み取る。そして、読み取ったパレット番号70と、該パレット番号70が貼付された搬送パレット17に搭載されているベアリング2における、潤滑剤の塗布条件情報と、を対応付けて制御装置60へ送信する。潤滑剤の塗布条件情報としては、例えば、潤滑剤のノズルの開口時間、ノズルの位置情報、押圧値(注入圧力値)などがある。
制御装置60では、潤滑剤塗布装置46から送信されたデータを受信し、所定の記憶エリアに格納する。
【0025】
潤滑剤の塗布処理が施されたベアリング2は、パレット搬送コンベア19によって潤滑剤検査装置1まで搬送される。そして、潤滑剤検査装置1によって、ベアリング2における潤滑剤の塗布状態を検査する処理が行われる(ステップ13)。ここで行われる潤滑剤の塗布状態の検査処理の詳細については後述する。
なお、潤滑剤検査装置1では、検査処理の前(又は、後)に、読取装置によってパレット番号70を読み取る。そして、読み取ったパレット番号70と、該パレット番号70が貼付された搬送パレット17に搭載されているベアリング2の検査結果と、を対応付けて制御装置60へ送信する。
【0026】
制御装置60は、潤滑剤検査装置1から送信された検査結果を受信し、所定の記憶エリアに格納する。
続いて、制御装置60は潤滑剤検査装置1の検査結果に基づいて、該パレット番号70の搬送パレット17に搭載されているベアリング2が潤滑剤の塗布状態の検査に合格したか否か、即ち、OKの判定がされたか否かを判断する(ステップ14)。
潤滑剤の塗布状態の検査に合格している場合(ステップ14;Y)、該パレット番号70が貼付された搬送パレット17は、トルク検査装置48まで搬送される。この場合、該搬送パレット17は、潤滑剤不良排出装置47による排出対象とはならない。
そして、引き続きトルク検査装置48及び音響検査装置49による検査が行われる(ステップ15)。
トルク検査装置48及び音響検査装置49では、各検査処理の前(又は、後)に、読取装置によってパレット番号70を読み取る。そして、読み取ったパレット番号70と、該パレット番号70が貼付された搬送パレット17に搭載されているベアリング2の検査結果と、を対応付けて制御装置60へ送信する。
制御装置60では、トルク検査装置48及び音響検査装置49から送信されたデータを受信し、所定の記憶エリアに格納する。
【0027】
続いて、制御装置60はトルク検査装置48及び音響検査装置49の検査結果に基づいて、該パレット番号70の搬送パレット17に搭載されているベアリング2が両検査に合格したか否か、即ち、OKの判定がされたか否かを判断する(ステップ16)。
トルク及び音響の両検査に合格している場合(ステップ16;Y)、該パレット番号70が貼付された搬送パレット17は、良品回収装置51まで搬送され、良品回収装置51によって所定の格納エリアに回収され(ステップ17)、処理を終了する。この場合、該搬送パレット17は、不良排出装置50による排出対象とはならない。
また、トルク及び音響の両検査に合格していない場合(ステップ16;N)、該パレット番号70が貼付された搬送パレット17は、不良排出装置50まで搬送され、不良排出装置50によって所定の不良排出エリアに回収され(ステップ18)、処理を終了する。
【0028】
一方、ステップ14の処理において、潤滑剤の塗布状態の検査に合格していない場合(ステップ14;N)、制御装置60は、潤滑剤検査装置1から送信された検査結果に基づいて、潤滑剤塗布装置46のフィードバック制御を行う(ステップ19)。なお、この潤滑剤塗布装置46のフィードバック制御の詳細については後述する。
潤滑剤の塗布状態の検査に合格していないベアリング2、つまり、不良(NG)と判断されたベアリング2が搭載された搬送パレット17は、潤滑剤不良排出装置47まで搬送される。そして、潤滑剤不良排出装置47によって所定の不良排出エリアに排出され(ステップ20)、処理が終了する。
【0029】
また、ベアリング製造ラインにおいてシールド板を組み込むタイプのベアリングを製造する場合には、さらにシールド板組込装置を設け、潤滑剤検査装置1における検査が終了した後、この検査に合格したベアリング2にシールド板を組み込む。つまり、ベアリング製造ラインでは、シールド板を組み込んだ後にトルク検査及び音響検査を施す。
なお、シールド板とは、ベアリング2の外部への潤滑剤の漏れや、ベアリングの内部への粉塵の流入を防止するために、軌道領域を覆うように配置された円環状のカバー部材である。
【0030】
次に、潤滑剤検査装置1について詳細に説明する。
図4は、潤滑剤検査装置1の概略構成を示した図である。
図4に示すように、潤滑剤検査装置1は、カメラ11、レンズ12、シャープカットフィルタ13、遮光フード14、バック照明15、紫外光照明16を備えている。
そして、パレット搬送コンベア19によって搬送される搬送パレット17に検査対象となる供試体(サンプル)であるベアリング2が置かれている。
搬送パレット17は、少なくともベアリング2が配置される領域が、光を透過する素材で形成されているか、あるいは光を透過する構造となっている。
ベアリング2は、例えば、ハードディスク等で用いられる径が10〜5mm程度の小型の転がり軸受である。
【0031】
また、潤滑剤検査装置1には、カメラ11で撮像されたベアリング2の撮像画像を処理する画像処理装置30が設けられている。
画像処理装置30は、例えば、入力、記憶、演算、制御、出力の機能を有するPC(パーソナルコンピュータ)によって構成され、ベアリング2における潤滑剤の塗布状態を検査するための画像解析プログラムや、検査の合否を判定する判定プログラムが格納されている。
【0032】
カメラ11は、写真を撮影する光学機械であり、本実施の形態に係る潤滑剤検査装置1では、映像をデジタル化して記録するカラーデジタルカメラであり、本実施形態では、CCDカメラで構成されている。なお、カメラ11で撮像されたカラー画像は、画像処理装置30に転送される。なお、カメラ11は、撮像手段として機能する。
レンズ12は、カメラ11に取り付けられており、カメラ11の焦点(ピント)を調節する機能を有する。なお、本実施形態では、このレンズ12は、青色の像にピントが合うように調整されている。レンズ12は、ワークから115mmの位置に配置されている。
なお、本実施形態では、カメラ11による近接撮影を可能にするために、カメラ11とレンズ12の間に接写リング(5mm)が装着されている。
シャープカットフィルタ13は、特定の波長の光だけを除去する特殊透過フィルタであり、ノイズカットフィルタとして機能する。
【0033】
遮光フード14は、外来光の映り込みなどの外光反射を遮るための覆いであり、例えば、遮光板や遮光幕(暗幕)で構成されている。遮光フード14は、カメラ11、レンズ12、シャープカットフィルタ13、紫外光照明16及びバック照明15を十分に覆うように配設されている。
バック照明15は、波長が650nm程度の赤色光(可視光)を放つ発光ダイオードで構成されたフラット照明であり、可視光を照射する可視光源として機能する。バック照明15は、平面基板に敷き詰めたチップ形状のLED(発光ダイオード)からの光を拡散板に透過させる構造を有し、検査対象となるベアリング2を後ろからシルエットで透過する。なお、本実施形態では、バック照明15として赤色光を用いているが、ベアリング2を照射する可視光の色は、これに限定されるものではなく、紫外光の励起光の発色と区別が可能な色種(例えば、緑色)であればよい。
【0034】
紫外光照明16は、紫外(UV)光を放つ発光ダイオードであり、紫外光を照射する紫外光源として機能する。
紫外光照明16は、円環状(リング状)に配置された複数のLEDによって構成され、各LEDの焦点がベアリング2に合わせられている。
紫外光は弱い光であるため、本実施形態では、紫外光照明16をより照射対象であるベアリング2(ワーク)に近い位置に配置している。具体的には、紫外光照明16は、ワークから80mmの位置に配置されている。
また、本実施形態では、紫外光による励起光が弱い光であることを考慮して、バック照明15と紫外光照明16の出力比率(明るさ比率)を、例えば、1:10程度に設定する。
【0035】
本実施の形態では、バック照明15や紫外光照明16の光源を、LED(発光ダイオード)で構成することにより、光源の長寿命化を図ることができる。また、光源にLEDを用いることにより、赤外線を放射することなく目的の光線を照射させることができるため、シャープな撮像画像を得ることができる。
搬送パレット17は、検査対象となる供試体(サンプル)であるベアリング2を置くための搭載台である。搬送パレット17はその側端部が、パレット搬送コンベア19を構成する2本のベルトに支持されている。そして、搬送パレット17は、少なくともベアリング2が配置される領域が、光を透過する素材で形成されているか、あるいは光を透過する構造となっている。
なお、本実施形態では、ベアリング2が小型であるため、上述した測定系における照明検査における視野は10mm角程度とする。
【0036】
次に、本実施の形態に係る潤滑剤検査装置1によるベアリング2に塗布された潤滑剤の塗布状態を検査する方法について説明する。
潤滑剤検査装置1では、撮像されたベアリング2のカラー画像に基づいて、保持器24における潤滑剤の塗布状態、及びボール23における潤滑剤の塗布状態(付着状態)を検査する。
図5は、潤滑剤検査装置1における潤滑剤の塗布状態を検査する処理の手順を示したフローチャートである。
【0037】
まず、潤滑剤検査装置1は、検査対象となる供試体(サンプル)であるベアリング2を搭載した搬送パレット17を、カメラ11による撮像可能領域にまで移動させて固定する(ステップ31)。
潤滑剤検査装置1は、バック照明15及び紫外光照明16を点灯し、両光源からの光線をベアリング2に照射する(ステップ32)。
すると、バック照明15から照射された赤色光(可視光)のうちベアリング2を透過した透過像、及び、紫外光照明16から照射された紫外光があたった部分に発生する励起光による像が映し出される。
潤滑剤検査装置1は、このバック照明15及び紫外光照明16を照射した状態におけるベアリング2の画像を、カメラ11で撮像(撮影)する(ステップ33)。
ここでは、シャッタースピード(速度):1/30秒で撮像(撮影)する。また、本実施形態では、紫外光の励起光領域(青色発光領域)にピントを合わせて撮像を行う。
ここで撮像された一枚のカラー画像撮像画像には、バック照明15(可視光)による透過光と、紫外光照明16(紫外光)による励起光とにより映し出されたベアリング像が写し出される。
撮像処理が終了した後、潤滑剤検査装置1は、バック照明15及び紫外光照明16を消灯する(ステップ34)。
【0038】
カメラ11で撮像されたベアリング2の画像(撮像画像)は、画像処理装置30へ転送される。そして、画像処理装置30では、このベアリング2の撮像画像に基づいて、潤滑剤の塗布状態を判定する。
ここで、カメラ11で撮像されたベアリング2の撮像画像について説明する。
図6は、撮像画像の一例を示した図である。
ボール23は、透過性を有さない金属部材から構成されているため、バック照明15からの可視光を透過しない。また、ボール23の表面は球体であるため、紫外光及び紫外光の励起光も乱反射する。そのため、撮像画像におけるボール23の領域は、その大部分が黒く映し出される。
但し、図6に示すように、紫外光照明16から照射された光線が正反射する部分、即ち、ボール23の表面の中心部分は極めて明度(輝度)が高いため白っぽく映し出される。
【0039】
外輪21及び内輪22もまた、透過性を有さない金属部材から構成されているため、バック照明15からの可視光を透過しない。そのため、外輪21及び内輪22の領域は、紫外光があたり青白色に映し出される。
保持器24における潤滑剤溜242の領域は、紫外光照明16(紫外光)による励起光(青色光)と、バック照明15(赤色光)との混色により、紫色に映し出される。但し、紫色に映し出されるのは、潤滑剤溜242における潤滑剤の塗布されていない領域に限られる。
潤滑剤の塗布されている領域(以下、潤滑剤領域243とする)は、バック照明15からの可視光を透過せず、潤滑剤に含まれている成分が紫外光を受けて蛍光を発するため青色に映し出される。
【0040】
保持器24におけるポケット241(図2(c)参照)を形成する部分、即ち、保持器24におけるボール23の近傍は、青色に映し出される。これは、バック照明15の光線の透過方向における厚みが大きいため、バック照明15(赤色光)より紫外光照明16(紫外光)による励起光(青色光)が強く映し出されるためである。
ベアリング2の構成部材(外輪21、内輪22、ボール23、保持器24)が存在しない領域(バックグラウンド)は、バック照明15により赤色に映し出される。
【0041】
図5のフローチャートの説明に戻り、画像処理装置30は、図6に示したような撮像画像におけるサンプル(ベアリング2)の位置を認識するために、撮像画像におけるボール23の位置を検出する(ステップ35)。
ここで、撮像画像におけるベアリング2の位置の認識方法について説明する。
まず画像処理装置30は、図6における外輪21及び内輪22の青色領域を抽出するように色の抽出を行う。ここでは、ボール23や保持器24の部分を認識しないように抽出する色の調整を行い、ワーク(ベアリング2)の位置を認識する。そして、撮像画像上におけるベアリング2の絶対位置を認識する。
【0042】
続いて、画像処理装置30は、処理効率を上げるために、カラー画像をグレー画像に色変換する。そして、先に認識したベアリング2の絶対位置(XY座標)の情報に基づいて、ボール23が存在する外輪21と内輪22との間の領域を抽出する。
さらに、画像処理装置30は、抽出した領域において、ボール23の位置を検出しやすくするために、ボール23の頂点部が明るくなるように、明度(輝度)を調整する。なお、本実施形態では、カラー画像をグレー画像に色変換しているため、明度を調整(指定)することでボール23の頂点部を強調表示させることができる。但し、グレー画像変換処理を行わずにカラー画像から直接ボール23の位置を検出する場合には、ボール23の頂点部が明るくなるように、明度だけでなく色情報の彩度・色相も調整(指定)する。
【0043】
また、ボール23の頂点部を検出できる状態に明度を調整した段階で、ボール23の位置を認識することが可能である。しかしながら本実施形態では、ボール23の検出位置の誤差を抑制(低減)させるために、即ち、ボール23の位置の検出精度を向上させるために、さらにボール23の頂点画像の補整処理を行う。
なお、本実施形態では、ボール23の位置(座標)の検出処理は、粒子解析(ブロブ)処理に基づいて行う。
具体的には、ボール23の頂点部分において、色情報(明度等)の平均化処理を行った後に、所定の閾値に基づいて2値化処理を行う。その後、2値画像の小さな雑音を取り除くために、画像の膨張と収縮を行う。
膨張とは、画素を1層分太くする処理を示し、収縮とは、画素を1層分細くする処理を示す。膨張によって小さな孔や溝が除かれ、収縮によって、孤立点や突起が除かれる。
本実施形態では、ボール23の頂点が丸くなるように、膨張処理を3回、収縮処理を1回行う。なお、膨張と収縮の回数は、撮像画像や測定環境に応じて任意に変更することができる。
このような画像処理が施された状態において、全てのボール23の頂点(白円の中心)のXY座標を求める(検出する)。ここで求められたXY座標をボール23の位置情報として記憶(特定)する。
【0044】
なお、撮像画像におけるボール23の位置の検出(認識)方法は、上述したものに限定されるものではない。
例えば、予め設定されているベアリング2の基準画像(デフォルト画像)と撮像画像とのズレ量に基づいて、ボール23の位置の検出を行うようにしてもよい。
詳しくは、図6における外輪21及び内輪22の青色領域を抽出するように色の抽出を行い、ワーク(ベアリング2)の位置を検出する。そして、この検出結果に基づいて、XY方向における基準画像とのズレ量を検出。さらに、ボール23の頂点部を検出できる状態に明度等を調整してボール23の頂点部の座標を検出し、この検出結果に基づいてθ方向(回転角)における基準画像とのズレ量(ズレ角)を検出する。
このように、撮像画像におけるXY方向及びθ方向における基準画像からのズレ量に基づいて、ボール23の位置、即ち、ベアリング2の設置状態を認識するようにしてもよい。つまり、ボール23をモデルにした正規化相関法を用いて撮像画像におけるボール23の位置検出を行うようにしてもよい。
そして、基準画像からのズレ量に基づいて撮像画像の位置補正を行い、後述する第1検査領域や第2検査領域の特定をするようにしてもよい。
【0045】
図5のフローチャートの説明に戻り、画像処理装置30は、撮像画像におけるボール23の位置を検出した後、まず、ボール23における潤滑剤領域243の検査処理を行う。
次に、画像処理装置30は、補正処理が施された撮像画像から第1検査領域を特定する(ステップ36)。この第1検査領域は、ボール23の位置情報に基づいて特定する。
本実施形態では、第1検査領域として、ボール23の領域が設定されている。なお、照射光の正反射により白く映し出されるボール23の表面の中心部分を、予め第1検査領域から外しておくようにしてもよい。
【0046】
ここでは、任意の領域を第1検査領域として設定することができる。例えば、ボール23の中心からボール23の半径Rの範囲を第1検査領域として設定するようにしてもよい。
但し、ボール23の半径Rに基づいて第1検査領域を設定した場合には、この半径Rの領域に外輪21や内輪22、保持器24の一部の画像領域が含まれてしまう。
そのため、この半径Rの領域に含まれるボール23の画像領域でない領域の面積を予め基準画像に基づいて算出し、最終的に潤滑剤の塗布状態(塗布量)を判断(算出)する際に、ボール23の画像領域でない領域を判断対象領域から除くようにする。
これにより、詳細なボール23における潤滑剤の塗布状態の検査処理を行うことができる。
【0047】
続いて、画像処理装置30は、特定された第1検査領域における潤滑剤領域243の抽出処理を行う(ステップ37)。
詳しくは、画像処理装置30は、第1検査領域、又は第1検査領域を含む領域に対して青色領域が白色、黒色領域が黒色に変換されるように、撮像画像の各画素の明度・彩度・色相の調整、及び2値化処理を行う。
本実施形態では、紫色領域及び赤色領域も白色に変換され、ボール23の潤滑剤が付着していない領域のみが黒色に変換されるように構成されている。
また、本実施形態では、第1検査領域における潤滑剤領域243の抽出処理を行う際にも、2値画像の小さな雑音を取り除くために、画像の膨張と収縮を行う。具体的には、膨張及び収縮処理をそれぞれ1回ずつ施す。なお、膨張と収縮の回数は、撮像画像や測定環境に応じて任意に変更することができる。
【0048】
ここで、画像処理装置30において行われる第1検査領域における潤滑剤領域243の抽出処理の具体例について説明する。
ここでは、図7(a)に示すように、ボール23上に潤滑剤領域243が存在する場合について説明する。
図7(b)は、撮像画像の一例を示した図である。
図7(b)に示すように、潤滑剤領域243は、紫外光にあたり蛍光を発しているため青色に写し出される。
そして、撮像画像に対して、画像の黒色領域のみを黒色のまま残し、少なくとも潤滑剤領域243が白色に変換されるように色調整及び2値化処理を施すことにより、図7(b)に示す撮像画像は、図7(c)に示す2値化画像に変換される。
【0049】
次に、画像処理装置30は、2値化された画像における特定されたボール23上の第1検査領域から、白領域、即ち、潤滑剤領域243を抽出する。例えば、図7(c)に示すような2値化画像から第1検査領域における白色の領域を抽出し、その面積を算出する。
そして、画像処理装置30は、抽出された白領域(潤滑剤領域243)の面積値と、特定された第1検査領域の面積値とを比較する。なお、特定された第1検査領域を、図7(c)の破線部に示す。
白色領域の抽出処理は、画像の輝度(明度)情報に基づいて行うことができる。詳しくは、予め設定されている白色領域の抽出用の閾値にを用いて、該閾値より輝度の高い領域を白色領域として抽出する。
【0050】
図7(c)に示されるように、照射光の正反射により白く映し出されるボール23の表面の中心部分が検査領域に含まれる場合には、抽出された白領域の面積値から、白く映し出されるボール23の表面の中心部分の面積の減算処理を施し、減算された白領域の面積値と、特定された検査領域との面積値を比較する。即ち、潤滑剤の塗布領域を示す可能性の高い白領域を抽出して比較処理を行う。
なお、潤滑剤の塗布領域を示す領域の抽出方法は、2値化画像から輝度情報に基づいて白色領域を抽出する方法に限定されるものではない。例えば、2値化処理を行わずに、直接撮像画像から色情報に基づいて、潤滑剤の塗布領域を示す青色領域を抽出するようにしてもよい。
【0051】
図5のフローチャートの説明に戻り、画像処理装置30は、特定された第1検査領域(破線部領域)に対する白領域(潤滑剤領域243)の割合を算出し、算出された結果と、予め設定されている適正基準範囲とを比較し、この比較結果に基づいて潤滑剤の付着判定を行う(ステップ38)。なお、潤滑剤の付着判定処理は、全てのボール23における第1検査領域に対して行う。
画像処理装置30は、算出された結果が適正基準範囲内である場合には、ボール23における潤滑剤領域243の存在範囲が良好であると判定し、一方、算出された結果が適正基準範囲外である場合には、ボール23における潤滑剤領域243の存在範囲が不良であると判定する。
なお、ボール23に潤滑剤が付着(接触)しているか否かのみを判定する場合には、特定された第1検査領域(破線部領域)から、白領域(潤滑剤領域243)が検出されたか否かのみを判断するようにする。
【0052】
画像処理装置30は、ボール23における潤滑剤領域243の検査処理が終了した後、続いて、保持器24における潤滑剤領域243の検査処理を行う。
画像処理装置30は、補正処理が施された撮像画像から第2検査領域を特定する(ステップ39)。
本実施形態では、第2検査領域として、保持器24の潤滑剤溜242の領域が設定されている。この第2検査領域は、ボール23の位置情報に基づいて特定することができる。
【0053】
ここでは、任意の領域を第2検査領域として設定することができる。例えば、保持器24における潤滑剤溜242の中心から半径rの範囲を検査領域として設定するようにしてもよい。
但し、この半径rの領域が保持器24の外部へ渡る場合には、この領域に含まれる保持器24でない領域(外輪21、内輪22、ボール23、隙間)の面積を予め基準画像に基づいて算出しておく。そして、最終的に潤滑剤の塗布状態(塗布量)を判断(算出)する際に、保持器24でない領域を判断対象領域から除くようにする。これにより、適切な保持器24における潤滑剤の塗布状態の検査処理を行うことができる。
【0054】
続いて、画像処理装置30は、特定された第2検査領域における潤滑剤領域243の抽出処理を行う(ステップ40)。
詳しくは、画像処理装置30は、第2検査領域、又は第2検査領域を含む領域に対して、黒色領域及び紫色領域が黒色、青色領域及び赤色領域が白色に変換されるように、撮像画像の各画素の明度・彩度・色相の調整、及び2値化処理を行う。
本実施形態では、保持器24における紫色領域(混色領域)が黒色に変換され、保持器24における潤滑剤領域243が白色に変換されるように構成されている。即ち、潤滑剤領域243のみが抽出されるように色情報の彩度・明度・色相が調整(指定)される。
【0055】
次に、画像処理装置30において行われる第2検査領域における潤滑剤領域243の抽出処理の具体例について説明する。
ここでは、図8(a)に示すように、少量の潤滑剤が塗布されている場合と、図9(a)に示すように適量の潤滑剤が塗布されている場合について説明する。
図8(b)は、少量の潤滑剤が塗布されている場合における撮像画像の一例を示した図である。
図9(b)は、適量の潤滑剤が塗布されている場合における撮像画像の一例を示した図である。
図8(b)、図9(b)に示すように、保持器24における潤滑剤の塗布されている領域は、紫外光を受けて蛍光を発して青色に映し出され、保持器24における潤滑剤が塗布されていない領域は、紫外光による励起光と、バック照明15(赤色光)との混色により、紫色に映し出される。
【0056】
そして、撮像画像に対して、紫色領域が黒色に、潤滑剤領域243が白色に変換されるように色調整及び2値化処理を施すことにより、図8(b)、図9(b)に示す撮像画像は、それぞれ図8(c)、図9(c)に示す2値化画像に変換される。なお、特定された第2検査領域を、図8(c)、図9(c)の破線部に示す。
画像処理装置30は、2値化された画像における特定された保持器24上の第2検査領域から、白領域、即ち、潤滑剤領域243を抽出する。例えば、図8(c)、図9(c)に示すような2値化画像から第2検査領域における白色の領域を抽出し、その面積を算出する。
【0057】
図5のフローチャートの説明に戻り、画像処理装置30は、抽出された白領域(潤滑剤領域243)の面積値と第2検査領域の面積値とを比較し、この比較結果に基づいて潤滑剤の塗布状態の判定を行う(ステップ41)。なお、潤滑剤の塗布状態の判定処理は、全ての潤滑剤溜242における第2検査領域に対して行う。
そして、画像処理装置30は、第2検査領域(破線部領域)に対する黒領域(潤滑剤領域243)の割合を算出し、算出された結果と、予め設定されている適正基準範囲とを比較する。
【0058】
画像処理装置30は、例えば、図9(c)に示すように、算出された結果が適正基準範囲内である場合には、保持器24における潤滑剤の塗布状態が良好であると判断し、一方、図8(c)に示すように、算出された結果が適正基準範囲外である場合には、保持器24における潤滑剤の塗布状態が不良であると判断する。
画像処理装置30は、算出された結果が適正基準範囲の上限よりも大きい場合には、保持器24における潤滑剤の塗布状態が過多(過剰)であると判断し、算出された結果が適正基準範囲の下限よりも小さい場合には、保持器24における潤滑剤の塗布状態が過少であると判断する。
そして、潤滑剤検査装置1は、潤滑剤の塗布状態の判定が終了した後、搬送パレット17を次工程の潤滑剤不良排出装置47(図1)に移動し(ステップ42)、1つのベアリング2に対する潤滑剤検査処理を終了する。
【0059】
潤滑剤検査装置1では、上述した検査工程を施すことによりベアリング2における潤滑剤の塗布状態を適切に検査(判断)することができる。
本実施の形態では、1度の撮像処理、即ち1つのカラー撮像画像に基づいて、ボール23への潤滑剤の接触の付着量(又は、潤滑剤の付着の有無)を検出し、保持器24(潤滑剤溜242)における潤滑剤の塗布状態(例えば、多い、少ない、適量、全くなし)を検出することができる。
【0060】
本実施の形態によれば、カラー撮像画像を用いることにより、紫外光による励起光とバック照明15(赤色光)との混色領域と、紫外光を受けて蛍光を発する領域との色の違いに基づいて、保持器24における潤滑剤領域243と潤滑剤が存在しない領域とを区別することが容易にできるため、保持器24における潤滑剤の塗布状態を容易に検査することができる。さらに、別の撮像画像(撮像処理)を伴うことなく、ボール23における潤滑剤の付着状況を判断することができる。
つまり、本実施の形態によれば、撮像画像の色情報を利用することにより、即ち、簡単な色抽出の設定を行うだけで、ボール23及び保持器24の両方の部位における潤滑剤の塗布(付着)状況の検出が1度の撮像処理で可能となる。これにより、特許文献2に記載されている2度の撮像処理を伴っていた従来の検査方法と比較して、検査時間の短縮化、即ち作業効率の向上を図ることができる。
また、従来のように供試体(ベアリング2)から見て同一方向に2種類の光源を配置する構造と比較して、反射板等を取り付ける機構が不要となるだけでなく、小型の光源を用いることができるため、潤滑剤検査装置1の小型化を図ることができる。
【0061】
また、検査領域を詳細に特定することにより、より詳しい潤滑剤の塗布状態を検査することができる。例えば、潤滑剤の塗布量、塗布位置の検査を注入箇所ごとに実行する。
光源にLEDを利用することにより、経時劣化による光量調節や電球交換がなくなり、光量に関する保守が不要になる。さらに、画像処理装置30における各パラメータ(例えば、基準画像データやしきい値等)や光源における照明の光量等をデータ化することにより、保存・復元が容易に可能となり、万一の画像処理装置30や照明の故障などにおけるメンテナンス性を向上させることができる。
潤滑剤の塗布方法(方式)が異なる製品への対応が、画像処理装置30における各パラメータ(例えば、基準画像データやしきい値等)や光源における照明の光量等を変更するだけでできる。
【0062】
なお、上述した本実施形態では、ベアリング2の背面に配置されたバック照明15から可視光を照射し、ベアリング2の上方に配置された紫外光照明16から紫外光を照射するように構成されている。しかしながら、潤滑剤検査装置1における紫外光及び可視光を照射する光源の配設方法は、これに限定されるものではない。可視光及び紫外光の光源は、検査対象となるベアリング2に対してそれぞれ対向方向から光線を照射可能な位置に配設されていればよい。
例えば、反射光がベアリング2に照射されるように構成された反射板をベアリング2の背面に配設し、この反射板を介してベアリング2の背面から可視光を照射するように構成してもよい。このような反射板を利用した場合には、可視光の光源を紫外光の光源に配設することも、また、ベアリング2の外側の領域に配設することもできる。但し、光源から照射された可視光の一部でも直接ベアリング2に照射されると、その反射光の影響が撮像画像に現れてしまう。そのため、この場合には、反射板を介して背面からのみ可視光がベアリング2に照射されるように、即ち、紫外光と同じ方向から可視光がベアリング2に照射されないように、必要に応じて遮光構造(遮光板や遮光幕など)を設けるようにする。
【0063】
図10は、潤滑剤検査装置1における検査結果のデータの一例を示した図である。
図10に示すように、潤滑剤検査装置1における検査結果として、例えば、塗布位置1〜Nや非塗布位置1〜Nにおいて検出された潤滑剤の塗布領域の面積値、検出された回転方向の角度(回転方向検出)、判定結果、NG判定の要因及び判定条件などが制御装置60へ送信される。
なお、本実施形態では、潤滑剤検査装置1の画像処理装置30において、判定結果及びNG判定の要因が特定されているが、これらの項目を検査結果に基づいて制御装置60において特定してもよい。制御装置60において特定処理を行うことにより、画像処理装置30の負荷を軽減させることができる。
図10に示す例では、それぞれの塗布位置1〜Nにおける潤滑剤の塗布領域の面積値が40〜50の範囲であり、かつ、それぞれの非塗布位置1〜Nにおける潤滑剤の塗布領域の面積値が0を超えない場合に、良品(OK)であると判断されている。
なお、塗布位置1〜Nとは、図8(c)の破線部で示す保持器24における第2検査領域を示し、非塗布位置1〜Nとは、図7(c)の破線部で示すボール23における第1検査領域を示す。
【0064】
図10に示すように、本実施形態では、塗布位置1〜N及び非塗布位置1〜Nのいずれにも潤滑剤の塗布領域が検出されない場合、「潤滑剤なし」のため不良(NG)であると判断する。また、塗布位置1〜Nの潤滑剤の塗布領域が40に満たない場合、「潤滑剤少ない」ため不良(NG)であると判断し、塗布位置1〜Nの潤滑剤の塗布領域が50を超える場合、「潤滑剤多い」ため不良(NG)であると判断する。
その他、塗布位置1〜Nの全ての潤滑剤の塗布領域が著しく小さく、非塗布位置1〜Nにおいて潤滑剤の塗布領域が検出された場合、「位置ずれ」のため不良(NG)であると判断する。なお、この「位置ずれ」とは、潤滑剤塗布装置46におけるノズルの回転位置ずれを示す。
また、それぞれの塗布位置1〜Nにおける潤滑剤の塗布領域の面積値が40〜50の範囲であり、かつ、非塗布位置1〜Nのいずれかにおいて潤滑剤の塗布領域の面積値が0を超える場合、「はみ出し」のため不良(NG)であると判断する。なお、この「はみ出し」とは、潤滑剤塗布装置46における潤滑剤の塗布時間内にパレット搬送コンベア19による搬送パレット17の移動が開始された場合に生じる液だれ現象に起因するものである。
【0065】
次に、図3のフローチャートにおけるステップ19の処理で行われる潤滑剤塗布装置46のフィードバック制御の詳細について説明する。
図11は、潤滑剤の塗布状態の検査に合格していない場合における潤滑剤塗布装置46へのフィードバック制御の指示内容を示した図である。
図11に示すように、例えば、「潤滑剤なし」のため不良(NG)と判断され、現在までに「潤滑剤なし」が検出された回数が所定回数(n回)未満である場合、制御装置60は、塗布時間を所定時間だけ長く設定し、塗布圧力(注入ノズルに加える圧力)を所定値だけ上げる指示を潤滑剤塗布装置46へ出す。なお、ここで示す回数とは、潤滑剤塗布装置46の起動後、又は潤滑剤塗布装置46の復帰後からのカウント数を示す。
【0066】
図11に示すように、「潤滑剤少ない」により不良(NG)と判断され、現在までに「潤滑剤少ない」が検出された回数が所定回数(n回)未満である場合、制御装置60は、潤滑剤塗布時間を所定時間だけ長く設定し、塗布圧力を所定値だけ上げる指示を潤滑剤塗布装置46へ出す。
「潤滑剤多い」により不良(NG)と判断され、現在までに「潤滑剤多い」が検出された回数が所定回数(n回)未満である場合、制御装置60は、塗布時間を所定時間だけ短く設定し、塗布圧力を所定値だけ下げる指示を潤滑剤塗布装置46へ出す。
「位置ずれ」により不良(NG)と判断され、現在までに「位置ずれ」が検出された回数が所定回数(n回)未満である場合、制御装置60は、潤滑剤塗布装置46におけるノズルヘッドを所定の角度だけ回転させる指示を出す。
【0067】
ここで、潤滑剤塗布装置46におけるノズルヘッドの回転角度、即ち、ノズルヘッドの補正角の算出方法の一例について説明する。
図12は、潤滑剤塗布装置46におけるノズルヘッドの補正角の算出方法を説明するための図である。
潤滑剤塗布装置46におけるノズルヘッドの回転角度(補正角)は、例えば、次式に基づいて算出される。
回転角度=(潤滑剤塗布量平均/非塗布位置面積)×(360°/ボール数)×比率γ
但し、上式において、「潤滑剤塗布量平均」は、非塗布位置1〜Nにおける潤滑剤の塗布領域の面積の平均値を示す。「非塗布位置面積」は、非塗布位置1〜N、即ち、ボール23における検査領域の面積値を示す。「ボール数」は、ベアリング2に配置されるボール23の数量を示す。
「比率γ」は、ベアリング2の円周方向におけるボール23の占める割合(比率)を表し、α/βで示される。ここでαは、図12に示すように、1つのボール23が占める角度を示し、βは、360°をベアリング2に配置されるボール23の数量で割った角度を示す。
【0068】
本実施の形態では、潤滑剤塗布装置46における複数のノズルは、予め全てのノズルの位置が周方向に配列された状態で固定されているが、ノズルの配置方法はこれに限定されるものではない。例えば、各ノズルをそれぞれ独立させた状態で配置してもよい。このように配置した場合、それぞれのノズルを個別に制御することができるため、潤滑剤検査装置1の検査結果に基づいて、各塗布位置1〜Nごとに潤滑剤の塗布位置の補正を行うことができる。
本実施形態では、潤滑剤の塗布不良が検出される都度、潤滑剤検査装置1の検査結果に基づいて潤滑剤塗布装置46の設定値の補正(調整)を行うように構成されているが、潤滑剤検査装置1の検査結果を潤滑剤塗布装置46へフィードバックするタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、ベアリング製造ラインを起動する際に、前回の製造ロットにおける検査結果に基づいて、潤滑剤塗布装置46の初期設定値を変更(調整)するようにしてもよい。
このように、本実施形態によれば、潤滑剤検査装置1の検査結果に基づいて、潤滑剤塗布装置46における潤滑剤の塗布条件(設定条件)を自動的に補正することができる。これにより、潤滑剤の塗布不良の発生を低減させることができるため、ベアリング製造ラインにおける歩留り率を適切に向上させることができる。
【0069】
図11の説明に戻り、「はみ出し」により不良(NG)と判断され、現在までに「はみ出し」が検出された回数が所定回数(n回)未満である場合、制御装置60は、パレット搬送コンベア19の駆動装置へ、潤滑剤塗布後の搬送パレット17の搬送開始時までの待ち時間を所定時間だけ長く設定する指示を出す。
さらに、制御装置60は、要因(「潤滑剤少ない」「潤滑剤多い」等)の検出回数がn回未満である場合、黄色の表示灯を点灯させる指示を表示装置52へ出す。
また、要因の検出回数がn回に達した場合、制御装置60は、潤滑剤の塗布動作を停止させる指示を潤滑剤塗布装置46へ出し、赤色の表示灯を点灯させる指示、及び表示器に点検確認を促す旨のメッセージを表示させる指示を表示装置52へ出す。
【0070】
このように本実施形態では、潤滑剤検査装置1において潤滑剤の塗布不良が検出された際に、表示装置52における表示灯や表示器によって、ベアリング製造ラインのオペレータへ、潤滑剤の塗布不良が発生したことを視覚的に認識させることができる。
また、表示装置52と同様の表示装置を潤滑剤検査装置1に設け、潤滑剤の塗布不良が検出された際に、潤滑剤検査装置1側においてもこの表示装置を介して、オペレータへ潤滑剤の塗布不良が検出されたことを視覚的に認識させるようにしてもよい。この場合、潤滑剤検査装置1に設けられた表示装置には、塗布不良が検出されたベアリング2のパレット番号70や不良(NG)判定の要因などの情報を表示させる。これにより、オペレータは、塗布不良が検出されたベアリング2を速やかに確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ベアリング製造ラインの概略構成を示した図である。
【図2】(a)はベアリングの概略構成を示した図であり、(b)は(a)に示すA−A’部における断面を示した図であり、(c)は保持器の概略構成を示した斜視図である。
【図3】ベアリング製造ラインにおけるベアリングの製造処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】潤滑剤検査装置の概略構成を示した図である。
【図5】潤滑剤検査装置における潤滑剤の塗布状態を検査する処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】撮像画像の一例を示した図である。
【図7】ボール上に潤滑剤が塗布されている場合における画像処理を説明するための図である。
【図8】少量の潤滑剤が塗布されている場合における画像処理を説明するための図である。
【図9】適量の潤滑剤が塗布されている場合における画像処理を説明するための図である。
【図10】潤滑剤検査装置における検査結果のデータの一例を示した図である。
【図11】潤滑剤の塗布状態の検査に合格していない場合における潤滑剤塗布装置へのフィードバック制御の指示内容を示した図である。
【図12】潤滑剤塗布装置におけるノズルヘッドの補正角の算出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
1 潤滑剤検査装置
2 ベアリング
11 カメラ
12 レンズ
13 シャープカットフィルタ
14 遮光フード
15 バック照明
16 紫外光照明
17 搬送パレット
19 パレット搬送コンベア
21 外輪
22 内輪
23 ボール
24 保持器
30 画像処理装置
41 内輪供給装置
42 外輪供給装置
43 ボール供給装置
44 ボール等配装置
45 保持器組込装置
46 潤滑剤塗布装置
47 潤滑剤不良排出装置
48 トルク検査装置
49 音響検査装置
50 不良排出装置
51 良品回収装置
52 表示装置
60 制御装置
70 パレット番号
241 ポケット
242 潤滑剤溜
243 潤滑剤領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪の間に配設される複数の転動体と、前記転動体を分離し、光透過性を有する保持器と、を備えた転がり軸受における蛍光成分を有する潤滑剤の塗布状態を検査する検査装置であって、
可視光を照射する第1光源と、
紫外光を照射する第2光源と、
前記可視光及び前記紫外光をそれぞれ対向方向から検査対象となる転がり軸受に照射した状態で、前記紫外光の照射側から前記検査対象となる転がり軸受のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した撮像画像から、前記転動体に対する第1検査領域を特定する第1検査領域特定手段と、
前記撮像画像の色情報及び輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記第1検査領域における潤滑剤の付着状態を検査する第1検査手段と、
前記撮像画像から、前記保持器に対する第2検査領域を特定する第2検査領域特定手段と、
前記撮像画像の色情報に基づいて、前記第2検査領域における潤滑剤の塗布状態を検査する第2検査手段と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第2検査手段は、前記紫外光による励起光と前記可視光との混色領域と、潤滑剤の発光領域との色の違いに基づいて潤滑剤の塗布領域を検出し、この検出結果に基づいて、前記第2検査領域における潤滑剤の塗布状態を検査することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記撮像画像における、前記転動体の頂点の座標を認識する座標認識手段を備え、
前記認識した転動体の頂点座標に基づいて、前記第1検査領域及び前記第2検査領域のうちの少なくとも一方を特定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
可視光を照射する第1光源と、紫外光を照射する第2光源と、カラー画像の撮像手段と、を備えた検査装置において、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪の間に配設される複数の転動体と、前記転動体を分離し、光透過性を有する保持器と、を備えた転がり軸受における蛍光成分を有する潤滑剤の塗布状態を検査する検査方法であって、
前記可視光及び前記紫外光をそれぞれ対向方向から検査対象となる転がり軸受に照射した状態で、前記紫外光の照射側から前記検査対象となる転がり軸受のカラー画像を撮像する第1ステップと、
前記第1ステップにより撮像した撮像画像から、前記転動体に対する第1検査領域を特定する第2ステップと、
前記撮像画像の色情報及び輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記第1検査領域における潤滑剤の付着状態を検査する第3ステップと、
前記撮像画像から、前記保持器に対する第2検査領域を特定する第4ステップと、
前記撮像画像の色情報に基づいて、前記第2検査領域における潤滑剤の塗布状態を検査する第5ステップと、
を有することを特徴とする検査方法。
【請求項5】
少なくとも、外輪、内輪、複数の転動体、光透過性を有する保持器、を備えた転がり軸受を組み立てる組立装置と、
前記組み立てられた転がり軸受の所定の位置に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、
前記潤滑剤が塗布された転がり軸受における潤滑剤の塗布状態を検出する検査装置と、
を備えた転がり軸受の製造装置であって、
前記検査装置は、請求項1から請求項3のうちのいずれか1の請求項に記載の検査装置であることを特徴とする転がり軸受の製造装置。
【請求項6】
前記潤滑剤塗布装置は、前記検査装置における検査結果に基づいて、潤滑剤の塗布位置を調整することを特徴とする請求項5記載の転がり軸受の製造装置。
【請求項7】
少なくとも、外輪、内輪、複数の転動体、光透過性を有する保持器、を備えた転がり軸受を組み立てる第11ステップと、
前記組み立てられた転がり軸受の所定の位置に潤滑剤を塗布する第12ステップと、
請求項4に記載の検査方法により、前記潤滑剤が塗布された転がり軸受における潤滑剤の塗布状態を検出する第13ステップと、
前記第13ステップによる潤滑剤の塗布状態の検出結果に基づいて、潤滑剤の塗布位置を調整する第14ステップと、を備え、
前記第12ステップは、前記第14ステップで調整された塗布位置で潤滑剤を塗布することを特徴とする転がり軸受の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−128260(P2009−128260A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305181(P2007−305181)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】