説明

滑り軸受、このような滑り軸受の製造方法ならびに使用

鉄含有の母材から成る少なくとも1つの支持部材(25)、軸受ブシュ(24)を備えた滑り軸受であって、コーティング材料からなるコーティング(8.26)がその受け面上に施されており、このコーティングは、融着された層として形成されそしてFeSn2を含む接合領域(9)によって母材と冶金的に接合されおり、そして前記のFeSn2含有接合領域(9)の厚さが最大でも10μmであることによって長い耐用年数を達成することができる、滑り軸受け。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の発明思想によれば、鉄含有の母材から成る支持部材/軸受ブシュを備えた滑り軸受であって、前記支持部材/軸受ブシュは、その受け面側に、少なくとも被覆材料からなるコーティングが施されており、そして前記コーティングは、FeSn含有の接合領域によって前記母材と冶金的に接合されている、前記滑り軸受に関する。
【0002】
もう1つの発明の思想はこのような滑り軸受の製造方法であって、この際、鉄含有の母材から成る支持部材/軸受ブシュの受け面側に、少なくとも1つの層を有しそして少なくとも部分的に軸受メタルから成るコーティングを施し、この際、少なくとも前記支持部材/軸受ブシュに隣接する層がSnを含有する材料、特にホワイトメタルから成り、前記Sn含有材料は、コーティングすべき表面に固体の形で供されそして前記母材上に溶融付着させる方法に関する。
【0003】
更に別の発明思想にはこのような滑り軸受の有利な使用が含まれる。
【背景技術】
【0004】
特許文献1から冒頭に記載の種類の滑り軸受ならびに製造方法が公知である。この公知の提案によれば、ホワイトメタルから成るコーティングが、鉄材料から成る支持部材/軸受ブシュ上で部分的に合金化 (anlegiert)される。合金の形成には液状の合金成分の存在が必要である。応じてこのためには、コーティングプロセスの際に、ホワイトメタルが溶融するだけではなく、支持部材の受け面側表面上で、溶融した母材から成る金属浴も生じる程度に多くの熱を発生させなければならない。ホワイトメタル及び鉄材料のこのようにして生じた溶融物は相互に合金し、その際、広範囲に及びFeSnが生じる。そのためこの場合には、殆どFeSnから成る比較的厚い接合領域が生じる。この接合領域はたしかに母材とコーティング間の良好な冶金接合を与える。しかしながら、FeSnは著しく脆い材料であり、その結果、該物質は公知の軸受装置のわずかな負荷下において既に、亀裂形成及び脆性破壊を起こす可能性がある。さらに加えて、不利に冷却された際には、コーティング付近の鉄材料が、同様に著しく脆いマルテンサイトへ変態する恐れがあり、そのことによって上記欠点が更に増大する。この公知の装置の場合には、比較的厚い中間領域内部での高い脆性及び低い伸展性のために、耐用年数は比較的短い。
【0005】
ホワイトメタルから成るコーティングを遠心鋳造法で支持部材/軸受ブシュに施与することも公知である。その場合にはたしかに溶融した母材から成る金属浴の生成は行われない。しかしながら、遠心鋳造法で施与されたホワイトメタルの硬化の際に、先ずCuSnから成る針状結晶が、その次にSbSnから成る立方晶系結晶が生じ、そして最終的に残りのスズが豊富なマトリックスが硬化することによって、合金成分の分離が起こる恐れがある。その比較的長時間液状であるマトリックスの密度と比べると、CuSnの密度は高く、SbSnのそれは低い。 それに応じて、CuSn結晶は半径方向外側に移動し、そのことによりホワイトメタル−コーティングが母材に接している領域が弱められ、このことが耐用年数に不利に作用し得る。このことによって外側領域に濃縮が生じ、その分布は不均一である。
【特許文献1】国際公開第00/23718号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って以上のことに基づいて本発明の課題は、冒頭に記載の種類の滑り軸受を、公知の装置の欠点を回避しつつ、長い耐用年数が達成されるように改善することである。
本発明の更なる課題は、本発明による滑り軸受の簡単かつ経済的な製造方法を記述することであり、ならびに本発明による滑り軸受の有利な使用を記述することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この滑り軸受に関する上記課題は前提部に記載の滑り軸受に関連して、FeSnを含有する接合領域の厚さが最大で10μm(ミクロン)であることによって解決される。
【0008】
FeSnから成る接合領域を完全に抑制するのではなく、小さな規模で許容することによって、支持部材/軸受ブシュの鉄含有の母材へのコーティングの良好な冶金接合及び従って高い付着力が有利に得られる。その一方で、脆いFeSnから成る接合領域の厚さがわずかであるために、本発明による滑り軸受の変形性(Verformungsfaehigkeit)が全体としてはそれによって不利な影響をさほど受けないことが保証されており、その結果、脆性破壊及び亀裂形成に対する十分に高い安全性が保証されている。
【0009】
前記方法に関する上記課題は、前提部に記載の方法に関連して、コーティングの少なくとも第1層の融着(Aufschmelzen)のために行われる、コーティングすべき表面及びこれに供給されたコーティング材料へのエネルギーの伝達、例えば熱、レーザーもしくはプラズマ移行アーク(PTA)の伝達、あるいはコールドガススプレー法(Kaltgasspritzen)によるエネルギー伝達を次のように、つまり供給されたコーティング材料のみが完全に溶融し、母材は完全に硬化した状態のままであるように制御して行うことによって解決される。
【0010】
この措置によって有利に、コーティングすべき表面における溶融した母材から成る金属浴の生成が起こらずに、但しコーティング材料が硬い金属の土台に融着される程度のわずかな入熱が母材に生じ、その際、その存在する熱によって、母材へのコーティングの所望の冶金接合を保証する拡散が開始される。母材の加熱に依存する拡散の深さはその場合には簡単に次のように、つまり拡散の結果としてその時得られる接合領域が最大で10μmの所望の限度内、特に0.5〜5μmであるように制御することができる。同時に、母材範囲内でのマルテンサイトの生成ならびにコーティング範囲内での不均一な結晶分布及び粗大な結晶化構造を回避することができる。本発明による方法のもう1つの利点は、この場合には毒性の軸受メタル、例えばカドミウムを、環境を汚染しない元素、例えば銀(Ag)、亜鉛(Zn)又は類似物で代替することができることに見ることができる。有利なことに添加物が不要なのであるから、スズ、アンチモン及び銅のみを含有し、従って安価に得られる特に単純なホワイトメタルをコーティングの形成に使用することができる。
【0011】
このような滑り軸受は金属加工業/冶金工業で、例えばロールスタンド、プレス等に使用され、特に金属もしくは非金属のバンド、プレート及び異形材の加工のためのロールスタンドの軸受におけるロール、例えば作業ロール、中間ロール、支持ロールの軸受けに使用される。というのもこの場合には長い耐用年数によってコストが特に大きく節約されるからである。その場合このもしくはこれらの軸受は例えば閉じた構造の金属滑り軸受、動圧滑り軸受、例えばロールネック軸受、又は静圧軸受として形成される。
【0012】
別の形態では、種々の性質を持つ軸受面を得るために粉体又は線材が所定の種々の領域にて軸受の内面に供されることが定められる。これにより、汚れの入り込み、埋没(Kriechen, Einbetten)が最小であること、辺荷重(Kantenbelastung)が回避されていることが達成される。種々の性質を得るために種々の領域に異なる軸受メタルが使用されることが好ましい。
【0013】
上位の措置の有利な形態及び合目的的な発展形態は従属請求項に記載されている。
【0014】
母材のコーティングすべき表面は、被覆の前に、清浄化及び/又は粗面化することが有利にできる。これにより、所望の拡散及びそれに応じてこの拡散によって得られる接合領域の形成が促進される。前記粗面化によってさらに光線ないしは放射線の反射が阻止され、このことによって母材中へのエネルギーの入力の制御が容易になる。
【0015】
別の有利な措置は、複数の層のコーティング材料を相互に融着させることにあり得る。このことによって必要なエネルギーの流れの停滞を可能な限り少なくしかつそれにもかかわらずコーティングの比較的大きな厚さを達成できることが保証される。これら層は同じ材料から成ることもできるし、異なる材料から成ることもでき、このことによって軸受の性質を個々の場合の状況に適合させることが可能になる。
【0016】
種々の性質を達成するためには、種々の軸受メタルを含有するコーティング材料から成る複数の層が施与されることがとりわけ有利である。
【0017】
別の有利な形態では、軸受荷重による剪断応力の最大値が接合領域の外部及びコーティングの内部に存在するような厚さがコーティング材料に設定されるようにする。このことによって、当然のことながら脆い接合層にて剪断応力の最大値が回避されることが達成される。
【0018】
コーティング材料は、相互につながったビードの形で母材に施与されるのが有利であり、このことによりエネルギーの入力の簡単な制御が促進される。これにより生じた凹凸は更なるエネルギーの入力によって平らにすることができ、このことによって機械的な後処理が容易になる。
【0019】
前記の上位方法の別の有利な形態及び合目的的な発展形態は残りの従属請求項に記載されており、また図1〜3に基づいた次の実施例の記述からより詳細に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の主要な使用分野は金属加工業又は圧延工業におけるロールスタンドのロール用の軸受であり、あるいはまたプレスの軸受でもある。この種の装置の構造及び作動方式については、それら自体は公知である。
【0021】
図1には、プレート、テープ及び異形材を圧延するためのロールスタンドのロール21の滑り軸受20の断面図が示されている。この場合にはロール21のロールネック22が取付具23内に軸受ブシュ24を用いて取り付けられている。軸受ブシュ24の支持部材25にコーティング26が施されている。コーティング26は軸受メタル、殊に不具合発生時に良好な特性を提供するホワイトメタルから成る。
【0022】
軸受ブシュ24は、受け面側に、つまり半径方向内側の表面に単層もしくは多層のコーティング26を有する。支持ブシュ24は鉄含有材料、通常は鋼から成る。コーティング26は、少なくとも半径方向外側の軸受ブシュ24に隣接する領域では、軸受ブシュ24への良好な付着をもたらすSn含有材料から成り、かつ半径方向内側は不具合発生時に良好な特性を供する材料から成る。双方に適しているのがホワイトメタルである。ホワイトメタルと称しているのは実際にはスズ合金である。
【0023】
ここでコーティング8,26の生成に使用されるホワイトメタルは、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)及び銅(Cu)のみを含有しかつ、環境を汚染しない元素、例えば銀(Ag)、亜鉛(Zn)又は類似物で代替されうる例えばカドミウムであるような毒性の添加物を不含である単純なホワイトメタルであることができる。
【0024】
コーティング8,26を形成する材料は、軸受ブシュ24の鋼から成る支持部材25の半径方向内側の表面に単層もしくは多層の形で融着される。その際に軸受ブシュ24の支持部材25の鉄含有の母材とコーティング26の材料との間の境界領域に、図2にて波線で示された接合領域9が形成され、この接合領域は本質的にFeSnから成り、この場合、鉄は母材に由来しそしてスズはコーティング材料に由来する。これは、コーティングが、少なくともそれの半径方向外側でありかつ支持部材25に隣接する領域において、スズ含有の材料から成れば十分である。
【0025】
FeSnは著しく脆い物質であることは明らかであり、このことは軸受ブシュ24の耐用年数に不利な影響を及ぼす可能性がある。しかしその一方で、鉄含有の母材へのコーティング材料の確実な冶金的接合を得るために接合領域9は必要である。
【0026】
広範囲な試験によって、FeSnから成る接合領域9の厚さが最大で10μm(ミクロン)の場合に、鉄含有の母材へのコーティング材料の良好な冶金的接合ならびにコーティングされた軸受ブシュ24のなお十分な変形性及び従って許容可能な耐用年数が達成され得ることが確認された。この試験によれば、既に0.5〜5μm(0.5〜5ミクロン)の接合領域9の厚さにおいて、変形性が特に良好である十分な冶金的接合が達成されることがさらに示された。
【0027】
従ってコーティング材料の融着は、接合領域9が10μmより厚くならないように、特に0.5〜5μmより厚くならないように行われる。このためには、融着プロセスは、関与している金属の合金化によってではなく、拡散プロセスによって接合領域9が形成されるように実施される。この拡散プロセスは適当な熱制御によって、拡散の深さが最大で10μm、特に最大で0.5〜5μmであるように制御される。
【0028】
このためには軸受ブシュ24の支持部材25の鉄含有母材へのコーティング材料の融着に使用されるエネルギーは、軸受ブシュ24の支持部材25のコーティングすべき表面に溶融した母材から成る金属浴が生成されるのではなく、母材が完全に硬化した状態のままであってコーティング材料のみが溶融されるように制御される。
【0029】
鉄含有の母材へのコーティング材料の融着には、好ましくは図3に基づく装置が使用される。この装置は加熱装置10及び供給ユニット11を含む。加熱装置10はレーザービーム12を発生し、このレーザービームは軸受ブシュ24の支持部材25のコーティングすべき表面に対してほぼ鉛直に向けられている。供給ユニット11はレーザービーム12の軸に対して傾いている。その傾斜角は好ましくは30°とすることができる。供給ユニット11を用いて、コーティング材料は固体の状態で、それがレーザービーム12に照射されるようにコーティングすべき表面に供給される。
【0030】
供給すべきコーティング材料は粉体の形又は丸いかもしくは角形の線材の形で存在することができる。示した実施例では、コーティング材料は線材13の形で供給される。従って供給ユニット11は送り装置(Vorschubaggragate)として設計されている。コーティング材料粉体が使用される場合には、供給ユニット11は、粉体流を吐出するブラストノズルとして設計される。図3において流れの矢印14で示されているように、コーティング材料には、有利には、硬化するまで保護ガスが当てられる。有利には、保護ガスは、適当な供給コネクタ15が備えられた供給ユニット11を介して供給することができる。
【0031】
加熱装置10及び供給ユニット11は、示した実施例の場合には共通の作業ヘッド16に収容されている。この作業ヘッドは、コーティングプロセスの実施のために、矢印17で示された相対運動が作業ヘッド16と軸受ブシュ24のコーティングすべき支持部材25との間に得ることができるように取り付けられている。 その場合には作業ヘッド16とコーティングすべき支持部材25間の相対速度と、供給ユニット11により達成されるコーティング材料吐出量と、コーティングすべき表面に供給されたコーティング材料へのならびに軸受ブシュ24の支持部材25のコーティングすべき表面へのレーザービーム12により達成されるエネルギーの入力とが相互につぎのように、つまりコーティング材料は完全に溶融されるが、コーティングすべき表面には溶融された母材から成る金属浴が生じずに所望の拡散深さでの拡散プロセスが開始されるように調整される。
【0032】
有利に作業ヘッド16とコーティングすべき表面間の相対運動は、作業ヘッド16がコーティングすべき表面をライン状になぞるように行われる。示した実施例の場合には、作業ヘッド16はこのために相応に可動なアーム18に取り付けられている。このライン状の動きのために、コーティング材料は平行なビードの形でコーティングすべき表面に施与される。これにより生じる波形の上面は、図3にて波線で示された第2のレーザービーム19によって平らにすることができる。これに必要な加熱装置10は同じく作業ヘッド16に取り付けられていてもよい。レーザービーム12及び19を発生させるために共通の加熱装置を用意することも可能である。第2のレーザービームをなくして、この平坦化を第2の工程でコーティング材料の供給なしに前記レーザービーム12を用いて行うこともまた可能である。レーザー光源として、良好に制御可能であるもの、例えばYAGレーザー、COレーザーもしくはダイオードレーザー、殊にファイバー一体型ダイオードレーザーが特に好ましい。レーザー光源が容易に制御可能であることによって支持部材7,25へのエネルギー入力の正確な配量が簡単になる。CO及びダイオードレーザーがこの場合には特に有効であることが判明した。
【0033】
コーティング材料は薄層の形で施与されるのが有利であり、このことによりエネルギー入力の制御が容易になる。それにもかかわらずコーティングの比較的大きな全体の厚さを達成するために、図2で重ね合わされた層8a,8bによって示されているように、複数の層を重ね合わせることができる。その場合には互いに交差するビードを形成してもよい。いずれの場合にも最上層は前述のようにして平らにされ、このことによって続いての機械的な後処理が容易になる。層8a及び8bは同じ材料から成っていてもよいし、異なるから成っていてもよい。いずれの場合にも下の、即ち半径方向外側の層はFeSn領域の生成のためにスズ含有の材料、例えばホワイトメタルから成っていなければならない。
【0034】
コーティングプロセスの開始前に、軸受ブシュのコーティングすべき表面は洗浄及び好ましくは同時に粗面化される。この粗面化によってレーザービーム12の重大な反射が阻止され、このことによってエネルギー入力の制御が同様に容易になる。
【0035】
エネルギーの入力によって小面積でのみ加熱が行われるのであるから、融着されたコーティング材料は比較的迅速に冷却される。従って、コーティング溶融物の冷却により生成される種々の厚さを有する結晶のCuSn結晶及びSbSn結晶の形での重力分離は、開始することができない。従って、コーティング8,26の内側に該コーティングの厚さ全体にわたって均一なこれら結晶の分布及び応じてきわめて均質な材料構造が達成される。好ましくは、その場合には結晶は次のように、つまり5μm以下にかつ好ましくは球形に形成されている。コーティングされた支持部材7,25の冷却は、軸受ブシュ24の支持部材7,25の鉄含有の母材中でマルテンサイトへの変態が行われないように行うことができ、その結果、母材はコーティングが施されるその表面領域もマルテンサイト不含である。
【0036】
図3に従った実施にて加熱装置として使用されたレーザー光源の代わりに、当然のことながらヒートスポット(Heizfleck)を生じる他の加熱装置を使用することもできる。有利な実施は、加熱装置の形成のために、比較的容易に制御可能である電流が流される誘導コイルを用意することを内容とすることができる。この場合には従って、支持部材の母材へのエネルギー入力を正確に配量することができる。
【0037】
もう1つの方法の場合には、コーティング材料がコールドガススプレー法によって施与されるようにする。この方法の利点は、粉体の形でかつ従って粉体粒子として存在するコーティング材料がコールドスプレー法によりガス噴流中で高速に加速され、その際、粉体粒子がガス噴流中で溶融されないことにある。支持部材の母材にぶつかることにより初めて、コーティングが高い運動エネルギーにより形成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ロールスタンドのロールのロールネック軸受の断面を示す図である。
【図2】滑り軸受の2層の軸受メタル−コーティングを有する支持部材/軸受ブシュの概略的な断面を示す図である。
【図3】軸受メタルで滑り軸受の支持部材/軸受ブシュをコーティングするための装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有の母材から成る少なくとも1つの軸受ブシュ(24)を備えた滑り軸受であり、この軸受ブシュは、その受け面側に、コーティング材料から成るコーティング(8,26)が施されており、このコーティングは、FeSn含有の接合領域(9)によって前記母材と冶金的に接合されている滑り軸受であって、FeSnを含有する前記接合領域(9)の厚さが最大で10μmであることを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
FeSnを含有する前記接合領域(9)の厚さが最大で0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1記載の滑り軸受。
【請求項3】
前記接合領域(9)の厚さが、鉄含有の前記母材に融着されたSn含有の層、特にホワイトメタル層の拡散の深さに一致することを特徴とする請求項1記載の滑り軸受。
【請求項4】
軸受ブシュ(24)の母材が、少なくともコーティング(26)が施される領域内では、マルテンサイト不含であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項5】
コーティング(8,26)がその厚さ全体にわたって均質な構造、殊に微細な結晶化構造ならびにCuSn結晶及びSbSn結晶の均一な分布を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項6】
コーティング(8,26)中に含まれる結晶が5μm以下にかつ好ましくは球形に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項7】
コーティング(8,26)を形成する軸受メタル、殊にホワイトメタルが毒性の元素、例えばカドミウムもしくは類似物を含有していないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項8】
コーティング(8,26)が重ね合わされた複数の層(8a,8b)を含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項9】
コーティング(8,26)の層(8a,8b)が少なくとも部分的に異なる材料から成ることを特徴とする請求項8記載の滑り軸受。
【請求項10】
コーティングを形成する軸受メタルがスズ(Sn)、アンチモン(Sb)及び銅(Cu)のみを含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項11】
コーティングを形成する軸受メタル、殊にホワイトメタルがさらに無毒の元素、例えば銀(Ag)、亜鉛(Zn)又は類似物を含有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項12】
支持部材(25)が鋼から成ることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項13】
軸受ブシュ(24)がその半径方向内側の面に軸受メタル、殊にホワイトメタルから成るコーティング(26)を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項14】
滑り軸受が動圧滑り軸受として形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項15】
滑り軸受が静圧滑り軸受として形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の滑り軸受。
【請求項16】
請求項1〜15の少なくとも1つに記載の滑り軸受を製造するにあたり、鉄含有の母材から成る軸受ブシュ(24)の少なくとも1つが、それに受け面側において、少なくとも1つの層(8a,8b)を有し少なくとも部分的に軸受メタルから成るコーティング(26)が供され、この際、少なくとも前記軸受ブシュ(24)に隣接する層(8a)が、Snを含有する材料、特にホワイトメタルから成り、この材料を、コーティングすべき表面に固体の形で供給し、そして前記鉄含有母材上に融着する、方法であって、
コーティング(26)の少なくとも第1層(8a)の融着のために行われる、コーティングすべき表面及びこれに供給されたコーティング材料へのエネルギーの伝達を、コーティング材料のみが完全に溶融し、鉄含有の母材は完全に硬化した状態のままであるように制御して行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項17】
拡散プロセスによって、コーティング(8,26)と母材との間の境界領域にFeSn含有の接合領域(9)を生成することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
母材のコーティングすべき表面を、コーティングの前に洗浄及び/又は粗面化することを特徴とする請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
軸受メタル、殊にホワイトメタルを、コーティングすべき表面に粉体として及び/又は丸いかもしくは角形の線材として及び/又は丸いかもしくは角形のテープとして供給することを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
軸受荷重による剪断応力の最大値が接合領域(9)の外部及びコーティング(8,26)の内部に存在するような厚さを、コーティング材料に設定することを特徴とする請求項16から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
種々の性質を持つ軸受面を得るために、粉体又は線材を、同じかもしくは異なる軸受メタルからなる所定の異なる領域において軸受の内部円周に供給する
ことを特徴とする請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
コーティング材料を、それにレーザービーム(12)が照射されるようにコーティングすべき表面に供給することを特徴とする請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
コーティング材料を平行な相互につながったビードの形で母材に施与することを特徴とする請求項16から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コーティング(26)の少なくとも第1層(8a)、好ましくは全ての層(8a,8b)の融着のために、ヒートスポットを生じかつ軸受ブシュ(24)に対して相対的に可動の加熱装置、好ましくは少なくとも1つのレーザービーム(12)及び/又は少なくとも1つの誘導コイルを使用することを特徴とする請求項16から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コーティング材料を、そのつどエネルギー伝達により生じるヒートスポット内においてコーティングすべき表面に供給することを特徴とする請求項23項に記載の方法。
【請求項25】
場合により異なる性質を有するか及び/または異なる原料からなる複数のコーティング材料層を相互に融着させることを特徴とする請求項16から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
母材に融着された少なくとも最後の層(8b)、好ましくは全ての層(8a,8b)、の上面をエネルギー供給によって均質化することを特徴とする請求項16から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
溶融したコーティング材料にそのつど硬化するまで保護ガスを当てることを特徴とする請求項16から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
レーザービーム(12)の発生に、YAGレーザー、COレーザー、ダイオードレーザー、ファイバー一体型ダイオードレーザー又は類似物を使用することを特徴とする請求項16から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
コーティング材料をコールドガススプレー法によって施与することを特徴とする請求項16から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
金属加工への、例えばロールスタンド、プレス又は類似物への請求項1から30のいずれか1項に記載の滑り軸受の使用。
【請求項31】
金属および非金属のテープ、プレート及び異形材を圧延するためのロールスタンドにおけるロールを軸受けするための請求項30記載の滑り軸受の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−534597(P2009−534597A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505799(P2009−505799)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003624
【国際公開番号】WO2007/131599
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】