説明

炎センサ

【課題】 炎センサにおけるノイズとなる熱と紫外線の影響を簡易な構成で除去し、信頼性を向上可能な炎センサを提供する。
【解決手段】 この炎センサは、光ファイバ44による炎からの輻射熱低減特性、シリコンによる紫外線選択性、同軸配置による差動演算時のフォトダイオード信号等価性、パッケージによる外部環境保護耐性が優れることにより、第1アンプ16は、非常に信頼性に優れた紫外光強度に対応する出力、すなわち、炎の点火の有無に応じた出力を発生することができる。第1アンプ16の差動出力は、ボンディングワイヤ及び電極7を介して紫外光検出用リード端子2に接続される。第2アンプ15の出力(端子18)は、ボンディングワイヤ及び電極10を介して温度検出用リード端子5に接続される。温度検出用リード端子5からは、赤外光強度に応じた炎の温度を出力する。第2アンプ15もパッケージ内に収容されているため、温度や湿度による出力変化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炎センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、比較的高温状態にある炉に配設された燃焼器の燃焼状態(着火の有無)を検出する新たな火炎検出技術が期待されている。炉に配設された燃焼器の燃焼状態の検出には、従来、光電管式や半導体式の光センサが、実用レベルで使用されてきた。光電管式の光センサは、その検出感度が高いものの、高電圧電源が必要であり、高価である。
【0003】
一方、半導体式の光センサを使用する技術としては、感応部にCdSやCdSe系の半導体を使用するものが実用レベルにある。この種の半導体式光センサは、燃焼炎から発する可視光及び赤外線を検出するものであり、例えば、燃料が油である油バーナーの燃焼状態を検出するために使用される。
【0004】
しかしながら、燃料がメタンを主成分とする都市ガス等であるガスバーナーの燃焼炎を検出する場合、この種のバーナーは青火を形成するため、青火より発する紫外光によって炎の検出を行っている。しかし、比較的高温状態にある所謂、火炉において燃焼炎を検出しようとすると、炉壁の輻射が可視・赤外線を発生し、背景光ノイズとなる。また、背景光ノイズ抑制のため、紫外線透過フィルタを用いる試みが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
ところが、炉内温度が、比較的高温の1000℃〜1400℃程度となる炉にあっては、充分に燃焼炎を検出することができない場合がある。この状況を更に詳細に説明すると、半導体式光センサとしてSi系のフォトダイオードを使用して、紫外線透過フィルタとしてU−340(ホヤガラス社製)を使用する場合、燃焼器が消火状態にある場合においても、温度が1000℃〜1400℃の温度域にある場合には、十分なフィルタ除去ができず、650nmから750nmの波長域に強い光信号が検出される。
【0006】
この光信号は、紫外域の炎の信号ではなく、熱の輻射による光信号であるため、ノイズ(N)の一成分となる。なお、ここで炎の信号の定義として、着火状態にある光信号強度と消火状態にある光信号強度との差が、燃焼炎のシグナル(S)であり、この信号強度に対して、消火状態にある場合の光信号強度がノイズ(N)としている。即ち、S/N比が、温度上昇に伴って急速に低下するため、このような比較的高温の温度域では、実質、炎の燃焼・消失を良好に検出することが困難になるという問題がある。
【0007】
このような問題を解決する為に、特許文献2の技術では、半導体式光センサとして、650nm以上の波長領域に感度を有しないGaAsPやGaP等の化合物半導体からなる半導体式紫外線センサを用いることを提案している。また、接合の深さが異なるフォトダイオードを利用することも提案されており(特許文献3)、更に、光検出素子としては、特許文献4や特許文献5に記載されるものが知られている。
【特許文献1】特開2000−99850号公報
【特許文献2】特開2002−286543号公報
【特許文献3】特許第3220302号公報
【特許文献4】特開2000−164914号公報
【特許文献5】特開2003−298038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、紫外線透過フィルタや化合物半導体は高価である。さらに、紫外線透過フィルタは紫外光以外の光を完全に遮断できないという問題もある。火炎検出時に微小でも紫外光以外の光、例えば可視や近赤外の一部の波長範囲の光がフィルタを透過すると、残留熱からの輻射光を検出してしまい、実際に火炎が消えていても、まだついていると誤認する可能性があり、その信頼性の向上が期待されていた。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、炎センサにおけるノイズとなる熱と紫外線の影響を簡易な構成で除去し、信頼性を向上可能な炎センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明に係る炎センサは、(A)炎から出射した紫外域から可視域を含む光が一端に入射できる光ファイバと、(B)光ファイバの他端から出射したこの光が入射する第1フォトダイオード、この光の紫外域成分が減少して入射するように第1フォトダイオードよりも深い位置に形成された第2フォトダイオード、及びこの光の紫外域成分がさらに減少して入射するように第2フォトダイオードよりも深い位置に形成された第3フォトダイオードが、シリコン半導体基板の厚み方向に沿って整列し光ファイバの他端から出射される光に対して同軸に配置されてなる光検出素子と、(C)第1及び第2フォトダイオードの出力が入力され差動増幅を行う第1アンプと、(D)第3フォトダイオードの出力が入力される第2アンプと、(E)光検出素子及び第1及び第2アンプを収容し、光ファイバの他端が取り付けられたパッケージと、(F)第1アンプの出力からパッケージの外部に延びる紫外光検出用リード端子と、(G)第2アンプの出力から前記パッケージの外部に延びる温度検出用リード端子とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の炎センサによれば、炎から出射される光を、光ファイバを介して光検出素子に導くため、光検出素子の輻射加熱が抑制され、光検出素子内部で発生する背景光成分が減少する。また、光ファイバを用いて光を入射することで、太陽光や室内照明等の外乱光の影響を無くすことができる。
【0012】
この光検出素子は、光ファイバからの光に対して同軸配置された第1、第2及び第3のフォトダイオードからなり、これらがシリコンからなるため、紫外線透過フィルタでは完全には除去できない紫外域の光を1つの光軸に対して、半導体基板の深さ方向に沿って除去することができる。第1及び第2フォトダイオードには、紫外域成分の強度が異なる光が入射するが、これらの出力は第1アンプによって差動増幅され、また、これらがパッケージ内に収容されて外部の温度及び湿度変化から保護されている。
【0013】
これにより、すなわち、光ファイバによる炎からの輻射熱低減特性、シリコンによる紫外線選択性、同軸配置による差動演算時のフォトダイオード信号等価性、パッケージによる外部環境保護耐性が優れることにより、第1アンプは、非常に信頼性に優れた紫外光強度に対応する出力、すなわち、炎の点火の有無に応じた出力を発生することができる。
【0014】
この出力はパッケージから外部に延びる紫外光検出用リード端子から取り出すことができる。
【0015】
また、第3フォトダイオードには、紫外域の光が大きく減少した光が入射するため、すなわち、赤外域の光が選択的に検出されるため、これを第2アンプにて増幅し、その出力を温度検出用リード端子から取り出すことで、炎の温度を検出することができる。この第2アンプもパッケージ内に収容されているため、温度や湿度による出力変化を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る炎センサは、第1及び第2フォトダイオードの出力に接続された入力端子、及び第1アンプの2つの差動入力端子にそれぞれ接続された出力端子をそれぞれ有する第1及び第2中間アンプと、第1及び第2アンプとを備える半導体回路基板を備え、光検出素子の第1及び第2フォトダイオードと半導体回路基板の第1及び第2中間アンプの入力端子とは、それぞれボンディングワイヤで接続されていることを特徴とする。
【0017】
第1及び第2中間アンプと、第1及び第2アンプは、同一基板上に形成されているため、簡易な構成とすることができ、且つ、光検出素子と半導体回路基板の中間アンプの入力端子とはボンディングワイヤで接続されているため、簡易な構成となり、また、これらを別体として製造することができるため、不良品の発生確率を低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る炎センサは、第3フォトダイオードと第2アンプの入力端子とは、ボンディングワイヤで接続されていることを特徴とする。
【0019】
この場合も、簡易な構成とすることができ、また、これらを別体として製造することができるため、不良品の発生確率を低減することができる。
【0020】
本発明に係る炎センサでは、光検出素子は、光入射面側に設けられ、第1フォトダイオードに接続された第1パッドと、光入射面側に設けられ、第2フォトダイオードに接続された第2パッドと、光入射面とは反対側に設けられ、第3フォトダイオードに接続された第3パッドと、を備えていることを特徴とする。
【0021】
各フォトダイオードのパッドにはボンディングワイヤを接続することができ、電気信号をボンディングワイヤを介して各アンプに伝達することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の炎センサによれば、ノイズとなる熱と紫外線の影響を簡易な構成で除去し、信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施の形態に係る炎センサについて説明する。なお、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は炎センサを一部破断して示す斜視図、図2は光検出素子の模式的な断面図、図3は炎センサの回路図である。
【0025】
この炎センサは、以下の要素を備えている。
・炎から出射した紫外域から可視域を含む光が一端に入射できる光ファイバ44。
・炎からの光が光ファイバの他端から入射する光検出素子100。
・各種のアンプ13,14,15,16が形成された半導体回路基板200。
・光ファイバ44の他端側に配置され光ファイバ44の出射光を受光面12上に集束させる球レンズ30。
・球レンズ30をパッケージ32の内面に固定する固定部材31。
・光検出素子100、回路基板200及び球レンズ30を収容し光ファイバ44の他端を固定するパッケージ32。
・パッケージ32の底部から延びたリード端子1,2,3,4,5。
・パッケージ32のステム45の内側面に設けられた電極6,7,8,10。
【0026】
以下、各要素について詳説する。
【0027】
光ファイバ44は、被覆41内を貫通するクラッド42及びコア43を備えている。
【0028】
光検出素子100は、第1フォトダイオード(12a(図3参照):N型半導体層104,P型半導体層102b(図2参照))、この光の紫外域成分が減少して入射するように第1フォトダイオード12aよりも深い位置に形成された第2フォトダイオード(12b(図3参照):N型半導体層103、P型半導体層102a及びP型半導体層102b)、及びこの光の紫外域成分がさらに減少して入射するように第2フォトダイオード12bよりも深い位置に形成された第3フォトダイオード(12c(図3参照):P型半導体層102a、N型半導体基板101)を備えている。
【0029】
第1、第2及び第3フォトダイオード12a,12b,12cは、シリコン半導体基板100aの厚み方向に沿って整列しており、光ファイバ44の他端から出射される光に対して同軸に配置されている。
【0030】
すなわち、図2を参照すると、N型半導体基板101上には、P型半導体層(P型ウェル層)102a、N型半導体層103、P型半導体層(P型ウェル層)102aに連続するP型半導体層(P型ウェル層)102b、N型半導体層104、絶縁膜105が順次形成されている。
【0031】
この光検出素子100は、N型半導体基板101上にP型ウェル層102a,102bを形成し、その中にN型半導体層103,104を表面側の下部に、2層形成する。この2つのN型半導体層(拡散層)103,104は、入射面側から見ると同軸になるように形成されている。
【0032】
N型半導体基板101の裏面側には、第3フォトダイオード12cの電極22’が設けられ、光ファイバ44の位置する光入射面側の光検出素子表面上には、絶縁膜105のコンタクトホールを介して第1フォトダイオード12aの電極23’、第2フォトダイオード12bの電極21’、グランドの端子24の電極24’が設けられている。
【0033】
Pウェル層内の表面側のN型半導体層104より出力1が、また、P型ウェル層内の下部のN型半導体層103より出力2が、N型半導体基板101側から出力3が得られる。そして、P型ウェル層102a,102bは、フォトダイオードのアノード電極(出力とは反対電極)となる。
【0034】
出力1のN型半導体層104は、入射面から最も浅い部分に位置するため、吸収係数の大きい紫外線から青色の波長の光に感度が高い出力を得ることができる。また、出力2のN型半導体層103は、上下のN型半導体の中間に位置し、緑色の波長の光に感度が高い出力を得ることができる。さらに、出力3の基板となるN型層は最も深い部分に位置し、吸収係数が比較的小さい赤色から近赤外の波長の光に感度が高い出力を得ることができる。つまり、夫々異なる感度を有する3つのフォトダイオードが同軸上に形成されている。
【0035】
光ファイバ44からの出射光(例:信号hν1+hν2(光のエネルギー))は、光検出素子の受光面12上に入射し、紫外域成分が深さ方向に沿って減少しながら第3フォトダイオード12cまで到達する。パッケージ32は、ステム45に対向する頂面にファイバ取り付け用の凹部を備えており、この凹部内に光ファイバ44が挿入されている。
【0036】
この炎センサによれば、炎から出射される光を、光ファイバ44を介して光検出素子100に導くため、光検出素子100の輻射加熱が抑制され、光検出素子100の内部で発生する熱ノイズが減少する。また、光ファイバ44を用いることで、太陽光や室内照明等の外乱光の影響を無くすことが可能となる。
【0037】
光検出素子100は、光ファイバ44からの光に対して同軸配置された第1、第2及び第3のフォトダイオード12a,12b,12cからなり、これらがシリコンからなるため、紫外線透過フィルタでは完全には除去できない紫外域の光を1つの光軸に対して半導体基板の深さ方向に沿って除去することができる。また、異なる感度を有するフォトダイオードが、光の入射方向に対して同軸上に形成されているため、小さい受光エリアで被検出光を有効に利用することができる。
【0038】
図3に示すように、3つのフォトダイオード12a,12b,12cはアノードが共通にグランドに接続されている。第1及び第2フォトダイオード12a,12bのカソードは、それぞれ端子23,21を介して中間アンプ13,中間アンプ14に接続されており、中間アンプ13,14の出力は差動増幅を行う第1アンプ16の差動入力端子に接続され、第1及び第2フォトダイオード12a,12bの差動出力が端子17から出力される(紫外光の検出)。第3フォトダイオード12cのカソードは、光検出素子100の下に敷かれたサブマウント25上の端子22を介して中間アンプ15に接続されている。サブマウント25はステム45と第3フォトダイオードの出力を電気的に絶縁するために、ステムと光検出素子100の間に置かれている。また、第2アンプ15の出力は端子18から出力され、第3フォトダイオード12cの出力である炎の温度が検出される(炉温の検出)。なお、各アンプ13,14,15は、電流電圧変換アンプであって、オペアンプ13a,14a,15a及び帰還抵抗13b,14b,15bを備えており、入力端子の一方は基準電位Vrefに接続されている。
【0039】
このように、半導体回路基板200は、第1及び第2中間アンプ13,14と、第1及び第2アンプ16,15とを備えており、また、第1及び第2中間アンプ13,14は、第1及び第2フォトダイオード12a,12bの出力23,21に接続された入力端子、及び第1アンプ16の2つの差動入力端子にそれぞれ接続された出力端子をそれぞれ有している。
【0040】
第1及び第2フォトダイオード12a,12bには、紫外域成分の強度が異なる光が入射するが、これらの出力は第1アンプ16によって差動増幅され、また、これらがパッケージ32内に収容されて外部の温度及び湿度変化から保護されている。この炎センサでは、光ファイバ44による炎からの輻射熱低減特性、シリコンによる紫外線選択性、同軸配置による差動演算時のフォトダイオード信号等価性、パッケージによる外部環境保護耐性が優れることにより、第1アンプ16は、非常に信頼性に優れた紫外光強度に対応する出力、すなわち、炎の点火の有無に応じた出力を発生することができる。
【0041】
図1に示すように、第1アンプ16の出力(端子17)は、ボンディングワイヤB4及び電極7を介して紫外光検出用リード端子2に接続され、紫外光検出用リード端子2は、ステム45内からパッケージ32の外部に延びている。このように、第1アンプ16の出力はパッケージ32から外部に延びる紫外光検出用リード端子2から取り出すことができる。
【0042】
第2アンプ15の出力(端子18)は、ボンディングワイヤB5及び電極10を介して温度検出用リード端子5に接続され、温度検出用リード端子5は、ステム45内からパッケージ32の外部に延びている。第3フォトダイオード12cには、紫外域の光が大きく減少した光が入射するため、すなわち、赤外域の光が選択的に検出されるため、これを第2アンプ15にて増幅し、その出力を温度検出用リード端子5から取り出すことで、赤外光強度に応じた炎の温度を検出することができる。第2アンプ15もパッケージ32内に収容されているため、温度や湿度による出力変化を抑制することができる。
【0043】
光検出素子100のグランド端子24(光入射面側に設けられたパッド)は、ボンディングワイヤB6によりステム45に接続され、リード端子4は、ステム45と接続されてパッケージ32の外部に延びている。
【0044】
なお、リード端子1,3は、パッケージ内部の電極6,8に接続されており、各アンプに電源、基準電位を供給している。
【0045】
最後に、差動増幅アンプ16によって、炎に含まれる紫外域の光が検出できる原理について説明しておく。
【0046】
図4は、フォトダイオード出力の波長依存性(分光感度特性)を示すグラフである。
【0047】
点線は第1フォトダイオード12aの出力を示し、実線は第3フォトダイオード12cの出力を示す。光入射面側に位置する第1フォトダイオード12aは、紫外域(200nm〜)から赤外域(〜1000nm)に及ぶ帯域内において検出可能な出力を有し、波長400〜500nmの帯域内にピークを有する。一方、深い位置にある第3フォトダイオード12cは、可視域(450〜)から赤外域(〜1100nm)に及ぶ帯域内において検出可能な出力を有し、波長700〜900nmの帯域内にピークを有する。
【0048】
上述の実施形態の炎センサにおいては、第1フォトダイオード12aの出力ピーク波長と、第3フォトダイオード12cの出力ピーク波長の中間に位置する波長において、出力ピークを有し、紫外域成分の出力が第1フォトダイオード12aよりも少ない第2フォトダイオード12bを備えている。したがって、第1フォトダイオード12aの出力から第2フォトダイオード12bの出力を減じると、紫外域成分の出力が得られる。
【0049】
図5は、この場合のフォトダイオード出力の波長依存性(分光感度特性)を示すグラフである。
【0050】
点線は第1フォトダイオード12aと第2フォトダイオード12bの出力の差分を示し、実線は第3フォトダイオード12cの出力を示す。
【0051】
この差分の出力は、紫外域(200nm〜)から可視域の一部(〜500nm)に及ぶ帯域内において検出可能な出力を有し、波長350〜450nmの帯域内にピークを有する。すなわち、差動増幅アンプ16の出力端子17(図3参照)からは、紫外域の光に対応する電気信号が得られることとなる。
【0052】
差分の出力は、450nm以下の光に感度を有し、650nm以上の光による影響を排除したものである。これは、シリコンにおいて、短波長の光ほど光入射表面から浅い位置で吸収されてキャリアを発生するため、浅い位置に形成されたP型半導体層又はN型半導体層でキャリアは捕獲され、電流信号として出力される。一方、入射した光の中で長波長成分は、厚み方向の深い位置(第3フォトダイオード12c)でキャリアを発生する。
【0053】
この光検出素子では、浅い位置で発生したキャリア、即ち短波長の光により発生したキャリアと、深い位置で発生した、即ち、より長波長の光により発生したキャリアとを別途捕獲しているので、電流信号の状態で差引くことで、長波長成分をキャンセルすることができる。
【0054】
これにより、高価な化合物半導体からなる半導体光センサを用いなくても、所定(450nm以下)の紫外域の光にのみ感度を有することができる。本例の炎センサでは、シリコン基板の厚み方向の異なる深さ位置に複数のPN接合を有する構成とし、安価なシリコンを用いつつも、深さ位置の異なる各PN接合からの信号を演算処理することにより、高価な化合物半導体を用いるものよりも、また、650nm以上の一部の波長を透過してしまう紫外線透過フィルタを用いるものよりも、高い信頼性を有する出力を得ることができる。
【0055】
以上、説明したように、上述の実施形態における炎センサでは、輻射熱低減特性、紫外線選択性、フォトダイオード信号等価性、外部環境保護耐性が優れることにより、非常に信頼性に優れた紫外光強度に対応する出力を紫外光検出用リード端子から取り出し、赤外光強度に応じた炎の温度に対応する出力を温度検出用リード端子から取り出すことができる。また、高価な化合物半導体からなる光センサを用いず、かつ、高価な上に650nm以上の一部の波長を透過する紫外線透過フィルタを用いることなく、廉価で検出精度の高い火炎検出装置を実現できる。しかも、太陽光や室内照明らの外乱光の影響がない火炎検出装置が実現できる。
【0056】
更に、第1及び第2中間アンプ13,14と、第1及び第2アンプ16,15は、同一基板上に形成されているため、簡易な構成とすることができ、且つ、光検出素子100の第1及び第2フォトダイオード12a,12bと半導体回路基板200の中間アンプ13,14の入力端子とはボンディングワイヤB1,B2で接続されているため、これも簡易な構成となり、また、これらを別体として製造することができるため、不良品の発生確率を低減することができる。なお、半導体回路基板200はモノシリック半導体回路基板であるが、これはハイブリッド半導体回路基板としてもよい。
【0057】
また、第3フォトダイオード12cと第2アンプ15の入力端子とは、ボンディングワイヤB3で接続されている。この場合も、簡易な構成とすることができ、また、これらを別体として製造することができるため、不良品の発生確率を低減することができる。
【0058】
さらに、光検出素子100は、光入射面側に設けられ、第1フォトダイオード12aに接続された第1パッド23と、光入射面側に設けられ、第2フォトダイオード12bに接続された第2パッド21と、光入射面とは反対側に設けられ、第3フォトダイオード12cに接続された第3パッド22とを備えている。各フォトダイオードのパッドにはボンディングワイヤB1,B2.B3を接続することができ、電気信号をボンディングワイヤを介して各アンプに伝達することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、炎センサに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】炎センサを破断して示す斜視図である。
【図2】光検出素子の模式的な断面図である。
【図3】炎センサの回路図である。
【図4】分光感度特性を示すグラフである。
【図5】分光感度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3,4,5・・・リード端子、6,7,8,10・・・電極、
100a・・・シリコン半導体基板、12a,12b,12c・・・フォトダイオード、12・・・受光面、13,14,15,16・・・アンプ、13a,14a,15a・・・オペアンプ、13b,14b,15b・・・帰還抵抗、17・・・出力端子、30・・・球レンズ、31・・・固定部材、32・・・パッケージ、41・・・被覆、42・・・クラッド、43・・・コア、44・・・光ファイバ、45・・・ステム、100・・・光検出素子、101・・・N型半導体基板、102a,102b・・・P型ウェル層、103・・・N型半導体層、104・・・N型半導体層、105・・・絶縁膜、200・・・半導体回路基板、B1,B2,B3,B4,B5,B6・・・ボンディングワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎センサにおいて、
炎から出射した紫外域から可視域を含む光が一端に入射できる光ファイバと、
前記光ファイバの他端から出射した前記光が入射する第1フォトダイオード、前記光の紫外域成分が減少して入射するように前記第1フォトダイオードよりも深い位置に形成された第2フォトダイオード、及び前記光の紫外域成分がさらに減少して入射するように前記第2フォトダイオードよりも深い位置に形成された第3フォトダイオードが、シリコン半導体基板の厚み方向に沿って整列し前記光ファイバの他端から出射される光に対して同軸に配置されてなる光検出素子と、
前記第1及び第2フォトダイオードの出力が入力され差動増幅を行う第1アンプと、
前記第3フォトダイオードの出力が入力される第2アンプと、
前記光検出素子及び前記第1及び第2アンプを収容し、前記光ファイバの他端が取り付けられたパッケージと、
前記第1アンプの出力から前記パッケージの外部に延びる紫外光検出用リード端子と、
前記第2アンプの出力から前記パッケージの外部に延びる温度検出用リード端子と、
を備えることを特徴とする炎センサ。
【請求項2】
前記第1及び第2フォトダイオードの出力に接続された入力端子、及び前記第1アンプの2つの差動入力端子にそれぞれ接続された出力端子をそれぞれ有する第1及び第2中間アンプと、
前記第1及び第2アンプと、
を備える半導体回路基板を備え、
前記光検出素子の前記第1及び第2フォトダイオードと、前記半導体回路基板の前記第1及び第2中間アンプの入力端子とは、それぞれボンディングワイヤで接続されていることを特徴とする請求項1に記載の炎センサ。
【請求項3】
前記第3フォトダイオードと前記第2アンプの入力端子とは、ボンディングワイヤで接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炎センサ。
【請求項4】
前記光検出素子は、
光入射面側に設けられ、前記第1フォトダイオードに接続された第1パッドと、
光入射面側に設けられ、前記第2フォトダイオードに接続された第2パッドと、
光入射面とは反対側に設けられ、前記第3フォトダイオードに接続された第3パッドと、
を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炎センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−105877(P2006−105877A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295327(P2004−295327)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】