説明

港湾構造物計測装置

【課題】水中部分と水上部分、及び両者の境界部分も連続的に測定できる港湾構造物計測装置を提供する。
【解決手段】陸上に設置されたGPS基準局11と、測定機器を搭載した曳航体12と、曳航体を測定水域に沿って曳航する曳航船13とから成り、GPS基準局は、衛星S〜Sからの電波を受信するGPS受信機14とデータリンク装置15を備え、曳航体は、GPSアンテナと、モーションセンサーと、マルチビーム測探機ソナーヘッドと、レーザースキャナーとを搭載し、曳航船は、マルチビーム測探機プロセッサーと、データリンク装置との間で位置情報を授受するインターフェイスボックスと、インターフェイスボックス及びマルチビーム測探機プロセッサーと接続されたデータ収録装置と、レーザースキャナー及びインターフェイスボックスと接続された第2データ収録装置とを備え、水中部分と水上部分と共に、境界部分も連続的に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、港湾構造物の水中部分と水上(陸上)部分の三次元形状を連続して同時に計測することのできる港湾構造物計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上の形状である道路面等の路面形状を測定するものとして、例えば、特開平9−101129号公報に記載の路面計測装置が提案されている。この発明は、路面上にスリット光を照射し、路面からの反射散乱光を撮像してスリット中心位置から路面のわだちを算出するものである。
また、特開平10−185569号公報に提案された発明は、水中構成物の三次元的な位置を計測するために、GPS衛星を利用するものである。
更に、図10に示すように従来は、計測船1に水上計測用のスキャナー2と水中計測用のスキャナー3を搭載するとともに、GPS衛星S1,S2,S3,S4を利用し、また、陸上にGPS基準局4を設置して水中部分の構造物及び水上部分の構造物を計測するものが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−101129号公報
【特許文献2】特開平10−185569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の特許文献1に開示された路面計測装置にあっては、陸上の路面形状を計測するものであり、水中構造物に利用することはできなかった。また、特許文献2に開示された水中構造物の計測装置にあっては、水中構造物の計測するものであり、陸上構造を連続的に計測できなかった。更に、図10に示す構造物計測装置にあっては、水中部分の構造物のみ、或いは水上部分の構造物のみの測定ができるものの、両者を組み合わせた測定をすることができなかった。特に、水中部分と水上部分の境界部分を連続的に測定することが困難であった。
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、水中部分と水上部分を同時に測定できると共に、両者の境界部分を連続的に測定することのできる港湾構造物計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は陸上に設置されたGPS基準局と、測定機器を搭載した曳航体と、前記曳航体を測定水域に沿って曳航する曳航船とから成り、前記GPS基準局は、衛星からの電波を受信するGPS受信機とデータリンク装置を備え、前記曳航体は、衛星からの電波を受信する少なくとも2個のGPSアンテナと、モーションセンサーと、マルチビーム測探機ソナーヘッドと、レーザースキャナーとを搭載し、前記曳航船は、前記曳航体に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッドに接続されたマルチビーム測探機プロセッサーと、このマルチビーム測探機プロセッサーに接続されたモニターと、前記曳航体に搭載されたGPSアンテナ、モーションセンサーと接続されるとともに前記データリンク装置との間で位置情報を授受するインターフェイスボックスと、このインターフェイスボックスに接続された音速度センサーと、前記インターフェイスボックス及びマルチビーム測探機プロセッサーと接続されたデータ収録装置と、前記レーザースキャナー及びインターフェイスボックスと接続された第2データ収録装置とを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、本発明において、前記曳航体に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッドは、曳航体の吃水線より下に設けられ、水面下の計測情報を得ることを特徴とするものである。また、本発明において、前記マルチビーム測探機ソナーヘッドは、曳航体の船底から突出するとともに、曳航体の水平面に対して所定角度傾いていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明において、前記曳航体に搭載されたモーションセンサーは、曳航体自身のピッチング、ローリング、ヨーイング、ヒービング揺れを検出し、マルチビーム測探機ソナーヘッドの揺れに起因する誤差を補正することを特徴とするものである。また、本発明において、前記曳航体は、曳航時の揺れを低減させるスタビライザーを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は前記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0009】
請求項1に記載の発明では、陸上に設置されたGPS基準局と、測定機器を搭載した曳航体と、前記曳航体を測定水域に沿って曳航する曳航船とから成り、前記GPS基準局は、衛星からの電波を受信するGPS受信機とデータリンク装置を備え、前記曳航体は、衛星からの電波を受信する少なくとも2個のGPSアンテナと、モーションセンサーと、マルチビーム測探機ソナーヘッドと、レーザースキャナーとを搭載し、前記曳航船は、前記曳航体に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッドに接続されたマルチビーム測探機プロセッサーと、このマルチビーム測探機プロセッサーに接続されたモニターと、前記曳航体に搭載されたGPSアンテナ、モーションセンサーと接続されるとともに前記データリンク装置との間で位置情報を授受するインターフェイスボックスと、このインターフェイスボックスに接続された音速度センサーと、前記インターフェイスボックス及びマルチビーム測探機プロセッサーと接続されたデータ収録装置と、前記レーザースキャナー及びインターフェイスボックスと接続された第2データ収録装置とを備えたので、港湾構造物の水上部分と水中部分の三次元的計測ができるとともに、水上部分と水中部分の境界部分を連続的に測定することができる。
【0010】
また、本発明では、前記曳航体に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッドは、曳航体の吃水線より下に設けられ、水面下の計測情報を得るので、ソナーヘッドによる計測精度を向上することができる。
【0011】
また、本発明では、前記マルチビーム測探機ソナーヘッドは、曳航体の船底から突出するとともに、曳航体の水平面に対して所定角度傾いているので、ソナーヘッドの計測値の幅も大きく、挙動を安定させることができる。また、本発明では、前記曳航体に搭載されたモーションセンサーは、曳航体自身のピッチング、ローリング、ヨーイング、ヒービング揺れを検出し、マルチビーム測探機ソナーヘッドの揺れに起因する誤差を補正するので、計測精度を一層向上することができる。
【0012】
また、本発明では、前記曳航体は、曳航時の揺れを低減させるスタビライザーを備えたので、曳航体の揺れを低減して計測精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る港湾構造物計測装置の一実施の形態を示す概略説明図である。
【図2】図2は、同港湾構造物計測装置のシステム構成図である。
【図3】図3は、同港湾構造物計測装置に使用される曳航体を示す要部縦断面図である。
【図4】図4は、同曳航体の背面図である。
【図5】図5は、同曳航体の側面図である。
【図6】図6は、同曳航体の平面図である。
【図7】図7は、同曳航体の動揺によるビームの振れの説明図である。
【図8】図8は、本発明の港湾構造物計測装置における計測情報の処理フロー図である。
【図9】図9は、同港湾構造物計測装置による計測状態を示す説明図である。
【図10】図10は、従来の港湾構造物計測装置による計測状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、GPSアンテナ、モーションセンサー、マルチビーム測探機ソナーヘッド、レーザースキャナーを搭載した曳航体を測定水域に沿って曳航船で曳航し、曳航船上で、曳航体に搭載された各センサーからの計測情報をマルチビーム測探機プロセッサーで解析してデータ収録装置に記録し、レーザースキャナーからの計測情報を第2データ収録装置で記録するので、港湾構造物の水上部分と水中部分の三次元的計測ができるとともに、水上部分と水中部分の境界部分を連続的に測定できる。
【実施例1】
【0015】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る港湾構造物計測装置の一実施の形態を示す概略説明図、図2は本発明の港湾構造物計測装置のシステム構成図である。ここで、港湾構造物計測装置10は、陸上に設置されたGPS基準局11と、測定機器を搭載した曳航体12と、前記曳航体12を測定水域に沿って曳航する曳航船13とから成り、前記GPS基準局11は、衛星Sからの電波を受信するGPS受信機14とデータリンク装置15を備え、前記曳航体12は、衛星Sからの電波を受信する少なくとも2個のGPSアンテナ16、17と、モーションセンサー18と、マルチビーム測探機ソナーヘッド19と、レーザースキャナー20とを搭載し、前記曳航船13は、前記曳航体12に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッド19に接続されたマルチビーム測探機プロセッサー21と、このマルチビーム測探機プロセッサー21に接続されたモニター22と、前記曳航体12に搭載されたGPSアンテナ16、17及びモーションセンサー18と接続されるとともに前記データリンク装置15との間で位置情報を授受するインターフェイスボックス23と、このインターフェイスボックス23に接続された音速度センサー24と、前記インターフェイスボックス23及びマルチビーム測探機プロセッサー21と接続されたデータ収録装置25と、前記レーザースキャナー20及びインターフェイスボックス23と接続された第2データ収録装置26とを備ている。
【0016】
図3は本発明の港湾構造物計測装置に使用される曳航体を示す要部縦断面図、図4は、曳航体の背面図、図5は曳航体の側面図、図6は曳航体の平面図である。曳航体12には、前後に所定の高さでGPSアンテナ16、17が取り付けられている。GPSアンテナ16は、柱状部材27によって曳航体12の前端に回動可能に支持されている。したがって、収納、搬送時にはGPSアンテナ16を倒しておくことができる。GPSアンテナ17は、一部が鉤型に曲がった柱状部材28によって曳航体の後端に回動可能に支持されている。したがって、同様に収納、搬送時には倒しておくことができる。
【0017】
レーザースキャナー20は、観測窓20aを計測方向に向けて曳航体12の上面から所定の高さHに設置されている。また、曳航体12の上面には、磁気方位センサー29が設置されている。更に、曳航体12の甲板部には、曳航体自身の浮力を増すために、浮力部材30が備えられている。浮力部材30には、例えば、ビオセランボード(登録商標)等を使用することができる。曳航体12の略中央には、動揺センサー31が取り付けられるとともに、船底から突出してマルチビーム測探機ソナーヘッド19が取り付けられている。マルチビーム測探機ソナーヘッド19は、船底に対して水平でも良いが、本実施例では計測方向に向けて約30度傾いている。
【0018】
曳航体12の船底部には、棒状部材から構成された脚部32が立設されており、曳航体12を陸上で保管、搬送する際に、船底から突出したマルチビーム測探機ソナーヘッド19等が邪魔になることなく載置できる。また、脚部32の一部には、曳航体の長手方向に沿ってビルジキール33が配設されており、曳航体の安定を図っている。更に、曳航体12の後端には、スタビライザー34が半回動自在に両端を軸支されて支承されている。曳航体12の船頭には、曳航用ワイヤーを取り付けるための円環を有したワイヤー金具35が取り付けられている。
【0019】
図7は、本発明に於ける曳航体の動揺によるビームの振れの説明図である。曳航体12は、図7(a)に示すように前後に回動するピッチング、(b)に示すように長手方向の軸線回りに回動するローリング、(c)に示すように曳航体が上下に揺れるヒービング、(d)に示すように曳航体が水平面内で左右に回動するヨーイング動作が考えられ、これらの外乱をマルチビーム測探機ソナーヘッド19及びレーザースキャナー20の測定値から補正する。
【0020】
図8は、本発明の港湾構造物計測装置における計測情報の処理フロー図である。水上部の計測データは、水上部計測センサーから各種情報を接続されたケーブルによりレーザースキャナーデータ処理部に収録され、リアルタイムに位置や動揺の補正を行いX,Y,Zの三次元情報へと変換される。同様に水中部の計測データも水中部計測センサーからマルチビームデータ処理部に収録され、リアルタイムに位置や動揺に加え水中音速度の補正を行いX,Y,Zの三次元情報へと変換される。
水上部と水中部の三次元情報は解析処理システムにより結合され、港湾構造物の三次元形状として図化を含む各種の処理を行う事が可能となる。
【0021】
次に、以上のように構成された港湾構造物計測装置10の使用手順について図9等に従って説明する。先ず、各種センサーを取り付けた状態の曳航体12を海上に浮かべ、曳航船13により港湾構造物前面を曳航しながらレーザースキャナー20よりレーザー光線を発信し構造物までの距離を計測する。同時にマルチビーム測深機ソナーヘッド19より音響ソナーを発信し、水深を計測する。計測中は図8の処理フロー図に示すようにレーザースキャナーデータ処理部とマルチビームデータ処理部にデータが収録され、ノートPCの画面上よりリアルタイムに計測データのX,Y,Zの三次元情報の確認を行い、データの良否を判定する。
【符号の説明】
【0022】
10 港湾構造物計測装置
11 GPS基準局
12 曳航体
13 曳航船
14 GPS受信機
15 データリンク装置
16、17 GPSアンテナ
18 モーションセンサー
19 マルチビーム測探機ソナーヘッド
20 レーザースキャナー
21 マルチビーム測探機プロセッサー
22 モニター
23 インターフェイスボックス
24 音速度センサー
25 データ収録装置
26 第2データ収録装置
27 柱状部材
28 柱状部材
29 磁気方位センサー
30 浮力部材
31 動揺センサー
32 脚部
33 ビルジキール
34 スタビライザー
35 ワイヤー金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上に設置されたGPS基準局と、
測定機器を搭載した曳航体と、
前記曳航体を測定水域に沿って曳航する曳航船とから成り、
前記GPS基準局は、衛星からの電波を受信するGPS受信機とデータリンク装置を備え、
前記曳航体は、衛星からの電波を受信する少なくとも2個のGPSアンテナと、モーションセンサーと、マルチビーム測探機ソナーヘッドと、レーザースキャナーとを搭載し、
前記曳航船は、前記曳航体に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッドに接続されたマルチビーム測探機プロセッサーと、
このマルチビーム測探機プロセッサーに接続されたモニターと、
前記曳航体に搭載されたGPSアンテナ、モーションセンサーと接続されるとともに前記データリンク装置との間で位置情報を授受するインターフェイスボックスと、このインターフェイスボックスに接続された音速度センサーと、
前記インターフェイスボックス及びマルチビーム測探機プロセッサーと接続されたデータ収録装置と、
前記レーザースキャナー及びインターフェイスボックスと接続された第2データ収録装置とを備えたことを特徴とする港湾構造物計測装置。
【請求項2】
前記曳航体に搭載されたマルチビーム測探機ソナーヘッドは、曳航体の吃水線より下に設けられ、
水面下の計測情報を得ることを特徴とする請求項1に記載の港湾構造物計測装置。
【請求項3】
前記マルチビーム測探機ソナーヘッドは、曳航体の船底から突出するとともに、曳航体の水平面に対して所定角度傾いていることを特徴とする請求項1または2に記載の港湾構造物計測装置。
【請求項4】
前記曳航体に搭載されたモーションセンサーは、曳航体自身のピッチング、ローリング、ヨーイング、ヒービング揺れを検出し、マルチビーム測探機ソナーヘッドの揺れに起因する誤差を補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の港湾構造物計測装置。
【請求項5】
前記曳航体は、曳航時の揺れを低減させるスタビライザーを備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の港湾構造物計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32273(P2012−32273A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172011(P2010−172011)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(505252919)国土交通省北海道開発局長 (3)
【出願人】(595102374)三洋テクノマリン株式会社 (1)
【出願人】(510208860)有限会社アタカ造船所 (1)
【Fターム(参考)】