説明

混合プラスチックの微粉およびその製造方法

【課題】塩素含有樹脂を含有する混合プラスチックの微粉の製造方法、および塩素含有量の低い混合プラスチックの微粉を提供すること。特に、塩素含有樹脂を分離することなく廃プラスチックの微粉を製造する方法、および塩素含有量の低い廃プラスチックの微粉を提供すること。また、廃プラスチックの微粉を用いた、高炉の操業方法および廃プラスチックの処理方法を提供すること。
【解決手段】1種または2種以上の塩素を含有するプラスチックおよび1種または2種以上の塩素を含有しないプラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックの増減により塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックを調製する工程、該混合プラスチックを溶融下に攪拌し、脱塩素する工程、該脱塩素された攪拌物を冷却して固化する工程、および該固化物を粉砕する工程、を有する混合プラスチックの微粉の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合プラスチックの微粉とその製造方法に関する。特に、生活や産業活動などで廃棄されたプラスチックである廃プラスチックを、還元剤や燃料などとして再利用し易くした廃プラスチックの微粉とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスや微粉炭の代替材料として利用するために、廃プラスチックを高炉やスクラップ溶解炉等の竪型炉あるいはセメントキルン炉等に吹き込む技術が知られている。
【0003】
例えば、廃プラスチックを粒状化して空気輸送により羽口から吹込み、廃プラスチックをコークス代替品として有効に利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば、炉のレースウエイ内における燃焼率を向上させるために、廃プラスチック粒子の強度や粒径を制御し、粒径数mm程度の廃プラスチックが製造されている。
【0004】
しかし、廃プラスチックの粒径が数mmとなると、燃焼速度が充分に速くなく、これを多量に高炉に吹き込む場合などには、送風中の酸素量に対する廃プラスチック量の比率が増大し、結果として燃焼率が低下することが予想される。
【0005】
そのため、廃プラスチックの燃焼率をより一層向上させるためには、廃プラスチックをさらに細粒化する必要がある。ところが、廃プラスチックをそのままの状態で機械力によって粉砕して微粉炭と同程度の粒度にするには、液体窒素による冷却等の特別な手段が必要であり、高コストになってしまう。
【0006】
そこで、廃プラスチックを加熱して溶融したのち、冷却して固化した廃プラスチックを粉砕して微粉化する技術、あるいは、同様の処理を溶媒あるいは熱媒体中で行う技術などが数多く提案されている。例えば、容器内でプラスチックを150℃以上に加熱後、低沸点成分を除去し、冷却、固化、粉砕する技術が(例えば、特許文献2参照。)、また、150℃以上の温度で容器内で溶媒とともに混合加熱し、粉砕する技術が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。加熱処理することで脱塩化水素処理を同時に行なうことができるため、塩素含有プラスチックを原料として用いる場合も、塩素含有量の低いプラスチック粉砕物を得ることができるが、両技術とも粉砕後の平均粒径は1mm程度である。
【特許文献1】特開2001−220589号公報
【特許文献2】特開平11−192469号公報
【特許文献3】特開平11−197630号公報
【特許文献4】特開平11−140474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、溶媒や媒体等を用いて廃プラスチックを加熱して溶融したのち、冷却して固化した廃プラスチックを粉砕して微粉化する技術では、廃プラスチックの溶融攪拌工程で脱塩素処理を行なうことができるが、使用した溶媒や媒体を回収したり循環したりする必要がありコスト高である。溶媒や媒体等を用いずに、廃プラスチックの溶融攪拌工程で脱塩素処理を行なうことも可能であるが、攪拌が不充分なことから、微粉にすることが困難である。
【0008】
以上のように、従来の廃プラスチックの粉砕物では微粉化が不十分であり、高炉で多量に利用するための燃焼率が確保できず、コークスや微粉炭の代替材料として充分に利用できなかった。
【0009】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、塩素含有樹脂を含有する混合プラスチックの微粉の製造方法、および塩素含有量の低い混合プラスチックの微粉を提供することにある。特に、塩素含有樹脂を分離することなく廃プラスチックの微粉を製造する方法、および塩素含有量の低い廃プラスチックの微粉を提供することである。また、本発明の他の目的は、廃プラスチックの微粉を用いた、高炉の操業方法および廃プラスチックの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)、1種または2種以上の塩素を含有するプラスチックおよび1種または2種以上の塩素を含有しないプラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックの増減により塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックを調製する工程、
該混合プラスチックを溶融下に攪拌し、脱塩素する工程、
該脱塩素された攪拌物を冷却して固化する工程、および
該固化物を粉砕する工程、
を有する混合プラスチックの微粉の製造方法。
(2)、廃プラスチックに塩素を含有するプラスチックを加えて塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックを調製する工程;
該混合プラスチックを溶融下に攪拌し、脱塩素する工程;
該脱塩素された攪拌物を冷却して固化する工程;および
該固化物を粉砕する工程;
を有する混合プラスチックの微粉の製造方法。
(3)、脱塩素する工程において、混合プラスチック中の塩素濃度を0.9mass%以下まで脱塩素することを特徴とする(1)または(2)に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
(4)、攪拌が、押出し機による混練である(1)ないし(3)に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
(5)、押出し機の前段で水分を除去し、該押出し機の後段で塩化水素を除去する(4)に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
(6)、押出し機が複数の押出し機で構成され、前段の押出し機で水分を除去し、後段の押出し機で塩化水素を除去する(4)ないし(5)に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
(7)、(1)ないし(6)のいずれかに記載の粉砕方法により得られる粒径500μm以下が80mass%以上である混合プラスチックの微粉。
(8)、塩素を含有するプラスチック、塩素を含有しないプラスチックおよび混合プラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックが廃プラスチックである(1)ないし(6)のいずれかに記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
(9)、(8)に記載の粉砕方法により得られる粒径500μm以下が80mass%以上である廃プラスチックの微粉。
(10)、(9)に記載の廃プラスチックの微粉を高炉に吹き込む高炉の操業方法。
(11)、(9)に記載の廃プラスチックの微粉に造粒プラスチックを事前に混合し、高炉に吹き込む高炉の操業方法。
(12)、廃プラスチックに塩素含有プラスチックを混合して、塩素濃度を2〜20mass%に調整した混合廃プラスチックを加熱溶融し、次いで冷却固化して固化体を形成し、該固化体を粉砕することを特徴とする廃プラスチックの処理方法。
(13)、加熱溶融中に塩素含有廃プラスチックを混合した廃プラスチックを撹拌することを特徴とする(12)に記載の廃プラスチックの処理方法。
(14)、廃プラスチックを押出し機を用いて加熱溶融して混練することを特徴とする(13)に記載の廃プラスチックの処理方法。
(15)、押出し機の前段で水分を除去し、該押出し機の後段で塩化水素を除去する(14)に記載の廃プラスチックの処理方法。
(16)、押出し機が複数の押出し機で構成され、前段の押出し機で水分を除去し、後段の押出し機で塩化水素を除去する(14)または(15)に記載の廃プラスチックの処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、廃プラスチックなどの混合プラスチックから、塩素含有プラスチックの除去操作をしなくても、塩素濃度が極めて低くかつ微細な廃プラスチック粉が容易に得られる。得られた廃プラスチックの微粉は気流輸送も容易なうえ、燃焼性も高いので、生活や産業活動などで廃棄されたプラスチックを、還元剤や燃料などとして再利用できる。よって、本発明は広く産業に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
廃プラスチックに常態のように混入している塩素含有プラスチックは、金属の腐食要因となるため、従来、廃プラスチックを粉砕処理するには塩素含有プラスチックを除去するのが好ましいとされてきた。しかし、本発明者らは、廃プラスチック中の塩素濃度を所定の範囲に調整することにより、溶媒や媒体等を用いない系であっても、該廃プラスチックの融液の攪拌が容易になることを発見した。その結果、驚くべきことに、攪拌工程で廃プラスチックの脱塩素が促進されるため、塩素濃度が極めて低くかつ微細な廃プラスチック粉が得られることが判った。すなわち、日常的な組成である多くの廃プラスチックの場合、むしろ積極的に塩素含有プラスチックを添加して塩素濃度を高めたものの方が、微細で塩素濃度が低い廃プラスチック粉が得られることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、1種または2種以上の塩素を含有するプラスチックおよび1種または2種以上の塩素を含有しないプラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックの増減により塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックを調製する工程;
該混合プラスチックを溶融下に攪拌し、脱塩素する工程;
該脱塩素された攪拌物を冷却して固化する工程;および
該固化物を粉砕する工程:
を有する混合プラスチックの微粉の製造方法、およびこの方法により得られる塩素濃度の低い混合プラスチックの微粉である。
【0014】
この粉砕方法の場合、該塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックは、塩素を含有するプラスチックおよび/または塩素を含有しないプラスチックを加えたり除去したりして調製すればよい。なお、撹拌効率、脱塩素効率および微粉化の観点から、好ましい該塩素濃度は、3〜20mass%であり、より好ましくは4〜20mass%である。
【0015】
また、脱塩素する工程後の、混合プラスチック中の塩素濃度は0.9mass%以下とすることが好ましい。
【0016】
なお、廃プラスチックを還元剤や燃料などとして再利用する観点から、該塩素を含有するプラスチック、該塩素を含有しないプラスチックおよび該混合プラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックが廃プラスチックであることが好ましい。
【0017】
よって、以下では、廃プラスチックを対象に本発明を説明する。
【0018】
廃プラスチックを本発明の対象にする場合、該塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックは、廃プラスチックに塩素を含有するプラスチックおよび/または塩素を含有しないプラスチックを添加して調製したものであるのが好ましい。廃プラスチックから塩素を含有するプラスチックあるいは塩素を含有しないプラスチックを分離して除去するのは手間がかかるからである。また、一般的な廃プラスチックは塩素濃度が2mass%未満であるので、廃プラスチックに塩素を含有するプラスチックを加えて該塩素濃度の調製をするのがより好ましくなる。
【0019】
本発明で言う廃プラスチックとは、使用済みのプラスチックのことである。廃プラスチックは、通常、複数種類のプラスチックの混合物であり、重合の繰り返し単位、ガラス転移点、融点、分解温度等が異なるプラスチックの集合体である。より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂であり、同じポリエチレンでも重合度(分子量)の異なるものも存在する。
【0020】
また、本発明の廃プラスチックの組成は発生場所、発生時期による異なるが、概略下記の組成を例示できる。ポリエチレン:20〜47mass%、ポリプロピレン:15〜35mass%、ポリスチレン:15〜30mass%、PET:6〜26mass%、塩ビ:1〜8mass%、その他プラ・異物:0〜20mass%である。なお、本発明は、使用済みプラスチックに対して未使用のプラスチックを混入させてもよい。廃プラスチックを対象とすると、経済的理由から、未使用のプラスチックの混入量は50mass%未満程度とすることが適当である。また、廃プラスチックの中には、溶融するとプラスチック相互の相溶性のあるものもあり、相溶しないものも存在する。さらには、無機物を充填材として含有したり、アルミ箔とのラミネートとして存在するものもあるため、無機物も混入している。無機充填材の例としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどが挙げられる。
【0021】
なお、塩素含有プラスチックとは、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)及びPVDC(ポリ塩化ビニリデン)等の、塩素成分を含有するプラスチックや、これらのプラスチックの含有割合が高いプラスチックあるいはこれらの廃プラスチック等である。前記の場合と同様に、本発明では、廃プラスチック類と未使用プラスチック類は、適宜、交互に読み替えることができるものである。
【0022】
塩素含有廃プラスチックとしては、産業廃棄物としてのPVC、PVDC等を用いることが特に望ましい。また、廃プラスチックに比重分離等の処理を行い、高比重分として分離された高塩素濃度の廃プラスチックを用いることができる。これらの塩素含有廃プラスチックは、加熱に伴い塩化水素を発生することから、従来技術ではリサイクル利用に不適当であるとされてきた。よって、塩素含有廃プラスチックは廃棄される場合もあるため、低コストで廃プラスチックに混合することができる。
【0023】
本発明で廃プラスチックに塩素含有プラスチックを添加する理由は、以下の通りである。
廃プラスチックに塩素含有プラスチック、特にポリ塩化ビニル(PVC)が含まれている場合、加熱されて塩化水素が脱離する。この脱離反応により生成する炭素原子の数に対する水素原子の数が減少した塩素含有プラスチックは、塩素を含有しないプラスチックに比べて軟化溶融し難く、粉砕性の良好な炭素質ゲルを形成する。このようなプラスチックを冷却して固化体を形成すると、炭素質ゲルが破壊の起点となり、また、冷却した際にこの炭素質ゲル部分と、その他の部分との境界に応力が発生し、プラスチック固化体の粉砕性が向上する。
【0024】
このメカニズムを図1の模式図を用いて説明する。
【0025】
図1において、工程aは処理前の廃プラスチックであり、ポリプロピレン(PP)1、ポリエチレン(PE)2、ポリ塩化ビニル(PVC)3、ポリスチレン(PS)4の異種プラスチックの混合状態である。これらを加熱することにより、工程bの溶融混合状態となる。さらに加熱することで、PVC3の脱塩化水素が起こり、工程cに示すように脆い炭素質ゲル5が生成され、プラスチックは低分子化する。これを冷却することで、プラスチックは収縮して、各プラスチックの収縮率の違いにより界面に残留応力が発生し、工程dに示すように亀裂6が生成する。このような状態の固化体に衝撃を与えると炭素質ゲル5が破壊の起点となり、工程eに示すように廃プラスチックを微粉砕することができる。すなわち、PVCのような塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応の方が、炭化水素系のプラスチックの分解反応よりも起き易いと思われ、これを利用して破壊の起点を廃プラスチック中に分散して設けることが本発明の特徴と言える。
【0026】
粉砕性の向上のためには炭素質ゲルが均質に廃プラスチックに混合されていることが好ましく、廃プラスチックに塩素含有プラスチックを添加する際には、十分に混合することが望ましい。
【0027】
PE、PPなども熱伝導率などの熱的性質が異なることから、炭素質ゲル5ほどではないが、冷却後の固化体なで残留応力を発生し、冷却して得られた固化体を粉砕する際の亀裂の起点となる。
【0028】
廃プラスチックの塩素含有量は、塩素含有プラスチックを添加後で、2〜20mass%に調整する。2mass%未満では、破壊の起点が少なく粉砕性向上の効果が低い。また、20mass%を超えると、炭素質ゲル生成量が多くなり移送性が悪化し、撹拌効率が悪くなる。また、加熱溶融処理によって脱塩化水素を効率的に行なうことが困難となり、プラスチック粉砕物の残存塩素濃度が高くなる。本発明の方法によれば、残存塩素濃度が0.9mass%以下の廃プラスチックの微粉が容易に得られるが、残存塩素濃度が0.9mass%を超えるプラスチック粉砕物を炉に吹込んだ場合、環境汚染や、炉を傷める等の問題が発生する場合があるとともに、高炉の場合、製品であるスラグの品質を低下させることが懸念される。なお、廃プラスチックには、廃棄物であることに由来する食塩や醤油等の無機物の成分としての塩素が付着している場合があるが、本発明で規定する塩素含有量は、上述したようなPVC等の塩素含有プラスチックの成分として含有されている塩素量である。
【0029】
本発明の方法では、該撹拌が押出し機による混練であるのが好ましい。
【0030】
特許文献2では、廃プラスチックを加熱して溶融した後、冷却して固化した廃プラスチックを粉砕して微粉化している。具体的には、外部ヒーターにより容器内の廃プラスチックを150℃以上に加熱して溶融させた後、回転翼を用いて攪拌しながら減圧蒸留することで発生した塩化水素を低沸点成分と共に留去する。次いで溶融廃プラスチックを冷却して固化後、通常の粉砕機を用いて粉砕し微粉状の廃プラスチックにしている。
【0031】
しかし、この方法で多量の廃プラスチックを処理しようとすると、回転翼による攪拌では混合が不十分となるため、固化された廃プラスチックを微細に粉砕するのが困難である。充分な撹拌効果を得るため、また残存塩素濃度を十分に低減するためには、長時間の攪拌処理が必要となるので効率的な方法ではない。
【0032】
また、上述の容器内の溶融廃プラスチックを回転翼で攪拌する方法は、バッチ処理となるため熱効率も悪く、攪拌力からしても多量の廃プラスチックの処理には不向きである。
【0033】
一方、液体の攪拌方法として、液体中にガスを吹込む方法があるが、高い攪拌効率を維持するためには微細な気泡を容器下部より発生させ、しかも液面までその気泡を維持する必要がある。
【0034】
しかし、溶融プラスチックのような高粘度液体中での微細気泡の生成は困難である。また、ガス攪拌は排ガスの処理が大規模となり、設備コストの上昇を招く点でも望ましくない。
【0035】
本発明では、押出し機により溶融した廃プラスチックを混練する工程、該混練された廃プラスチックを冷却して固化する工程、および該固化された廃プラスチックを粉砕する工程からなる廃プラスチックの処理方法が好ましい。
【0036】
以下に、容器(攪拌槽とも呼ぶ)内で溶融した廃プラスチックを回転翼で攪拌し、攪拌された廃プラスチックを容器から取り出して冷却し、固化した廃プラスチックを粉砕する方法と比較しながら、本発明を説明する。
【0037】
図2a、図2b、図2c、図3a、図3bおよび図3cを用いて、攪拌槽と押出し機による処理の違いに起因する廃プラスチック中の混合状態を比較して説明する。
【0038】
図2aが攪拌槽11、図3aが押出し機12の概略図である。攪拌槽11内と押出し機12内のレイノズル数(Re)分布を、図2aのA−A’位置におけるものを図2bに、図3aのB−B’位置におけるものを図3bに示す。また、攪拌槽11内と押出し機12内の溶融プラスチック内の異種プラスチックおよび無機物の分散状態を模式的に図2c、図3cに示す。
【0039】
レイノズル数(Re)とは、粘性流体の一様な流れの中に物体があるとき、流速をU、物体の代表的長さをL、動粘性係数をνとすると、Re=UL/νで定義される無次元量のことをいう。粘性効果に対する慣性効果の大きさと解釈される。
【0040】
攪拌槽11内と押出し機12内のレイノズル数(Re)分布を比較すると、攪拌槽では図2bに示すように不均一であり、押出し機では図3bに示すように均一となって攪拌効率が良い。攪拌槽11は回転翼13で攪拌する方式であるが、円周方向の攪拌であり、攪拌槽の中心部と壁面近傍、および攪拌槽の上部と下部では流体速度に相違がある。
【0041】
一方、押出し機12では移送を兼ねた攪拌方式であり、押出し機の中心部と壁面近傍では流体速度に差はあるが、移送方向の速度はほぼ均一となる。
【0042】
そのため、溶融プラスチック内の異種プラスチックおよび無機物の分布を考えると、攪拌槽では図2cに示すように、低融点で相溶性の高い溶融プラスチック14内に、高融点で、相溶性の低い異種プラスチック15および無機物16が不均一に分散した状態であり、異種プラスチック15および無機物16のサイズも不均一である。一方、押出し機では図3cに示すように異種プラスチック15および無機物16は均一分散の状態であり、粒径などもほぼ均一である。また、一般的に押出し機は狭いシリンダー内を移動しながら攪拌されることから、攪拌槽に比較して小粒径の異種プラスチック15および無機物16となる。
【0043】
廃プラスチックは複数種類のプラスチックの混合物であるので、異種のプラスチックが溶融され攪拌されて、充分な混合状態となることで、冷却後の粉砕性が向上し、微粉化が容易になると推察した。
【0044】
従って、上記の溶融プラスチックを冷却後、粉砕した際には、攪拌槽を用いた場合に比較して、押出し機を用いた場合は粒径分布の狭い粉砕物が得られ、かつ、平均粒子径も小さくなり、粉砕性が向上する。
【0045】
押出し機とは、シリンダー内に押出しスクリューを有し、シリンダー内のプラスチックを加熱して溶融し、混練しながら移送する装置である。押出し機のスクリューの動力は大きく、狭いシリンダー内を廃プラスチックが移動しながら溶融混練されるため、充分な攪拌力により、良好な混合状態を得ることができる。また、スクリューの径や回転数を変更することで押出し機内の滞留時間を容易に調整できるので制御性が高く、所定の操業条件を実施しやすい。また、押出し機を複数台配置するなど、製造ライン設計の自由度も大きい。押出し機のスクリューは任意の数のものを用いることができるが、処理効率の点からは2本以上のスクリューを有する押出し機を用いることが望ましい。
【0046】
また、押出し機は、攪拌と同時に搬送も行うことができるので、連続プロセスに容易に対応できる。また、上述のように、粉砕された廃プラスチックは平均粒径が小さくかつ粒径分布も狭い。したがって、廃プラスチックの処理設備に押出し機を組み込むことによって、熱効率の良い連続プロセスによって微粉砕された廃プラスチックを大量に生産することができる。
【0047】
本発明では、前段に水分用の脱気配管を有し、後段に塩化水素用の脱気配管を有する押出し機を用い、該前段部で廃プラスチックから水分を除去し、該後段部で塩化水素を除去することが望ましい。
【0048】
廃棄物であることに由来して、ほとんどの廃プラスチックは水分を含んでいる。また、ポリ塩化ビニルなどのように塩素を含有するプラスチックが含まれる場合も多い。塩素を含有するプラスチックは加熱処理により塩化水素を発生する。発生した塩化水素は、含有されていた水分に溶解して塩酸となり、各種装置やその配管等を腐食させる。したがって、廃プラスチックの微粉を製造する際に脱塩化水素を行うことが望ましい。本発明では、押出し機を用いた混練工程で、該押出し機の前段において比較的低温で水分を蒸発させて除去した後に、該押出し機の後段において熱分解によって発生する塩化水素を除去することができる。こうすることにより、水分と塩化水素の接触を極力回避できるので、腐食性の塩酸の発生も抑制できる。なお、押出し機の前段とは、押出し機内の廃プラスチック入側の部分を指す。同様に、押出し機の後段とは、押出し機内の廃プラスチック出側の部分を指す。ここで、前段と後段の装置上の比率は特に限定されるものではなく、処理条件によって適宜決められるものである。
【0049】
該押出し機の前段においては、加熱温度は高いほど次工程での熱損失が少なくなるが、塩化水素が発生する温度未満とする必要があり、160〜200℃程度とすることが望ましい。水蒸気を放出する配管に耐腐食性の材質のものを用いれば、より高温での処理も可能である。この処理は脱水と溶融とが目的であり、後述する該後段の条件に比較して低温かつ短時間で処理するのが好ましい。
【0050】
該押出し機の後段においては、該前段で溶融しないで残存した廃プラスチックを溶融させ、充分に混錬して成分プラスチック相互の分散を効率的に行うと同時に、表面更新によって廃プラスチックに含有されている塩素も除去できる。該後段の加熱温度は、300℃以上の高温ほど廃プラスチックからの塩化水素の脱離には有利であるが、プラスチックの解重合も進み、低分子化した成分が気化するので粉砕物としての回収率が低下する。従って、該後段の加熱温度は320〜390℃程度とすることが望ましい。この処理は脱塩化水素のみならず溶融した廃プラスチックの高効率な攪拌も目的であり、該前段の条件に比較すると高温かつ長時間を要する。
【0051】
このような脱ガス処理を行う際には、溶融プラスチックと外気との接触面積が大きい方が望ましい。該接触面積を増加させるためには、例えば、廃プラスチックの投入量を調整することや、押出し機のシリンダー上部に凸部を設けるなどで対応できる。また、スクリューの回転により気液界面が随時更新されるし、スクリューの回転速度を制御して、界面の更新面積も増加させることもできる。このように押出し機を用いることにより発生する塩化水素等の気体の離脱がいっそう容易となり、攪拌槽を用いてプラスチックを加熱する場合よりも高効率で脱ガスを行える。
【0052】
また、廃プラスチックを外部加熱で溶融するには、局部加熱なく内部のプラスチックを加熱するのが好ましく、効率的な熱供給が重要である。押出し機を用いると、スクリューの回転により伝熱面に接する溶融プラスチックを速やかに更新できるので、廃プラスチックの均一な加熱が容易である。しかし、攪拌槽を用いる方式では内部に攪拌機構を保持することから、充分な伝熱面積を確保することが困難である。
【0053】
上述の混練工程では、前段に水分用の脱気配管を有し、後段に塩化水素用の脱気配管を有する1台の押出し機を用いて例示したが、2台以上の押出し機を用いて該混練工程を行うこともできる。2台以上の押出し機を用いる場合は、水分用の脱気配管を有する前段の押出し機と塩化水素用の脱気配管を有する後段の押出し機の少なくとも2種の押出し機を直列に配列して構成すればよい。すなわち、該前段の押出し機にて上述の前段の脱水−混練作業を行い、該後段の押出し機にて上述の後段の脱塩化水素−混練作業を分担して行えばよい。2台以上の押出し機を用いると、処理条件の設定や変更が容易であり、またメンテナンスも容易である。
【0054】
該後段の押出し機はシリンダーの上部に脱ガス空間を有することが望ましい。脱ガス空間の存在により効率良く脱塩化水素させることができる。この際、脱ガス空間に窒素等の不活性ガスを供給し、積極的に塩化水素を系外に排出させることも可能である。なお、配管は該後段の押出し機の加熱温度と同程度かそれ以上に加熱することが望ましい。
【0055】
加熱方式は、特に制限されないが、通常は温度制御の容易性から電気加熱が用いられる。燃料を燃焼させ間接的に加熱する方法でもよく、別途加熱した熱媒により加熱しても良い。また、スクリュー内部に熱媒を通過させ、加熱してもよい。
【0056】
該後段の押出し機から排出されたプラスチックは直接水冷あるいはスチールベルトクーラーのような間接冷却等の公知の方法を用いて冷却すればよい。また、排出口に設けたダイス等により所望の形状にすることもできる。廃プラスチックがダイスより押出される際に適宜切断後、冷却し、ペレット状にしてもよく、間接あるいは直接冷却の機構を有したローラーにより板状とし、その後切断し破砕物にしてもよい。
【0057】
形態は任意であるが、該廃プラスチックの固化体(以下、固化体とも呼ぶ)は、未処理の廃プラスチックに比較して容易に粉砕できる。粉砕方法は通常の粉砕機を用いて行えばよいが、微粉化のためには粗破砕後に微粉砕を行うことが望ましい。粉砕機の方式としては、ボールミルのような衝撃・摩擦方式、ローラーミルのような摩擦方式、ハンマーミルのような衝撃方式、遠心ミル(ジェットミル)のような気流中での粒子同士の衝撃方式等のいずれも用いることができる。目標の粒径により適宜に粉砕方法を選択すれば好い。例えば、粒径1.0mm以下に粉砕する場合には、該固化体の相互衝突に加えて、ハンマーの衝撃による粉砕を行うことが好ましい。すなわち、粉砕機がハンマーを有し、該固化体の粉砕がハンマーにより与えられる衝撃力および該固化体同士の衝突により行なわれるのが好ましい。
【0058】
本発明の方法で得られる廃プラスチック(あるいは混合プラスチック)の粉砕物は、粒径500μm以下のものが80mass%以上を占める微粉にすることができる。このような粒度分布を有する粉砕物は、充分な燃焼性を有し、かつ微粉炭の吹込み設備をそのまま用いても高炉等への吹込みができる。より好ましい該粒度分布は、粒径100μm以下が80mass%以上である。このような微細な廃プラスチックは非常に燃焼性が高いので、燃焼率も向上する。
【0059】
経済的に許すならば、押出し機に廃プラスチックを投入する際に相溶化剤や攪拌媒体を添加しても良い。相溶化剤や攪拌媒体の添加は、廃プラスチックと同時に押出し機に投入しても、予め廃プラスチックと混合してから投入してもよい。
【0060】
相溶化剤は、廃プラスチックを溶融して混練する際に、成分プラスチック相互の分散を助けるので、微細な廃プラスチック粉が得られ易くなる。
【0061】
代表的な塩素含有プラスチックであるPVCは、工業的に使用されているものは硬質PVC、軟質PVCに大別できる。軟質PVCはPVCにDOP(フタル酸ジオクチル、沸点:231℃)、DIDP(フタル酸ジイソデシル、沸点:261℃)などの可塑剤を添加したものである。ここで、DOPやDIDPは相溶化剤として作用するものの一例である。可塑剤は低温での粘性を低下させる効果があり、異種プラスチックの均一混合を容易とする。軟質PVCが存在すると、常温から加熱した場合、まず、可塑剤が脱離し、それと平行して脱塩化水素反応が起こる。PE、PPなどのプラスチックは300℃以下では液相として存在し、それ以上の温度では分解する(図4参照。)。
【0062】
また、処理温度以下で分解し、ガスを発生するようなプラスチック(例えば、硬質ウレタン樹脂)を添加しても良い。この場合は、溶融プラスチック内に積極的に気孔を生成させることで、粉砕時の亀裂が生じ易くなり、粉砕性が向上する。
【0063】
さらに、プラスチックと熱伝導率等の熱的物性の異なるもの、例えば、石炭などを添加することで、該冷却時の冷却速度の相違から、粉砕時の亀裂が生じやすくなり、粉砕性が向上する。
【0064】
一方、攪拌媒体の添加により廃プラスチックが分散し易くなる。例えば、有機溶媒や有機分散媒を用いると、廃プラスチックが膨潤したり一部が溶解したりするので、溶融が容易となるとともに溶融プラスチックの粘性が低下し、塩化水素の気相への脱離が容易となる。結果として、プラスチック粉砕物の粉砕性も向上する。攪拌媒体としては、プラスチックを膨潤および/または溶解させる機能を有するものが好ましい。このような攪拌媒体としては、置換芳香族化合物を含有しているものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、あるいはそれ以上の炭素数のアルキル基を有する多環芳香族炭化水素である。より具体的には、アルキルフェナンスレン、アルキルアンスラセンなどが挙げられる。また、これらの芳香族炭化水素は、環内に酸素、窒素等を含有するものでもよく、具体的にはアルキルキノリン、アルキルカルバゾールなどが挙げられる。上記のアルキル基はいずれも、さらにアルキル置換基を有していてもよい。これらの攪拌媒体は廃プラスチックが冷却時に固化する程度の適当な量を添加するのがよい。また、粉砕機により粉砕性を上げるためには、その軟化点は100℃以上が好ましい。
【0065】
特に望ましい媒体として、石炭系タール、石油系タールを用いることができる。石炭系タールは、石炭系タール常圧蒸留塔底からの重質油(ボトム油)である。具体的には、軟ピッチ、軟ピッチを減圧蒸留した塔底から抜き出した減圧ピッチ(軟化点110℃)、軟ピッチを減圧蒸留塔中段より抜き出した留分(減圧蒸留塔での蒸留温度154℃)、軟ピッチを減圧蒸留塔塔頂より抜き出した留分(HOB:減圧蒸留塔での蒸留温度255℃)、石炭液化油成分から得られる重質油成分、ならびにそれらのブレンド油などがある。石油系タールは、石油系減圧残油、エチレンボトム油、改質油、FCCオイル等である。
【0066】
本発明で得られた廃プラスチックの微粉あるいは混合プラスチックの微粉は、還元剤や燃料などとして各種の炉に吹き込んで利用するのに好適である。
【0067】
図5は、本発明の方法で得た廃プラスチックの微粉を、高炉へ吹込む場合の説明図である。なお、この例では、水分除去用の前段の押出し機と脱塩化水素用の後段の押出し機を直列に配列してある。
【0068】
図5において、廃プラスチック71は、予め磁力選別や風力選別および/または水洗浄等によりプラスチック以外の異物を可能な限り除去した後に、前段の押出し機72に投入される。廃プラスチック71は、予め所定の形状に破砕処理することが望ましく、後述するダイス76の異物によるつまりを防止するため、ダイス径以下に破砕することが望ましい。前段の押出し機72により廃プラスチック71を200℃程度で加熱し、脱水しながら溶融混練する。水分は前段の押出し機72のシリンダーに適宜排気口を設けて除去すればよい。前段の押出し機72から押出された溶融廃プラスチックは、引き続いて後段の押出し機73で370℃程度に加熱され、脱塩素されながら溶融混練される。後段の押出し機73内での加熱により発生する塩化水素ガス等の発生ガスは、脱気配管74を通じてガス処理系75に送られて、処理される。ガス処理系75においては、燃焼処理や、塩酸、タール回収等の処理を行うことができる。脱気配管74はタール等の付着を防止するため後段の押し出し機73と同程度に加熱する。後段の押出し機73からダイス76を通じて押出されたプラスチックは、水冷槽77等で冷却されて固化された後、所定の長さに切断されてペレット状にされる。後段の押出し機73から溶融プラスチックを押出してペレット化する際には、市販のペレット製造装置を用いる等の通常の方法を用いて行えばよい。
製造した廃プラスチックのペレットを第一の粉砕機78で粗粉砕し、この粗粉砕物をさらに第二の粉砕機79で微粉砕する。さらに、微粉砕されたプラスチックは高炉80で利用される。
【0069】
図6は本発明の廃プラスチックの微粉を利用する別の実施態様である。この実施態様では、廃プラスチックの微粉に造粒プラスチックを事前に混合して高炉に吹き込む。
【0070】
図6において、19は搬入された廃プラスチックの解砕装置、20は粗破砕機,21は風選および/または磁選装置,22は造粒機,23は篩い分け装置,24は第一の押出し機(溶融脱水)、25は第二の押出し機(脱塩素)、26は冷却装置、27は排ガス処理装置、28は振動篩い装置、29は粗破砕機、30は微粉砕機、31は分級装置、32は固気分離機、33は冷却機、34は振動篩い装置、35は製品ホッパ、36は微粉プラスチック貯留サイロ、37は造粒プラスチック貯留サイロ、38は吹き込み装置、39は前処理装置、40は羽口部、41〜57移送手段、58はブロアを示す。59は高炉である。
【0071】
前処理装置39は、後工程の必要に応じて配置されればよい。また、固化体を微粉砕する場合、粉塵爆発の可能性もあり、必要に応じて酸素濃度を調整するための不活性ガスを供給する。不活性ガスを循環使用する場合には微粉砕機内でのハンマーと固化体との衝突で発熱することから、不活性ガスのライン内に冷却機を設ける。
【0072】
本発明により得られた微粉プラスチックは単独で高炉に吹き込まれるが、場合によっては10mm以下に造粒された廃プラスチックと同時に高炉に吹き込まれる場合もある。
【0073】
移送手段はベルトコンベア、気流輸送、車両による移送であり、必要に応じて移送手段を選択する。但し、微粉砕機30から振動篩い34までは一連の粉体の取扱いであり、気流輸送で行うのが好ましい。
【0074】
粉砕機としては、特に制限されない。例えば、図7(a)に示す「ウルトラローター」(株式会社ダブリュ・アイ・ア−ル製)型の粉砕機が挙げられる。この粉砕機は、回転ハンマーを有し、ハンマー17の衝撃による粉砕と、局所的に発生させた渦流による粉砕物の相互衝突による粉砕とを同時に行える。60はスクリーンを示す。また、ハンマーで衝撃粉砕するハンマーミルも利用できる。さらに、図7(b)に示すように、ハンマー17の高速回転で衝撃粉砕した原料を、分級ローター18で分級し、微粉を機外へ排出し、粗粉は粉砕部でハンマー17および粗粒同士の衝突により再粉砕される構造を有するパルベライザー(マイクロACMパルベライザーA型/ACM−10A:ホソカワミクロン株式会社製)も利用できる。図7(c)に示すように、ジェット気流中で粉砕物が相互衝突する衝撃により粉砕し、粗粒は分級作用により、再び粉砕作用を受ける構造を有するジェットミル(シングルトラック・ジェットミル/STJ−200:株式会社セイシン企業製)などが好適に用いられる。61は粉砕物の出口を示す。
【0075】
このようにして得られた廃プラスチックの微粉を、既設の微粉炭吹込み装置等を用いて高炉59に吹込み、鉄鉱石の還元剤として利用できる。
【実施例1】
【0076】
図5に示す設備を用いて廃プラスチックの微粉化処理を行った。使用した廃プラスチックは一般家庭からの廃棄物であり、複数種類のプラスチックと異物とが混合された状態で、ポリエチレン32mass%、ポリプロピレン31mass%、ポリスチレン22mass%、その他(紙など)15mass%であった。金属等の異物を除去して洗浄し、フィルム状のものを選別して粒径約20mmに破砕して処理に用いた。塩素含有量は異物除去後で1.4mass%であった。
【0077】
以上の前処理を行った廃プラスチックに対して、産業廃棄物であるPVCを粒径約20mmに破砕した破砕物を添加して混合し、廃プラスチック中の塩素濃度を1.4(塩素含有プラスチックを混合せず)〜24.1mass%とした原料(No.1〜7)を準備して、加熱溶融後に冷却して固化体とし、これを粉砕処理して粉砕物を製造した。
【0078】
塩素含有プラスチックを添加した廃プラスチックの加熱溶融処理は、押出し機を用いて行った。第一の押出し機での加熱温度を180℃、第二の押出し機での加熱温度を335℃とした。第二の押出し機内での加熱により発生する塩化水素ガス等の発生ガスは、配管を通じてガス処理系に送って処理した。ガス処理系においては、塩酸、タール回収を行った。第二の押出し機からダイスを用いて押出されたプラスチックは水冷により冷却して固化させ、所定の長さに切断してペレット化した。第二の押出し機から溶融プラスチックを押出してホットカットし、ペレット化した。製造したペレットを第一の粉砕機で粗粉砕して、粉砕物をさらに第二の粉砕機で微粉砕した。第2の粉砕機として、図7(a)に示す「ウルトラローター」(株式会社ダブリュ・アイ・ア−ル製)型の粉砕機を用いた。粗粉砕したプラスチックを下部の原料入口から投入して微粉砕し、粉砕物出口から回収した。
【0079】
以上のようにして製造したプラスチック粉砕物の残存塩素濃度と粒度分布とを測定した。残存塩素濃度、平均粒子径(D50)および500μm以下収率を表1に示す。本実施例で用いた平均粒子径(D50)は、粉体を篩により粒子径毎に分級した際に、累積粒子の質量が全体の50%となる粒子径である。500μm以下収率とは、500μmの篩いを通過した粒子の質量割合である。
【0080】
【表1】

【0081】
廃プラスチック中の塩素濃度が1.4mass%(No.1)では、粉砕性が悪く、500μm以下収率は66mass%であった。一方、廃プラスチック中の塩素濃度を2.4mass%以上(No.2〜No.7)とすると、500μm以下収率は80mass%以上となり、粉砕後の平均粒子径(D50)は、大幅に減少するのが判る。また、廃プラスチック中の塩素濃度を20mass%以下にして粉砕すれば、得られる廃プラスチック粉末中の残存塩素濃度を0.9mass%以下に下げられることがNo.2〜No.6の例から判る。しかし、廃プラスチック中の塩素濃度を24.1mass%としたNo.7では、500μm以下収率が93mass%を示したものの、生成する炭素質ゲルが多くなり、第2の押し出し機の負荷が大となり、安定した製造が困難であった。また、残存塩素濃度は1.21mass%であった。
【0082】
次に、塩素含有量が異物除去後で2.4mass%である廃プラスチックの一部について、水を用いて遠心分離処理を行い高比重分として塩素含有量7.6mass%である高塩素濃度プラスチックを得た。塩素含有量が2.4mass%である廃プラスチックそのままの場合と、塩素含有量が2.4mass%である廃プラスチックと高塩素濃度プラスチックとを2対1の割合で混合して塩素含有量を4.1mass%に高めた混合廃プラスチック(hi-Cl)とについて、上記と同様に粉砕物を製造し、粒径500μm以下収率を測定した。図8に結果を示す。
【0083】
処理温度320℃の条件で得られた粉砕物に占める粒径500μm以下収率は、高塩素濃度プラスチックを添加しなかった場合は72mass%であったものが、高塩素濃度プラスチックを添加した場合(hi-Cl)は93mass%であった。第二の押出し機での加熱温度を320から370℃へと変化させた場合、得られた粉砕物に占める粒径500μm以下収率は、高塩素濃度プラスチックを添加しなかった場合は80mass%で、高塩素濃度プラスチックを添加した場合(hi-Cl)は96mass%であり、さらに粉砕性が向上することが判る。
【0084】
処理温度320℃の条件で得られた粉砕物の塩素濃度は、高塩素濃度プラスチックを添加しなかった場合は0.73mass%であったのに対し、高塩素濃度プラスチックを添加した場合であっても0.84mass%まで脱塩素されていた。第二の押出し機での加熱温度を320から370℃に変化させた場合、該粉砕物の塩素濃度は、高塩素濃度プラスチックを添加しなかった場合は0.37mass%であったのに対し、高塩素濃度プラスチックを添加した場合であっても0.39mass%とほぼ同水準まで脱塩素することができた。
【0085】
一方、比較のために、図2(a)に示した攪拌槽を用いた微粉化処理も行った。攪拌槽内で上記の廃プラスチックを180℃に加熱しながら攪拌し、溶融した廃プラスチックを別の攪拌槽(図示せず)に移送して320℃に加熱して脱塩素処理を行った。その後冷却固化して押出し機を用いた場合と同様にして粉砕物を製造した。攪拌槽方式の場合にも、遠心分離によって得た高塩素濃度の廃プラスチック(塩素含有量7.6mass%)を33mass%になるように廃プラスチックに添加したもの(hi-Cl)についても粉砕物を製造した。なお、上述の例の粉砕も、図7(a)を用いて行った。
【0086】
粉砕物の粒度分布を測定し、500μm以下収率を指標にして、押出し機を用いた場合と攪拌槽を用いた場合との比較を図9に示した。図9によれば、押出し機を用いた方が微粒の粉砕物が多く、粉砕性が向上したことが分かる。また、高塩素濃度の廃プラスチックの添加により粉砕性が飛躍的に向上したことが判る。
【0087】
次に、粉砕機の種類による粉砕性を検討した。
【0088】
高塩素濃度プラスチックを添加していない廃プラスチックについて、押出し機を用いて固化体を形成し、該固化体の粉砕を異なる種類の粉砕機を用いて試みた。粉砕機としては、上述したハンマーミル、ジェットミル(図7(c))、パルベライザー(図7(b))およびウルトラローター(図7(a))を用いた。
【0089】
各粉砕機によって得られた粉砕廃プラスチックの500μm以下収率を図11に示す。ハンマーミル、ジェットミルに比較してウルトラローター、パルベライザーを用いた場合は、500μm以下収率が80mass%以上であり、80%以上の収率が得られた。従って、回転ハンマーによる衝撃粉砕と、局所的に発生させた渦流による粉砕物の相互衝突による粉砕とを同時に行う粉砕方式で効率的な微粉砕が達成されることが判る。
【0090】
さらに、図6のフローに従って、廃プラスチックの微粉化処理を行い、高炉への吹き込み試験を行った。使用した廃プラスチックは一般家庭からの廃棄物であり、複数種類のプラスチックと異物とが混合された状態で、ポリエチレン32mass%、ポリプロピレン31mass%、ポリスチレン22mass%、PVC6mass%、その他(その他樹脂、金属、紙など)9mass%、水分:5.6mass%(外数)であった。塩素含有量は異物除去後で2.4mass%であった。
【0091】
これを1.19t/hの処理速度で解砕、粗破砕、風選・磁線、造粒し、1.00t/hの造粒物と0.13t/hの異物を得た。この造粒物を1t/hの速度で180℃の条件で溶融、335℃の条件で脱塩素し、0.90t/hの固化体と0.10t/hの塩化水素を含む分解ガスを得た。分解ガスは燃焼後、中和処理を行った。さらに、粗粉砕、微粉砕を行い、0.90t/hの1mm篩い100%通過、粒径0.5mm以下が80mass%以上の微粉砕物を回収した。得られた粉砕物の塩素濃度は0.7mass%、発熱量は8900kcal/kgであった。これを高炉吹き込み用の微粉プラスチック貯留タンクに貯留し、定量切出し装置により0.9t/hで、吹き込みタンクに供給した。
【0092】
一方、従来より使用されている造粒プラスチック(7mmφの円柱状、10mm以下破砕物の混合)を4t/hの速度で定量切出し装置で吹き込み装置に入れた。吹き込みタンクより、装置内で定量排出し、比較例として高炉に吹き込んだ。高炉は有効容積5000m3(羽口数:38本)、溶銑製造量11537t/dであり、高炉の送風条件ならび試験結果を表2に示す。原単位は溶銑1トン製造するのに要した値である。ηCOは高炉炉頂ガスのガス組成から算出される値で、CO2/(CO+CO2)を示し、高炉下部で発生した還元ガスの有効利用率を示す。
【0093】
【表2】

【0094】
また、前記条件で製造した微粉プラスチックを、貯留後、造粒プラスチックとともに、微粉プラスチックと造粒プラスチックの吹き込み速度を変更し、高炉吹込みを行った(試験例1、試験例2)。高炉の送風条件ならび試験結果を表2に併せて示す。従来使用されている造粒プラスチック吹き込み(比較例)に比較して、廃プラスチック粉を混合し、高炉に吹き込むことで造粒プラスチックの燃焼性を向上させることができ、結果として還元剤比の低減が図れた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】粉砕性向上のメカニズムを示す模式図である(工程a〜e)。
【図2】回転翼を有する攪拌槽による廃プラスチックの混合状況の説明図である。
【図3】押出し機による廃プラスチックの混合状況の説明図である。
【図4】各種プラスチックの熱質量分析を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施形態の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の説明図である。
【図7】(a)ウルトラローターの概略図、(b)パルベライザーの概略図、(c)ジェットミルの概略図である。
【図8】押出し機を用いた場合の加熱温度による粉砕性を比較したグラフである。
【図9】押出し機を用いた場合と攪拌槽を用いた場合の粉砕性を比較したグラフである。
【図10】500μm以下の粉砕物収率を、粉砕機ごとに示したグラフである。
【符号の説明】
【0096】
1 ポリプロピレン(PP)
2 ポリエチレン(PE)
3 ポリ塩化ビニル(PVC)
4 ポリスチレン(PS)
5 炭素質ゲル
6 亀裂
11 攪拌槽
12 押出し機
13 回転翼
14 低融点で相溶性の高い溶融プラスチック
15 高融点で相溶性の低い異種プラスチック
16 無機物
17 ハンマー
18 分級ローター
19 廃プラスチックの解砕装置
20 粗破砕機
21 風選および/または磁選装置
22 造粒機
23 篩い分け装置
24 第一の押出し機(溶融脱水)
25 第二の押出し機(脱塩素)
26 冷却装置
27 排ガス処理装置
28 振動篩い装置
29 粗破砕機
30 微粉砕機
31 分級装置
32 固気分離機
33 冷却機
34 振動篩い装置
35 製品ホッパ
36 微粉プラスチック貯留サイロ
37 造粒プラスチック貯留サイロ
38 吹き込み装置
39 前処理装置
40 羽口部
41〜57 移送手段
58 ブロア
59 高炉
60 スクリーン
61 粉砕物の出口
71 廃プラスチック
72 前段の押出し機
73 後段の押出し機
74 脱気配管
75 ガス処理系
76 ダイス
77 水冷槽
78 第一の粉砕機
79 第二の粉砕機
80 高炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上の塩素を含有するプラスチックおよび1種または2種以上の塩素を含有しないプラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックの増減により塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックを調製する工程、
該混合プラスチックを溶融下に攪拌し、脱塩素する工程、
該脱塩素された攪拌物を冷却して固化する工程、および
該固化物を粉砕する工程、
を有する混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項2】
廃プラスチックに塩素を含有するプラスチックを加えて塩素濃度が2〜20mass%の混合プラスチックを調製する工程;
該混合プラスチックを溶融下に攪拌し、脱塩素する工程;
該脱塩素された攪拌物を冷却して固化する工程;および
該固化物を粉砕する工程;
を有する混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項3】
脱塩素する工程において、混合プラスチック中の塩素濃度を0.9mass%以下まで脱塩素することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項4】
攪拌が、押出し機による混練である請求項1ないし請求項3に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項5】
押出し機の前段で水分を除去し、該押出し機の後段で塩化水素を除去する請求項4に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項6】
押出し機が複数の押出し機で構成され、前段の押出し機で水分を除去し、後段の押出し機で塩化水素を除去する請求項4ないし請求項5に記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の粉砕方法により得られる粒径500μm以下が80mass%以上である混合プラスチックの微粉。
【請求項8】
塩素を含有するプラスチック、塩素を含有しないプラスチックおよび混合プラスチックからなる群より選ばれる少なくとも1種のプラスチックが廃プラスチックである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の混合プラスチックの微粉の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の粉砕方法により得られる粒径500μm以下が80mass%以上である廃プラスチックの微粉。
【請求項10】
請求項9に記載の廃プラスチックの微粉を高炉に吹き込む高炉の操業方法。
【請求項11】
請求項9に記載の廃プラスチックの微粉に造粒プラスチックを事前に混合し、高炉に吹き込む高炉の操業方法。
【請求項12】
廃プラスチックに塩素含有プラスチックを混合して、塩素濃度を2〜20mass%に調整した混合廃プラスチックを加熱溶融し、次いで冷却固化して固化体を形成し、該固化体を粉砕することを特徴とする廃プラスチックの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−90335(P2007−90335A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232032(P2006−232032)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】