説明

無線装置

【課題】本発明は、基準発振部から出力される基準信号を用いて、演算部の設定で無線通信の送受信周波数を生成する無線通信機器において、基準発振部の温度特性を補正するためのデータを効率的かつ、高精度な補正を実現する構成を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の無線通信機器300は、送信処理を行う際に、温度検出部305で基準発振部303の雰囲気温度を検出し、該当の温度に対する第1補正データを外部記憶部304より読み出した上で、演算設定部311で、内部記憶部312に記憶されている第2補正データ、基準チャネル設定データを用い送信周波数を演算し、高周波部301から、あらかじめ決められたデータを変調し送信をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振子や発振回路を用いて送受信周波数を生成する無線装置に関するもので、発振部の温度特性や周辺回路の特性のばらつきを補正するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信を行う機器では、無線通信を行う周波数帯に応じた発振回路を保有している。発振回路は、コンデンサ、コイル、抵抗などの受動素子で構成されたものや、水晶やセラミックスを使った振動子のものがある。
【0003】
またこれらの発振回路は、一般的に温度特性を持っている。たとえば抵抗を用いた回路であれば、抵抗自体が少なくとも数十ppmから数百ppm程度の温度係数を持っているため、温度補正回路を持たない回路であれば、使用素子の温度特性がそのまま合算された温度特性をもつことになる。
【0004】
一方、水晶を使った発振回路の場合では、水晶振動子を構成する水晶片のカット角によって温度特性は制御される。一般的に温度特性が良好と呼ばれるATカットの場合でも温度範囲にもよるが、−10℃から60℃の間で50ppm程度の温度特性をもつ。
【0005】
これらの温度特性を低減するために、周波数温度特性を補償したTCXO(Temperature Compensated Xtal Oscillator)などの素子がある。これは水晶片の温度特性を補償するようなアナログ回路を構成したものや、補償するようなデータをロム等にもち、ディジタル的に補正していく手段が存在する。水晶等の温度特性や周辺回路の温度特性を正確に補正する必要が場合には、外部素子で補正する方法ではなく、ロムに補正データを記憶させておく方法が取られる。この場合、より高精度に補正を行う場合には、複数の補正点をもつことや、高次数の曲線で補正データを構成する必要が出てくるため、ロムの容量を大きくする必要があるという課題があった。
【0006】
またディジタル的な補償をTCXOで実施する場合、補償をする際に使用する集積回路の電源電圧範囲を限定されていることが多い。近年、TCXOを使用される環境が低電圧化しているが、一般的なマンガン、アルカリ、リチウム電池を使い、平滑化せず直接回路を駆動させる回路において、対応することは難しい。また、電池電圧の変動範囲が仮に使用できる範囲内で変化した場合には、TCXOの構成上、供給される電源電圧が変化すると、発振回路の状態が変化し、出力される周波数が若干変化する。
【0007】
また通常の水晶振動子を使った構成で、水晶振動子の出力をCPU等に取り込み、出力を分周、逓倍する過程で補正する方法があるが、これも上述したように補正するデータを格納するロム容量に依存する構成となっている。
【0008】
これらを解決する手段として、効率的に補正データを記録する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3419920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような補償方法であれば、本質的にはロム容量に依存するため、水晶片が変わった場合や、水晶以外の周辺回路の部品仕様や実装する基板等の要因でより補正量を大きくする必要がある場合には対応しきれないことも生じる。そもそも、TCX
O自体も、たとえば供給される電源が大きく変動する場合に対応しきれないことや、消費電流などの課題があり、使用できない状況もありうる。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題を解決して、水晶片などの発振機能を司る部分の他、周辺回路の構成を変えた場合や、補正量を大きく変えなくてはならない場合にも対応できるような補正手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の無線装置は、基準信号を生成する基準発振部と、基準発振部周辺の温度を検出する温度検出部と、基準発振部において任意の温度ごとに対応付けられた周波数偏差を示す第1の補正データを記憶する第1の記憶部と、第1の補正データよりもデータ量が少なく表現される第2の補正データと周波数偏差を含まない基準チャネル設定データとを記憶する第2の記憶部と、基準チャネル設定データに温度検出部で検出された温度に対応する第1の補正データと第2の補正データとの積を加算して送信チャネル設定データを生成する演算部と、送信チャネル設定データを基に任意の信号を変調し送信する高周波部とを備えたものである。
【0012】
これにより、無線装置における温度特性や部品ばらつきに起因する送信周波数偏差を効率的に補正することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水晶振動子などの温度補償手段を持たない発振回路を使った無線装置において、発振回路や他の周辺部品の影響で温度特性などの偏差が変化した場合や、水晶振動子、回路構成といった部品構成を変えて新たに商品開発を行う際にも補正手段を変えることなく、高精度に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、基準信号を生成する基準発振部と、前記基準発振部周辺の温度を検出する温度検出部と、前記基準発振部において任意の温度ごとに対応付けられた周波数偏差を示す第1の補正データを記憶する第1の記憶部と、前記第1の補正データよりもデータ量が少なく表現される第2の補正データと周波数偏差を含まない基準チャネル設定データとを記憶する第2の記憶部と、前記基準チャネル設定データに前記温度検出部で検出された温度に対応する第1の補正データと前記第2の補正データとの積を加算して送信チャネル設定データを生成する演算部と、前記送信チャネル設定データを基に任意の信号を変調し送信する高周波部とを備えることで、無線装置における温度特性や部品ばらつきに起因する送信周波数偏差を効率的に補正することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に記載の第2の補正データは第1の補正データと同じ基数で表現され、前記第2の補正データの桁数は前記第1の補正データの桁数よりも小さい桁数で表現されることとで、無線装置における温度特性や部品ばらつきに起因する周波数偏差を演算時間の向上や記憶容量の効率化を維持しつつ、効率的に補正することができる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明に記載の第2の補正データを記憶する第2の記憶部は、演算部内に設けられることで、演算時間の向上や記憶容量の効率化、部品点数を少なくすること、および無線装置の小型化を行った上で、無線装置における温度特性や部品ばらつきに起因する周波数偏差を効率的に補正することができる。
【0017】
第4の発明は、基準信号を生成する基準発振部と、前記基準発振部周辺の温度を検出する温度検出部と、前記基準発振部において任意の温度ごとに対応付けられた周波数偏差を示す第1の補正データと、前記第1の補正データよりもデータ量が少なく前記任意の温度
ごとに表現される第2の補正データとを記憶する第1の記憶部と、前記周波数偏差を含まない基準チャネル設定データを記憶する第2の記録部と、前記基準チャネル設定データに前記温度検出部で検出された温度に対応する第1の補正データと前記第2の補正データとの積を加算して送信チャネル設定データを生成する演算部と、前記送信チャネル設定データを基に任意の信号を変調し送信する高周波部とを備えることで、無線装置における送信周波数の温度特性を効率的かつ高精度に補正することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態は、本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
はじめに水晶振動子の温度特性、およびその水晶振動子を基板に実装した際の温度特性について説明する。水晶振動子の振動周波数は、水晶片の振動モードやカット角で決まる。そのカット方法は多様であり、無線機の基準周波数を生成するために使用する水晶片は、たとえば、ATカット、BTカットなどがあり、特に温度特性が良いATカットを用いることが多い。そのカバー周波数は、推奨数百キロヘルツから百メガヘルツである。
【0020】
図1は、水晶振動子単体の温度特性101と前記水晶振動子を基板実装した際の温度特性102例を示している。ここで、横軸は水晶振動子の表面温度を示し、縦軸に水晶振動子の周波数偏差を示すものとする。水晶振動子単体の温度特性101と基板実装した際の温度特性102とでは、基準温度(たとえばATカットであれば25℃付近)から離れれば、周波数偏差の差が大きくなることが分かる。これは、水晶振動子単体から基板実装する際に、水晶振動子外の発振回路の定数や基板自体に含まれる容量、さらには、基板に実装することで熱対流の変化が生じるため差が生じる。
【0021】
また、一方で、水晶振動子自体は、その構成要素の水晶片のカット角が温度特性のばらつきに大きく寄与している。水晶のカット角は製造上必ずばらつき幅を持っているため、温度特性もある範囲でばらつきが生じる。たとえば、図2のように水晶振動子は、水晶片のカット角のばらつきによって温度特性曲線が変化する。
【0022】
次に実施の形態1における無線通信機器の内部ブロック図を図3に示す。本発明の実施の形態1の無線通信機器300は、高周波部301、演算部302、基準発振部303、外部記憶部304、温度検出部305を含んで構成される。また、演算部302は、演算設定部311と内部記憶部312を含み構成されている。
【0023】
無線通信機器300は、アンテナを介して、RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)で使用される短距離通信用の電波や、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)などを用いて、無線通信機器300とは別の無線通信機器と所定の通信プロトコルに基づいて通信を行なう。そのために、無線通信機器300内の高周波部301は、増幅回路、変調回路、検波回路、フィルタ回路、復調回路、エンコード回路、デコード回路、逓倍回路、位相同期回路、チャージポンプ回路、位相差検出回路、VCO回路などの回路が含まれる。
【0024】
基準発振部303は、コンデンサ、コイル、抵抗等などの受動部品や、トランジスタ、ダイオード、複合デバイスなどの半導体素子をもとに構成された発振回路や、圧電性セラミックを用いたセラミック振動子や水晶片を使った水晶振動子を用いて発振回路を構成している。
【0025】
演算部302は、マイクロコンピュータ等の演算回路を含む演算設定部311と演算設定を行なうためのシーケンスや、前記記載の無線通信を行う際の設定(たとえば、送信周
波数、送信出力、変調方式、周波数偏移量、受信周波数、復調方式等、フィルタ設定、自動周波数制御設定)を記録しておく内部記憶部312で構成さている。
【0026】
また外部記録部304は、演算部302内部に構成されている記録部とは独立し、EPROM (Erasable Programmable ROM)や、フラッシュメモリのような半導体素子等で構成されており、無線通信機器ごとに固有のデータを書込み記憶しておくことが可能である。
【0027】
温度検出部305では、NTCサーミスタ、PTCサーミスタ、CTRサーミスタ、半導体温度計など温度を検知するセンサーや、温度特性を持った素子、たとえばダイオードやコンデンサ、抵抗などの素子で構成されている。また、温度検知部305では、水晶振動子の近傍に実装し、水晶振動子近傍の雰囲気温度を測定する。
【0028】
以下に、本発明の実施の形態の無線通信機の送信処理について説明していく。無線通信機300では、あらかじめ決められたプロトコルに沿って送信するために、演算部302内の内部記憶部312に記憶された送信出力、変調方式、送信周波数等の無線送信情報を呼び出し、演算設定部311へ入力する。演算設定部311では、入力された無線送信情報をもとに、高周波部301を設定、制御を行い、送信する任意のデータを演算設定部311から高周波部301へ入力し、所定の設定により変調を行ない、アンテナを介して送信を行う。
【0029】
無線送信情報のうち送信周波数は以下のように算出する。プロトコルに沿って決められた送信周波数に設定するために、基準発振部303の雰囲気温度や、部品ばらつき等に起因する周波数偏差が0のときを基準に算出された基準チャネル設定データ(内部記憶部312に記憶されている)に、基準発振部303の温度特性や周辺部品を含むバラつきを補正する補償データ(無線送信機ごとの固有値)を加算し算出する。つまり、基準チャネル設定データは、高周波部301や基準発振部302の公称周波数に依存しているものであり、同じ高周波LSIや水晶発振子を使い同様の設定で使用する場合には、同一データとなる。したがって、LSI内部等にあり、比較的容量が大きい記憶領域である内部記憶部312に記憶する。また、演算処理プログラムと同様に機種ごとに共通化できるデータは、あらかじめ固定できるデータとして内部演算部312に記憶しておく方が、無線装置を生産するときの、製造コストも下げることができる。
【0030】
補正データは、内部記憶部312に記憶され、基板、基準発信部303、その周辺回路の構成等により決められた第1補正データと、外部記憶部304に記憶された無線送信機ごとにユニークに決められた第2補正データとを用いて演算設定部311で生成される。
【0031】
ここで、第1補正データは、基準発振部302の温度特性や、部品ばらつき、製造ばらつき、さらには周辺部品のばらつき等を補正するデータであり、個体ごとにユニークとなり、無線装置を生産する際に記憶させる必要がある。したがって、不揮発性メモリである外部記憶部304に記憶させることが望まれる。第2補正データは、前記ばらつき等を記載するデータのうち、個体ごとにばらつきが少ない補正データ成分(共通化できる成分)になるため、基準チャネル設定データが記憶される内部記憶部312に記憶させることができる。
【0032】
次に、具体的な演算処理を図4を用いて説明する。
【0033】
プロトコルに沿って、たとえば2chで送信する場合の送信周波数について説明する。はじめに、内部記憶部312に記録されている基準チャネル設定データ(A)を演算設定部311へ読み込む。2chの場合、[101011111]となる。
【0034】
次に、演算設定部311は、補正データを算出するために、温度検知部315より基準発振部303の雰囲気温度を計測し読み込む。続いて、演算設定部311は、外部記憶部304で該当の計測温度に対する第1補正データ(B)を探索する。読み込んだ温度が5℃の場合は、[100000]となる。次に、演算設定部311は、内部記録部312より第2補正データ(C)を読み取る。ここでは、[10]となる
以上のことから、演算設定部311では、基準チャンネル設定データ(A)と第1補正データ(B)と第2補正データ(C)とを用い、送信周波数を算出する。具体的な演算は、送信周波数=基準チャネル設定データ(A)+第1補正データ(B)*第2補正データ(C)で算出する。
【0035】
上記の例では、温度検出部305で検出した温度に対応した第1補正データ(B)が、外部記憶部304に存在する場合を示したが、多くの場合、検知した温度がそのまま、外部記憶部304に存在することはなく、外部記録部304内にあるデータを使って、演算部302内の演算設定部311で推定し補正データを算出する。たとえば、温度検出部305で検出した温度が30℃の場合は、20℃と40℃の第1補正データを用い、たとえば直線補間法を用いて算出することができる。推定方法については、他にも高次元の補間曲線、区間ごとに関数を用いる方々など、その方法は問わない。また、外部記憶部304の第1補正データは、演算部302の処理方法によっては、記憶されている情報が、演算部302内に展開されて処理されることもあり、温度検知を行うごとに、外部記憶部304へアクセスし、第1補正データを探索せずに、演算部302内に展開された情報へアクセスし探索を行うこともある。
【0036】
次に外部記憶部304内に記憶されている第1補正データと演算部302の中の内部記憶部311内に記憶されている第2補正データについて説明を行う。
【0037】
送信周波数は、基準チャネル設定データと補正データで構成されている。基準チャネル設定データは、基準発振部303の雰囲気温度の影響や、部品ばらつき等に起因する周波数偏差が0のときの送信周波数情報であるのに対し、第1補正データと第2補正データは、基準発振部303の温度特性、部品ばらつき等に起因する周波数偏差を補正するデータを示している。
【0038】
たとえば、周波数偏差を補正する曲線が図5のように表現される場合について説明を行う。補正データは、図5に示す連続的な曲線に対し、できるだけ少ないデータで効率的にかつ高精度に補間できるように離散値として外部記憶部304や内部記憶部311に記憶される。たとえば、図5の場合、補正データは曲線に対して、・・・、a30、a20、a10、a00、a01、a02、a03、・・・のように離散的点で表され、それぞれの補正データは、温度に対する周波数偏差を示している。したがって、a00は温度t00と周波数偏差f00で、a01においては、温度t01と周波数偏差f01のように表現できる。
【0039】
したがって、温度が決まれば周波数偏差を補正する補正データが決まり、これを基準チャネル設定データに加えることで、送信周波数情報が決定できる。
【0040】
この送信周波数情報は、高周波部301内にあるPLL(Phase Locked Loop)でつくる比較周波数を設定し、送信周波数を生成する。したがって、補正データの増減は、PLLで設定する比較周波数を増減させ、送信周波数を調整することになる。
【0041】
また、この高周波部で設定できる周波数の分解能は、高周波部内のPLL、VCO、こ
れらを設定するレジスタ等の性能(桁数)に依存している。たとえば、補正データ1ビットあたりに、高周波部で設定できる周波数の分解能は10ヘルツのように決まっている。
【0042】
一方、このことは、補正データのデータ量(大きさ)により、補正できる最大量が決まってくる。たとえば、補正データが8ビットで表現でき、設定できる周波数分解能が10ヘルツの場合は、表現できる値は255であるから、補正できる最大量は、255×10ヘルツで2550ヘルツとなる。
【0043】
本発明では、補正データを第1補正データと第2補正データと2つ持つことで、補正できる最大量を拡張でるようにした。
【0044】
具体的には、補正データは、第1補正データと第2補正データの積算で表現し、各温度点における補正固有値(無線送信機ごとにユニークな値)を示し、第2補正データは、固定値で表現する。第2補正データを1とすれば、高周波部301で設定できる最小分解能であり、補正データを2とすれば、最小分解能の2倍の値で、第1補正データが基準チャネル設定データに加えられることになる。これにより、補正できる最大量は、第2補正データが1のときと比較し、2倍以上の値となる。
【0045】
以上のように構成された実施の形態1の無線通信機器の処理の流れを図6に従って説明する。図6は、本実施形態に係る無線通信機器の送信動作フローを示す。
【0046】
はじめに、無線通信機器300内の演算設定部311は、基準発振部303等の周波数偏差量に対する補正データを求めるため、雰囲気温度を検知する温度検知部305に電源を投入する(S601)。続いて、温度検知部305を演算部302内の演算設定部311より制御し温度データを取得する(S602)。
【0047】
続いて演算設定部311は温度データ取得後に温度検知部305に投入されている電源を切る(S603)。次に、演算設定部311はS602で取得した温度データを基に補正データを求める。まず第1補正データが記憶されている外部記憶部304内で、取得した温度データが当てはまる温度点を探索する。(S604)。
【0048】
同様に、演算設定部311はS604で当てはまる温度データ2点で構成される区間とそれぞれの第1補正データを演算設定部311へ読み込み、温度検知部305で検出した温度に対する第1補正データを、直線補間等の演算を用いて算出する(S605)。
【0049】
続いて、S605で算出した第1補正データと、演算部302内の内部記憶部312に記憶されている第2補正データと、基準チャネデータとを演算設定部311へ読み込み、S605で算出した第1補正データとを用いて、送信周波数情報を生成する。また、同時に、他の無線通信に必要な情報も内部記憶部312より読み込み、高周波部301を制御するためのレジスタへセットする(S606)。
【0050】
次に、高周波部301の電源をONし(S607)、内部記憶部312に記憶された任意の送信データを設定演算部311へ入力し、高周波部301で変調しアンテナより送信を行う(S608)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態1の無線通信機器によれば、基準発振部の構成、特性が変わった場合でも、特性を補正するための補正データを第1補正データと第2補正データとで、データ量の異なる量として持つことで多様な特性補正に対応することができる。また上記の処理は無線送信について説明したが、同様に受信シーケンスでも実施することは可能である。
【0052】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2における無線通信機器における補正データの演算処理を示した図である。実施の形態1と同様な部分については説明を省略し、特に図4と相違する演算処理について説明を行う。
【0053】
無線送信情報のうち送信周波数は、プロトコルに沿って決定し、次のように算出する。送信周波数は基準チャネル設定データと無線装置ごとにユニークな値となる補正データで構成さている。補正値データは、第1補正データと第2補正データで構成されている。
【0054】
基準チャネル設定データは、内部記憶部312に記憶され、基準発振部303の雰囲気温度の影響や、部品ばらつき等に起因する周波数偏差が0のときの送信周波数情報であるのに対し、第1補正データと第2補正データは、外部記憶部304に記憶され基準発振部303の温度特性、部品ばらつき等に起因する周波数偏差を補正するデータになる。
【0055】
補正データには、機種ごとや、基準発信部303やその周辺回路や構成により決められた第1補正データと無線送信機ごとにユニークに決められた第2補正データとの2種類があり、共に、外部記憶部304に記憶されている。
【0056】
以下に送信する際の送信周波数情報について説明する。はじめに、内部記憶部312に記録されている基準チャネル設定データ(A)を演算設定部311へ読み込む。2chの場合、[101011111]となる。
【0057】
次に、演算設定部311は、補正データを算出するために、温度検知部315より基準発振部303の雰囲気温度を計測し読み込む。続いて、演算設定部311は、外部記憶部304で該当の計測温度に対する第1補正データ(B)と第2の補正データ(C)を探索する。読み込んだ温度が5℃の場合は、第1補正データ(B)は、[100000]に、第2補正データ(C)は[01]となる。
【0058】
以上のことから、演算設定部311では、基準チャンネル設定データ(A)と第1補正データ(B)と第2補正データ(C)とを用い、送信周波数情報を算出する。具体的な演算は、送信周波数情報=基準チャネル設定データ(A)+第1補正データ(B)*第2補正データ(C)で算出する。
【0059】
実施の形態2では、それぞれの第1補正データに対応した第2補正データも持つことができる。これにより、第1補正データの値に掛け合わせる第2補正データを補正データごとに変化させることができる。これは、基準発振部303の温度特性や基準発振部303やその周辺回路のばらつき方に応じて、フレキシブルな補正データを温度ごとに配置することができる。つまり、補正データを効率的にもつことだけでなく、補正データの精度も変化させることがでる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態の無線通信機器によれば、基準発振部の構成、特性が変わった場合でも、特性を補正するための補正データを温度ごとに第1補正データと第2補正データとで、データ量の異なる量として持つことで多様な特性補正に対応することができる。
【0061】
また上記の処理は無線送信について説明したが、同様に受信シーケンスでも実施することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、使用されている基準発振部の部品ばらつきや温度特性等を補正するためのデータを、第1補正データと第2補正データの複数に分けて保持することで、幅広い温度特性を持った基準発振部、複雑な温度特性を持った基準発振部、同一基板で機種ごとに異なった部品で基準発振部構成する可能性がある場合などに対して、同一の補正ロジックで補正することができるので、無線通信を行う機器全般について適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】水晶振動子単体と基板実装時の温度特性を示す図
【図2】水晶振動子の温度特性のばらつきを示す図
【図3】無線通信機器内部の構成図
【図4】無線通信機器内における補正データの演算を示す図
【図5】補正データの説明図
【図6】無線通信機器の送信シーケンスの図
【図7】実施の形態2における無線通信機器内における補正データの演算例の図
【符号の説明】
【0064】
101 水晶振動子単体温度特性
102 水晶振動子を基板実装したときの温度特性
300 無線通信機器
301 高周波部
302 演算部
303 基準発振部
304 外部記憶部
305 温度検出部
311 演算設定部
312 内部記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を生成する基準発振部と、
前記基準発振部周辺の温度を検出する温度検出部と、
前記基準発振部において任意の温度ごとに対応付けられた周波数偏差を示す第1の補正データを記憶する第1の記憶部と、
前記第1の補正データよりもデータ量が少なく表現される第2の補正データと周波数偏差を含まない基準チャネル設定データとを記憶する第2の記憶部と、
前記基準チャネル設定データに前記温度検出部で検出された温度に対応する第1の補正データと前記第2の補正データとの積を加算して送信チャネル設定データを生成する演算部と、
前記送信チャネル設定データを基に任意の信号を変調し送信する高周波部とを備えた無線装置。
【請求項2】
第2の補正データは第1の補正データと同じ基数で表現され、前記第2の補正データの桁数は前記第1の補正データの桁数よりも小さい桁数で表現されることを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
第2の補正データを記憶する第2の記憶部は、演算部内に設けられる請求項2記載の無線装置。
【請求項4】
基準信号を生成する基準発振部と、
前記基準発振部周辺の温度を検出する温度検出部と、
前記基準発振部において任意の温度ごとに対応付けられた周波数偏差を示す第1の補正データと、前記第1の補正データよりもデータ量が少なく前記任意の温度ごとに表現される第2の補正データとを記憶する第1の記憶部と、
前記周波数偏差を含まない基準チャネル設定データを記憶する第2の記録部と、
前記基準チャネル設定データに前記温度検出部で検出された温度に対応する第1の補正データと前記第2の補正データとの積を加算して送信チャネル設定データを生成する演算部と、
前記送信チャネル設定データを基に任意の信号を変調し送信する高周波部とを備えた無線装置。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−260598(P2009−260598A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106507(P2008−106507)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】