説明

水中監視システム

【課題】水上又は水中を航行する監視対象物を、広範囲にわたり監視することができる水中監視システムを得る。
【解決手段】水中に複数設置され、水上又は水中を航行する航行船舶3の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信する監視センサ1と、水中に1又は複数設置され、水中を航走する水中航走体2とを備え、水中航走体2は、監視センサ1から受信した航行位置に関する情報に基づき、水中航走体2と航行船舶3とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ航走するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水上及び水中を航行する監視対象物を監視する水中監視システムに関し、特に、広範囲にわたって監視対象物の監視を行う水中監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の監視対象物を監視するものとして、例えば、監視対象物を音響によるレーダ探知により遠距離から監視し、所定の位置に固定された音響ビデオカメラに監視対象物が接近した際には、音響ビデオカメラにより映像を撮影する、又は、音響レーダ及び音響ビデオカメラを航行する船舶等に取り付けて監視対象物に接近して撮影することにより監視を実現する水中セキュリティソナーシステムが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】浅田 昭、”文部科学省科学技術振興調整費による「水中セキュリティソナーシステムの開発」”、[online]、2006、東京大学生産技術研究所海中工学研究センター浅田研究室、[2006年7月6日検索]、インターネット<http://unac.iis.u-tokyo.ac.jp/uwss/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水上又は水中を航行する監視対象物を、広範囲の海域にわたって監視すると共に、監視対象物の近距離での監視を行うには、多数の監視装置を広範囲に敷設する必要があり、敷設においては多大な時間と労力を要し、また、監視システムのコストがかかる、という問題点があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、水上又は水中を航行する監視対象物を、広範囲にわたり監視することができる水中監視システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水中監視システムは、水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信する監視装置と、水中に1又は複数設置され、水中を航走する水中航走体とを備え、前記水中航走体は、前記監視装置から受信した前記航行位置に関する情報に基づき、当該水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ航走するものである。
【0007】
また、水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信する監視装置と、水中に1又は複数設置され、動画又は静止画を撮影する監視カメラを有し、水中を航走する水中航走体とを備え、前記水中航走体は、前記監視装置から受信した前記航行位置に関する情報に基づき、当該水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ航走して前記監視対象物を撮影するものである。
【0008】
また、前記水中航走体は、前記監視装置から送信された複数の時刻における前記航行位置に関する情報に基づき、該時刻毎の前記監視対象物の相対位置を求め、前記複数の時刻での前記相対位置に基づき、前記監視対象物の航行方位及び航行速力を求め、前記監視対象物の相対位置、航行方位及び航行速力の情報と、予め記録された当該水中航走体の航走速力の情報とに基づき、当該水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求めるものである。
【0009】
また、水中に1又は複数設置され、水中を航走する水中航走体と、水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信すると共に、当該航行位置に関する情報に基づき、前記水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、求めた会合位置の情報を送信する監視装置とを備え、前記水中航走体は、受信した前記会合位置の情報に基づき、当該会合位置へ航走するものである。
【0010】
また、水中に1又は複数設置され、動画又は静止画を撮影する監視カメラを有し、水中を航走する水中航走体と、水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信すると共に、当該航行位置に関する情報に基づき、前記水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、求めた会合位置の情報を送信する監視装置とを備え、前記水中航走体は、受信した前記会合位置の情報に基づき、当該会合位置へ航走して前記監視対象物を撮影するものである。
【0011】
また、前記監視装置は、複数の時刻における前記航行位置に関する情報に基づき、該時刻毎の前記監視対象物の相対位置を求め、前記複数の時刻での前記相対位置に基づき、前記監視対象物の航行方位及び航行速力を求め、前記監視対象物の相対位置、航行方位及び航行速力の情報と、予め取得した前記水中航走体の航走速力及び相対位置の情報とに基づき、前記水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求めるものである。
【0012】
また、前記監視装置は、前記監視対象物が発する放射雑音を検出して当該監視対象物の方位角を、前記航行位置に関する情報として求める音響センサを有するものである。
【0013】
また、前記監視装置は、前記水中航走体及び当該監視装置に隣接する監視装置と水中音響通信を行い、前記水中航走体及び隣接する監視装置の相対位置を求め、求めた前記相対位置の情報を送信し、前記水中航走体は、複数の前記監視装置から受信した、当該監視装置の相対位置の情報と、前記監視対象物の方位角の情報とに基づき、前記監視対象物の相対位置を求めるものである。
【0014】
また、水面に設置され、水中音響通信により受信した情報を、無線通信により送信する標示ブイを備えたものである。
【0015】
また、前記標示ブイは、前記水中航走体に分離可能に接続され、前記水中航走体が航走を開始したとき分離されて水面に浮上するものである。
【0016】
また、前記標示ブイは、前記監視装置が送信した前記航行位置に関する情報を受信し、受信した該航行位置に関する情報を無線通信により送信するものである。
【0017】
また、前記水中航走体は、当該水中航走体が航走を開始したとき、航走開始信号を前記標示ブイに送信し、前記標示ブイは、受信した前記航走開始信号を、無線通信により送信するものである。
【0018】
また、前記標示ブイは、GPS衛星の位置情報を受信する測位手段を備え、当該標示ブイの緯度経度の情報を無線通信により送信するものである。
【0019】
また、前記水中航走体は、前記撮影した動画又は静止画の情報を前記標示ブイに送信し、前記標示ブイは、前記撮影した動画又は静止画の情報を、無線通信により送信するものである。
【0020】
また、前記水中航走体は、無線通信を行う無線送信手段を備え、前記監視対象物の撮影を行ったあと水面に浮上して、前記撮影した動画又は静止画の情報を、無線通信により送信するものである。
【0021】
また、前記監視カメラは、音響ビームを用いて動画又は静止画を撮影する音響ビデオカメラである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、水中に複数設置した監視装置により、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した航行位置に関する情報に基づき、水中航走体と監視対象物とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ水中航走体が航走することにより、水上又は水中を航行する監視対象物を、広範囲にわたり監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る水中監視システムの構成を示す図、図2は実施の形態1に係る水中監視システムの海中での敷設状態を示した図である。図において、水中監視システムは、陸上(島)間の海中に所定の間隔で略直線上に複数敷設される監視装置である監視センサ1と、水中に1又は複数敷設される水中航走体2とにより構成される。
【0024】
監視センサ1は、監視センサ本体11と、アンカー12と、ワイヤー13と、パラシュート14(図3参照)とにより構成される。この監視センサ1は、船舶又は航空機等により海面に投下された後、監視センサ本体11とアンカー12とが分離する。分離した監視センサ本体11は、海底に沈んだアンカー12と接続されるワイヤー13により、水面下の任意の深度に係留される。さらに、監視センサ1は、当該監視センサ1が航空機等により空中から敷設されるとき、パラシュート14を開傘し、降下速度を減速させて着水時の衝撃を軽減させる。尚、パラシュート14は着水時に分離される。さらに、この監視センサ1は、後述する動作により取得した情報を、水中音響通信を用いた航行船舶シグネチア100により、水中航走体2に送信する。
【0025】
水中航走体2は、水中航走体本体21と、アンカー22と、ワイヤー23と、パラシュート24(図4参照)と、標示ブイ25とにより構成される。この水中航走体2は、船舶又は航空機等により海面に投下された後、水中航走体本体21とアンカー22とが分離する。分離した水中航走体本体21は、海底に沈んだアンカー22と接続されるワイヤー23により、水面下の任意の深度に係留される。さらに、水中航走体2は、当該水中航走体2が航空機等により空中から敷設されるとき、パラシュート24を開傘し、降下速度を減速させて着水時の衝撃を軽減させる。尚、パラシュート14は着水時に分離される。
【0026】
また、水中航走体本体21は、後述する動作により算出した監視対象物である航行船舶3との会合位置まで航走し、航行船舶3に接近して監視を行う。さらに、水中音響通信により受信した情報を無線通信により送信する標示ブイ25は、水中航走体本体21が航走を開始したときに水中航走体本体21から分離され、海面に浮上して、浮上位置の緯度経度情報、航行船舶3に関する情報及び水中航走体本体21の航走開始情報を、航空機4を介して又は直接、陸上に設置された受信機5に送信する。
【0027】
図3は実施の形態1に係る監視センサの構成を示す図である。図において、監視センサ1は、耐水性の円筒外殻を有する監視センサ本体11と、この監視センサ本体11の一端に分離可能に接続されるパラシュート14と、他端側に分離可能に接続されたアンカー12とを有し、さらに、アンカー12の周部に、監視センサ本体11とアンカー12とを接続するワイヤー13が巻設されている。
【0028】
また、監視センサ本体11の内部には、航行船舶3のプロペラの音やエンジンの音等の放射雑音を検出して航行船舶3の方位角を求める音響センサ102と、水中音響通信を行うことにより、隣接する監視センサ本体11との距離とを求め、航行船舶3の方位角の情報及び隣接する監視センサ本体11との距離の情報を含めた航行船舶シグネチア100を水中航走体2へ送信する信号処理装置103と、当該監視センサ本体11の各構成機器へ電源を供給する電池104とが設けられている。
【0029】
図4は実施の形態1に係る水中航走体の構成を示す図である。図において、水中航走体2は、耐水性の円筒外殻を有する水中航走体本体21と、この水中航走体本体21の一端に分離可能に接続されるパラシュート24及び標示ブイ25と、他端側に分離可能に接続されてアンカー22とを有し、さらに、アンカー22の周部に、水中航走体本体21とアンカー22とを接続するワイヤー23が巻設されている。このワイヤー23は、水中航走体本体21と分離可能に接続されており、後述する動作により、水中航走体本体21が航走する際に分離される。
【0030】
また、水中航走体本体21の内部には、動画又は静止画を撮影し、撮影した映像を記録する監視カメラであり、無線通信を行う無線送信手段を備えた水中TVカメラ201と、監視センサ1から送信された航行船舶シグネチア100を受信する監視センサ受信器202と、水中航走体本体21の航走を制御すると共に、監視センサ1から受信した情報に基づき、後述する動作により、航行船舶3との会合位置を算出する航走制御器203と、当該水中航走体本体21の各構成機器に電源を供給する動力源204と、航走制御器203により制御される電動機205と、この電動機205により駆動され、水中航走体本体21を航走させるプロペラ207と、航走制御器203により制御され、水中航走体本体21の姿勢及び航走方向を制御する操舵器206とが設けられている。尚、水中TVカメラ201は、可視光による撮影を行うビデオカメラ、赤外線による撮影を行う赤外線カメラ又は音響ビームを用いて映像を撮影する音響ビデオカメラなど、何れの種類のカメラでも良く、また、複数の種類のカメラを備えても良い。このような構成による本実施の形態における動作の詳細について次に説明する。
【0031】
図5は実施の形態1に係る航行船舶の位置を算出する方法の説明図である。図5において、監視センサ1−Aと、この監視センサ1−Aと隣接して敷設された監視センサ1−Bとに接近する航行船舶3を監視する場合を説明する。
まず、監視センサ1−A及び1−Bは、互いに水中音響通信を行うことにより、それぞれの相対位置を求め、相対位置の情報に基づき、相互間の距離Lを求める。さらに、水中航走体2は、監視センサ1−A及び1−Bと水中音響通信を行うことにより、監視センサ1に対する水中航走体2の相対位置を算出する。
【0032】
監視センサ1−Aの音響センサ102は、航行船舶3のプロペラの音やエンジンの音等の放射雑音を検出して航行船舶3の方位角を求め、監視センサ1−Aの信号処理装置103は、検出された方位角と監視センサ1−Bの相対位置から、当該航行船舶3と監視センサ1−Bとの角度である方位角α1を算出し、算出した方位角α1の情報と、当該放射雑音を検出した時刻t1の情報を含めた航行船舶シグネチア100を水中航走体2へ送信する。
一方、監視センサ1−Bは、同様に、航行船舶3と、監視センサ1−Aとの角度である方位角β1を算出し、算出した方位角β1の情報と、当該放射雑音を検出した時刻t1を含めた航行船舶シグネチア100を水中航走体2へ送信する。
【0033】
監視センサ1−A及び監視センサ1−Bから航行船舶シグネチア100を受信した水中航走体2の監視センサ受信器202は、受信した航行船舶シグネチア100に含まれる、方位角α1、β1及び距離L並びに時刻t1の情報を、航走制御器203へ入力する。航走制御器203は、入力された情報に基づき、時刻t1における航行船舶3の監視センサ1−A及び監視センサ1−Bに対する相対位置を算出する。ここで、位置の算出は、次のように求める。
【0034】
図5(a)に示すように、監視センサ1−Aと航行船舶3との距離をLα1、監視センサ1−Bと航行船舶3との距離をLβ1とすると、正弦定理より、(数1)式の関係が得られる。これにより、時刻t1における航行船舶3の位置を求めることができる。
【0035】
【数1】

【0036】
次に、図5(b)に示すように、監視センサ1−Aは、上述した動作と同様に、時刻t1からΔt秒経過後の時刻t2における、方位角α2の情報と、時刻t2の情報とを含めた航行船舶シグネチア100を水中航走体2へ送信する。また、監視センサ1−Bも同様に、時刻t2における、方位角β2と時刻t2の情報とを含めた航行船舶シグネチア100を水中航走体2へ送信する。
【0037】
水中航走体2の監視センサ受信器202は、上述の動作と同様に、受信した航行船舶シグネチア100に含まれる方位角α2、β2及び距離L並びに時刻t2の情報を、航走制御器203へ入力し、航走制御器203は、上述した動作と同様に、入力された情報に基づき、時刻t2における航行船舶3の監視センサ1−A及び監視センサ1−Bに対する相対位置を算出する。
【0038】
次に、水中航走体2の航走制御器203は、算出した時刻t1及び時刻t2における航行船舶3の相対位置から、航行船舶3の航走速力及び航走方位を求め、求めた航走速力及び航走方位と、水中航走体2の相対位置と、予め記録された当該水中航走体本体21の航走速力とに基づき、航行船舶3と水中航走体本体21とが会合する会合位置を算出する。
【0039】
会合位置を算出した水中航走体本体21の航走制御器203は、ワイヤー23を分離し、電動機205及び操舵器206を制御して会合位置へ航走を開始する。ここで、会合位置への航走は、例えば、ドップラーソナーを用いて対地速力を、方位計で方位を検出して位置を把握し、当該会合位置まで航走する。
【0040】
このように、航行船舶3が発する放射雑音を、少なくとも2つの監視センサ1により、受信した場合、水中航走体2は、会合位置の算出が可能となる。ここで、航行船舶3の放射雑音の伝播距離rは、(数2)式のような関係となる。
【0041】
【数2】

【0042】
例えば、D=830(ft)、L=100(ft)、f=0.1(kHz)、海況:3、海底質:砂、船舶の放射雑音レベル:150(dB)、背景雑音:85(dB)、探知限界:背景雑音+6(dB)とすると、伝播距離rは、1800mとなる。
【0043】
次に、水中航走体本体21が、航行船舶3と会合位置において、会合した後の動作について説明する。
水中航走体本体21の航走制御器203は、会合位置に接近したとき、水中TVカメラ201を動作させ、映像の取得を開始させる。水中TVカメラ201は、航行船舶3の映像を取得し、取得した情報を記録する。航走制御器203は、映像の取得が完了すると、当該水中航走体本体21を海面に浮上させる。海面に浮上した水中航走体本体21の水中TVカメラ201は、記録した情報を、無線通信により航空機4を介して又は直接、陸上に設置された受信機5に送信する。
【0044】
このようにして、航行船舶3に接近して取得した映像情報が、陸上に設置された受信機5に送信される。尚、上記説明では、海面に浮上した水中航走体本体21の水中TVカメラ201が、航空機4を介して又は直接、陸上に設置された受信機5に送信する場合を説明したが、浮上した当該水中航走体本体21を船舶などで回収して、映像を取得しても良い。この場合、水中航走体本体21は、ビーコン信号などを発信し、これにより当該位置を把握しても良い。
【0045】
また、水中航走体本体21に、航行船舶3の磁気を検出する磁気センサを設け、会合位置にて、航行船舶3に接近していることを確認するようにしても良い。これにより、より正確に航行船舶3に接近することができる。
【0046】
次に、水中航走体の再設置について説明する。上述したように、会合位置に航走した水中航走体本体21は、海面に浮上後、回収又は廃棄される。したがって、水中航走体本体21が航走した場合は、再度、水中航走体2を敷設する必要がある。
【0047】
水中航走体本体21は、ワイヤー23を分離し、航走を開始したとき、標示ブイ25を分離する。分離された標示ブイ25は、海面に浮上し、水中航走体本体21から送信された航行船舶3の航行位置、航行方位及び航行速力の情報と、水中航走体本体21の航走開始情報とを、航空機4を介して又は直接、陸上に設置された受信機5に送信する。
【0048】
さらに、標示ブイ25は、GPS(Global Positioning System)衛星の位置情報を受信する測位手段を備え、この測位手段により取得した浮上位置の緯度経度情報を、航空機4を介して又は直接、陸上に設置された受信機5に送信する。
【0049】
標示ブイ25から送信された情報を受信した受信機5は、水中航走体本体21の航走開始情報及び標示ブイ25の浮上位置の緯度経度情報により、水中航走体2を補充する位置を把握する。
【0050】
尚、上記説明では、時刻t1及びt2における航行船舶3の相対位置から、航行船舶3と水中航走体本体21とが会合する会合位置を算出し、会合位置へ航走する場合を説明したが、水中航走体本体21は、航走開始後においても航行船舶シグネチア100を受信して、繰り返し会合位置を算出し、算出した新たな会合位置へ航走するようにしても良い。これにより、水中航走体本体21が航走開始後、航行船舶3が針路を変更した場合であっても、より正確な会合位置を算出することができる。
【0051】
また、上記説明では、水中TVカメラ201の映像の取得が完了すると、海面に浮上して、無線通信により、航空機4を介して又は直接、陸上に設置された受信機5に送信する場合を説明したが、水中航走体本体21は、記録した映像の情報を標示ブイ25に水中音響通信により送信し、標示ブイ25は、水中音響通信により受信した情報を、無線通信により送信してもよい。
【0052】
以上のように、水中に複数設置した監視センサ1により、水上又は水中を航行する航行船舶3の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した航行位置に関する情報に基づき、水中航走体2と航行船舶3とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ水中航走体2が航走して航行船舶3を撮影することにより、水上又は水中を航行する航行船舶3を、広範囲にわたり監視し、少数の水中航走体2により、航行船舶3の映像を近距離で撮影することができる。
【0053】
また、海面に浮上した標示ブイ25により、航行船舶3の航行位置、航行方位及び航行速力の情報と、水中航走体本体21の航走開始情報と、標示ブイ25の浮上位置の緯度経度情報とを受信機5に送信することにより、陸上において航行船舶3の航行情報が把握することができると共に、水中航走体2が使用された情報及び設置されていた位置情報を把握して、水中航走体2を迅速・的確に補充することができる。
【0054】
尚、本実施の形態1においては、水中航走体2の航走制御器203により、航行船舶3と水中航走体本体21とが会合する会合位置を算出したが、本発明はこれに限らず、監視センサ1の信号処理装置103が、同様の動作により、会合位置を算出して、算出した情報を水中航走体2へ送信しても良い。この場合、水中航走体2での会合位置の算出は不要となる。
【0055】
また、本実施の形態1においては、水中航走体本体21が航走を開始したとき、標示ブイ25を分離して、海面に浮上した標示ブイ25を介して、受信機5に情報を送信する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、水中航走体本体21を航走させず、航行船舶3に関する情報を取得したとき、標示ブイ25を分離し、取得した情報を、標示ブイ25を介して受信機5へ送信しても良い。このような動作により、単に航行船舶3の航行位置等を知るためのデータ収集に使用できる。
【0056】
また、本実施の形態1においては、水中航走体本体21に水中TVカメラ201を搭載した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、水中TVカメラ201を搭載せずに、航行船舶3の何らかの情報を得るためのセンサ等を搭載して、水中航走体本体21を会合位置に航走させるようにしても良い。
【0057】
実施の形態2.
図6は実施の形態2に係る水中監視システムの構成を示す図である。図6に示すように、本実施の形態2における水中監視システムは、陸上(島)間の海中に、水中航走体2を挟むように、略直線上に敷設される複数の監視センサ1を二式設ける。尚、その他の構成及び動作は上記実施の形態1と同様である。
【0058】
このような構成にすることにより、本実施の形態2においては、上記実施の形態1の効果に加え、航行船舶3が陸上(島)間の海域を通過する際、航行船舶3の進入方向を問わず、水中航走体本体21を会合させることができる。
【0059】
実施の形態3.
図7は実施の形態3に係る水中監視システムの構成を示す図である。図7に示すように、本実施の形態3における水中監視システムは、陸上(島)の周囲を囲むように所定の間隔で略円形に監視センサ1を敷設する。尚、その他の構成及び動作は上記実施の形態1と同様である。
【0060】
このような構成にすることにより、本実施の形態3においては、上記実施の形態1の効果に加え、航行船舶3が陸上(島)に接近する際、航行船舶3の進入方向を問わず、水中航走体本体21を会合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態1に係る水中監視システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る水中監視システムの海中での敷設状態を示した図である。
【図3】実施の形態1に係る監視センサの構成を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る水中航走体の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る航行船舶の位置を算出する方法の説明図である。
【図6】実施の形態2に係る水中監視システムの構成を示す図である。
【図7】実施の形態3に係る水中監視システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 監視センサ、2 水中航走体、3 航行船舶、4 航空機、5 受信機、11 監視センサ本体、12 アンカー、13 ワイヤー、14 パラシュート、21 水中航走体本体、22 アンカー、23 ワイヤー、24 パラシュート、25 標示ブイ、100 航行船舶シグネチア、102 音響センサ、103 信号処理装置、104 電池、201 水中TVカメラ、202 監視センサ受信器、203 航走制御器、204 動力源、205 電動機、206 操舵器、207 プロペラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信する監視装置と、
水中に1又は複数設置され、水中を航走する水中航走体とを備え、
前記水中航走体は、前記監視装置から受信した前記航行位置に関する情報に基づき、当該水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ航走することを特徴とする水中監視システム。
【請求項2】
水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信する監視装置と、
水中に1又は複数設置され、動画又は静止画を撮影する監視カメラを有し、水中を航走する水中航走体とを備え、
前記水中航走体は、前記監視装置から受信した前記航行位置に関する情報に基づき、当該水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、当該会合位置へ航走して前記監視対象物を撮影することを特徴とする水中監視システム。
【請求項3】
前記水中航走体は、前記監視装置から送信された複数の時刻における前記航行位置に関する情報に基づき、該時刻毎の前記監視対象物の相対位置を求め、
前記複数の時刻での前記相対位置に基づき、前記監視対象物の航行方位及び航行速力を求め、
前記監視対象物の相対位置、航行方位及び航行速力の情報と、予め記録された当該水中航走体の航走速力の情報とに基づき、当該水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求めることを特徴とする請求項1又は2記載の水中監視システム。
【請求項4】
水中に1又は複数設置され、水中を航走する水中航走体と、
水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信すると共に、当該航行位置に関する情報に基づき、前記水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、求めた会合位置の情報を送信する監視装置とを備え、
前記水中航走体は、受信した前記会合位置の情報に基づき、当該会合位置へ航走することを特徴とする水中監視システム。
【請求項5】
水中に1又は複数設置され、動画又は静止画を撮影する監視カメラを有し、水中を航走する水中航走体と、
水中に複数設置され、水上又は水中を航行する監視対象物の航行位置に関する情報を繰り返し取得し、取得した情報を送信すると共に、当該航行位置に関する情報に基づき、前記水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求め、求めた会合位置の情報を送信する監視装置とを備え、
前記水中航走体は、受信した前記会合位置の情報に基づき、当該会合位置へ航走して前記監視対象物を撮影することを特徴とする水中監視システム。
【請求項6】
前記監視装置は、複数の時刻における前記航行位置に関する情報に基づき、該時刻毎の前記監視対象物の相対位置を求め、
前記複数の時刻での前記相対位置に基づき、前記監視対象物の航行方位及び航行速力を求め、
前記監視対象物の相対位置、航行方位及び航行速力の情報と、
予め取得した前記水中航走体の航走速力及び相対位置の情報とに基づき、前記水中航走体と前記監視対象物とが会合する会合位置を求めることを特徴とする請求項4又は5記載の水中監視システム。
【請求項7】
前記監視装置は、前記監視対象物が発する放射雑音を検出して当該監視対象物の方位角を、前記航行位置に関する情報として求める音響センサを有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の水中監視システム。
【請求項8】
前記監視装置は、前記水中航走体及び当該監視装置に隣接する監視装置と水中音響通信を行い、前記水中航走体及び隣接する監視装置の相対位置を求め、求めた前記相対位置の情報を送信し、
前記水中航走体は、複数の前記監視装置から受信した、当該監視装置の相対位置の情報と、前記監視対象物の方位角の情報とに基づき、前記監視対象物の相対位置を求めることを特徴とする請求項7記載の水中監視システム。
【請求項9】
水面に設置され、水中音響通信により受信した情報を、無線通信により送信する標示ブイを備えたことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の水中監視システム。
【請求項10】
前記標示ブイは、前記水中航走体に分離可能に接続され、前記水中航走体が航走を開始したとき分離されて水面に浮上することを特徴とする請求項9記載の水中監視システム。
【請求項11】
前記標示ブイは、前記監視装置が送信した前記航行位置に関する情報を受信し、受信した該航行位置に関する情報を無線通信により送信することを特徴とする請求項9又は10記載の水中監視システム。
【請求項12】
前記水中航走体は、当該水中航走体が航走を開始したとき、航走開始信号を前記標示ブイに送信し、
前記標示ブイは、受信した前記航走開始信号を、無線通信により送信することを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の水中監視システム。
【請求項13】
前記標示ブイは、GPS衛星の位置情報を受信する測位手段を備え、当該標示ブイの緯度経度の情報を無線通信により送信することを特徴とする請求項9〜12の何れかに記載の水中監視システム。
【請求項14】
前記水中航走体は、前記撮影した動画又は静止画の情報を前記標示ブイに送信し、
前記標示ブイは、前記撮影した動画又は静止画の情報を、無線通信により送信することを特徴とする請求項2、3、5〜8に従属する請求項9、請求項10〜13の何れかに記載の水中監視システム。
【請求項15】
前記水中航走体は、無線通信を行う無線送信手段を備え、
前記監視対象物の撮影を行ったあと水面に浮上して、前記撮影した動画又は静止画の情報を、無線通信により送信することを特徴とする請求項2、3、5〜8に従属する請求項9、請求項10〜14の何れかに記載の水中監視システム。
【請求項16】
前記監視カメラは、音響ビームを用いて動画又は静止画を撮影する音響ビデオカメラであることを特徴とする請求項2、3、5〜15の何れかに記載の水中監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−49942(P2008−49942A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230367(P2006−230367)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】