説明

無段式の出力分岐型の伝動装置および無段式の出力分岐型の伝動装置を制御するための方法

特に自動車に用いられる、無段式の、少なくとも所定の時間毎に出力分岐される出力分岐型の伝動装置であって、原動機によって駆動可能な入力軸と、連続的に可変の変速比を有するバリエータと、車伝動装置と、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチとが設けられており、該制御クラッチによってバリエータと車伝動装置とが互いに結合可能であって、しかも出力分岐型の伝動装置の全変速領域を走破する際にバリエータの調節範囲が多重走破されるようになっており、バリエータを調節するためにバリエータの各1つの円錐形ディスクペアのために、該円錐形ディスクペアの一方の円錐形ディスクを調節するための軸方向力を発生させるための手段が設けられており、さらに、回転数変化を検出するための手段と制御装置とが設けられている形式のものにおいて、該制御装置は、回転数変化が変速比の変化によってリリースされたものであるのかどうかの区別を行い、かつ変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化の場合には、変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化が補償されるように、軸方向力を発生させるための手段の軸方向力を変えるために適合されていることを特徴とする、出力分岐型の伝動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に、つまり一時的に、出力分岐運転の形で運転され得る無段式の出力分岐型の伝動装置に関する。さらに本発明は、このような伝動装置を運転するための方法に関する。
【0002】
無段式に可変の変速比を有する伝動装置(CVT伝動装置)は、その高い快適性および遊星歯車セットを用いてのみ作動する段階式オートマチックトランスミッションに比べて可能となる消費量低減に基づいて、車両、特に乗用車においてますます多く使用される傾向にある。出力伝達はこのような無段式の伝動装置の場合、巻掛け手段を介して行われる。この巻掛け手段は2つの円錐形ディスクペア(プーリ)の間を循環し、この場合、各円錐形ディスクペアの有効半径が1ペアの円錐形ディスクの相互間隔変化によって可変となる。このためには、一般に押圧ピストンを介して、目下伝達されたトルクに関連した押付け力が形成される。このためには、ハイドロメカニカル式のトルクセンサが設けられているか、または押付け圧がソフトウェア側で自由に制御される。ドイツ連邦共和国特許出願公開第10302992号明細書に基づき、両手段の組合せも公知である。押付け力はこの場合、基本的にセンサトルクと共に増大し、変速比にのみ関連している。変速比を調節したい場合、トルク押付け力には調節押付け力が重畳され、この調節押付け力によって変速比調節が行われる。
【0003】
消費量低減の理由から、伝動装置のレンジもしくはスプレット(ODとUDの比)を、唯一つのCVT伝動装置を用いて可能となる値を超えて増大させることが望まれている。このことは、いわゆる出力分岐型の伝動装置によって達成される。この出力分岐型の伝動装置では、CVT伝動装置のレンジもしくは変速領域が「二重に」使用される。この場合、歯車伝動装置との組合せおよび相応する制御クラッチの作動によってCVT伝動装置の変速領域が、出力分岐型の伝動装置の全変速比の変更時に該出力分岐型の伝動装置の全レンジ領域にわたって2回、たとえば互いに逆の方向で走破される。
【0004】
図1および図2には、自体公知であってかつ本発明と相まって使用され得る出力分岐型の伝動装置の1例が図示されている。
【0005】
車両の原動機は、たとえば内燃機関2である。この内燃機関2は始動クラッチ4を介して、出力分岐型の伝動装置8の入力軸6に結合されている。出力分岐型の伝動装置8の出力軸10は符号10で示されている。出力分岐型の伝動装置8は、連続的に可変の伝動装置を有するバリエータ(無段変速機)12と、少なくとも1つの歯車伝動装置14、たとえば遊星歯車伝動装置と、少なくとも2つの制御クラッチK1,K2とを有している。これらの制御クラッチK1,K2を用いて、バリエータ12は種々異なる形で歯車伝動装置14に連結可能となる。開ループ制御もしくは閉ループ制御のための電子制御装置16の入力側はアクセルペダルセンサ18と、内燃機関2の出力作動部材位置センサ20と、エンジン回転数センサ22と、バリエータ12の入力軸(同時に入力軸6であってよい)のためのセンサ24と、バリエータ12の出力軸の回転数を検出するためのセンサ26と、出力軸10の回転数を検出するためのセンサ28と、場合によっては別のセンサとに接続されている。電子制御装置16では、これらのセンサの信号および該電子制御装置16に記憶されたアルゴリズム、特性マップ等に関連して出力信号が形成され、この出力信号を用いて内燃機関2の出力作動部材30、始動クラッチ4のためのアクチュエータ、バリエータ12の円錐形ディスクペアのための押圧シリンダ内の、トルクに関連した圧力、円錐形ディスクペアの調節シリンダ内の該円錐形ディスクペア12の変速比を変えるための圧力および制御クラッチK1,K2が制御される。車両のホイールセットは図示されていないが、これらのホイールセットにはやはり回転数センサならびに後退走行のためのクラッチおよび/またはブレーキが設けられていてよい。
【0006】
図2には、バリエータ12を備えた出力分岐型の伝動装置の1例が図示されている。バリエータ12の一方の円錐形ディスクペア30は入力軸6に相対回動不能に結合されていて、第1の制御クラッチK1を介して第1の歯車32と連結可能である。バリエータ12の他方の円錐形ディスクペア34は出力軸36に相対回動不能に結合されており、この出力軸36は、遊星歯車伝動装置として形成された歯車伝動装置14のサンギヤ37に相対回動不能に結合されている。この出力軸36はさらに第2の制御クラッチK2を介して第2の歯車38と連結可能であり、この第2の歯車38は中間歯車40を介して第1の歯車32と回転係合している、つまり回転運動が伝達されるように噛み合っている。第2の歯車38は、遊星歯車伝動装置のプラネタリキャリヤ42に相対回動不能に結合されており、遊星歯車伝動装置のプラネタリピニオン44はインターナルギヤ46と噛み合っている。このインターナルギヤ46は出力軸10に相対回動不能に結合されている。第2の制御クラッチK2が締結されていて、第1の制御クラッチK1が解放されている状態では、サンギヤ37とプラネタリキャリヤ42とが一緒に回転するので、プラネタリピニオン44は静止していて、インターナルギヤ46を連行する。その場合、出力分岐型の伝動装置全体は単純なCVT伝動装置と同様に働く。このCVT伝動装置の全変速比が二重に利用される。バリエータ12の変速比が、予め規定された小さな値を有する切換点において両制御クラッチK1,K2は切り換えられるので、プラネタリキャリヤ42は今度は入力軸6に相対回動不能に結合された第1の歯車32と、中間歯車40と、第2の歯車28との間の変速比に相応して与えられた変速比によって入力軸6に相応して回転し、遊星歯車伝動装置14が有効となる。変速比は、切換点Uにおいて出力分岐型の伝動装置の全変速比igesが両制御クラッチK1,K2の切換状態とは無関係になるように設定されている。制御クラッチK1,K2のこの切換状態においてバリエータ12のスプレット領域もしくはレンジ領域が新たに走破されると、変速比igesが変化する。
【0007】
当然ながら、切換が、摩擦クラッチにより実現された回転数差の減少と結び付けられるように伝動装置範囲を構成することも可能である。また、切換がバリエータ変速比の変化と結び付けられるように伝動装置範囲を構成することも可能である。
【0008】
図3、図4、図5および図6には、トルクを検出するための手段、たとえばハイドロメカニカル式のトルクセンサまたは電子式の測定器具のための種々の組込み可能性を有する、出力分岐型のCVT伝動装置の配置例が示されている。ハイドロメカニカル式のトルクセンサが使用される場合、このトルクセンサは、導通されたトルクに相当する押付け圧を送出する。他方において、電子式の測定器具が使用される場合には、制御装置に電子的なトルク信号が伝送される。したがって、このトルクに関連して、1ペアの調節可能な方の円錐形ディスクが、該円錐形ディスクペアの有効半径を調節するために固定ディスクに押圧される。
【0009】
図3〜図6においては、JMotor、JEingang、JSS1、JSS2で、それぞれエンジン軸、入力軸ならびにバリエータ軸に相応する質量慣性モーメントが概略的に示されている。
【0010】
符号50でトルク規定手段が示されている。このトルク規定手段は、トルクに関連して直接に押付け圧を送出するか、または制御装置に対する入力信号として、相応する制御信号を発生させる。図3〜図6には、出力分岐のための種々の可能性が示されている(ただし他の可能性も考えられる)。
【0011】
このような公知の出力分岐型の無段式の伝動装置では、円錐形ディスクペアに加えられる押付け力がトルクと共に増減し、かつ変速比に関連している。
【0012】
以上のことから出発して、本発明の課題は、特に自動車に用いられる、無段式の出力分岐型の伝動装置を改良して、ホイール側で導入されたトルクが補償され得るような伝動装置を提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する伝動装置、つまり特に自動車に用いられる、無段式の、少なくとも所定の時間毎に出力分岐される出力分岐型の伝動装置であって、原動機によって駆動可能な入力軸と、連続的に可変の変速比を有するバリエータと、車伝動装置と、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチとが設けられており、該制御クラッチによってバリエータと車伝動装置とが互いに結合可能であって、しかも出力分岐型の伝動装置の全変速領域を走破する(durchfahren)際にバリエータの調節範囲が多重走破されるようになっており、バリエータを調節するためにバリエータの各1つの円錐形ディスクペアのために、該円錐形ディスクペアの一方の円錐形ディスクを調節するための軸方向力を発生させるための手段が設けられており、さらに、回転数変化を検出するための手段と制御装置とが設けられている形式のものにおいて、該制御装置は、回転数変化が変速比の変化によってリリースされたものであるのかどうかの区別を行い、かつ変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化の場合には、変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化を補償するために、軸方向力を発生させるための手段の軸方向力を変えるために適合されていることを特徴とする、出力分岐型の伝動装置および請求項10の特徴部に記載の特徴を有する、伝動装置を制御するための方法、つまりこのような形式の出力分岐型の伝動装置を制御するための方法において、該方法が、以下のステップ:
−回転数変化を検出し;
−該回転数変化が、変速比の変化によりリリースされたものであるのかどうかの区別を行い;
−該回転数変化が、完全に変速比の変化によってリリースされたものでない場合、変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化を補償するために、軸方向力を発生させるための手段の軸方向力を変える;
を包含することを特徴とする、出力分岐型の伝動装置を制御するための方法によって解決される。本発明の有利な実施態様は、請求項2〜請求項9ならびに請求項11〜請求項18に記載されている。
【0014】
本発明の根底を成す思想は、当該伝動装置のための制御装置が、回転数変化に現れる、ホイール側で導入されたトルクを分析し、かつ伝動装置の出力側から導入されたトルクもやはり出力分岐型の伝動装置において分岐されるという事実を考慮して、このことから変化に基づいて新たに必要となる円錐形ディスクのための押付け力を規定し、さらに円錐形ディスクへの該押付け力の付与を指図するように前記制御装置を適合させることである。
【0015】
本発明の根底を成す思想は、出力分岐型の伝動装置構造において、衝撃トルクも同じく分岐されるが、しかしその分配は必ずしも原動機側もしくはエンジン側の駆動トルクの分配に相応しないようにトルク衝撃が出力分岐型のCVT伝動装置構造に作用することである。それどころか、このような状況では、変速比および伝動装置構造に関連して、トルクセンサによって出力経路内で感知可能となる、通常では押付け力を規定するトルク衝撃の値および場合によっては正負符号が、同じ出力経路に配置されたCVTにより実際に十分な適切な押付け力を確保するために伝達されなければならないトルク衝撃とは無関係であり、かつこのようなトルク衝撃とは著しく異なっている場合がある。このことは、トルクセンサ機能が信頼性の良い結果を提供しないことを意味する。
【0016】
したがって、本発明によれば、無段式の出力分岐型の伝動装置の制御装置が改良され、この場合、該制御装置は、回転数変化が変速比の変化によってのみリリースされた(生ぜしめられた)ものであるのかどうかの区別もしくは判定を行い、回転数変化が変速比の変化によってリリースされたものでない場合または変速比の変化によってのみリリースされたものでない場合、押付け力を提供する、軸方向力を発生させるための手段の軸方向力を、変速比の変化によりリリースされたものではない回転数変化を補償するために変化させる。
【0017】
有利な実施態様では、トルクがハイドロメカニカル式のトルクセンサまたは別のトルクセンサによって検出され、ハイドロメカニカル式のトルクセンサが使用される場合には、該トルクセンサが、導通されたトルクに比例した圧力を発生させる。
【0018】
トルクを検出するための手段は電気的またはハイドロリック的な形の信号を発生させると有利である。この信号は制御装置に伝送される。
【0019】
トルクを検出するための手段が設けられていると、制御装置は有利な1実施態様では回転数変化の際に、検出されたトルクをベースにして、当該伝動装置に設けられた複数の軸の回転質量(慣性モーメント)および該軸の、回転数測定個所への変速比結合の使用下での該軸の、回転数変化により消費されたか、または遊離されたトルクの算出のステップを実施し;バリエータによる回転数変化により導入されたトルク寄与率およびこれにより生ぜしめられた所要の押付け力寄与率を算出し;回転数変化によりトルクを検出するための手段によって導入されたトルク寄与率およびこれにより生ぜしめられた、発生された押付け力寄与率を算出し、さらに所要の押付け力寄与率と、生ぜしめられた押付け力寄与率との間の差につき、軸方向力を発生させるための手段の、状況に関連した付加的な圧力または減じられた圧力、通常ではハイドロリック圧を算出する。
【0020】
回転数信号が、当該伝動装置に設けられた回転数センサからバリエータの変速比を規定すると有利である。
【0021】
この場合、たとえば有利な1実施態様では、伝動装置全体の変速比を使用することができる。択一的または補足的に、無段式の出力分岐型の伝動装置の少なくとも2つの制御クラッチの切換状態を考慮することができる。回転数変化は、たとえばホイールに設けられた相応する回転数センサにより検出される車両ホイールの回転数に基づいても規定され得る。
【0022】
トルクもしくは軸方向力の規定は、選択された構成に応じて、当該伝動装置における測定された別の量からの算出、あるいはまた相応するセンサの読取りによって行なわれ得る。
【0023】
以下に、本発明を図面につき詳しく説明する。
【0024】
図1は、出力分岐型のCVT伝動装置を備えた車両パワートレーンを示す概略図であり;
図2は、出力分岐型のCVT伝動装置の1実施態様を示す断面図であり;
図3は、トルク規定手段のための組込み可能性を有する出力分岐型のCVT伝動装置の1例を示す概略図であり;
図4は、トルク規定手段のための別の組込み手段を示す、図3に相応する図面であり;
図5は、出力分岐型のCVT伝動装置のための別の例を示す概略図であり;
図6は、出力分岐型のCVT伝動装置のためのさらに別の例を示す概略図であり;
図7は、図4に示した出力分岐型のCVT伝動装置に関して、出力分岐を静的な状況で示す概略図であり;
図8は、図7に示した出力分岐型のCVT伝動装置に関して出力側からの出力分岐を動的な状況で示す概略図である。
【0025】
無段式の、少なくとも所定の時間毎に出力分岐される伝動装置の例として挙げられた本発明によるCVT伝動装置の構造は、図1〜図6につき説明した構造に相当しているので、これについては詳しい説明を省略する。この出力分岐型の伝動装置の駆動出力は少なくとも所定の時間毎に、つまりクラッチの相応する位置において、分岐されて伝達されるので、巻掛け手段は出力分岐時に駆動出力の一部しか変換しない。出力分岐型のCVT伝動装置の制御装置は、所要の制御過程を実施し、これにより動的な走行状況、すなわち出力側から伝動装置へトルクが導入されるような走行状況に応答しかつこれに関連して押付け圧を変化させるために相応して適合されている。
【0026】
図7には、静的な状況における内燃機関2からのトルクの分配が示されている。たとえば内燃機関2から始動クラッチ4を介して送出された100%の出力は、入力軸6(慣性質量JEingang)を介して伝動装置に導入され、そしてこの伝動装置内でたとえば70対30の割合で分割される(図7参照)。分割の割合は、出力分岐型の伝動装置が運転されているときの変速比に関連している。このことは、トルクを検出するための手段50、たとえばトルクセンサにおいて同じく、内燃機関2から送出されるトルクの30%が検出されることを意味する。同じく、30%がバリエータ12とバリエータ出力軸とを介して遊星歯車伝動装置14に導入される。この遊星歯車伝動装置14から、再び全エンジン出力(エンジントルクの100%)が出力軸10を介して車両のホイールへ伝達される。
【0027】
それに対して図8に示したように、ホイールの側から、つまり出力軸10を介して、100%の衝撃トルクが導入されると、この衝撃トルクは遊星歯車伝動装置14の変速比および関与した軸の回転質量(慣性モーメントJ)とに関連して、トルクX%もしくはトルクY%に分割される(X%+Y%=100%)。回転質量(軸の慣性モーメント)はこれらのトルクによって加速されるので、図8に示した下側のパワートレーンではトルクもしくは出力が左側へ向かって、つまりバリエータ12とバリエータ入力軸とを介してトルクセンサ50にまで減少する。このことは、トルクセンサ50もしくはバリエータ12においてX%とは異なるトルクもしくは出力Z1%,Z2%を生ぜしめる。この場合、それどころか、バリエータ12を備えたこの経路において回転質量分配に基づいて比較的僅かな出力しか流れない場合に、トルクセンサ50におけるトルクもしくは出力Z1が小さくなるだけではなく、負となることもあり得る。
【0028】
図8からは、トルクセンサ50において取り出されたトルク、つまりバリエータ12におけるトルクZ2のための押付け力を決定する、個所Z1で取り出されたトルクが、バリエータにおけるトルクZ2と合致しておらず、したがってトルクセンサ50において規定された、バリエータ12のための押付け力が、出力側からのトルク衝撃に基づき、バリエータ12において実際に必要とされる当付け力と一致しなくなり、補正が必要となることが判る。
【0029】
したがって、有利な1実施態様では、当該伝動装置のための制御装置において、伝動装置軸における回転数変化が検出された場合に、伝動装置軸におけるこの回転数変化により自由になったトルクまたは吸収されたトルクが算出される。この場合、この規定は変速比、つまり軸の回転数および回転質量の使用下に行われる。軸もしくは該軸に設けられた、回転するコンポーネントの既知の変速比および既知の回転質量において、1つの軸における回転数変化から、複数の軸の消費し尽くされたトルクもしくは自由になったトルクを推量することができる。
【0030】
引き続き、制御装置において、バリエータによる回転数変化により導入されたトルク寄与率(Drehmomentbeitrag)、つまり図8のZ2に相当するトルク寄与率が規定される。このトルク寄与率から、制御装置では所要の押付け力寄与率が自体公知の形式で求められる。
【0031】
同様に、バリエータにおけるトルクの検出もしくは回転数変化により生じるトルク寄与率の検出に対して平行して、トルクのための検出手段50においてトルク寄与率Z1が規定される。このトルク寄与率Z1からも、押付け力もしくは押付け力寄与率が求められ、この押付け力寄与率は、実際にトルク検出に基づいて提供されかつ形成された押付け力寄与率に相当する。
【0032】
さらに、制御装置は所要の押付け力と、形成された押付け力寄与率との間の差を算出して、必要とされる押付け力寄与率と、算出されかつ形成された押付け力寄与率との間の差が減少するように、軸方向力を発生させるための手段により円錐形ディスクに加えられる圧力を補正する。
【0033】
制御装置は次いで、バリエータの調節力およびクランプ力を発生させる、公知の形式で算出された標準的なハイドロリック圧に対して付加的に、動的なトルクにより形成された付加的なクランプ力もしくは減じられたクランプ力を加えなければならない。バリエータクランプ力の慣用的な変化は、トルクセンサ50から算出されたトルクと、このことから引き出された、形成されたクランプ力とから、バリエータの測定もしくは算出された回転数比を考慮して規定される。この場合、この回転数比から、チェーンによって伝達されるべきトルクが規定される。
本発明によれば、動的なトルクによる付加的な調節力もしくは減じられた調節力の算出に、バリエータ12の目下の変速比が関与する。この変速比は、たとえばバリエータ入力軸およびバリエータ出力軸における回転数信号から規定可能である。このためには、相応する回転数センサが設けられていてよい。また、伝動装置の変速比を算出するために、たとえば両制御クラッチK1,K2の状態、ひいては伝動装置全体の切換状態が考慮される。バリエータに加えられるべき付加的な力もしくは減じられた力の算出をリリースする回転数変化は、たとえば車両のホイールセンサにおける回転数変化を検出することによって行なわれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】出力分岐型のCVT伝動装置を備えた車両パワートレーンを示す概略図である。
【図2】出力分岐型のCVT伝動装置の1実施態様を示す断面図である。
【図3】トルク規定手段のための組込み可能性を有する出力分岐型のCVT伝動装置の1例を示す概略図である。
【図4】トルク規定手段のための別の組込み手段を示す、図3に相応する図面である。
【図5】出力分岐型のCVT伝動装置のための別の例を示す概略図である。
【図6】出力分岐型のCVT伝動装置のためのさらに別の例を示す概略図である。
【図7】図4に示した出力分岐型のCVT伝動装置に関して、出力分岐を静的な状況で示す概略図である。
【図8】図7に示した出力分岐型のCVT伝動装置に関して出力側からの出力分岐を動的な状況で示す概略図である。
【符号の説明】
【0035】
2 内燃機関
4 始動クラッチ
6 入力軸
8 出力分岐型の伝動装置
10 出力軸
12 バリエータ
14 歯車伝動装置
16 電子制御装置
18 アクセルペダルセンサ
20 出力作動部材位置センサ
22 エンジン回転数センサ
24 センサ
26 センサ
28 センサ
30 円錐形ディスクペア
32 第1の歯車
34 円錐形ディスクペア
36 出力軸
37 サンギヤ
38 第2の歯車
40 中間歯車
42 プラネタリキャリヤ
44 プラネタリピニオン
46 インターナルギヤ
50 トルクを検出するための手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車に用いられる、無段式の、少なくとも所定の時間毎に出力分岐される出力分岐型の伝動装置(100)であって、原動機(2)によって駆動可能な入力軸(6)と、連続的に可変の変速比を有するバリエータ(12)と、車伝動装置(14)と、出力軸(10)と、少なくとも2つの制御クラッチ(K1,K2)とが設けられており、該制御クラッチ(K1,K2)によってバリエータ(12)と車伝動装置(14)とが互いに結合可能であって、しかも出力分岐型の伝動装置(100)の全変速領域を走破する際にバリエータ(12)の調節範囲が多重走破されるようになっており、バリエータ(12)を調節するためにバリエータ(12)の各1つの円錐形ディスクペア(30,34)のために、該円錐形ディスクペア(30,34)の一方の円錐形ディスクを調節するための軸方向力を発生させるための手段が設けられており、さらに、回転数変化を検出するための手段(24,26,28)と制御装置とが設けられている形式のものにおいて、該制御装置は、回転数変化が変速比の変化によってリリースされたものであるのかどうかの区別を行い、かつ変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化の場合には、変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化を補償するために、軸方向力を発生させるための手段の軸方向力を変えるために適合されていることを特徴とする、出力分岐型の伝動装置。
【請求項2】
さらに、トルクを検出するための手段(50)、特にハイドロメカニカル式のトルクセンサが設けられており、該トルクセンサが、導通されたトルクに比例した圧力を発生させる、請求項1記載の伝動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、回転数比の変化が変速比の変化によりリリースされたものかどうかの判断を、トルクを検出するための前記手段(50)によって検出されたトルクにより行うために適合されている、請求項2記載の伝動装置。
【請求項4】
トルクを検出するための前記手段(50)が、トルク信号、特に電気的またはハイドロリック的な形のトルク信号を制御装置へ伝送するために適合されている、請求項2または3記載の伝動装置。
【請求項5】
回転数変化が検出された場合に以下のステップ:
a) 当該出力分岐型の伝動装置の目下の変速比およびその慣性質量の使用下に当該出力分岐型の伝動装置のアクティブな軸のトルクを規定し;
b) バリエータにより導入されたトルクを規定し;
c) バリエータにより導入されたトルクから軸方向力を発生させるための前記手段の所要の軸方向力を規定し;
d) トルクを検出するための前記手段により導入されたトルク寄与率を規定し;
e) 上記(d)で規定されたトルク寄与率から、発生された軸方向力を規定し;
f) 所要の軸方向力と、発生された軸方向力との間の差を算出し;
g) 上記(f)における差が減少するように、軸方向力を発生させるための前記手段における軸方向力変化を指図する;
を実施するために制御装置が適合されている、請求項2から4までのいずれか1項記載の伝動装置。
【請求項6】
当該出力分岐型の伝動装置が複数の回転数センサ(24,26,28)を有しており、前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおける規定が、バリエータの変速比を規定する回転数センサ(24,26)の回転数信号を用いて実施される、請求項5記載の伝動装置。
【請求項7】
前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおいて、伝動装置全体の変速比が考慮される、請求項5または6記載の伝動装置。
【請求項8】
前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおいて、前記少なくとも2つの制御クラッチ(K1,K2)の切換状態が考慮される、請求項5から7までのいずれか1項記載の伝動装置。
【請求項9】
さらに、車両ホイールの回転数のための回転数センサが設けられており、前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおいて、車両ホイールの回転数のための回転数センサによって検出された、車両ホイールの回転数の変化が考慮される、請求項5から8までのいずれか1項記載の伝動装置。
【請求項10】
特に自動車に用いられる、無段式の、少なくとも所定の時間毎に出力分岐される出力分岐型の伝動装置であって、原動機によって駆動可能な入力軸と、連続的に可変の変速比を有するバリエータと、車伝動装置と、出力軸と、少なくとも2つの制御クラッチとが設けられており、該制御クラッチによってバリエータと車伝動装置とが互いに結合可能であって、しかも出力分岐型の伝動装置の全変速領域を走破する際にバリエータの調節範囲が多重走破されるようになっており、バリエータを調節するためにバリエータの各1つの円錐形ディスクペアのために、該円錐形ディスクペアの一方の円錐形ディスクを調節するための軸方向力を発生させるための手段が設けられており、さらに、回転数変化を検出するための手段と制御装置とが設けられている形式の出力分岐型の伝動装置を制御するための方法において、該方法が、以下のステップ:
−回転数変化を検出し;
−該回転数変化が、変速比の変化によりリリースされたものであるのかどうかの区別を行い;
−該回転数変化が、完全に変速比の変化によってリリースされたものでない場合、変速比の変化によってリリースされたのではない回転数変化を補償するために、軸方向力を発生させるための手段の軸方向力を変える;
を包含することを特徴とする、出力分岐型の伝動装置を制御するための方法。
【請求項11】
当該方法が、トルクを検出するための手段、特に導通されたトルクに比例した圧力を発生させるハイドロメカニカル式のトルクセンサによるトルクの検出のステップを包含する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
回転数比の変化が変速比の変化によりリリースされたものであるのかどうかの判断を、制御装置が、トルクを検出するための前記手段によって検出されるトルクにより行う、請求項11記載の方法。
【請求項13】
トルクを検出するための前記手段が、トルク信号を、特に電気的またはハイドロリック的な形のトルク信号を制御装置へ伝送する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
制御装置が、回転数変化の検出時に以下のステップ:
a) 当該出力分岐型の伝動装置の目下の変速比およびその慣性質量の使用下に当該出力分岐型の伝動装置のアクティブな軸のトルクを規定し;
b) バリエータにより導入されたトルクを規定し;
c) バリエータにより導入されたトルクから、軸方向力を発生させるための前記手段の所要の軸方向力を規定し;
d) トルクを検出するための前記手段により導入されたトルク寄与率を規定し;
e) 上記(d)で規定されたトルク寄与率から、発生された軸方向力を規定し;
f) 所要の軸方向力と、発生された軸方向力との間の差を算出し;
g) 上記(f)における差が減少するように、軸方向力を発生させるための前記手段における軸方向力変化を指図する;
を実施する、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
当該出力分岐型の伝動装置が、複数の回転数センサを有しており、前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおける規定が、バリエータの変速比を規定する回転数センサの回転数信号を用いて実施される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおいて、伝動装置全体の変速比が考慮される、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおいて、前記少なくとも2つの制御クラッチの切換状態が考慮される、請求項14から16までのいずれか1項記載の伝動装置。
【請求項18】
さらに、車両ホイールの回転数のための回転数センサが設けられており、前記ステップa)〜e)の少なくとも1つのステップにおいて、車両ホイールの回転数のための回転数センサによって検出された、車両ホイールの回転数の変化が考慮される、請求項14から17までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−534589(P2009−534589A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505710(P2009−505710)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000550
【国際公開番号】WO2007/118447
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】