説明

焦り判定装置

【課題】より効果的に潜在的な危険を回避することができる焦り判定装置を提供すること。
【解決手段】本発明による焦り判定装置1は、車両の走行軌跡を検出する軌跡検出手段3dと、前記走行軌跡から前記車両の引き返しを検出する引き返し検出手段3eと、前記引き返しが検出された場合に前記車両のユーザの焦りを判定する焦り判定手段3fを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適なユーザの焦り判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、ユーザが入力した目的地と、GPSにより検出した車両の現在位置とに基づいて経路をユーザに案内して、利便性を高めるために、カーナビゲーションシステムが搭載され場合が多い。このようなカーナビゲーションシステムにおいては、ユーザに経路を案内するにあたり、ディスプレイや音声による案内が行われている。
【0003】
この中でも特に、特許文献1に記載されているようなカーナビゲーションシステムにおいては、ユーザのアクセル、ブレーキ等の運転操作頻度や、各種スイッチ類の操作頻度、ユーザの発話音声ピッチからユーザの焦りを判定して、ユーザの焦りが判定される場合には、案内内容を変更することが行われており、例えば、ユーザの焦りが判定される場合には、音声案内内容の冗長性を下げて、ユーザの焦りの助長を防ぐことが行われている。
【特許文献1】特開平10−288532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなカーナビゲーションシステムにおいては、ユーザのアクセル、ブレーキ等の運転操作頻度や、各種スイッチ類の操作頻度、ユーザの発話音声ピッチ等を検出することにより、ユーザの焦りを判定しているため、ユーザの上述したような運転操作に表れない内面的な焦りを判定することはできず、かつ、内面的な焦りを確度の高い判断要素により検出する手法が確立されていなかったので、ユーザの内面的な焦りに起因して発生することが予想される潜在的な危険を回避するには十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、より効果的に潜在的な危険を回避することができる焦り判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明に係る焦り判定装置は、
車両の走行軌跡を検出する軌跡検出手段と、前記走行軌跡から前記車両の引き返しを検出する引き返し検出手段と、前記引き返しが検出された場合に前記車両のユーザの焦りを判定する焦り判定手段を備えることを特徴とする。
【0007】
なお、前記引き返しとは、例えば、前記車両がUターンして進行方向を逆にすることを示す。
【0008】
ここで、前記車両の出発地の所定の事象を検出する事象検出手段を備え、前記所定の事象が検出された場合に、前記焦り判定手段が前記車両のユーザの焦りを判定することを特徴とすることが好ましい。
【0009】
なお、前記所定の事象とは、例えば、出発地が自宅の場合には、忘れ物、玄関のドアの施錠忘れ、電灯の消し忘れ、水道の止め忘れ、ガスの元栓の閉め忘れ等の、ユーザが心理的に動揺して内面的な焦りが生じやすい事象を示す。
【0010】
これによれば、前記所定の事象の発生と、前記引き返しの検出とのアンド条件により前記車両のユーザの焦りを判定することができるので、より確度の高いユーザの内面の焦りの判定を行うことができる。これにより、より確度の高いユーザの内面の焦りの判定に基づき、ユーザの内面の焦りに起因する潜在的な危険を回避するための種々の手段を講じることができる。
【0011】
また、前記車両のユーザの所定の行動を検出する行動検出手段を備え、前記所定の行動が検出された場合に、前記焦り判定手段が前記車両のユーザの焦りの判定を解除することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
なお、前記所定の行動とは、例えば、ユーザが他の車両に道を譲る行動や、法定速度よりも十分低い速度で走行している場合等、ユーザの内面的な焦りがすでに解消されていると推定される行動を指すものとする。
【0013】
これによれば、ユーザの内面の焦りを必要な場合にのみ判定して、必要な場合にのみ、ユーザの内面の焦りに起因する危険を回避する手段を講じることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より効果的に潜在的な危険を回避することができる焦り判定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わる焦り判定装置の一実施形態を示す模式図である。焦り判定装置1は、ユーザの自宅に備えられた事象検出装置2と、車両に備えられたカーナビゲーションECU3と、情報センタに備えられたサーバ4と、基地局5とを備えて構成される。事象検出装置2と、カーナビゲーションECU3(Electronic Control Unit)と、サーバ4とは、ネットワークを介して接続されると共に、カーナビゲーションECU3はネットワークに接続された基地局5と無線又は有線で通信可能に構成されている。
【0017】
このネットワークは、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線、又は、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN網、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網、衛星電話、ビーコン等の無線にて構成されるものである。
【0018】
事象検出装置2はユーザの自宅に配置されるものであり、自宅の所定の事象、例えば、例えば、出発地が自宅の場合には、忘れ物、玄関の施錠忘れ、電灯の消し忘れ、ガス、水道の止め忘れ等の、ユーザが心理的に動揺して内面的な焦りを生じやすい所定の事象を検出する事象検出手段を構成する。以下に、事象検出装置2について詳細に説明する。
【0019】
図2は、本発明に係わる焦り判定装置1の一部をなす事象検出装置2の構成を示す模式図である。事象検出装置2は、情報収集装置60、忘れ物検出装置61、ドアセンサ62、ホームモニタ装置63とから構成される。
【0020】
忘れ物検出装置61は、携帯電話、自宅の鍵、車両の鍵、財布、定期、IDカードなど、普段身につけて外出する小物が自宅に残されたままユーザが自宅を出たことを検出して忘れ物を検出する。これらの小物が自宅に存在するか否かは例えば、忘れ物検出装置61が発信するリクエスト電波に小物が内蔵するICチップが応答するか否かにより検出される。
【0021】
リクエスト電波の発信機は玄関に備えられており、ユーザが出発前において、玄関に位置することを赤外線センサや床圧力センサにより検知した場合に発信器が発信するリクエスト電波に小物のICチップが応答するか否かにより忘れ物があるか否かを判定する。外出時に応答すべき小物は予め忘れ物検出装置61に登録する。
【0022】
ドアセンサ62は、自宅のドアの開閉及び鍵のロック/アンロック状態を検出するセンサである。例えば、鍵がロックされるとオン信号を出力するスイッチを鍵部に備え、ドアの開→閉後にオン信号が検出されない場合、ドアセンサ62は鍵の閉め忘れと判定する。 また、ドアの鍵にスマートキーシステムが適用されている場合、スマートキーの機能を利用して鍵の閉め忘れを検知する。スマートキーシステムでは自宅の玄関の内側と外側にそれぞれキー検知エリアを形成し、外出時にスマートキーを携帯していると玄関の内側でスマートキーが検知され、ユーザが外側に出ると外側のキー検知エリアでスマートキーが検知されその後検知エリアから離れると自動的にドアがロックされる。
【0023】
したがって、例えばユーザがスマートキーを携帯せずに自宅から外出した場合、玄関の外側のキー検知エリアでスマートキーが応答せず、外出が検知されない状態となり鍵がかからず、その後しばらくすると自動的にロックする事象が発生する。ドアセンサ62はこのような鍵の施錠忘れを検知する。
【0024】
ホームモニタ装置63は、自宅内の電灯やテレビ、ガス、水道などの作動状態を監視する装置であって、ユーザが自宅から外出した後に、自宅内の電灯やテレビ、エアコン、ステレオなどが消し忘れにより作動しているあるいは、ガスの元栓の閉め忘れ、水道の止め忘れが発生している場合に、ユーザがこれら作動のオフを失念したことを検出する。
【0025】
情報収集装置60は、CPU605、インターフェイス601、メモリ602、RAM603、ROM604、通信装置606を備えて構成される。CPU605は、ROM604内に格納されたプログラムを実行し、メモリ602は、忘れ物検出装置61、ドアセンサ62、ホームモニタ装置63が取得した所定の事象の情報やプログラムを記憶する。
【0026】
ROM604はOSやデバイスプログラムを記憶している。RAM603は、プログラムを一時的に記憶する作業領域として機能する。CPU605はプログラムを実行することで事象検出装置2は事象検出手段として機能する。CPU605は、ユーザが外出する際に忘れ物検出装置61、ドアセンサ62、ホームモニタ装置63が検出した所定の事象の情報を、通信装置606を介してサーバ4に送信する。
【0027】
次に情報センタのサーバ4について図を用いて詳細に説明する。図3は、本発明に係わる焦り判定装置1の一部をなす情報センタのサーバ4を示す模式図である。サーバ4は、事象検出装置2とカーナビゲーションECU3を仲介して種々のサービスをユーザに提供するものである。
【0028】
例えば、情報センタのサーバ4にはユーザの携帯端末のメールアドレス等が登録されていて、第三者の車両への侵入やエンジン始動等を監視してユーザに通知することに加え、ユーザが携帯端末から情報センタのサーバ4にアクセスすると携帯端末の操作内容に基づき車両の車載装置を遠隔操作することができる。
【0029】
図3に示すように、サーバ4はそれぞれバスで相互に接続されているCPU71、主記憶装置72、HDDなどの記憶装置73、表示装置74、入力装置75、ドライブ装置76及び通信装置77を備えて構成される。
【0030】
CPU71は、OSやアプリケーションなどのプログラムを記憶装置73から読み込んでして実行することで種々の機能を提供すると共に、サーバ4が行う処理を統括的に制御する。主記憶装置72はRAMにより構成され、OSやプログラム、データを一時保管する作業領域となる。記憶装置73は、HDDやフラッシュメモリなど不揮発性メモリであり、OS、プログラム、ドライバ等のファイルが記憶されている。
【0031】
表示装置74は、プログラムが指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数等で液晶などのディスプレイに描画する。例えば、GUI(Graphical User Interface)画面を形成し、操作に必要な各種ウィンドウやデータ等をディスプレイに表示する。
【0032】
入力装置75はキーボードやマウスなどで構成され、ユーザからの様々な操作指示を入力するために用いられる。ドライブ装置76は記憶媒体78が挿入可能に構成されており、記憶媒体78に記憶されたデータを読み取って主記憶装置72等に送出する。通信装置77は、インターネットやLANなどのネットワークに接続するためのインターフェイスであり、例えばモデム、NIC等で構成される。
【0033】
CPU71がプログラムを実行することで、情報収集装置60から送信された所定の事象の情報をそのままカーナビゲーションECU3へ転送するものである。焦りをもたらす状況を乗車時に検出するためのユーザの行動について説明する。乗車時において、ユーザが焦ると行動が速くなると推定されるので、乗車時の種々の操作の速さを検出することで、ユーザの焦りを検出できる。事象検出装置2は、検出した所定の事象をサーバ4及び基地局5を介してカーナビゲーションECU3に送信する。
【0034】
次にカーナビゲーションECU3について図を用いて詳細に説明する。図4は、本発明に係わる焦り判定装置1の一部をなすカーナビゲーションECU3の一実施態様を示す模式図である。
【0035】
カーナビゲーションECU3には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)アンテナ6と、IMU(イナーシャメジャメントユニット)7と、ステアリングセンサ8と、受信機9と、データベース10と、ディスプレイ11と、スピーカ12と、タッチパネル13が接続される。
【0036】
さらに、カーナビゲーションECU3には、ABS(アンチロックブレーキシステム)14と、通信装置15と、ミリ波レーダ16と、白線認識装置17と、メータECU18と、エンジンECU19と、LKA(Lane Keeping Assist)装置20と、ACC(Adaptive Cruise Control)装置21と、PCS(Pre-Crash Safety System)装置22がCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。
【0037】
カーナビゲーションECU3は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索手段3a、案内手段3b、表示手段3c、軌跡検出手段3d、引き返し検出手段3e、焦り判定手段3f、制御変更手段3g、行動検出手段3hとして機能するものである。
【0038】
GPSアンテナ6は、地球上空に打ち上げられた複数の軍事衛星の内三個の軍事衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、カーナビゲーションECU3の探索手段3aは、例えば三角測量の原理で自車の位置つまりは経度と緯度を測定する。なお、経度と緯度に加え高度も測定する場合には四個の軍事衛星を用いる。
【0039】
ここで、IMU7は車両のヨーレートを検出するものであり、ステアリングセンサ8は車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。タッチパネル13はユーザが目的地等の探索条件を入力する入力装置であり、データベース10はCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。ディスプレイ11は入力された目的地をもとにカーナビゲーションECU3の探索手段3aが探索した経路をカーナビゲーションECU3の案内手段3bの指令に基づき表示用の地図情報とともに表示するものである。
【0040】
また、ABS14は制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから取得しており、カーナビゲーションECU3はその車速をABS14からCAN等の通信規格による伝送により取得している。
【0041】
さらに、受信機9は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの道路情報(渋滞情報を含む)を受信する。
【0042】
上述したGPSアンテナ6を用いたカーナビゲーションECU3の探索手段3aによる自車の位置の測定は、軍事衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車が位置する場合やトンネル内を自車が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車が走行している場合などでは軍事衛星からの電波をGPSアンテナ6が受信できないため、自車の位置が測定できないという問題が生じる。
【0043】
このため、GPSアンテナ6が軍事衛星から電波を受信できない場合には、カーナビゲーションECU3の探索手段3aは、ABS14が検出した車速とIMU7が検出したヨーレート、ステアリングセンサ8が検出した操舵角をもとにして、自車の移動距離と方向を計算して自車の位置を測定する。これにより、GPSアンテナ6を用いた自車の位置の測定と併せて、トータルの自車位置の測定の精度を高めている。
【0044】
そして、カーナビゲーションECU3の案内手段3bは、データベース10内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置と、タッチパネル13により入力された目的地と、探索手段3aにより探索された経路とを併せてディスプレイ11に表示する。
【0045】
加えて、軌跡検出手段3dは、探索手段3aの測定した自車の位置から自車軌跡を検出し、引き返し検出手段3eは検出された自車軌跡を所定時間毎に監視して、自車軌跡の進行方向が途中で目的地と逆の出発地に向けて変更されており、その変更された進行方向が所定回数継続した場合には、車両の引き返しを検出する。
【0046】
さらに、焦り判定手段3fは、通信装置15を介してサーバ4から送信された自宅の所定の事象の情報を受信し、自宅において忘れ物、玄関の施錠忘れ、電灯の消し忘れ、ガス、水道の止め忘れ等の、ユーザが心理的に動揺して内面的な焦りを生じやすい所定の事象が発生しており、引き返し検出手段3eが車両の引き返しを検出した場合に、ユーザに焦りが発生していると判定する。
【0047】
なお、以上述べた事象検出装置2、サーバ4及びカーナビゲーションECU3間の通信は、PPPプロトコル(Point to Point Protocol)に従うものでありPPPプロトコルによりこれらの間でデータリンクを確立し、上位層であるTCP/IPプロトコル(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、TCP/IPと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)を実現する。すなわち、ネットワークはインターネットやWAN(Wide Area Network)を構成して、データの送受信を可能とするものである。
【0048】
ミリ波レーダ16は、所定の波長のミリ波を発信し、障害物に反射して帰って来るまでの時間及び周波数変化により障害物までの距離と相対速度を検出する。
【0049】
白線認識装置17は、カメラにより撮影した車両前方の画像データから走行レーンを区切る左右の白線を検出する。
【0050】
続いて、焦り状態と判定された場合に設定される車両制御について説明する。ユーザが焦っている場合には、速度の出し過ぎをもたらすおそれがあるため、焦り状態と判定された場合にはユーザに注意喚起することに加え、速度の出し過ぎを抑制する車両制御を行う。
【0051】
上述したように、カーナビゲーションECU3は、CAN等の車内LANを介してメータECU18、エンジンECU19、LKA装置20、ACC装置21と接続され、焦り判定手段3fが焦り状態であることを送出すると、制御変更手段3gがこれら各ECUに制御値を変更するよう要求する。
【0052】
メータECU18は、コンビネーションパネルのランプや警報音を吹鳴するものであって、制御変更手段3gの要求に応じ、ユーザを落ち着かせるようにランプを点灯させ、警報音を発生する。
【0053】
加えて、ナビゲーションECU3の表示手段3cがユーザを落ち着かせるための情報を表示する。ここで、ユーザを落ち着かせるための情報とは、例えば、「焦り状態と判定されています。安全運転を心がけましょう。」といったメッセージや、焦り度と危険度の関係を示すグラフに現在の焦り度が強調されたもの、家族の写真などである。
【0054】
また、予め録音した自分や家族の声「落ち着いて運転しよう」やクラシック音楽をスピーカ12から出力してもよい。またここでは図示しないが、アロマテラピー的な手法を用いてユーザを落ち着かせても良いし、マイナスイオンを用いてユーザを落ち着かせる構成としても良い。
【0055】
エンジンECU19は、例えばアクセル開度に応じてアクセルマップを参照して目標トルクついでエンジン制御量等を決定し、また、目標の加速度となるようにシフトマップを参照してトランスミッションを制御する。そこで、焦り状態であると判定され、制御変更手段3gの要求があると、エンジンECU19は通常よりも加速度や車速が低くなるようにエンジン制御量を決定しまたシフト制御する。
【0056】
また、LKA装置20は、白線検出装置17により検出された左右の白線の略中央を目標走行線として目標走行線からの乖離量が閾値以上となると警報音を吹鳴するが、焦り状態であると判定され制御変更手段3gの要求があると、警報音を吹聴する閾値を低下させる。
【0057】
ACC装置21は、ミリ波レーダ16により検出された先行車両との車間距離を例えば3段階のいずれかに設定して車両を追従走行させるが、焦り状態であると判定され制御変更手段3gの要求があると、3段階のうち最も長い車間距離かそれよりもさらに長い車間距離に設定する。
【0058】
このような、通常と異なる制御によりユーザは焦り状態と判定されたことに気づき、落ち着きを取り戻しやすくなり、また、警報音が早めに吹鳴され、車間距離も長めとすることができるので、ユーザが焦り状態であっても安全を確保することができる。また、PCS装置22を用いて、通常よりも短いTTC(Time To Collision)で警報音を吹鳴することもできる。
【0059】
なお、上述したような制御をユーザが煩わしいと感じるおそれがあるため、予めこれらの制御を実行することをカーナビゲーションECU3の表示手段3cがユーザに通知した後に制御を実行してもよい。また、ユーザがLKA装置20やACC装置21を使用していない場合、ユーザに通知した後にLKA装置20やACC装置21をオンにして制御を実行することが好ましい。
【0060】
さらに、エンジンECU19により通常よりも加速度や車速が低くなるようにエンジン制御量を決定しまたシフト制御することで環境に配慮した車両制御となる。また、ハイブリッド車や電気自動車では制動時の回生力から発電するが、環境に配慮した車両制御を行う場合、エンジンECU19は回生モードに入りやすくなるように車両を制御することで、車速を抑制し環境に配慮した車両制御とすることができる。
【0061】
ユーザの焦りは永続するものではないため、焦り状態が解消されたら安全面及び環境面の車両制御は解除することが好ましい。そこで、行動検出手段3hは、乗車時及び乗車中のユーザの行動を検出して、正常(焦っていない)と推定される所定の行動を検出し、この所定の行動が検出された場合には、焦り判定手段3fは、焦りの判定を解除する。
【0062】
ここで所定の行動とは、例えば、走行中において、ユーザが、他車両に割り込みをさせる、走行レーンを維持して走行している、車間距離が大きく維持している、一旦停止を尊守する等が挙げられる。
【0063】
行動検出手段3hは、ミリ波レーダ16や白線認識装置17により自車両の走行レーンの直前に割り込む他車両が検出された場合や、白線認識装置17により所定時間以上同じ走行レーンを走行していることが検出された場合、ミリ波レーダ16により検出される先行車両との車間距離が所定以上の場合、ナビゲーションECU3の探索手段3aにより一時停止箇所で車両が一旦停止した場合、これらを所定の行動として検出する。
【0064】
焦り判定手段3fは、行動検出手段3hが所定の行動を検出すると、焦りの判定を解除し、上述したような車両制御を停止するように、メータECU18、エンジンECU19、LKA装置20、ACC装置21に対して指令を出力する。
【0065】
以下に以上述べたカーナビゲーションECU3の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図5は、本発明に係わる焦り判定装置1の一部を構成するカーナビゲーションECU3の制御内容を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートにおいては本発明に係わる制御内容のみを示し、運転状態からの焦りの判定については省略している。
【0066】
S1において、ユーザがタッチパネル13により目的地を入力すると、S2において、カーナビゲーションECU3の探索手段3aは、三角測量の原理で自車の位置を測定し、S3において、探索手段3aはデータベース10内の探索用の地図情報を用いて、経路を探索する。これとともに、カーナビゲーションECU3の案内手段3bは、データベース10内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置と、タッチパネル13により入力された目的地と、探索手段3aにより探索された経路とを併せてディスプレイ11に表示する。
【0067】
加えて、S3において、軌跡検出手段3dは、探索手段3aの測定した自車の位置から自車軌跡を検出し、S4において、引き返し検出手段3eは検出された自車軌跡を所定時間毎に監視して、自車軌跡の進行方向が途中で目的地と逆方向の出発点に変更されて、その変更が所定回数連続した場合には、車両の引き返しを検出し、この車両の引き返しが検出された場合には、S5にすすみ、検出されない場合には制御を終了する。
【0068】
さらに、S5において、焦り判定手段3fは、通信装置15を介してサーバ4から送信された自宅の所定の事象の情報を受信し、S6において、自宅において所定の事象が発生しているかどうかを判定し、忘れ物、玄関の施錠忘れ、電灯の消し忘れ等の、ユーザが心理的に動揺して内面的な焦りを生じやすい所定の事象が発生している場合には、S7にすすみ、発生していない場合には制御を終了する。
【0069】
S7において、焦り判定手段3fは、ユーザに焦りが発生していると判定し、S8にすすんで、S8において、制御変更手段3gは、各ECUに制御内容の変更に指令を出力する。
【0070】
さらに、S9において、行動検出手段3hは、ユーザの焦りが解消したと推定される所定の行動を検出し、それらの所定の行動を検出した場合には、S11にすすんで、焦り判定手段3fはユーザの焦りの判定の解除を行い、さらにS12にすすんで、各ECUに対する制御変更の指令を解除する。S10において行動検出手段3hが所定の行動を検出しない場合には、S9にもどる。
【0071】
これらの制御内容により実現される本実施例の焦り判定装置1によれば、車両が目的地に着くことなく引き返しが行われており、かつ、自宅において、鍵のかけ忘れや電灯の消し忘れ等の所定の事象が発生している場合において、ユーザの焦りが発生していると判定するので、より確度の高い情報をもとにユーザの焦りの判定を行って、車両の制御を安全側に変更してユーザの安全を確保することができる。これにより、より効果的に潜在的な危険を回避することができる。
【0072】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0073】
例えば上述した実施例においては、ユーザが予めタッチパネル13により目的地を入力するケースを示したが、ユーザが目的地を入力しない場合においても、軌跡検出手段3dが車両の軌跡を監視して、車両の引き返しを検出した場合には、ユーザの焦りの判定の一要素とすることができる。
【0074】
また、上述した実施例においては、車両の引き返しと自宅の所定の事象の発生をアンド条件として、焦り判定手段3fがユーザの焦りを判定したが、車両の引き返しのみを用いて焦りを判定することももちろん可能である。この場合には、自宅の事象検出装置2から、情報センタのサーバ4及び基地局5を介して所定の事象の情報を、焦り判定手段3fが取得する必要がないので、より簡易な構成とすることができる。
【0075】
さらに、上述した実施例においては、出発地が自宅の場合を示したが、出発地がホテル等の宿泊地である場合にも、例えば忘れ物等が発生した場合に、情報センタのオペレータにホテルから電話等の連絡手段により忘れ物の発生を通知した場合に、オペレータによりサーバ4に忘れ物の発生を入力して、それを基地局5からカーナビゲーションECU3の焦り判定手段3fが取得する構成とすることができる。
【0076】
加えて上述した実施例と運転状態からユーザの焦りを判定する構成を組み合わせて実施することも可能である。すなわち、車間距離が短い、レーンチェンジが多い、心拍数型回答の判断要素によりユーザの焦りを判定することもできる。
【0077】
さらに、上述した実施例ではドアセンサ62を用いてドアの鍵の施錠状態を検出して、鍵のかけ忘れを検出したが、窓センサを追加して、窓の開けっ放しを検出して、これを焦り判定の要素とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、より効果的に潜在的な危険を回避することができる焦り判定装置に関するものであり、比較的軽微な制御上の変更により、所望の効果を得ることができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る焦り判定装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る焦り判定装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る焦り判定装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る焦り判定装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る焦り判定装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 焦り判定装置
2 事象検出装置
3 カーナビゲーションECU
4 サーバ
5 基地局
6 GPSアンテナ
7 IMU
8 ステアリングセンサ
9 受信機
10 データベース
11 ディスプレイ
12 スピーカ
13 タッチパネル
14 ABS
15 通信装置
16 ミリ波レーダ
17 白線認識装置
18 メータECU
19 エンジンECU
20 LKA装置
21 ACC装置
22 PCS装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行軌跡を検出する軌跡検出手段と、前記走行軌跡から前記車両の引き返しを検出する引き返し検出手段と、前記引き返しが検出された場合に前記車両のユーザの焦りを判定する焦り判定手段を備えることを特徴とする焦り判定装置。
【請求項2】
前記車両の出発地の所定の事象を検出する事象検出手段を備え、前記所定の事象が検出された場合に、前記焦り判定手段が前記車両のユーザの焦りを判定することを特徴とする請求項1に記載の焦り判定装置。
【請求項3】
前記車両のユーザの所定の行動を検出する行動検出手段を備え、前記所定の行動が検出された場合に、前記焦り判定手段が前記車両のユーザの焦りの判定を解除することを特徴とする請求項1又は2に記載の焦り判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−192068(P2008−192068A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28402(P2007−28402)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】