説明

永久レジストの製造方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】 十分な耐湿絶縁性及び十分な凹凸追従性を示す永久レジストを形成可能な永久レジストの製造方法の提供。
【解決手段】 支持フィルム10、膜厚20〜100μmのクッション層12、並びに、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含む感光層14が積層された感光性フィルムを基板18上に積層する積層工程、感光層14に露光部を形成する露光工程、露光部以外の部分を除去する現像工程、露光部を水洗する水洗工程を含み、現像工程及び/又は水洗工程は、(A)バインダーポリマーが下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するように、2価以上の金属イオンを含む現像液及び/又は水洗液で処理する工程である、永久レジストの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久レジストの製造方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板において、基板上に形成される永久レジスト(永久マスクレジスト)は、まず、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光層を積層した後、この感光層に活性光線をパターン状に照射し、次いで、アルカリ金属の金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を溶解させてなる現像液で現像し、純水等で水洗することで製造される。また、可とう性、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、水洗後に高圧水銀灯による紫外線照射や加熱が行われる場合もあり、これらの工程を経て永久レジストが作製される。
【0003】
しかし、上記の現像液を用いて現像を行うと、その後の水洗の処理能力(水洗の温度や時間)が不十分であった場合、物理的に不安定である1価金属イオンのNaやKが永久レジスト表面に残存しやすくなる影響から、吸湿通電時に耐湿絶縁性が低下し、電気信号が誤動作するといった問題があった。
【0004】
また、このような永久レジスト用感光性フィルムは、一般的に、支持フィルム上に感光性樹脂組成物を塗布し乾燥させて感光層を形成し、次いで、感光層上に保護フィルムを積層することで得られている。かかる感光性フィルムにおいては、支持フィルムと感光層とが転移層となっており、ラミネートすべきプリント配線板の基板上に転移層がラミネートされることとなる。
【0005】
この永久レジスト用感光性フィルムを基板上にラミネートする際には、保護フィルムを剥離してから、感光層を基板側に向けて転移層を基板上に載せ、その後、支持フィルム側から加熱ロールにより転移層を加圧して圧着させる。
【0006】
次に、支持フィルム上にネガマスクを置き、そのネガマスクを介して露光用の光線を照射して感光層を露光する。その後、ネガマスクを取外し、さらに支持フィルムを剥離してから現像することで、ネガマスクと同じパターンを持つレジストパターンを形成することができる。
【0007】
ここで、支持フィルムとしては、80℃における単位幅あたりの5%伸び荷重(フィルム長手方向の値)が100g/mm以上のフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム)が用いられ、その厚みは、通常20μm程度である。支持フィルムにおいては、永久レジスト用感光性フィルムの引張り強度を向上させるために、上述した程度の厚みが必要であり、また、その硬さもある程度大きくする必要がある。
【0008】
感光層は、紫外線等を照射すると照射箇所の物性が変化する感光性樹脂組成物により形成されており、使用目的に応じて好適な組成物が選択される。感光層の厚みは、目的に応じて、例えば、25μm、33μm、40μmあるいは50μmに設定される。保護フィルムとしては、ポリエチレンなどのフィルムが用いられ、その厚みは、例えば、30μm程度である。
【0009】
感光性フィルムにおいて、転移層は、ラミネートの際に基板の凹凸に対して追従し、感光層と基板との間に未接着部分が生じないようにしなければならない。
【0010】
近年、プリント配線板の配線の高密度化が進んでおり、永久レジスト用感光性フィルムには高い解像度が要求されている。永久レジスト用感光性フィルムの高解像度化のためには、感光層の薄膜化が効果的であるが、基材の表面凹凸へ追従する感光層の量が減少するため、従来の永久レジスト用感光性フィルムでは、基板と転移層との間の未接着部分が多くなり、充分な製造歩留まり及び被覆性が得られないという問題がある。また、従来の永久レジスト用感光性フィルムでは、支持フィルムが必要とする上記の厚み及び硬さにより転移層全体の柔軟性が不充分となり、ラミネートすべき基材の表面の凹凸に転移層が追従し難く、その結果、基板と転移層との間の未接着部分が多くなり、充分な製造歩留まりが得られないという問題がある。
【0011】
このような問題を改善するために様々な手法が提案されており、例えば、基板に水を塗布したのち、感光性フィルムを積層する方法(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、基板に液状の樹脂を積層して接着中間層を形成した後、感光性フィルムを積層する方法(例えば、特許文献3参照)、真空ラミネーターを用いて減圧下で感光性フィルムを積層する方法(例えば、特許文献4及び特許文献5参照)等が提案されている。
【0012】
【特許文献1】特開昭57−21890号公報
【特許文献2】特開昭57−21891号公報
【特許文献3】特開昭52−154363号公報
【特許文献4】特公昭53−31670号公報
【特許文献5】特開昭51−63702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の製造方法では、水の薄い層を均一に付着させるため、基板表面を清浄にしなければならず、また、小径スルーホール等が存在する場合は、スルーホール中に溜まった水分と感光性樹脂組成物層とが反応を起こしやすく、現像性を低下させるため、充分な製造歩留まりが得られない等の問題があった。
【0014】
また、特許文献3に記載の製造方法では、小径スルーホールの現像性、剥離性等が低下するため充分な製造歩留まりが得られず、また、液状樹脂塗布によるコスト増加等の問題があった。
【0015】
さらに特許文献4及び5に記載の製造方法は、導体形成後に用いる永久マスクのラミネートとして広く利用されているが、導体回路及びそれを部分的に永久マスクで被覆されたような凹凸段差が極めて大きい箇所での追従性向上が望まれている。
【0016】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、永久レジストとしての可とう性、はんだ耐熱性及び耐薬品性を低下させずに、十分な耐湿絶縁性を示し、且つ、十分な凹凸追従性を示す永久レジストを形成することが可能な永久レジストの製造方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、支持フィルム、膜厚が20〜100μmのクッション層及び感光層がこの順に積層されてなる感光性フィルムを、基板上に、上記感光層が上記基板と隣接するように積層する積層工程と、上記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成する露光工程と、上記感光層の上記露光部以外の部分を除去する現像工程と、上記露光部を水洗する水洗工程と、を含み、上記感光層は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であり、上記現像工程及び/又は上記水洗工程は、上記感光層における上記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するものとなるように、2価以上の金属イオンを含む現像液及び/又は水洗液で処理する工程であることを特徴とする永久レジストの製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、支持フィルム、膜厚が20〜100μmのクッション層及び感光層がこの順に積層されてなる感光性フィルムを、基板上に、上記感光層が上記基板と隣接するように積層する積層工程と、上記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成する露光工程と、上記感光層の上記露光部以外の部分を除去する現像工程と、を含み、上記感光層は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であり、上記現像工程は、上記感光層における上記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するものとなるように、2価以上の金属イオンを含む現像液で処理する工程であることを特徴とする永久レジストの製造方法を提供する。
【0019】
これらの永久レジストの製造方法によれば、積層工程において、膜厚20〜100μmのクッション層を備える感光性フィルムを用いることにより、このクッション層の存在によって感光層を被着体である基板の表面の凹凸に沿って追従性よく密着させることができ、基板と感光層との未接着部分の発生を十分に抑制することができる。これにより、十分な凹凸追従性を示す永久レジストを形成することができる。また、現像工程及び/又は水洗工程において、感光層における(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが上記一般式(I)で表される基を有するものとなるように処理することで、物理的に不安定である1価金属イオンのNaやKが永久レジスト表面に残存することを抑制することができ、可とう性、はんだ耐熱性及び耐薬品性が良好であり、且つ、十分な耐湿絶縁性を示す永久レジストを形成することができる。
【0020】
また、本発明の永久レジストの製造方法において、上記一般式(I)における上記Xn+がアルカリ土類金属イオンであり、上記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーにおける上記カルボキシル基の総量の30〜100モル%を上記Xn+によって置換することが好ましい。かかる製造方法によれば、永久レジストとしての可とう性、はんだ耐熱性及び耐薬品性を低下させずに、より十分な耐湿絶縁性を示す永久レジストを形成することができる。
【0021】
また、本発明の永久レジストの製造方法において、上記感光性フィルムを構成する上記クッション層は、エチレンと該エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体を含有してなる層であることが好ましい。かかる製造方法によれば、より十分な凹凸追従性を示す永久レジストを形成することができる。
【0022】
更に、本発明の永久レジストの製造方法において、上記感光性フィルムを構成する上記クッション層は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であることが好ましい。かかる製造方法によれば、より十分な耐湿絶縁性を示す永久レジストを形成することができるとともに、感光層中の成分がクッション層に移行することを十分に抑制することができる。
【0023】
本発明はまた、上記本発明の永久レジストの製造方法により永久レジストを形成するレジスト形成工程を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法を提供する。
【0024】
かかるプリント配線板の製造方法によれば、基板表面の凹凸に対して追従性よく永久レジストを形成することができ、プリント配線板の製造歩留まりを大幅に向上することができるとともに、永久レジストとしての可とう性、はんだ耐熱性及び耐薬品性を低下させずに、十分な耐湿絶縁性を示す永久レジストが形成されたプリント配線板を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、永久レジストとしての可とう性、はんだ耐熱性及び耐薬品性を低下させずに、十分な耐湿絶縁性を示し、且つ、十分な凹凸追従性を示す永久レジストを形成することが可能な永久レジストの製造方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0027】
まず、本発明の永久レジストの製造方法において使用する感光性フィルムについて説明する。図1は、本発明において使用する感光性フィルムの一例を示す模式断面図である。図1に示すように、感光性フィルム1は、支持フィルム10、クッション層12、感光層14、及び、保護フィルム16がこの順で積層された構成を有している。
【0028】
支持フィルム10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが好適に用いられる。なお、このような重合体フィルムは、単層構造であってもよく、複数の組成からなるフィルムを積層した積層構造であってもよい。また、片面にエンボスなどの処理を施してあってもよい。
【0029】
支持フィルム10の厚みは、特に制限はないが、2〜100μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましく、8〜16μmであることが特に好ましい。この厚みが2μm未満では支持フィルム10及びクッション層12を剥離する際に破けやすくなる傾向があり、100μmを超えると基板表面の凹凸に対する追従性が低下する傾向がある。
【0030】
感光層14は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であり、これら(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成される層である。
【0031】
ここで、(A)成分であるカルボキシル基を有するバインダーポリマーは、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とをラジカル重合させることにより製造することができる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸などが好ましい。
【0032】
(A)バインダーポリマーの酸価は、50〜500mgKOH/gであることが好ましく、100〜300mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が50mgKOH/g未満では現像時間が著しく遅くなる傾向があり、500mgKOH/gを超えると光硬化したレジストの耐現像液性が低下する傾向がある。
【0033】
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、5,000〜300,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましい。この重量平均分子量が、5,000未満では耐現像液性が著しく低下する傾向があり、300,000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。なお、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用したものである。
【0034】
また、(A)成分であるカルボキシル基を有するバインダーポリマーは、可とう性の見地からスチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有することが好ましい。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0035】
上記スチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として含有する場合には、密着性及び剥離特性を共に向上させる観点から、(A)成分を構成する単量体の全質量を基準として0.1〜70質量%含むことが好ましく、1〜60質量%含むことがより好ましく、1.5〜50質量%含むことが特に好ましい。この含有量が0.1質量%未満では、密着性が劣る傾向があり、70質量%を超えると、剥離片が著しく大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。
【0036】
(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。ここでいう分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量の値のことである。
【0037】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、解像度を向上させる観点から、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンを含有していることが好ましい。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンは、単独で、あるいは、他の重合性化合物と併用して用いられる。
【0038】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0039】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)は、BPE−1300(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0040】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0041】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0042】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物には、上述のような2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンが好ましく用いられるが、これ以外にも種々の光重合性化合物を使用することができる。すなわち、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、ウレタンモノマー、ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0043】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
上記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0045】
上記グリシジル基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。
【0046】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0048】
これら(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンを含め、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0049】
(C)成分である光重合開始剤としては、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体とα−アミノアルキルフェノン、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシルー4−ジメチルアミノベンゾエート、3−メチルブチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等の安息香酸エステル、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらを組み合わせる場合には、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0050】
ここで、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体として、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。
【0051】
ここで、α−アミノアルキルフェノンとして、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(商品名:IRGACURE369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン(商品名:IRGACURE907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0052】
(A)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量を100質量部として、30〜80質量部とすることが好ましく、40〜70質量部とすることがより好ましい。この配合量が30質量部未満では光硬化物が脆くなり易く、感光性フィルムとして用いた場合に、塗膜性が劣る傾向があり、80質量部を超えると光感度が不充分となる傾向がある。
【0053】
(B)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量を100質量部として、20〜70質量部とすることが好ましく、30〜60質量部とすることがより好ましい。この配合量が20質量部未満では光感度が不充分となる傾向があり、70質量部を超えると光硬化物が脆くなる傾向がある。
【0054】
(C)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量を100質量部として、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。この配合量が0.1質量部未満では光感度が不充分となる傾向があり、20質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0055】
また、上記感光層14には、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0056】
上記感光層14は、プリント配線の高密度化及び高解像度化、並びに、凹凸追従性確保の見地から、厚みが10〜100μmであることが好ましく、20〜90μmであることがより好ましく、25〜75μmであることが特に好ましい。
【0057】
また、上記感光層14の波長365nmの紫外線に対する透過率は5〜75%であることが好ましく、7〜60%であることがより好ましく、10〜40%であることが特に好ましい。この透過率が5%未満では密着性が劣る傾向があり、75%を超えると解像度が劣る傾向がある。なお、上記透過率は、UV分光計により測定することができ、上記UV分光計としては、(株)日立製作所製228A型Wビーム分光光度計等が挙げられる。
【0058】
以上のような構成を有する感光層14は、上記感光性樹脂組成物をクッション層12上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、上記感光性樹脂組成物を保護フィルム16上に塗布し、乾燥することによって感光層14及び保護フィルム16からなる積層フィルムを得た後、この積層フィルムと、支持フィルム10及びクッション層12からなる積層フィルムとを貼り合わせて、図1に示す構成の感光性フィルム1を作製することもできる。
【0059】
クッション層12は、熱可塑性樹脂を含有してなる層である。熱可塑性樹脂としては、感光層14から容易に剥離できるクッション層12を形成可能なものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレン、エチレンと該エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エチレンと該エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体が好ましく、かかる共重合体の中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体が特に好ましい。
【0060】
ここで、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体におけるモノマー成分全量を基準としたエチレン成分の割合、及び、上記エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体におけるモノマー成分全量を基準としたエチレン成分の割合は、いずれも60〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましく、65〜80質量%であることが特に好ましい。上記エチレンの割合が60質量%未満では、いずれの共重合体を用いた場合でもクッション層12と感光層14との密着性が高くなり過ぎ、剥離が困難となる傾向がある。一方、エチレンの割合が90質量%を超えると、いずれの共重合体を用いた場合でもクッション層12と支持フィルム10との密着性が小さくなり過ぎ、クッション層12を含む感光性フィルム1を作製することが困難となる傾向がある。
【0061】
クッション層12の厚みは、10〜100μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましく、25〜75μmであることが特に好ましい。クッション層12の厚みが10μm未満ではラミネートすべき対象の表面の凹凸への追従性が低下する傾向がある。一方、クッション12の厚みが100μmを超えるとコストアップとなる傾向がある。
【0062】
また、クッション層12は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分のうちの1種以上を含有していることが好ましく、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全てを含有していることがより好ましい。これにより、感光層14から(A)成分、(B)成分及び(C)成分がクッション層12へ移行することを、レジストの諸特性に影響を及ぼさない程度に抑制することができる。
【0063】
保護フィルム16は、感光性フィルム1を回路形成用基板等にラミネートする前に剥離されるので、可撓性を有していて感光層14に剥離可能に接着できるものであれば特に制限されない。保護フィルム16としては、例えば、紙、離型紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド、セロファン等のセルロース、ポリスチレン等のフィルムが挙げられ、これらは、透明であっても非透明であってもよく、離型処理が施されたものであってもよい。入手可能な保護フィルムとしては、王子製紙(株)製のE−200H(製品名)、帝人デュポンフィルム社製のG2−16(製品名)等が挙げられる。
【0064】
保護フィルム16の厚みは、特に制限されないが、ロール状に巻いた場合のサイズの点を考慮すると、10〜50μmとすることが好ましく、15〜45μmとすることがより好ましく、20〜40μmとすることが特に好ましい。
【0065】
感光性フィルム1において、保護フィルム16と感光層14との間の接着力は、支持フィルム10とクッション層12との間の接着力、クッション層12と感光層14との間の接着力よりも小さいものであることが、保護フィルム16が剥離して転移層(支持フィルム10、クッション層12及び感光層14)が容易に形成できるため好ましい。また、支持フィルム10とクッション層12との間の接着力は、クッション層12と感光層14との間の接着力よりも大きいことが好ましい。ここで、上記接着力は、それぞれ23℃、60%RHにおける各層間の180°ピール試験(剥離強さ、引き剥がし粘着力ともいう)を示し、ピール強度は、JIS Z0237に準拠して試験片幅20mm、引っ張り速度300mm/分の試験条件で、レオメーター等を用いて測定することができる。
【0066】
上述した本発明における感光性フィルム1は、ロール状に巻いて保管することができる。
【0067】
また、感光性フィルム1は、支持フィルム10、クッション層12、感光層14及び保護フィルム16の他に、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0068】
なお、本発明において使用する感光性フィルムは、保護フィルム16を有さず、支持フィルム10上にクッション層12及び感光層14が順次積層された構成を有するものであってもよい。
【0069】
次に、上記感光性フィルム1を用いた本発明の永久レジストの製造方法について、図2(a)〜(e)を参照しながら説明する。
【0070】
図2(a)〜(e)は、本発明の永久レジストの製造方法を模式的に示す断面図である。この製造方法においては、まず、感光性フィルム1が保護フィルム16を備えている場合には保護フィルム16を剥離し、図2(a)に示すように、基板18の表面に、支持フィルム10、クッション層12、および感光層14を、感光層14が基板18に接するようにローラー20を用いて圧着し、図2(b)に示すように、基板18上に感光層14とクッション層12と支持フィルム10とをこの順に積層させる積層工程を行う。次いで、図2(c)に示すように、クッション層12と支持フィルム10とを除去して基板18上に感光層14を備えた積層基板を得る。
【0071】
次に、図2(d)に示すように、紫外線等の活性光線に対して透明部分を有したパターンマスク22を用いることにより、積層基板における感光層14の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成させる露光工程を行う。そして、図2(e)に示すように、感光層14における露光部以外の部分を除去する現像工程を行い、続いて露光部を水洗する水洗工程を行うことで永久レジスト24を形成させる。
【0072】
上記積層工程において、感光層14を基板18上に積層する方法としては、例えば、感光層14を70〜130℃程度に加熱しながら、基板18に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することにより積層する方法が挙げられる。このとき、追従性をさらに向上させる観点から減圧下で積層を行ってもよい。また、密着性をさらに向上させるために、基板18の予熱処理を行ってもよい。なお、基板18の積層される表面は通常金属面であるが、特に制限されない。さらに、基板18の表面には凹凸が存在していてもよく、上述した感光性フィルム1を用いることによって凹凸への追従性よくラミネートすることができる。
【0073】
上記露光工程において、積層が完了した感光層14は、アートワークと呼ばれるネガ又はポジパターンマスク22を通して活性光線が画像状に照射される。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。また、レーザー直接描画露光法によってパターンマスクを用いずに露光を行ってもよい。
【0074】
露光工程においては、上記活性光線の照射によって、レジスト層がネガ型である場合は、露光部が硬化されて未露光部が現像によって除去されることとなり、一方、レジスト層がポジ型である場合は、露光部が分解、イオン形成などにより現像液に溶解されやすくなり、露光部が現像によって除去されることとなる。
【0075】
なお、支持フィルム10及びクッション層12を剥離せずに露光を行うこともできるが、活性光線の照射(露光)を行う前に支持フィルム10及びクッション層12を剥離した方が、解像度の向上及び形成される画像の鮮明性の見地から好ましい。
【0076】
上記現像工程は、ウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することによって行われる。ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等の感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
【0077】
上記水洗工程は、現像液を洗い流すために、基板18上に形成された感光層14の露光部を水洗液により洗浄することによって行われる。
【0078】
本発明の永久レジストの製造方法において、上記現像工程及び/又は上記水洗工程は、感光層14における(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが、下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するものとなるように、2価以上の金属イオンを含む現像液及び/又は水洗液で処理する工程である。
【0079】
ここで、現像液及び/又は水洗液に含有される2価以上の金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のイオンが挙げられるが、多価金属の陽イオンとなりやすく、上記一般式(I)で表される基を構成して物理的に安定な状態となり、永久マスクレジスト表面の耐湿絶縁性を十分に向上させることができる観点から、アルカリ土類金属のイオンであることが好ましい。
【0080】
上記アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、ベリリウム等が挙げられるが、永久マスクレジスト表面の耐湿絶縁性を十分に向上させることができ、また、材料入手がしやすいといった見地から、カルシウム又はマグネシウムであることが好ましい。
【0081】
本発明の永久レジストの製造方法においては、上記現像工程及び/又は上記水洗工程により、上記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーにおける上記カルボキシル基の総量の30〜100モル%を上記Xn+によって置換することが好ましく、50〜100モル%を置換することがより好ましく、70〜100モル%を置換することが特に好ましい。
【0082】
ここで、上記置換量は、例えば以下の手順で測定することができる。まず、基板上の永久マスクレジストを1g削り取り、18MΩ以上の電気伝導度の純水30ccと一緒に、耐熱テフロン(登録商標)容器中に入れ、100〜120℃で4〜8時間処理し、イオン成分を熱抽出させる。その後、抽出処理した試料を常温に戻し、イオンクロマトグラフィー(DIONEX社製、型式DXION Chromatogrph等)、原子吸光光度計((株)日立製作所製、型式Z5010等)などを用いることで永久マスクレジスト中の金属陽イオン成分及び濃度を定量し、上記置換量を求めることができる。また、現像後の現像液又は水洗後の水洗液に含有される金属陽イオンの濃度をイオンクロマトグラフィーにより定量することにより、現像又は洗浄により置換された金属陽イオンの量を算出することができる。
【0083】
なお、上記一般式(I)で表される基は、例えば、日本フィリップス(株)製、商品名EDAX DX−PRIME等のEPMA(XMA):Electron Probe X−ray Microanalysis(X線マイクロアナライザー(微少部分分析装置))等で分析することができる。
【0084】
上記現像工程で使用する現像液としては、特に制限は無く、例えば、アルカリ性現像液、水系現像液、有機溶剤等の現像液が挙げられ、これらによるウエット現像等で現像を行うことができる。上記アルカリ現像液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。上記アルカリ性水溶液のpHは、9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層14の現像性に合わせて調節される。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0085】
本発明における現像液には、上述した2価以上の金属イオンを混合又は溶解させる事が好ましい。上記金属イオンとしては、上述したものが挙げられる。現像液に金属イオンを混合又は溶解させる方法としては、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、水酸化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸鉄、炭酸銅などを現像液に混合又は溶解させる方法が挙げられる。
【0086】
現像液に混合又は溶解させる金属イオンの量は、質量基準で1ppm〜10000ppmであることが好ましく、10ppm〜2000ppmであることがより好ましく、50ppm〜500ppmであることが特に好ましい。現像条件としては特に制限はなく、15〜40℃、15秒間〜5分間程度で行うことが、作業性、生産性の見地から好ましい。
【0087】
こうして現像工程を行った後、永久マスクレジストから現像液を洗い流すために水洗工程を行うことが好ましく、水洗液としては、例えば、水道水、井戸水、純水、イオン交換水等が挙げられる。
【0088】
また、本発明における水洗液には、金属イオンを混合又は溶解させる事が好ましい。上記金属イオンとしては、上述したものが挙げられる。水洗液に金属イオンを混合又は溶解させる方法としては、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、水酸化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸鉄、炭酸銅などを上記水洗液に混合又は溶解させる方法が挙げられる。
【0089】
水洗液に混合又は溶解させる金属イオンの量は、質量基準で1ppm〜10000ppmであることが好ましく、10ppm〜2000ppmであることがより好ましく、50ppm〜500ppmであることが特に好ましい。水洗条件としては特に制限は無く、15〜40℃、15秒間〜5分間程度で行うことが、作業性、生産性の見地から好ましい。また、現像工程及び水洗工程を行った後に、はんだ耐熱性、耐薬品性を向上させる目的で、高圧水銀灯による紫外線照射や、加熱を行うことが好ましい。紫外線照射を行う際の紫外線の照射量は、0.2〜10J/cm程度とするのが一般的であり、この照射の際、60〜160℃の熱を伴うことが好ましい。また、加熱を行う際は、100〜170℃程度の温度範囲で15〜90分間程度行うことが好ましい。これら紫外線照射及び加熱を行う順番は、どちらが先でもよい。
【0090】
なお、本発明の永久レジストの製造方法においては、水洗工程を行わなくてもよく、現像工程を行った後、必要に応じて紫外線照射や加熱を行って永久レジストの作製を完了してもよい。
【0091】
この場合、上記現像工程は、感光層14における(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが、下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するものとなるように、2価以上の金属イオンを含む現像液で処理する工程であることが必要である。
【0092】
すなわち、本発明の永久レジストの製造方法においては、金属イオンを含む現像液を用いずに現像工程を行った後、金属イオンを含む水洗液を用いて水洗工程を行う方法、金属イオンを含む現像液を用いて現像工程を行った後、金属イオンを含む水洗液を用いずに水洗工程を行う方法、金属イオンを含む現像液を用いて現像工程を行った後、金属イオンを含む水洗液を用いて水洗工程を行う方法、又は、金属イオンを含む現像液を用いて現像工程を行った後、水洗工程を行わない方法、を用いることができる。
【0093】
また、本発明の永久レジストの製造方法において、基板18としては、例えば、単層プリント配線板、多層プリント配線板、CSP、BGA等の半導体パッケージ用基板、フレキシブルプリント配線板等が挙げられる。これらの中でもフレキシブルプリント配線板が好ましく、配線が形成された基板であることが好ましい。また、基板18はスルーホールを有していてもよい。
【0094】
本発明の永久レジストの製造方法により得られた永久マスクレジストは、例えば、上記基板の絶縁層又は保護膜として使用することができる。
【0095】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、上述した本発明の永久レジストの製造方法により基板上に永久レジストを形成するレジスト形成工程を含むことを特徴とする方法である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において量比を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0097】
[合成例1:ウレタン樹脂の合成]
攪拌機、温度計、冷却管及び空気導入管付き反応容器に空気を導入させた後、ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセルCD205PL、重量平均分子量:500)196.8部、ジメチロールブタン酸(三菱化学(株)製)58.3部、ジエチレングリコール(日曹丸善ケミカル(株)製)37.6部、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(三菱化学(株)製)148.1部、p−メトキシフェノール(和光純薬(株)製)0.55部、ジブチル錫ラウレート(東京ファインケミカル(株)製、L101)0.55部及びメチルエチルケトン(東燃化学(株)製)110.2部を仕込み、空気気流下で65℃まで攪拌しながら昇温した。
【0098】
次に、滴下容器に、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(ヒュルスジャパン社製、VESTANAT TMDI)305.9部を仕込み、温度を65±3℃に保ったまま、3時間かけて反応容器内へ均一に滴下した。滴下終了後、滴下容器をメチルエチルケトン76.5部を用いて洗浄し、洗浄液は反応容器内にそのまま投入した。更に、反応容器内の溶液を攪拌しながら2時間保温した後、75℃に昇温した。
【0099】
その後、反応容器内の溶液について、赤外吸収スペクトルのイソシアネートのピークが消失するまで、75±3℃で攪拌保温を続けた。このとき、およそ6〜8時間でイソシアネートのピークが消失した。このピークの消失を確認した後、60℃まで降温し、メタノール(和光純薬(株)製)9.3部を添加し、60±3℃で30分保温した。その後、メチルエチルケトンを56.4部添加し、透明なウレタン樹脂溶液を得た。このウレタン樹脂の固形分は75.6%、酸価は22.2mgKOH/g、粘度は1,810cpであった。
【0100】
[感光性樹脂組成物の作製]
表1に示す材料を同表に示す量で配合し、感光性樹脂組成物(I)の溶液を作製した。また、表2に示す材料を同表に示す量で配合し、感光性樹脂組成物(II)の溶液を作製した。
【0101】
【表1】



【0102】
【化1】



【0103】
【化2】



【0104】
【表2】



【0105】
[クッション層材料の作製]
表3に示す材料を同表に示す量で配合し、クッション層材料(I)及び(II)の溶液を作製した。
【0106】
【表3】



【0107】
[感光性フィルム1の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(I)の溶液を、乾燥後の厚みが30μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(I)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム1を得た。得られた感光性フィルム1を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0108】
[感光性フィルム2の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(I)の溶液を、乾燥後の厚みが30μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(II)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム2を得た。得られた感光性フィルム2を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0109】
[感光性フィルム3の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(II)の溶液を、乾燥後の厚みが30μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(I)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム3を得た。得られた感光性フィルム3を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0110】
[感光性フィルム4の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(II)の溶液を、乾燥後の厚みが30μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(II)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム4を得た。得られた感光性フィルム4を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0111】
[感光性フィルム5の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(I)の溶液を、乾燥後の厚みが10μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(I)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム5を得た。得られた感光性フィルム5を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0112】
[感光性フィルム6の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(I)の溶液を、乾燥後の厚みが10μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(II)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム6を得た。得られた感光性フィルム6を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0113】
[感光性フィルム7の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(II)の溶液を、乾燥後の厚みが10μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(I)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム7を得た。得られた感光性フィルム7を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0114】
[感光性フィルム8の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、クッション層材料(II)の溶液を、乾燥後の厚みが10μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥してクッション層を形成した。次に、クッション層上に、感光性樹脂組成物(II)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム8を得た。得られた感光性フィルム8を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0115】
[感光性フィルム9の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、感光性樹脂組成物(I)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム9を得た。得られた感光性フィルム9を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0116】
[感光性フィルム10の作製]
支持フィルムとして、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:G2−16、帝人(株)製)を用い、その上に、感光性樹脂組成物(II)の溶液を、乾燥後の厚みが40μmになるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光層を形成した。その後、感光層上に、保護フィルムとして25μm厚のポリエチレンフィルムを積層し、感光性フィルム10を得た。得られた感光性フィルム10を、支持フィルムが外側になるようにロール状に巻き取った。
【0117】
(実施例1)
厚み60μmの銅箔を片面に積層したガラスエポキシ基板(日立化成工業(株)製、商品名:MCL−E67)の銅表面を、#600相当のブラシを持つ研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥して銅張積層板を得た。
【0118】
次いで、得られた銅張積層板上に、ライン幅及びスペース幅がいずれも150μmであるレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンが形成された銅張積層板を100g/Lの過硫酸アンモニウム水溶液(30℃)に15分間浸漬した後、剥離液(3質量%水酸化ナトリウム水溶液、45℃、スプレー圧力:0.2MPa)を用いてレジストパターンを剥離し、幅150μm、深さ15μmの凹みが形成された試験基板を得た。
【0119】
次に、得られた試験基板上に、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、型式:MVLP−500)を用いて、上記の感光性フィルム1を、保護フィルムを剥離した後、感光層が基材と隣接するようにしてラミネートした(積層工程)。
【0120】
この際のラミネータの成形温度は60℃、成形圧力は0.4MPa(4kgf/cm)、真空時間及び加圧時間をそれぞれ20秒とした。
【0121】
ラミネート終了後、23℃まで冷却し、1時間以上放置した後、支持フィルムとクッション層とを剥離し、その直後にネガマスク(ストーファー21段ステップタブレットとライン幅/スペース幅が150/150(単位:μm)の配線パターンを有するネガマスク)を感光層に密着させ、オーク製作所(株)製露光機(型式:HMW−201GX、水銀ショートアークランプ)を用いて、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光した(露光工程)。このとき、ネガマスクにおけるライン及びスペースが、試験基板の凹凸ラインと垂直に交差するようにネガマスクを配置し、露光を行った。
【0122】
次いで、純水を用いた1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)に、塩化カルシウムをCaイオンとして10ppmとなる量で混合・溶解してなる現像液を用い、50秒間スプレー現像(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(現像工程)。更に、塩化カルシウムをCaイオンとして90ppmとなる量で純水に混合・溶解してなる水洗液を用い、100秒間スプレー水洗(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(水洗工程)。その後、(株)オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理することで、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0123】
(実施例2)
感光性フィルム1に代えて感光性フィルム2を用いた以外は実施例1と同様にして、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0124】
(実施例3)
感光性フィルム1に代えて感光性フィルム3を用いた以外は実施例1と同様にして、積層工程及び露光工程を行った。
【0125】
次いで、純水を用いた1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を現像液として用い、50秒間スプレー現像(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(現像工程)。更に、塩化カルシウムをCaイオンとして90ppmとなる量で純水に混合・溶解してなる水洗液を用い、100秒間スプレー水洗(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(水洗工程)。その後、(株)オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理することで、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0126】
(実施例4)
感光性フィルム1に代えて感光性フィルム4を用いた以外は実施例1と同様にして、積層工程及び露光工程を行った。
【0127】
次いで、純水を用いた1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)に、塩化マグネシウムをMgイオンとして10ppmとなる量で混合・溶解してなる現像液を用い、50秒間スプレー現像(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(現像工程)。更に、塩化マグネシウムをMgイオンとして90ppmとなる量で純水に混合・溶解してなる水洗液を用い、100秒間スプレー水洗(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(水洗工程)。その後、(株)オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理することで、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0128】
(比較例1〜6)
感光性フィルム1に代えて感光性フィルム5〜10をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0129】
(比較例7)
実施例1と同様にして、積層工程及び露光工程を行った。
【0130】
次いで、純水を用いた1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を現像液として用い、50秒間スプレー現像(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(現像工程)。更に、純水を水洗液として用い、100秒間スプレー水洗(スプレー圧力:0.18MPa(1.8kgf/cm))した(水洗工程)。その後、(株)オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理することで、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0131】
(比較例8)
感光性フィルム1に代えて感光性フィルム2を用いた以外は比較例7と同様にして、基板上に永久レジストを形成し、プリント配線板を得た。
【0132】
[凹凸追従性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られた永久レジストを、SEM(Scanning Electron Microscope)画像処理装置(倍率:100倍)を用いて観察した。基板上の凹みに永久レジストが追従していない場合は、永久レジストと基板との間に空隙があることが分かるため、この空隙の有無によって凹凸追従性が良好(空隙が確認されなかった)であるか不良(空隙が確認された)であるかを評価した。その結果を表4〜6に示した。
【0133】
[耐湿絶縁性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたプリント配線板において、基板の電極端子部にロジン系フラックス(MH−820V、タムラ化研(株)製)を塗布した後、はんだゴテを用いてテフロン(登録商標)シールド線を陽極、陰極ともに糸巻きはんだにて接続した。その後、60℃、90%RHの恒湿恒温槽中にプリント配線板を放置し、接続したテフロン(登録商標)シールド線を電圧発生装置に接続して、6V印可を100時間行った。この操作の後、プリント配線板上の永久レジストの浮き及び剥がれの発生状況を目視にて観察し、以下の評価基準で永久レジストの耐湿絶縁性の評価を行った。その結果を表4〜6に示した。
良好:浮き及び剥がれの発生が確認されなかった、
不良:浮き及び/又は剥がれの発生が確認された。
【0134】
[はんだ耐熱性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたプリント配線板において、永久レジスト上にロジン系フラックス(MH−820V、タムラ化研(株)製)を塗布した後、260℃のはんだ浴中に30秒間浸漬してはんだ処理を行った。この操作の後、永久レジストのクラック発生状況、浮き及び剥がれの発生状況を目視にて観察し、以下の評価基準で永久レジストのはんだ耐熱性の評価を行った。その結果を表4〜6に示した。
良好:クラック、浮き及び剥がれの発生が確認されなかった、
不良:クラック、浮き及び剥がれのうちの1つ以上の発生が確認された。
【0135】
[耐折性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたプリント配線板を260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬してはんだ処理を行った後、ハゼ折りで180°折り曲げ、折り曲げた際の永久レジストのクラックの発生状況を目視で観察し、以下の評価基準で永久レジストの耐折性の評価を行った。その結果を表4〜6に示した。
良好:クラックの発生が確認されなかった、
不良:クラックの発生が確認された。
【0136】
[耐薬品性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたプリント配線板を常温の2N−塩酸水溶液に15分間浸漬した後、永久レジストが膨潤して膨れる現象及び永久レジストの基板からの浮きの発生状況を目視で観察し、以下の評価基準で永久レジストの耐薬品性の評価を行った。その結果を表4〜6に示した。
良好:膨れ及び浮きの発生が確認されなかった、
不良:膨れ及び/又は浮きの発生が確認された。
【0137】
[耐溶剤性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたプリント配線板を常温のイソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬した後、永久レジストが膨潤して膨れる現象及び永久レジストの基板からの浮きの発生状況を目視で観察し、以下の評価基準で永久レジストの耐溶剤性の評価を行った。その結果を表4〜6に示した。
良好:膨れ及び浮きの発生が確認されなかった、
不良:膨れ及び/又は浮きの発生が確認された。
【0138】
【表4】



【0139】
【表5】



【0140】
【表6】



【0141】
表4〜6に示した結果から明らかなように、本発明の永久レジストの製造方法によれば、比較例1〜8の製造方法と比較して、十分な耐湿絶縁性を示し、且つ、十分な凹凸追従性を示す永久レジストを形成できることが確認された。また、本発明の永久レジストの製造方法によれば、可とう性(耐折性)、はんだ耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れた永久レジストを形成できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の永久レジストの製造方法において使用する感光性フィルムの一例を示す模式断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の永久レジストの製造方法を模式的に示す工程図である。
【符号の説明】
【0143】
1…感光性フィルム、10…支持フィルム、12…クッション層、14…感光層、16…保護フィルム、18…基板、22…パターンマスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルム、膜厚が20〜100μmのクッション層及び感光層がこの順に積層されてなる感光性フィルムを、基板上に、前記感光層が前記基板と隣接するように積層する積層工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成する露光工程と、
前記感光層の前記露光部以外の部分を除去する現像工程と、
前記露光部を水洗する水洗工程と、
を含み、
前記感光層は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であり、
前記現像工程及び/又は前記水洗工程は、前記感光層における前記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するものとなるように、2価以上の金属イオンを含む現像液及び/又は水洗液で処理する工程であることを特徴とする永久レジストの製造方法。
【請求項2】
支持フィルム、膜厚が20〜100μmのクッション層及び感光層がこの順に積層されてなる感光性フィルムを、基板上に、前記感光層が前記基板と隣接するように積層する積層工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成する露光工程と、
前記感光層の前記露光部以外の部分を除去する現像工程と、
を含み、
前記感光層は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であり、
前記現像工程は、前記感光層における前記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーが下記一般式(I):
−(COO・Xn+ (I)
[式中、Xn+はn価の金属イオンを示し、nは2以上の整数を示す。]
で表わされる基を有するものとなるように、2価以上の金属イオンを含む現像液で処理する工程であることを特徴とする永久レジストの製造方法。
【請求項3】
前記Xn+がアルカリ土類金属イオンであり、
前記(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーにおける前記カルボキシル基の総量の30〜100モル%を前記Xn+によって置換することを特徴とする請求項1又は2記載の永久レジストの製造方法。
【請求項4】
前記クッション層が、エチレンと該エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体を含有してなる層であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の永久レジストの製造方法。
【請求項5】
前記クッション層が、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を含有してなる層であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の永久レジストの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の永久レジストの製造方法により永久レジストを形成するレジスト形成工程を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−71966(P2007−71966A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256365(P2005−256365)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】