測距センサ及び測距装置
【課題】 正確な測距を行うことが可能な測距センサ及び測距装置を提供する。
【解決手段】 光感応領域1G内でイオン化された不純物によるポテンシャルφPGと、第1及び第2半導体領域FD1、FD2内でイオン化された不純物によるポテンシャルφFD1,φFD2の差は、光感応領域と第1及び第2半導体領域で導電型が異なるので、これらの導電型が同一の場合よりも、大きくなる。このようにポテンシャルの差がある状態で、光感応領域1Gの導電型を半導体基板1A,1A’と同一のP型とし、その不純物濃度を低下させると、光感応領域1Gにおけるポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなる。光感応領域1G内で発生したキャリアが第1半導体領域FD1及び第2半導体領域FD2内に確実に流れ込みやすくなり、光感応領域1G内におけるキャリアの残留を抑制することができる。
【解決手段】 光感応領域1G内でイオン化された不純物によるポテンシャルφPGと、第1及び第2半導体領域FD1、FD2内でイオン化された不純物によるポテンシャルφFD1,φFD2の差は、光感応領域と第1及び第2半導体領域で導電型が異なるので、これらの導電型が同一の場合よりも、大きくなる。このようにポテンシャルの差がある状態で、光感応領域1Gの導電型を半導体基板1A,1A’と同一のP型とし、その不純物濃度を低下させると、光感応領域1Gにおけるポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなる。光感応領域1G内で発生したキャリアが第1半導体領域FD1及び第2半導体領域FD2内に確実に流れ込みやすくなり、光感応領域1G内におけるキャリアの残留を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距センサ及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクティブ型の光測距センサは、LED(Light Emitting Diode)などの投光用の光源から対象物に光を照射し、対象物における反射光を光検出素子で検出することで、対象物までの距離に応じた信号を出力するものとして知られている。PSD(Position Sensitive Detector)などは、対象物までの距離を簡易に測定することができる光三角測量型の光測距センサとして知られているが、近年、より精密な距離測定を行うため、光TOF(Time−Of−Flight)型の光測距センサの開発が期待されている。
【0003】
また、距離情報と画像情報を同時に、同一チップで取得できるイメージセンサが車載用、工場の自動製造システム用などにおいて求められている。車両前方にイメージセンサを設置すれば、前方車両の検知・認識、歩行者などの検知・認識に使用することが期待される。画像情報とは別に、単一の距離情報又は複数の距離情報からなる距離画像を取得するイメージセンサも期待されている。このような測距センサにはTOF法を用いることが好ましい。
【0004】
TOF法は、投光用の光源から、対象物に向けてパルス光を出射し、対象物で反射されたパルス光を光検出素子で検出することで、パルス光の出射タイミングと検出タイミングの時間差を測定している。この時間差(Δt)は、対象物までの距離dの2倍の距離(2×d)をパルス光が光速(=c)で飛行するのに要する時間であるため、d=(c×Δt)/2が成立する。時間差(Δt)は、光源からの出射パルスと検出パルスの位相差と言い換えることもできる。この位相差を検出すれば、対象物までの距離dを求めることができる。
【0005】
電荷振り分け方式のイメージセンサは、TOF法によって測距を行うための光検出素子として着目されている。すなわち、電荷振り分け方式のイメージセンサでは、例えば、検出パルスの入射に応じてイメージセンサ内において発生するパルス的に発生する電荷を、出射パルスのON期間の間に一方のポテンシャル井戸内に振り分け、OFF期間の間に他方のポテンシャル井戸に振り分ける。この場合、左右に振り分けられた電荷量の比率が、検出パルスと出射パルスの位相差、すなわち、対象物までの距離の2倍の距離をパルス光が光速で飛行するのに要する時間に比例することになる。なお、電荷の振り分け方法としては種々のものが考えられる。
【0006】
特許文献1に記載の測距センサは、半導体基板の表面にはPN接合ダイオードを有しており、PN接合ダイオードへの光の入射に応答して発生したキャリアとしての電子は、PN接合ダイオード内の拡散電位に従って、半導体基板の深い位置に進行しようとするが、左右のゲート電極に電圧が印加すると、ゲート電極に隣接するポテンシャル井戸内に交互に転送され、順次読み出される。また、PN接合ダイオードを用いないタイプの測距センサも提案されている。
【0007】
特許文献2は、このような測距センサを開示している。特許文献2に記載の測距センサは、半導体基板の表面上に隣接配置された第1ゲート電極及び第2ゲート電極を備えている。これらのゲート電極間に入射した光は半導体基板内で光電変換され、発生したキャリアは、第1ゲート電極のポテンシャルと、第2ゲート電極のポテンシャルを交互に高くすることにより、ゲート電極直下の領域に隣接した左右のポテンシャル井戸内に転送される。電荷の分離をより精密に行うため、特許文献2では、第1ゲート電極と、第2ゲート電極との間に、中央ゲート電極を配置している。
【0008】
この場合、中央ゲート電極直下の領域内に光が入射すると、光の入射に応答してキャリアが発生するが、中央ゲート電極には予め適当なバイアス電圧が与えられており、中央ゲート電極直下の領域のポテンシャルは、電位が与えられていない方のゲート電極直下の領域のポテンシャルよりも高くなるため、ポテンシャルが与えられている方のゲート電極直下の領域内に、キャリアが転送される確率が上昇する。
【特許文献1】特開2001−281336号公報
【特許文献2】特開2005−235893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、中央ゲート電極に与えられるポテンシャルは、横方向に平坦であり、したがって、中央ゲート電極直下の領域のポテンシャルの横方向傾斜は、平坦性が高いという傾向がある。この場合、中央ゲート電極直下の領域内で発生したキャリアが全て転送されるとは限らず、一部のキャリアが当該領域内に残留してしまう。したがって、特許文献2に記載の測距センサでは、キャリアの分配が精密に行われず、正確な測距が行えないという問題がある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、正確な測距を行うことが可能な測距センサ及び測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明に係る測距センサは、半導体基板の表面上に設定された光感応領域と、表面上において光感応領域に隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極と、光感応領域から第1及び第2ゲート電極直下の領域に流れ込むキャリアをそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域と、を備え、第1及び第2半導体領域の導電型と光感応領域の導電型とは逆であって、半導体基板と光感応領域の導電型は同一であり、且つ、光感応領域の不純物濃度は、半導体基板の不純物濃度よりも低く設定されていることを特徴とする。
【0012】
光感応領域の導電型は、第1及び第2半導体領域の導電型とは異なるので、光感応領域内でイオン化された不純物によるポテンシャルと、第1及び第2半導体領域内でイオン化された不純物によるポテンシャルの差は、これらの導電型が同一の場合よりも、大きくなる。このようにポテンシャルの差がある状態で、光感応領域の導電型を半導体基板と同一とし、その不純物濃度を低下させると、光感応領域におけるポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなり、光感応領域内で発生したキャリアが第1及び第2半導体領域内に確実に流れ込みやすくなり、光感応領域内におけるキャリアの残留を抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る測距装置は、上記測距センサと、光を出射する光源と、光源にパルス駆動信号を与える駆動回路と、第1及び第2ゲート電極に、パルス駆動信号に同期した検出用ゲート信号を与える制御回路と、第1及び第2半導体領域から読み出された信号から、対象物までの距離を演算する演算回路とを備えることを特徴とする。
【0014】
上述のように、第1及び第2半導体領域から読み出された信号、すなわち、第1又は第2半導体領域内に蓄積されるキャリアの電荷量の全体電荷量に対する比率は、上述の位相差、すなわち、対象物までの距離に対応する。
【0015】
演算回路は、この位相差に応じて対象物までの距離を演算する。位相差に対応する時間差をΔtとすると、距離dは、好適にはd=(c×Δt)/2で与えられるが、適当な補正演算をこれに加えて行ってもよい。なお、例えば、実際の距離と、演算された距離dとが異なる場合、後者を補正する係数βを予め求めておき、出荷後の製品では演算された距離dに係数βを乗じたものを最終的な演算距離dとしてもよい。また、外気温度を測定しておき、外気温度に応じて光速cが異なる場合には、光速cを補正する演算を行ってから、距離演算を行うこともできる。また、演算回路に入力された信号と、実際の距離との関係を予めメモリに記憶しておき、ルックアップテーブル方式によって、距離を演算してもよい。また、センサ構造によっても演算方法は変更することができ、従来から知られている演算方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の測距センサ及び測距装置によれば、正確な測距を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施の形態に係る測距センサ及び測距装置について説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は測距装置の構成を示す説明図である。
【0019】
本例の測距センサ1は、裏面入射型測距センサであるとするが、後述のように表面入射型測距センサとすることもできる。この測距装置は、測距センサ1と、近赤外光を出射する光源3と、光源3にパルス駆動信号SPを与える駆動回路4と、裏面入射型測距センサ1の各画素に含まれる第1及び第2ゲート電極(TX1,TX2:図5参照)に、パルス駆動信号SPに同期した検出用ゲート信号SL、SRを与える制御回路2と、測距センサ1の第1及び第2半導体領域(FD1、FD2:図5参照)から読み出された距離情報を示す信号d’(m,n)から、歩行者などの対象物Hまでの距離を演算する演算回路5を備えている。測距センサ1から対象物Hまでの水平方向Dの距離をdとする。
【0020】
制御回路2は、パルス駆動信号SPを駆動回路4のスイッチ4bに入力している。LED又はレーザダイオードからなる投光用の光源3は、スイッチ4bを介して電源4aに接続されている。したがって、スイッチ4bにパルス駆動信号SPが入力されると、パルス駆動信号SPと同じ波形の駆動電流が光源3に供給され、光源3からは測距用のプローブ光としてのパルス光LPが出力される。
【0021】
パルス光LPが対象物Hに照射されると、対象物Hによってパルス光が反射され、パルス光LDとして、裏面入射型測距センサ1に入射して、パルス検出信号SDを出力する。パルス検出信号SDはパルス光LDの入射に応じて基板内部で発生した総電荷量を示し、立ち上がりと立ち下がりのタイミングはパルス光LDに一致するが、距離dに応じた分だけパルス光LPに対して位相が遅延している。
【0022】
測距センサ1は、配線基板10上に固定されており、配線基板10上の配線を介して、距離情報を有する信号d’(m,n)が各画素から出力される。
【0023】
パルス駆動信号SPの波形は、周期Tの方形波であり、ハイレベルを「1」、ローレベルを「0」とすると、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・パルス駆動信号SP:
・V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
【0024】
検出用ゲート信号SL、SRの波形は、周期Tの方形波であり、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・検出用ゲート信号SL:
・V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
・検出用ゲート信号SR(=SLの反転):
・V(t)=0(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=1(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
【0025】
上記パルス信号SP,SL、SR、SDは、全てパルス周期2×TPを有していることとする。検出用ゲート信号SL及びパルス検出信号SDが共に「1」のときに測距センサ1内で発生する電荷量をQ1、検出用ゲート信号SR及びパルス検出信号SDが共に「1」のときに測距センサ1内で発生する電荷量をQ2とする。
【0026】
測距センサ1における一方の検出用ゲート信号SLとパルス検出信号SDの位相差は、他方の検出用ゲート信号SRとパルス検出信号SDが「1」の時の重複期間において、裏面入射型測距センサ1において発生した電荷量Q2に比例する。すなわち、電荷量Q2は、検出用ゲート信号SRとパルス検出信号SDの論理積が「1」である期間において発生した電荷量である。1画素内において発生する全電荷量をQ1+Q2とし、駆動信号SPの半周期のパルス幅をTPとすると、Δt=TP×Q2/(Q1+Q2)の期間だけ、駆動信号SPに対してパルス検出信号SDが遅れていることになる。1つのパルス光の飛行時間Δtは、対象物までの距離をd、光速をcとすると、Δt=2d/cで与えられるため、特定の画素からの距離情報を有する信号d’として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力されると、演算回路5は、入力された電荷量Q1,Q2と、予め判明している半周期パルス幅TPに基づいて、対象物Hまでの距離d=(c×Δt)/2=c×TP×Q2/(2×(Q1+Q2))を演算する。
【0027】
上述のように、電荷量Q1、Q2を分離して読み出せば、演算回路5は、距離dを演算することができる。なお、上述のパルスは繰り返して出射され、その積分値を各電荷量Q1,Q2として出力することができる。
【0028】
また、電荷量Q1,Q2の全体電荷量に対する比率は、上述の位相差、すなわち、対象物Hまでの距離に対応しており、演算回路5は、この位相差に応じて対象物Hまで距離を演算している。上述のように、位相差に対応する時間差をΔtとすると、距離dは、好適にはd=(c×Δt)/2で与えられるが、適当な補正演算をこれに加えて行ってもよい。例えば、実際の距離と、演算された距離dとが異なる場合、後者を補正する係数βを予め求めておき、出荷後の製品では演算された距離dに係数βを乗じたものを最終的な演算距離dとしてもよい。また、外気温度を測定しておき、外気温度に応じて光速cが異なる場合には、光速cを補正する演算を行ってから、距離演算を行うこともできる。また、演算回路に入力された信号と、実際の距離との関係を予めメモリに記憶しておき、ルックアップテーブル方式によって、距離を演算してもよい。また、センサ構造によっても演算方法は変更することができ、これには従来から知られている演算方法を用いることができる。
【0029】
図2は測距センサ1の平面図である。
【0030】
測距センサ1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1Bを有する半導体基板1Aを備えている。各画素P(m,n)からは、上述の距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力される。各画素P(m,n)は微小測距センサとして対象物Hまでの距離に応じた信号d’(m,n)を出力するので、対象物Hからの反射光を、撮像領域1Bに結像すれば、対象物H上の各点までの距離情報の集合体としての対象物の距離画像を得ることができる。
【0031】
図3は図2に示した測距センサのIII−III矢印断面図である。
【0032】
測距センサ1には、光入射面1BKからパルス光LDが入射する。裏面入射型測距センサ1の光入射面1BKとは逆側の表面1FTは、接着領域ADを介して配線基板10に接続されている。接着領域ADは、バンプなどの接着素子を含む領域であり、必要に応じて絶縁性の接着剤やフィラーを有している。裏面入射型測距センサ1を構成する半導体基板1Aは、補強用のフレーム部Fと、フレーム部Fよりも薄い薄板部TFを有しており、これらは一体化している。薄板部TFの厚さは、10μm以上100μm以下である。本例のフレーム部Fの厚さは200μm以上600μm以下である。
【0033】
図4は変形例に係る測距センサの断面図である。
【0034】
この測距センサは、図3に示したものと半導体基板1Aの形状のみが異なり、他の構成は同一である。半導体基板1Aは、ストライプ状又は格子状に形成された補強部AFを更に有しており、補強部AFの間に薄板部TFが形成され、これらは一体化している。本例の補強部AFの厚みは、フレーム部AFの厚さと同じであり、200μm以上600μm以下である。薄板部TFには前述の各画素が形成されている。薄板部TFはKOH等のアルカリ性エッチング液を用いたウエットエッチングによって形成する。エッチングによって形成された露出表面の粗さは1μm以下である。
【0035】
図5は、図3又は図4に示した測距センサの領域Vの拡大図である。
【0036】
裏面入射型測距センサ1は、光入射面1BK及び光入射面1BKとは逆側の表面1FTを有する半導体基板1A,1A’と、表面1FT上において絶縁層1Eを介して光感応領域1Gに隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極TX1,TX2と、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2直下の領域に流れ込むキャリア(電子e)をそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域FD1,FD2とを備えている。本例の半導体基板1A,1A’はSiからなり、絶縁層1EはSiO2からなる。絶縁層1Eを厚くすることで、フリンジング電界を形成することができる。フリンジング電界を形成するための好適な絶縁層1Eの厚みは、50〜5000nmである。
【0037】
なお、本例の半導体基板は、光入射面を有する基板本体1Aと、ゲート電極側のエピタキシャル層1A’とからなるが、エピタキシャル層は省略することも可能である。
【0038】
半導体基板1A,1A’は低不純物濃度のP型半導体基板からなり、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は高不純物濃度のN型半導体からなるフローティング・ディフュージョン領域であり、エピタキシャル層1A’内に形成されている。
【0039】
第1及び第2半導体領域FD1,FD2の一部は、半導体基板のエピタキシャル層1A’における各ゲート電極TX1,TX2の直下の領域に接触している。半導体基板1A,1A’の光入射面1BKの側には、反射防止膜1Dが設けられている。半導体基板1Aの露出面の表面粗さ、すなわち、表面凹凸の最大値と最小値の高さの差は1μm以下である。反射防止膜1Dの材料は、SiO2またはSiN(窒化シリコン)である。
【0040】
ゲート電極TX1,TX2間の領域の直下領域は、半導体基板1A,1A’と同一の導電型であるP型であって、半導体基板1A,1A’の不純物濃度よりも、低い不純物濃度を有する光感応領域1Gからなる。光感応領域1Gは、不純物濃度が半導体基板1Aよりも相対的に低い。
【0041】
光感応領域1Gの導電型は、第1半導体領域FD1及び第2半導体領域FD2の導電型とは異なるので、光感応領域1G内でイオン化された不純物によるポテンシャルφPGと、第1及び第2半導体領域FD1、FD2内でイオン化された不純物によるポテンシャルφFD1,φFD2の差は、これらの導電型が同一の場合よりも、大きくなる。このようにポテンシャルの差がある状態で、光感応領域1Gの導電型を半導体基板1A,1A’と同一のP型とし、その不純物濃度を低下させると、光感応領域1Gにおけるポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなる。なお、横方向とは、ゲート電極TX1,TX2を結ぶ直線の方向である。ポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなると、光感応領域1G内で発生したキャリアが第1半導体領域FD1及び第2半導体領域FD2内に確実に流れ込みやすくなり、光感応領域1G内におけるキャリアの残留を抑制することができる。
【0042】
光感応領域1Gは、エピタキシャル成長法を用いるか、或いは不純物拡散法又はイオン注入法を用いて形成する。
【0043】
配線基板10は、Siからなる半導体基板10Aと、半導体基板10A上に形成された読み出し配線11h、15hを備えており、これらの読み出し配線11h、15hは、それぞれ、第1半導体領域FD1、第2半導体領域FD2に電気的に接続されている。
【0044】
第1半導体領域FD1と読み出し配線11hとの間には、コンタクト電極11a、パッド電極11b、バンプ11c、パッド電極11d、コンタクト電極11e、中間電極11f、コンタクト電極11gが介在している。
【0045】
第2半導体領域FD2と読み出し配線15hとの間には、コンタクト電極15a、パッド電極15b、バンプ15c、パッド電極15d、コンタクト電極15e、中間電極15f、コンタクト電極15gが介在している。
【0046】
半導体基板10A上には、第1ゲート配線12g、第2ゲート配線14gが設けられており、これらはそれぞれ第1ゲート電極TX1、第2ゲート電極TX2に電気的に接続されている。
【0047】
第1ゲート電極TX1と第1ゲート配線12gとの間には、コンタクト電極12a、パッド電極12b、バンプ12c、パッド電極12d、コンタクト電極12e、中間電極12fが介在している。
【0048】
第2ゲート電極TX2と第2ゲート配線14gとの間には、コンタクト電極14a、パッド電極14b、バンプ14c、パッド電極14d、コンタクト電極14e、中間電極14fが介在している。
【0049】
半導体基板10A上には、リセット用配線18h、21hが形成されており、これらのリセット用配線18h、21hは、それぞれ、リセットドレイン領域RD1、リセットドレイン領域RD2に電気的に接続されている。
【0050】
リセットドレイン領域RD1とリセット用配線18hとの間には、コンタクト電極18a、パッド電極18b、バンプ18c、パッド電極18d、コンタクト電極18e、中間電極18f、コンタクト電極18gが介在している。
【0051】
リセットドレイン領域RD2とリセット用配線21hとの間には、コンタクト電極21a、パッド電極21b、バンプ21c、パッド電極21d、コンタクト電極21e、中間電極21f、コンタクト電極21gが介在している。
【0052】
半導体基板10A上には、リセット用ゲート配線19g、20gが形成されており、これらのリセット用ゲート配線19g、20gは、それぞれ、リセット用ゲート電極RG1、リセット用ゲート電極RG2に電気的に接続されている。
【0053】
リセット用ゲート電極RG1とリセット用ゲート配線19gとの間には、コンタクト電極19a、パッド電極19b、バンプ19c、パッド電極19d、コンタクト電極19e、中間電極19fが介在している。
【0054】
リセット用ゲート電極RG2とリセット用ゲート配線20gとの間には、コンタクト電極20a、パッド電極20b、バンプ20c、パッド電極20d、コンタクト電極20e、中間電極20fが介在している。
【0055】
各コンタクト電極は、図示の如く、絶縁層1F,10B,10Cに設けられたコンタクトホール内に埋設されている。
【0056】
接着領域ADは、樹脂からなる接着層AD1と、裏面入射型測距センサ1の各電極を配線基板10上の各種配線に接続するためのバンプ11c,12c,14c,15c,18c,19c,20c,21cを備えている。
【0057】
この測距装置では、裏面入射型の測距センサ1の表面1FTを、絶縁層1E及び各種電極及び接着領域ADを介して、配線基板10のマウント面M上に固定し、第1ゲート電極TX1、第2ゲート電極TX2、リセット用ゲート電極RG1,RG2、リセットドレイン領域RD1,RD2を、配線基板10上の配線にバンプを介して接続している。この測距装置では、裏面入射型の測距センサ1を配線基板10上にマウントすると、各配線を介して、上記信号をそれぞれの電極に与えることができ、装置が小型化されている。
【0058】
なお、配線基板10のマウント面M上には、黒色樹脂からなる光吸収層SHが形成されており、裏面入射型測距センサ1を透過した光の配線基板10への入射を抑制すると共に、配線基板10上の配線によって反射された光が、裏面入射型測距センサ1に逆戻りしてクロストークを引き起こすのを防止している。また、上述の各種電極又は配線はアルミニウム又はポリシリコンからなる。裏面入射型測距センサ1におけるSiからなる半導体基板の厚みt1は10〜100μmであり、好適には15〜50μmであり、本例では20μmである。
【0059】
この裏面入射型測距センサ1では、投光用の光の入射に応答して半導体深部で発生したキャリアを、光入射面1BKとは逆側のキャリア発生位置近傍に設けられたポテンシャル井戸に引き込み、高速で正確な測距を可能としている。
【0060】
半導体基板1A,1A’の光入射面(裏面)1BKから入射した対象物からのパルス光LDは、半導体基板1A,1A’の表面側に設けられた光感応領域1Gまで至る。パルス光の入射に伴って半導体基板1A,1A’内で発生したキャリアは、光感応領域1Gから、これに隣接する第1及び第2ゲート電極直TX1,TX2直下の領域に振り分けられる。すなわち、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に光源の駆動信号SPに同期した検出用ゲート信号SL,SRを、配線基板10を介して、交互に与えると、光感応領域1G及びその近傍の半導体領域内で発生したキャリアが、それぞれ第1及び第2ゲート電極TX1,TX2直下の領域に流れ、これらから第1及び第2半導体領域FD1,FD2に流れ込む。
【0061】
第1半導体領域FD1又は第2半導体領域FD2内に蓄積されるキャリアの電荷量Q1,Q2の全体電荷量(Q1+Q2)に対する比率は、駆動信号SPを光源に与えることによって出射された出射パルス光と、対象物Hによって出射パルス光が反射されることによって戻ってきた検出パルス光の位相差に対応する。
【0062】
ゲート電極TX1,TX2への駆動信号(検出用ゲート信号SL,SR)の周波数を増加させることで、この電荷の振り分け速度を増加させても、近赤外光の入射に応じて発生したキャリアの発生領域は、半導体基板1Aの光入射面1BKよりも、逆側の表面1FTに近いため、多くのキャリアは光感応領域1Gから第1及び第2半導体領域FD1,FD2に流れ込み、これらの領域から、配線基板10の配線11h、15hを介して、蓄積電荷Q1,Q2を読み出すことができる。また、近赤外よりも短い波長の光は、半導体基板1A,1A’の光入射面1BK側の領域において除去される傾向があるため、光入射面側に可視光カットフィルタを設けずとも、測距用の検出パルス光の検出精度を向上させることができる。
【0063】
フローティング・ディフュージョン領域としてのN型の第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、蓄積された電荷の読み出し後にリセットされる。すなわち、リセットドレイン領域RD1,RD2は、N型であって、配線基板10上のリセット用配線18h,21hを介して電源電位に接続されており、リセット用ゲート電極RG1,RG2に、リセットゲート用配線19g、20gを介して、正電位を与えると、第1及び第2半導体領域FD1,FD2と、リセットドレイン領域RD1,RD2がそれぞれ導通し、第1及び第2半導体領域FD1,FD2がリセットされる。
【0064】
なお、各半導体領域の厚さ/不純物濃度は以下の通りである。
・基板本体1A:厚さ10〜100μm/不純物濃度1×1012〜1019cm−3
・エピタキシャル層1A’:厚さ1〜5μm/不純物濃度1×1012〜1016cm−3
・半導体領域FD1,FD2:厚さ0.1〜0.4μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
・光感応領域1G:厚さ0.2〜3μm/不純物濃度1×1012〜1015cm−3
・リセットドレイン領域RD1,RD2:厚さ0.1〜0.4μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
【0065】
なお、半導体基板1A、1A’には、バックゲート又は貫通電極などを介してグランド電位などの基準電位が与えられる。
【0066】
図6は、バックゲート近傍の断面図である。
【0067】
すなわち、上述の裏面入射型測距センサ1の半導体基板1A,1A’の電位を基準電位に固定するため、本実施形態に係る測距センサは、P型のエピタキシャル層1A’内に、高濃度不純物を含有するP型のバックゲート半導体領域BGを備えている。信号読み出し回路の設けられた配線基板10の半導体基板10A上にはグランド配線16hが設けられている。バックゲート半導体領域BGと、グランド配線16hとの間には、コンタクト電極16a、パッド電極16b、バンプ16c、パッド電極16d、コンタクト電極16e、中間電極16f、コンタクト電極16gが介在しており、これらを電気的に接続している。
【0068】
図7は貫通電極近傍の断面図である。
【0069】
上述の裏面入射型測距センサ1の半導体基板1Aの電位を基準電位に固定するため、バックゲート電極の代わりに、基板内に埋設されたP型の拡散領域W4などのP型半導体層を有し、これに電気的に接続された貫通電極17xを備えることとしてもよい。配線基板10の半導体基板10A上にはグランド配線17hが設けられている。貫通電極17xと、グランド配線17hとの間には、コンタクト電極17a、パッド電極17b、バンプ17c、パッド電極17d、コンタクト電極17e、中間電極17f、コンタクト電極17gが介在しており、これらを電気的に接続している。
【0070】
図8は、実施形態に係るキャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【0071】
このポテンシャル図では、下向きがポテンシャルの正方向である。光入射時において、光感応領域1GのポテンシャルφPGは、無バイアス時における隣接するゲート電極直下の領域のポテンシャル(φTX2)を基準電位とすると、この基板電位よりも高く設定されている。すなわち、基板の一部領域のポテンシャルφTX2は、P型の半導体からなり、かかる領域には負にイオン化したアクセプターが存在している。光感応領域1Gの不純物濃度は、低濃度であるため、そのポテンシャルφPGはポテンシャルφTX2よりも高くなり、この領域のポテンシャル図は図面の下向きに凹んだ形状となる。
【0072】
N型の不純物がドープされた第1及び第2半導体領域FD1,FD2では、N型の不純物が添加されているため、正方向にポテンシャルが凹んでおり、ゲート電極TX1に高電位を与えると、光感応領域1GのポテンシャルφPGは一方の半導体領域FD1の方向のみに傾斜し易くなる。
【0073】
なお、同図には、ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1、ゲート電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2、半導体領域FD1のポテンシャルφFD1、半導体領域FD2のポテンシャルφFD2、リセットドレインRD1のポテンシャルφRD1、リセットドレインRD2のポテンシャルφRD2、リセット用ゲート電極RG1の直下の領域のポテンシャルφRG1、リセット用ゲート電極RG2の直下の領域のポテンシャルφRG2が示されている。
【0074】
検出用ゲート信号SLの高電位が、ゲート電極TX1に入力されると、光感応領域1Gの近傍で発生したキャリア(電子e)は、ポテンシャル勾配にしたがって、ゲート電極TX1の直下の領域を介して、第1半導体領域FD1のポテンシャル井戸内に蓄積され、このポテンシャル井戸内には電荷量Q1が蓄積されることとなる。
【0075】
図9はキャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【0076】
光入射時において、光感応領域1GのポテンシャルφPGは、隣接するゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1よりも若干高くなる。
【0077】
検出用ゲート信号SLに続いて、検出用ゲート信号SRの高電位が、ゲート電極TX2に入力されると、光感応領域1G内内で発生したキャリア(電子e)は、ポテンシャル勾配にしたがって、ゲート電極TX2の直下の領域を介して、第2半導体領域FD2のポテンシャル井戸内に蓄積され、このポテンシャル井戸内には電荷量Q2が蓄積されることとなる。
【0078】
上述のように、各ポテンシャル井戸に蓄積された電荷Q1,Q2は、配線基板10に設けられた読み出し配線11h、15h(図5参照)を介して外部に読み出される。
【0079】
また、ゲート電極TX1,TX2を金属とするか、又はポリシリコンとしてその光入射面側に金属膜を形成することとすると、この金属によって半導体基板を一度透過した光が反射されるため、光の利用効率を上げることができる。
【0080】
また、半導体基板の光入射面側に可視帯域カットフィルタを蒸着してもよい。また、上述の測距センサは光源を含めてモジュール化することもできる。
【0081】
図10及び図11は、第1比較例に係る測距センサの基板表面近傍のポテンシャル図であり、それぞれゲート電極TX1,TX2に高電位を与えたときのキャリア転送の様子を示している。
【0082】
第1比較例の測距センサは、図5に示した測距センサにおいて、ゲート電極TX1,TX2間に、図19に示すように、フォトゲート電極PGを配置し、このフォトゲート電極に若干の高電位を印加して、電荷振り分けを行う構成である。なお、第1比較例に係る測距センサは、光感応領域1Gを備えていない。
【0083】
第1比較例の場合、フォトゲート直下の領域のポテンシャルφPGの平坦性が高くなり、キャリア(電子e)が、左右のポテンシャル井戸に流れ込む量が、実施形態に係る構造のものよりも少なくなる。すなわち、上記実施形態に係る測距センサでは、第1比較例に係る測距センサよりも多くの比率のキャリアを、各ポテンシャル井戸に転送することが見込まれる。
【0084】
図12は、上記実施形態に係る測距センサの半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図であり、このポテンシャル分布はシミュレーションによって計算したものである。
【0085】
受光エリアに示される領域に光感応領域1Gが形成され、その中心位置から6μmほど離れた2箇所の位置に半導体領域FD1,FD2が位置し、半導体領域FD2,FD1と光感応領域1Gとの間にゲート電極TX1,TX2が位置している。同図はゲート電極TX2に高電位を印加した場合のポテンシャル分布を示しているが、受光エリア内におけるポテンシャルは、一方向のみに傾斜しており、基板内部で発生したキャリアが効率的にポテンシャル井戸へ流れ込むようになっている。
【0086】
図13は、第2比較例に係る半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図であり、このポテンシャル分布はシミュレーションによって計算したものである。
【0087】
第2比較例の測距センサは、第1比較例のようなフォトゲート電極は設けず、且つ、低不純物濃度の光感応領域1Gを備えないこととしたものであり、他の構造は第1比較例と同一である。同図はゲート電極TX2に高電位を印加した場合のポテンシャル分布を示しているが、受光エリア内におけるポテンシャルは、0μm位置(ゲート電極間の中心位置)のポテンシャルが低く、凸形状を有している。したがって、基板内部で発生したキャリアの一部、すなわち、位置0μmから負側の領域で発生したキャリアが、本来の意図する右側のポテンシャル井戸とは逆側に流れ込んでしまう。
【0088】
かかる点で、上記実施形態に係る測距センサは比較例2に係る測距センサよりも優れている。
【0089】
図14は、上述の実施形態に係る測距センサをゲート電極側からみた測距センサの平面図である。なお、絶縁層は省略して示す。
【0090】
この測距センサでは、光感応領域1Gに隣接してゲート電極TX1,TX2が配置されている。ゲート電極TX1,TX2と、リセット用ゲート電極RG1,RG2との間には、それぞれフローティング・ディフュージョン領域としての半導体領域FD1,FD2が位置している。半導体領域FD1,FD2の外側には、リセットドレイン領域RD1,RD2が位置している。
【0091】
半導体領域FD1上には、複数の箇所で半導体領域FD1に接触する電極11aが設けられており、半導体領域FD2上には、複数の箇所で半導体領域FD2に接触する電極15aが設けられている。また、リセットドレイン領域RD1上には、複数の箇所でリセットドレイン領域RD1に接触する電極18aが設けられており、リセットドレイン領域RD2上には、複数の箇所でリセットドレイン領域RD2に接触する電極21aが設けられている。
【0092】
図15は、キャリアの読み出し回路を示す回路図である。
【0093】
上述の裏面入射型測距センサでは、測距センサはバンプを介して配線基板にマウントしている。この場合、画素P(m,n)に接続されるキャリア読み出し用のトランジスタは、配線基板側に設けられており、測距センサ単体内に含まれる素子数が低減されている。なお、後述のように、測距センサを表面入射型とし、同一半導体基板上にキャリア読み出し用のトランジスタを配置することも可能であるが、この場合には、測距センサの半導体基板内にトランジスタを形成することになるので、単一の画素(P’(m,n)として点線で示す)内に含まれる素子数が多くなる。換言すれば、裏面入射型測距センサの方が、表面入射型測距センサよりも、画素面積が同一であれば、その光感応領域の面積を大きくすることができる。
【0094】
なお、同図において、ゲート電極TX1,TX2,RG1、RG2は、電界効果トランジスタのゲート電極を構成するものであり、説明の簡略化のため、これらの電界効果トランジスタは、対応するゲート電極(TX1,TX2,RG1、RG2)と同一符号を用いて示すこととする。
【0095】
光感応領域1Gにおいて発生したキャリアは、ゲート電極TX1に高電位が印加されている場合には、電界効果トランジスタ(TX1)はONしており(電界効果トランジスタ(TX2)はOFF)、この電界効果トランジスタ(TX1)を介して第1半導体領域FD1によって構成されるポテンシャル井戸に流れ込む。
【0096】
第1半導体領域FD1に蓄積されたキャリア(電荷)は、電界効果トランジスタQFD1のゲート電極(読み出し配線11h:図5参照)に入力される。電界効果トランジスタQFD1のゲート電極(読み出し配線11h)に入力された電位に応じて、電源電位V+と選択トランジスタSEL1のソースが接続され、選択トランジスタSEL1のゲート電極に読み出し電位が与えられると(選択信号SSELがハイレベル)、垂直読み出し配線LLを介して、サンプルホールド回路S/H(1)に、第1半導体領域FD1に蓄積されたキャリアの電荷量に応じた電荷がホールドされる。サンプルホールド回路S/H(1)に蓄積された電荷は、水平シフトレジスタからの水平読み出し信号がスイッチSW1に入力されることにより、水平読み出しラインH1に出力される。
【0097】
電荷の読み出しが終了すると、リセットゲート電極RG1に高電位が与えられ(リセット信号SRESETがハイレベル)、電界効果トランジスタ(RG1)がONし、電源電位V++に接続されたリセットドレイン領域RD1と第1半導体領域FD1が接続され、第1半導体領域FD1がリセットされる。なお、第1半導体領域FD1内に電子が蓄積されると、負電荷の増加に伴ってその電位が低下する。
【0098】
なお、サンプルホールド回路S/H(1)が、選択信号がハイレベルの場合だけでなく、リセット信号がハイレベルの場合にも、選択トランジスタSEL1のドレインからの電荷をサンプリングすると、リセット時の第1半導体領域FD1の電位もホールドできる。すなわち、リセット時の第1半導体領域FD1の電位と、電荷蓄積後の第1半導体領域FD1の電位の双方をサンプルホールド回路S/H(1)においてホールドすることで、これらの電位の差分を第1半導体領域FD1に蓄積された電荷量として検出し、その差分を蓄積電荷量Q1として、スイッチSW1を介して水平読み出しラインH1に出力することができる。
【0099】
光感応領域1Gにおいて発生したキャリアは、ゲート電極TX2に高電位が印加されている場合には、電界効果トランジスタ(TX2)はONしており(電界効果トランジスタ(TX1)はOFF)、この電界効果トランジスタ(TX2)を介して第2半導体領域FD2によって構成されるポテンシャル井戸に流れ込む。
【0100】
第2半導体領域FD2に蓄積されたキャリア(電荷)は、電界効果トランジスタQFD2のゲート電極(読み出し配線15h:図5参照)に入力される。電界効果トランジスタQFD2のゲート電極(読み出し配線15h)に入力された電位に応じて、電源電位V+と選択トランジスタSEL2のソースが接続され、選択トランジスタSEL2のゲート電極に読み出し電位が与えられると(選択信号SSELがハイレベル)、垂直読み出し配線RLを介して、サンプルホールド回路S/H(2)に、第2半導体領域FD2に蓄積されたキャリアの電荷量に応じた電荷がホールドされる。サンプルホールド回路S/H(2)に蓄積された電荷は、水平シフトレジスタからの水平読み出し信号がスイッチSW2に入力されることにより、水平読み出しラインH2に出力される。
【0101】
電荷の読み出しが終了すると、リセットゲート電極RG2に高電位が与えられ(リセット信号SRESETがハイレベル)、電界効果トランジスタ(RG2)がONし、電源電位V++に接続されたリセットドレイン領域RD2と第2半導体領域FD2が接続され、第2半導体領域FD2がリセットされる。なお、第2半導体領域FD2内に電子が蓄積されると、負電荷の増加に伴ってその電位が低下する。
【0102】
なお、サンプルホールド回路S/H(2)が、選択信号がハイレベルの場合だけでなく、リセット信号がハイレベルの場合にも、選択トランジスタSEL2のドレインからの電荷をサンプリングすると、リセット時の第2半導体領域FD2の電位もホールドできる。すなわち、リセット時の第2半導体領域FD2の電位と、電荷蓄積後の第2半導体領域FD2の電位の双方をサンプルホールド回路S/H(2)においてホールドすることで、これらの電位の差分を第1半導体領域FD2に蓄積された電荷量として検出し、その差分を蓄積電荷量Q2として、スイッチSW2を介して水平読み出しラインH2に出力することができる。
【0103】
水平読み出しラインH1には電荷量Q1が、水平読み出しラインH2には電荷量Q2が入力され、外部に出力される。
【0104】
図16は、電荷読み出しのタイミングチャートである。
【0105】
図16(a)はパルス駆動信号SP、図16(b)は検出用ゲート信号SL、図16(c)は検出用ゲート信号SR、図16(d)はリセット信号SRESET、図16(e)はi行目の選択トランジスタSEL1(SEL2)のゲート電極に入力される選択信号SSEL(i)、図16(f)はi+1行目の選択トランジスタSEL1(SEL2)のゲート電極に入力される選択信号SSEL(i+1)、図16(g)は、フローティング・ディフュージョン領域(第1半導体領域FD1又は第2半導体領域FD2)のポテンシャルφFD(φFD1,φFD2を代表して示す)を示している。
【0106】
選択信号SSEL(i)がハイレベルとされることでi行目の画素行の各半導体領域に蓄積された電荷の読み出しが行われ(時刻t1〜t3)、全ての画素行のリセット信号SRESETがハイレベルとなる(時刻t1〜t2)ことで、上記リセットが行われ、フローティング・ディフュージョン領域のポテンシャルφFDが高くなった後、続いて時刻t3以降からパルス駆動信号SPが光源に与えられ、これに同期した検出用ゲート信号SLと、これから半周期ずれた検出用ゲート信号SRが各ゲート電極TX1,TX2に、1検出サイクル期間TFの間、与えられる。
【0107】
フローティング・ディフュージョン領域への電子の蓄積に伴って、そのポテンシャルφFDは低下する。時刻t4〜t7の期間において、対象となる画素行の選択信号SSEL(i+1)をハイレベルとし、時刻t5〜t6の期間においてリセット信号SRESETをハイレベルとし、上記リセットを行う。選択読み出し開始時刻t4とリセット開始時刻t5との間に、信号サンプリング時刻t(SAMPLE)が設定されており、上記の如く、フローティング・ディフュージョン領域に蓄積された電荷量に応じた値がサンプリングされる。また、リセット終了時刻t6と選択読み出し終了時刻t7との間に、リセット信号サンプリング時刻t(RESET)が設定されており、上記の如く、リセット時のフローティング・ディフュージョン領域の電位に応じた値がサンプリングされる。以後、この動作を繰り返す。
【0108】
次に、上記構造の表面入射型の測距センサへの適用例について説明する。なお、回路構造は、裏面入射型測距センサにも適用することができる。
【0109】
図17は、表面入射型の測距センサ1の平面図である。
【0110】
測距センサ1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1Bを有する半導体基板1Aを備えている。なお、各画素P(m,n)は、図15に示した画素P’(m,n)と同一の回路構造を有している。各画素P(m,n)からは、上述の距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力される。各画素P(m,n)は微小測距センサとして対象物Hまでの距離に応じた信号d’(m,n)を出力するので、対象物Hからの反射光を、撮像領域1Bに結像すれば、対象物H上の各点までの距離情報の集合体としての対象物の距離画像を得ることができる。
【0111】
半導体基板1A上には、図15に示したサンプルホールド回路S/Hを各画素列毎に有してなるサンプルホールド回路群SHGを備えており、各サンプルホールド回路S/Hは図15に示したスイッチSW1,SW2を各画素列ごとに有する読み出しスイッチ群RSを介して、水平読み出しラインH1,H2に接続されている。水平読み出しラインH1,H2はアンプAPに入力されている。読み出しスイッチ群RSの各スイッチは、半導体基板1A上(又はその近傍)に形成された水平シフトレジスタHSからの水平読み出し信号によってON/OFFする。
【0112】
半導体基板1A上(又はその近傍)には、垂直シフトレジスタVSが形成されており、上述の選択信号SSEL(i),SSEL(i+1)・・・を各画素行毎に、各画素行のトランジスタSEL1(SEL2)(図15参照)のゲート電極に順次与える。なお、上述のリセット信号も垂直シフトレジスタVSから与えられる。
【0113】
水平シフトレジスタHS及び垂直シフトレジスタVSには、タイミング発生回路TGからの基準クロック信号が入力されており、水平シフトレジスタHS及び垂直シフトレジスタVSは、基準クロック信号に基づき、水平読み出し信号、選択信号、及びリセット信号を生成している。
【0114】
図18は、表面入射型の測距センサ内の1画素の断面図である。
【0115】
光感応領域1Gの上方が開口した遮光膜SHLが光入射面側に配置されている。この構造は、図5に示した裏面入射型の測距センサ1の構造と比較すると、半導体基板1A、1A’の厚さが裏面入射型測距センサよりも厚い点を除いて、同一である。半導体基板1A、1A’の厚さは200μm以上であり、図5に示した基板裏面側の反射防止膜1Dは省略されている。
【0116】
すなわち、この測距センサ1も、半導体基板1A,1A’の表面上に設定された光感応領域1Gと、この表面上において光感応領域1Gに隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極TX1,TX2と、光感応領域1Gから第1及び第2ゲート電極TX1,TX2直下の領域に流れ込むキャリアをそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域FD1,FD2とを備え、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の導電型(N型)と光感応領域1Gの導電型(P型)とは逆であって、半導体基板1A,1A’と光感応領域1Gの導電型(P型)は同一であり、且つ、光感応領域1Gの不純物濃度は、半導体基板1A,1A’の不純物濃度よりも低く設定されている。
【0117】
図19は、第1比較例に係る測距センサ内の1画素の断面図である。
【0118】
第1比較例の測距センサは、ゲート電極TX1,TX2間に、フォトゲート電極PGを配置し、このフォトゲート電極PGに若干の高電位を印加して、電荷振り分けを行う構成である。また、第1比較例に係る測距センサは、光感応領域1Gを備えていない。
【0119】
上述のように、第1比較例の測距センサでは、フォトゲート電極PGの直下の半導体領域のポテンシャルφPGの平坦性が高くなり、キャリア(電子e)が、左右のポテンシャル井戸に流れ込む量が、実施形態に係る構造のものよりも少なくなる。すなわち、上記実施形態に係る測距センサでは、第1比較例に係る測距センサよりも多くの比率のキャリアを、各ポテンシャル井戸に転送することが見込まれる。
【0120】
なお、上述の光感応領域1Gは測距センサ当り1つであってもよく、光感応領域1Gを含む微小測距センサを画素として1次元又は2次元状に複数配列し、1次元又は2次元の距離画像を得ることができる測距センサとしてもよい。なお、光感応領域1Gの上方のみが開口した遮光膜SHLを裏面入射型測距センサ1の光入射面側に設けることも可能であり、これにより半導体領域FD1,FD2への斜め入射によるクロストークを低減することもできる。
【0121】
以上、説明したように、上述の測距センサは、光源から投射された繰り返しパルス光が測定対象物により反射した戻り光の遅れ時間に依存した信号を取り出すことにより距離測定を行うセンサにおいて、第1の導電型を有する半導体基板1A,1A’上に設けられる絶縁層1Eと、絶縁層1E上に所定の間隔で配置された2つのゲート電極TX1,TX2と、ゲート電極TX1,TX2のそれぞれに対して、その端部の下層に設けられたフローティング・ディフュージョン領域FD1,FD2とからなり、2つのゲート電極TX1,TX2の直下の半導体領域及び該2つのゲート電極TX1,TX2の間の半導体領域を半導体基板と同一の導電型とし、少なくともゲート電極TX1,TX2の間に位置する光感応領域1Gは、半導体基板1A、1A’よりも低濃度の不純物拡散層からなる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】測距装置の構成を示す説明図である。
【図2】測距センサ1の平面図である。
【図3】図2に示した測距センサのIII−III矢印断面図である。
【図4】変形例に係る測距センサの断面図である。
【図5】図3又は図4に示した測距センサの領域Vの拡大図である。
【図6】バックゲート近傍の断面図である。
【図7】貫通電極近傍の断面図である。
【図8】実施形態に係るキャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図9】キャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図10】第1比較例に係る測距センサの基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図11】第1比較例に係る測距センサの基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図12】実施形態に係る測距センサの半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図である。
【図13】第2比較例に係る半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図である。
【図14】上述の実施形態に係る測距センサをゲート電極側からみた測距センサの平面図である。
【図15】キャリアの読み出し回路を示す回路図である。
【図16】電荷読み出しのタイミングチャートである。
【図17】表面入射型の測距センサ1の平面図である。
【図18】表面入射型の測距センサ内の1画素の断面図である。
【図19】第1比較例に係る測距センサ内の1画素の断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1A・・・半導体基板、1G・・・光感応領域、TX1,TX2・・・ゲート電極、FD1,FD2・・・半導体領域(フローティング・ディフュージョン領域)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距センサ及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクティブ型の光測距センサは、LED(Light Emitting Diode)などの投光用の光源から対象物に光を照射し、対象物における反射光を光検出素子で検出することで、対象物までの距離に応じた信号を出力するものとして知られている。PSD(Position Sensitive Detector)などは、対象物までの距離を簡易に測定することができる光三角測量型の光測距センサとして知られているが、近年、より精密な距離測定を行うため、光TOF(Time−Of−Flight)型の光測距センサの開発が期待されている。
【0003】
また、距離情報と画像情報を同時に、同一チップで取得できるイメージセンサが車載用、工場の自動製造システム用などにおいて求められている。車両前方にイメージセンサを設置すれば、前方車両の検知・認識、歩行者などの検知・認識に使用することが期待される。画像情報とは別に、単一の距離情報又は複数の距離情報からなる距離画像を取得するイメージセンサも期待されている。このような測距センサにはTOF法を用いることが好ましい。
【0004】
TOF法は、投光用の光源から、対象物に向けてパルス光を出射し、対象物で反射されたパルス光を光検出素子で検出することで、パルス光の出射タイミングと検出タイミングの時間差を測定している。この時間差(Δt)は、対象物までの距離dの2倍の距離(2×d)をパルス光が光速(=c)で飛行するのに要する時間であるため、d=(c×Δt)/2が成立する。時間差(Δt)は、光源からの出射パルスと検出パルスの位相差と言い換えることもできる。この位相差を検出すれば、対象物までの距離dを求めることができる。
【0005】
電荷振り分け方式のイメージセンサは、TOF法によって測距を行うための光検出素子として着目されている。すなわち、電荷振り分け方式のイメージセンサでは、例えば、検出パルスの入射に応じてイメージセンサ内において発生するパルス的に発生する電荷を、出射パルスのON期間の間に一方のポテンシャル井戸内に振り分け、OFF期間の間に他方のポテンシャル井戸に振り分ける。この場合、左右に振り分けられた電荷量の比率が、検出パルスと出射パルスの位相差、すなわち、対象物までの距離の2倍の距離をパルス光が光速で飛行するのに要する時間に比例することになる。なお、電荷の振り分け方法としては種々のものが考えられる。
【0006】
特許文献1に記載の測距センサは、半導体基板の表面にはPN接合ダイオードを有しており、PN接合ダイオードへの光の入射に応答して発生したキャリアとしての電子は、PN接合ダイオード内の拡散電位に従って、半導体基板の深い位置に進行しようとするが、左右のゲート電極に電圧が印加すると、ゲート電極に隣接するポテンシャル井戸内に交互に転送され、順次読み出される。また、PN接合ダイオードを用いないタイプの測距センサも提案されている。
【0007】
特許文献2は、このような測距センサを開示している。特許文献2に記載の測距センサは、半導体基板の表面上に隣接配置された第1ゲート電極及び第2ゲート電極を備えている。これらのゲート電極間に入射した光は半導体基板内で光電変換され、発生したキャリアは、第1ゲート電極のポテンシャルと、第2ゲート電極のポテンシャルを交互に高くすることにより、ゲート電極直下の領域に隣接した左右のポテンシャル井戸内に転送される。電荷の分離をより精密に行うため、特許文献2では、第1ゲート電極と、第2ゲート電極との間に、中央ゲート電極を配置している。
【0008】
この場合、中央ゲート電極直下の領域内に光が入射すると、光の入射に応答してキャリアが発生するが、中央ゲート電極には予め適当なバイアス電圧が与えられており、中央ゲート電極直下の領域のポテンシャルは、電位が与えられていない方のゲート電極直下の領域のポテンシャルよりも高くなるため、ポテンシャルが与えられている方のゲート電極直下の領域内に、キャリアが転送される確率が上昇する。
【特許文献1】特開2001−281336号公報
【特許文献2】特開2005−235893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、中央ゲート電極に与えられるポテンシャルは、横方向に平坦であり、したがって、中央ゲート電極直下の領域のポテンシャルの横方向傾斜は、平坦性が高いという傾向がある。この場合、中央ゲート電極直下の領域内で発生したキャリアが全て転送されるとは限らず、一部のキャリアが当該領域内に残留してしまう。したがって、特許文献2に記載の測距センサでは、キャリアの分配が精密に行われず、正確な測距が行えないという問題がある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、正確な測距を行うことが可能な測距センサ及び測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明に係る測距センサは、半導体基板の表面上に設定された光感応領域と、表面上において光感応領域に隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極と、光感応領域から第1及び第2ゲート電極直下の領域に流れ込むキャリアをそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域と、を備え、第1及び第2半導体領域の導電型と光感応領域の導電型とは逆であって、半導体基板と光感応領域の導電型は同一であり、且つ、光感応領域の不純物濃度は、半導体基板の不純物濃度よりも低く設定されていることを特徴とする。
【0012】
光感応領域の導電型は、第1及び第2半導体領域の導電型とは異なるので、光感応領域内でイオン化された不純物によるポテンシャルと、第1及び第2半導体領域内でイオン化された不純物によるポテンシャルの差は、これらの導電型が同一の場合よりも、大きくなる。このようにポテンシャルの差がある状態で、光感応領域の導電型を半導体基板と同一とし、その不純物濃度を低下させると、光感応領域におけるポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなり、光感応領域内で発生したキャリアが第1及び第2半導体領域内に確実に流れ込みやすくなり、光感応領域内におけるキャリアの残留を抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る測距装置は、上記測距センサと、光を出射する光源と、光源にパルス駆動信号を与える駆動回路と、第1及び第2ゲート電極に、パルス駆動信号に同期した検出用ゲート信号を与える制御回路と、第1及び第2半導体領域から読み出された信号から、対象物までの距離を演算する演算回路とを備えることを特徴とする。
【0014】
上述のように、第1及び第2半導体領域から読み出された信号、すなわち、第1又は第2半導体領域内に蓄積されるキャリアの電荷量の全体電荷量に対する比率は、上述の位相差、すなわち、対象物までの距離に対応する。
【0015】
演算回路は、この位相差に応じて対象物までの距離を演算する。位相差に対応する時間差をΔtとすると、距離dは、好適にはd=(c×Δt)/2で与えられるが、適当な補正演算をこれに加えて行ってもよい。なお、例えば、実際の距離と、演算された距離dとが異なる場合、後者を補正する係数βを予め求めておき、出荷後の製品では演算された距離dに係数βを乗じたものを最終的な演算距離dとしてもよい。また、外気温度を測定しておき、外気温度に応じて光速cが異なる場合には、光速cを補正する演算を行ってから、距離演算を行うこともできる。また、演算回路に入力された信号と、実際の距離との関係を予めメモリに記憶しておき、ルックアップテーブル方式によって、距離を演算してもよい。また、センサ構造によっても演算方法は変更することができ、従来から知られている演算方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の測距センサ及び測距装置によれば、正確な測距を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施の形態に係る測距センサ及び測距装置について説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は測距装置の構成を示す説明図である。
【0019】
本例の測距センサ1は、裏面入射型測距センサであるとするが、後述のように表面入射型測距センサとすることもできる。この測距装置は、測距センサ1と、近赤外光を出射する光源3と、光源3にパルス駆動信号SPを与える駆動回路4と、裏面入射型測距センサ1の各画素に含まれる第1及び第2ゲート電極(TX1,TX2:図5参照)に、パルス駆動信号SPに同期した検出用ゲート信号SL、SRを与える制御回路2と、測距センサ1の第1及び第2半導体領域(FD1、FD2:図5参照)から読み出された距離情報を示す信号d’(m,n)から、歩行者などの対象物Hまでの距離を演算する演算回路5を備えている。測距センサ1から対象物Hまでの水平方向Dの距離をdとする。
【0020】
制御回路2は、パルス駆動信号SPを駆動回路4のスイッチ4bに入力している。LED又はレーザダイオードからなる投光用の光源3は、スイッチ4bを介して電源4aに接続されている。したがって、スイッチ4bにパルス駆動信号SPが入力されると、パルス駆動信号SPと同じ波形の駆動電流が光源3に供給され、光源3からは測距用のプローブ光としてのパルス光LPが出力される。
【0021】
パルス光LPが対象物Hに照射されると、対象物Hによってパルス光が反射され、パルス光LDとして、裏面入射型測距センサ1に入射して、パルス検出信号SDを出力する。パルス検出信号SDはパルス光LDの入射に応じて基板内部で発生した総電荷量を示し、立ち上がりと立ち下がりのタイミングはパルス光LDに一致するが、距離dに応じた分だけパルス光LPに対して位相が遅延している。
【0022】
測距センサ1は、配線基板10上に固定されており、配線基板10上の配線を介して、距離情報を有する信号d’(m,n)が各画素から出力される。
【0023】
パルス駆動信号SPの波形は、周期Tの方形波であり、ハイレベルを「1」、ローレベルを「0」とすると、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・パルス駆動信号SP:
・V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
【0024】
検出用ゲート信号SL、SRの波形は、周期Tの方形波であり、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・検出用ゲート信号SL:
・V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
・検出用ゲート信号SR(=SLの反転):
・V(t)=0(但し、0<t<(T/2)の場合)
・V(t)=1(但し、(T/2)<t<Tの場合)
・V(t+T)=V(t)
【0025】
上記パルス信号SP,SL、SR、SDは、全てパルス周期2×TPを有していることとする。検出用ゲート信号SL及びパルス検出信号SDが共に「1」のときに測距センサ1内で発生する電荷量をQ1、検出用ゲート信号SR及びパルス検出信号SDが共に「1」のときに測距センサ1内で発生する電荷量をQ2とする。
【0026】
測距センサ1における一方の検出用ゲート信号SLとパルス検出信号SDの位相差は、他方の検出用ゲート信号SRとパルス検出信号SDが「1」の時の重複期間において、裏面入射型測距センサ1において発生した電荷量Q2に比例する。すなわち、電荷量Q2は、検出用ゲート信号SRとパルス検出信号SDの論理積が「1」である期間において発生した電荷量である。1画素内において発生する全電荷量をQ1+Q2とし、駆動信号SPの半周期のパルス幅をTPとすると、Δt=TP×Q2/(Q1+Q2)の期間だけ、駆動信号SPに対してパルス検出信号SDが遅れていることになる。1つのパルス光の飛行時間Δtは、対象物までの距離をd、光速をcとすると、Δt=2d/cで与えられるため、特定の画素からの距離情報を有する信号d’として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力されると、演算回路5は、入力された電荷量Q1,Q2と、予め判明している半周期パルス幅TPに基づいて、対象物Hまでの距離d=(c×Δt)/2=c×TP×Q2/(2×(Q1+Q2))を演算する。
【0027】
上述のように、電荷量Q1、Q2を分離して読み出せば、演算回路5は、距離dを演算することができる。なお、上述のパルスは繰り返して出射され、その積分値を各電荷量Q1,Q2として出力することができる。
【0028】
また、電荷量Q1,Q2の全体電荷量に対する比率は、上述の位相差、すなわち、対象物Hまでの距離に対応しており、演算回路5は、この位相差に応じて対象物Hまで距離を演算している。上述のように、位相差に対応する時間差をΔtとすると、距離dは、好適にはd=(c×Δt)/2で与えられるが、適当な補正演算をこれに加えて行ってもよい。例えば、実際の距離と、演算された距離dとが異なる場合、後者を補正する係数βを予め求めておき、出荷後の製品では演算された距離dに係数βを乗じたものを最終的な演算距離dとしてもよい。また、外気温度を測定しておき、外気温度に応じて光速cが異なる場合には、光速cを補正する演算を行ってから、距離演算を行うこともできる。また、演算回路に入力された信号と、実際の距離との関係を予めメモリに記憶しておき、ルックアップテーブル方式によって、距離を演算してもよい。また、センサ構造によっても演算方法は変更することができ、これには従来から知られている演算方法を用いることができる。
【0029】
図2は測距センサ1の平面図である。
【0030】
測距センサ1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1Bを有する半導体基板1Aを備えている。各画素P(m,n)からは、上述の距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力される。各画素P(m,n)は微小測距センサとして対象物Hまでの距離に応じた信号d’(m,n)を出力するので、対象物Hからの反射光を、撮像領域1Bに結像すれば、対象物H上の各点までの距離情報の集合体としての対象物の距離画像を得ることができる。
【0031】
図3は図2に示した測距センサのIII−III矢印断面図である。
【0032】
測距センサ1には、光入射面1BKからパルス光LDが入射する。裏面入射型測距センサ1の光入射面1BKとは逆側の表面1FTは、接着領域ADを介して配線基板10に接続されている。接着領域ADは、バンプなどの接着素子を含む領域であり、必要に応じて絶縁性の接着剤やフィラーを有している。裏面入射型測距センサ1を構成する半導体基板1Aは、補強用のフレーム部Fと、フレーム部Fよりも薄い薄板部TFを有しており、これらは一体化している。薄板部TFの厚さは、10μm以上100μm以下である。本例のフレーム部Fの厚さは200μm以上600μm以下である。
【0033】
図4は変形例に係る測距センサの断面図である。
【0034】
この測距センサは、図3に示したものと半導体基板1Aの形状のみが異なり、他の構成は同一である。半導体基板1Aは、ストライプ状又は格子状に形成された補強部AFを更に有しており、補強部AFの間に薄板部TFが形成され、これらは一体化している。本例の補強部AFの厚みは、フレーム部AFの厚さと同じであり、200μm以上600μm以下である。薄板部TFには前述の各画素が形成されている。薄板部TFはKOH等のアルカリ性エッチング液を用いたウエットエッチングによって形成する。エッチングによって形成された露出表面の粗さは1μm以下である。
【0035】
図5は、図3又は図4に示した測距センサの領域Vの拡大図である。
【0036】
裏面入射型測距センサ1は、光入射面1BK及び光入射面1BKとは逆側の表面1FTを有する半導体基板1A,1A’と、表面1FT上において絶縁層1Eを介して光感応領域1Gに隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極TX1,TX2と、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2直下の領域に流れ込むキャリア(電子e)をそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域FD1,FD2とを備えている。本例の半導体基板1A,1A’はSiからなり、絶縁層1EはSiO2からなる。絶縁層1Eを厚くすることで、フリンジング電界を形成することができる。フリンジング電界を形成するための好適な絶縁層1Eの厚みは、50〜5000nmである。
【0037】
なお、本例の半導体基板は、光入射面を有する基板本体1Aと、ゲート電極側のエピタキシャル層1A’とからなるが、エピタキシャル層は省略することも可能である。
【0038】
半導体基板1A,1A’は低不純物濃度のP型半導体基板からなり、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は高不純物濃度のN型半導体からなるフローティング・ディフュージョン領域であり、エピタキシャル層1A’内に形成されている。
【0039】
第1及び第2半導体領域FD1,FD2の一部は、半導体基板のエピタキシャル層1A’における各ゲート電極TX1,TX2の直下の領域に接触している。半導体基板1A,1A’の光入射面1BKの側には、反射防止膜1Dが設けられている。半導体基板1Aの露出面の表面粗さ、すなわち、表面凹凸の最大値と最小値の高さの差は1μm以下である。反射防止膜1Dの材料は、SiO2またはSiN(窒化シリコン)である。
【0040】
ゲート電極TX1,TX2間の領域の直下領域は、半導体基板1A,1A’と同一の導電型であるP型であって、半導体基板1A,1A’の不純物濃度よりも、低い不純物濃度を有する光感応領域1Gからなる。光感応領域1Gは、不純物濃度が半導体基板1Aよりも相対的に低い。
【0041】
光感応領域1Gの導電型は、第1半導体領域FD1及び第2半導体領域FD2の導電型とは異なるので、光感応領域1G内でイオン化された不純物によるポテンシャルφPGと、第1及び第2半導体領域FD1、FD2内でイオン化された不純物によるポテンシャルφFD1,φFD2の差は、これらの導電型が同一の場合よりも、大きくなる。このようにポテンシャルの差がある状態で、光感応領域1Gの導電型を半導体基板1A,1A’と同一のP型とし、その不純物濃度を低下させると、光感応領域1Gにおけるポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなる。なお、横方向とは、ゲート電極TX1,TX2を結ぶ直線の方向である。ポテンシャルの横方向分布が、一方向のみに傾斜しやすくなると、光感応領域1G内で発生したキャリアが第1半導体領域FD1及び第2半導体領域FD2内に確実に流れ込みやすくなり、光感応領域1G内におけるキャリアの残留を抑制することができる。
【0042】
光感応領域1Gは、エピタキシャル成長法を用いるか、或いは不純物拡散法又はイオン注入法を用いて形成する。
【0043】
配線基板10は、Siからなる半導体基板10Aと、半導体基板10A上に形成された読み出し配線11h、15hを備えており、これらの読み出し配線11h、15hは、それぞれ、第1半導体領域FD1、第2半導体領域FD2に電気的に接続されている。
【0044】
第1半導体領域FD1と読み出し配線11hとの間には、コンタクト電極11a、パッド電極11b、バンプ11c、パッド電極11d、コンタクト電極11e、中間電極11f、コンタクト電極11gが介在している。
【0045】
第2半導体領域FD2と読み出し配線15hとの間には、コンタクト電極15a、パッド電極15b、バンプ15c、パッド電極15d、コンタクト電極15e、中間電極15f、コンタクト電極15gが介在している。
【0046】
半導体基板10A上には、第1ゲート配線12g、第2ゲート配線14gが設けられており、これらはそれぞれ第1ゲート電極TX1、第2ゲート電極TX2に電気的に接続されている。
【0047】
第1ゲート電極TX1と第1ゲート配線12gとの間には、コンタクト電極12a、パッド電極12b、バンプ12c、パッド電極12d、コンタクト電極12e、中間電極12fが介在している。
【0048】
第2ゲート電極TX2と第2ゲート配線14gとの間には、コンタクト電極14a、パッド電極14b、バンプ14c、パッド電極14d、コンタクト電極14e、中間電極14fが介在している。
【0049】
半導体基板10A上には、リセット用配線18h、21hが形成されており、これらのリセット用配線18h、21hは、それぞれ、リセットドレイン領域RD1、リセットドレイン領域RD2に電気的に接続されている。
【0050】
リセットドレイン領域RD1とリセット用配線18hとの間には、コンタクト電極18a、パッド電極18b、バンプ18c、パッド電極18d、コンタクト電極18e、中間電極18f、コンタクト電極18gが介在している。
【0051】
リセットドレイン領域RD2とリセット用配線21hとの間には、コンタクト電極21a、パッド電極21b、バンプ21c、パッド電極21d、コンタクト電極21e、中間電極21f、コンタクト電極21gが介在している。
【0052】
半導体基板10A上には、リセット用ゲート配線19g、20gが形成されており、これらのリセット用ゲート配線19g、20gは、それぞれ、リセット用ゲート電極RG1、リセット用ゲート電極RG2に電気的に接続されている。
【0053】
リセット用ゲート電極RG1とリセット用ゲート配線19gとの間には、コンタクト電極19a、パッド電極19b、バンプ19c、パッド電極19d、コンタクト電極19e、中間電極19fが介在している。
【0054】
リセット用ゲート電極RG2とリセット用ゲート配線20gとの間には、コンタクト電極20a、パッド電極20b、バンプ20c、パッド電極20d、コンタクト電極20e、中間電極20fが介在している。
【0055】
各コンタクト電極は、図示の如く、絶縁層1F,10B,10Cに設けられたコンタクトホール内に埋設されている。
【0056】
接着領域ADは、樹脂からなる接着層AD1と、裏面入射型測距センサ1の各電極を配線基板10上の各種配線に接続するためのバンプ11c,12c,14c,15c,18c,19c,20c,21cを備えている。
【0057】
この測距装置では、裏面入射型の測距センサ1の表面1FTを、絶縁層1E及び各種電極及び接着領域ADを介して、配線基板10のマウント面M上に固定し、第1ゲート電極TX1、第2ゲート電極TX2、リセット用ゲート電極RG1,RG2、リセットドレイン領域RD1,RD2を、配線基板10上の配線にバンプを介して接続している。この測距装置では、裏面入射型の測距センサ1を配線基板10上にマウントすると、各配線を介して、上記信号をそれぞれの電極に与えることができ、装置が小型化されている。
【0058】
なお、配線基板10のマウント面M上には、黒色樹脂からなる光吸収層SHが形成されており、裏面入射型測距センサ1を透過した光の配線基板10への入射を抑制すると共に、配線基板10上の配線によって反射された光が、裏面入射型測距センサ1に逆戻りしてクロストークを引き起こすのを防止している。また、上述の各種電極又は配線はアルミニウム又はポリシリコンからなる。裏面入射型測距センサ1におけるSiからなる半導体基板の厚みt1は10〜100μmであり、好適には15〜50μmであり、本例では20μmである。
【0059】
この裏面入射型測距センサ1では、投光用の光の入射に応答して半導体深部で発生したキャリアを、光入射面1BKとは逆側のキャリア発生位置近傍に設けられたポテンシャル井戸に引き込み、高速で正確な測距を可能としている。
【0060】
半導体基板1A,1A’の光入射面(裏面)1BKから入射した対象物からのパルス光LDは、半導体基板1A,1A’の表面側に設けられた光感応領域1Gまで至る。パルス光の入射に伴って半導体基板1A,1A’内で発生したキャリアは、光感応領域1Gから、これに隣接する第1及び第2ゲート電極直TX1,TX2直下の領域に振り分けられる。すなわち、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に光源の駆動信号SPに同期した検出用ゲート信号SL,SRを、配線基板10を介して、交互に与えると、光感応領域1G及びその近傍の半導体領域内で発生したキャリアが、それぞれ第1及び第2ゲート電極TX1,TX2直下の領域に流れ、これらから第1及び第2半導体領域FD1,FD2に流れ込む。
【0061】
第1半導体領域FD1又は第2半導体領域FD2内に蓄積されるキャリアの電荷量Q1,Q2の全体電荷量(Q1+Q2)に対する比率は、駆動信号SPを光源に与えることによって出射された出射パルス光と、対象物Hによって出射パルス光が反射されることによって戻ってきた検出パルス光の位相差に対応する。
【0062】
ゲート電極TX1,TX2への駆動信号(検出用ゲート信号SL,SR)の周波数を増加させることで、この電荷の振り分け速度を増加させても、近赤外光の入射に応じて発生したキャリアの発生領域は、半導体基板1Aの光入射面1BKよりも、逆側の表面1FTに近いため、多くのキャリアは光感応領域1Gから第1及び第2半導体領域FD1,FD2に流れ込み、これらの領域から、配線基板10の配線11h、15hを介して、蓄積電荷Q1,Q2を読み出すことができる。また、近赤外よりも短い波長の光は、半導体基板1A,1A’の光入射面1BK側の領域において除去される傾向があるため、光入射面側に可視光カットフィルタを設けずとも、測距用の検出パルス光の検出精度を向上させることができる。
【0063】
フローティング・ディフュージョン領域としてのN型の第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、蓄積された電荷の読み出し後にリセットされる。すなわち、リセットドレイン領域RD1,RD2は、N型であって、配線基板10上のリセット用配線18h,21hを介して電源電位に接続されており、リセット用ゲート電極RG1,RG2に、リセットゲート用配線19g、20gを介して、正電位を与えると、第1及び第2半導体領域FD1,FD2と、リセットドレイン領域RD1,RD2がそれぞれ導通し、第1及び第2半導体領域FD1,FD2がリセットされる。
【0064】
なお、各半導体領域の厚さ/不純物濃度は以下の通りである。
・基板本体1A:厚さ10〜100μm/不純物濃度1×1012〜1019cm−3
・エピタキシャル層1A’:厚さ1〜5μm/不純物濃度1×1012〜1016cm−3
・半導体領域FD1,FD2:厚さ0.1〜0.4μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
・光感応領域1G:厚さ0.2〜3μm/不純物濃度1×1012〜1015cm−3
・リセットドレイン領域RD1,RD2:厚さ0.1〜0.4μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
【0065】
なお、半導体基板1A、1A’には、バックゲート又は貫通電極などを介してグランド電位などの基準電位が与えられる。
【0066】
図6は、バックゲート近傍の断面図である。
【0067】
すなわち、上述の裏面入射型測距センサ1の半導体基板1A,1A’の電位を基準電位に固定するため、本実施形態に係る測距センサは、P型のエピタキシャル層1A’内に、高濃度不純物を含有するP型のバックゲート半導体領域BGを備えている。信号読み出し回路の設けられた配線基板10の半導体基板10A上にはグランド配線16hが設けられている。バックゲート半導体領域BGと、グランド配線16hとの間には、コンタクト電極16a、パッド電極16b、バンプ16c、パッド電極16d、コンタクト電極16e、中間電極16f、コンタクト電極16gが介在しており、これらを電気的に接続している。
【0068】
図7は貫通電極近傍の断面図である。
【0069】
上述の裏面入射型測距センサ1の半導体基板1Aの電位を基準電位に固定するため、バックゲート電極の代わりに、基板内に埋設されたP型の拡散領域W4などのP型半導体層を有し、これに電気的に接続された貫通電極17xを備えることとしてもよい。配線基板10の半導体基板10A上にはグランド配線17hが設けられている。貫通電極17xと、グランド配線17hとの間には、コンタクト電極17a、パッド電極17b、バンプ17c、パッド電極17d、コンタクト電極17e、中間電極17f、コンタクト電極17gが介在しており、これらを電気的に接続している。
【0070】
図8は、実施形態に係るキャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【0071】
このポテンシャル図では、下向きがポテンシャルの正方向である。光入射時において、光感応領域1GのポテンシャルφPGは、無バイアス時における隣接するゲート電極直下の領域のポテンシャル(φTX2)を基準電位とすると、この基板電位よりも高く設定されている。すなわち、基板の一部領域のポテンシャルφTX2は、P型の半導体からなり、かかる領域には負にイオン化したアクセプターが存在している。光感応領域1Gの不純物濃度は、低濃度であるため、そのポテンシャルφPGはポテンシャルφTX2よりも高くなり、この領域のポテンシャル図は図面の下向きに凹んだ形状となる。
【0072】
N型の不純物がドープされた第1及び第2半導体領域FD1,FD2では、N型の不純物が添加されているため、正方向にポテンシャルが凹んでおり、ゲート電極TX1に高電位を与えると、光感応領域1GのポテンシャルφPGは一方の半導体領域FD1の方向のみに傾斜し易くなる。
【0073】
なお、同図には、ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1、ゲート電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2、半導体領域FD1のポテンシャルφFD1、半導体領域FD2のポテンシャルφFD2、リセットドレインRD1のポテンシャルφRD1、リセットドレインRD2のポテンシャルφRD2、リセット用ゲート電極RG1の直下の領域のポテンシャルφRG1、リセット用ゲート電極RG2の直下の領域のポテンシャルφRG2が示されている。
【0074】
検出用ゲート信号SLの高電位が、ゲート電極TX1に入力されると、光感応領域1Gの近傍で発生したキャリア(電子e)は、ポテンシャル勾配にしたがって、ゲート電極TX1の直下の領域を介して、第1半導体領域FD1のポテンシャル井戸内に蓄積され、このポテンシャル井戸内には電荷量Q1が蓄積されることとなる。
【0075】
図9はキャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【0076】
光入射時において、光感応領域1GのポテンシャルφPGは、隣接するゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1よりも若干高くなる。
【0077】
検出用ゲート信号SLに続いて、検出用ゲート信号SRの高電位が、ゲート電極TX2に入力されると、光感応領域1G内内で発生したキャリア(電子e)は、ポテンシャル勾配にしたがって、ゲート電極TX2の直下の領域を介して、第2半導体領域FD2のポテンシャル井戸内に蓄積され、このポテンシャル井戸内には電荷量Q2が蓄積されることとなる。
【0078】
上述のように、各ポテンシャル井戸に蓄積された電荷Q1,Q2は、配線基板10に設けられた読み出し配線11h、15h(図5参照)を介して外部に読み出される。
【0079】
また、ゲート電極TX1,TX2を金属とするか、又はポリシリコンとしてその光入射面側に金属膜を形成することとすると、この金属によって半導体基板を一度透過した光が反射されるため、光の利用効率を上げることができる。
【0080】
また、半導体基板の光入射面側に可視帯域カットフィルタを蒸着してもよい。また、上述の測距センサは光源を含めてモジュール化することもできる。
【0081】
図10及び図11は、第1比較例に係る測距センサの基板表面近傍のポテンシャル図であり、それぞれゲート電極TX1,TX2に高電位を与えたときのキャリア転送の様子を示している。
【0082】
第1比較例の測距センサは、図5に示した測距センサにおいて、ゲート電極TX1,TX2間に、図19に示すように、フォトゲート電極PGを配置し、このフォトゲート電極に若干の高電位を印加して、電荷振り分けを行う構成である。なお、第1比較例に係る測距センサは、光感応領域1Gを備えていない。
【0083】
第1比較例の場合、フォトゲート直下の領域のポテンシャルφPGの平坦性が高くなり、キャリア(電子e)が、左右のポテンシャル井戸に流れ込む量が、実施形態に係る構造のものよりも少なくなる。すなわち、上記実施形態に係る測距センサでは、第1比較例に係る測距センサよりも多くの比率のキャリアを、各ポテンシャル井戸に転送することが見込まれる。
【0084】
図12は、上記実施形態に係る測距センサの半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図であり、このポテンシャル分布はシミュレーションによって計算したものである。
【0085】
受光エリアに示される領域に光感応領域1Gが形成され、その中心位置から6μmほど離れた2箇所の位置に半導体領域FD1,FD2が位置し、半導体領域FD2,FD1と光感応領域1Gとの間にゲート電極TX1,TX2が位置している。同図はゲート電極TX2に高電位を印加した場合のポテンシャル分布を示しているが、受光エリア内におけるポテンシャルは、一方向のみに傾斜しており、基板内部で発生したキャリアが効率的にポテンシャル井戸へ流れ込むようになっている。
【0086】
図13は、第2比較例に係る半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図であり、このポテンシャル分布はシミュレーションによって計算したものである。
【0087】
第2比較例の測距センサは、第1比較例のようなフォトゲート電極は設けず、且つ、低不純物濃度の光感応領域1Gを備えないこととしたものであり、他の構造は第1比較例と同一である。同図はゲート電極TX2に高電位を印加した場合のポテンシャル分布を示しているが、受光エリア内におけるポテンシャルは、0μm位置(ゲート電極間の中心位置)のポテンシャルが低く、凸形状を有している。したがって、基板内部で発生したキャリアの一部、すなわち、位置0μmから負側の領域で発生したキャリアが、本来の意図する右側のポテンシャル井戸とは逆側に流れ込んでしまう。
【0088】
かかる点で、上記実施形態に係る測距センサは比較例2に係る測距センサよりも優れている。
【0089】
図14は、上述の実施形態に係る測距センサをゲート電極側からみた測距センサの平面図である。なお、絶縁層は省略して示す。
【0090】
この測距センサでは、光感応領域1Gに隣接してゲート電極TX1,TX2が配置されている。ゲート電極TX1,TX2と、リセット用ゲート電極RG1,RG2との間には、それぞれフローティング・ディフュージョン領域としての半導体領域FD1,FD2が位置している。半導体領域FD1,FD2の外側には、リセットドレイン領域RD1,RD2が位置している。
【0091】
半導体領域FD1上には、複数の箇所で半導体領域FD1に接触する電極11aが設けられており、半導体領域FD2上には、複数の箇所で半導体領域FD2に接触する電極15aが設けられている。また、リセットドレイン領域RD1上には、複数の箇所でリセットドレイン領域RD1に接触する電極18aが設けられており、リセットドレイン領域RD2上には、複数の箇所でリセットドレイン領域RD2に接触する電極21aが設けられている。
【0092】
図15は、キャリアの読み出し回路を示す回路図である。
【0093】
上述の裏面入射型測距センサでは、測距センサはバンプを介して配線基板にマウントしている。この場合、画素P(m,n)に接続されるキャリア読み出し用のトランジスタは、配線基板側に設けられており、測距センサ単体内に含まれる素子数が低減されている。なお、後述のように、測距センサを表面入射型とし、同一半導体基板上にキャリア読み出し用のトランジスタを配置することも可能であるが、この場合には、測距センサの半導体基板内にトランジスタを形成することになるので、単一の画素(P’(m,n)として点線で示す)内に含まれる素子数が多くなる。換言すれば、裏面入射型測距センサの方が、表面入射型測距センサよりも、画素面積が同一であれば、その光感応領域の面積を大きくすることができる。
【0094】
なお、同図において、ゲート電極TX1,TX2,RG1、RG2は、電界効果トランジスタのゲート電極を構成するものであり、説明の簡略化のため、これらの電界効果トランジスタは、対応するゲート電極(TX1,TX2,RG1、RG2)と同一符号を用いて示すこととする。
【0095】
光感応領域1Gにおいて発生したキャリアは、ゲート電極TX1に高電位が印加されている場合には、電界効果トランジスタ(TX1)はONしており(電界効果トランジスタ(TX2)はOFF)、この電界効果トランジスタ(TX1)を介して第1半導体領域FD1によって構成されるポテンシャル井戸に流れ込む。
【0096】
第1半導体領域FD1に蓄積されたキャリア(電荷)は、電界効果トランジスタQFD1のゲート電極(読み出し配線11h:図5参照)に入力される。電界効果トランジスタQFD1のゲート電極(読み出し配線11h)に入力された電位に応じて、電源電位V+と選択トランジスタSEL1のソースが接続され、選択トランジスタSEL1のゲート電極に読み出し電位が与えられると(選択信号SSELがハイレベル)、垂直読み出し配線LLを介して、サンプルホールド回路S/H(1)に、第1半導体領域FD1に蓄積されたキャリアの電荷量に応じた電荷がホールドされる。サンプルホールド回路S/H(1)に蓄積された電荷は、水平シフトレジスタからの水平読み出し信号がスイッチSW1に入力されることにより、水平読み出しラインH1に出力される。
【0097】
電荷の読み出しが終了すると、リセットゲート電極RG1に高電位が与えられ(リセット信号SRESETがハイレベル)、電界効果トランジスタ(RG1)がONし、電源電位V++に接続されたリセットドレイン領域RD1と第1半導体領域FD1が接続され、第1半導体領域FD1がリセットされる。なお、第1半導体領域FD1内に電子が蓄積されると、負電荷の増加に伴ってその電位が低下する。
【0098】
なお、サンプルホールド回路S/H(1)が、選択信号がハイレベルの場合だけでなく、リセット信号がハイレベルの場合にも、選択トランジスタSEL1のドレインからの電荷をサンプリングすると、リセット時の第1半導体領域FD1の電位もホールドできる。すなわち、リセット時の第1半導体領域FD1の電位と、電荷蓄積後の第1半導体領域FD1の電位の双方をサンプルホールド回路S/H(1)においてホールドすることで、これらの電位の差分を第1半導体領域FD1に蓄積された電荷量として検出し、その差分を蓄積電荷量Q1として、スイッチSW1を介して水平読み出しラインH1に出力することができる。
【0099】
光感応領域1Gにおいて発生したキャリアは、ゲート電極TX2に高電位が印加されている場合には、電界効果トランジスタ(TX2)はONしており(電界効果トランジスタ(TX1)はOFF)、この電界効果トランジスタ(TX2)を介して第2半導体領域FD2によって構成されるポテンシャル井戸に流れ込む。
【0100】
第2半導体領域FD2に蓄積されたキャリア(電荷)は、電界効果トランジスタQFD2のゲート電極(読み出し配線15h:図5参照)に入力される。電界効果トランジスタQFD2のゲート電極(読み出し配線15h)に入力された電位に応じて、電源電位V+と選択トランジスタSEL2のソースが接続され、選択トランジスタSEL2のゲート電極に読み出し電位が与えられると(選択信号SSELがハイレベル)、垂直読み出し配線RLを介して、サンプルホールド回路S/H(2)に、第2半導体領域FD2に蓄積されたキャリアの電荷量に応じた電荷がホールドされる。サンプルホールド回路S/H(2)に蓄積された電荷は、水平シフトレジスタからの水平読み出し信号がスイッチSW2に入力されることにより、水平読み出しラインH2に出力される。
【0101】
電荷の読み出しが終了すると、リセットゲート電極RG2に高電位が与えられ(リセット信号SRESETがハイレベル)、電界効果トランジスタ(RG2)がONし、電源電位V++に接続されたリセットドレイン領域RD2と第2半導体領域FD2が接続され、第2半導体領域FD2がリセットされる。なお、第2半導体領域FD2内に電子が蓄積されると、負電荷の増加に伴ってその電位が低下する。
【0102】
なお、サンプルホールド回路S/H(2)が、選択信号がハイレベルの場合だけでなく、リセット信号がハイレベルの場合にも、選択トランジスタSEL2のドレインからの電荷をサンプリングすると、リセット時の第2半導体領域FD2の電位もホールドできる。すなわち、リセット時の第2半導体領域FD2の電位と、電荷蓄積後の第2半導体領域FD2の電位の双方をサンプルホールド回路S/H(2)においてホールドすることで、これらの電位の差分を第1半導体領域FD2に蓄積された電荷量として検出し、その差分を蓄積電荷量Q2として、スイッチSW2を介して水平読み出しラインH2に出力することができる。
【0103】
水平読み出しラインH1には電荷量Q1が、水平読み出しラインH2には電荷量Q2が入力され、外部に出力される。
【0104】
図16は、電荷読み出しのタイミングチャートである。
【0105】
図16(a)はパルス駆動信号SP、図16(b)は検出用ゲート信号SL、図16(c)は検出用ゲート信号SR、図16(d)はリセット信号SRESET、図16(e)はi行目の選択トランジスタSEL1(SEL2)のゲート電極に入力される選択信号SSEL(i)、図16(f)はi+1行目の選択トランジスタSEL1(SEL2)のゲート電極に入力される選択信号SSEL(i+1)、図16(g)は、フローティング・ディフュージョン領域(第1半導体領域FD1又は第2半導体領域FD2)のポテンシャルφFD(φFD1,φFD2を代表して示す)を示している。
【0106】
選択信号SSEL(i)がハイレベルとされることでi行目の画素行の各半導体領域に蓄積された電荷の読み出しが行われ(時刻t1〜t3)、全ての画素行のリセット信号SRESETがハイレベルとなる(時刻t1〜t2)ことで、上記リセットが行われ、フローティング・ディフュージョン領域のポテンシャルφFDが高くなった後、続いて時刻t3以降からパルス駆動信号SPが光源に与えられ、これに同期した検出用ゲート信号SLと、これから半周期ずれた検出用ゲート信号SRが各ゲート電極TX1,TX2に、1検出サイクル期間TFの間、与えられる。
【0107】
フローティング・ディフュージョン領域への電子の蓄積に伴って、そのポテンシャルφFDは低下する。時刻t4〜t7の期間において、対象となる画素行の選択信号SSEL(i+1)をハイレベルとし、時刻t5〜t6の期間においてリセット信号SRESETをハイレベルとし、上記リセットを行う。選択読み出し開始時刻t4とリセット開始時刻t5との間に、信号サンプリング時刻t(SAMPLE)が設定されており、上記の如く、フローティング・ディフュージョン領域に蓄積された電荷量に応じた値がサンプリングされる。また、リセット終了時刻t6と選択読み出し終了時刻t7との間に、リセット信号サンプリング時刻t(RESET)が設定されており、上記の如く、リセット時のフローティング・ディフュージョン領域の電位に応じた値がサンプリングされる。以後、この動作を繰り返す。
【0108】
次に、上記構造の表面入射型の測距センサへの適用例について説明する。なお、回路構造は、裏面入射型測距センサにも適用することができる。
【0109】
図17は、表面入射型の測距センサ1の平面図である。
【0110】
測距センサ1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1Bを有する半導体基板1Aを備えている。なお、各画素P(m,n)は、図15に示した画素P’(m,n)と同一の回路構造を有している。各画素P(m,n)からは、上述の距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力される。各画素P(m,n)は微小測距センサとして対象物Hまでの距離に応じた信号d’(m,n)を出力するので、対象物Hからの反射光を、撮像領域1Bに結像すれば、対象物H上の各点までの距離情報の集合体としての対象物の距離画像を得ることができる。
【0111】
半導体基板1A上には、図15に示したサンプルホールド回路S/Hを各画素列毎に有してなるサンプルホールド回路群SHGを備えており、各サンプルホールド回路S/Hは図15に示したスイッチSW1,SW2を各画素列ごとに有する読み出しスイッチ群RSを介して、水平読み出しラインH1,H2に接続されている。水平読み出しラインH1,H2はアンプAPに入力されている。読み出しスイッチ群RSの各スイッチは、半導体基板1A上(又はその近傍)に形成された水平シフトレジスタHSからの水平読み出し信号によってON/OFFする。
【0112】
半導体基板1A上(又はその近傍)には、垂直シフトレジスタVSが形成されており、上述の選択信号SSEL(i),SSEL(i+1)・・・を各画素行毎に、各画素行のトランジスタSEL1(SEL2)(図15参照)のゲート電極に順次与える。なお、上述のリセット信号も垂直シフトレジスタVSから与えられる。
【0113】
水平シフトレジスタHS及び垂直シフトレジスタVSには、タイミング発生回路TGからの基準クロック信号が入力されており、水平シフトレジスタHS及び垂直シフトレジスタVSは、基準クロック信号に基づき、水平読み出し信号、選択信号、及びリセット信号を生成している。
【0114】
図18は、表面入射型の測距センサ内の1画素の断面図である。
【0115】
光感応領域1Gの上方が開口した遮光膜SHLが光入射面側に配置されている。この構造は、図5に示した裏面入射型の測距センサ1の構造と比較すると、半導体基板1A、1A’の厚さが裏面入射型測距センサよりも厚い点を除いて、同一である。半導体基板1A、1A’の厚さは200μm以上であり、図5に示した基板裏面側の反射防止膜1Dは省略されている。
【0116】
すなわち、この測距センサ1も、半導体基板1A,1A’の表面上に設定された光感応領域1Gと、この表面上において光感応領域1Gに隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極TX1,TX2と、光感応領域1Gから第1及び第2ゲート電極TX1,TX2直下の領域に流れ込むキャリアをそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域FD1,FD2とを備え、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の導電型(N型)と光感応領域1Gの導電型(P型)とは逆であって、半導体基板1A,1A’と光感応領域1Gの導電型(P型)は同一であり、且つ、光感応領域1Gの不純物濃度は、半導体基板1A,1A’の不純物濃度よりも低く設定されている。
【0117】
図19は、第1比較例に係る測距センサ内の1画素の断面図である。
【0118】
第1比較例の測距センサは、ゲート電極TX1,TX2間に、フォトゲート電極PGを配置し、このフォトゲート電極PGに若干の高電位を印加して、電荷振り分けを行う構成である。また、第1比較例に係る測距センサは、光感応領域1Gを備えていない。
【0119】
上述のように、第1比較例の測距センサでは、フォトゲート電極PGの直下の半導体領域のポテンシャルφPGの平坦性が高くなり、キャリア(電子e)が、左右のポテンシャル井戸に流れ込む量が、実施形態に係る構造のものよりも少なくなる。すなわち、上記実施形態に係る測距センサでは、第1比較例に係る測距センサよりも多くの比率のキャリアを、各ポテンシャル井戸に転送することが見込まれる。
【0120】
なお、上述の光感応領域1Gは測距センサ当り1つであってもよく、光感応領域1Gを含む微小測距センサを画素として1次元又は2次元状に複数配列し、1次元又は2次元の距離画像を得ることができる測距センサとしてもよい。なお、光感応領域1Gの上方のみが開口した遮光膜SHLを裏面入射型測距センサ1の光入射面側に設けることも可能であり、これにより半導体領域FD1,FD2への斜め入射によるクロストークを低減することもできる。
【0121】
以上、説明したように、上述の測距センサは、光源から投射された繰り返しパルス光が測定対象物により反射した戻り光の遅れ時間に依存した信号を取り出すことにより距離測定を行うセンサにおいて、第1の導電型を有する半導体基板1A,1A’上に設けられる絶縁層1Eと、絶縁層1E上に所定の間隔で配置された2つのゲート電極TX1,TX2と、ゲート電極TX1,TX2のそれぞれに対して、その端部の下層に設けられたフローティング・ディフュージョン領域FD1,FD2とからなり、2つのゲート電極TX1,TX2の直下の半導体領域及び該2つのゲート電極TX1,TX2の間の半導体領域を半導体基板と同一の導電型とし、少なくともゲート電極TX1,TX2の間に位置する光感応領域1Gは、半導体基板1A、1A’よりも低濃度の不純物拡散層からなる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】測距装置の構成を示す説明図である。
【図2】測距センサ1の平面図である。
【図3】図2に示した測距センサのIII−III矢印断面図である。
【図4】変形例に係る測距センサの断面図である。
【図5】図3又は図4に示した測距センサの領域Vの拡大図である。
【図6】バックゲート近傍の断面図である。
【図7】貫通電極近傍の断面図である。
【図8】実施形態に係るキャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図9】キャリア蓄積動作を説明するための基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図10】第1比較例に係る測距センサの基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図11】第1比較例に係る測距センサの基板表面近傍のポテンシャル図である。
【図12】実施形態に係る測距センサの半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図である。
【図13】第2比較例に係る半導体基板表面近傍の詳細なポテンシャル分布を示す図である。
【図14】上述の実施形態に係る測距センサをゲート電極側からみた測距センサの平面図である。
【図15】キャリアの読み出し回路を示す回路図である。
【図16】電荷読み出しのタイミングチャートである。
【図17】表面入射型の測距センサ1の平面図である。
【図18】表面入射型の測距センサ内の1画素の断面図である。
【図19】第1比較例に係る測距センサ内の1画素の断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1A・・・半導体基板、1G・・・光感応領域、TX1,TX2・・・ゲート電極、FD1,FD2・・・半導体領域(フローティング・ディフュージョン領域)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面上に設定された光感応領域と、
前記表面上において前記光感応領域に隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極と、
前記光感応領域から前記第1及び第2ゲート電極直下の領域に流れ込むキャリアをそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域と、
を備え、
前記第1及び第2半導体領域の導電型と前記光感応領域の導電型とは逆であって、
前記半導体基板と前記光感応領域の導電型は同一であり、且つ、
前記光感応領域の不純物濃度は、前記半導体基板の不純物濃度よりも低く設定されている、
ことを特徴とする測距センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の測距センサと、
光を出射する光源と、
前記光源にパルス駆動信号を与える駆動回路と、
前記第1及び第2ゲート電極に、前記パルス駆動信号に同期した検出用ゲート信号を与える制御回路と、
前記第1及び第2半導体領域から読み出された信号から、対象物までの距離を演算する演算回路と、
を備えることを特徴とする測距装置。
【請求項1】
半導体基板の表面上に設定された光感応領域と、
前記表面上において前記光感応領域に隣接して設けられた第1及び第2ゲート電極と、
前記光感応領域から前記第1及び第2ゲート電極直下の領域に流れ込むキャリアをそれぞれ読み出すための第1及び第2半導体領域と、
を備え、
前記第1及び第2半導体領域の導電型と前記光感応領域の導電型とは逆であって、
前記半導体基板と前記光感応領域の導電型は同一であり、且つ、
前記光感応領域の不純物濃度は、前記半導体基板の不純物濃度よりも低く設定されている、
ことを特徴とする測距センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の測距センサと、
光を出射する光源と、
前記光源にパルス駆動信号を与える駆動回路と、
前記第1及び第2ゲート電極に、前記パルス駆動信号に同期した検出用ゲート信号を与える制御回路と、
前記第1及び第2半導体領域から読み出された信号から、対象物までの距離を演算する演算回路と、
を備えることを特徴とする測距装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−47658(P2009−47658A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216512(P2007−216512)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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