説明

測距センサ及びその設定方法

【課題】適切な閾値を自動で決定することのできる測距センサを提供する。
【解決手段】測距センサの設定方法は、センサヘッド部の測距媒体照射位置に対象物を配置した状態で、測距媒体を照射してセンサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、演算された距離に基づいて、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間に閾値を自動的に設定する。これにより、ユーザは手動で閾値を演算して設定することなく、実際に対象物をセットして測距媒体を照射することにより最適な閾値を自動的に演算して設定でき、かつ設定された閾値によって対象物が無い場合は測定距離が閾値を上回って出力OFFとなり、対象物が検出された場合は測定距離が閾値を下回って出力OFFとなる、センサの一般的な出力パターンと一致させることができ、極めて使い勝手の良い測距センサが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の有無や距離・変位を検出、測定可能な測距センサ及びその設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光電センサや近接スイッチなど種々のセンサが開発されている。これらのセンサ類は、光波や音波などを使用して対象物(ワーク)の有無を検出し、これに応じたON/OFF出力が可能で、FAなどの幅広い用途で用いられている。光電センサ等のセンサ類は、一般に光波や音波の進行がワークで遮断されることによりワークの有無を検出する構成を採用しており、変位や距離を検出することを目的とするものではない。このため、比較的単純なワークの有無検出は可能であるが、複数種類のワークの識別やワークの姿勢の判定といった高度な判別を行うことは困難であった。
【特許文献1】特開2003−218679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、距離の測定が可能な測距センサとしてレーザ光変位センサや静電容量型変位センサ、渦電流型変位センサ等が開発されている。このような変位測定の可能な測距センサとして、例えば測距媒体として光でなく超音波を使用する超音波センサは、図1に示すようにセンサヘッド部10内部に備えられた超音波送信器から対象物(ワーク)Wに向けて超音波を照射し、反射された超音波を超音波受信器で受信すると共に受信までの所要時間を測定し、これに基づいてセンサヘッド部10とワークWとの距離を検出する。すなわち、超音波の進行速度(音速)と所要時間とを乗算することで、センサヘッド部10の超音波の照射面からワークの反射面までの距離が演算できる。これらの測距センサはワークの有無の検出を主眼とするものでない。そこで、このような測距センサに予め閾値を設定しておき、測定された距離と閾値とを比較してON/OFF信号を出力することにより、ワークの有無検出が可能なセンサとして利用することができる。この測距センサは、閾値に基づくON/OFFのスイッチングの他、センサヘッド部とワークとの間の距離を測定して表示することもできる。さらに閾値を複数設定すれば複数種類のワークの区別を行うこともでき、より高度な判別が可能となる。
【0004】
このように、測距センサを使用して測定した距離と閾値とを比較して出力したり、あるいは図2に示すように測定した距離に演算処理を加えてワークの高さに換算する、すなわち距離を反転してワークの高さとして表示することができる。しかしながら、このような測距センサを用いてワークの有無検知を行う場合、使用態様や表示対応に応じてユーザが閾値を手動で設定する必要があり、非常に手間がかかっていた。またワークが存在しない場合には測距値が不明であるため、距離を反転して表示させる場合と反転させず測定値を表示させる場合とでは、適切な閾値が異なってしまう。このため、測距装置側で自動的に閾値を決定させるチューニング作業を行おうとしても、ユーザの使用感覚にあった適切な閾値が設定できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、使用態様に応じて適切な閾値を自動で決定することのできる測距センサ及びその設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る測距センサは、測距媒体を対象物に照射し、対象物で反射された測距媒体を検出可能なセンサヘッド部と、センサヘッド部で検出した値に基づきセンサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算可能な演算部と、予め対象物の有無を判別するための閾値および必要に応じて基準値を設定可能な設定部と、演算部で演算された測定値または測定値を設定部で設定された基準値に従って変換した変換値を、表示値として表示可能な変位表示部と、変位表示部で表示される表示値が設定部で設定された閾値とを比較し、表示値が閾値を超える場合にON、超えない場合にOFFとなる出力パターンにて出力可能な出力部とを備える。この測距センサは、演算部が、センサヘッド部の測距媒体照射位置に配置された対象物に測距媒体を照射してセンサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、かつ設定部にて設定された基準値に基づいて、閾値を自動的に演算して設定可能なオートチューニング機能を備えている。この構成により、ユーザは手動で閾値を演算して設定することなく、実際に対象物をセットして測距媒体を照射することにより最適な閾値に設定され、極めて使い勝手の良い測距センサが実現される。
【0007】
また本発明の第2の側面に係る測距センサは、測距センサが変位表示部における表示及び出力パターンの異なる複数の表示モードを備えており、オートチューニング機能が、対象物の有る場合、無い場合に各々測距媒体を照射して表示値を演算部で演算し、かつ現在選択されている表示モードを検出し、演算された表示値および検出された表示モードに基づいて、出力部の出力が対象物の有る場合にON、無い場合にOFFとなるよう、閾値の設定位置を、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間、または対象物の配置位置と背景との間のいずれかに設定する。この構成により、表示モードに関わらず対象物を有無と出力部の出力が一定で、かつセンサの通常の出力パターンに一致され、ユーザに理解しやすく使い易い測距センサを提供できる。
【0008】
さらに本発明の第3の側面に係る測距センサは、変位表示部に表示される表示値が、センサヘッド部の照射面から対象物までの距離である通常表示モードにおいて、オートチューニング機能が、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間に閾値を設定する。この構成により、対象物が無い場合は測定距離が閾値を上回って出力OFFとなり、対象物が検出された場合は測定距離が閾値を下回って出力OFFとなり、センサとしての一般的な出力パターンと一致させることができる。
【0009】
さらにまた本発明の第4の側面に係る測距センサは、変位表示部に表示される表示値が、センサヘッド部の照射面から対象物までの距離、及び対象物がない場合のセンサヘッド部から背景までの距離に基づき演算された、対象物の高さである変換表示モードにおいて、オートチューニング機能が、対象物の配置位置と背景との間に閾値を設定する。この構成により、対象物が無い場合は測定距離が閾値を上回って出力OFFとなり、対象物が検出された場合は測定距離が閾値を下回って出力OFFとなり、センサとしての一般的な出力パターンと一致させることができる。
【0010】
さらにまた本発明の第5の側面に係る測距センサは、センサヘッド部で測距媒体を受信する感度を最大にし、かつ測定可能な最大距離よりも若干低い値を閾値として設定することにより、対象物を検出する最大感度チューニング機能を備える。これにより、測距センサの測定性能を最大限利用して、最大の検出範囲であらゆる対象物を検出できる状態に容易に設定できる。
【0011】
さらにまた本発明の第6の側面に係る測距センサは、オートチューニングが、センサヘッド部の測距媒体照射位置に配置された対象物を移動させる状態で、演算部にて閾値を演算する。この構成により、実際のラインなどを稼働させた状態で閾値を設定でき、閾値設定作業を容易に行うことができる。
【0012】
さらにまた本発明の第7の側面に係る測距センサは、オートチューニングが、センサヘッド部から対象物に測距媒体を照射し続ける状態で表示値を一定時間取得し、その中央値を閾値として設定する。この構成により、大きさの異なるワークに対して適切な共通の閾値を設定できる。
【0013】
さらにまた本発明の第8の側面に係る測距センサは、オートチューニングが、変動する対象物に対してセンサヘッド部から測距媒体を照射して変化する表示値を一定時間取得し、その変動の中央位置と変位量と演算し、中央位置と対象物のサイズに基づいて第一の閾値を設定すると共に、中央位置の値を第2の閾値として設定する。この構成により、上下に変動するコンベアなどに載置されたワークであっても、コンベアの変動の中心と変位量を検出して補正し、適切な閾値を設定することで正確な検出が可能となる。
【0014】
さらにまた本発明の第9の側面に係る測距センサは、演算部が、センサヘッド部で照射された測距媒体が検出されるまでに要した時間と、測距媒体の進行速度とに基づいてセンサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算可能である。
【0015】
さらにまた本発明の第10の側面に係る測距センサは、測距媒体が超音波である。これにより、光電センサなどと比して測定対象物に対する安定性の高い検出が可能となる。
【0016】
また本発明の第11の側面に係る測距センサの設定方法は、センサヘッド部が測距媒体を対象物に照射し、対象物で反射された測距媒体を検出し、演算部がセンサヘッド部で検出した値に基づきセンサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、変位表示部に表示可能であり、かつ測定された距離と予め設定された閾値とを比較して、表示値が閾値を超える場合にON、超えない場合にOFFとなる出力パターンにて出力可能な測距センサの設定方法である。この方法は、センサヘッド部の測距媒体照射位置に対象物を配置した状態で、測距媒体を照射してセンサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、演算された距離に基づいて、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間に閾値を自動的に設定する。これにより、ユーザは手動で閾値を演算して設定することなく、実際に対象物をセットして測距媒体を照射することにより最適な閾値を自動的に演算して設定でき、かつ設定された閾値によって対象物が無い場合は測定距離が閾値を上回って出力OFFとなり、対象物が検出された場合は測定距離が閾値を下回って出力OFFとなる、センサの一般的な出力パターンと一致させることができ、極めて使い勝手の良い測距センサが実現される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の測距センサ及びその設定方法によれば、自動で適切な閾値を設定することができ、面倒な測定や設定作業を大幅に省力化して使い易くできる。特に設定された閾値は、表示値が閾値を超える場合に出力ONとなって対象物が検出され、閾値を超えない場合は出力OFFとなって対象物が検出されないという一般的なセンサの動作と合致させることができるので、ユーザはその動作を容易に理解でき、設計を行い易いという利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための測距センサ及びその設定方法を例示するものであって、本発明は測距センサ及びその設定方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
本発明の実施例において使用される測距センサとこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232xやRS−422、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において測距センサとは、測距センサのみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた測距センサシステムも含む意味で使用する。
[第1の実施の形態]
【0020】
以下、図3から図4を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る測距センサとして、測距手段に反射型の超音波センサを使用した例について説明する。これらの図において、図3は超音波センサ100の外観を示す斜視図を、図4はセンサヘッド部10とアンプ部20を構成するブロック図を、それぞれ示している。
(センサヘッド部10)
【0021】
超音波センサ100は、図4に示すように超音波をワークWに照射するセンサヘッド部10と、センサヘッド部10を制御するアンプ部20とを備える。センサヘッド部10は、測距媒体として超音波をワークWに照射するための送信部及びワークWで反射された超音波を受信するための受信部として、送受信素子13を備えている。図4に示す超音波センサ100では、送受信素子13として一の超音波振動子を送信と受信に兼用している。この例では、一の振動子を送信と受信を時分割して交互に使用する。この構成によってセンサヘッド部を小型化し、省スペース化を図ることができる。ただ、送信素子として送波用超音波振動子、受信素子として受波用超音波振動子を個別に用意してもよい。送受信素子は、これを駆動して超音波を発生、送信するための送信回路14、およびワークWで反射され送受信素子で受信された超音波の信号を電気信号に変換する受信回路15とを接続している。
(アンプ部20)
【0022】
さらにアンプ部20は、ユーザがあるタイミングにてゼロとしたいゼロシフト信号やバンク切替信号を入力し、演算部24に出力する入力部22、送受信素子13で超音波を送信するタイミングを送信回路14に出力し、送信回路14からの送信タイミングにて送受信素子13で送信した超音波を同じく送受信素子13で受信し、受信回路15を介して受信信号として入力すると共に、送信開始したタイミングから送受信素子13で受信したタイミングまでの所要時間を計時し、この時間と超音波の速度とを積算して距離を演算する演算部24、ユーザが各種の設定を行うための設定部26、設定部26の設定内容の確認や測定された距離を表示するための表示部30、およびON/OFF信号などの出力信号を外部に出力するための出力部28を備える。演算部24は、入力部22から受けたタイミングをカウンタなどによりカウントして時間を計測する。また出力部28は、表示値と設定部26で設定された閾値とを比較してON/OFF信号を出力する。例えばON時に一定電圧を出力し、OFF時に出力を0とするデジタル出力とする。以下の例では、出力部28は出力端子として出力1,出力2の独立した2系統を備えると共に、後述するように用途に応じて機能を選択可能な入出力端子を備えている。
(表示部30)
【0023】
また図3の斜視図に示すように、センサヘッド部10とアンプ部20とはケーブル部16により電気的に接続されている。アンプ部20は、正面に表示部30と設定部26を設けている。図3の例では、表示部30は第1表示領域32と第2表示領域34を備えており、各々7セグメント表示が採用される。表示領域を複数設けることで、第1表示領域32に測定値、第2表示領域34に閾値を各々表示させるなど一画面で各値を確認でき、一目で現在の状態をユーザに表示できる判りやすいインターフェースを実現できる。第1表示領域32の左側には出力表示部36を備える。出力表示部36は出力部28の出力状態を表示する。図3の例では、出力1(OUT1),出力2(OUT2)それぞれの出力表示部36として、LEDインジケータを備える。また第2表示領域34の左側にはチャンネルインジケータ38、右側にはサブインジケータ39を備える。チャンネルインジケータ38は、例えば第2表示領域34に2つの閾値に相当するチャンネル1,2のいずれが表示されているかを示す。またサブインジケータ39は警告表示灯として機能する。
(設定部26)
【0024】
設定部26は、閾値や基準値あるいは基準位置、正負方向など各種の設定をユーザが行うための入力部材である。図3に示す設定部は入力部材として、表示値の表示を行う表示モードと設定を行う設定モードとを切替可能なモード切替部27と、設定値を指定する増減部42と、および指定を決定するための決定部44を備えている。ここではモード切替部27としてモードボタン、増減部42として上下ボタン、決定部44としてセットボタンを備えている。入力部材にはボタンやスイッチ、ダイヤル、キーボード、タッチパネル、マウス、スライドパッド等が利用できる。なおこれらの表示部や設定部のレイアウトやデザインは一例であり、適宜変更できることは言うまでもない。例えば表示部と設定部をタッチパネル式で一体としたり、設定部をリモコンやコンソール等別体に構成してもよい。また表示部は液晶表示とすることもできる。また、上記の例ではセンサヘッド部とアンプ部を個別に構成したが、これらを一体とした構造を採用することもできることはいうまでもない。さらに図4の例ではモード切替部27は設定部26に組み込まれているが、設定部と別個の部材としてモード切替部を設けることもできることはいうまでもない。
【0025】
なお本明細書において設定部での設定とは、ユーザが自分で所望の設定値を入力する他、予め用意された推奨値を自動的に設定、あるいは他の設定項目などから演算して自動的に設定するような、測距センサ側で設定する場合も含む意味で使用する。
(距離を測定する手順)
【0026】
以下超音波センサが距離を測定する手順を、図5の超音波センサに基づいて説明する。送信素子は超音波振動子を使用している。超音波振動子は、交流電圧を印加するとその周波数で振動する特性を有する。この振動で空気を震わせて超音波を発生する。一方で超音波振動子は、振動が加わると電圧が発生するという逆の特性を備えている。
【0027】
超音波センサは送信回路14で発生させた交流電圧を超音波振動子に印加する。超音波振動子はセンサヘッド部10からワークWに向かって超音波を照射する。超音波は短時間照射した後、送信を停止する。超音波の送信を停止している間に、送信した超音波が反射されて到達するのを待つ待機状態となる。一方、超音波を送信したタイミングから受信するまでのタイミングを計時する。超音波の反射波によって超音波振動子が振動すると、電圧が発生し、受信回路15にて検出される。演算部24で超音波の送信から受信までの時間を計測し、超音波の進行速度すなわち音速を乗算してセンサヘッド部10からワークWまでの距離を演算する。演算された距離の測定値は、表示部30にて表示される。
(モード切替部27)
【0028】
設定部26は、表示部30にて表示される表示態様を設定する。ここでは、表示態様の基準となる基準値を設定すると共に、基準値に対する測定された距離の正負を設定できる。具体的には、図5に示すように測定された距離をそのまま表示部30に表示する通常表示モード、および図6に示すように測定された距離に基づいて基準位置からの距離を測定する変換表示モードとを切り替え可能である。表示モードの切り替えは、後述するようにモード切替部27で表示モードから設定モードに移行して行う。
(通常表示モード)
【0029】
通常表示モードでは、センサヘッド部10とワークWとの距離が表示値として表示部30に表示される。通常表示モードでは、基準位置としてセンサヘッド部10の照射位置が0で、正負方向としてセンサヘッド部10から超音波を照射する方向が正となるように設定されている。これにより、センサヘッド部10とワークWとの間の距離を測定し、測定した距離(測定値)を表示部30に表示値としてそのまま表示できる。
【0030】
ただ、このままの設定では図6に示すように背景(壁面)からワークWまでの高さを測定したい場合、予めセンサヘッド部10と床面との距離Aを測定しておき、ワークWとセンサヘッド部10の距離Xを測定した後、ワークWの高さYをユーザが減算(A−X)=Yにより求める必要がある。このような場合にワークWの高さを測距センサ側で演算して直接表示部30に表示できれば便利である。同様に閾値の設定についても、閾値を上回る場合にONするのみならず、下回る場合にONできるような設定にできれば便利である。このため、このような距離の変換を自動的に行って表示値として表示可能な変換表示モードが用意されている。
(変換表示モード)
【0031】
変換表示モードでは、測定値に所定の演算を行って所望の表示値に変換する。具体的には、基準位置すなわち測定における原点を設定すると共に、測距の方向すなわち表示部30に表示される表示値の正負を設定するという2つの設定を行っている。以下、設定方法を説明する。
(基準位置の設定)
【0032】
測距センサは、任意の位置を基準位置として設定できる。基準位置は、通常表示モードでは図5に示すようにセンサヘッド部10の照射位置が0となるように設定されている。この状態から、例えば図6に示すように床面が0となるように基準位置を変更できる。図6の例では、センサヘッド部10から床面までの距離Aに相当する値を基準値として設定し、基準値の分だけ基準位置をシフトさせている。これにより、ワークWの高さを直接表示部30に表示できるようになる。設定変更は設定部26から行う。具体的な変更の手順については後述する。なお上記の例では、基準値の設定は、変位量を入力して行っている。ただ、変位量に変わって、あるいはこれに加えて基準位置を指定することもできる。基準位置は位置情報であり、数値や座標などで指定する。
(正負方向の設定)
【0033】
基準位置を変更するのみでは、ワークWの高さYが負の値として表示されることとなる。そこで正負を逆転させるよう正負方向を変更することもできる。正負方向とは、距離を測定する方向を示すもので、初期設定では図5に示すようにセンサヘッド部10から超音波が照射される方向に正、逆向きに負となるよう設定されている。この状態から逆にセンサヘッド部10から超音波が照射される方向が負となるように正負方向を変更できる。図6は、正負方向を図5と逆向きに設定した状態を示す。図6の例では、基準位置と正負方向を変更した結果、床面からセンサヘッド部10に向かう方向に距離が測定される。すなわち、基準位置として設定された床面とセンサヘッド部10の距離Aから、測定値であるワークWとセンサヘッド部10の距離Xを減算した値Y、すなわちワークWの高さが表示値として表示部30に表示される。
(測定範囲外)
【0034】
また、基準位置をシフトさせることにより、測距センサが測定範囲外の状態に置かれることがあっても距離測定を可能にできる。例えば、図7に示すようにワークがないとき、測距センサが距離測定の範囲外となる位置に配置された例を考える。図7(a)の場合はワークがないためセンサヘッド部10から照射される超音波が反射されず、無限遠となって距離を測定できない。この場合であっても、ワークWの端縁に相当する位置を基準位置として設定しておくことにより、表示値「0」として表示できる。すなわち、図7の例ではセンサヘッド部10からワークWの端縁間での距離をAとすれば、測定値Aで表示部30における表示値を0とすることができる。また図7(b)に示すようにワークWが存在すると、ワークWの高さY1を測定、表示できる。図7(b)の例では基準位置からセンサヘッド部10に近い側にワークWが存在する。この状態でワークWの高さY1を正の値で表示するには、正負方向を逆向き、すなわち反射された超音波がセンサヘッド部10に向かう方向を正となるように設定する。これにより、図7(a)のように本来なら測定不能な状態でも表示値を表示でき、かつワークWの存在する場合にはワークWの高さY1を適切に表示することができる。
【0035】
また一方で、図7(c)に示すように基準位置に対してセンサヘッド部10から遠ざかる位置をワークWが通過する場合は、正負方向をセンサヘッド部10から超音波が照射される方向が正となるように設定することで、ワークWの高さY2を測定、表示できる。なお、いずれの場合も表示部30に表示される表示値の正負によって、ワークWが基準位置の左右いずれを通過しているかを判別できる。
【0036】
上記の例では、測距センサの測定限界以内に基準値を設定しているが、図8のように測距センサの測定限界外の位置に基準値を設定することもできる。図8の例でも図7と同様に、ワークWがない状態で超音波の反射を検出ができない場合は、基準値が測定されたものとして表示値を演算する。図8(a)の例では、測定値(基準値とする)から基準値を減算した値として0が表示値となる。また図8(b)のようにワークWが配置された状態では、基準値から測定値Xを減算した値として、ワークWの高さに相当するYが表示値として変位表示部30に表示される。
(出力の反転)
【0037】
また設定部26で、出力のON/OFFを反転させる設定を行うこともできる。例えば、閾値を超える場合にONする出力パターンから、閾値を下回る場合にONする出力パターン(反転出力)に変更することもできる。これによって使用条件に応じた細かな設定変更を可能とする。出力パターンの変更は、設定部26の設定に従って出力パターン変更部25が行う。
(出力パターンの自動切り替え)
【0038】
ところで一般のセンサ出力では、予め閾値を、ワークのある場合の測定値とワークのない場合の測定値との中間領域に設定すると共に、測定値が閾値を上回る場合にON信号が出力されるように制御を行う。ところが、図1の配置で閾値を設定すると、ワークWが検出されると測定値が閾値を下回ることとなり出力OFF、ワークWがない場合は測定値が閾値を上回り出力ONとなり、ワークの有無と出力ON/OFFのパターンが逆転してしまう。そこで、本実施の形態では、通常表示モードの際は図5に示すように閾値を下回る場合に出力ON、上回る場合に出力OFFとなるように、出力パターン変更部25で出力部28の回路論理を自動的に変更する。
(出力パターン変更部25)
【0039】
出力パターン変更部25は設定部26で設定された表示及び出力パターンの異なる検出モードに応じて、回路論理を変更し、いずれの検出モードであってもワークのあるときに出力ON、ないときに出力OFFとなる出力パターンとなるように調整する。
【0040】
図4の例では、出力パターン変更部25は演算部24に組み込まれており、設定部26で検出モードが通常表示モードに設定されたことを演算部24の出力パターン変更部25で検出して、出力部28の回路論理を変更する。ただ、この構成は例示であって出力パターン変更部を演算部と別個の部材として設けることもできることはいうまでもない。また、検出モードに応じて出力パターンを自動的に変更する他、ユーザが設定部26から手動で出力パターンを変更することも可能である。
【0041】
出力パターン変更部25は、出力部28の回路論理を変更し、表示値が閾値よりも小さい場合に出力ON、大きい場合に出力OFFとなるようにする。このような回路論理としては、例えば出力部28のリレーがノーマル位置で閉位置すなわちONとなるノーマルクローズ(NC)あるいはブレークがある。
【0042】
一方、変換表示モード時の動作では、図6に示すように、閾値がワークWの有無の際の測定値の中間領域に設定される。この場合、表示値がセンサヘッド部10とワークWとの距離からワークWの高さに変換されるため、ワークWのある場合は表示値が閾値を上回り、ワークWのない場合は閾値を下回る。この動作は通常のセンサの出力パターンと一致するため、出力パターンを変更する必要はない。よって出力パターン変更部25はモード切替部27で変換表示モードが選択されたことを検出すると、回路論理を通常の出力パターン、すなわち閾値を超える場合に出力ON、下回る場合に出力OFFとなるように設定する。この回路論理としては、例えば出力部28のリレーがノーマル位置で開位置すなわちOFFとなり、トリガがあるとONになるノーマルオープン(NO)あるいはメークがある。
(閾値の設定変更)
【0043】
上記の例では、出力パターン変更部25が通常表示モードと変換表示モードで回路論理を変更することにより、ワークが検出される場合に出力ON、ワークが検出されない場合に出力OFFとなる出力パターンを実現している。ただ、出力パターンを変更するのでなく、閾値の設定位置を変えることによって、閾値を超える場合にON、超えない場合にOFFとなる出力パターンを維持しつつ、上記と同様にワークのある場合にON、無い場合にOFFとなる出力を実現することもできる。すなわち、図5および図6の例では、通常表示モード、変換表示モードのいずれの場合も、閾値をワークWと壁面の間に設定しているため、検出モードによってワークWの有無と閾値の大小の関係が逆転していた。これに対し、図9に示すように通常表示モードの際に閾値を設定する位置をワークとセンサヘッド部との間に変更することで、ワークがある場合には測定値が閾値よりも大きくできる。すなわち、閾値よりも測定値が大きい場合に出力ONとなって、閾値を超える場合にワークが検出されるというセンサの一般的な出力パターンと合致できる。またこの設定であれば、ワークがない場合には測定値が閾値よりも小さくなるため出力もOFFとなる。一方、変換表示モードにおいては図10に示すように、ワークと背景の間に閾値を設定する、すなわちワークのある場合と無い場合の中間に閾値を設定することで、ワークのない場合は表示値(ワーク高さ)は閾値以下となり出力OFF、ワークのある場合は表示値は閾値以上となって出力ONの出力パターンを維持できる。この方法であれば出力パターン変更部で回路論理を変更することなくセンサの出力パターンを通常表示モード、変換表示モードに関わらず通常通りに維持できる。
【0044】
このように、閾値の位置、すなわち閾値の値を変更することで、出力部の出力パターンを変更することなく、ワークの有無と出力のON/OFFを合致させることができる。閾値の設定は、ユーザが設定部26から手動で数値入力により行う他、自動で設定することも可能である。閾値等の設定を自動で行う機能をオートチューニングと呼ぶ。オートチューニングにより、演算部24はワークの位置から閾値を自動的に演算して設定する。例えば図9の例では、ワークの存在する場合の測定距離(図9の例では500mm)と、ワークのない場合の測定距離(図9の例では0mm)の中間(250mm)を閾値として演算部24が自動的に設定する。
(オートチューニング)
【0045】
オートチューニングは、センサヘッド部の感度を自動的に調整あるいは閾値を設定する機能であり、通常は測距センサの段取り替えなど初期設定時に行われる。本実施の形態では、オートチューニングとして2点チューニング、感度最大チューニング、フルオートチューニング、1点ゾーンチューニング、コンベアチューニングの5つを選択して実行できる。各種チューニングの選択及び実行は、設定部26を操作して行う。以下、各チューニングについて説明する。
(2点チューニング)
【0046】
2点チューニングは、ワークがある状態とワークがない状態を記憶させるものである。測距センサは現在の表示モードが通常表示モードか変換表示モードに応じて、ワークがある状態の距離情報から、最適な閾値を求める。通常表示モード時は、ワークがない状態の距離を検出範囲最大距離とみなし、ワークがある状態の距離と検出範囲最大距離との中間に閾値を設ける。以下、通常表示モード時における2点チューニングの手順を図11に基づいて説明する。まず設定部26の操作や外部入力により2点チューニングを開始し、一のワークを測距センサの超音波照射位置へ置き、セットボタンを1回押す。すると図11の右側に示すように、2点チューニング設定中であることを示す「SEt」が第2表示領域34に表示されると共に、第1表示領域32に測定値(ワークまでの距離)が表示される。次にワークのない状態でセットボタンを1回押すと、閾値として設定された値が表示される。
【0047】
一方変換表示モード時は、ワークがない状態の距離を0とみなし、ワークがある状態の距離(表示値)と0との中間に閾値を設ける。手順は上述した図11と同じで、2点チューニングにより図10に示すように0とワーク高さ500mmとの中間である250mmに設定される。このようにして、通常表示モード、変換表示モードのいずれにおいても、ユーザはワークを実際に測距センサに配置するのみで閾値を自動で設定できるので、計算や数値入力などの手間をなくし極めて簡単に使用できる。この2点チューニングは、後述する独立検出モードにおいて利用できる。
(最大感度チューニング)
【0048】
最大感度チューニングは、チューニング中に検出したONしない最小の設定値に設定することにより、すべてのワークを検出するためのチューニングである。例えば、背景状態で最大感度チューニングを行うと、その背景を検出しない最小の値、つまり最大感度に設定される。最大感度チューニングを行うには、ワークのない状態でセットボタンを3秒以上押し、第2表示領域34に「SEt」が点滅表示していることを確認して、セットボタンから手を離す。これにより、測距センサで検出可能な距離の最大値からやや小さい値が、演算部24により閾値として設定される。通常表示モードで最大感度チューニングを行う例を図12に示す。この例では、センサヘッド部で検出可能な範囲の最大である1000mmに対して、900mmが閾値として設定される。一方、変換表示モードでは0からわずかに大きい値を閾値とする。図13に示す変換表示モードにおける最大感度チューニングの例では、100mmが閾値として設定される。このように閾値は、基準となる値に対して数%〜十数%の値に設定される。この最大感度チューニングも、後述する独立検出モードにおいて利用できる。
(フルオートチューニング)
【0049】
フルオートチューニングは、ワークをラインに流すなど実際にワークを動かして閾値を自動設定する。フルオートチューニングの例を図14に示す。この図に示すように、セットボタンを押した状態でワークを流し、第2表示領域34に「SEt」が点滅表示している、すなわち閾値が取得されたことを確認して、セットボタンから手を離す。これにより、通常表示モード、変換表示モードに応じて最適な閾値が設定される。このフルオートチューニングは独立検出モードにおいて利用できる。
(1点ゾーンチューニング)
【0050】
1点ゾーンチューニングは、後述する図18に示す高さ判別モードにおいて利用でき、検出範囲内にコンベア等の背景がある場合に適切な閾値を設定する。1点ゾーンチューニングを行うには、ワークを測距センサの超音波照射位置に配置し、セットボタンを1回押す。つまり、セットボタンを押している間に検出するワークとの距離を設定値として設定する。これに偏差(H−L)を設定することで、チューニングに使用したワークのみを検出できるようになる。
(コンベアチューニング)
【0051】
コンベアチューニングは、背景変動検知モードにおいて利用でき、コンベアなどの背景の距離が変化する場合に利用できる。図15にコンベアチューニングを行う例を示す。このように、まずワークのない状態でコンベアを稼動し、セットボタンを1回押す。そしてコンベアをしばらく稼動した後、セットボタンを1回押すと、コンベアの上下変動量を検出し、この変位量を考慮した上で基準位置を判定し、適切な閾値の設定が可能となる。
(検出モード)
【0052】
本実施の形態に係る測距センサは、表示及び出力パターンの異なる複数の検出モードとして、以下の5つを備えている。
(1)測定値を予め設定された基準値を尺度とする値で表示し、この表示値と予め設定された閾値との大小により出力のON/OFFが可能な独立検出モード
(2)測定値を予め設定された基準値を尺度とする値で表示し、この表示値が予め設定された閾値の近傍にあるか否かで出力のON/OFFが可能な高さ判別モード
(3)複数の出力を備え、測定値を予め設定された基準値を尺度とする値で表示し、この表示値が予め設定された一の閾値を上回る場合に一の出力のON/OFFが可能であり、かつ他の出力は予め設定された他の閾値を下回る場合に出力のON/OFFが可能な背景変動検知モード
(4)予め一の領域を指定すると共に、該領域を含む他の予備領域を指定して、表示値がどの領域に含まれるかに応じて出力のON/OFFが可能な液面ウィンドウモード
(5)2以上の出力を備え、かつ予め2つの閾値を設定し、一方の閾値で一方の出力をON/OFFさせると共に他方の出力を逆の出力パターンとし、他方の閾値で他方の出力をON/OFFさせると共に一方の出力を逆の出力パターンとするゾーンコントロールモード
【0053】
後述する設定モードにおいていずれかの検出モードを選択し、さらに各検出モードごとに詳細を設定する。上記検出モードの内、独立検出モードと高さ判別モードは汎用的な検出モードであり、背景変動検知モード、液面ウィンドウモード、ゾーンコントロールモードは、コンベア搬送ワーク検出や液面管理など特定の用途に特化した検出モードである。以下、各検出モードについて図16〜図25に基づいて説明する。以下の例では、2つの出力に対して2以上の閾値を設定した場合を基本として説明している。
(独立検出モード)
【0054】
独立検出モードは、測定された距離に基づき所定の演算を行って変換して表示する検出モードであり、ワークの高さ検知等に適している。この検出モードは、上述した通常表示モードと変換表示モードに切替可能である。通常表示モードでは図1に示すように演算部24でセンサヘッド部10とワークWとの距離を測定した測定値を表示値として変位表示部に表示させる。また変換表示モードは、例えば図17に示すようにコンベアC上を搬送されるワークWの有無を検知する際には、検出の判定基準は主にワークWの高さとなる。この場合は、コンベアC上にワークWがない状態を0と表示させ、ワークWがある状態をコンベアC上のワークWの高さで表示させると判りやすい。これを実現するには、測距の基準位置をセンサヘッド部10とコンベアCの距離とし、この点を0としてセンサヘッド部10に近づく側が正となるように測距の正負方向を設定すれば、表示部に表示される表示値をワーク高さとできる。さらに閾値を、検出したいワークWの高さより若干低い値に設定すれば、ワークの有無を検知できる。
【0055】
独立検出モードにおける出力部28の出力パターンを図16に示す。独立検出モードでは、表示値と閾値を比較して閾値を超える場合にON出力とする。図16の例では、2つの閾値P1、P2を設定し、2つの出力部28として出力1、出力2を使用する場合、出力1は閾値P1を超える場合にONし、出力は閾値P2を超える場合にONする。このように各出力は互いに影響されず、各々独立したON/OFF動作を行う。
【0056】
またこの例ではヒステリシス(Hys)が設定されており、出力1は閾値P1を下回る場合に直ちにOFFとならず、閾値P1に設定されたヒステリシス分低下したとき出力をOFFとする。同様に出力2も、閾値P2に対して設定されたヒステリシス分だけ閾値2を下回る場合に出力OFFとなる。
【0057】
このように独立検出モードでは、任意の閾値を2つ独立して設定・出力できる。この例では、出力1は表示値が閾値P1を越えるとONし、表示値がP1について設定されたヒステリシス量だけ下回るとOFFする。一方出力2(白線)は表示値が閾値P2を越えるとONし、P2について設定されたヒステリシス量だけ下回るとOFFする。
【0058】
図16の例では2つの出力に各々閾値を設定する場合を説明したが、測距センサに接続可能な出力数に応じて出力は1のみ使用することも、あるいは3以上使用することも可能であることはいうまでもない。さらに、出力パターンをON/OFF反転させて使用することも可能である。
(高さ判別モード)
【0059】
一方、高さ判別モードは表示値が閾値の近傍の値であるか否かを判別する。高さ判別モードは検出範囲内に背景のある検出に適したモードである。すなわち、背景を基準(0)として、ワークの高さを表示値として表示できる。このモードでは一定の高さのワークだけを検出し、高すぎても低すぎても検出しないので、図18に示すようにワークWの高さ判別や配置向き判定に好適に利用できる。この図のように判別したい複数のワーク高さに相当する閾値を設定しておけば、コンベアCや机といった背景上に存在するワークWの高さを表示値として直読でき、かつ数値すなわち高さによって出力ONするため、閾値に対応する高さのワークWを検出できる。このモードでは、閾値を中心に偏差範囲内にある場合にONするような、ウインドウコンパレータ出力動作を行う。偏差はヒステリシスとして設定できる。
【0060】
高さ判別モードにおける閾値と出力パターンの一例を図19に示す。この図に示すように、出力1、出力2にそれぞれ閾値P1、P2が設定されている場合、閾値P1を中心とするヒステリシスを設定し、この範囲内にあるとき各出力がONとなる。このように高さ判別モードにおいても任意の閾値を2つ独立して設定・出力できる。図19に示す出力1は、表示値が閾値P1から、あらかじめ設定したヒステリシス以上ずれるとOFFする。また表示値がP1から、あらかじめ設定したヒステリシスの範囲内に入ると再びONする。一方出力2は表示値が閾値P2から、あらかじめ設定したヒステリシス以上ずれるとOFFする。また表示値がP2から、あらかじめ設定したヒステリシスの範囲内に入ると再びONする。
【0061】
高さ判別モードと独立検出モードとの違いは、独立検出モードは基本的に表示値が閾値を超えるか超えないかでON/OFFを切り替えるのに対し、高さ判別モードは表示値が閾値の近傍にあるかどうかでON/OFFが決定される。図16および図19から明らかなように、独立検出モードではヒステリシスが出力OFFのため閾値の下側にのみ設定されるのに対し、高さ判別モードでは閾値の上下両側に閾値が設定される。
(高さ判別モードのチューニング)
【0062】
高さ判別モードのチューニングは上述の通り1点チューニングとし、セットボタンを押している間にサンプリングしたデータの中央値を、チューニングされた閾値として設定する。また高さ判別モード選択時は、自動的に検出基準設定ONとして動作する。
(背景変動検知モード)
【0063】
背景変動検知モードは、対象物の位置が変動するような場合に対応可能な検出モードである。例えば図20に示すようにベルトコンベア等で搬送されるワークWは、ベルトコンベアのたわみによって上下に振れる。このような場合に、予め上下など、測定方向に振れる変動量を記憶しておき、この変動量でONしない設定値を自動設定する。ここでは、コンベアCを基準(0)として、ワークWの高さを表示する。
【0064】
背景変動検知モードの出力パターンを図21に基づいて説明する。背景変動検知モードでは、コンベアCは検出せずに、コンベアCより高いワークWが来た場合に出力1がONするよう、閾値P1を設定する。これにより出力1はワーク高さに対する比較出力として利用できる。一方出力2はコンベアCの状態に関する予知保全出力として、測距センサとコンベアとの位置がずれたりコンベアが切れるといった異常の検出に利用できる。例えば閾値P2を、−P1の値に設定することで、閾値P1が検出基準位置からの検出設定値、閾値P2が保全用出力設定値となる。これにより図21に示すように、出力1は表示値が閾値P1を越えるとONし、表示値がP1に対して設定したヒステリシス量だけ下回るとOFFする。一方出力2は、表示値が閾値P2を越えるとONし、P2に対して設定したヒステリシス量だけ下回るとOFFする。
(背景変動検知モードのチューニング)
【0065】
背景変動検知モードのチューニングは、上述の通りコンベアチューニングで行うことにより、ユーザは自動的にコンベアの変動量を補正し、正確な検出を実現できる。コンベアチューニングは、セットボタンを押している間の表示値データを演算部24でサンプリングし、その振れ幅と距離中央値を取得する。そして図20に示すように、コンベアの上下振れ幅に、ワーク検出のためのマージンを加算した値を閾値1として設定する。一方、コンベアの振れ幅の中央値を閾値2に設定する。これによりワークが流れていないコンベア位置を0とするような検出基準設定が行われ、そのコンベアC上を流れるワークを安定に検出できる閾値が決定される。このようにしてコンベアチューニングを行うと、コンベアCは検出せずに、コンベアCより高いワークWが来た場合に出力1がONするよう、閾値P1が自動的に設定される。図20の例では、閾値P2は、−P1の値に自動的に設定される。
【0066】
なお背景変動検知モード選択時は、自動的に検出基準設定ONとして動作する。またこのモード選択時は、外部シフト/バンク切換機能は選択できない。また出力2は反転出力となるように、ノーマルクローズに自動的に切り替えられる。
(液面ウィンドウモード)
【0067】
液面ウィンドウモードは、領域を指定すると共に、領域外の予備領域を指定して、表示値がどの領域にあるかで出力を変更可能としている。この検出モードはタンク内の液面レベル検出等のレベル検知に適したモードであり、例えば図22に示すような液面管理において、タンクの底面を基準(0)として、液面の高さを表示値として設定する。この場合上下限の2つの閾値に加えて、上下限の手前の予知信号用の閾値を2つ設定でき、合計4つの閾値に応じて2つの出力をON/OFFさせることができる。ここでは上下限の閾値としてP2、P3を設定し、P2〜P3の範囲に液面を維持するよう制御する場合を考える。この領域の外側に予備領域P1、P4を設定することで、制御範囲外となったとき、どの予備領域にあるか、さらに予備領域を超えた範囲外となっているかを判定でき、より細かな制御が可能となる。図22の例では、P2として80、P3として60に設定し、予備領域P1を100、P4を40と設定し、これらの値によって各出力OUT1、OUT2は図22左のように出力され、その組み合わせによって領域A、B,C,D,Aを区別できる。アンプ部は図3に示すように出力表示部をOUT1、OUT2の2つを備えており、この2つの出力灯のON/OFFの組み合わせによって図22左側の表に示すように4つの状態を区別できる。
【0068】
図23に、液面ウィンドウモードにおける出力1,2の出力パターンを説明する。この図において閾値P1がHi−Hi、閾値P2がHi、閾値P3がLo、閾値P4がLo−Loの閾値となる。このように液面ウィンドウモードでは2出力でHi−Go−Lo出力を実現する。さらにヒステリシス設定は、Hi−Hi及びHiに対しては下側、Lo及びLo−Loに対しては上側に付加する。ここでは出力1は、表示値が増加するときは、閾値P4から設定したヒステリシス量だけ上回るとONする。また閾値P1を越えるとOFFする。表示値が減少するときは、閾値P1から設定したヒステリシス量だけ下回るとONする。また、閾値P4より下がるとOFFする。一方、出力2は表示値が増加するときは、閾値P2から設定したヒステリシス量だけ上回るとONする。また、閾値P3を越えるとOFFする。表示値が減少するときは、閾値P3から設定したヒステリシス量だけ下回るとONし、また閾値P2より下がるとOFFする。なお液面ウィンドウモード選択時は、自動的に検出基準設定をONとして動作する。また入出力端子は自動的にアナログ出力となる。
(ゾーンコントロールモード)
【0069】
ゾーンコントロールモードは、閾値を2つ設定して領域を指定すると共に、各閾値における出力を反転させた検出モードである。この検出モードは文字通り液面管理等に適したモードであり、特に1台の測距センサでタンク内の液面レベルを検出し、上下限範囲内に液面を維持するようポンプ制御を行うのに好適に利用できる。例えば図24に示すようにタンク内に蓄えられた液面の水位を測距センサで測定して、給液ポンプまたは排液バルブのいずれかを動作して水位がP1〜P2の範囲で維持されるよう制御する例を考える。ここでタンク底面を基準(0)として、液面の高さを表示値とすることにより、液面の水位を変位表示部に直接表示できる。また範囲を区画する上下限の2つの閾値P1、P2を設定する。
【0070】
ゾーンコントロールモードにおける出力1,2の出力パターンを図25に示す。この図に示すように、出力1は表示値が上限閾値P1を超えるとOFFする。表示値が下限閾値P2を下回るとONする。一方、出力2は逆に表示値が上限閾値P1を超えるとONし、下限閾値P2を下回るとOFFする。このように、検出された液面が下限閾値P2を下回ったときに出力1がONし、上限閾値P1を上回った時に出力1がOFFするという変則的なヒステリシスモードとして動作する。これにより出力1を給液ポンプの動作とし、あるいは出力2を排液バルブの動作とすることで液面管理が実現される。特に出力2を出力1の反転出力とすることで、タンクへの供給側(出力1)とタンクからの排出側(出力2)のいずれにも接続でき、いずれか一を接続して液面管理を実現できる。これにより水位がP1を超えると排液バルブを開弁して水位を下げるよう制御し、あるいは水位がP2を下回ると給液ポンプを稼働して水位を上げるように制御できる。
【0071】
なお、上述したゾーンコントロールモードはその名称に関わらず、様々な用途で利用できる。例えば、図26に示すようなテンションコントロールにおいても適用できる。図26ではモータ駆動される左右のローラで支持されたベルトのテンションを、ベルトの下面から測距センサで所定の範囲内に制御している。この例ではモータの回転動作は左右で逆となるため、上記ゾーンコントロールモードの出力1、2をそれぞれモータの動作とすることで、左右から均一なテンションコントロールが実現できる。このように上述の検出モードにおける名称は限定的なものでなく、各検出モードはその名称に関わらず各々の出力パターンを適用可能な用途に適宜利用できることはいうまでもない。なおゾーンコントロールモードはバンク入力に対応し、また自動的に検出基準設定ONとして動作する。また、この例では閾値を2つ設定しているが、3以上設定することもできることはいうまでもない。
(設定方法の詳細)
【0072】
上記の各検出モードの選択および設定は、図3に示すアンプ部に設けられた設定部26および変位表示部を用いて行う。この変位表示部は、選択された検出モードで運用中に表示値を表示するための表示モードと、各検出モードの設定を行うための設定モードを備えており、これらを切り替えて表示する。以下、表示モード及び設定モードの詳細について説明する。
(表示モード)
【0073】
図27に、表示モードにおける状態遷移図を示す。表示モードにおいては、後述する設定モードで設定された表示値が表示される。図27の例では、(a)に示すように変位表示部の第1表示領域32に表示値を表示し、第2表示領域34に閾値を表示する。閾値は2つ以上設定することも可能である。この場合に閾値の表示を切り替えるにはモードボタンと上下スイッチのいずれかを押下すると(b)のように他の閾値が第2表示領域34に表示される。
【0074】
さらに、表示値については過去に測定された値の最大値(ピーク)と最小値(ボトム)を保持して表示するピーク/ボトムホールド表示に切り替えることも可能である。図27の例では、(a)の状態からモードボタンを押下すると、ピーク/ボトムホールド表示に切り替えられ、(c)のようにピーク/ボトムホールド表示であることを示す「HLd」表示と、(d)の最大値と最小値の表示とが所定の時間間隔で切り替えられる。(d)では第1表示領域32に最大値が、第2表示領域34に最小値が表示されている。(b)のピーク/ボトムホールド表示からモードボタンを押下すると、(a)の表示モードに戻る。このように、モードボタンを押下することでピーク/ボトムホールド表示と表示モードとがトグル状に切り替えられる。
【0075】
表示モードと設定モードの切替は、モード切替部によって行う。この例では、モード切替部であるモードボタンの長押しにより切り替えが行われる。なお、表示モード/設定モード切替用ボタンを別途設ける構成とすることもできることはいうまでもない。
(設定モード)
【0076】
設定モードでは、予め用意された複数の検出モードのいずれかを選択し、各選択された検出モードについて設定を行う。この例では上述の通り5つの検出モードが用意され、独立検出モード、高さ判別モード、背景変動検知モード、液面ウィンドウモード、ゾーンコントロールモードのいずれかを選択できる。図28〜図32は、各検出モードに応じた設定モードの設定方法を示しており、図28は、独立検出モードの設定手順、図29は高さ判別モードの設定手順、図30は背景変動検知モードの設定手順、図31は液面ウィンドウモードの設定手順、図32はゾーンコントロールモードの設定手順をそれぞれ示している。
(独立検出モードの設定)
【0077】
図27の状態からモードボタンを長押しすると、図28(1)に示すように設定モードに遷移する。図28(1)は検出モードを選択する画面であり、第1表示領域32に検出モード選択画面であることを示す「Fnc」、第2表示領域34に各検出モードが表示される。ここでは、上下ボタンを操作すると第2表示領域34が「F−1」、「F−2」、「A−1」、「A−2」、「A−3」がトグル状に切り替えられ、それぞれ「独立検出モード」、「高さ判別モード」、「背景変動検知モード」、「液面ウィンドウモード」、「ゾーンコントロールモード」を示している。ここでは「独立検出モード」に相当する「F−1」を選択する。
(距離表示モード選択)
【0078】
第2表示領域34が「F−1」の状態でモードボタンを押下すると独立検出モードが選択され、図28(2)に示す距離表示モードの選択画面に遷移する。距離表示モード(dSt)は、図33に示すようにセンサヘッド部10の照射面(検出面)からワークWまでの検出距離を表示するノーマル動作(nor)すなわち上述した通常表示モードか、測定された距離を変換するリバース動作(rEv)すなわち任意の基準位置を設定し、その基準位置からワークWの高さを表示する変換表示モードかを選択する。なおリバース動作を設定すると、さらに図28(2−1)に示すように基準設定距離(dSt)の入力画面となる。この画面から、基準位置を数値で入力する。ここでは上下ボタンにより数値を増減させて指定しているが、テンキーやダイヤルなどで数値を指定することもできる。このように独立検出モードの設定画面においてリバースを設定すると、後述する高さ判別モードと同様の反転表示を行うことができる。
(入出力端子設定)
【0079】
さらにモードボタンを押下すると図28(3)に示す入出力端子設定(I_O)画面に遷移する。ここでは、2本の出力端子(OUT1、OUT2)と共に設けられた入出力端子の用途を選択でき、アナログ出力(out)、外部シフト入力(SFt)、バンク入力(bnk)のいずれかを選択する。
(アナログ出力)
【0080】
アナログ出力では、測定された表示値に応じた値のアナログ信号を出力する。表示値に対するアナログ信号波形の一例を図34に説明する。この図の例では、測定値に応じた電流値(図の例では4〜20mA)をアナログ信号として出力する。なおワークWまでの検出距離が検出範囲下限以下や検出範囲上限以上の場合は、出力は最小値もしくは最大値で一定とする。またヘッド断線エラーを検出した場合には、アナログ出力から所定の信号(例えば最小値)を出力して警報動作を行わせることもできる。警報動作は、例えば背景に相当するコンベアCなどが所定の位置からずれて検出できない場合、センサの設置状態が異常であるとして警報出力を行う。なおこの例ではアナログ信号として電流値を出力しているが、電圧信号やデジタル信号出力とすることも可能であることはいうまでもない。
(外部シフト入力)
【0081】
また外部シフト入力では、表示値を所定の量だけシフトするための設定である。外部シフトは感度差の少ないシビアな検出に有効である。温度変化などの環境変化によって表示値が変動する場合等に、検出直前に外部シフト入力によって表示値を補正することが可能となる。例えば図35に示すように、入出力端子をスイッチやPLCなどに接続し、図のように短絡することでシフト入力が可能となる。この例では入力信号の立ち上がりエッジでシフト入力を行う。
【0082】
外部シフト入力を選択すると、図28(3−1)のようにシフト目標値距離(SFt)を指定する画面となり、数値にて入力する。なお上述した距離表示モードでリバース動作を選択した場合は、外部シフト入力を選択できないようになっている。リバース動作でも基準位置が設定されるため、同じような動作である外部シフト入力と混同するのを防止するためである。このように、設定項目として必要な項目のみを表示し、設定不要な項目については表示を省略することで、ユーザの混乱を無くし設定を判りやすくしている。
(バンク入力)
【0083】
またバンク入力では、既存の2出力のページ切替を行うためのトリガとして使用する。すなわち、2出力の閾値がそれぞれP1、P2とされている場合に、入出力端子がバンク入力を受けると2出力のそれぞれの閾値をP1’、P2’に変更することができ、2出力に4つの閾値を持たせることができる。
(出力様式設定)
【0084】
入出力端子設定の完了後モードボタンを押下すると、図28(4)の出力様式(out)の設定画面に遷移する。出力様式設定画面では、2出力(OUT1、OUT2)それぞれにつき、ノーマルオープン動作又はノーマルクローズ動作を切り替えることができる。図28(4)の例では、第2表示領域34の3桁の2桁目をOUT1、3桁目をOUT2に割り当て、それぞれノーマルオープンを「o」、ノーマルクローズを「C」と表現している。ここではOUT1がノーマルオープン、OUT2がノーマルオープンの場合は「noo」、OUT1がノーマルクローズ、OUT2がノーマルオープンの場合は「nCo」、OUT1がノーマルオープン、OUT2がノーマルクローズの場合は「noC」、OUT1がノーマルクローズ、OUT2がノーマルクローズの場合は「nCC」でそれぞれ表現している。
(応答速度設定)
【0085】
出力様式設定の完了後モードボタンを押下すると、図28(5)の応答速度設定画面(Spd)に遷移する。応答速度設定画面では、応答速度として反応時間を指定し、指定された秒数以下の変化には応答しない。これにより微小変化やチャタリングを防止できる。図28(5)の例では、予め所定の数値が選択肢として提示され、いずれかの数値を選択して設定する。ただ、ユーザが所望の数値を直接指定することもできる。
(ヒステリシス設定)
【0086】
応答速度設定の完了後モードボタンを押下すると、図28(6)のヒステリシス設定画面(Hys)に遷移する。ヒステリシス設定画面では、設定された閾値に対するヒステリシスを数値(ここではmm)で設定する。これによって検出モードに応じて遅延や範囲を設定でき、チャタリング等を防止できる。ヒステリシスは、チューニング(初期設定)時に自動的に数値を入力されるが、ユーザがさらにこの値を変更することもできる。
(電力節約設定)
【0087】
ヒステリシス設定の完了後モードボタンを押下すると、図28(7)の電力節約モード設定画面(Eco)に遷移する。この画面では電力節約モード(エコモード)のON/OFF切替が可能であり、電力節約モードをONすると、変位表示部の画面表示が所定時間経過後(例えば10秒後)に消灯して表示に要する電力(ここでは7セグメント表示器のLEDの消費電力)を節約できる。消灯中に何らかの入力やボタン操作があると、再び画面表示が点灯して表示され、また数秒後に消灯する。
(表示設定)
【0088】
電力節約設定の完了後モードボタンを押下すると、図28(8)の表示設定画面(dSp)に遷移する。この画面では、変位表示部の表示に関する様々な設定が選択可能で、スタンダード表示(Std)、フィルタリング表示(FLt)、桁数削減表示(diG)がトグルにより切り替えられる。スタンダード表示は通常の表示形態を維持する。フィルタリング表示は、表示値に平滑化を行う。桁数削減表示は、表示値の桁数を下一桁削減して表示するモードであり、これによりmm表示からcm表示に変更できる。
【0089】
なお、上記の設定モードにおいて、設定モードを終了して表示モードに戻るには、同様にモードボタンを長押しする。この際、設定モードで表示されていた値が設定値として保持される。
(高さ判別モードの設定)
【0090】
次に、高さ判別モードの設定について図29に基づいて説明する。なお、上述した独立検出モードと同じ項目については説明を適宜省略する。図27の状態からモードボタンを長押しして設定モードに遷移させ、図29(1)に示す検出モード選択画面(Fnc)を表示させる。この状態から上下ボタンを操作して第2表示領域34に「高さ判別モード」に相当する「F−2」を表示させ、モードボタンを押下して選択する。すると高さ判別モードの設定に移行し、図29(2)に示すように距離表示モード選択画面(dSt)に移行する。図28(2)と異なり、高さ判別モードでは常にリバース動作で駆動されるため、ノーマル動作を選択する画面は省略され、直接リバース動作における基準となる距離を数値で設定する。
【0091】
次に図29(3)の入出力端子設定画面(i_o)に移行し、入出力端子の動作をアナログ出力(out)、バンク入力(bnk)のいずれかより選択する。ここでは、外部シフト入力は選択できない。さらに図29(4)の出力様式設定画面(out)に移行し、図28(4)と同様に2出力OUT1、OUT2それぞれについてノーマルオープンかノーマルクローズかを設定する。その後図29(5)で応答速度設定画面(SPd)に移行し、図28(5)と同様に検出速度を所定の選択値から選択する。さらに図29(6)でヒステリシス設定画面(Hys)に移行し、ヒステリシスの値を指定する。さらにまた図29(7)で電力節約設定画面(Eco)に移行し、エコモードのON/OFFを指定する。最後に図29(8)で表示設定画面(dSP)に移行し、スタンダード表示(Std)、フィルタリング表示(FLt)、桁数削減表示(diG)がトグルにより切り替えられる。
(背景変動検知モードの設定)
【0092】
さらに、背景変動検知モードの設定について図30に基づいて説明する。図27の状態からモードボタンを長押しして設定モードに遷移させ、図30(1)に示す検出モード選択画面(Fnc)を表示させる。この状態から上下ボタンを操作して第2表示領域34に「背景変動検知モード」に相当する「A−1」を表示させ、モードボタンを押下して選択する。すると背景変動検知モードの設定に移行し、図30(2)に示すように距離表示モード選択画面(dSt)に移行する。ここでも図29(2)と同様、常にリバース動作で駆動されるため、ノーマル動作を選択する画面は省略され、直接リバース動作における基準となる距離を数値で設定する。また背景変動検知モードでは入出力端子の動作はアナログ出力(out)に固定されるため、入出力端子設定画面(i_o)の設定画面は表示されず、図30(3)の出力様式設定画面(out)に移行し、図28(4)と同様に2出力OUT1、OUT2それぞれについてノーマルオープンかノーマルクローズかを設定する。その後図30(4)で応答速度設定画面(SPd)に移行し、図28(5)と同様に検出速度を所定の選択値から選択する。さらに図30(5)でヒステリシス設定画面(Hys)に移行し、ヒステリシスの値を指定する。さらにまた図30(6)で電力節約設定画面(Eco)に移行し、エコモードのON/OFFを指定する。最後に図30(7)で表示設定画面(dSP)に移行し、スタンダード表示(Std)、フィルタリング表示(FLt)、桁数削減表示(diG)がトグルにより切り替えられる。
(液面ウィンドウモード)
【0093】
さらに、液面ウィンドウモードの設定について図31に基づいて説明する。図27の状態からモードボタンを長押しして設定モードに遷移させ、図31(1)に示す検出モード選択画面(Fnc)を表示させる。この状態から上下ボタンを操作して第2表示領域34に「液面ウィンドウモード」に相当する「A−2」を表示させ、モードボタンを押下して選択する。すると液面ウィンドウモードの設定に移行し、図31(2)に示すように距離表示モード選択画面(dSt)に移行する。ここでも図29、図30(2)と同様、常にリバース動作で駆動されるため、ノーマル動作を選択する画面は省略され、直接リバース動作における基準となる距離を数値で設定する。また液面ウィンドウモードでは入出力端子の動作はアナログ出力(out)に固定されるため、入出力端子設定画面(i_o)の設定画面は表示されず、図31(3)の出力様式設定画面(out)に移行し、図28(4)と同様に2出力OUT1、OUT2それぞれについてノーマルオープンかノーマルクローズかを設定する。その後図31(4)で応答速度設定画面(SPd)に移行し、図28(5)と同様に検出速度を所定の選択値から選択する。さらに図31(5)でヒステリシス設定画面(Hys)に移行し、ヒステリシスの値を指定する。さらにまた図31(6)で電力節約設定画面(Eco)に移行し、エコモードのON/OFFを指定する。最後に図31(7)で表示設定画面(dSP)に移行し、スタンダード表示(Std)、フィルタリング表示(FLt)、桁数削減表示(diG)がトグルにより切り替えられる。
(ゾーンコントロールモード)
【0094】
さらに、ゾーンコントロールモードの設定について図32に基づいて説明する。図27の状態からモードボタンを長押しして設定モードに遷移させ、図32(1)に示す検出モード選択画面(Fnc)を表示させる。この状態から上下ボタンを操作して第2表示領域34に「ゾーンコントロールモード」に相当する「A−3」を表示させ、モードボタンを押下して選択する。するとゾーンコントロールモードの設定に移行し、図32(2)に示すように距離表示モード選択画面(dSt)に移行する。ここでも図29、図30、図31(2)と同様、常にリバース動作で駆動されるため、ノーマル動作を選択する画面は省略され、直接リバース動作における基準となる距離を数値で設定する。
【0095】
次に図32(3)の入出力端子設定画面(i_o)に移行し、入出力端子の動作をアナログ出力(out)、バンク入力(bnk)のいずれかより選択する。ここでは、外部シフト入力は選択できない。さらに図32(4)の出力様式設定画面(out)に移行し、図28(4)と同様に2出力OUT1、OUT2それぞれについてノーマルオープンかノーマルクローズかを設定する。その後図32(5)で応答速度設定画面(SPd)に移行し、図28(5)と同様に検出速度を所定の選択値から選択する。なおゾーンコントロールモードではヒステリシス設定を行わず、図32(6)で電力節約設定画面(Eco)に移行し、エコモードのON/OFFを指定する。最後に図32(7)で表示設定画面(dSP)に移行し、スタンダード表示(Std)、フィルタリング表示(FLt)、桁数削減表示(diG)がトグルにより切り替えられる。
(光電センサ)
【0096】
以上の例では測距手段として超音波センサを利用したが、本発明はこれに限定せず、距離または変位を測定可能なセンサやスイッチを適宜利用でき、例えばCCD、ラインCCD、PSD等を利用した光電センサや光電スイッチ、近接スイッチ等の他の検出器にも適用できる。一例として、光電センサを測距手段に用いた例を図36に基づいて説明する。なおこの図において、図4と同じ部材名、下2桁が同じ符号を付した部材は、同一の機能を有する部材であり、詳細説明を省略する。図36においては、センサヘッド部910は、測距媒体をワークWに照射するための送信部911と、ワークWで反射された測距媒体を受信するための受信部922を備えている。図36に示す光電センサでは、送信部911として測距媒体を発生させる送信素子と、受信部912としてワークWで反射された測距媒体を受信する受信素子とを個別に備えている。ここでは測距媒体として光を用いており、送信素子はLEDやLD等の発光素子、受信素子はPDやPSDなどの受光素子が利用できる。これら送信素子及び受信素子は、それぞれを駆動するための送信回路914、受信回路915と各々接続されている。なお図36の例のように送信部と受光部を個別に設ける構成に限られず、送信部と受信部を統合することもできる。この構成によってセンサヘッド部を小型化し、省スペース化を図ることができる。またセンサヘッド部とアンプ部についても、これらを一体とした構造を採用することもできることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の測距センサ及びその設定方法は、所定距離だけ離れた検出位置に検出対象物が存在するかどうかを検出するため等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】センサが距離を測定した測定値を表示する例を説明する説明図である。
【図2】ワークの高さを測定するための演算方法を説明する説明図である。
【図3】超音波センサの外観を示す斜視図である。
【図4】超音波センサを構成するセンサヘッド部とアンプ部を示すブロック図である。
【図5】測定された距離を表示値として表示部に表示する通常表示モードを説明する説明図である。
【図6】測定された距離に基づいて基準位置からの距離を測定する変換表示モードを説明する説明図である。
【図7】測距センサの検出範囲外の状態を含む配置例での測定値を表示する例を説明する説明図である。
【図8】測距センサの検出範囲外の状態を含む配置例での測定値を表示する他の例を説明する説明図である。
【図9】通常表示モードの際に閾値を設定する例を示す説明図である。
【図10】変換表示モードの際に閾値を設定する例を示す説明図である。
【図11】2点チューニングを行う例を説明する斜視図である。
【図12】通常表示モードの際に最大感度チューニングを行う例を説明する説明図である。
【図13】変換表示モードの際に最大感度チューニングを行う例を説明する説明図である。
【図14】フルオートチューニングを行う例を示す斜視図である。
【図15】コンベアチューニングを行う例を示す斜視図である。
【図16】独立検出モードにおける出力部の出力パターンを示すタイミングチャートである。
【図17】コンベア上を搬送されるワークの有無を検知する一例を示す説明図である。
【図18】高さ判別モードでワークを検出する一例を示す説明図である。
【図19】高さ判別モードの閾値と出力パターンの一例を示す説明図である。
【図20】背景変動検知モードでワークを検出する一例を示す説明図である。
【図21】背景変動検知モードの閾値と出力パターンの一例を示す説明図である。
【図22】液面ウィンドウモードでワークを検出する一例を示す説明図である。
【図23】液面ウィンドウモードの閾値と出力パターンの一例を示す説明図である。
【図24】ゾーンコントロールモードでワークを検出する一例を示す説明図である。
【図25】ゾーンコントロールモードの閾値と出力パターンの一例を示す説明図である。
【図26】ゾーンコントロールモードでワークを検出する他の例を示す説明図である。
【図27】表示モードにおける状態遷移図を示す説明図であり、(a)は変位表示部の第1表示領域に表示値を表示し、第2表示領域に一の閾値を表示する状態、(b)は他の閾値を第2表示領域に表示する状態、(c)はピーク/ボトムホールド表示に切り替えた状態をそれぞれ示す。
【図28】独立検出モードの設定手順を示す説明図である。
【図29】高さ判別モードの設定手順
【図30】背景変動検知モードの設定手順
【図31】液面ウィンドウモードの設定手順
【図32】ゾーンコントロールモードの設定手順
【図33】通常表示モードと変換表示モードの違いを説明する説明図である。
【図34】入出力端子から出力されるアナログ信号波形の一例を示す波形図である。
【図35】入出力端子をシフト入力として利用する一例を示す説明図である。
【図36】超音波センサを構成するセンサヘッド部とアンプ部の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0099】
100…超音波センサ
10、910…センサヘッド部
13…送受信素子;14、914…送信回路;15、915…受信回路
16…ケーブル部
20、920…アンプ部
22、922…入力部
24、924…演算部;25、925…出力パターン変更部
26、926…設定部;27、927…モード切替部
28、928…出力部
30、930…表示部;32…第1表示領域;34…第2表示領域
36…出力表示部;38…チャンネルインジケータ;39…サブインジケータ
911…送信部;912…受信部
42…増減部;44…決定部
W…ワーク;C…コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距媒体を対象物に照射し、対象物で反射された測距媒体を検出可能なセンサヘッド部と、
前記センサヘッド部で検出した値に基づき前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算可能な演算部と、
予め対象物の有無を判別するための閾値および必要に応じて基準値を設定可能な設定部と、
前記演算部で演算された測定値または測定値を前記設定部で設定された基準値に従って変換した変換値を、表示値として表示可能な変位表示部と、
前記変位表示部で表示される表示値が前記設定部で設定された閾値とを比較し、表示値が閾値を超える場合にON、超えない場合にOFFとなる出力パターンにて出力可能な出力部と、
を備える測距センサであって、
前記演算部が、センサヘッド部の測距媒体照射位置に配置された対象物に測距媒体を照射して前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、かつ前記設定部にて設定された基準値に基づいて、閾値を自動的に演算して設定可能なオートチューニング機能を備えてなることを特徴とする測距センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の測距センサであって、
前記測距センサは前記変位表示部における表示及び出力パターンの異なる複数の表示モードを備えており、
前記オートチューニング機能が、対象物の有る場合、無い場合に各々測距媒体を照射して表示値を演算部で演算し、かつ現在選択されている表示モードを検出し、演算された表示値および検出された表示モードに基づいて、出力部の出力が対象物の有る場合にON、無い場合にOFFとなるよう、閾値の設定位置を、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間、または対象物の配置位置と背景との間のいずれかに設定することを特徴とする測距センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の測距センサであって、
前記変位表示部に表示される表示値が、前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離である通常表示モードにおいて、
前記オートチューニング機能が、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間に閾値を設定することを特徴とする測距センサ。
【請求項4】
請求項2に記載の測距センサであって、
前記変位表示部に表示される表示値が、前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離、及び対象物がない場合の前記センサヘッド部から背景までの距離に基づき演算された、対象物の高さである変換表示モードにおいて、
前記オートチューニング機能が、対象物の配置位置と背景との間に閾値を設定することを特徴とする測距センサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の測距センサであって、
前記センサヘッド部で測距媒体を受信する感度を最大にし、かつ測定可能な最大距離よりも若干低い値を閾値として設定することにより、対象物を検出する最大感度チューニング機能を備えることを特徴とする測距センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の測距センサであって、
前記オートチューニングが、センサヘッド部の測距媒体照射位置に配置された対象物を移動させる状態で、前記演算部にて閾値を演算することを特徴とする測距センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の測距センサであって、
前記オートチューニングが、センサヘッド部から対象物に測距媒体を照射し続ける状態で表示値を一定時間取得し、その中央値を閾値として設定することを特徴とする測距センサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の測距センサであって、
前記オートチューニングが、変動する対象物に対してセンサヘッド部から測距媒体を照射して変化する表示値を一定時間取得し、その変動の中央位置と変位量と演算し、中央位置と対象物のサイズに基づいて第一の閾値を設定すると共に、中央位置の値を第2の閾値として設定することを特徴とする測距センサ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の測距センサであって、
前記演算部が、前記センサヘッド部で照射された測距媒体が検出されるまでに要した時間と、測距媒体の進行速度とに基づいて前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算可能であることを特徴とする測距センサ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の測距センサであって、
前記測距媒体が超音波であることを特徴とする測距センサ。
【請求項11】
センサヘッド部が測距媒体を対象物に照射し、対象物で反射された測距媒体を検出し、演算部が前記センサヘッド部で検出した値に基づき前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、変位表示部に表示可能であり、かつ測定された距離と予め設定された閾値とを比較して、表示値が閾値を超える場合にON、超えない場合にOFFとなる出力パターンにて出力可能な測距センサの設定方法であって、
センサヘッド部の測距媒体照射位置に対象物を配置した状態で、測距媒体を照射して前記センサヘッド部の照射面から対象物までの距離を演算し、
演算された距離に基づいて、対象物の配置位置とセンサヘッド部との間に閾値を自動的に設定することを特徴とする測距センサの設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2006−78371(P2006−78371A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263508(P2004−263508)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.USB
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】