説明

無線通信機能を有する電子機器および無線接続範囲算出方法

【課題】ホットスポットにて無線接続を行う無線通信機能を有する電子機器において、ユーザによるアクセスポイントについての情報収集を必要とせずに、ホットスポット範囲を推定する。
【解決手段】無線通信機能を有する電子機器が移動する際、アクセスポイントからのビーコン受信の開始を検出すると(S401)、現在地Vを特定する(S402)。さらに移動し、そのビーコン受信が止むと(S410)、現在地Wを特定する(S411)。特定した位置VおよびWに基づいてホットスポット範囲を推定する(S412)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスポットにて無線接続を行う無線通信機能を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信機能を有する電子機器として、ホットスポットにてアクセスポイントとの無線接続を行い、広域通信ネットワークに接続された各種コンテンツ配信サーバから各種情報をダウンロードするナビゲーション装置が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載のナビゲーション装置では、アクセスポイントが設置されている施設の施設データには無線到達距離データを記録可能とし、地図表示画面にホットスポットを表示可能としている。
【特許文献1】特開2003−302232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のナビゲーション装置では、アクセスポイントが設置されている施設のリストを、ユーザが予めダウンロードする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明の第1の態様による電子機器は、文字や図形を道路地図とともにディスプレイ画面に表示する表示手段と、現在地を検出する現在地検出手段と、広域通信ネットワークに接続されている基地局から送信される無線信号を受信する受信手段と、受信手段によって受信された無線信号に基づいて受信開始と受信終了とを検出する受信状態検出手段と、無線信号の受信開始および受信終了が受信状態検出手段によって検出された時、現在地検出手段によって検出された受信開始位置を表す受信開始位置データと受信終了位置を表す受信終了位置データとを基地局を表す識別子に対応付けて記憶するように制御する位置データ記憶制御手段と、少なくとも受信開始位置データおよび受信終了位置データに基づいて特定される領域を無線信号の受信範囲とし、受信範囲に対応する領域データを、受信開始位置データおよび受信終了位置データを含んで記憶するように制御する領域データ記憶制御手段とを備えることを特徴とする。
(2) 本発明の第2の態様による無線接続範囲算出方法は、無線通信機能を有する電子機器の現在地を検出し、広域通信ネットワークに接続されている基地局から送信される無線信号の受信開始位置および受信終了位置を検出し、受信開始位置と受信終了位置とに基づいて、基地局との無線接続範囲を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、無線通信機能を有する電子機器は、電子機器が移動中に自律的に無線信号の受信範囲を推定して記憶するため、ユーザによる基地局についての情報収集を必要としないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図7を参照して、本発明を車載ナビゲーション装置に適用した一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態の車載ナビゲーション装置を搭載した車両10が広域通信ネットワーク20に配置されているアクセスポイント30と無線接続可能なホットスポット40を含む経路を走行する例を示した図である。
【0008】
車両10は、走行中、地点「甲」において、アクセスポイント30(A)からの電波の受信を検出する。その後も走行を継続すると、別の地点「乙」において、アクセスポイント30(A)からの電波の受信不可を検出する。これらの地点「甲」と「乙」の間の区間はアクセスポイント30(A)に無線接続可能な円領域を形成するホットスポット40(A)の範囲に含まれると判定できる。円領域は円周上の2点だけでは導くことはできないため、地点「甲」と「乙」は円領域の直径の両端に位置するとの仮定の下に、ホットスポット40(A)の推定範囲を仮決定するものとする。
【0009】
車両10は、さらに走行を続け、地点「丙」において、アクセスポイント30(B)からの電波の受信を検出する。その後も走行を継続すると、別の地点「丁」において、アクセスポイント30(B)からの電波の受信不可を検出する。これらの地点「丙」と「丁」の間の区間はアクセスポイント30(B)に無線接続可能な円領域を形成するホットスポット40(B)の範囲に含まれると判定できる。このとき、車両10が以前、ホットスポット40(B)を走行した履歴があり、その際は、アクセスポイント30(B)からの電波の受信を地点「戊」にて検出し、受信不可を地点「己」にて検出したとする。円領域は円周上の3点で導くことができるため、地点「丙」乃至「己」の4点のうちのいずれか3点を用いて円領域を導く。いずれか3点とは、たとえば、通過時刻の最も新しい順に3点を選択することとすれば良い。こうして導かれた円領域を、ホットスポット40(B)の推定範囲として決定する。
【0010】
次に、図2を用いて、本実施の形態の車載ナビゲーション装置100の内部および周辺の構成について説明する。
【0011】
CPU110は車載ナビゲーション装置100全体を制御する演算処理装置であり、CPU110およびその周辺装置は互いにバスで接続されている。周辺装置は、主記憶装置115、補助記憶装置140、無線通信機器150、ディスプレイモジュール160を含む。主記憶装置115は、CPU110の作業エリアであるワークメモリや制御プログラムが格納されているプログラムメモリを有する。
【0012】
CPU110においては、現在地検出装置120およびユーザ入力装置130からの信号が入力される。現在地検出装置120は、GPSセンサ121、ジャイロセンサ122、車速センサ123を含む。ユーザ入力装置130は、たとえば、タッチパネル、パネル周辺の押ボタン式スイッチ、リモコン、ジョイスティックである。
【0013】
補助記憶装置140は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI(Point Of Interest:観光地や各種施設)情報を格納する記憶装置である。補助記憶装置140としては、たとえば、ハードディスクドライブのほか、道路地図データが格納されたCDやDVD、フラッシュメモリ、その他の記録媒体、およびその読み出し装置であっても良い。
【0014】
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データを含む。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報を含むデータであり、主に推奨経路を演算(経路探索)する際に用いられる。誘導データは、交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド施設情報を含むデータであり、演算された推奨経路に基づきユーザを経路誘導する際に用いられる。
【0015】
道路地図データにおいては、一本の道路は、交差点などをノードとして定義し、ノード間をリンクとして定義することによって、リンク列データとして表される。したがって、リンク列データは、ノードデータおよびリンクデータから構成される。道路地図データは、ノードデータとリンクデータとが、メッシュコードとともにメッシュ領域単位で分類して格納されている。メッシュ領域とは、道路地図を所定範囲毎に区分けしたときの区分けされた各領域をいう。メッシュコードの記憶領域には、メッシュ領域を識別する番号が格納されている。リンク列データの記憶領域には、ノードの位置座標と、ノード間のリンクを表すリンク番号と、リンクをさらに短く分割する補間点の位置座標とが格納されている。これらの位置座標が地図表示やロケータ処理の形状データとして用いられる。
【0016】
補助記憶装置140は、さらに、ホットスポット40の範囲を表すホットスポットデータ、およびアクセスポイント30との接続認証用設定プロファイルを格納する。ディスプレイモジュール160は、CPU110から出力される文字や図形を含む画像データを画面表示する。
【0017】
無線LAN走行モードが設定されると、無線通信機器150は、ホットスポット40のエリア内でアクセスポイント30のビーコンを検出することを契機としてアクセスポイント30との間で認証手順を実行し、接続が許可されると無線通信によるデータ転送が可能となる。CPU110が本機能を介してメッセージを送受信することにより、車載ナビゲーション装置100は、広域通信ネットワークに接続された各種コンテンツ配信サーバからの各種情報をダウンロードすることが可能となる。無線通信機器150は、たとえばIEEE標準802.11(Wi−Fi)やIEEE標準802.16(WiMAX)といった無線LAN規格に準拠した無線通信機器である。無線LAN走行モードは、ディスプレイモジュール160に表示されるナビゲーション装置100のメニュー画面から設定することができる。
【0018】
図3〜図5のフローチャートを参照して、本実施の形態の車載ナビゲーション装置100のCPU110が実行する具体的な手順について説明する。
【0019】
図3は、車載ナビゲーション装置100がホットスポットの領域を推定するメインルーチンを表している。このメインルーチンを実行するプログラムは無線LAN走行モードが設定されている場合、たとえば経路誘導処理のバックグラウンドで実行される。ステップS301において、アクセスポイント30からのビーコンの受信が無線通信機器150から通知されるか否かを監視する。車両がホットスポット40に進入してビーコン受信の通知を受けた時点で、ステップS301が肯定判定され、ステップS321に進み、サブルーチン「ホットスポット検出」(図4を参照して後述する)に遷移する。このサブルーチン終了後に本メインルーチンも終了する。
【0020】
ステップS301が否定判定されるとステップS302に進む。ステップS302において、現在、車両10が道路地図データ上のいずれの地点に位置しているのかを、現在地検出装置120からの入力信号(現在地信号)に基づいて特定し、位置Zとする。ステップS303において、特定した位置Zが既知のホットスポット40の範囲内に含まれているか否かを判定する。
【0021】
なお、図5を参照して後で説明するホットスポット範囲推定手順では、推定したホットスポットの範囲を表すデータ(以下、ホットスポットデータとも呼ぶ)を補助記憶装置140に記憶する。ステップS302で特定した位置Zが地図上のホットスポットの範囲に含まれる場合、ステップS303において、ホットスポット40が既知であると判定する。ここで補助記憶装置140に記憶しているホットスポットデータは、データベース化して管理している(図7を参照して後述する)。したがって、ステップS303における判定は、このデータベースにて位置Zを含むホットスポットデータを検索することにより行われる。ホットスポットが既知ではなくステップS303が否定判定されると、ステップS301に戻る。
【0022】
ステップS303が肯定判定されるのは、以前はホットスポット40の範囲に含まれていた地点が、現在は含まれていない可能性を示唆している。想定原因としては、たとえば、(1)ホットスポット40の範囲が変更となったため、(2)アクセスポイント30が廃止されたため、(3)アクセスポイント30の一時的な故障のため、といったことが考えられる。いずれにしても、ステップS304にてビーコン受信の有無を判定する。
【0023】
ステップS304が肯定判定される場合、すなわち、ビーコンが受信されたと判定される場合の手順について説明する。ステップS304が肯定判定されるのは、ホットスポット40の範囲が変更されている場合である。すなわち、ステップS303において前述した想定原因(1)のケースに該当する。たとえば、データベース化されているホットスポットデータで表される範囲に車両が到達した時点ではビーコンを受信しないが、このホットスポット40の範囲を出る前にビーコンを受信する場合である。ステップS304が肯定されると、ステップS331に遷移し、後述する陳腐カウンタをリセットして陳腐カウント値「k」を0にする。引き続いて、ステップS321におけるサブルーチン「ホットスポット検出」に遷移し、そのサブルーチン終了後に本メインルーチンも終了する。ステップS331を経由してステップS321へ進むと、範囲が変更されたホットスポット40のホットスポットデータが修正される。
【0024】
ステップS304が否定判定されると、ステップS305にて、現在、車両10が道路地図データ上のいずれの地点に位置しているのかを、現在地検出装置120からの入力信号に基づいて特定し、新たに位置Zとする。ステップS306では、新たに特定した位置Zが、ステップS303で説明した既知のホットスポット40の範囲内に含まれているか否かを判定する。ステップS306が肯定判定されると、ステップS304に戻る。ステップS306が否定判定されるとステップS307へ進む。ステップS306が否定判定されるのは、たとえば、ホットスポット40の範囲として記憶していた円領域に車両10が進入した後、ビーコンを受信すること無くその円領域の外に出た場合である。ステップS303において前述した想定原因(2)および(3)はこのケースに該当する。このとき、ステップS307にて、該当するホットスポット40の範囲を含むホットスポットデータに設定された陳腐カウント値「k」をインクリメントする。
【0025】
陳腐カウント値「k」は、陳腐化して信頼性の低下したホットスポットデータを削除するか否かを判定するために用いられる。この実施の形態では、ステップS306の否定判定が連続してi回発生した場合、ホットスポットデータを削除する。具体的には、ステップS308においてk≧iが肯定判定され、さらに、この後で説明するステップS309が肯定判定されれば、ステップS310にて該当するホットスポットデータを削除し、本メインルーチンを終了する。ステップS308においてk≧iが否定判定された場合は、直ちに本メインルーチンを終了する。
【0026】
ステップS309では、接続履歴フラグ「h」に「0」が設定されているか否かを判定する。接続履歴フラグ「h」は、過去に対象となっているアクセスポイント30との無線接続処理を実行したことがある場合に「1」が、ない場合に「0」が設定される(図4の説明にて後述する)。接続履歴フラグ「h」が「0」の場合、ステップS309が肯定判定され、前述したとおり、ステップS310へ遷移する。一方、接続履歴フラグ「h」が「1」の場合、ステップS309が否定判定され、ステップS341に進む。ステップS341において、陳腐カウント値「k」が(i+j)と等しいか否かを判定する。これは、アクセスポイント30との接続履歴があるホットスポット40に限り、陳腐カウント値「k」の上限値を(i+j)に増大させる処理である。ステップS341が肯定判定されれば、前述したステップS310へ遷移し、否定判定されれば、直ちに本メインルーチンを終了する。
【0027】
なお、本メインルーチンは、終了後直ちに再び開始することが好ましい。
【0028】
図4は、CPU110がステップS321で実行するサブルーチン「ホットスポット検出」を表している。本サブルーチン開始を受け、ステップS401において、アクセスポイント30からのビーコン受信が開始されたか否かを判定する。これは、無線通信機器150からのビーコン受信開始通知の有無により判定する。ステップS402においては、現在、車両10が道路地図データ上のいずれの地点に位置しているのかを、現在地検出装置120からの入力信号に基づいて特定し、位置Vとする。
【0029】
ステップS403において、現在地Vが含まれるホットスポット40が既知であるか否かを判定する。具体的には、図3におけるステップS303と同様の処理によって判定する。ステップS403が肯定判定される場合はステップS404へ遷移し、否定判定される場合は後述するステップS421へ遷移する。
【0030】
ステップS404において、アクセスポイント30と接続するための接続認証用プロファイルXが補助記憶装置140に記憶されているか否かを判定する。なお、接続認証用プロファイルXは、たとえばIEEE標準802.11に準拠した無線LAN接続の場合であれば、アクセスポイント30毎にESSID(Extended Service Set Indication)やWEP(Wired Equivalent Privacy)キーを含み、補助記憶装置140に一括して記憶されて管理される。また、アクセスポイント30を介して、たとえば各種コンテンツ配信サーバが接続されている広域通信ネットワーク20へアクセスするために、接続先ISP設定データ、ユーザIDやパスワードに基づく認証パラメータが必要な場合もある。したがって、補助記憶装置140では、その接続先ISP設定データおよびその認証パラメータも含めて管理している。
【0031】
なお、接続認証用プロファイルXを検索するための検索キーとしては、アクセスポイント30をユニークに識別可能な識別子であることが好ましく、たとえば、アクセスポイント30から受信しているビーコンに含まれるアクセスポイント30のMACアドレス(Media Access Control Address)を検索キーとして用いることができる。
【0032】
ステップS404が肯定判定されると、ステップS405にて、そのプロファイルXを補助記憶装置140から呼び出す。呼び出したプロファイルXを無線通信機器150に設定してアクセスポイント30との接続認証を行い、無線接続する。続くステップS406にて、接続履歴フラグ「h」に「1」を設定する。
【0033】
ステップS403またはステップS404が否定判定されると、ステップS421にて、ユーザ入力による接続認証および無線接続を行うか否かをユーザに選択させる。たとえば、接続認証および無線接続のメニューをディスプレイモジュール160の画面に表示する。ユーザがユーザ入力装置130を介して、アクセスポイント30との接続認証および無線接続を行うことを選択すると、接続認証用プロファイルXを入力するための画面を表示する。引き続き、ユーザが、ユーザ入力装置130を介して、接続認証用プロファイルXを設定すると、CPU110は、そのプロファイルXを無線通信機器150に設定し、アクセスポイント30と無線接続する。ステップS421が肯定判定されると、ステップS422において、接続認証用プロファイルXを補助記憶装置140に記憶するように制御する。そして、前述したステップS406へ遷移する。
【0034】
ステップS421が否定判定されると、ステップS431にて、接続履歴フラグ「h」に「0」を設定する。
【0035】
ステップS407において、接続されたアクセスポイント30から周期的に送信されてくるビーコンの受信監視タイマを起動する。このビーコンの周期的な受信が止むと、車両10が、接続中のアクセスポイント30と無線接続することができるホットスポット40の範囲外に出たものとCPU110は判断する。したがって、ホットスポット40の範囲内を走行していれば肯定されてビーコンを受信するたびにステップS407へ戻り、監視タイマをリスタートする。ビーコンの受信が止むと、ステップS408が否定判定され、ステップS409にて監視タイマを停止する。これをもって、ステップS410にてアクセスポイント30からのビーコン受信は止んだと判断する。続くステップS411にて、現在、車両10が道路地図データ上のいずれの地点に位置しているのかを、現在地検出装置120からの入力信号に基づいて特定し、位置Wとする。
【0036】
その後、ステップS412におけるサブルーチン「ホットスポット範囲推定」(図5参照)に遷移し、サブルーチン終了後に本サブルーチンも終了する。
【0037】
図5は、CPU110がステップS412で実行するサブルーチン「ホットスポット範囲推定」を表している。本サブルーチン開始を受け、ステップS501において、前述したステップS403にて用いた検索キーを用いて、ホットスポット40のホットスポットデータを補助記憶装置140にて検索する。ホットスポットデータが存在すれば、ステップS501が肯定判定され、ステップS502に進む。ステップS502において、ステップS402およびステップS410にて特定した位置V、Wとは異なる位置データを検索する。該当する位置データがあれば、ステップS503が肯定判定される。該当する位置データが複数ある場合、ステップS504にて、複数の該当位置データの中で最新の位置データを抽出する。以下、この位置データが表す地図上の位置を位置Uとする。
【0038】
ステップS505において、各々ステップS402、ステップS410、ステップS504にて特定した位置U、V、Wの3点を円周上に有する円領域Sを、道路地図データ上にて特定する。その際、緯度・経度に基づく座標データを用いて特定しても良いし、メッシュコードを用いて特定しても良い。あるいは、車両10が走行するのは道路上または道路に面した施設のみと想定すると、リンク列データを用いて特定しても良い。以上により、CPU110は、ディスプレイモジュール160を通じてホットスポット40の範囲を、道路地図データに基づく地図に重畳して画面表示することができる。
【0039】
ステップS506においては、ホットスポット40の範囲を表す領域データS、位置データU、V、W、接続認証用プロファイルX、陳腐カウント値「k」、および接続履歴フラグ「h」を、新たなホットスポットデータとして、補助記憶装置140に記憶している既存のホットスポットデータを更新して本サブルーチンを終了する。
【0040】
ステップS501が否定判定されると、今回の走行によって、各々ステップS402、ステップS410にて特定した位置V、Wの2点を円周上に有する円領域Sを、ステップS511において、道路地図データ上にて特定する。図1の説明において前述したように、円領域Sは円周上の2点だけでは導くことはできないため、位置V、Wの2点は円領域Sの直径の両端に位置するとの仮定の下に仮決定した円領域Sを特定するものとする。そして、ステップS512において、ホットスポット40の範囲を表す領域データS、位置データV、W、接続認証用プロファイルX、陳腐カウント値「k」、および接続履歴フラグ「h」を、ホットスポットデータとして補助記憶装置140に新規データとして記憶して本サブルーチンを終了する。
【0041】
ステップS503が否定判定されるのは次のような場合である。すなわち、先にホットスポットデータとして位置V,Wを記憶したときの走行経路と同じ経路を走行している場合である。この場合、同一経路を車両が走行しており、ホットスポットデータに追加されるはずの新たな位置データが得られない。ステップS503が否定判定されると、前述したステップS511に遷移する。
【0042】
図6は、データベース化して管理されているホットスポットデータを例示する図である。アクセスポイント名称には、そのホットスポットデータが表すホットスポット40を接続範囲とするアクセスポイント30を特定する値が設定される。たとえば、CPU110が、図3〜図5にて説明した具体的な手順を実行して受信したビーコンに含まれるSSID(Service Set Indication)の値が用いられる。位置データ数は、その後に続く位置データの数を表している。図6に示した例では位置U,V,Wの位置データが、それらの位置を車両10が通過した日時のデータと共に格納されているため、位置データ数は「3」である。一方、図5のステップS512にて記憶されるホットスポットデータにおいては、位置V,Wの位置データが、それらの位置を車両10が通過した日時のデータと共に格納されているため、位置データ数は「2」となる。
【0043】
円領域Sの中心点座標および半径としては、図5のステップS505またはステップS511において特定されたホットスポット40の円領域Sの中心点座標および半径が格納される。ホットスポットデータにはさらに、上述した接続認証用プロファイルX、陳腐カウント値「k」、接続履歴フラグ「h」が格納される。
【0044】
図7を用いて、本発明によるホットスポット推定処理を実行した際の、車載ナビゲーション装置100におけるディスプレイ画面210の表示例について説明する。なお、ディスプレイ画面210は、ディスプレイモジュール150に含まれる表示パネルに図形や文字が表示される画面である。ディスプレイ画面210には道路地図データに基づく地図が表示されており、アイコン220は、現在地検出装置120からCPU110への入力される信号に基づいて車両10の現在地を表示している。
【0045】
ディスプレイ画面210上の地図に重畳して表示している太線囲み領域230、細線囲み領域240、および破線囲み領域250は、いずれも本発明によるホットスポット推定処理を過去に実行して記憶しているホットスポット40を表している。太線囲み領域230は、接続履歴のあるホットスポット40を表しており、ホットスポットデータにおける接続履歴フラグ「h」をキーとして検索することにより特定できる。細線囲み領域240は、接続履歴が無く、かつ位置データを3地点含むホットスポットを表しており、ホットスポットデータにおける接続履歴フラグ「h」および位置データ数「3」をキーとして検索することにより特定できる。破線囲み領域250は、接続履歴が無く、かつ位置データを2地点以下しか含まないホットスポットを表しており、ホットスポットデータにおける接続履歴フラグ「h」および位置データ数「2」以下をキーとして検索することにより特定できる。
【0046】
なお、ホットスポットデータにホットスポット推定範囲仮決定フラグを含めることにより、位置データ数の代わりにそのホットスポット推定範囲仮決定フラグをキーとして用いても良い。その場合、図5の説明にて前述したサブルーチン「ホットスポット範囲推定」において、円周上の2点から円領域Sを導く際にホットスポット推定範囲仮決定フラグを「1」に設定し、円周上の3点から円領域Sを導く際はホットスポット推定範囲仮決定フラグを「0」に設定する。こうして設定したホットスポット推定範囲仮決定フラグの値は、たとえば、図6に例示するホットスポットデータにおける円領域Sの中心点座標値および半径のデータと共に格納される。
【0047】
上述した本実施の形態による車載ナビゲーション装置100は、次の作用効果を奏する。
(1)車両10が走行中に、アクセスポイント30が周期的に送信するビーコンの受信が始まった地点の位置データと、そのビーコンの周期的な送信が止んだと判定した地点の位置データを記憶した。そして、これらの位置データに基づいて、アクセスポイント30に無線接続することができるホットスポット40の範囲を推定するように構成した。これにより、車載ナビゲーション装置100は、ユーザ自身が収集したアクセスポイント30の所在地および無線到達距離についての散在する情報を入力することなしに、自律的にホットスポット40の範囲を推定することができる。また、アクセスポイント30の新設、更改に対しても直ちに対応できるため、格別に利便性が高い。
(2)過去に走行した際に記憶した既知のホットスポットデータには、陳腐カウント値「k」を含むように構成した。そして、陳腐カウント値「k」が閾値iを越えたホットスポットデータを削除するようにした。これにより、アクセスポイント30が、たとえば障害により一時的に停止している場合に、直ちにアクセスポイント30に対応するホットスポットデータを削除してしまうことを防止できる。
(3)過去に走行した際に記憶した既知のホットスポットデータには、陳腐カウント値「k」に加えて接続履歴フラグ「h」も含むように構成した。そして、接続履歴のあるアクセスポイント30の廃止については、陳腐カウント値「k」が閾値(i+j)を越えると削除するようにした。この結果、誤って廃止と判断したために後日ユーザ入力による接続認証用プロファイルの再設定を招く事態を防止することができる。
(4)ホットスポット40について推定した範囲をディスプレイ画面210に表示する際には、ホットスポットデータに含まれる接続履歴フラグ「h」および位置データ数(またはホットスポット推定範囲仮決定フラグ)に基づいて、別々の表示形態を採用するように構成した。これにより、ホットスポット40の識別性を高め、運転中のユーザがディスプレイ画面210を注視することを防止できる。
【0048】
−−−変形例−−−
(1) 上述の図4の説明では、アクセスポイント30に対して、接続認証用プロファイルを記憶している場合に、ステップS404にて、直ちにその接続認証用プロファイルの呼び出し、設定、接続を自動的に実行するようにした。しかし、直ちには実行せずに、ユーザ入力による指示があってから実行するようにしても良い。
【0049】
(2) 上述の図6の説明では、本発明によるホットスポット推定処理を過去に実行して記憶しているホットスポット40を、識別可能とするため、太線囲み領域230、細線囲み領域240、および破線囲み領域250として表示したが、外周の線の種別は他の種類であっても良い。また、外周の線や囲み領域内部を着色し、色の種別によって識別可能とするように表示しても良い。
【0050】
(3) 上述の図6の説明では、CPU110が、図3〜図5にて説明した具体的な手順を実行して得たホットスポットデータを、ディスプレイモジュール160を介してディスプレイ画面210に表示した。しかし、無線通信機器150を介して広域通信ネットワーク20に接続されたコンテンツ配信サーバに、取得したホットスポットデータをアップロードしても良い。また、同様にして他の車両からアップロードされたホットスポットデータを、CPU110が無線通信機器150を介してコンテンツ配信サーバよりダウンロードし、補助記憶装置140に記憶することもできる。その場合は、図6にて説明した表示方法によって、ダウンロードして記憶したホットスポットデータを、ディスプレイモジュール160を介してディスプレイ画面210に表示しても良い。
【0051】
(4) 上述の図6の説明では、CPU110が、図3〜図5にて説明した具体的な手順を実行して得たホットスポットデータを、ディスプレイモジュール160を介してディスプレイ画面210に円領域Sを描画して表示した。この場合、円領域Sの中心地点はアクセスポイント30の設置箇所と推定されるため、道路地図データに基づいて特定したその中心地点の緯度および経度をさらに重畳して表示しても良い。また、CPU110が、図3〜図5にて説明した具体的な手順を実行して受信したビーコンに含まれるSSIDの値を、図7に示すホットスポットデータから収集することにより、ディスプレイ画面210に重畳して表示しても良い。
【0052】
(5) 上述の図6の説明では、CPU110が、図3〜図5にて説明した具体的な手順を実行して推定したホットスポット40を形成する円領域Sを、ディスプレイモジュール160を介してディスプレイ画面210に描画して表示した。この場合、その具体的な手順を実行する際に受信したビーコンに含まれるSSIDの値に基づいて、ユーザがアクセス権を有している無線通信事業者のアクセスポイント30であるか否かを判定し、肯定判定の対象のアクセスポイント30への接続範囲を表すホットスポット40のみを表示しても良い。なお、ユーザがアクセス権を有しているというのは、たとえば、契約している事業者のアクセスポイント30と接続するための接続認証用データが未入力の場合も含む。
【0053】
(6) 上述の図1〜図6の説明では、本発明を車載ナビゲーション装置に適用した一実施の形態を説明したが、適用対象はこれに限らない。GPSセンサ、道路地図データ、無線通信機器を有する装置であれば、たとえば、PND(Personal Navigation Device)、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機、ポータブルパソコン、ポータブルゲーム機であっても良い。
【0054】
(7) 上述の図3の説明では、ステップS308においてk≧iが肯定判定されると、ステップS309では、接続履歴フラグ「h」に「0」が設定されているか否かを、ステップS341においては、陳腐カウント値「k」が(i+j)と等しいか否かを、各々判定した。しかし、図4におけるステップS406およびステップS431において、接続履歴フラグ「h」の設定と同時に、接続履歴フラグ「h」に対応する陳腐カウント値「k」の上限値「i」を対応する値に設定すれば、図3からステップS309およびステップS341を削除しても良い。
【0055】
上述した実施の形態および各変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0056】
また、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態およびその変形例における機器構成に何ら限定されない。たとえば、広域通信ネットワークに接続されている基地局(アクセスポイント)から送信される無線信号の受信開始位置および受信終了位置を検出し、受信開始位置と受信終了位置とに基づいて、基地局との無線接続範囲(ホットスポット)を算出する無線接続範囲算出方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明によるナビゲーション装置を説明する図
【図2】本発明によるナビゲーション装置の構成例を示す図
【図3】一実施の形態による処理を説明するフローチャート
【図4】図4のホットスポット検出開始処理の詳細を示すフローチャート
【図5】図5のホットスポット範囲推定処理の詳細を示すフローチャート
【図6】データベース化して管理されているホットスポットデータを例示する図
【図7】ホットスポットを円領域として示す画面表示例の図
【符号の説明】
【0058】
10 車両 20 広域通信ネットワーク
30 アクセスポイント 40 ホットスポット
100 ナビゲーション装置 110 CPU
115 主記憶装置 120 現在地検出装置
121 GPSセンサ 122 ジャイロセンサ
123 車速センサ 130 ユーザ入力装置
140 補助記憶装置 150 無線通信機器
160 ディスプレイモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字や図形を道路地図とともにディスプレイ画面に表示する表示手段と、
現在地を検出する現在地検出手段と、
広域通信ネットワークに接続されている基地局から送信される無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記無線信号に基づいて受信開始と受信終了とを検出する受信状態検出手段と、
前記無線信号の前記受信開始および前記受信終了が前記受信状態検出手段によって検出された時、前記現在地検出手段によって検出された受信開始位置を表す受信開始位置データと受信終了位置を表す受信終了位置データとを前記基地局を表す識別子に対応付けて記憶するように制御する位置データ記憶制御手段と、
少なくとも前記受信開始位置データおよび前記受信終了位置データに基づいて特定される領域を前記無線信号の受信範囲とし、前記受信範囲に対応する領域データを、前記受信開始位置データおよび前記受信終了位置データを含んで記憶するように制御する領域データ記憶制御手段とを備えることを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
前記受信範囲を前記受信開始位置および前記受信終了位置を直径の両端とする円領域としたことを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
前記位置データ記憶制御手段によって過去に記憶した同一の前記識別子に対応する複数の前記受信開始位置データおよび前記受信終了位置によって特定される複数の位置のうちの3つの位置が外周上に存在する円領域を前記受信範囲として決定することを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
前記領域データに基づいて、前記道路地図に重畳して前記ディスプレイ画面に前記受信範囲を描画するように制御する描画制御手段を備えることを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
前記描画制御手段で描画する受信範囲は、対象とする前記基地局ごとに記憶されている前記領域データに含まれる前記受信開始位置データおよび前記受信終了位置データの総数が2個の場合と3個以上の場合とで、異なる表示形態で表示するようにしたことを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
前記描画制御手段で描画する受信範囲は、対象とする前記基地局と過去に無線接続したことがあるか否かに応じて、さらに異なる表示形態で表示するようにしたことを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
前記電子機器が移動中において、前記領域データ記憶制御手段で記憶した前記受信範囲に含まれるいずれの位置においても前記無線信号を受信しなかった回数を計数する計数手段と、
前記計数手段による計数値が所定値以上に達したとき、前記受信範囲に対応する前記領域データを削除するように制御する領域データ削除制御手段とを備える無線通信機能を有する電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信機能を有する電子機器において、
過去に無線接続したことがある前記基地局に対する前記所定値は、過去に無線接続したことがない前記基地局に対する前記所定値よりも大きな値が設定されることを特徴とする無線通信機能を有する電子機器。
【請求項9】
広域通信ネットワークに接続されている基地局から送信される無線信号の受信開始位置および受信終了位置を検出し、
前記受信開始位置と前記受信終了位置とに基づいて、前記基地局との無線接続範囲を算出することを特徴とする無線接続範囲算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−62914(P2010−62914A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227044(P2008−227044)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】