説明

無線通信装置

【課題】別段の機器を付け加えることなく省エネルギー化を図ることができる無線通信装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ1〜4のうちのいずれか1つを送信用アンテナとして選択する。さらに、そのアンテナ以外のアンテナから受信用アンテナを選択する。そして、送信用アンテナから通過物の検出用電波を放射させ、受信用アンテナが受信した検出用電波の受信レベルを測定する。測定した受信レベルから通過物の有無を判断し、通過物有りと判断したとき、送受信用アンテナを選択して無線タグのICに記録されたデータの読取用電波を放射し、無線タグからの応答電波を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を電波として放射するとともに受信した電波を高周波信号に変換して出力するアンテナを複数備えた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップを備えた無線タグ(ICタグ,RFIDタグ,電子タグ,トランスポンダなどとも称される)と、無線通信装置とを備え、双方がそれぞれアンテナを介してデータの交信を行うことにより、無線通信装置において無線タグの情報を非接触で読取ることができるRFID(Radio Frequency Identification)システムが普及している。
【0003】
このRFIDシステムにおいて、無線通信装置は、無線タグ問合せ用の高周波信号を電波としてアンテナから放射し続けており、無線タグは、内蔵アンテナで無線通信装置からの電波を受信すると、ICチップで記憶している情報で高周波信号の反射量を変化させてバックスキャッタ変調を行うものとなっている。そこで無線通信装置は、上記アンテナで無線タグからのバックスキャッタ変調波を受信すると、それを復調して無線タグの情報を読取る。
【0004】
このようなRFIDシステムは、無線タグを無線通信装置から数cm乃至数十cm離しても通信可能であるため、商品の万引き防止システムや施設の入退室管理システム等の様々な分野に利用されている。
【0005】
例えば上記RFIDシステムを入退室管理システムに用いる場合、通常は、図7に示すように、複数(図では4つ)のアンテナ1,2,3,4をそれぞれ対向配置してなるゲート式アンテナ5が用いられる。このゲート式アンテナ5においては、ゲート間を通過する無線タグと確実に交信するために、ゲート間の各位置、各方向成分において均一な電波強度が要求される。このため、それぞれのアンテナ1,2,3,4は、最適な位置関係を形成する必要がある。
【0006】
このようなRFIDシステムを用いれば、入退室の管理側は、特別な人員を配置することなく入退室管理を行うことができるため、省力化の点で利点がある。また、被管理側は、証明書等を提示することなく、無線タグを財布や鞄の中に所持するのみで入退室が可能となる。しかし、この際、入退室を目的としない者がゲート式アンテナ5に近づいただけでも無線タグが読取られる場合が生じる。このような誤読取りを防止するため、適当な手段を講じた無線通信装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
特許文献1記載の無線通信装置は、指向性を有する複数のアンテナを対向配置し、それら全てのアンテナが無線タグを認識した場合にのみ無線タグの認識を有効と判定することを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2005−69861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような複数のアンテナを用いたシステムは、人が通過しようとしていないときであっても通過時と同様の電波を発して待機しているため、電力を多く消費してしまう。かかる問題に対応するためには、赤外線センサー等の別段の機器をさらにゲート式アンテナに取付け、人の通過を検知するまでは省電力モードにて待機し、検知後に通常モードに切換えるようにする必要があった。
【0008】
本発明はこのような事情によりなされたもので、その目的は、別段の機器を付け加えることなく省エネルギー化を図ることができる無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる無線通信装置は、高周波信号を出力する送信部と、この送信部から出力される高周波信号を、ICを備えた無線タグに読取用電波として放射した後、この無線タグから返信された応答電波を受信して高周波信号に変換する複数のアンテナと、各アンテナが変換した高周波信号を入力し処理する受信部とを具備してなる無線通信装置において、前記各アンテナのうちのいずれか1つを送信用アンテナとして選択する第1のアンテナ選択手段と、前記送信用アンテナ選択手段により選択されたアンテナ以外のアンテナから受信用アンテナを選択する第2のアンテナ選択手段と、前記送信用アンテナから通過物の検出用電波を所定強度で放射させる検出用電波放射手段と、前記受信用アンテナが受信したこの検出用電波の受信レベルを測定する受信レベル測定手段と、を具備したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
かかる手段を講じた本発明によれば、別段の機器を付け加えることなく省エネルギー化を図ることができる無線通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
なお、この実施の形態は、図7に示すように、4つのアンテナ1,2,3,4をそれぞれ2つずつ対向配置してなるゲート式アンテナ5を用い、無線タグの情報を非接触で読取る無線通信装置に本発明を適用した場合である。
【0012】
図1は、本発明に係る無線通信装置10を用いたRFIDシステムの一実施形態を示す模式図である。ゲート式アンテナ5に組み込まれている4つのアンテナ1,2,3,4は、それぞれ通信ケーブル6,7,8,9を介してRFIDタグのリーダ機能を有する1台の無線通信装置10に接続されている。無線通信装置10には、通信ケーブル20を介してパソコン等のホスト機器30に接続されている。
【0013】
このRFIDシステムにおいては、通常はゲート式アンテナ5の間を無線タグが通過すると、いずれかのアンテナ1〜4とのデータ交信により上記無線タグに記録された情報が非接触で読取られる。この読取られた情報は、無線通信装置10を介してホスト機器30に伝送されるようになっている。
【0014】
図2は、無線通信装置10の要部構成を示すブロック図である。無線通信装置10は、CPU(Central Processing Unit)を主体とした制御部11、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成された記憶部12、通信ケーブル20を介して前記ホスト機器30とのデータ通信を行う通信部13、各種の状態表示等を行う表示部14及び無線によるデータの送受信を行わせる無線部15を備えている。また、第1のアンテナ選択スイッチ16と、第2のアンテナ選択スイッチ17と、受信切換スイッチ18とを備えている。
【0015】
無線部15は、PLL(Phase Locked Loop)回路41、送信部42、サーキュレータ43、受信部44及びRSSI回路(Receive Signal Strength Indicator)45で構成されている。PLL回路41は、高周波の正弦波信号を発生する。送信部42は、制御部11から送られてきたデジタルデータを変調し、この変調信号とPLL回路41で作られた高周波信号とを足し合わせた信号を増幅してサーキュレータ43に出力する。サーキュレータ43は、送信部42側から信号が入力されたとき、第1のアンテナ選択スイッチ16を介してアンテナ1〜4側に出力し、アンテナ1〜4側から信号が入力されたとき、受信切換スイッチ18を介して受信部44側に出力する特性を有する。受信部44は、受信切換スイッチ18を介して入力された高周波信号を増幅した後、この増幅された高周波信号とPLL回路41の高周波信号とを組み合わせてベースバンド信号に変換し、このベースバンド信号を復調してデジタルデータに変換し、制御部11に出力する。RSSI回路45は、受信部44にて復調された信号のレベルを示すアナログ信号を生成する。
【0016】
第1のアンテナ選択スイッチ16は、前記サーキュレータ43と各アンテナ1,2,3,4との間に介在し、制御部11からの制御信号S1により切換動作して、いずれかの1つのアンテナをサーキュレータ43に接続する。第2のアンテナ選択スイッチ17は、受信切換スイッチ18の常開端子18-2と各アンテナ1,2,3,4との間に介在し、制御部11からの制御信号S2により切換動作して、いずれかの1つのアンテナを受信切換スイッチ18の常開端子18-2に接続する。受信切換スイッチ18は、受信部44をサーキュレータ43と接続するか第2のアンテナ選択スイッチ17を介していずれか1つのアンテナ1,2,3,4と接続するかを切換えるもので、常閉端子18-1をサーキュレータ43側とし、常開端子18-2を第2のアンテナ選択スイッチ17側とする。そして、制御部11から制御信号S3としてオン信号が入力されている間、接点を常閉端子18-1側から常開端子18-2側に切り換えるようになっている。
【0017】
かかる構成の無線通信装置10は、通常は、制御信号S3がオフ状態にあり、受信切換スイッチ18は接点が常閉端子18-1側となっている。これにより、第2のアンテナ選択スイッチ17は無線部15から切離されている。
【0018】
この状態で、ホスト機器30から無線タグの読取開始が指令されると、制御部11は、無線タグへの問合せのためのデジタルデータを送信部42に出力する。また、第1のアンテナ選択スイッチ16を切換える制御信号S1を出力する。これにより、このデジタルデータが変調され、この変調信号と足し合わされた高周波信号が増幅されて、サーキュレータ43に出力される。サーキュレータ43に出力された高周波信号は、第1のアンテナ選択スイッチ16の切換動作により接続されたアンテナ1〜4のうちのどれか1つに出力され、接続されたアンテナから電波として放射される。
【0019】
ここで、いずれかのアンテナから放射された電波を無線タグが受信すると、この無線タグでは、ICチップで記憶している情報で高周波信号の反射量を変化させるバックスキャッタ変調が行われる。これにより、バックスキャッタ変調された電波が各アンテナ1,2,3,4で受信される。ただし、第1のアンテナ選択スイッチ16によりサーキュレータ43に接続されているアンテナはいずれか1つなので、そのアンテナで受信したバックスキャッタ変調波の高周波信号がサーキュレータ43に入力される。こうして、サーキュレータ43に入力された高周波信号は、受信切換スイッチ18を介して受信部44に出力される。受信部44では、入力された高周波信号が増幅された後、この増幅された高周波信号とPLL回路41の高周波信号とが組合わされてベースバンド信号に変換され、このベースバンド信号が復調されて無線タグの情報として制御部11に出力される。制御部11に入力された無線タグの情報は、通信部13を介してホスト機器30に送信され、情報処理される。
【0020】
さて、この無線通信装置10は、受信切換スイッチ18の切換動作により、通過物検出モード(受信切換スイッチ18の接点を常開端子18-2側へ切換えた状態)と、無線タグに記録された情報を読取るための電波を放射する通常モード(受信切換スイッチ18の接点を常閉端子18−1側へ切換えた状態)とのモード切換が可能である。さらに、通過物検出モードにおいては、第1のアンテナ選択スイッチ16及び第2のアンテナ選択スイッチ17の切換動作により電波の放射を行うアンテナ(送信用アンテナ)及び受信を行うアンテナ(受信用アンテナ)の選択が、通常モードにおいては、第1のアンテナ選択スイッチ16の切換動作により電波の送受信を行うアンテナ(送受信用アンテナ)の選択が可能である。
【0021】
なお、通過物検出モードにおいて設定された送信用アンテナから放射される電波は、通常モードにおいて設定された送受信用アンテナから放射される電波に比して微弱であり、かつ設定された受信用アンテナが検知可能であるレベルに設定する。
【0022】
図3は、各スイッチ16,17,18を切換えて設定可能なモードの一覧を示す設定モードテーブルt1である。受信切換スイッチ18の選択端子(すなわち、通常モード又は通過物検出モードの別)と、各選択スイッチ16,17により選択されたアンテナとの組合せに対し、モードコードを付している。それぞれのモードコードには、通常検出モード又は通過物検出モードの種別及び各アンテナ1,2,3,4から放射される電波のレベルを記している。
【0023】
例えばモードコード「D1」では、受信切換スイッチ18は通常モードに設定され、第1の選択スイッチはアンテナ1に設定される。受信切換スイッチ18の接点が常閉端子18−1に接続されているとき、第2のアンテナ選択スイッチ17は制御の対象とならないため「−」を記している。このとき、設定された送受信用アンテナから放射する電波のレベルは「強」とする。
【0024】
モードコード「D5」では、受信切換スイッチ18は通過物検出モードに設定され、第1のアンテナ選択スイッチ16はアンテナ1に設定され、第2のアンテナ選択スイッチ17はアンテナ3に設定される。このとき、設定された送信用アンテナから放射する電波のレベルは「弱」とする。
【0025】
本実施の形態においては、設定モードテーブルt1の通り、通常モードは全てのアンテナについて個別にモードを選択可能であるとし(モードコード「D1」〜「D4」)、通過物検出モードは電波をアンテナ1から送信してアンテナ3で受信するモード(モードコード「D5」)及びアンテナ2から送信してアンテナ4で受信するモード(モードコード「D6」)の2つを選択可能であるとする。
【0026】
図4は、制御部11が行う基本的な処理の流れ図である。
まず、制御部11は、ST101として動作の開始と共に各デバイス及び各種パラメータ等の初期化処理を行う。しかる後、制御部11は、ST102として制御信号S3を出力し、受信切換スイッチ18を常開端子18−2側へと切換え、通過物検出モードに設定する。さらに、制御部11は、ST103として制御信号S1,S2を出力し、第1のアンテナ選択スイッチ16及び第2のアンテナ選択スイッチ17を切換え、電波の送信用及び受信用アンテナの設定処理を行う(第1のアンテナ選択手段及び第2のアンテナ選択手段)。この設定処理の詳細については図5にて後述する。
【0027】
送信用及び受信用のアンテナの設定が完了すると、制御部11は、ST104として送信部42及びサーキュレータ43を介し、ST103の処理にて設定した送信用アンテナから電波強度レベルが弱い電波を一定時間放射する(検出用電波放射手段)。そして、ST103の処理にて設定した受信用アンテナが受信したこの弱レベル電波を受信部44が復調し、ベースバンド信号を出力する。さらに、この信号のレベルを示すアナログ信号をRSSI回路45が生成して制御部11に送信する(受信レベル測定手段)。制御部11は、ST105としてこのアナログ信号により示される受信レベルから通過物の有無を判断する(通過物検出手段)。
【0028】
具体的には、送信用及び受信用の両アンテナ間に遮蔽物がない場合における弱レベル電波の受信レベルL1を予め記憶部12に記憶しておき、受信用アンテナが受信した電波の受信レベルL2との比較を行う。両者の比較の結果、受信レベルL2≧受信レベルL1のときに通過物無しと、受信レベルL2<受信レベルL1のときに通過物有りと判断する。
【0029】
制御部11は、通過物無しと判断したとき(ST105のNO)、再びST103〜ST104の処理を実行する。通過物有りと判断したとき(ST105のYES)、制御部11は、ST106として制御信号S3をオフし、受信切換スイッチ18を常閉端子18−1側へ切換え、通常モードに設定する。しかる後、制御部11は、ST107として制御信号S1を出力し、第1のアンテナ選択スイッチ16を切換え、電波の送受信用アンテナの設定処理を行う(第3のアンテナ選択手段)。この設定処理の詳細については図6にて後述する。
【0030】
送受信用のアンテナの設定が完了すると、制御部11は、ST108として送信部42及びサーキュレータ43を介し、ST107の処理にて設定した送受信用アンテナから強レベル電波を一定時間放射する。そして、制御部11は、ST109として無線タグによりバックスキャッタ変調された電波の受信の有無を判断する。送受信用アンテナがバックスキャッタ変調された電波を受信しないとき(ST109のNO)、制御部11は、ST110として通常モードへ移行してからの経過時間(ST106の処理からの経過時間)が、予め定め記憶部12に記憶した所定時間を経過していないかどうかを判断する。所定時間を経過していない場合(ST110のNO)、ST107〜ST109の処理を再び実行する。
【0031】
バックスキャッタ電波を受信し、受信部44にてデジタルデータの生成があった場合(ST109のYES)、制御部11は、ST111として受信したデータの処理を行う。この処理では、通信部13を介してホスト機器へのデジタルデータの送信処理や、表示部14への処理内容の表示等を行う。
【0032】
ST111の処理が完了した後、及びST110の処理にて送受信用アンテナから電波の放射を開始してから所定時間が経過したと判断されたときは、再びST102の処理に戻る。
【0033】
図5は、ST103の送信用及び受信用アンテナ設定処理にて制御部11が行う処理を示す流れ図である。
予め、記憶部12にはアンテナカウンタiが記録されている。制御部11は、アンテナカウンタiの値に応じて設定モードテーブルt1のモードコード「D5」,「D6」のモードを切換える。ここで、本実施の形態では、アンテナカウンタiが“1”のときにモードコード「D5」、“2”のときにモードコード「D6」のモードに切換えるものとする。
【0034】
先ず、制御部11は、ST201としてアンテナカウンタiを参照し制御信号S1を出力して送信用アンテナを設定する。さらに、制御部11は、ST202としてアンテナカウンタiを参照し制御信号S2を出力して受信用アンテナを設定する。しかる後、制御部11は、ST203としてアンテナカウンタiの値が“2”であるかどうかを判断する。制御部11は、アンテナカウンタiの値が“2”であるとき(ST203のYES)、ST204としてアンテナカウンタiの値を “1”とし、“2”でないとき(ST203のNO)、ST205としてアンテナカウンタiの値を“2”とする。
【0035】
このようにST103の送信用及び受信用アンテナ設定処理では、ST105の処理にて通過物無しと判断され、再びアンテナ設定処理を行う際に異なるモードコードの設定がなされるように構成している。そのためモードコード「D5」における送信用,受信用アンテナ間、「D6」における送信用,受信用アンテナ間の通過物を検出可能となるので、通過物検出の確実性を高めることができる。
【0036】
図6は、ST107の送受信用アンテナ設定処理にて制御部11が行う処理を示す流れ図である。
記憶部12にはアンテナカウンタjが記録されている。制御部11は、アンテナカウンタjの値に応じて設定モードテーブルt1のモードコード「D1」,「D2」,「D3」,「D4」のモードに切換える。ここで、本実施の形態では、アンテナカウンタjが“1”のときにモードコード「D1」、“2”のときにモードコード「D2」,“3”のときにモードコード「D3」、“4”のときにモードコード「D4」のモードに切換えるものとする。
【0037】
先ず、制御部11は、ST301としてアンテナカウンタjを参照し制御信号S1を出力して送受信用アンテナを設定する。しかる後、制御部11は、ST302としてアンテナカウンタjの値が“4”であるかどうかを判断する。制御部11は、アンテナカウンタjの値が“4”であるとき(ST302のYES)、ST303としてアンテナカウンタjの値を “1”とし、“4”でないとき(ST202のNO)、ST304としてアンテナカウンタiの値をインクリメントする。
【0038】
このようにST107の送受信用アンテナ設定処理では、ST109の処理にて無線タグによりバックスキャッタ変調された電波の受信がなく、かつST110の処理にて所定時間が経過していないと判断され、再びアンテナ設定処理を行う際に異なるモードコードの設定がなされるように構成している。そのため、通過物に対し多方面から電波を放射可能となり、無線タグから的確に情報を読取ることができる。
【0039】
このように本実施の形態によれば、通過物を検知するために赤外線センサー等の別段の機器を付け加える必要はなく、電力消費の少ない弱レベル電波を放射する通過物検出モードの設定時に通過物を検出したときのみ通常モードに移行して強レベル電波を発するので、省エネルギー化を図ることができる無線通信装置を提供することができる。
【0040】
なお、この発明は前記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0041】
例えば前記実施の形態では、ゲート式アンテナ5に取付けられたアンテナの数を4つとしたが、2つ若しくは3つ、又はさらに多数であっても構わない。そのような構成においても、本発明によれば通過物の検知及び無線タグからのデータ読取りが可能であり、同様の省エネルギー効果を得ることができる。
【0042】
また、通過物検出モードにおける弱レベル電波の放射を、予め定めた時間間隔で断続的に行ってもよい。かかる手段をさらに講じれば、通過物検出モード時の電波放出頻度が低減されるので、さらなる省エネルギー化を図ることができる。このとき、本実施の形態にかかる無線通信装置の使用用途に応じ、通過物がゲート式アンテナを通過する際の一般的な速度を加味して前記時間間隔を定めることが好ましい。
【0043】
また、複数の無線通信装置を隣接させて使用する場合、通過物検出モードにおいて、他のゲート式アンテナから放射された電波に起因する通過物の誤検出を防止するため、各無線通信装置の識別コードをそのアンテナから放射する電波に附加してもよい。そして、この識別コードが附加された電波をアンテナが受信し、復調されたデジタルデータから特定される識別コードと自己の識別コードとを比較し、異なる場合はそのデジタルデータを無視する。
【0044】
また、ST110の処理にて無線タグ検出用電波の放射開始から所定時間が経過したと判断したとき、又は、ST111のデータ処理にて読取ったデータからその無線タグが通過を許可されていないものであると判断された場合、表示部14によりその旨を顧客に報知するようにしてもよい。若しくは無線通信装置10にスピーカを取付け、警告音等を発して報知してもよい。
【0045】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態であるRFIDシステムの全体構成図。
【図2】同実施の形態における無線通信装置の要部構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態において設定可能な受信モードを記録した設定モードテーブルのデータ構造を示す模式図。
【図4】同実施の形態において無線通信装置の制御部が実行する基本的な処理を示す流れ図。
【図5】同実施の形態において無線通信装置の制御部が通過物検出モードにて実行する送信用及び受信用アンテナ設定処理を示す流れ図。
【図6】同実施の形態において無線通信装置の制御部が通常モードにて実行する送受信アンテナ設定処理を示す流れ図。
【図7】ゲート式アンテナの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0047】
1〜4…アンテナ、5…ゲート式アンテナ、10…無線通信装置、11…制御部、12…記憶部、13…通信部、14…表示部、15…無線部、16…第1のアンテナ選択スイッチ、17…第2のアンテナ選択スイッチ、18…受信切換スイッチ、30…ホスト機器、41…PLL、42…送信部、43…サーキュレータ、44…受信部、45…RSSI回路、t1…設定モードテーブル、S1〜S3…制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を出力する送信部と、この送信部から出力される高周波信号を、ICを備えた無線タグに読取用電波として放射した後、この無線タグから返信された応答電波を受信して高周波信号に変換する複数のアンテナと、各アンテナが変換した高周波信号を入力し処理する受信部とを具備してなる無線通信装置において、
前記各アンテナのうちのいずれか1つを送信用アンテナとして選択する第1のアンテナ選択手段と、
前記送信用アンテナ選択手段により選択されたアンテナ以外のアンテナから受信用アンテナを選択する第2のアンテナ選択手段と、
前記送信用アンテナから通過物の検出用電波を所定強度で放射させる検出用電波放射手段と、
前記受信用アンテナが受信したこの検出用電波の受信レベルを測定する受信レベル測定手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記受信レベル測定手段により測定された前記検出用電波の受信レベルに基づいて前記送信用アンテナ及び前記受信用アンテナ間の通過物の有無を検出する通過物検出手段、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記通過物検出手段が通過物を検出しないとき、前記第1のアンテナ選択手段にて新たな送信用アンテナを選択し、前記第2のアンテナ選択手段にて新たな受信用アンテナを選択し、前記送信用アンテナから再び前記検出用電波を所定強度で放射させることを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通過物検出手段が通過物を検出したとき、前記複数のアンテナから前記無線タグと前記読取電波の送信と前記応答電波の受信を行う送受信用アンテナを選択する第3のアンテナ選択手段、
をさらに具備したことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記送受信用アンテナが前記応答電波を受信しないとき、前記第3のアンテナ選択手段にて新たな前記送受信用アンテナを選択し、この送受信用アンテナから再び前記読取電波を送信することを特徴とする請求項4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記複数のアンテナは、少なくとも一対を対向配置してなるゲート式アンテナであり、
前記第2のアンテナ選択手段は、送信用アンテナに対して対向するアンテナを受信用アンテナとして選択することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記検出用電波放射手段は、前記読取用電波よりも強度の弱い電波を検出用電波として放射させることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−37327(P2009−37327A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199470(P2007−199470)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】