説明

樹脂の収容及び注入のためのシステムと方法

【課題】注入プロセスを単純化する為に、樹脂と、樹脂を含浸させる繊維プリフォームとを共に同じツールに配置することができるような、樹脂の収容及び注入の為のシステムと方法を提供する。
【解決手段】樹脂収容及び注入システムは、ツールと、ツール内に設けられた樹脂貯蔵ウェルと、ツール上に設けられた複合材料積層区域と、樹脂貯蔵ウェルを覆うように設置された真空引きフィルムとを含んでいる。真空引きフィルムは、真空引きフィルム全体の圧力均衡が確立されると樹脂保存ウェル内の容積を規定し、且つ真空引きフィルムに陽圧が印加されると容積をほぼゼロにするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料を加工するためのシステムと方法とに関する。具体的には、本発明は、簡易なツールを用いて樹脂を収容及び注入するためのシステムと方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料産業において、樹脂を注入するための標準的な手順は、工具表面上に繊維プリフォームを準備して真空引きすること、或いは閉じたモールド内に繊維プリフォームを準備することを含みうる。プリフォームを注入するために、コンジットを介してツールに樹脂容器を接続することができる。プラミング後、プリフォーム及びコンジットから空気を抜き、排気された空気がそれまで占めていたスペース内に、コンジットを通して樹脂容器から樹脂を送り込む。樹脂は、樹脂容器内の樹脂に気圧を印加することにより、又は機械的ポンプを動作させることにより、コンジットを通してポンプ注入することができる。
【0003】
高温構造の熱硬化性樹脂系の場合、樹脂容器を加熱して、注入開始前に樹脂の正確な粘度を達成する。繊維プリフォームに樹脂を注入した後、注入済みのプリフォームと繊維プリフォームとを硬化温度まで加熱することができる。容積対表面積比により、樹脂注入に使用される多くの熱硬化性プラスチック樹脂系に発熱反応が起こりうるので、ツールを用いて樹脂容器内の樹脂を硬化させることはできない。これにより、注入されるプリフォームをオーブン内に配置し、樹脂を注入するためのコンジットを樹脂容器からオーブンの壁を通して配置するプロセスが必要となる。オーブンの外側の樹脂及びコンジットは、別個の加熱ユニットを使用して加熱することができる。
【0004】
従来の樹脂注入プロセスには、複数の欠点が伴う場合がある。例えば、コンジットの接続準備及びプラミングには、時間と労力が掛かる。硬化した樹脂を収容するコンジットは再利用することができず、これはプロセス費の増大に繋がりうる。中で樹脂が硬化したコンジットの接続には、洗浄と改修が必要となりうる。コンジット及び樹脂容器のサンプには、大量の樹脂が無駄に残留しうる。樹脂容器から未硬化の樹脂を取り除いて廃棄することは、困難で且つ健康、安全及び環境にとって重大な危険を呈しうる。樹脂及びツールには、別々の加熱源が必要となりうる。機械的ポンプを使用して繊維プリフォームを注入する場合、ポンプには、作業又は製造連ごとに全ての樹脂の洗浄及びフラッシングが必要となりうる。プラミングには、コンジットを流れる樹脂の正確な粘度に保つために、分離加熱が必要となる可能性がある。
【0005】
従来の樹脂注入プロセスの欠点の幾つかに対する一の解決法は、室温で固体となるまで樹脂の粘度を上昇させ、固体の樹脂を真空引き下に置くことである。プリフォームを加熱すると、樹脂が溶解して真空引きの圧力により液化した樹脂がプリフォーム内に押し込まれる。しかしながら、プリフォーム注入時の樹脂の流動時点又は方法を制御することはできない。別の解決法は、繊維に樹脂が既に含浸されているプリプレグ材を用いることを含む。プリプレグ材は、高圧下で硬化されることにより完全に圧密化される。しかしながら、このプロセスは、複合材料製品のコストを増大させ、初期の積層状態からプリフォームが移動する/厚密化される結果となる。これにより、複雑なパーツの困難な製造に許される公差が小さくなる。更に、レジントランスファ成形のような密閉型成形プロセスにこのシステムを適用することはできない。加えて、このプロセスには、高価な処理設備が必要となる場合があり、航空宇宙産業品質の事前含浸繊維を加工するために処理される原料に権利金を支払う場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、樹脂注入プロセスを単純化するために、樹脂と、樹脂を含浸させる繊維プリフォームとを共に同じツールに配置することができるような、樹脂の収容及び注入のためのシステムと方法とが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、概して、樹脂収容及び注入システムを目的とする。本システムの例示的実施形態には、ツール、ツール内に設けられた樹脂貯蔵ウェル、ツール上に設けられた複合材料積層区域、及び樹脂貯蔵ウェルを覆う真空引きフィルムが含まれる。真空引きフィルムは、真空引きフィルム全体の圧力の均衡状態が確立されると、樹脂貯蔵ウェル内の容積を画定し、真空引きフィルムに対して陽圧が印加されると、同容積を低減するように構成されている。
【0008】
幾つかの実施形態では、樹脂収容及び注入システムは、ツールと、ツール内に設けられた樹脂貯蔵ウェルと、通常は樹脂貯蔵ウェルに隣接してツール上に設けられた複合材料積層区域と、樹脂貯蔵ウェルを覆う真空引きフィルムと、通常は複合材料積層区域に隣接してツールを貫通する真空開口と、樹脂貯蔵ウェルを覆う真空引きフィルム上に設けられた制御板と、制御板を貫通する制御ポート開口とを含むことができる。真空引きフィルムは、真空引きフィルム全体の圧力均衡状態が確立されると、制御ポート開口に真空圧力を印加することにより、樹脂貯蔵ウェル内の容積を画定し、制御ポート開口を介して真空引きフィルムに対して陽圧が陰窩されると、容積を低減するように構成されている。
【0009】
本発明は、概して、樹脂収容及び注入方法を更に目的としている。本方法の例示的一実施形態は、複合材料積層区域及び樹脂貯蔵区域を有するツールを供給することと、ツールの複合材料積層区域に繊維プリフォームを配置することと、ツールの樹脂貯蔵区域に液体樹脂を配置することと、樹脂貯蔵区域で液体樹脂を覆うように真空引きフィルムを配置することと、真空引きフィルムに陽圧を印加することにより、繊維プリフォームに液体樹脂を注入することとを含む。
【0010】
幾つかの実施形態では、樹脂収容及び注入システムは、ツールと、ツール内に設けられた樹脂貯蔵ウェルと、通常は樹脂貯蔵ウェルに隣接してツール上に設けられた複合材料積層区域と、通常は複合材料積層区域に隣接して、ツール内に設けられた出口樹脂トラップと、通常は出口樹脂トラップに隣接してツールを貫通する真空開口と、真空開口と流体を連通させる真空コンジットと、樹脂貯蔵ウェル及び複合材料積層区域を覆う真空引きフィルムと、樹脂貯蔵ウェルを覆う真空引きフィルム上に設けられた制御板と、制御板を貫通する制御ポート開口と、制御ポート開口と流体を連通させる制御ポートと、ツールと真空引きフィルムとの間、及び真空引きフィルムと制御板との間に設けられた真空シーラントテープとを含むことができる。真空引きフィルムは、真空引きフィルム全体の圧力均衡状態が確立されると、制御ポートに真空圧力を印加することにより、樹脂貯蔵ウェル内の容積を画定し、制御ポートを介して真空引きフィルムに対して陽圧が印加され、且つ真空コンジットに真空圧力が印加されると、容積が低減するように構成されている。
【0011】
幾つかの実施形態では、樹脂収容及び注入方法は、複合材料積層区域、通常は複合材料積層区域に隣接する樹脂貯蔵区域、及び通常は複合材料積層区域に隣接する出口樹脂トラップを有するツールを供給することと、複合材料積層区域と樹脂貯蔵区域との間に樹脂流動手段を設置することと、ツールの複合材料積層区域に繊維プリフォームを配置することと、ツールの樹脂貯蔵区域に液体樹脂を配置することと、液体樹脂及び繊維プリフォームを覆うように真空引きフィルムを配置することと、樹脂貯蔵区域で繊維プリフォームと真空引きフィルムとに真空圧力を印加することにより繊維プリフォームを圧密化することと、繊維プリフォームと樹脂とを注入温度まで加熱することと、真空引きフィルムに陽圧を印加すること、及び繊維プリフォームに真空圧力を印加することにより、繊維プリフォームに液体樹脂を注入することと、出口樹脂トラップ内の樹脂の一部を回収することと、樹脂を硬化させることとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ツール上に設けられた繊維プリフォーム及び樹脂と、繊維プリフォーム及び樹脂を覆う真空引きフィルムとを有する樹脂収容及び注入システムの一実施例の概略図であり、繊維プリフォームに樹脂を注入する準備が整っている状態を示している。
【図2】樹脂収容及び注入システムの一実施例の概略図であり、真空引きフィルムに真空圧力が印加される様子を示している。
【図3】樹脂収容及び注入システムの一実施例の概略図であり、真空引きフィルムに真空圧力が印加されるときにツールが加熱される様子を示している。
【図4】樹脂収容及び注入システムの一実施例の概略図であり、樹脂に対する陽圧の印加により繊維プリフォームの中に樹脂が押し込まれる際にツールが加熱される様子を示している。
【図5】樹脂収容及び注入システムの一実施例の概略図であり、最終的な複合材料成層を硬化させるためにツールに硬化熱が印加される様子を示している。
【図6】樹脂収容及び注入方法の一実施例のフローチャートである。
【図7】航空機の製造及び整備方法論のフロー図である。
【図8】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明は、単に例示的な性質を有するものであり、記載される実施形態又は実施例、及び記載される実施例の使用を限定するものではない。本明細書において使用される、「例示的」又は「例証的」という用語は、「一つの実施例、事例、又は実例となる」ことを意味している。「例示的」又は「例証的」として本明細書に記載されているあらゆる実施形態は、他の実施形態より好ましい、又は有利であることを必ずしも意味しない。以下に記載する全ての実施形態は、開示内容が当業者によって実行可能となるように提供された例示的な実施形態であり、請求の範囲を限定することを意図していない。更に、前述の技術分野、背景技術、発明の概要、又は後述の説明において明示又は暗示されたいずれの理論によっても制限されることはない。
【実施例】
【0014】
図1は、樹脂収容及び注入システム(以下システムという)の例証的な一実施形態を示しており、システムは全体として参照番号1で示されている。システム1は、複合材料積層区域3を有するツール2と、樹脂貯蔵ウェル4とを含んでおり、複合材料積層区域3とウェル4とは共に、ツール2と一体とすることができる。樹脂貯蔵ウェル4は、通常は、複合材料積層区域3に隣接又は近接している。複合材料積層区域3に隣接させてツール2に出口樹脂トラップ5を設けることができる。通常は出口樹脂トラップ5に隣接させて、ツール2に真空開口6を貫通させることができる。真空開口と流体を連通させるように、真空コンジット7を設置することができる。
【0015】
図1〜5に示すように、典型的な用途として、システム1は、複合材料積層区域3の上に配置される繊維プリフォーム22に、ツール2の樹脂貯蔵ウェル4に配置される液体樹脂32を注入することにより、複合材料成層34を形成する(図5)ために使用することができる。したがって、図1に示すように、樹脂プリフォーム22は複合材料積層区域3配置することができ、樹脂32はツール2の樹脂貯蔵ウェル4に供給することができる。繊維プリフォーム22及び樹脂32を覆うように、真空引きフィルム10を配置することができる。真空シーラントテープ11は、ツール2と真空引きフィルム10の縁との間に配置されて、真空引きフィルム10とツール2との間に液密なシールを提供することができる。ツール2の樹脂貯蔵ウェル4内の樹脂32は、適切な樹脂流動手段20を介して繊維プリフォーム22と流体を連通させるように配置することができる。出口樹脂トラップ5及び真空コンジット7も、繊維プリフォーム22と流体を連通させるように配置することができる。
【0016】
真空引きフィルム10の、樹脂貯蔵ウェル4を覆う部分に、制御板14を配置することができる。真空シーラントテープ18は、真空引きフィルム10と制御板14との間に配置されて、制御板14と真空引きフィルム10との間に液密なシールを提供することができる。制御ポート開口15は制御板14を貫通することができる。制御ポート16は、制御ポート開口15を介して真空引きフィルム10と流体を連通させるように配置することができる。
【0017】
図2に示すように、制御板14の制御ポート16を介して、真空引きフィルム10の、樹脂貯蔵ウェル4内の樹脂32を覆う部分に真空圧力24を印加することにより、真空引きフィルム10に樹脂32に対する陽圧が掛からないようにすることができる。同時に、真空コンジット7から真空圧力26を繊維プリフォーム22に印加することができる。これにより、繊維プリフォーム22と樹脂32との間に圧力均衡を確立して、樹脂貯蔵ウェル4内で樹脂32を所定の位置に保つことができる。真空圧力24、26は、繊維プリフォーム22に対して真空引きフィルム10を引き付けることにより、真空引きフィルム10とツール2との間で繊維プリフォーム22を圧密化することができる。次に、図3に示すように、真空圧力24を制御ポート16に印加し、且つ真空圧力26を真空コンジット7に印加したまま、選択された注入温度に達するまでシステム1に熱28を加えることができる。
【0018】
図4に示すように、システム1が所望の注入温度に達したら、陽圧30(例えば<1気圧)を、制御ポート16を介して真空引きフィルム10に印加することができる。同時に、真空コンジット7を介して繊維プリフォーム22に真空圧力26を印加することができる。制御ポート16を介して真空引きフィルム10に印加された陽圧30は、真空引きフィルム10を変形させ、真空引きフィルム10によって樹脂貯蔵ウェル4内の樹脂32に陽圧を印加することができる。したがって、樹脂貯蔵ウェル4内の樹脂32に対して掛かる真空引きフィルム10の陽圧により、樹脂32が、樹脂貯蔵ウェル4から樹脂流動手段20(図1)を通って、ツール2の複合材料積層区域3の繊維プリフォーム22へと必然的に移動する。同時に、真空コンジット7から繊維プリフォーム22に印加される真空圧力26は、繊維プリフォーム22全体に樹脂32を徐々に引き込み、最終的には図5に示すように繊維プリフォーム22全体に樹脂32が注入される。樹脂32の一部は、ツール2の出口樹脂トラップ5内に回収される。図5に示すように、システム1に熱28を印加することにより、樹脂が注入された繊維プリフォーム22を硬化温度まで加熱し、繊維プリフォーム22に注入された樹脂32を硬化させて複合材料成層34を形成することができる。樹脂貯蔵ウェル4内に残る樹脂32、樹脂流動手段20(図1)、出口樹脂トラップ5、及びツール2の他の表面も、硬化ステップの間に硬化させることができる。
【0019】
樹脂収容及び注入システム1は、従来の樹脂注入システムと方法とを凌駕する多数の利点を持つことができる。システム1では、複合材料成層34(図5)の準備と製造とを簡略化及び迅速化することができる。同じツール2上に繊維プリフォーム22と樹脂32が位置することにより、樹脂注入プロセスを極めて簡単に行うことができる。繊維プリフォーム22及び樹脂32が同じツール2の上に位置することにより、個別のシステムによる加熱及び制御を必要とする別個の樹脂容器が不要である。樹脂ウェル4及び出口樹脂トラップ5には、容積に対して大きな表面積比が保たれているので、大量の樹脂を硬化させるときに生じる過剰な発熱反応が排除されて、安全性が向上している。CAPRIプロセスが目的とする樹脂注入プロセスの完全制御を維持することができる。従来のシステムの樹脂ポットのサンプ及び配管を排除できるため、従来のシステムの樹脂注入プロセスに随伴する樹脂廃棄物の過多は生じえない。更に、プロセス終了までに全ての樹脂廃棄物を硬化させることができるので、作業員又は環境に対する危険が無い。システム1の単純化による別の利点には、樹脂ポット又は容器のプラミングを用いる必要がないために資本設備の必要性が低下すること、室温で固体となるように樹脂32の粘度を調節する必要がないので、ツール2に多種多様な樹脂32を使用できること、及びシステム1により樹脂注入プロセスが単純化されることにより、複合材料成層34(図5)の製造が、オートクレーブ又は炭素繊維原料の冷凍を必要としなくなり、プリプレグ製造と同等となることが含まれる。
【0020】
次に図6を参照する。図6は、樹脂収容及び注入方法の例証的実施形態のフローチャート600を示している。ブロック602では、複合材料を積層する区域と、樹脂を一時的に貯蔵する別個の区域とを有するツールを供給する。ブロック604では、繊維プリフォームをツールの複合材料積層区域上に配置する。ブロック606では、液状樹脂をツールの樹脂貯蔵区域に配置する。ブロック608では、繊維プリフォームと液状樹脂を覆うように真空引きフィルムを配置する。ブロック610では、真空引きフィルムと、樹脂貯蔵区域の樹脂とを連通させる。ブロック612では、真空引きフィルムに真空圧力を印加することにより繊維プリフォームを圧密化することができる。ブロック614では、真空引きフィルムを通して樹脂貯蔵区域の樹脂に陽圧を印加し、且つ繊維プリフォームに真空圧力を印加することにより、繊維プリフォームに樹脂を注入して複合材料積層を形成することができる。ブロック616では、樹脂を硬化させることができる。
【0021】
次に、図7及び8を参照し、図7に示す航空機の製造及び整備方法78と、図8に示す航空機94とに照らして本発明の実施形態を説明する。生産前の段階において、例示的方法78は、航空機94の仕様及び設計80と、材料調達82とを含むことができる。生産段階では、航空機94の、部品及びサブアセンブリの製造84と、システムインテグレーション86とが行われる。その後、航空機94は、認可及び納入88を経て就航90される。顧客により就航される間、航空機94は、定期的なメンテナンス及び点検92(改修、再構成、改装等を含みうる)を受けることができる。
【0022】
方法78のプロセスの各々は、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)により実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレータは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、公共機関等でありうる。
【0023】
図8に示すように、例示的方法78により製造される航空機94は、複数のシステム96を有する機体98と、内装100とを含むことができる。ハイレベルのシステム96の実施例には、推進システム102、電気システム104、油圧システム106、及び環境システム108のうちの一又は複数が含まれる。任意の数のその他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業における実施例を示しているが、自動車産業のような他の産業に、本発明の原理を適用することができる。
【0024】
本明細書に具体的に示す器具は、製造及び整備方法78の段階のうちのいずれか一つ又は複数の段階の間に利用することができる。例えば、製造プロセス84の部品又はサブアセンブリは、航空機94の就航中に製造される部品又はサブアセンブリと同様の方法で作製又は製造することができる。また、航空機94の、組立ての実質的な効率化、又はコスト削減により、製造段階84及び86において、いずれか一つ又は複数の、器具の実施形態を利用することができる。同様に、例えば、限定しないが、航空機94が就航段階にある間に、一又は複数の器具の実施形態を、メンテナンス及び点検92に利用することができる。
【0025】
本発明の実施形態の説明を、特定の例示的実施形態に関連させて行ったが、これら特定の実施形態は例示を目的としたものであって限定を目的としておらず、当業者には他の変形例が想起可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 樹脂収容及び注入システム
2 ツール
3 複合材料積層区域
4 樹脂貯蔵ウェル
5 出口樹脂トラップ
6 真空開口
7 真空コンジット
10 真空引きフィルム
11、18 真空シーラントテープ
14 制御板
15 制御ポート開口
16 制御ポート
20 樹脂流動手段
22 繊維プリフォーム
24、26 真空圧力
28 熱
32 樹脂
34 複合材料成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールと、
前記ツールに設けられた樹脂貯蔵ウェルと、
前記ツールに設けられた複合材料積層区域と、
前記樹脂貯蔵ウェルを覆うように設置される真空引きフィルムと
を含む樹脂収容及び注入システムであって、
前記真空引きフィルムが、前記真空引きフィルム全体の圧力均衡が確立されると、前記樹脂貯蔵ウェル内の容積を画定し、且つ前記真空引きフィルムに対して陽圧が印加されると、前記容積を低減するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記ツールの、前記樹脂貯蔵ウェルと前記複合材料積層区域との間に設置された樹脂流動手段を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
通常は前記複合材料積層区域に隣接させて前記ツールに設けられた出口樹脂トラップを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
通常は前記複合材料積層区域に隣接して前記ツールを貫通する真空開口を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記真空開口と流体を連通させるように設置された真空コンジットを更に含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記樹脂貯蔵ウェルを覆う前記真空引きフィルム上に設けられた制御板と、前記制御板を貫通する制御ポート開口とを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御ポート開口と流体を連通させるように配置された制御ポートを更に含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記真空引きフィルムが前記複合材料積層区域を覆っている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
ツールと、
前記ツールに設けられた樹脂貯蔵ウェルと、
前記樹脂貯蔵ウェルに通常隣接して前記ツールに設けられる複合材料積層区域と、
前記樹脂貯蔵ウェルを覆うように設置された真空引きフィルムと、
前記複合材料積層区域に通常隣接して前記ツールを貫通する真空開口と、
前記樹脂貯蔵ウェルを覆う前記真空引きフィルム上に設置された制御板と、
前記制御板を貫通する制御ポート開口と
を備えた樹脂収容及び注入システムであって、
前記真空引きフィルムが、前記真空引きフィルム全体の圧力均衡が確立されると、前記制御ポート開口に真空圧力を印加することにより、前記樹脂貯蔵ウェルの容積を画定し、且つ前記真空引きフィルムに対して陽圧が印加されると、前記制御ポート開口により、前記容積を低減するように構成されている、システム。
【請求項10】
前記ツールの、前記樹脂貯蔵ウェルと前記複合材料積層区域との間に設置された樹脂流動手段を更に含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記複合材料積層区域に通常隣接して前記ツールに設けられる出口樹脂トラップを更に含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記真空開口と流体を連通させるように設置された真空コンジットを更に含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御ポート開口と流体を連通させるように配置された制御ポートを更に含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記真空引きフィルムが前記複合材料積層区域を覆っている、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
複合材料積層区域と樹脂貯蔵区域とを有するツールを供給すること、
前記ツールの前記複合材料積層区域上に繊維プリフォームを配置すること、
前記ツールの前記樹脂貯蔵区域に液状樹脂を配置すること、
前記樹脂貯蔵区域の前記液状樹脂を覆うように真空引きフィルムを配置すること、及び
前記真空引きフィルムに陽圧を印加することにより、前記繊維プリフォームに前記液状樹脂を注入すること
を含む、樹脂収容及び注入方法。
【請求項16】
前記繊維プリフォームを覆うように前記真空引きフィルムを配置して、前記繊維プリフォームに真空圧力を印加することにより、前記繊維プリフォームを圧密化することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維プリフォームを圧密化することが、前記樹脂貯蔵区域で前記真空引きフィルムに真空圧力を印加することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複合材料積層区域に通常隣接させて前記ツールに出口樹脂トラップを設けること、及び前記出口樹脂トラップ内の前記樹脂の一部を回収することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維プリフォームに前記液状樹脂を注入することが、前記繊維プリフォームと前記樹脂とを注入温度まで加熱することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記樹脂を硬化させることを更に含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−46194(P2011−46194A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−180665(P2010−180665)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】