説明

液体噴射ヘッド、液体噴射装置および圧電素子

【課題】環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電体層を備えた液体噴射ヘッド及びその液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる液体噴射ヘッド600は、薄膜法により形成された圧電体層30および圧電体層30に電圧を印加する電極10,20を含む圧電アクチュエーター102を備える。液体噴射ヘッド600の圧電体層30は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上8.0モル%以下のマンガンと、を含む固溶体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置および圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドは、液体噴射装置の構成として、例えば、インクジェットプリンター等に用いられる。この場合、液体噴射ヘッドは、インクの小滴を吐出して飛翔させるために用いられ、これによりインクジェットプリンターは、当該インクを紙等の媒体に付着させて印刷を行うことができる。
【0003】
液体噴射ヘッドは、一般に、ノズルから液体を吐出するために液体に圧力を加えるアクチュエーターを有している。このようなアクチュエーターは、例えば、圧電素子を備えたものがある。アクチュエーターが備える圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、2つの電極によって電圧が印加されることによって変形することができ、この変形を利用して、アクチュエーターを、例えば、撓み振動モードで動作させることができる。
【0004】
このような用途に用いられる圧電材料としては、電気機械変換効率などの圧電特性が高いことが望ましく、該特性が他の材料に比較して優れていることから、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料の研究開発が行われてきた。しかし、近年、圧電材料の圧電特性をさらに向上する要求が強まるとともに、環境負荷のより小さい材料を用いることが求められるようになり、PZT系の材料では、これらの要求に応えることが困難となってきており、例えば、鉛含有量の少ないペロブスカイト型酸化物の圧電材料の開発が進められるようになった。
【0005】
圧電素子における圧電性を示す判断基準として、P−E測定を行った場合のヒステリシスループの形状により判断することが知られている。チタン酸ビスマスナトリウムは、例えば、(Bi0.5,Na0.5)TiOで表すことができ、新たな圧電材料として期待されていた。しかしながら、BNTは、バルクの状態では一般的なヒステリシスループを示すが、薄膜の状態では同じ組成のBNTであってもリーク電流量が大きく、良好なヒステリシスループを示さなかった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−105295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電体層を備えた液体噴射ヘッド及びその液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、環境負荷が小さく、良好な圧電特性を有する圧電体層を備えた圧電素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明にかかる液体噴射ヘッドの一態様は、
薄膜法により形成された圧電体層および前記圧電体層に電圧を印加する電極を含む圧電アクチュエーターを備えた液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体層は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上8.0モル%以下のマンガンと、を含む固溶体である。
【0010】
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、環境負荷が小さいチタン酸ビスマスナトリウムを採用した圧電体層を備えても、圧電体層におけるリーク電流量は少なくかつ圧電特性も良好とすることができる。
【0011】
[適用例2]
適用例1において、
前記圧電体層は、0.2モル%以上4.0モル%以下のマンガンを含むことができる。
【0012】
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体層のリーク電流量はさらに少なく、かつ、より良好な圧電特性を有することができる。
【0013】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記圧電体層は、さらにチタン酸バリウムを含むことができる。
【0014】
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体層がチタン酸バリウムをさらに含んでもリーク電流量は少なくかつ良好な圧電特性を有することができる。
【0015】
[適用例4]
適用例3において、
前記圧電体層は、前記チタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満85モル%以上と、前記チタン酸バリウム0モル%超15モル%以下と、を含むことができる。
【0016】
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体層がチタン酸ビスマスナトリウムとチタン酸バリウムとを前記所定割合で含んでもリーク電流量は少なくかつ良好な圧電特性を有することができる。
【0017】
[適用例5]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記圧電体層は、さらにチタン酸ビスマスカリウムを含むことができる。
【0018】
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体層がチタン酸ビスマスカリウムをさらに含んでもリーク電流量は少なくかつ良好な圧電特性を有することができる。
【0019】
[適用例6]
適用例5において、
前記圧電体層は、前記チタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満67モル%以上と、前記チタン酸ビスマスカリウム0モル%超30モル%以下と、前記チタン酸バリウム0モル%超3モル%以下と、を含むことができる。
【0020】
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体層がチタン酸ビスマスナトリウムとチタン酸ビスマスカリウムとチタン酸バリウムとを所定割合で含んでもリーク電流量は少なくかつ良好な圧電特性を有することができる。
【0021】
[適用例7]
本発明にかかる液体噴射装置の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載の液体噴射ヘッドを備える。
【0022】
本適用例の液体噴射装置は、環境負荷が小さいチタン酸ビスマスナトリウムを採用した圧電体層を備えても、圧電体層におけるリーク電流量は少なく、かつ、圧電特性も良好とすることができる。
【0023】
[請求項8]
本発明にかかる圧電素子の一態様は、
薄膜法により形成された圧電体層および前記圧電体層に電圧を印加する電極を含む圧電素子であって、
前記圧電体層は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上8.0モル%以下のマンガンと、を含む固溶体である。
【0024】
本適用例の圧電素子によれば、環境負荷が小さいチタン酸ビスマスナトリウムを採用した圧電体層を備えても、圧電体層におけるリーク電流量は少なくかつ圧電特性も良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の圧電素子100(圧電アクチュエーター102)の断面の模式図。
【図2】実施形態の液体噴射ヘッド600の断面の模式図。
【図3】実施形態の液体噴射ヘッド600を模式的に示す分解斜視図。
【図4】実施形態の液体噴射装置700を模式的に示す斜視図。
【図5】比較例1の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図6】実施例1の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図7】実施例2の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図8】実施例4の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図9】比較例4の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図10】実施例5の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図11】比較例5の圧電素子のヒステリシス曲線。
【図12】実施例6の圧電素子のヒステリシス曲線。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、下記の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1.圧電素子および圧電アクチュエーター
図1は、本実施形態にかかる圧電素子100の断面の模式図である。
【0028】
本実施形態にかかる圧電素子100は、第1導電層10と、第2導電層20と、圧電体層30と、を含む。
【0029】
1.1.第1導電層
第1導電層10は、例えば、基板1の上方に形成される。基板1は、例えば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板とすることができる。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。また、基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。また、例えば、後述する液体噴射ヘッドのように、基板1の下方に圧力室等が形成されているような場合においては、基板1より下方に形成される複数の構成をまとめて一つの基板1とみなしてもよい。
【0030】
基板1は、可撓性を有し、圧電体層30の動作によって変形(屈曲)することのできる振動板であってもよい。この場合、圧電素子100は、振動板と、第1導電層20と、圧電体層30と、第2導電層20と、を含む圧電アクチュエーター102となる。ここで、基板1が可撓性を有するとは、基板1がたわむことができることを指す。基板1を振動板とした場合、基板1のたわみは、圧電アクチュエーター102を液体噴射ヘッドに使用する場合、吐出させる液体の体積と同程度に圧力室の容積を変化させうる程度であれば十分である。
【0031】
基板1が振動板である場合は、基板1の材質としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化シリコン、酸化シリコンなどの無機酸化物、ステンレス鋼などの合金を例示することができる。これらのうち、基板1(振動板)の材質としては、化学的安定性および剛性の点で、酸化ジルコニウムが特に好適である。この場合においても基板1は、例示した物質の2種以上の積層構造であってもよい。
【0032】
本実施形態では、以下、基板1が振動板であって、酸化ジルコニウムによって形成されている場合を例示する。したがって、圧電素子100は、可撓性を有し、圧電体層30の動作によって変形(屈曲)することができる振動板を備えた圧電アクチュエーター102と実質的に同一である。以下の説明においては、圧電素子100および圧電アクチュエーター102は、相互に読み替えることができる。
【0033】
第1導電層10の形状は、第2導電層20と対向できるかぎり限定されないが、本実施形態では、圧電体層30が、薄膜状に形成されるため、層状あるいは薄膜状の形状が好ましい。第1導電層10の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第1導電層10の平面的な形状についても、第2導電層20が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層30を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形等とすることができる。
【0034】
第1導電層10の機能の一つとしては、第2導電層20と一対になって、圧電体層30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層30の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。第1導電層10には、圧電体層30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。
【0035】
第1導電層10の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)などを例示することができる。第1導電層10は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0036】
1.2.第2導電層
第2導電層20は、第1導電層10に対向して配置される。第2導電層20は、全体が第1導電層10と対向していてもよいし、一部が第1導電層10に対向していてもよい。第2導電層20の形状は、第1導電層10と対向できるかぎり限定されないが、本実施形態では、圧電体層30が、薄膜状に形成されるため、層状あるいは薄膜状の形状が好ましい。第2導電層20の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第2導電層20の平面的な形状についても、第1導電層10に対向して配置されたときに両者の間に圧電体層30を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形等とすることができる。
【0037】
第2導電層20の機能の一つとしては、圧電体層30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層30の上に形成された上部電極)となることが挙げられる。第2導電層20には、圧電体層30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。第2導電層20の材質は、上述の第1導電層10と同様とすることができる。
【0038】
図1は、第1導電層10が第2導電層20よりも平面的に大きく形成された例を示しているが、第2導電層20のほうが第1導電層10よりも平面的に大きく形成されてもよい。この場合は、第2導電層20は、圧電体層30の側面に形成されてもよく、第2導電層20に、水分や水素等から圧電体層30を保護する機能を兼ねさせることができる。
【0039】
1.3.圧電体層
圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20の間に配置される。圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20の少なくとも一方に接していてもよい。図1の例では、圧電体層30は、第1導電層20および第2導電層20に接して設けられている。
【0040】
圧電体層30は、薄膜法により形成される。ここで、薄膜法とは、スパッタ法、蒸着法、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法、MOD(Metal−Organic Decomposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)(レーザーアブレーション)法、ミスト成膜法、およびゾルゲル法の少なくとも一種の方法を指す。すなわち、本実施形態の圧電体層30は、バルク状態で形成されたものではなく、例えば、バルク状態で形成されたあとに、研磨等により薄膜化されたものではない。
【0041】
圧電体層30の厚さは、薄膜法によって形成される限り限定されず、例えば、100nm以上3000nm以下とすることができる。薄膜法によって、厚みの大きい圧電体層30を形成する場合には、例えば、スパッタ法、蒸着法、MOCVD法などの物質を堆積させる種の方法では堆積時間を長くすることにより形成することができ、また例えば、MOD法やゾルゲル法などのコーティング−焼成を行う種の方法では、該方法を繰り返して積層することにより形成することができる。さらに、積層する場合には、各層毎に異なる薄膜法を用いて積層してもよい。圧電体層30の厚みがこの範囲を外れると、耐圧が不十分となったり、十分な変形(電気機械変換)が得られなくなったりする場合がある。
【0042】
本実施形態の圧電体層30は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上8.0モル%以下のマンガンと、を含む固溶体である。チタン酸ビスマスナトリウムは、例えば、(Bi0.5,Na0.5)TiO(以下これを「BNT」と略記することがある)で表すことができ、一般式としては、ABOで示される複合酸化物であり、Aサイトにビスマスおよびナトリウムが位置し、Bサイトにチタンが位置するいわゆるペロブスカイト型酸化物に分類される。BNTは、結晶化により、ペロブスカイト型の結晶構造をとることができ、バルクの状態で圧電性を呈することができる。しかしながら、BNT単体のバルクは良好なヒステリシスループを示すことができるが、BNT単体の薄膜はリーク電流量が大きくかつ良好なヒステリシスループを示すことができない。この理由として、BNTのバルクでは1000℃以上で圧電体層を焼成した後に電極を低温で形成するのに対し、BNTの薄膜では既存の電極の上に高温で圧電体層を制作するため、電極と圧電体層との間で良好な界面が形成できないためであると本発明者等は推測している。本実施形態の圧電体層30は、チタン酸ビスマスナトリウムにマンガンを所定量添加することによって、薄膜法で形成してもリーク電流量が少なくかつ良好なヒステリシスループを示すことができる。本実施形態の圧電体層30と第1の導電体層10との界面が良好であると推測できる。これにより、圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20によって電界が印加されることで変形することができる。この変形によって、例えば基板1をたわませたり振動させたりすることができ、圧電アクチュエーター102を構成することができる。
【0043】
圧電体層30は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上4.0モル%以下のマンガンと、を含むことができる。このような圧電体層30は、リーク電流量を少なくすることができる。さらに、圧電体層30は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上1.0モル%以下のマンガンと、を含むことができる。このような圧電体層30は、さらにリーク電流量を少なくすることができる。
【0044】
本実施形態の圧電体層30は、チタン酸ビスマスナトリウムを主体とした固溶体であれば、例えばチタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満50モル%以上に対して、他の圧電特性を有する材料を0モル%超50モル%未満含む混晶系とすることができる。このような他の圧電特性を有する材料としては、ペロブスカイト型酸化物であって、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、ビスマスフェライト、クロム酸ビスマス、コバルト酸ビスマス、アルミ酸ビスマスなどの非鉛含有化合物の群より選ばれる少なくとも1種とすることができる。圧電体層30は、例えば、チタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満85モル%以上と、チタン酸バリウム0モル%超15モル%以下と、を含むことができる。また、圧電体層30は、例えば、チタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満67モル%以上と、チタン酸ビスマスカリウム0モル%超30モル%以下と、チタン酸バリウム0モル%超3モル%以下と、を含むことができる。チタン酸バリウムは例えばBaTiO(以下、「BK」と略記することがある)で表すことができ、チタン酸ビスマスカリウムは例えば(Bi0.50.5)TiO(以下、「BKT」と略記することがある)で表すことができる。BNT、BT、BKTなどは、ABOにおけるBサイトに位置する元素に対するAサイトに位置する元素のモル比による組成比(以下、A/Bという)が科学量論組成であれば1であるが、化学量論組成からずれていてもよい。なお、本実施形態の圧電体層30におけるマンガンの添加量(モル%)は、チタン酸ビスマスナトリウム100モル%もしくは混晶系のペロブスカイト型酸化物100モル%に対する添加量である。
【0045】
1.4.作用効果等
本実施形態にかかる圧電素子100(圧電アクチュエーター102)は、上述の圧電体層30を含むため、少なくとも、リーク電流量が少なくかつ良好なヒステリシスループを示すという特徴を有する。なお、圧電体層30のヒステリシスループの形状は、P−E測定を行った場合に得られ、圧電特性を示す判断基準として用いることができる。したがって、良好なヒステリシスループを示す圧電体層30は、良好な圧電特性を有していると判断することができる。また、本実施形態にかかる圧電体層30は、非鉛含有化合物であることで環境負荷を小さく抑えることができるとともに、良好な圧電特性を有することができる。
【0046】
本実施形態の圧電素子100は、広範な用途に用いることができる。圧電アクチュエーター102の用途としては、例えば、液体噴射ヘッド、インクジェットプリンターなどの液体噴射装置などがあり、圧電素子100の用途としては、ジャイロセンサー、加速度センサーなどの各種のセンサー類、音叉型振動子などのタイミングデバイス類、超音波モーターなどの超音波デバイス類に好適に用いることができる。
【0047】
2.圧電素子の製造方法
本発明の圧電素子100は、例えば、以下のように製造することができる。
【0048】
まず、基板1を準備し、基板1上に第1導電層10を形成する。第1導電層20は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。第1導電層10は、必要に応じてパターニングされることができる。
【0049】
次に、第1導電層20の上に、圧電体層30を形成する。圧電体層30は、上述の通り、例えば、スパッタ法、蒸着法、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法、MOD(Metal−Organic Decomposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)(レーザーアブレーション)法、ミスト成膜法、およびゾルゲル法の少なくとも一種の方法あるいはこれら複数の方法の組合せにより形成されることができる。圧電体層30の結晶化は、例えば、550℃以上800℃以下において、酸素雰囲気で行うことができる。これにより、圧電体層30を結晶化することができる。圧電体層30を結晶化する熱処理温度は、例えば550℃以上850℃以下とすることができ、さらに600℃以上750℃以下とすることができる。なお、結晶化は、圧電体層30をパターニングした後に行ってもよい。そして、必要に応じて、上記操作を複数回繰り返して、所望の厚みの圧電体層30を得ることができる。
【0050】
次に、圧電体層30の上に第2導電層20を形成する。第2導電層20は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。そして、所望の形状に第2導電層20および圧電体層30をパターニングして、圧電素子を形成する。なお第2導電層20および圧電体層30は、必要に応じて同時にパターニングされることができる。以上例示した工程により、本実施形態の圧電素子100を製造することができる。
【0051】
3.液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる圧電素子(圧電アクチュエーター)の用途の一例として、これらを有する液体噴射ヘッド600について、図面を参照しながら説明する。図2は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図3は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
【0052】
液体噴射ヘッド600は、上述の圧電素子(圧電アクチュエーター)を有することができる。以下では、基板1(上部に振動板1aを含む構造体)の上に圧電素子100が形成され、圧電素子100と振動板1aとが圧電アクチュエーター102を構成している液体噴射ヘッド600を例示して説明する。
【0053】
液体噴射ヘッド600は、図2および図3に示すように、ノズル孔612を有するノズル板610と、圧力室622を形成するための圧力室基板620と、圧電素子100と、を含む。さらに、液体噴射ヘッド600は、図3に示すように、筐体630を有することができる。なお、図3では、圧電素子100を簡略化して図示している。
【0054】
ノズル板610は、図2および図3に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出されることができる。ノズル板610には、例えば、多数のノズル孔612が一列に設けられている。ノズル板620の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。
【0055】
圧力室基板620は、ノズル板610上(図3の例では下)に設けられている。圧力室基板620の材質としては、例えば、シリコンなどを例示することができる。圧力室基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図3に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力室622と、が設けられている。この例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力室622とを区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。リザーバー624、供給口626および圧力室622は、ノズル板610と圧力室基板620と振動板1aとによって区画されている。リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力室622に供給されることができる。圧力室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力室622はノズル孔612と連通しており、圧力室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
【0056】
圧電素子100は、圧力室基板620上(図3の例では下)に設けられている。圧電素子100は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、圧電体層30の動作によって変形し、圧力室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0057】
筐体630は、図3に示すように、ノズル板610、圧力室基板620および圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
【0058】
液体噴射ヘッド600は、上述した少なくとも耐圧に優れた圧電素子100を含んでいる。したがって液体噴射ヘッド600は、耐圧が高く、従来に比較してより高い電圧の動作が可能で、液体等の吐出能力が高いものとなっている。
【0059】
なお、ここでは、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0060】
4.液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。液体噴射装置は、上述の液体噴射ヘッドを有する。以下では、液体噴射装置が上述の液体噴射ヘッドを有するインクジェットプリンターである場合について説明する。図4は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
【0061】
液体噴射装置700は、図4に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
【0062】
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
【0063】
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
【0064】
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0065】
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
【0066】
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
【0067】
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。
【0068】
ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
【0069】
液体噴射装置700は、耐圧の高い液体噴射ヘッド600を有する。したがって液体噴射装置700の液体の吐出能力は高いものとなっている。
【0070】
なお、上記例示した液体噴射装置700は、1つの液体噴射ヘッド600を有し、この液体噴射ヘッド600によって、記録媒体に印刷を行うことができるものであるが、複数の液体噴射ヘッドを有してもよい。液体噴射装置が複数の液体噴射ヘッドを有する場合には、複数の液体噴射ヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数の液体噴射ヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。このような集合となったヘッドとしては、例えば、複数のヘッドのそれぞれのノズル孔が全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッドを挙げることができる。
【0071】
以上、本発明にかかる液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンターとしての液体噴射装置700を説明したが、本発明にかかる液体噴射装置は、工業的にも利用することができる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したものなどを用いることができる。本発明の液体噴射装置は、例示したプリンター等の画像記録装置以外にも、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)、電気泳動ディスプレイ等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料噴射装置としても好適に用いられることができる。
【0072】
5.実施例および比較例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
【0073】
5.1.圧電素子の作製
実施例1ないし実施例6および比較例1ないし比較例5の圧電素子は、以下のように作製した。
【0074】
まず、基板を以下の工程にて作製した。単結晶シリコン基板上に絶縁膜として二酸化シリコンを熱酸化にて作製した。この二酸化シリコン膜上にRFマグネトロンスパッタ法により膜厚が40nmのチタン(Ti)膜を形成し、熱酸化することで酸化チタン膜を形成した。さらに、この酸化チタン膜上にRFマグネトロンスパッタ法により膜厚が100nmの白金(Pt)膜を順次成膜し、(111)面に配向した下電極を作製した。この下電極は、上記実施形態の第1導電層10に相当する。
【0075】
次に、各実施例および各比較例の圧電体層30は、いずれも化学溶液法によって作製した。化学溶液法の原料としては、金属アルコキシドもしくは有機酸金属塩を、溶媒(n−ブタノール)に混合したものを用いた。原料溶液の組成としては表1ないし表3に示す金属組成になるように調合した。表1ないし表3には、原料における配合量すなわち仕込み量(mol%)を記載した。薄膜形成方法としては、下電極が成膜された基板上に、500rpmで10秒間回転後、2500rpmで30秒間スピンコートすることにより原料溶液を塗布した後、150℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、3分間乾燥を行った後、400℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、5分間保持して脱脂した。このスピンコートから脱脂するまでの工程を6回繰り返し行った。さらに、この基板を750℃で2分間、酸素雰囲気中でアニールを行って薄膜の圧電体層30を焼成した。
【0076】
最後に、下電極と圧電体層とが成膜された基板に、直径500μmの穴のあいた金属マスクを使用して、DCスパッタ法により膜厚100nmの白金(Pt)層を形成した。この白金(Pt)層が上電極であり、上記実施形態の第2導電層20に相当する。
【0077】
比較例1ないし3及び実施例1ないし4では、チタン酸ビスマスナトリウム(Bi0.5,Na0.5)TiO100モル%に対し、マンガン(Mn)0モル%以上12モル%以下を添加した。
【0078】
比較例4及び実施例5では、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi0.5,Na0.5)TiO)85モル%とチタン酸ビスマスカリウム((Bi0.5,K0.5)TiO)15モル%に対し、マンガン(Mn)0モル%と1モル%を添加した。
【0079】
比較例5及び実施例6では、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi0.5,Na0.5)TiO)67モル%とチタン酸ビスマスカリウム((Bi0.5,K0.5)TiO)30モル%とチタン酸バリウム(BaTiO)3モル%に対し、マンガン(Mn)0モル%と1モル%を添加した。
【0080】
5.2.圧電素子の評価
5.2.1.リーク電流量の評価
各実施例、各比較例の圧電素子のリーク電流量は、ヒューレット・パッカード社製4140Bを使用し、deley time:0.5sec、hold time:0.5sec、印加電界:200kV/cm、250kV/cm、300kV/cm、400kV/cm、500kV/cm、600kV/cmの評価条件にて測定した各リーク電流値に基づいて評価した。測定結果は、表1ないし表3に示した。なお、ショートしてリーク電流値が計測できなかった場合は、表1ないし表3に「ショート」と記載した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
5.2.2.ヒステリシスの評価
ヒステリシスの評価は、東陽テクニカ社製、「FCE−1A」を用い、ヒステリシスループを測定し、その形状を評価して行った。測定条件は、測定温度:室温、周波数:1kHz、波形:三角波、印加電界:400kV/cmと630kV/cmであった。ヒステリシスの評価に用いた試料は、各実施例および各比較例ともに、リーク電流量の評価に用いたものと同様とした。図5は、比較例1の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図6は、実施例1の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図7は、実施例2の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図8は、実施例4の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図9は、比較例4の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図10は、実施例5の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図11は、比較例5の圧電素子のヒステリシス曲線であり、図12は、実施例6の圧電素子のヒステリシス曲線である。
【0085】
5.3.評価結果
表1に示した印加電界200kV/cmと400kV/cmでのリーク電流値を比較すると、マンガンを添加していない比較例1に比べて、マンガンを0.2モル%以上8モル%以下添加した実施例1ないし4はリーク電流値が小さくなっており、マンガンを12モル%添加した比較例3は正負ともにショートした。また、マンガンを添加していない比較例1に比べて、マンガンを0.1モル%添加した比較例2は、400kV/cmでのリーク電流値が小さくなっているが、200kV/cmでのリーク電流値が負側で大きくなった。チタン酸ビスマスナトリウムにマンガンを所定量添加することによってリーク電流値が小さくなることが確認できた。
【0086】
表2に示した印加電界250kV/cmでのリーク電流値を比較すると、マンガンを添加していない比較例4に比べて、マンガンを1モル%添加した実施例5はリーク電流値が小さくなった。また、表2に示した印加電界500kV/cmでのリーク電流値を比較すると、マンガンを添加していない比較例4に比べて、マンガンを1モル%添加した実施例5はリーク電流値が小さくなった。圧電素子がチタン酸ビスマスナトリウムだけでなくチタン酸バリウムを15モル%含んだ場合でも、マンガンを1モル%添加することによってリーク電流値が小さくなることが確認できた。
【0087】
表3に示した印加電界300kV/cmでのリーク電流値を比較すると、マンガンを添加していない比較例5に比べて、マンガンを1モル%添加した実施例6はリーク電流値が小さくなった。また、表3に示した印加電界600kV/cmでのリーク電流値を比較すると、マンガンを添加していない比較例5に比べて、マンガンを1モル%添加した実施例6はリーク電流値が小さくなった。圧電素子がチタン酸ビスマスナトリウムとチタン酸バリウムに加えてチタン酸ビスマスカリウムを含んだ場合でも、マンガンを1モル%添加することによってリーク電流値が小さくなることが確認できた。
【0088】
図5ないし図8をみると、比較例1のヒステリシスループは、リーク電流の影響から丸みを帯びた形状になっているが、マンガンを添加した実施例1,2,4はヒステリシスループが良好な形状に改善され、よりシャープな形状になったため、良好な圧電特性を呈することが判明した。
【0089】
図9及び図10をみると、比較例4のヒステリシスループよりもマンガンを1モル%添加した実施例5のヒステリシスループの方がより良好な形状に改善され、チタン酸バリウムを15モル%含んだ場合でも、マンガンを1モル%添加することで良好な圧電特性を呈することが判明した。
【0090】
図11及び図12をみると、比較例5のヒステリシスループよりもマンガンを1モル%添加した実施例6のヒステリシスループの方がより良好な形状に改善され、チタン酸バリウム3モル%とチタン酸ビスマスカリウムを30モル%含んだ場合でも、マンガンを1モル%添加することで良好な圧電特性を呈することが判明した。
【0091】
以上のように、本発明にかかる圧電素子は、環境負荷を小さく抑え、優れた圧電特性を示すことが判明した。
【0092】
以上に述べた実施形態および変形実施形態は、任意の複数の形態を適宜組み合わせることが可能である。これにより、組み合わされた実施形態は、それぞれの実施形態が有する効果または相乗的な効果を奏することができる。
【0093】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0094】
1…基板、1a…振動板、10…第1導電層、20…第2導電層、30…圧電体層、100…圧電素子、102…圧電アクチュエーター、600…液体噴射ヘッド、610…ノズル板、612…ノズル孔、620…圧力室基板、622…圧力室、624…リザーバー、626…供給口、628…貫通孔、630…筐体、700…液体噴射装置、710…駆動部、720…装置本体、721…トレイ、722…排出口、730…ヘッドユニット、731…インクカートリッジ、732…キャリッジ、741…キャリッジモーター、742…往復動機構、743…タイミングベルト、744…キャリッジガイド軸、750…給紙部、751…給紙モーター、752…給紙ローラー、752a…従動ローラー、752b…駆動ローラー、760…制御部、770…操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜法により形成された圧電体層および前記圧電体層に電圧を印加する電極を含む圧電アクチュエーターを備えた液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体層は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上8.0モル%以下のマンガンと、を含む固溶体である、液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧電体層は、0.2モル%以上4.0モル%以下のマンガンを含む、液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記圧電体層は、さらにチタン酸バリウムを含む、液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項3において、
前記圧電体層は、前記チタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満85モル%以上と、前記チタン酸バリウム0モル%超15モル%以下と、を含む、液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記圧電体層は、さらにチタン酸ビスマスカリウムを含む、液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項5において、
前記圧電体層は、前記チタン酸ビスマスナトリウム100モル%未満67モル%以上と、前記チタン酸ビスマスカリウム0モル%超30モル%以下と、前記チタン酸バリウム0モル%超3モル%以下と、を含む、液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えた、液体噴射装置。
【請求項8】
薄膜法により形成された圧電体層および前記圧電体層に電圧を印加する電極を含む圧電素子であって、
前記圧電体層は、チタン酸ビスマスナトリウムと、0.2モル%以上8.0モル%以下のマンガンと、を含む固溶体である、圧電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−222884(P2011−222884A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92907(P2010−92907)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】