説明

樹脂の多層射出成形方法及び樹脂の多層射出成形装置

【課題】金型キャビティ容積の拡大位置制御を向上させ、所望する多層構造の樹脂成形品を得る樹脂の多層射出成形方法及び樹脂の多層射出成形装置を提供する。
【解決手段】金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、該形成した2次キャビティに2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、前記2次キャビティの形成は、型締力を解放した後、型厚調整機構を駆動してトグル機構を前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種類の樹脂成形材料を多層構造に射出成形する、樹脂の多層射出成形方法及び樹脂の多層射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品や家電製品などに使用される樹脂成形品は、装飾性や多様性を高めたり、あるいは、成形工程時の工程を省略してコストを低減するために、成形と同時にその金型内で樹脂成形材料を多層構造とする成形が実施されるようになった。即ち、
(1)成形品に装飾性や多様性を高めるために成形品の表面に、たとえば、ソフト感を有した樹脂層、あるいは、高級感を有した着色樹脂層を積層した構造体とする積層成形。
(2)リサイクル材の有効利用および成形品の補強のために、樹脂成形品の内部にリサイクル材または補強材入りの樹脂材料などを充填するサンドイッチ成形。などの方法が提案されている。
【0003】
これらの成形方法は、第1層となる樹脂成形材料を金型キャビティ内に射出充填した後、第2層となる樹脂成形材料を射出充填する際に、金型キャビティ容積を拡大して成形が行われる。そして、これらの成形方法に用いられる型締機構は、金型キャビティ容積の拡大制御が比較的容易とされる油圧式の型締シリンダを備えた直圧式が採用されている。(特許文献1参照)
【0004】
ところで、これらの成形方法において、金型キャビティ容積の拡大量は成形品の厚みや寸法などに影響を与える重要な因子であり、高精度に再現性高く制御することが要求される。しかしながら、このような従来の直圧式の型締機構を用いた成形方法では、作動油の圧縮性や温度変化による粘度の変化により、油圧シリンダの制御精度が変動する。
また、シリンダストロークが長いことから、制御応答性が低い。さらに、シリンダストロークの制御量と金型の移動量が一対一であるので、位置制御特性の低さから多層射出成形を行うと成形品の厚みが高精度な成形品を得ることができないといった問題があった。
【0005】
そのため、可動盤の後退制御を可動盤の後退量より大きい運動を行うクロスヘッドで行うことで制御精度を向上させるトグル式型締装置の型盤位置制御方法が開示されている。
この方法によれば、高い精度で可動盤と固定盤との間隔を一定に保つことができる。(特許文献2参照)
【0006】
しかしながら、従来のトグル式型締装置を用いトグル機構を屈曲させて金型キャビティ容積を拡大する成形方法では、依然として以下のような問題があった。
即ち、2層目の樹脂成形材料を射出充填後にトグル機構を駆動して型開を行い、金型キャビティ容積を拡大して2層目の成形樹脂材料の充填空間を確保した際の屈曲状態でのトグル機構では、2層目の射出充填圧力が可動型面に作用すると、可動盤位置を保持して抗するに必要で十分な保持力を得ることができない。このため、充填圧力が可動型面に作用すると、可動盤が後退してさらに金型キャビティ容積が拡大して成形品の厚み精度が維持できないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭54−86550号公報
【特許文献2】特開平8−309779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、トグル式の型締機構を用いた金型キャビティ容積の拡大制御において、金型キャビティ容積の拡大位置制御を向上させ、所望する多層構造の樹脂成形品を得る樹脂の多層射出成形方法及び樹脂の多層射出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る樹脂の多層射出成形方法は、金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置とを用いて、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形方法であって、金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、該形成した2次キャビティに2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させて行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る樹脂の多層射出成形方法は、金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置とを用いて、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形方法であって、金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、第1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させて行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る樹脂の多層射出成形方法は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記2層目の樹脂成形材料を射出充填した後、前記可動盤が後退して多層成形品を取り出すための型開の開始から次サイクルの型閉開始までの間で、1層目樹脂充填の際の型締力設定位置となるまで前記型厚調整機構を駆動してトグル機構を前進させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る樹脂の多層射出成形方法は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記1層目及び/又は2層目が物理発泡剤や化学発泡剤などの発泡剤を含んだ樹脂成形材料であって、前記1層目及び/又は2層目の射出充填後にトグル機構を駆動して前記可動盤を所定の発泡位置まで後退させることを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項5に係る樹脂の多層射出成形装置は、金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置と、を備え、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形装置であって、金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、該形成した2次キャビティに2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させるように構成したことを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項6に係る樹脂の多層射出成形装置は、金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置と、を備え、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形装置であって、金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、第1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させるように構成したことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に係る樹脂の多層射出成形装置は、請求項5または請求項6に記載の発明において、前記型厚調整機構は、型締装置のリンクハウジング背面の四隅に挿通して架設されタイバーに螺合するタイバーナットそれぞれに設けた駆動手段により四軸が同期または個別に駆動するように構成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8に係る樹脂の多層射出成形装置は、請求項5乃至請求項7に記載の発明において、前記1層目及び/又は2層目が物理発泡剤や化学発泡剤などの発泡剤を含んだ樹脂成形材料であって、前記1層目及び/又は2層目の射出充填後にトグル機構を駆動して前記可動盤を所定の発泡位置まで後退させるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
前記請求項1に係る樹脂の多層射出成形方法では、1層目の樹脂成形材料を金型キャビティ内に射出充填した後に、2層目の樹脂成形材料をトグル機構がロッキング状態で型閉されて形成された2次キャビティ内に射出充填するので、2層目の樹脂充填力が可動型面に作用してもトグル機構のクロスヘッドに樹脂の充填圧力が作用することがなく、したがって、トグル機構が押し戻されて2次キャビティがさらに拡大することがないので、成形品の厚み精度を維持でき成形品に不良が発生することがない。
【0018】
前記請求項2に係る樹脂の多層射出成形方法では、1層目の樹脂成形材料を金型キャビティ内に射出充填した後に、トグル機構がロッキング状態で型閉されて2次キャビティを形成し、第1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填するので、2層目の樹脂充填圧力が可動型面に作用してもトグル機構のクロスヘッドに樹脂の充填力が作用することがなく、したがって、トグル機構が押し戻されて2次キャビティがさらに拡大することがないので、成形品の厚み精度を維持でき成形品に不良が発生することがない。
前記請求項3に係る樹脂の多層射出成形方法では、成形品冷却完了後の型開の開始から次サイクルの型閉開始までの間に、型厚調整機構を駆動してトグル機構を1層目成形の所定位置まで移動させることから、成形サイクルタイムを延長することがない。
【0019】
前記請求項4に係る樹脂の多層射出成形方法では、1層目及び/又は2層目の樹脂成形材料に発泡剤を含ませたので、発泡層を有する積層成形品、内部や外部あるいは内部と外部を発泡させたサンドイッチ成形品を得ることができる。そして、発泡における金型キャビティ容積の拡大は、トグル機構の倍率特性を利用し、金型タッチ点にある型締装置を型開方向に移動させた際に検出したクロスヘッドと可動盤との関係を位置データとして記憶させ、該記憶した位置データに基づき可動盤の位置を制御する。この方法によれば、所望する発泡倍率、気泡径の発泡層を有する多層射出成形品を得ることができる。
【0020】
前記請求項5に係る樹脂の多層射出成形装置では、1層目の樹脂成形材料を金型キャビティ内に射出充填した後に、2層目の樹脂成形材料をトグル機構がロッキング状態で型閉されて形成された2次キャビティ内に射出充填する構成としたので、2層目の樹脂充填圧力が可動型面に作用してもトグル機構のクロスヘッドに樹脂の充填力が作用することがなく、したがって、トグル機構が押し戻されて2次キャビティがさらに拡大することがないので、成形品の厚み精度を維持でき成形品に不良が発生することがない。
【0021】
前記請求項6に係る樹脂の多層射出成形装置では、1層目の樹脂成形材料を金型キャビティ内に射出充填した後に、トグル機構がロッキング状態で型閉されて2次キャビティを形成し、第1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填する構成としたので、2層目の樹脂充填圧力が可動型面に作用してもトグル機構のクロスヘッドに樹脂の充填力が作用することがなく、したがって、トグル機構が押し戻されて2次キャビティがさらに拡大することがないので、成形品の厚み精度を維持でき成形品に不良が発生することがない。
【0022】
前記請求項7に係る樹脂の多層射出成形装置では、型厚調整機構を型締装置のリンクハウジング背面の四隅に挿通して架設されたタイバーに螺合するタイバーナットそれぞれに設けた駆動手段により四軸が同期または、個別に駆動するように構成したので、可動盤の平行度調整や金型の平行度に合った可動盤位置調整、また、型締力の微調整、金型キャ
ビティ容積拡大位置の微調整などを高精度に、且つ、再現性高く行うことができる。
【0023】
前記請求項8に係る樹脂の多層射出成形装置では、1層目樹脂に発泡剤を含む樹脂成形材料を用い、第1層目を発泡させた多層射出成形品や1層目及び2層目いずれも発泡剤を含む樹脂成形材料を用いて、発泡層と発泡層を積層した多層射出成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1〜図9は本発明を実施するための最良の形態に係り、図1は本発明実施形態による樹脂の多層射出成形装置の全体構想図、図2は型厚調整機構を概念的に示した構想図面である。図3は成形動作手順を示すフローチャート、図4は2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形動作手順を示すフローチャート、図5は成形工程の概略を説明する工程説明図、図6は2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形工程の概略を説明する工程説明図である。
図7は他の実施形態を示す樹脂の多層射出成形装置の全体構想図、図8は他の実施形態による成形工程の概略を説明する工程説明図、図9は他の実施形態の2層目樹脂成形材料を発泡させる成形工程の概略を説明する工程説明図である。
【0025】
図1に示すように、本発明における射出成形装置100は、型締装置110と、射出装置120と、型締装置110及び射出装置120を制御する制御装置130と、金型30とを備えている。金型30は、図1に示すように固定型31と可動型32とを備えており、固定型31と可動型32とは半押込み構造であり嵌合部で嵌め合わされ、嵌め合わされた状態で固定型31に形成されたキャビティ面と可動型32に形成されたキャビティ面とが組み合わされて金型キャビティ32を形成する構造となっている。そして、前記半押込み構造の嵌合部は金型全周に亘って形成され、射出充填後に金型キャビティ33の容積を拡大しても金型キャビティ33内に充填した樹脂成形材料が金型30から漏れ出すことを防止している。符合34は、1層目の樹脂成形材料を射出充填した後に可動型32を後退させて形成した2次キャビティである。
【0026】
図1に示す型締装置110は、固定型12と可動型13と電動サーボモータ22を駆動源とするリンク駆動機構18と、リンク駆動機構18に駆動されるトグル機構16と、電動サーボモータ22を駆動制御する制御用ドライバとを備え、可動盤13は固定盤12とリンクハウジング11との間に架設したタイバー21により案内されて、トグル機構16により可動型32とともに前後進できるように構成されている。
また、型締装置110に備えたリンク駆動機構18のクロスヘッド駆動軸23には、クロスヘッド17の位置を検出するための位置センサとしてのストロークセンサ24が取付けられており、ストロークセンサ24によってクロスヘッド17の位置を正確に検出することができる。
【0027】
本実施の形態においては、クロスヘッド17の位置を検出するための位置センサとしてストロークセンサ24を配する構成としたが、クロスヘッド17の位置を検出するための位置センサがこれに限らないことはもちろんであり、電動サーボモータ22に内蔵されたセンサで検出する方式であっても良い。
【0028】
また、型締装置110は、型締力を検出するセンサとしてタイバー21の固定盤側の一端に型締力センサ25を備えており、型締力検出センサ25はタイバー21の伸び量を検出することによって型締力を検出する構成となっている。さらに、射出成形装置100は、型開閉ストロークを検出する型開閉ストロークセンサとして、可動盤位置センンサ26が可動盤13の位置を検出するようにして配されており、可動盤位置センサ26の計測値から金型30の開閉ストロークを検出する。そして、これらの検出器からの検出信号を受け、型締制御部の出力信号によって型開閉の制御が行われる。
【0029】
前記型締装置110は、異なる厚さの金型30を取付けるための型厚調整機構19を備えている。駆動手段29によりリンクハウジング11に内挿され、且つ、タイバー21に螺合したタイバーナット27を回転駆動することでトグル機構16を前後進できるようになっている。さらに、型厚調整機構19を駆動して型締力を設定することができる。
符号28は、型厚調整機構19によってトグル機構16とともに移動するリンクハウジング11の移動量を検出してダイハイト位置を検出するダイハイト位置センサであり、ダイハイト位置を正確に検出することができる。
【0030】
本実施形態におけるトグル機構16は、5つのリンク節を有する5節ダブルトグル式で、クロスヘッド17を型開閉方向に動作させることによって可動盤13の移動と型締力を制御する方式としたが、リンク節が4つである4節ダブルトグル式の機構であっても良い。
また、本実施形態においては、図1に示すような電動サーボモータ22をクロスヘッド17の駆動手段としたが、本発明に適用できる本実施の形態に限らず、クロスヘッド17の駆動手段として油圧シリンダなどを本発明に適用しても良い。そして、型締装置110は図示しないマシンベース上に載置された構成となっている。
【0031】
次に、本発明の実施形態に用いた射出装置120の構成について説明する。
図1に示す射出装置120は、金型キャビティ33内に1層目の樹脂成形材料を供給する第1射出ユニット41と、2層目の樹脂成形材料を供給する第2射出ユニット42とからなり、それぞれの射出ユニットがバレルとバレルに内装されフライトを有するスクリュと、バレル内に樹脂成形材料を供給するホッパとを備え、スクリュを前後進させるスクリュ移動手段と、スクリュを回転駆動するスクリュ回転駆動手段が設けられている。
そして、第1射出ユニット41と第2射出ユニット42は、樹脂流路を開閉するシャットオフバルブ43,44とを有している。
【0032】
前記第1射出ユニット41及び第2射出ユニット42は、スクリュの回転手段によってスクリュが回転することにより、ホッパからペレット状の樹脂成形材料がバレル内に供給される構成となっており、該供給されたペレット状の樹脂成形材料はバレルに取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュの回転によって混練圧縮作用を受けることによって溶融し、スクリュ前方へ送られる。スクリュ前方へ送られた溶融樹脂は、スクリュ移動手段により先進するスクリュによってバレルの先端に取付けられたシャットオフバルブ43、44を通りノズルを介して金型キャビティ内に射出充填される。
【0033】
そして、第1射出ユニット41は固定型31の射出成形装置100の軸線方向から、第2射出ユニット42は固定型31の射出成形装置100の軸線と交差方向から金型キャビティ内に溶融樹脂を供給する構成となっている。なお、第1層及び第2層の樹脂成形材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂などの汎用熱可塑性樹脂や、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(ナイロン)などの汎用エンプラなどを用いることができる。また、これらのリサイクル材をサンドイッチ成形の核材として用いることは有用である。
また、本実施形態における射出装置100のスクリュ移動手段及びスクリュ回転手段は電動サーボモータを駆動源としたが、本発明に適用できる実施形態は本実施例に限らず、油圧シリンダと油圧モータを駆動源とした移動及び回転手段であっても良い。
【0034】
そして、本実施の形態に用いた制御装置130は、型締装置110を制御する型締制御部71と型締条件を設定する型締条件設定器、及び射出装置130を制御する射出制御部72と射出条件を設定する射出条件設定器を基本構成としている。
【0035】
図2に示す型厚調整19は、リンクハウジング11背面の四隅に挿通されたタイバー21に螺合されたタイバーナット27を回転駆動する電動サーボモータを駆動源とする駆動手段29が4本のタイバー21それぞれに設けられた構成となっている。符号22は、トグル機構16を駆動するリンク駆動機構18の駆動手段である電動サーボモータである。
型厚調整機構19により移動するリンクハウジング11の移動量は、前述したダイハイト位置を検出するダイハイト位置センサ28により検出される。本実施形態では、4本のタイバー21にそれぞれ独立してタイバーナット27を駆動する駆動手段を備えて、四軸が同期又は個別に駆動される構成としたが、2本のタイバーを一対として、または4本のタイバー21を一組として一つの駆動手段で駆動する形態であって良い。
【0036】
以上のように構成された射出成形装置100の作動について説明する。図3は成形動作手順を示すフローチャート、図4は2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形動作手順を示すフローチャート、図5は成形工程の概略を説明する工程説明図、図6は2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形工程の概略を説明する工程説明図である。
【0037】
成形動作手順は、図3及び図5で示すように以下の手順により行う。
(a)先に型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置設定値(S1)に基づいて型閉動作を行う。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S1)に達した後は設定値(S1)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構はメカロック状態)。
(b)第1射出ユニット41のシャットオフバルブ43を開いて、1層目の溶融樹脂を金型キャビティ33内に射出充填する。1層目の溶融樹脂が射出充填され保圧が完了した後、シャットオフバルブ43を閉じ、次いで第1層目樹脂の冷却固化状態に応じて設定される所定の時間冷却が行われる。
【0038】
(c)第1層目樹脂の冷却が完了したことを検知した後、型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置(S2)に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させ型締力を解放する。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S2)に達した後は設定値(S2)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。
(d)型締力が解放されストロークセンサ24の検出信号が設定値(S2)に達したことを検出した後、型締条件設定器で設定したダイハイト位置設定値(S12)に基づいてダイハイト後退動作を行って可動盤13を後退させ金型キャビティ33の容積を拡大、第1層樹脂表面と可動型キャビティ面との間に2次キャビティ34を形成する。ダイハイト位置センサ28の検出信号が設定値(S12)に達した後は設定値(S12)を保持するように駆動手段29を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。
【0039】
(e)所定のダイハイト位置(S12)に達したことを検出した後、型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置(S3)に基づいて型閉動作を行って可動盤13を前進させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S3)に達した後は設定値(S3)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構はメカロック状態)。
(f)第2射出ユニット42のシャットオフバルブ44を開いて、2層目の溶融樹脂を2次キャビティ34内に射出充填する。2層目の溶融樹脂が射出充填され保圧が完了した後、シャットオフバルブ44を閉じ、次いで第2層目樹脂の冷却固化状態に応じて設定される所定の時間冷却が行われる。
【0040】
(g)第2層目樹脂の冷却が完了したことを検知した後、型締条件設定器で設定した型開位置設定値に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値に達した後は型開位置を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。次いで、成形品は金型30から押出され射出成形機外へ取り出される。
(h)型開の完了を検出した後に成形品の押出し動作が行われるとともに、型締条件設定器で設定したダイハイト位置設定値(S11)に基づいてダイハイト前進動作を行って型締条件設定器で設定した型締力を得る位置までトグル機構16を前進させる。ダイハイト位置センサ28の検出信号が設定値(S11)に達した後は、設定値(S11)を保持するように駆動手段29を制御して位置保持制御を行い次成形の開始信号を待機する。
【0041】
次に、2層目の樹脂を射出充填後に発泡させる成形動作手順について、図4及び図6により説明する。本手順において、(a)〜(e)までの手順は前述した図3及び図5に示した手順と同一であって、ここでは手順の異なる(f)以降について説明する。
(f)第2射出ユニット42のシャットオフバルブ44を開いて、発泡層となる2層目の溶融樹脂を2次キャビティ34内に射出充填する。2層目の溶融樹脂が射出充填完了された後、シャットオフバルブ44を閉じ、次いで第2層目樹脂の2次キャビティ接触面にスキン層が形成され、該スキン層の形成状態に応じて設定される所定の時間(t1)型締状態を保持する。
(g)第2層目の2次キャビティ接触面にスキン層が形成された後、型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置(S4)に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させ2次キャビティ34の容積を拡大する。そして、該拡大されたキャビティ内で2層目樹脂を発泡させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S4)に達した後は、所定の冷却時間まで設定値(S4)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。
【0042】
(h)第2層の冷却が完了してことを検知した後、型締条件設定器で設定した型開位置設定値に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値に達した後は型開位置を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。次いで、成形品は金型30から押出され射出成形機外へ取り出される。
(i)型開の完了を検出した後に成形品の押出し動作が行われるとともに、型締条件設定器で設定したダイハイト位置設定値(S11)に基づいてダイハイト前進動作を行って型締条件設定器で設定した型締力を得る位置までトグル機構16を前進させる。ダイハイト位置センサ28の検出信号が設定値(S11)に達した後は、設定値(S11)を保持するように駆動手段29を制御して位置保持制御を行い次成形の開始信号を待機する。
【0043】
ここで、発泡のための金型キャビティ容積の拡大動作(図6(g))において、可動型32が固定型31に当接(金型タッチ)する直前のクロスヘッド17の移動ストロークに対する可動盤13の移動ストロークは凡そ10対1の比率となる。また、クロスヘッド19の移動速度に対する可動盤13の移動速度も凡そ10対1の比率となる。換言すれば、トグル機構16を備えた型締装置ではクロスヘッド17の位置を制御すれば可動盤13はクロスヘッド位置精度の凡そ10倍程度の精度で制御されることとなり、高精度な型開閉位置制御を行うことが可能である。そして、従来型の金型キャビティ容積の拡大し樹脂を発泡させる射出発泡成形方法及び射出発泡成形装置では成形できなかった成形品であっても、発泡倍率、気泡径、成型品の厚みを高精度に制御でき、表面層が緻密で発泡倍率や気泡径サイズにバラツキが少ない多層射出成形品を得ることができる。
また、2次キャビティを第1層樹脂表面と可動型キャビティ面との間に形成する構成としたが、本発明に適用できる実施形態は本実施例に限らず、第1層樹脂表面と固定型キャビティ面との間に形成する構成であっても良い。
【0044】
図7は他の実施形態を示す樹脂の多層射出成形装置の全体構想図、図8は他の実施形態による成形工程の概略を説明する工程説明図、図9は他の実施形態の2層目樹脂成形材料を発泡させる成形工程の概略を説明する工程説明図である。
図7に示す射出成形装置200について、前述した図1に示す射出成形装置100と異なる点について説明する。射出成形装置200の第2射出ユニット52が、第1射出ユニット51と同様に固定盤12の背面に射出成形装置200の軸線方向に射出ノズル56を介して連通して配されて、射出ノズル56に取付けられたシャットオフバルブ55を切替えることによって2種類の溶融樹脂を金型60のキャビティ33及び34に供給するように構成されている。金型60、型締装置110と制御装置230の基本構成はそれぞれ図1に示したものと同じである。
【0045】
以上のように構成された射出成形装置200の作動について説明する。成形動作手順は、図8に示すように下記の手順により行う。なお、図7の成形動作手順を示すフローチャートを省略した。これは、前述した動作フローに2層目の溶融樹脂をキャビティ内に射出充填したに後に、1層目の樹脂を再充填する工程が追加されているが、この追加部分は図8及び図9に記載された工程説明図で容易に理解できることによる。
(a)先に型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置設定値(S1)に基づいて型閉動作を行う。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S1)に達した後は設定値(S1)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構はメカロック状態)。
(b)第1射出ユニット51のシャットオフバルブ53を開くとともに射出ノズル56内のシャットオフバルブ55を切替え、基材となる1層目の溶融樹脂を金型キャビティ33内に射出充填する。1層目の溶融樹脂が射出充填完了された後、シャットオフバルブ53を閉じるとともに射出ノズル56内のシャットオフバルブ55を2層目の樹脂の射出充填方向に切替え、次いで基材樹脂の冷却固化状態に応じて設定される所定の時間冷却が行われる。
【0046】
(c)基材樹脂の冷却が完了したことを検知した後、型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置(S2)に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させ型締力を解放する。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S2)に達した後は設定値(S2)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。
(d)型締力が解放されストロークセンサ24の検出信号が設定値(S2)に達したことを検出した後、型締条件設定器で設定したダイハイト位置設定値(S12)に基づいてダイハイト後退動作を行って可動盤13を後退させ金型キャビティ33の容積を拡大、第1層樹脂表面と可動型キャビティ面との間に2次キャビティ34を形成する。ダイハイト位置センサ28の検出信号が設定値(S12)に達した後は設定値(S12)を保持するように駆動手段29を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。
【0047】
(e)所定のダイハイト位置(S12)に達したことを検出した後、型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置(S3)に基づいて型閉動作を行って可動盤13を前進させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S3)に達した後は設定値(S3)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構はメカロック状態)。
(f)第2射出ユニット52のシャットオフバルブ54を開いて、核材となる2層目の溶融樹脂を基材樹脂の内部に射出充填する。2層目の溶融樹脂が射出充填完了された後、シャットオフバルブ54を閉じるとともに射出ノズル56内のシャットオフバルブ55を1層目の樹脂の射出充填方向に切替える。
(g)次いで、核材となる2層目の樹脂が固化する前に、第1射出ユニット51を駆動して1層目の溶融樹脂を適量充填し成形品表面の核材充填の痕跡を除去する。そして、この充填動作によってシャットオフバルブ55からノズル先端までの樹脂流路内の溶融樹脂は1層目の樹脂に置き換えられ、次成形時に1層目樹脂と2層目樹脂とが混ざり合うことがない。核材の冷却固化状態に応じて設定される所定の時間冷却が行われる。
【0048】
(h)核材の冷却が完了したことを検知した後、型締条件設定器で設定した型開位置設定値に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値に達した後は型開位置を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。次いで、成形品は金型30から押出され射出成形機外へ取り出される。
(i)型開の完了を検出した後に成形品の押出し動作が行われるとともに、型締条件設定器で設定したダイハイト位置設定値(S11)に基づいてダイハイト前進動作を行って型締条件設定器で設定した型締力を得る位置までトグル機構16を前進させる。ダイハイト位置センサ28の検出信号が設定値(S11)に達した後は、設定値(S11)を保持するように駆動手段29を制御して位置保持制御を行い次成形の開始信号を待機する。
【0049】
次に、他の実施形態における2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形手順を図9に基づいて説明する。本手順において、(a)〜(e)までの手順は前述した図8に記載と同一であり、ここでは、手順の異なる(f)以降について説明する。
(f)第2射出ユニット52のシャットオフバルブ54を開いて、核材となる2層目の発泡剤を含む溶融樹脂を1層目の基材樹脂の内部に射出充填する。2層目の溶融樹脂を射出充填完了の後、シャットオフバルブ54を閉じるとともに射出ノズル56内のシャットオフバルブ55を1層目の樹脂充填方向に切替える。
(g)次いで、2層目の樹脂が発泡また固化する前に、第1射出ユニット51を駆動して1層目の溶融樹脂を適量充填し成形品表面の核材充填の痕跡を除去する。そして、この充填動作によってシャットオフバルブ55からノズル先端までの樹脂流路内の溶融樹脂は1層目の樹脂に置き換えられ、次成形時に1層目樹脂と2層目樹脂とが混ざり合うことがない。核材の気泡核形成状態及び1層目樹脂の冷却固化状態に応じて設定される所定の時間型締力が保持される。
【0050】
(h)1層目の溶融樹脂が再充填され所定の型締保持時間が経過した後、型締条件設定器で設定したクロスヘッド位置(S4)に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させ2次キャビティの容積を拡大する。そして、拡大されたキャビティ内で2層目樹脂を発泡させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値(S4)に達した後は、所定の冷却時間まで設定値(S4)を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。
(i)発泡層の冷却が完了してことを検知した後、型締条件設定器で設定した型開位置設定値に基づいて型開動作を行って可動盤13を後退させる。ストロークセンサ24の検出信号が設定値に達した後は型開位置を保持するように電動サーボモータ22を制御して位置保持制御を行う(トグル機構は屈曲状態)。次いで、成形品は金型30から押出され射出成形機外へ取り出される。
(j)型開の完了を検出した後に成形品の押出し動作が行われるとともに、型締条件設定器で設定したダイハイト位置設定値(S11)に基づいてダイハイト前進動作を行って型締条件設定器で設定した型締力を得る位置までトグル機構16を前進させる。ダイハイト位置センサ28の検出信号が設定値(S11)に達した後は、設定値(S11)を保持するように駆動手段29を制御して位置保持制御を行い次成形の開始信号を待機する。
【0051】
本発明においては、図5、6、8及び図9の(c)〜(e)に示すように、2次キャビティの形成は型締装置110のトグル機構16を駆動して型締力を解放し(c)、次いで型厚調整機構19を可動盤13がトグル機構16のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置(S12)となるまで後退させた後(d)、トグル機構16を駆動してトグル機構16のロッキング状態となるまで可動盤13を前進させて行う(e)こととしたが、例えば、型締力を解放(c)した後、型厚調整機構19の後退動作に同期してトグル機構16を駆動して可動盤13を前進させ、所定の金型キャビティ位置(S12)を検出した際にトグル機構16がロッキング状態となる駆動方法であっても良い。この場合、成形工程の(d)と(e)が同時動作となることから工程時間が短縮される。
【0052】
以上説明したことから明らかなように、本発明においては、1層目の樹脂成形材料を射出充填した後に、2層目の樹脂成形材料をトグル機構がロッキング状態で型閉じされて形成された2次キャビティ内に射出充填するので、2層目の樹脂充填圧力が可動盤に作用してもトグル機構のクロスヘッドに樹脂の充填力が作用することがない。従って、トグル機構が押し戻されて金型キャビティが更に拡大されることがないので、成形品の厚み精度が維持でき、成形不良の発生がなく所望する多層射出成形品を得ることができる。
【0053】
また、1層目の樹脂成形材料を射出充填した後に、トグル機構がロッキング状態で型閉じされて2次キャビティを形成し、1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填するので、2層目の樹脂充填圧力が可動盤に作用してもトグル機構のクロスヘッドに樹脂の充填力が作用することがない。従って、トグル機構が押し戻されて金型キャビティが更に拡大されることがないので、成形品の厚み精度が維持でき、成形不良の発生がなく所望する多層射出成形品を得ることができる。
そして、冷却完了後の型開工程の開始から次サイクルの型閉開始までの間に、型厚調整機構を駆動してトグル機構を1層目成形の型締力設定位置まで移動させることから、成形サイクルタイムを延長することがない。
【0054】
本発明の実施形態において、トグル機構がロッキング状態となる所定のクロスヘッド位置設定値(S1)で1層目の樹脂成形材料を金型キャビティ内に射出充填することとしたが、例えば、クロスヘッド位置設定値をトグル機構が屈曲状態である金型タッチ点からトグル機構がロッキング状態となる所定のクロスヘッド位置設定値(S1)の任意の中間位置に設定する低圧型締状態や、金型タッチ点から所定の隙間を設けて可動型を配した所定のクロスヘッド位置に設定する型開保持状態の方法を適用することができる。
この場合においては、1層目の樹脂成形材料を射出充填の後トグル機構を駆動してクロスヘット位置設置値(S1)とする構成が好ましい。
【0055】
さらに、2層目の樹脂成形材料は発泡剤を含む材料を用いるので、発泡層を有する多層射出成形品や内部を発泡させたサンドイッチ成形品を得ることができる。そして、発泡における金型キャビティ容積の拡大は、トグル機構の倍率特性を利用し、金型タッチ点にある型締装置の可動盤を型開方向に移動させた際に検出したクロスヘッド位置と可動盤位置とのデータに基づいて制御する。この方法によれば、所望する発泡倍率、気泡径を有する発泡多層射出成形品を得ることができる。
また、1層目樹脂に発泡剤を含む樹脂成形材料を用い、第1層目を発泡させた多層射出成形品や1層目及び2層目いずれも発泡剤を含む樹脂成形材料を用いて、発泡層と発泡層を積層した多層射出成形品を得ることができる。そして、本発明の実施形態では発泡成形動作を所定の発泡型開位置(S4)まで1段で可動盤を後退させる構成としたが、成形する樹脂材料や発泡剤の種類に応じて多段で可動盤を後退させる構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明実施形態による樹脂の多層射出成形装置の全体構想図である。
【図2】型厚調整機構を概念的に示した構想図面である。
【図3】成形動作手順を示すフローチャートである。
【図4】2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形動作手順を示すフローチャートである。
【図5】成形工程の概略を説明する工程説明図である。
【図6】2層目の樹脂成形材料を発泡させる成形工程の概略を説明する工程説明図である。
【図7】他の実施形態を示す樹脂の多層射出成形装置の全体構想図である。
【図8】他の実施形態による成形工程の概略を説明する工程説明図である。
【図9】他の実施形態の2層目樹脂成形材料を発泡させる成形工程の概略を説明する工程説明図である。
【符号の説明】
【0057】
11 リンクハウジング
12 固定盤
13 可動盤
16 トグル機構
17 クロスヘッド
18 リンク駆動機構
19 型厚調整機構
21 タイバー
22 電動サーボモータ
23 クロスヘッド駆動軸
24 ストロークセンサ
25 型締力センサ
26 可動盤位置センサ
27 タイバーナット
28 ダイハイト位置センサ
29 駆動手段
30、60 金型
31、61 固定型
32、62 可動型
33 金型キャビティ
34 2次キャビティ
41、51 第1射出ユニット
42、52 第2射出ユニット
43、44、53、54、55 シャットオフバルブ
56 射出ノズル
71 型締制御部
72 射出制御部
100、200 射出成形装置
110 型締装置
120、220 射出装置
130、230 制御装置
S1 クロスヘット位置(1層目型締完了設定値)
S2 クロスヘット位置(型締力解放設定値)
S3 クロスヘット位置(2層目型締完了設定値)
S4 クロスヘット位置(発泡型開設定値)
S11 ダイハイト位置(1層目成形設定位置)
S12 ダイハイト位置(2層目成形設定位置)
t1 2層目冷却時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置とを用いて、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形方法であって、
金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、該形成した2次キャビティに2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、
前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させて行うことを特徴とする樹脂の多層射出成形方法。
【請求項2】
金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置とを用いて、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形方法であって、
金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、第1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、
前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させて行うことを特徴とする樹脂の多層射出成形方法。
【請求項3】
前記2層目の樹脂成形材料を射出充填した後、前記可動盤が後退して多層成形品を取り出すための型開の開始から次サイクルの型閉開始までの間で、1層目樹脂充填の際の型締力設定位置となるまで前記型厚調整機構を駆動してトグル機構を前進させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂の多層射出成形方法。
【請求項4】
前記1層目及び/又は2層目が物理発泡剤や化学発泡剤などの発泡剤を含んだ樹脂成形材料であって、前記1層目及び/又は2層目の射出充填後にトグル機構を駆動して前記可動盤を所定の発泡位置まで後退させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の樹脂の多層射出成形方法。
【請求項5】
金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置と、を備え、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形装置であって、
金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、該形成した2次キャビティに2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、
前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させるように構成したことを特徴とする樹脂の多層射出成形装置。
【請求項6】
金型キャビティに少なくとも2種類の樹脂成形材料を射出充填する射出装置と、トグル機構を用いて金型の開閉と型締とを行う型締装置と、を備え、多層成形品を得る樹脂の多層射出成形装置であって、
金型キャビティ内に1層目の樹脂成形材料を射出充填して成形した後に、可動盤を後退させ前記金型キャビティを拡大し第1層目の樹脂成形材料と金型キャビティ面との間に2次キャビティを形成して、第1層目の樹脂成形材料の内部に2層目の樹脂成形材料を射出充填するに際し、
前記2次キャビティの形成は、型締装置のトグル機構を駆動して型締力を解放し、次いで、前記可動盤がトグル機構のロッキング状態で所定の金型キャビティ拡大位置となるまで型厚調整機構を駆動してトグル機構を後退させた後、前記トグル機構を駆動してトグル機構のロッキング状態まで可動盤を前進させるように構成したことを特徴とする樹脂の多層射出成形装置。
【請求項7】
前記型厚調整機構は、型締装置のリンクハウジング背面の四隅に挿通して架設されタイバーに螺合するタイバーナットそれぞれに設けた駆動手段により四軸が同期または個別に駆動するように構成したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の樹脂の多層射出成形装置。
【請求項8】
前記1層目及び/又は2層目が物理発泡剤や化学発泡剤などの発泡剤を含んだ樹脂成形材料であって、前記1層目及び/又は2層目の射出充填後にトグル機構を駆動して前記可動盤を所定の発泡位置まで後退させるように構成したことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の樹脂の多層射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−94052(P2008−94052A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281396(P2006−281396)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】