説明

気相成長装置、気相成長装置における対向面部材またはサセプタ上面カバー取外し方法

【課題】対向面部材及び/またはサセプタ上面カバーの取外しの際にこれらに付着した生成物の落下によって悪影響を受けることのない気相成長装置を提供する。
【解決手段】チャンバー本体3と、チャンバー蓋5と、チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタ11と、サセプタ11に対向配置される対向面部材13とを備えた気相成長装置であって、対向面部材13を保持して昇降可能に構成された対向面部材昇降機構14と、対向面部材昇降機構14に保持された対向面部材13の下方に移動して平面視でサセプタ11を覆うように配置される搬送板16を有すると共に搬送板16に対向面部材13を載置して搬送する搬送装置とを備え、対向面部材昇降機構14は対向面部材13の保持と保持解除を行うことができる保持部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を加熱しながら気相原料を供給して基板上に薄膜を堆積させる気相成長装置、気相成長装置における対向面部材またはサセプタ上面カバー取外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サセプタに保持された基板を所定温度に加熱した状態で反応室内に原料ガスを供給し、前記基板面に薄膜を堆積(成長)させる気相成長装置として、複数枚の基板に均一に薄膜を形成するため、サセプタを回転させるとともに、該サセプタの回転に伴って基板を載置する基板載置部材(基板トレイ)を回転させ、成膜中の基板を自公転させる機構を備えた気相成長装置が知られている。
【0003】
図13は特許文献1に開示された気相成長装置70の断面図である。特許文献1に開示された気相成長装置70は、上部中央にガス導入管71を配設した偏平円筒状のチャンバー72内に、円盤状のカーボンからなるサセプタ73と、該サセプタ73の外周部分の同心円上に等間隔で配置された複数の基板ホルダー74と、サセプタ73の上方に対向配置されてチャンバー72内を上下に区画し、サセプタ73側に反応室75を形成する仕切板76とを備えている。
【0004】
チャンバー72は、反サセプタ側の上方が開口したチャンバー本体77と、該チャンバー本体77の周壁上部にOリングを介して気密に装着されるチャンバー蓋78とに分割形成されている。チャンバー本体77の底部中央部には、サセプタ73を回転させるための回転駆動軸79が設けられ、該回転駆動軸79でサセプタ73を回転させることにより、基板80を保持した基板ホルダー74がサセプタ73の中心に対して公転するとともに、サセプタ73の外周に設けられた自転歯車機構によって自転する仕組みになっている。
【0005】
また、基板ホルダー74の下方には、基板80を加熱するためのヒーター81がリング状に配設され、サセプタ73の外周側にはリング状の排気通路82が設けられている。
仕切板76は、周方向及び径方向に複数に分割形成されており、外周側に配置される大径リング状の外周側仕切板76aと、その内周側で周方向に分割された複数の扇形の分割体を組み合わせた小径リング状の内周側仕切板76b(本発明の「対向面部材」に相当)とで形成されている。外周側仕切板76aは、その外周縁がチャンバー本体77の周壁内周に載置された状態で所定位置に固定される。内周側仕切板76bは、基板80に対向する位置に配置されており、その外周縁が外周側仕切板76aの内周縁上に載置されるとともに、その内周縁がガス導入管71の下端に設けられたノズル84の外周縁上に載置されて着脱可能に形成され、上面には摘み部76cが突設されている。
【0006】
また、前記サセプタ73及び基板ホルダー74の上面には、周方向及び径方向に複数に分割形成されたサセプタカバー85が載置されている。このサセプタカバー85は、各基板ホルダー74の上面を覆い、基板ホルダー74と共に回転するホルダーカバー85aと、ホルダーカバー85aで覆われる部分以外のサセプタ73の上面を覆うカバー本体85bとで形成されており、ホルダーカバー85aには基板80を保持するための開口が設けられている。
【0007】
チャンバー蓋78は、外周部に設けた複数のブラケット86aを介して昇降手段86に取り付けられ、ガス導入管71の上部に設けた上部フランジ71aとの間に円筒状のベローズ87を気密に取り付けており、昇降手段86を上昇方向に作動させてベローズ87を縮ませながらチャンバー蓋78を上昇させることにより、チャンバー本体77の開口を開放できるように形成されている。
【0008】
上記のように構成された気相成長装置70を使用して基板80に薄膜を成長させる際には、1回の成膜操作が終了したときに、チャンバー蓋78を上昇させ、仕切扉31を開いて薄膜が形成された基板80を取り出すとともに、内周側仕切板76bを取り外し、あらかじめ用意した新品又は洗浄後の清浄な状態の内周側仕切板76bをチャンバー72内の所定位置に配置するとともに、新たな基板80を所定位置に設置した状態で次の成膜操作を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008―262967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の気相成長装置70においては、基板80の取り出しの際に、内周側仕切板76bを取り外して、新品又は洗浄後の清浄な状態の内周側仕切板76bに取り替えるとしている。
しかしながら、内周側仕切板76bの取り外しの際に、内周側仕切板76bに付着した生成物などのゴミがサセプタ73の表面に落下する恐れがある。サセプタ73の表面に前記生成物が落下すると、これが次に薄膜成長する際に薄膜内に混入して、薄膜品質の不良要因となる。
【0011】
また、サセプタ73の上面を覆うカバー本体85b(本発明の「サセプタ上面カバー」に相当)についても、内周側仕切板76bと同様に反応生成物が付着するため、装置からカバー本体85bを取り外して洗浄する必要がある。このカバー本体85bの取り外しの際に、カバー本体85bに付着した生成物がサセプタ面に落下する恐れがある。サセプタ面に生成物が落下すると、カバー本体85aを設置したときに表面側に凹凸ができ、これによって気流の乱れが発生したり、あるいは反応領域の温度分布が不均一になったりして、同一品質の薄膜を生成できなくなるという問題がある。
【0012】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、対向面部材及び/またはサセプタ上面カバーの取外しの際にこれらに付着した生成物の落下によって悪影響を受けることのない気相成長装置を得ることを目的としている。
また、対向面部材及び/またはサセプタ上面カバーの取外しの際にこれらに付着した生成物の落下によって悪影響を受けることのない気相成長装置における対向面部材及び/またはサセプタ上面カバー取外し方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る気相成長装置は、チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させるものであって、
前記対向面部材を保持して昇降可能に構成された対向面部材昇降機構と、該対向面部材昇降機構に保持された前記対向面部材の下方に移動して平面視で前記サセプタを覆うように配置される搬送板を有すると共に該搬送板に前記対向面部材を載置して搬送する搬送装置とを備え、前記対向面部材昇降機構は前記対向面部材の保持と保持解除を行うことができる保持部を備えてなることを特徴とするものである。
【0014】
なお、搬送装置は、例えば搬送ロボットと搬送板から構成することができ、搬送板を搬送ロボットと分離独立させ、搬送ロボットが適宜必要なときに搬送板を保持して使用するようにしてもよい。
【0015】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記保持部は、前記対向面部材に形成した係止部に対して係脱可能に形成された係合部を備えてなることを特徴とするものである。
【0016】
(3)本発明に係る気相成長装置は、チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタの上面を覆うサセプタ上面カバーと、前記サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させるものであって、
前記サセプタ上面カバーを保持して昇降可能に構成されたサセプタ上面カバー昇降装置と、該サセプタ上面カバー昇降装置に保持された前記対向面部材の下方に移動して平面視で前記サセプタを覆うように配置される搬送板を有すると共に該搬送板に前記サセプタ上面カバーを載置して搬送する搬送装置とを備え、前記サセプタ上面カバー昇降装置は前記サセプタ上面カバーの保持と保持解除を行うことができる保持装置を備えてなるものである。
【0017】
なお、サセプタ上面カバー昇降装置は、チャンバー本体と分離独立したものであって、搬送ロボットなどによって所定の場所に搬送されて使用されるものであってもよい。
また、搬送装置は、(1)で説明したのと同様に、例えば搬送ロボットと搬送板から構成することができ、搬送板を搬送ロボットと分離独立させ、搬送ロボットが適宜必要なときに搬送板を保持して使用するようにしてもよい。
【0018】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、保持装置は、サセプタ上面カバーを吸着して保持する吸着保持装置であることを特徴とするものである。
【0019】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記サセプタは、自身が公転すると共に、前記基板を支持して自転可能な複数の基板戴置部を備えてなることを特徴とするものである。
【0020】
(6)本発明の気相成長装置における対向面部材の取外し方法は、チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させる気相成長装置における前記対向面部材の取外し方法であって、
前記チャンバー蓋を開放して前記対向面部材を上昇させる工程と、該対向面部材の下方に平面視で前記サセプタを覆うように搬送板を配置する工程と、前記対向面部材を取り外して該搬送板に載置してチャンバー外に搬送する工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
(7)本発明の気相成長装置におけるサセプタ上面カバー取外し方法は、チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタの上面を覆うサセプタ上面カバーと、前記サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させる気相成長装置におけるサセプタ上面カバー取外し方法であって、
前記サセプタ上面カバーを保持して上昇させる工程と、該サセプタ上面カバーの下方に平面視で前記サセプタを覆うように搬送板を配置する工程と、該搬送板に前記サセプタ上面カバーを載置して搬送する工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の気相成長装置においては、対向面部材を保持して昇降可能に構成された対向面部材昇降機構と、該対向面部材昇降機構に保持された前記対向面部材の下方に移動して平面視で前記サセプタを覆うように配置される搬送板を有すると共に該搬送板に前記対向面部材を載置して搬送する搬送装置とを備え、前記対向面部材昇降機構は前記対向面部材の保持と保持解除を行うことができる保持部を備えてなるので、対向面部材の取外しに際して、対向面部材を上昇させた後、搬送板を対向面部材とサセプタの間に挿入し、該搬送板によって対向面部材を搬送するようにしたので、対向面部材の取外しの際に対向面部材に付着している生成物などのゴミがサセプタ側に落下するのを防止でき、成膜時においてゴミなどの影響を受けることなく均質な成膜を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の説明図であり、従来例を示した図13のA部に相当する部分を示すものである。
【図2】図1の一部を拡大して示す説明図である。
【図3】図1に示した気相成長装置の一部を拡大して示す説明図であり、図3(b)は図3(a)の中心部分を拡大して示している。
【図4】図1に示した気相成長装置の一部を拡大して示す説明図であり、図4(b)は図4(a)の矢視A−A図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、対向面部材昇降機構14を下面側から見た状態を示している。
【図6】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の全体を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、対向面部材13の交換手順の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、対向面部材13の交換手順の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、対向面部材13の交換手順の説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、サセプタ上面カバー12の交換手順の説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、サセプタ上面カバー12の交換手順の説明図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の動作説明図であり、サセプタ上面カバー12の交換手順の説明図である。
【図13】従来の気相成長装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施様態に係る気相成長装置を図1〜図8を用いて説明する。
本実施の形態に係る気相成長装置1は、図1〜図8に示すように、チャンバー本体3と、該チャンバー本体3に設けられて前記チャンバー本体3を開閉するチャンバー蓋5とを有するチャンバー7と、該チャンバー7内に設置されて基板9が載置されるサセプタ11と、サセプタ11の上面を覆うサセプタ上面カバー12と、該サセプタ11に対向配置される対向面部材13と、対向面部材13を保持して昇降可能に構成された対向面部材昇降機構14と、サセプタ上面カバー12を保持して昇降可能に構成されたサセプタ上面カバー保持装置15(図6、図10参照)と、対向面部材13またはサセプタ上面カバー12を載置する搬送板16を有すると共に搬送板16を保持して搬送する搬送装置17とを備えている。
本実施の形態の気相成長装置1においては、原料ガスを供給する原料ガス導入ノズル18は、チャンバー本体3側に設けられ、下方から上方に向かって原料ガスが流れるという構造になっている。
なお、図1において、搬送板16の一部が空中に浮いたように示されているが、これは搬送板16が後述する搬送ロボット45(図示なし)によって保持されて待機している状態を示したものである。
以下、気相成長装置1の主な構造を詳細に説明する。
【0025】
<チャンバー>
チャンバー7は、全体形状が偏平円筒状をしており、下部側のチャンバー本体3と、チャンバー本体3を開閉するチャンバー蓋5とを備えている。
チャンバー本体3の中心部には、原料ガス導入ノズル18が設置され、サセプタ11に載置された基板9に原料ガスを供給できるようになっている。
チャンバー本体3の外周縁部は本体部フランジ19となっており、チャンバー蓋5の蓋部フランジ21と当接してチャンバー7を気密に閉止できるようになっている(図1参照)。
チャンバー本体3の外縁部であって蓋部フランジ21の内側には、供給された原料ガスの排出流路となるリング状の溝部23が形成されている。そして、溝部23の外壁25には、対向面部材13の外周を支持するリング状の対向面支持部材26が設置されている。
チャンバー本体3には、サセプタ11が公転(回転)可能に設置されており、サセプタ11における基板載置部29の下方には、基板9を加熱するためのヒーター27が設置されている。
【0026】
チャンバー蓋5は、図示しない昇降機構によってチャンバー本体3に対して昇降するようになっている。また、チャンバー蓋5の外周縁部には、蓋部フランジ21が形成され、この蓋部フランジ21が本体部フランジ19に対向配置されている。
【0027】
<サセプタ>
サセプタ11は全体形状が円板状をしており、上述したように、チャンバー7内に公転可能に設置されている。サセプタ11には自転可能な複数の基板載置部29が設けられ、この基板載置部29に薄膜が形成される基板9が載置されている。
サセプタ11は、図示しない駆動機構によって全体が公転(回転)し、この公転に連動して基板載置部29が自転する機構になっている。
サセプタ11の上面には、サセプタ上面カバー12が着脱可能に設置されている。図2(a)はサセプタ上面カバー12を設置した状態であり、サセプタ上面カバー12は図2(b)に示すように、上方に持ち上げることによって取り外すことができるようになっている。
【0028】
<対向面部材>
対向面部材13は、図3(a)に示すようにドーナツ板状をしており、その周縁部に段部31が形成されている。この段部31が対向面部支持部材26に支持されることにより、対向面部材13は、サセプタ11との間に原料ガス流路32を形成して設置される。
また、対向面部材13の中心部を拡大して示す図3(b)に示すように、対向面部材13の中心部には、径方向中心に向かって突出する円弧状の係止片33が3箇所形成されている。
【0029】
<対向面部材昇降機構>
対向面部材昇降機構14は、対向面部材13を保持して図示しない駆動部によって昇降可能かつ回動可能に構成されている。対向面部昇降機構は、図4に示すように、軸部35の下端部に円板状の保持部37を有している。
保持部37は、図4(b)に示すように、径方向に突出する円弧状の係合片39が3箇所形成されている。係合片39が対向面部材13の係止片33に係止することによって、保持部37は対向面部材13を保持する。
【0030】
係合片39と所定の隙間を介して、かつ平面視で係合片39を覆うように円環板状部材41が保持部37の上面側にその全周に亘って設置されている。この円環板状部材41は保持部37に対向面部材13を保持したときに対向面部材13の内端部が浮き上がるのを防止すると共に成膜時に原料ガス流路32からガスが漏れるのを防止する。
【0031】
保持部37によって対向面部材13を保持する仕組みを説明する。図5は保持部37と対向面部材13を下面側から見た状態を示しており、図5(a)は対向面部材13の係止片33と保持部37の係合片39が交互に配置された状態を示し、図5(b)は対向面部材13の係止片33に保持部37の係合片39を係止させた状態を示している。
図5(a)に示すように、係合片39と係止片33が交互に配置された状態では係止片33と係合片39が係止していないので保持部37を上方に移動することで対向面部材13と保持部37は分離できる。
図5(b)に示す状態は、図5(a)に示す状態から60度回動させた状態に相当し、この状態では対向面部材13の係止片33に保持部37の係合片39を係止する。この状態で保持部37を上昇させると対向面部材13は保持部37と共に上昇する。
【0032】
<サセプタ上面カバー保持装置>
サセプタ上面カバー保持装置15は、サセプタ上面カバー12を保持できると共に保持した状態で昇降可能で、かつ保持の解除ができるように構成されている。サセプタ上面カバー保持装置15の構成は種々のものが考えられるが、例えば真空チャックにより対象物を保持する真空吸着装置により構成してもよい。
サセプタ上面カバー保持装置15は、図6に示すように、グローブボックス43内に設置されている。なお、サセプタ上面カバー保持装置15の設置位置は、比較的高い位置にあり、サセプタ上面カバー保持装置15の下方にはチャンバー7から取り外されたサセプタ11を載置するスペースが確保されている。
【0033】
<搬送装置>
搬送装置17は、図6に示すように、グローブボックス43内に設置された搬送ロボット45と、同じくグローブボックス43内に載置された搬送板16によって構成される。
搬送板16は円板からなり、搬送ロボット45によってその一部を保持されてグローブボックス43内を移動する。
また、搬送板16は、サセプタ11の上方に配置したときに、平面視でサセプタ11を覆い、対向面部材13あるいはサセプタ上面カバー12から落下するゴミ(気相生成物の滓など)などを受け止めることができると共に対向面部材13あるいはサセプタ上面カバー12を載置して搬送することができる。
【0034】
なお、チャンバー7や搬送装置17が設置されているグローブボックス43には、対向面部材13やサセプタ上面カバー12の受渡しをするためのパスボックス47が設けられている。パスボックス47には、真空ポンプ49や窒素ガス供給管51が接続され、パスボックス47内の雰囲気を窒素雰囲気に置換できるようになっている。
なお、グローブボックス43にも図示しない窒素ガス供給管が接続されており、該窒素供給管からの窒素パージによってグローブボックス43内を窒素雰囲気に置換できるようになっている。
【0035】
上記のように構成された本実施の形態の気相成長装置1の動作を、「薄膜成長と基板の取出し及び再セット」、「対向面部材交換」、「サセプタ上面カバー交換」に分けて説明する。
【0036】
<薄膜成長、基板の取出し及び再セット>
気相成長装置1を使用して基板9に薄膜を成長させる場合、図1に示すように、基板載置部29に基板9を載置し、対向面部材13をサセプタ11に対向配置し、チャンバー蓋5を閉める。そして、サセプタ11を公転させると共に基板載置部29を自転させ、ヒーター27によって基板9を加熱し、この状態で原料ガスを流すことで基板9の表面に薄膜が成長する。
【0037】
基板9に所定の薄膜が形成されると、対向面部材昇降機構14の係合片39を対向面部材13の係止片33に係合させた状態でチャンバー蓋5を上昇させる。チャンバー蓋5を上昇させることにより、図4に示すように、対向面部材13がチャンバー蓋5と共に持ち上げられ、基板9が露出する。
したがって、特許文献1のように、基板9を取り出す際に別途、対向面部材13(内周側仕切板16b)を取り外す動作が不要であり、効率的な取り出し作業ができる。
薄膜が形成された基板9が取り出されると、新しい基板9を基板載置部29にセットして、チャンバー蓋5を下降させて蓋を閉じて、上記と同様の動作を行う。
【0038】
<対向面部材交換>
基板9に対する薄膜の成長を数回実施すると、対向面部材13を交換するために取り外す必要がある。
この場合、対向面部材昇降機構14の係合片39を対向面部材13の係止片33に係止させた状態で(図5(b)参照)、チャンバー蓋5及び対向面部材昇降機構14を上昇させると、図7に示すように、対向面部材13が対向面部材昇降機構14に保持されて上昇する。対向面部材昇降機構14に保持されている対向面部材13とサセプタ11の間に、搬送板16を搬送ロボット45によって挿入する(図7参照)。搬送板16が挿入されると、図8に示すように、対向面部材昇降機構14を下降させ、対向面部材13を搬送板16に載置する。この状態で、対向面部材昇降機構14を回動させ、係止片33と係合片39が交互に配置される状態にする(図5(a)参照)。そして、対向面部材昇降機構14を上昇させると、図9に示すように、対向面部材13が対向面部材昇降機構14から分離して搬送板16の上に残置される。その後、対向面部材13が載置された搬送板16を搬送ロボット45によってパスボックス47に搬送し、作業者によって搬送された対向面部材13を取り出すと共に洗浄済みの対向面部材13を搬送板16に載置する。
【0039】
そして、搬送ロボット45を駆動して搬送板16をチャンバー7内に搬送し(図9参照)、前述した対向面部材13の取外しの動作と逆の動作を行うことによって対向面部材13を対向面部材昇降機構14に設置する。つまり、図9に示す状態から、対向面部材昇降機構14を下降させ(図8参照)、係止片33と係合片39が交互に配置される状態にし(図5(a)参照)、この状態で、対向面部材昇降機構14を回動させて係止片33と係合片39を係止させる(図5(b)参照)。そして、対向面部材昇降機構14を上昇させると、対向面部材13が対向面部材昇降機構14に保持されて対向面部材昇降機構14と共に上昇する(図7参照)。搬送板16をチャンバー7から抜き出す。
【0040】
<サセプタ上面カバー取替え>
次にサセプタ上面カバー12の取替え方法を、図6、図10〜図12に基づいて説明する。なお、図10〜図12はサセプタ11を搬送ロボット45によってチャンバー7の外に取り出してサセプタ上面カバー保持装置15の下方に載置した状態を図示している。
図10に示されるように、サセプタ11が所定の位置に載置されると、サセプタ上面カバー保持装置15を下降させて、サセプタ上面カバー12を吸着保持し、さらに保持した状態で上昇させる(図11参照)。
【0041】
次に、搬送板16を搬送ロボット45によって搬送して、サセプタ上面カバー保持装置15によって保持されているサセプタ上面カバー12の下方に配置する。このとき、サセプタ11の表面は平面視で搬送板16に覆われる。
サセプタ上面カバー保持装置15を下降させ、サセプタ上面カバー12を搬送板16に載置させた状態でサセプタ上面カバー保持装置15の保持を解除してサセプタ上面カバー12を搬送板16に載置する(図12参照)。このとき、サセプタ11の上方には搬送板16が配置されているので、サセプタ上面カバー12の取外しの際にサセプタ上面カバー12に付着しているゴミなどがサセプタ11に落下することがない。
その後、サセプタ上面カバー12が載置された搬送板16を搬送ロボット45によってパスボックス47に搬送し、搬送されたサセプタ上面カバー12を作業者によって取り出すと共に洗浄済みのサセプタ上面カバー12を搬送板16に載置する。
【0042】
そして、搬送ロボット45を駆動して搬送板16をサセプタ11の上方まで搬送し(図12参照)、前述したサセプタ上面カバー取外しの動作と逆の動作を行うことによってサセプタ上面カバー12をサセプタ上面に設置する。つまり、図12に示す状態から、サセプタ上面カバー保持装置15を下降させ、搬送板16に載置されているサセプタ上面カバー12を吸着保持し、搬送板16を抜き取る(図11参照)。
次に、サセプタ上面カバー保持装置15を下降させ、所定の位置において吸着保持を解除してサセプタ上面カバー12をサセプタ11の上面に設置する(図10参照)。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、対向面部材13の取外しに際して、対向面部材13を上昇させた後、対向面部材13を載置できると共に平面視でサセプタ11を覆うことのできる搬送板16を対向面部材13とサセプタ11の間に挿入し、該搬送板16によって対向面部材13を搬送するようにしたので、対向面部材13の取外しの際に対向面部材13に付着しているゴミなどがサセプタ11側に落下するのを防止できる。
また、同様に、サセプタ上面カバー12の取外しに際しても、サセプタ上面カバー12に付着しているゴミなどがサセプタ11の表面に落下するのを防止できる。
このように、対向面部材13及びサセプタ上面カバー12の交換の際にこれらに付着したゴミなどがサセプタ11側に落下するのを防止できるので、成膜時においてゴミなどの影響を受けることなく均質な成膜を行うことができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、対向面部材13を対向面部材昇降機構14によって保持して昇降できるようにしているので、チャンバー蓋5の昇降にあわせて基板9を露出させることができる。このため、基板9の出し入れの都度、対向面部材13を別途取り外す必要がなく、作業効率がよい。また、基板9の出し入れの都度、搬送ロボット45によって対向面部材13を搬送するとすれば搬送ロボット45の使用頻度が高くなるが、本実施の形態では基板9の出し入れと対向面部材13の交換を切り離すことができ、それ故に搬送ロボット45の使用頻度を下げることができ、搬送ロボット45の長寿命化を図ることができる。
【0045】
なお、上記の説明においては、対向面部材13及びサセプタ上面カバー12の取り外しを機械装置によって自動で行うようにした例を示したが、対向面部材13及びサセプタ上面カバー12の取り外しを人手によって行うようにしてもよい。
また、対向面部材13の交換とサセプタ上面カバー12の交換順序は特に限定されるものではなく、いずれを先に行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、特に化合物半導体を成膜する半導体製造装置に関し、該装置によって製造される半導体の品質向上に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 気相成長装置 3 チャンバー本体 5 チャンバー蓋
7 チャンバー 9 基板 11 サセプタ
12 サセプタ上面カバー 13 対向面部材 14 対向面部材昇降機構
15 サセプタ上面カバー保持装置 16 搬送板
17 搬送装置 18 原料ガス導入ノズル 19 本体部フランジ
21 蓋部フランジ 23 溝部 25 外壁
26 対向面支持部材 27 ヒーター 29 基板載置部
31 段部 32 原料ガス流路 33 係止部
35 軸部 37 保持部 39 係合片
41 円環板状部材 43 グローブボックス 45 搬送ロボット
47 パスボックス 49 真空ポンプ 51 窒素ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させる気相成長装置であって、
前記対向面部材を保持して昇降可能に構成された対向面部材昇降機構と、該対向面部材昇降機構に保持された前記対向面部材の下方に移動して平面視で前記サセプタを覆うように配置される搬送板を有すると共に該搬送板に前記対向面部材を載置して搬送する搬送装置とを備え、前記対向面部材昇降機構は前記対向面部材の保持と保持解除を行うことができる保持部を備えてなることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記対向面部材に形成した係止部に対して係脱可能に形成された係合部を備えてなることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタの上面を覆うサセプタ上面カバーと、前記サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させる気相成長装置であって、
前記サセプタ上面カバーを保持して昇降可能に構成されたサセプタ上面カバー昇降装置と、該サセプタ上面カバー昇降装置に保持された前記対向面部材の下方に移動して平面視で前記サセプタを覆うように配置される搬送板を有すると共に該搬送板に前記サセプタ上面カバーを載置して搬送する搬送装置とを備え、前記サセプタ上面カバー昇降装置は前記サセプタ上面カバーの保持と保持解除を行うことができる保持装置を備えてなることを特徴とする気相成長装置。
【請求項4】
前記保持装置は、サセプタ上面カバーを吸着して保持する吸着保持装置であることを特徴とする請求項3記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記サセプタは、自身が公転すると共に、前記基板を支持して自転可能な複数の基板戴置部を備えてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の気相成長装置。
【請求項6】
チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させる気相成長装置における前記対向面部材の取外し方法であって、
前記チャンバー蓋を開放して前記対向面部材を上昇させる工程と、該対向面部材の下方に平面視で前記サセプタを覆うように搬送板を配置する工程と、前記対向面部材を取り外して該搬送板に載置してチャンバー外に搬送する工程とを備えたことを特徴とする気相成長装置における前記対向面部材の取外し方法。
【請求項7】
チャンバー本体と、該チャンバー本体に設けられて前記チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋と、前記チャンバー本体内に設置されて基板が載置されるサセプタと、該サセプタの上面を覆うサセプタ上面カバーと、前記サセプタに対向配置される対向面部材とを備え、前記サセプタに前記基板を載置した状態で前記基板を加熱し、前記対向面部材と前記サセプタとで形成される流路に原料ガスを供給することによって前記基板に薄膜を堆積させる気相成長装置におけるサセプタ上面カバー取外し方法であって、
前記サセプタ上面カバーを保持して上昇させる工程と、該サセプタ上面カバーの下方に平面視で前記サセプタを覆うように搬送板を配置する工程と、該搬送板に前記サセプタ上面カバーを載置して搬送する工程とを備えたことを特徴とする気相成長装置におけるサセプタ上面カバー取外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−255083(P2010−255083A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109862(P2009−109862)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(509054005)大陽日酸イー・エム・シー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】