説明

液処理方法及び液処理装置

【課題】基板表面を液処理した後に、基板表面を清浄に乾燥させることが可能な液処理方法及び液処理装置を提供する。
【解決手段】表面上に疎水性領域を有する基板を第1の回転速度で回転し、前記基板の表面中央部に対して、前記基板に供給された薬液をリンスするリンス液を第1の流量で供給し、前記基板の表面全面に前記リンス液の液膜を形成するステップと、前記基板の表面全面に形成された液膜を壊し、前記基板の表面上に前記リンス液の筋状の流れを形成するステップと、前記リンス液の筋状の流れが前記基板の表面上から外へ出るまで前記リンス液を供給する供給部を前記基板の外縁に向かって移動するステップとを含む液処理方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやフラットパネルディスプレー用のガラス基板などの基板に対して液処理を行う液処理方法及び液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造工程においては、半導体ウエハやガラス基板などの基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理が行われる。洗浄処理に使用される液処理装置として、半導体ウエハ等の基板をスピンチャックで保持して基板を回転し、基板に処理液を供給して基板を処理する枚葉式のものが知られている。
【0003】
ところで、基板に対して純水を供給する純水ノズルとともに不活性ガスを供給する不活性ガスノズルを用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−53051 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される発明においては、純水ノズルから基板表面に純水を供給するとともに、純水ノズルよりも基板の中央部側に位置する不活性ガスノズルから基板表面に不活性ガスを吹き付けながら、純水ノズル及び不活性ガスノズルを基板中央部から外周に向かって移動させる。これにより、純水ノズルから供給され基板の回転により基板表面に形成される純水水膜が、不活性ガスノズルからの不活性ガスによって排除され、基板の中央部から外周に向かってほぼ同心円状に乾燥領域が広がっていく。
【0006】
しかし、純水水膜が円環状に広がっていく際に、基板表面に微小な水滴が残ると、不活性ガスによっても除去されずにそのまま乾燥してしまうため、ウォータマークの発生を十分に低減することは難しい。このようなウォータマークは、半導体集積回路の高集積化に伴って、基板上に形成されるパターンが微細化することによって、問題視されるようになってきた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為され、液処理された基板表面を清浄に乾燥させることが可能な液処理方法及び液処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、表面上に疎水性領域を有する基板を第1の回転速度で回転し、前記基板の表面中央部に対して、前記基板に供給された薬液をリンスするリンス液を第1の流量で供給し、前記基板の表面全面に前記リンス液の液膜を形成するステップと、前記基板の表面全面に形成された液膜を壊し、前記基板の表面上に前記リンス液の筋状の流れを形成するステップと、前記リンス液の筋状の流れが前記基板の表面上から外へ出るまで前記リンス液を供給する供給部を前記基板の外縁に向かって移動するステップとを含む液処理方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、表面上に疎水性領域を有する基板を保持して回転する基板保持回転部と、前記基板保持回転部により保持される前記基板に対して、前記基板に供給された薬液をリンスするリンス液を供給するリンス液供給部と、前記基板保持回転部により前記基板を第1の回転速度で回転し、前記リンス液供給部から前記基板の表面中央部に対して第1の流量で前記リンス液を供給し、前記基板保持回転部により前記第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で前記基板を回転し、前記リンス液供給部から前記第1の流量よりも少ない第2の流量で前記リンス液を供給し、前記基板の表面上から外へ出るまで前記リンス液供給部を前記基板の外縁に向かって移動するように、前記基板保持回転部及び前記リンス液供給部を制御する制御部と、を備える液処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、液処理された基板表面を清浄に乾燥させることができる液処理方法及び液処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による基板処理装置を示す概略上面図である。
【図2】図1の基板処理装置に組み込まれ得る、本発明の実施形態による液処理装置を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態による液処理方法を説明する模式図である。
【図4】本発明の実施形態による液処理方法における基板回転速度及びリンス液供給量を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施形態による液処理方法の変形例を説明する模式図である。
【図6】図2の液処理装置のノズルブロックの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下に記載する数値は、例示を目的とするものであって、本発明を実施する際に適宜調整されるべきものである。
【0013】
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態による液処理装置を含む基板処理装置について説明する。図1は、本発明の実施形態による基板処理装置を模式的に示す上面図である。図示のとおり、基板処理装置100は、複数のウエハWを収容する複数の(図示の例では4つの)ウエハキャリアCが載置されるキャリアステーションS1と、キャリアステーションS1と後述の液処理ステーションS3との間でウエハWを受け渡す搬入出ステーションS2と、本発明の実施形態による液処理装置1が配置される液処理ステーションS3とを備える。
【0014】
搬入出ステーションS2には、ウエハキャリアCからウエハWを搬出してステージ13に載置し、また、ステージ13のウエハWを取り上げてウエハキャリアCへ搬入する搬送機構11を有している。搬送機構11は、ウエハWを保持する保持アーム11aを有している。搬送機構11は、ウエハキャリアCの配列方向(図中のX方向)に延びるガイド12に沿って移動することができる。また、搬送機構11は、X方向に垂直な方向(図中のY方向)及び上下方向に保持アーム11aを移動させることができ、水平面内で保持アーム11aを回転させることができる。
【0015】
液処理ステーションS3は、Y方向に延びる搬送室16と、搬送室16の両側に設けられた複数の液処理装置1とを有している。搬送室16には、搬送機構14が設けられ、搬送機構14は、ウエハWを保持する保持アーム14aを有している。搬送機構14は、搬送室16に設けられY方向に延びるガイド15に沿って移動することができる。また、搬送機構14は、保持アーム14aをX方向に移動することができ、水平面内で回転させることができる。搬送機構14は、搬入出ステーションS2の受け渡しステージ13と各基板処理ユニット1との間でウエハWを搬送する。
また、基板処理装置100には、各種の部品及び部材を制御する制御部17が設けられ、制御部17の制御の下、基板処理装置100が動作し、例えば後述の基板処理方法が実施される。
【0016】
以上の構成を有する基板処理装置100においては、キャリアステーションS1に載置されるウエハキャリアCから搬送機構11によってウエハWが取り出されてステージ13に載置される。ステージ13上のウエハWは、液処理ステーションS3内の搬送機構14により液処理装置1に搬入され、ウエハWの表面が所定の洗浄液で洗浄され、例えば純水により洗浄液が洗い流され、ウエハWの表面が乾燥される。ウエハWの表面が乾燥された後、ウエハWは、搬入時と逆の経路(手順)によりウエハキャリアCへ戻される。また、一のウエハWが洗浄される間に、他のウエハWが他の液処理装置1へ順次搬送され、洗浄される。
【0017】
次に、上述の液処理装置1について図2を参照しながら説明する。図2は、液処理装置1を模式的に示す側面図である。図示のとおり、液処理装置1は、ウエハWを支持し回転するウエハ支持回転部21と、ウエハ支持回転部21により支持されるウエハW上に流体を供給する複数の吐出部を保持するノズルブロック22と、ノズルブロック22に保持された吐出部からウエハW上に供給され、ウエハ支持回転部21により回転されるウエハW上から飛散する薬液やリンス液を受けるカップ部23とを有する。ウエハ支持回転部21、ノズルブロック22、及びカップ部23は、筐体24内に配置されている。また、筐体24には、清浄気体の流入口24aが設けられ、図示しない空調設備から清浄気体が流入する。筐体24内に流入した清浄気体は、筐体24内の上部に配置されたパンチグリルを通して、カップ部23へ向かって流れる。これにより、ウエハWの洗浄及び乾燥は、清浄雰囲気中で行われることとなる。
【0018】
ウエハ支持回転部21上には、複数のウエハ支持部材21aが設けられ、これらにより、ウエハWが支持される。また、ウエハ支持回転部21の下面中央部には、回転シャフト21sが結合され、回転シャフト21sはモータMに接続されている。このような構成により、ウエハ支持回転部21により支持されるウエハWが回転される。
【0019】
ノズルブロック22は、ウエハ支持回転部21により支持されるウエハWと、カップ部23との上方にアーム(図3参照)により支持され、図示しない駆動機構によりカップ部23の外側の位置(ホーム位置)と、ウエハWの中央上方位置(供給位置)とに移動することができる。図2においては、ホーム位置にあるノズルブロック22を実線で示し、供給位置にあるノズルブロック22を破線で示している。
【0020】
また、ノズルブロック22には、図示の例では5本の吐出部、具体的には、撥水処理液吐出部22a、処理液吐出部22b、小流量リンス液吐出部22c、気体吐出部22d、及びIPA吐出部22eが設けられ、これらに対応する供給ライン20a、20b、20c、20d、及び20eが接続されている。なお、上述の供給位置においては、使用する吐出部22a〜22eがウエハWの中央部の上方に位置する。
供給ライン20aはウエハWをリンス液に対して撥水処理するための撥水処理液の供給源2Aに接続され、したがって、撥水処理液吐出部22aからウエハWの表面に対して撥水処理液が供給される。供給ライン20aにはニードル弁2AN、流量計2AF、及び開閉弁2AVが設けられており、これらにより、撥水処理液が流量制御されて撥水処理液吐出部22aへ供給される。撥水処理液としては、これらに限定されないが、例えば、トリメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)、ジメチルシリルジメチルアミン(DMSDMA)、トリメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)、ヘキサメチルジンラザン(HMDS)、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(TMDS)などのシリル化剤や、界面活性剤、フッ素ポリマー液などを用いることができる。
供給ライン20bは処理液の供給源2B及び20Bに接続されている。本実施形態においては、供給源2Bは、処理液としての洗浄液及びエッチング液のいずれかを供給することができる。洗浄液としては、SC1(NHOH+H+HO)、又はSC2(HCl+H+HO)などを用いることができ、エッチング液としては、フッ酸(HF)、バッファードフッ酸(BHF)、又はHNOなどを用いることができる。また、供給源20Bは処理液として純水を供給することができる。供給源20Bから供給する純水は、例えばウエハWの表面上のパーティクル等を洗い流す洗浄液として用いても良く、洗浄液及びエッチング液などを洗い流すリンス液として使用しても良い。
【0021】
供給源2Bの下流側には開閉弁2BVが設けられ、供給源20Bの下流側には開閉弁20BVが設けられている。これらの一方を開くことにより、処理液又は純水が、処理液吐出部22bからウエハWの表面に対して供給され得る。また、供給ライン20bには、ニードル弁2BN及び流量計2BFが設けられており、これらにより、処理液又は純水が流量制御されて処理液吐出部22bへ供給される。
【0022】
供給ライン20cは純水(又は脱イオン水、以下同じ)の供給源2Cに接続され、したがって、小流量リンス液吐出部22cからウエハWの表面に対し純水を供給することができる。また、供給ライン20cには、ニードル弁2CN、流量計2CF、及び開閉弁2CVが設けられている。開閉弁2CVを開くことにより、供給源2Cからの純水が、ニードル弁2CNにより流量調整されて小流量リンス液吐出部22cからウエハWの表面上に供給され、開閉弁2CVを閉じることにより、純水の供給が停止される。
【0023】
なお、本実施形態においては、供給ライン20cを流れる純水の流量が、供給ライン20bを流れる純水の流量よりも小さくなるようにニードル弁2BN及び2CNが調整されている。また、流量の大小に合わせて、小流量リンス液吐出部22cの口径が処理液吐出部22bの口径よりも小さく形成されている。
【0024】
供給ライン20dは不活性ガスの供給源2Dに接続され、したがって、気体吐出部22dからウエハWの表面に対して不活性ガスが供給される。供給ライン20dにもニードル弁2DN、流量計2DF、及び開閉弁2DVが設けられており、これらにより、不活性ガスが流量制御されて気体吐出部22dへ供給される。不活性ガスは、窒素ガスや、アルゴン(Ar)などの希ガスであっても良い。以下の説明においては、窒素ガスが使用されるものとする。
【0025】
供給ライン20eはIPAの供給源2Eに接続され、したがって、IPA吐出部22eからウエハWの表面に対してIPAを供給することができる。供給ライン20eにもニードル弁2EN、流量計2EF、及び開閉弁2EVが設けられ、これらにより、IPAが流量制御されてIPA吐出部22eへ供給される。
また、液処理装置1におけるモータMの起動/停止や回転速度、ノズルブロック22の移動、開閉弁2AV〜2DVの開閉などは、制御部17により制御される。
【0026】
以下、液処理装置1を用いて実施される、本発明の実施形態による液処理方法について、これまで参照した図面並びに図3及び図4を参照しながら説明する。初めに、液処理装置1の筐体24に設けられたウエハ搬送口(図示せず)を通してウエハWが筐体24内に搬入され、図示しないリフトピンによりウエハ支持回転部21に受け渡される。
【0027】
(処理液の供給)
次に、処理液吐出部22bがウエハWの中央部の上方に位置するようにノズルブロック22を移動する。ウエハ支持回転部21によってウエハWが所定の回転速度で回転されるとともに、開閉弁20BVを閉じたまま開閉弁2BVを開くことにより、ウエハWの表面に対して処理液吐出部22bから処理液を供給する。供給された処理液は、ウエハWの回転によりウエハWの表面全体に液膜として広がり、液処理がウエハWの表面に対して行われる。
【0028】
(純水による処理液のリンス)
所定の期間が経過した後、開閉弁2BVを閉じて処理液の供給を停止するとともに、開閉弁20BVを開くことにより、ウエハWの中央部の上方においてウエハWの表面に対して処理液吐出部22bから純水を供給する。供給された純水は、ウエハWの回転によりウエハWの表面全体を液膜となって流れ、これにより、ウエハWの表面上に残る処理液がリンスされる。
【0029】
(純水とIPAの置換)
純水により処理液が十分にリンスされた後、開閉弁20BVを閉じて純水の供給を停止するとともに、IPA吐出部22eがウエハWの中央部の上方に位置するようにノズルブロック22を移動する。開閉弁2EVを開くことにより、ウエハWの表面に対してIPA吐出部22eからIPAを供給する。供給されたIPAは、ウエハWの表面全体を液膜となって流れ、ウエハWの表面上に残る純水がIPAに置換される。
【0030】
(撥水処理)
次に、開閉弁2EVを閉じてIPAの供給を停止するとともに、撥水処理液吐出部22aがウエハWの中央部の上方に位置するようにノズルブロック22を移動する。次いで、開閉弁2AVを開くことにより、ウエハWの表面に対して撥水処理液吐出部22aから撥水処理液を供給する。撥水処理液は、IPAに対する可溶性を有するため、ウエハWの表面上に残るIPAに混ざりつつもウエハWの回転によってIPAをウエハW外周方向に押し流し、ウエハWの表面全体に液膜となって広がる。これにより、ウエハWの表面が撥水処理される。
【0031】
(撥水処理液とIPAの置換)
次いで、開閉弁2AVを閉じて撥水処理液の供給を停止するとともに、IPA吐出部22eがウエハWの中央部の上方に位置するようにノズルブロック22を移動する。開閉弁2EVを開くことにより、ウエハWの表面に対しIPA吐出部22eからIPAを供給する。供給されたIPAは、ウエハWの表面全体を液膜となって流れ、ウエハWの表面上の撥水処理液がIPAに置換される。
【0032】
(純水によるIPAのリンス)
次に、開閉弁2EVを閉じてIPAの供給を停止するとともに、開閉弁20BVを開くことにより、処理液吐出部22bからウエハWの表面に対して純水を供給する。供給された純水は、図3(a)に示すように、ウエハWの回転によりウエハWの表面全体を液膜となって流れ、ウエハWの表面上のIPAが純水によりリンスされる。このとき、純水をウエハW外周へ早く流してIPAのリンスを効率よく行うために、ウエハWを高速で回転させる必要がある。ウエハWの回転速度は、例えば約1500回転/分(rpm)であって良い。一方で、微小な水滴が原因であるウォータマークの発生を防止するためには、処理工程の途中でウエハWの表面を乾燥させることなく、ウエハWの表面全体に純水による液膜を形成する必要がある。よって、高速で回転するウエハWの表面全体に液膜を形成するために、処理液吐出部22bからは大流量で純水を供給する。ウエハWの表面上に供給される純水の流量は、例えば約2リットル/分(l/min)であって良い。
【0033】
(乾燥プロセス)
次に、モータMの回転速度を減速する。これにより、図4に示すように、ウエハWの回転速度もまた減速する。これに合わせて、開閉弁2BVを閉じて処理液吐出部22bからの純水の供給を停止するとともに、小流量リンス液吐出部22cがウエハWの中央部の上方に位置するようにノズルブロック22を移動し、開閉弁2CVを開く。供給ライン20cを流れる純水の流量はニードル弁2CNにより供給ライン20bを流れる純水の流量よりも小さくなるように制御されているため、上述の処理液吐出部22bから吐出される純水の流量よりも小さい流量で、ウエハWの表面に対して小流量リンス液吐出部22cから純水が供給される(図3(b)参照)。このとき、ウエハWの表面全面に形成されている液膜は維持できずに壊れ、小流量リンス液吐出部22cからウエハWの表面上に供給された純水が、ウエハWの表面上を局所的に、具体的には、ウエハWの中心部から外周に向かって筋状(又は川状)に流れるように、ウエハWの回転速度と小流量リンス液吐出部22c純水の流量とを制御する。ウエハWの回転速度を減速した際の回転速度は、例えば約50rpm以下が好ましく、より好ましくは20rpm程度であって良い。また、純水の流量は例えば約350cm/分であってよい。
【0034】
続いて、図3(c)に示すように、小流量リンス液吐出部22cから上記の流量で純水を供給しつつノズルブロック22をウエハWの外周に向けて移動していく。これによってウエハW上の純水の筋状の流れもまたウエハWの外周に向かって移動していく。その際、ウエハWの表面全面に形成されていた液膜が壊れた後のウエハWの表面上に残っている微小な水滴を、純水の筋状の流れに取り込みながら移動する。そして、ノズルブロック22がウエハWの外周の外側にまで移動すると、ウエハWの表面上から筋状に流れる純水が消失し、ウエハWの表面が乾燥される。その後、開閉弁2CVを閉じて、小流量リンス液吐出部22cからの純水の供給を停止する。
(高速回転乾燥)
この後、図3(d)に示すように、ウエハWの回転速度を上げて、ウエハWの裏面や端部(ベベル部)に残る純水を乾燥させる。また、回転速度の高速化により、ウエハWの表面上を流れる気流の流量及び流速が増大するため、これにより、ウエハWの表面がより確実に乾燥される。なお、このときのウエハWの回転速度は、小流量の純水を供給しているときの回転速度より速ければ良く、大流量の純水でIPAをリンスしているときの回転速度より速くても良い。
【0035】
以上説明した本実施形態による液処理方法によれば、IPAを純水によりリンスする際には、高速度で回転するウエハWの表面に対して大流量の純水を供給しているため、効率よくリンスを行いつつ、ウエハWの表面全体に純水による液膜が形成できる。その後、ウエハWの表面に対して供給する純水の流量をリンス時よりも少ない流量としているため、ウエハWの表面全体に形成されていた液膜は維持できずに壊れ、供給された純水はウエハWの表面を局所的に筋状になって流れる。このとき、ウエハWを低速度で回転させることによって、ウエハWから振り切られた純水がカップ部23ではね返ってウエハWに再付着することを防止することができる。また、純水が流れていない領域には、微小な水滴が点在している可能性があるが、筋状に流れる純水は、ウエハWの回転によってウエハWの全面を通過するため、微小な水滴を取り込むことができる。しかも、ウエハWの中央部から外周に向かう方向にノズルブロック22が移動しているため、筋状に流れる純水は、ウエハWの中央部から外周に向かって移動しながら微小な水滴を取り込んでいく。したがって、ウエハWの表面上には微小な水滴が殆ど残ることがなく、ウォータマークの発生を抑制することができる。
【0036】
例えば、高速回転するウエハに対して純水を供給してウエハ表面上に液膜を形成した後に、純水の供給を停止し、ウエハの回転によりウエハ表面を乾燥させる場合には、ウエハ表面上の液膜は、ウエハの中心部から外周の方向に均等に(360°に)広がり、ウエハの中心部から乾燥されていく。ウエハの外周の方向に純水が広がる際には、液膜中のわずかな量の純水が外周方向への流れから取り残され、ウエハ表面上に微小な水滴が残るおそれがある。そのような液滴が乾燥することによりウォータマークが発生する。
【0037】
しかし、本発明の実施形態によれば、上述のとおり、ウエハ表面上に形成された純水の液膜が壊れた後にウエハWの表面上に残る微小な水滴は、筋状に流れる純水に取り込まれて除去されるため、ウォータマークの発生を抑制することができる。すなわち、ウエハの回転により、ウエハの中央部から外周に向かって乾燥領域を広げていく乾燥方法に比べ、本実施形態による液処理方法は有意な効果を有しているということができる。
【0038】
なお、ウエハWの回転速度と純水の流量とは、ウエハWの表面上において純水が筋状に流れるように適宜調整して良い。ただし、筋状の流れは、ノズルブロック22の下方からウエハWの外周まで繋がっている必要はなく、上述のように、ウエハWが回転する間に、ウエハWの表面上に残る微小な水滴を取り込むことができる限りにおいて、途中で途切れても良く、複数の液玉(又は不定形の液の塊)がウエハWの表面上を連続して転がる状態でも構わない。
【0039】
また、ウエハWの外周方向へ移動する純水の筋状の流れよりもウエハWの中心側に純水が取り残されると、取り残された純水が乾燥することによりウォータマークが発生する可能性がある。このため、ウエハWの外周方向へ移動する純水の筋状の流れよりもウエハWの中心側に純水が取り残されないように、ウエハWの回転速度と純水の流量とを設定することが好ましい。
【0040】
また、同様の観点から、ノズルブロック22の移動速度は、ウエハWの表面上においてウエハWの外周方向へ移動する純水の筋状の流れよりもウエハWの中心側に、純水が残らない程度に設定することが好ましい。具体的には、例えば約7.5mm/秒であることが好ましい。また、ウエハWの中央部から外周に向かってノズルブロック22を移動させる途中で、ノズルブロック22の移動速度を変化させても良い。例えば、約7.5mm/秒の移動速度を途中で約5mm/秒に低下させても良い。また、ウエハWの中央部から約7.5mm/秒の移動速度で移動し始め、ウエハWの外周での移動速度が約5mm/秒となるように移動速度を徐々に減速しても良い。また、これらとは逆に、ノズルブロック22の移動速度をウエハWの中央部から外周に向かって速くしても良い。
【0041】
また、ノズルブロック22の移動に合わせてウエハWの回転速度を変化させても良い。例えば、ウエハWの中央部から外周に向かってノズルブロック22が移動するときに、ウエハWの回転速度を次第に遅くしても良い。回転するウエハWの線速度はウエハWの外周ほど大きいため、ノズルブロック22が外周に近づくに従って回転速度を遅くすることにより、筋状に流れる純水のウエハWの表面に対する速度を、ウエハWの中心側と外周側とで一定にすることができる。したがって、ウエハWの表面に残る微小な水滴は、一様に、筋状に流れる純水に取り込まれ得る。
【0042】
次に、図5を参照しながら、本発明の実施形態による液処理方法の変形例を説明する。この変形例においては、まず、上述の(処理液の供給)から(純水によるIPAのリンス)までが行われる。
【0043】
次いで、ウエハWの回転速度を減速し、処理液吐出部22bからの純水の供給を停止するとともに、ウエハWの中央部の上方から小流量リンス液吐出部22cによりウエハWの表面に対して純水を供給する(図3(b)参照)。このときのウエハWの回転速度及び純水の流量は、上述のとおりで良い。また、小流量リンス液吐出部22cからの純水の供給と合わせて、図5(b)に示すように、ノズルブロック22の気体吐出部22dから、ウエハWの表面に対して窒素ガスが供給される。
【0044】
この後、図5(c)に示すように、小流量リンス液吐出部22cから純水を供給し、気体吐出部22dから窒素ガスを供給しながら、ノズルブロック22がウエハWの外周に向かって移動していく。ノズルブロック22がウエハWの外周から外へ移動することにより、ウエハWの表面から筋状に流れる純水が消失し、ウエハWの表面が乾燥される。ノズルブロック22の移動速度やウエハWの回転速度(の変化)等については、上述のとおりである。
次に、図5(d)に示すように、ウエハWが高速回転され、ウエハWの裏面や端部が乾燥され、ウエハWの液処理が終了する。
【0045】
この変形例においては、低速回転するウエハWの表面に対して、小流量リンス液吐出部22cから小流量の純水が供給されるときに、小流量リンス液吐出部22cよりもウエハWの中心側に位置する気体吐出部22dから窒素ガスがウエハWの表面に対して吹き付けられる。この窒素ガスにより、小流量リンス液吐出部22cからの純水は、ウエハWの中心側に広がり難くなる。したがって、ウエハWの中心側に純水が取り残されてウォータマークの原因となるのを抑制することができる。また、ウエハWの表面に窒素ガスを吹き付けることにより、ウエハWの表面がより確実に乾燥されるという効果も奏される。
【0046】
なお、小流量リンス液吐出部22cからの純水の供給を開始した後、気体吐出部22dがウエハWの中央部の上方に位置するようにノズルブロック22を移動させてから、窒素ガスを供給しても良い。このようにしても、ウエハWの中心側へ純水が広がるのを抑制することができる。また、これによれば、高速回転時にウエハWの表面に形成された液膜をウエハWの中心部から消失させることができる。このため、ウエハWの表面上における微小な水滴の偏在を抑制でき、微小な水滴を取り込み損なう可能性が低減される。
【0047】
次に、図6を参照しながら、ノズルブロック22の変形例を説明する。図6(a)は、ノズルブロック22(のヘッド部)の正面図であり、図6(b)は側面図であり、図6(c)は、正面図に対応する裏面図である。図示のとおり、撥水処理液吐出部22a、処理液吐出部22b、気体吐出部22d、及びIPA吐出部22eは、ウエハWの表面に対してほぼ直交する方向を向いているが、小流量の純水を供給する小流量リンス液吐出部22cは、ウエハWの表面に対して傾斜している。本変形例では具体的には、小流量リンス液吐出部22cは、図6(d)に破線Lで示すように、上から見た場合にウエハWの半径方向RD(ウエハWの回転方向Aに対し直交する方向)に沿って外側を向き、ウエハWの回転方向Aの下流側を向いている。小流量リンス液吐出部22cからウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転力と、ウエハWの回転による遠心力とを受けて、ウエハWの半径方向RDと直交する方向よりもウエハWの外周に向かって流れるためである。ウエハWの半径方向での傾斜は、純水がウエハW中心側に向けて吐出されなければよく、半径方向RDに直交する方向でもよい。小流量リンス液吐出部22cが上述のように傾斜していれば、ウエハWの表面上を流れる方向に向かって純水を供給することができ、よって、ウエハWの中央側へ純水が広がるのを抑制することができる。
【0048】
以上、幾つかの実施形態及び実施例を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更が可能である。
【0049】
例えば、上記の実施形態においては、ウエハWに対して処理液を供給してウエハWを処理した後に、撥水処理液を供給してウエハWの表面を撥水処理したが、撥水処理液を供給してウエハWの表面を撥水処理することは必ずしも必要としない。例えば、ウエハWの表面の少なくとも一部が既に撥水処理されている基板に対して処理液を供給し、リンス液で処理液をリンスしてから乾燥させる場合に本発明の実施形態である液処理方法を適用しても良い。また、表面上に撥水処理領域を有する基板にフォトレジスト膜を形成し、露光し、処理液としての現像液を供給してフォトレジスト膜を現像した後に、リンス液(例えば純水)で現像液をリンスし、ウエハWを乾燥させる場合にも本発明の実施形態である液処理方法を適用しても良い。換言すると、処理液や撥水処理液などの薬液による処理が行われた基板に対し、リンス液を供給してから乾燥させる場合に本発明の実施形態である液処理方法を適用することができる。
【0050】
また、ニードル弁2CNの代わりに、電気信号の入力により流量を可変可能な流量調整弁を用いて、制御部17の制御の下で、吐出部22cから大流量の純水と小流量の純水とを切り替えてウエハWの表面に供給しても良い。また、ニードル弁2BNの代わりに流量調整弁を用い、供給源20Bからの純水の流量を変えても構わない。これらの場合において、純水の流量をステップ状に低減させるのではなく、徐々に低減しても良い。
【0051】
また、ノズルブロック22における小流量リンス液吐出部22cは、図6(d)において一点鎖線で示すように、ウエハWの接線方向(半径方向に直交する方向)に沿ってウエハWの回転方向下流側に向かって傾いていても良い。
【0052】
また、ノズルブロック22における不活性ガスを供給する気体吐出部22dもまた、図6に示す、小流量で純水を供給する小流量リンス液吐出部22cと同様に、ウエハWの表面に対して傾いていても良い。
【0053】
上述の実施形態においては、リンス液として純水を明示したが、例えば希釈した塩酸水溶液(濃度0.1wt%程度)をリンス液として用いても良い。
また、ウエハWの回転速度の減速と純水流量の低減とは同時に行っても良く、また、回転速度の減速が流量の低減に先行しても良い。
また、半導体ウエハだけでなく、フラットパネルディスプレー製造用のガラス基板に対しても本発明の実施形態である液処理方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・液処理装置、21・・・ウエハ支持回転部、22・・・ノズルブロック、23・・・カップ部、24・・・筐体、22a・・・撥水処理液吐出部、22b・・・処理液吐出部、22c・・・小流量リンス液吐出部、22d・・・気体吐出部、22e・・・IPA吐出部、20a〜20e・・・供給ライン、2AF〜2EF・・・流量計、2AN〜2EN・・・ニードル弁、2AV〜2EV・・・開閉弁、M・・・モータ、W・・・ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に疎水性領域を有する基板を第1の回転速度で回転し、前記基板の表面中央部に対して、前記基板に供給された薬液をリンスするリンス液を第1の流量で供給し、前記基板の表面全面に前記リンス液の液膜を形成するステップと、
前記基板の表面全面に形成された液膜を壊し、前記基板の表面上に前記リンス液の筋状の流れを形成するステップと、
前記リンス液の筋状の流れが前記基板の表面上から外へ出るまで前記リンス液を供給する供給部を前記基板の外縁に向かって移動するステップと
を含む液処理方法。
【請求項2】
前記リンス液の筋状の流れを形成するステップにおいて供給される前記リンス液の流量は、前記第1の流量より少ない第2の流量である、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記リンス液の筋状の流れを形成するステップにおける前記基板の回転速度は、前記第1の回転速度より遅い第2の回転速度である、請求項2に記載の液処理方法。
【請求項4】
前記第1の流量よりも少ない前記第2の流量の前記リンス液は、前記第1の流量で前記リンス液を供給する第1リンス液供給部と異なる第2リンス液供給部から供給される、請求項2に記載の液処理方法。
【請求項5】
前記第2の流量の前記リンス液は、前記基板の表面に対して、前記基板の回転方向から前記基板の外縁に向かう方向に供給される、請求項2又は4に記載の液処理方法。
【請求項6】
前記リンス液の筋状の流れが前記基板の表面上から外へ出た後に、前記基板を前記第2の回転速度よりも速い第3の回転速度で回転するステップを更に含む、請求項3に記載の液処理方法。
【請求項7】
前記リンス液を供給する前記供給部を前記基板の外縁に向かって移動するときに、前記供給部よりも前記基板の中心側において前記基板の表面に対してガスが吹き付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項8】
表面上に疎水性領域を有する基板を保持して回転する基板保持回転部と、
前記基板保持回転部により保持される前記基板に対して、前記基板に供給された薬液をリンスするリンス液を供給するリンス液供給部と、
前記基板保持回転部により前記基板を第1の回転速度で回転し、前記リンス液供給部から前記基板の表面中央部に対して第1の流量で前記リンス液を供給し、
前記基板保持回転部により前記第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で前記基板を回転し、前記リンス液供給部から前記第1の流量よりも少ない第2の流量で前記リンス液を供給し、
前記基板の表面上から外へ出るまで前記リンス液供給部を前記基板の外縁に向かって移動するように、前記基板保持回転部及び前記リンス液供給部を制御する制御部と、
を備える液処理装置。
【請求項9】
前記リンス液供給部は、
前記第1の流量で前記リンス液を供給する第1リンス液供給部と、
前記第2の流量で前記リンス液を供給する第2リンス液供給部と
を備える、請求項8に記載の液処理装置。
【請求項10】
前記第2リンス液供給部は、前記基板の表面に対して、前記基板の回転方向から前記基板の外縁に向かう方向に傾いている、請求項9に記載の液処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記リンス液供給部が前記基板の表面上から外へ出た後に、前記基板を前記第2の回転速度よりも速い第3の回転速度で回転するよう前記基板回転保持部を制御する、請求項8から10のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項12】
前記第2リンス液供給部よりも前記基板の中心側に位置し、ガスを吐出するガス吐出部を有し、
前記制御部は、前記基板の外縁に向かって前記リンス液供給部を移動するときに、前記ガス吐出部から前記基板の表面に対して前記ガスを吹き付けるよう前記リンス液供給部を制御する、請求項8から11のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項13】
前記第2リンス液供給部は、前記基板の回転方向に対する接線方向よりも前記基板の外縁に向かう方向に傾くように延びる、請求項8から12のいずれか一項に記載の液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222237(P2012−222237A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88370(P2011−88370)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】