説明

水撃緩和型水栓装置

【課題】ダイアフラム弁を用いながら水撃現象を生じない水栓装置を提供する。
【解決手段】所定の水圧を有する水が供給される1次給水路と2次排水路との間を開閉して給水および給水停止を行う電磁パイロット式ダイアフラム弁型水栓装置において、圧力室7と2次排水路とを結び、途中にパイロット弁6が設けられた通水路と、圧力室の通水を緩やかに行い、圧力室の水圧を緩慢に変化させる水圧変化緩和手段8をそなえ、パイロット弁を開くことにより圧力室の水圧を低下させ、ダイアフラム弁4の弁体を前記1次給水路の水圧によって移動させて弁を開き、パイロット弁を閉じることにより圧力室の水圧を上昇させ、ダイアフラム弁の弁体を圧力室の水圧によって移動させて弁を閉じるようにしたことを特徴とする水栓装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動もしくは電磁ソレノイドにより開閉される弁を有し、操作に応じて給水および給水停止を行う水栓装置に係り、とくに開閉に伴う水撃を生じない水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の小便器に設置して自動給水化するための水栓として、電池駆動型の水栓装置が提供されている。この種の水栓装置として、図5に示すものがある。図5(a)は開状態を、図5(b)は閉状態をそれぞれ示している。
この図5に示すように、1次側給水路101と2次側排水路102との間に設けられたダイアフラム弁103のプレート部に、ダイアフラム背後の圧力室104と2次側排水路102とを結ぶ通水路105を設けて、この通水路105をパイロット弁106により開閉するようにしている。パイロット弁106は、プランジャ107の上下動により開閉する。
【0003】
ここで、通水路105をパイロット弁106で閉じて弁を通る水流を止めると、水流の停止が急激に行われるため、水撃が発生し易い。水撃は、管路を伝播していき、大音響を伴うことがある。
【0004】
また、図6(a),(b)に示すように、1次給水路201と2次排水路202との間にピストン弁203を設け、ピストン弁203の圧力室204と2次排水路202とを結ぶ通水路205を、外部に設けたパイロット弁206によって開閉するものもある。そして、このピストン弁でも同様に水撃現象が発生している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような水撃現象を解消するには、パイロット弁により開閉される穴の径とダイアフラム弁の圧力室を結ぶオリフィスの径との比で、ダイアフラム弁が閉じるに要する時間を調整することができることは知られている。
【0006】
しかしながら、これらの穴径は、水撃対策だけで決めることができない。パイロット弁の穴径は、使用する水圧の範囲、プランジャを駆動するための回路電源である電池寿命を基に、概ね1.0mmφ前後に設計される。そして、オリフィスの径は、ゴミとか水中含有成分の詰まりを考慮して0.5mmφとすることが多い。この穴径比であると、水撃が発生し易い。
【0007】
他方、ピストン弁をフラッシュ弁の本体内部に組み込むものがあり、その場合、水撃現象が起きても気にならない程度である。
【0008】
しかしながら、装置全体がコンパクトに構成できない問題がある。すなわち、パイロット弁の弁座部を開いて圧力室の排水をするためフラッシュ弁の本体外部に排水路を設ける結果、寸法が大きくなる。
【0009】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、ダイアフラム弁を用いながら水撃現象を生じない水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的達成のため、本発明では、
請求項1記載の、
所定の水圧を有する水が供給される1次給水路と2次排水路との間を開閉して給水および給水停止を行うダイアフラム弁、このダイアフラム弁の背後に設けられた圧力室、操作に応じて開閉することにより前記圧力室の水圧を加減して前記1次給水路の水圧を作用させることにより前記ダイアフラム弁の開閉を行うパイロット弁を有し、前記圧力室と前記2次排水路とを結び、途中に前記パイロット弁が設けられた通水路と、前記圧力室の通水を緩やかに行い、該圧力室の水圧を緩慢に変化させる水圧変化緩和手段とをそなえ、前記パイロット弁を開くことにより前記圧力室の水圧を低下させ、前記ダイアフラム弁の弁体を前記1次給水路の水圧によって移動させて弁を開き、前記パイロット弁を閉じることにより前記圧力室の水圧を上昇させ、前記ダイアフラム弁の弁体を前記圧力室の水圧によって移動させて弁を閉じるようにした水栓装置であって、前記水圧変化緩和手段は、前記ダイアフラム弁の弁体に設けられたオリフィスと、前記オリフィスの内径よりも細い外径を有し、前記水栓装置本体に設けられ、前記ダイアフラム弁の移動に応じて前記オリフィスに出入し、該オリフィスの横断面積を変化させるピンと、
をそなえ、前記圧力室の圧力変化を緩慢化させるようにした水栓装置において、
前記圧力室は、仕切り枠により互いに連通した状態で仕切られた、前記パイロット弁側の室および前記ダイアフラム弁側の室を有する2室型圧力室として構成され、
前記パイロット弁側の室に設けられ、前記圧力室を前記パイロット弁側の室と前記ダイアフラム弁側の室とを結合、分離する緩衝板と、
この緩衝板を常時前記仕切り枠に対して押圧する力を与えるバネと、
前記緩衝板に嵌装され、前記緩衝板が前記仕切り枠に押圧されたとき前記パイロット弁側の室を前記ダイアフラム側の室に対して塞ぐパッキンと、
をそなえ、前記ダイアフラム側の室における圧力変化が前記パイロット弁の室に及ばないようにしたことを特徴とする水栓装置、
請求項2記載の、請求項1記載の水栓装置における前記パイロット弁を開閉作動させるソレノイドを有し、該ソレノイドは樹脂コーティングによる防錆構造が設けられている水栓装置、
および請求項3記載の、請求項1記載の水栓装置における前記2次排水路は、給水口を横向きにした水栓装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように、ダイアフラム弁に隣接して設けられた圧力室の圧力変化を緩慢化するように構成したため、水栓の開閉の際における水撃発生を有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例の内部構造を示す縦断面図である。この実施例は、ダイアフラム弁を用いた水栓装置であり、図示右側の1次給水路と図示下側の2次排水路との間に配されている。そして、1次給水路から供給された水を2次排水路に給水したり停止したりするために、図示中央上部にあるダイアフラム弁が設けられており、ダイアフラム弁の開閉制御を図示中央下部にあるパイロット弁によって行う構成となっている。パイロット弁は、ソレノイド駆動されるラッチング方式のものであり、ソレノイドは電池を電源とし、人の手を感知するセンサの信号に応動する開閉制御回路によって駆動される。
【0014】
この図1において、センサ1は図示中央左側部に設けられており、このセンサ1の出力信号により制御回路3がラッチングソレノイド2を作動させて、プランジャ5を図示上下方向に移動させる。そして、プランジャ5を上に引き上げるとパイロット弁6が開、下に引き下げると閉となる。
【0015】
パイロット弁6は、ダイアフラム弁4の上部に隣接して設けられた圧力室7に連通する2次排水路(図示せず)の途中に設けられている。そして、パイロット弁6を開くと圧力室の圧力が低下してダイアフラム弁4に与えていた圧力を減じ、1次給水路の圧力によりダイアフラム弁4を押し上げさせることにより弁を開く。次いで、パイロット弁6を閉じると、ダイアフラム弁4に設けられているオリフィス(後述)を通して1次給水路の水を圧力室7に送り込み、圧力室7の圧力を上昇させ、ダイアフラム弁4を図示下方に押し下げることにより弁を閉じる。
【0016】
圧力室7は、仕切り枠により上下2室に分けられており、上部室にほぼ円盤状の緩衝板8が設けられている。この緩衝板8は、上部に設けられたコイルばねにより図示下方に向けた押圧力が与えられており、常時仕切り枠に押し付け付勢されており、パッキンを介して当接している。
【0017】
そして、パイロット弁6が開かれて2次排水路が通じると、圧力室7の圧力が低下して圧力室7に1次給水路から水が供給され、緩衝板8が付勢力に抗して図示上方に押し上げられる結果、緩衝板8の外周を通って水が2次排水路に流される。このとき、ダイアフラム弁4も圧力室7の圧力が低下したことにより1次給水路の水の圧力が勝り、図示上方に押し上げられて弁を開く。
【0018】
図1において、図示上方には、電池収納室9が設けられ、また図示下方には、逆止弁10が設けられている。
【0019】
図2は、図1に示した実施例の外観を示している。この実施例は、自動開栓の給水装置であり、例えば既設の手動式蛇口に置き換えられるものである。そして、センサを正面側に配して人が所定位置に立ったことを検知すると、それに伴って水栓を開閉して水を流す等に使用される。
【0020】
図3は、図1の実施例の要部を拡大して示したもので、開栓状態を示している。この場合、ダイアフラム弁4は上昇して弁座から離間しており、給水管INから供給された水は1次給水路を通ってダイアフラム弁4の下面に当り、弁座を乗り越えて図示中央下部の2次排水路を経て排出路OUTに流れていく。
【0021】
ここで、ダイアフラム弁4の弁体をみると、その図示左側にオリフィス11が設けられており、オリフィス11を貫通するようにピン12が配されている。オリフィス11は、ダイアフラム弁4を厚み方向に貫いており、図示下端は大径で上端は小径となっている。
そして、ピン12は、オリフィス11の小径部よりも外径が細くその基部はコイルばねとして形成されており、この基部が給水装置本体に埋め込まれている。
【0022】
これにより、ダイアフラム弁4が図示のように上昇しているときは、オリフィス11とピン12との間の隙間が大きいからオリフィス11を通して流す水の量が多いが、ダイアフラム弁4が下降していくと、この隙間が小さくなり、通水量は少なくなっていく。このオリフィス11は、径が大きい部分でも目詰まりし易いことを考慮して、1次給水路からの水流入口にはフィルタ13が設けられている。
【0023】
このオリフィス11から下部圧力室7bに入った水は、このとき上昇している緩衝板8aの外周を通って上部圧力室7aに入り、通水路P1,パイロット弁6、通水路P2を経て排出口14に達し、1次給水路からの水と合流する。
【0024】
ここで、排出口14は、垂直に落下してきた水の流れを横向きに変え、緩やかな流れとする構造となっている。
【0025】
図4は、図1の実施例の要部を拡大して示したもので、閉栓状態を示している。すなわち、パイロット弁6およびダイアフラム弁4が閉じており、1次給水路からの水は2次排水路に達しない。
【0026】
ただし、ダイアフラム弁4に設けられたオリフィス11を介して圧力室7に水が僅か流入するから、圧力室7の内部は1次給水路とほぼ同じ圧力に保たれた状態となる。このとき、緩衝板8aは、コイルばね8bの付勢力によりパッキン8cを介して仕切り枠に押し付けられており、圧力室7aと通水路P1とは切り離された状態にある。そして、通水路P1とP2とは、閉じているパイロット弁6により矢張り切り離されている。
【0027】
図3の開栓状態と図4の閉栓状態とを切り替えるのは、パイロット弁6の開閉である。
そして、このパイロット弁6の動作は、上部に組み込まれたコイルばねにより下降方向に付勢されたプランジャ5の昇降によって行う。プランジャ5は、電磁コイル2aおよび永久磁石2bが組み込まれており、電磁コイル2aへの瞬時通電によってプランジャ5の磁極切換を行うと、ソレノイド2のケーシングに固定された永久磁石2bとの協働により上昇位置または降下位置を保持する。なお、ケーシングの外周には、防錆用の樹脂塗膜2cが設けられている。
【0028】
いま図3の開栓状態から図4の閉栓状態に切り替えるとする。これには、電磁コイル2aに通電してプランジャ5の磁化状態を切り換えて下降させ、パイロット弁6により通水路P2の入口を塞ぐ。
【0029】
これにより、圧力室7および通水路P1は、通水路P2と切り離されるから、圧力室7a,7bの内部圧力が急激に上昇し、かつ均一になる。そして、コイルばね8bの付勢力により緩衝板8aが仕切り枠に当接した状態となる。
【0030】
この結果、ダイアフラム弁4は、体の上下にほぼ同圧が与えられ、これに弁体自体の弾性復元力および自重が加わるから弁体が降下し始める。そして、弁体が弁座に着座すると、閉弁状態となる。
【0031】
この閉弁動作が進んでいく際、弁体の下降とともにオリフィス11を通って水が圧力室7に流入する。ここで、オリフィス11にはピン12が組み合わされており、弁体が着座していくに伴って、弁体に設けられたオリフィス11にピン12が挿入されていく。オリフィス11は、図示下部が大径で上部が小径となっているから、オリフィス11とピン12との間の隙間は、弁が閉じてピン12の挿入度合いが増すと小さくなる。そして、オリフィス11を通る通水量が減少する。
【0032】
このオリフィス11の通水により、閉弁時における圧力室7の圧力減少度合いは緩和される。このため、閉弁の際に、弁体が弁座に当接するまでの時間が引き延ばされ、それに応じて圧力変化が緩和される。この結果、1次給水路および2次排水路に繋がる水路で発生するであろう水撃が防止される。
【0033】
(変形例)
上記実施例では、電磁駆動機構を持つ水栓について説明したが、水撃現象はレバー式水栓のように急激に開閉できるものにも適用して水撃対策とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例の全体構成を示す説明図。
【図2】図1に示した実施例の外観を示す図。
【図3】図1に示した実施例の要部を拡大して示したもので、開弁状態を示す。
【図4】図1に示した実施例の要部を拡大して示したもので、閉弁状態を示す。
【図5】従来の給水装置の一例を示し、図5(a)は開弁状態を、図5(b)は閉弁状態を示す。
【図6】従来の給水装置の他の例を示し、図6(a)は開弁状態を、図6(b)は閉弁状態を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 センサ
2 ラッチングソレノイド
2a 電磁コイル
2b 永久磁石、
2c 樹脂コーティング
3 制御回路
4 ダイアフラム弁
5 プランジャ
6 パイロット弁
7,7a,7b 圧力室
8 緩衝板
8a 緩衝板
8b コイルばね
8c パッキン
9 電池室
10 逆止弁
11 オリフィス
12 ピン
13 フィルタ
14 排出口
P1,P2 通水路
101 1次側給水路
102 2次側排水路
103 ダイアフラム弁
104 圧力室
105 通水路
106 パイロット弁
107 ソレノイド
201 1次側給水路
202 2次側排水路
203 ピストン弁
204 圧力室
205 通水路
206 パイロット弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の水圧を有する水が供給される1次給水路と2次排水路との間を開閉して給水および給水停止を行うダイアフラム弁、このダイアフラム弁の背後に設けられた圧力室、操作に応じて開閉することにより前記圧力室の水圧を加減して前記1次給水路の水圧を作用させることにより前記ダイアフラム弁の開閉を行うパイロット弁を有し、前記圧力室と前記2次排水路とを結び、途中に前記パイロット弁が設けられた通水路と、前記圧力室の通水を緩やかに行い、該圧力室の水圧を緩慢に変化させる水圧変化緩和手段とをそなえ、前記パイロット弁を開くことにより前記圧力室の水圧を低下させ、前記ダイアフラム弁の弁体を前記1次給水路の水圧によって移動させて弁を開き、前記パイロット弁を閉じることにより前記圧力室の水圧を上昇させ、前記ダイアフラム弁の弁体を前記圧力室の水圧によって移動させて弁を閉じるようにした水栓装置であって、前記水圧変化緩和手段は、前記ダイアフラム弁の弁体に設けられたオリフィスと、前記オリフィスの内径よりも細い外径を有し、前記水栓装置本体に設けられ、前記ダイアフラム弁の移動に応じて前記オリフィスに出入し、該オリフィスの横断面積を変化させるピンと、
をそなえ、前記圧力室の圧力変化を緩慢化させるようにした水栓装置において、
前記圧力室は、仕切り枠により互いに連通した状態で仕切られた、前記パイロット弁側の室および前記ダイアフラム弁側の室を有する2室型圧力室として構成され、
前記パイロット弁側の室に設けられ、前記圧力室を前記パイロット弁側の室と前記ダイアフラム弁側の室とを結合、分離する緩衝板と、
この緩衝板を常時前記仕切り枠に対して押圧する力を与えるバネと、
前記緩衝板に嵌装され、前記緩衝板が前記仕切り枠に押圧されたとき前記パイロット弁側の室を前記ダイアフラム側の室に対して塞ぐパッキンと、
をそなえ、前記ダイアフラム側の室における圧力変化が前記パイロット弁の室に及ばないようにしたことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の水栓装置において、
前記パイロット弁を開閉作動させるソレノイドを有し、該ソレノイドは樹脂コーティングによる防錆構造が設けられている水栓装置。
【請求項3】
請求項1記載の水栓装置において、
前記2次排水路は、給水口を横向きにした水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−249143(P2008−249143A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95270(P2008−95270)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【分割の表示】特願2003−427354(P2003−427354)の分割
【原出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(000120076)URO電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】