説明

照明装置、計測ヘッドおよび計測装置

【課題】画像計測用および膜厚計測用のヘッドを兼用できるようにするとともに、光源からの照明光の光量の損失を抑制して、効率的な計測が行えるようにする。
【解決手段】画像計測用の第1,第2の光源からの照明光を1つに結束された出射端から出射する画像計測用ライトガイド11からの照明光は、拡散板13を介して対物レンズ17に導かれるので、第1,第2の光源の内のいずれかを選択して駆動させたときの照明ムラが拡散板13によって解消される一方、膜厚計測用ライトガイド12からの照明光は、拡散板13を介することなく、対物レンズ17に導かれるので、拡散板13による光量の損失がない。しかも、いずれのライトガイド11,12からの照明光も共通の対物レンズ17から対象物に照射できる、すなわち、対物レンズ17を共用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの照明光を対象物に照射する照明装置、それを用いた計測ヘッドおよび計測装置に関し、更に詳しくは、基板などを撮像した画像に基づいて、基板上に成形されたパターンの線幅などを計測する一方、基板上に形成された電極膜や配向膜などの膜厚を計測する複合型の計測装置、それに好適な照明装置および計測ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウェハやガラス基板を撮像し、撮像した画像を処理して、半導体ウェハやガラス基板上に形成された配線パターン等の線幅などを計測する装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、半導体基板や液晶パネル用のガラス基板などの基板上に形成された酸化膜や電極膜などの各種の薄膜の厚みを計測する装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3059602号公報
【特許文献2】特開2002−81916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計測対象物を撮像した画像を処理して線幅等の計測を行なう計測装置と、計測対象物からの反射光に基づいて膜厚の計測を行なう計測装置とを複合化して、線幅等の画像計測と膜厚計測とが同時に行えるようにすることが望まれる。
【0006】
この複合化に当たって、コストを抑制するとともに、スペース効率を高めるために、計測対象物の画像を撮像する画像計測用のヘッドと、前記計測対象物に投受光する膜厚計測用のヘッドとを兼用する構成とすることが考えられる。
【0007】
一般に、画像計測の計測対象物であるワークには、例えば、白色で見易いワークや青色で見易いワークなどがあり、計測を容易にするために、ワークに応じて、複数の光源を選択的に切換えたり、あるいは、複数の光源を組み合わせたりして照明している。
【0008】
このため、複数の光源からの照明光の伝送には、例えば、図7に示すような分岐されたライトガイド40が用いられる。このライトガイド40は、多数の光ファイバが束ねられて構成されており、複数の光源、例えば、第1,第2の各光源に個別的に対応するように、二組の光ファイバ束から構成されている。
【0009】
各入射端40a−1,40a−2では、各組の光ファイバ束が臨み、1つに結束された出射端40bでは、図8の拡大図に示すように、第1の光源に対応する第1の組の光ファイバ束を構成する複数の光ファイバ41−1と、第2の光源に対応する第2の組の光ファイバ束を構成する複数の光ファイバ41−2とが、各組が均一に混在して分布するように分散された状態で円形に結束されており、各組の光ファイバ41−1,41−2が占める発光面積は、等しくなっており、出射端全体の発光面積の1/2となっている。
【0010】
このように各光源に個別的に対応する各組の光ファイバの発光面積が、1/2となっているので、一方の光源だけを点灯した場合には、照明ムラが生じる。このため、スリガラス等の拡散板を配置して照明光を均一に拡散させている。
【0011】
このように複数の光源からの照明光を、拡散板を介して計測対象物に照射する画像計測用のヘッドに、膜厚計測用の光源からの照明光を導入してヘッドを兼用しようとすると、前記拡散板によって、膜厚計測用の光源からの照明光の光量の損失が大きなものとなり、露光時間を延ばす必要が生じ、膜厚計測に要する時間が長くなってしまう。
【0012】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、画像計測用および膜厚計測用のヘッドを兼用できるようにするとともに、光源からの照明光の光量の損失を抑制して、効率的な計測が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の照明装置は、3つ以上の光源からの照明光を、対物レンズを介して対象物に照射する照明装置であって、前記3つ以上の光源の内の複数の光源からの照明光を、複数に分岐された各入射端にそれぞれ入射させて、1つに結束された出射端から出射する第1のライトガイドと、前記複数の光源以外の光源からの照明光を、入射端に入射させて出射端から出射する第2のライトガイドと、前記第1のライトガイドから出射される照明光を、拡散板を介して前記対物レンズに導く第1の光路と、前記第2のライトガイドから出射される照明光を、前記拡散板を介することなく、前記対物レンズに導く第2の光路とを備えている。
【0014】
3つ以上の光源の内の複数の光源は、同時に、または、選択的に切換えて点灯されるのが好ましい。
【0015】
複数の光源以外の光源は、1つの光源であるのが好ましい。
【0016】
本発明の照明装置によると、複数の光源からの照明光を入射して1つに結束された出射端から出射する第1のライトガイドからの照明光は、拡散板を介して対物レンズに導かれるので、複数の光源の内のいずれかの光源を選択して点灯させたときの照明ムラが拡散板によって解消される一方、第2のライトガイドからの照明光は、拡散板を介することなく、対物レンズに導かれるので、拡散板による光量の損失がなく、しかも、いずれのライトガイドからの照明光も共通の対物レンズから対象物に照射できる、すなわち、対物レンズを共用することができる。
【0017】
これによって、用途が異なる光源から照明光、例えば、画像計測用の複数の光源からの照明光を、照明ムラなく対物レンズを介して対象物に照射することができる一方、膜厚計測用の光源からの照明光を、光量の損失なく、共通の対物レンズを介して対象物に照射することができる。
【0018】
(2)本発明の計測ヘッドは、画像計測用の複数の光源からの照明光を、複数に分岐された各入射端にそれぞれ入射させて、1つに結束された出射端から出射する画像計測用ライトガイドと、膜厚計測用の光源からの照明光を、入射端に入射させて出射端から出射する膜厚計測用ライトガイドと、前記画像計測用ライトガイドから出射される照明光を、拡散板を介して対物レンズに導く画像計測用光路と、前記膜厚計測用ライトガイドから出射される照明光を、前記拡散板を介することなく、前記対物レンズに導く膜厚計測用光路とを備えている。
【0019】
画像計測とは、計測対象物の画像を処理して寸法、形状や位置などを計測することをいう。
【0020】
膜厚計測とは、計測対象物に形成されている膜厚を計測することをいう。
【0021】
計測対象物とは、計測する対象をいい、例えば、基板、部品などをいう。
【0022】
画像計測用の複数の光源としては、例えば、赤色、青色、白色といった出力波長の異なる複数のLEDなどがある。
【0023】
膜厚計測用の光源としては、キセノンランプ、ハロゲンランプ、あるいは、出力波長の異なる複数のLEDを組み合わせた光源などがある。
【0024】
本発明の計測ヘッドによると、画像計測用の複数の光源からの照明光を入射して1つに結束された出射端から出射する画像計測用ライトガイドからの照明光は、拡散板を介して対物レンズに導かれるので、複数の光源の内のいずれかの光源を選択して点灯させたときの照明ムラが拡散板によって解消される一方、膜厚計測用ライトガイドからの照明光は、拡散板を介することなく、対物レンズに導かれるので、拡散板による光量の損失がない。しかも、いずれのライトガイドからの照明光も共通の対物レンズから対象物に照射できる、すなわち、対物レンズを共用することができ、当該計測ヘッドを、画像計測用および膜厚計測用のヘッドとして兼用することができる。
【0025】
(3)本発明の計測ヘッドの好ましい実施形態では、前記画像計測用の複数の光源は、同時に、または、選択的に切換えて点灯されるものであり、前記膜厚計測用の光源は、1つである。
【0026】
ここで、選択的に切換えて点灯とは、複数の光源のいずれかを選択的に駆動して点灯させてもよいし、複数の光源を同時に駆動し、シャッタによって、いずれかを遮光することによって、選択的に点灯させてもよい。
【0027】
この実施形態によると、画像計測用の複数の光源は、計測対象物に応じて、選択的に切換えて点灯されるので、いずれかの光源を選択して点灯した場合には、画像計測用ライトガイドから出射される照明光には、照明ムラが生じるが、拡散板によって照明ムラを解消することができる。また、膜厚計測用の光源は、1つであるので、画像計測用の光源のような照明ムラが生じることもなく、拡散板を通過させる必要がない。
【0028】
(4)本発明の計測ヘッドの一つの実施形態では、前記画像計測用光路と前記膜厚計測用光路とが交差する位置に配置されたビームスプリッタを備え、前記ビームスプリッタは、前記画像計測用ライトガイドおよび前記膜厚計測用ライトガイドの一方のライトガイドから出射される照明光を透過させて前記対物レンズ側へ導き、他方のライトガイドから出射される照明光を反射させて前記対物レンズ側へ導くようにしている。
【0029】
この実施形態によると、画像計測用ライトガイドの出射端から出射される照明光および膜厚計測用ライトガイドの出射端から出射される照明光を、ビームスプリッタによって対物レンズ側へ導くことができるので、ビームスプリッタ以降の光路を共用して小型化を図ることができる。
【0030】
(5)本発明の計測ヘッドの他の実施形態では、前記画像計測用ライトガイドの出射端または前記膜厚計測用ライトガイドの出射端のいずれかが、照明光を前記対物レンズに導く共通の光路の入射端に、対向するように相対移動させる移動機構を備えている。
【0031】
この実施形態によると、画像計測用ライトガイドの出射端または膜厚計測用ライトガイドの出射端のいずれかが、照明光を対物レンズに導く共通の光路の入射端に、対向するように相対移動させるので、ビームスプリッタを介することなく、共通の光路に導くことができ、ビームスプリッタによる光量の損失がない。
【0032】
(6)本発明の計測ヘッドの更に他の実施形態では、前記画像計測用ライトガイドの出射端は、前記画像計測用の複数の各光源に個別的に対応する複数組の光ファイバ束をそれぞれ構成する各光ファイバが、円形に、かつ、各組が混在して分布するように結束される。
【0033】
この実施形態によると、画像計測用ライトガイドの出射端では、各光源に個別的に対応する各組の光ファイバが、各組が混在して分布するように円形に結束されるので、複数の光源のいずれかの光源を選択して駆動した場合に、各光源からの照明光が局在することがない。
【0034】
(7)本発明の計測ヘッドの他の実施形態では、前記画像計測用光路または前記膜厚計測用光路からの照明光が、前記対物レンズを介して計測対象物に照射され、前記画像計測用光路には、前記対物レンズを通過した前記計測対象物からの反射光を、撮像素子側へ導く第1のハーフミラーが配置され、前記膜厚計測用光路には、前記対物レンズを通過した前記計測対象物からの反射光を、分光器側へ導く第2のハーフミラーが配置される。
【0035】
この実施形態によると、第1のハーフミラーまたは第2のハーフミラーによって、対物レンズを通過した計測対象物からの反射光を、撮像素子側または分光器側にそれぞれ導いて画像計測または膜厚計測を行うことが可能となる。
【0036】
(8)本発明の計測装置は、本発明に係る計測ヘッドと、前記撮像素子で撮像された画像を処理して前記計測対象物の寸法を計測する画像計測手段と、前記分光器で分光された反射光に基づいて、前記計測対象物の膜厚を計測する膜厚計測手段とを備えている。
【0037】
本発明の計測装置によると、計測ヘッドを兼用して計測対象物の寸法を計測できるとともに、計測対象物の膜厚を計測することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の照明装置によれば、複数の光源からの照明光は、照明ムラなく、また、他の光源からの照明光は、光量の損失なく、共通の対物レンズを用いて対象物に照射することができ、これによって、当該照明装置を、異なる用途の効率のよい照明装置として兼用することができる。
【0039】
本発明の計測ヘッドによれば、画像計測用の複数の光源からの照明光は、照明ムラなく、また、膜厚計測用の光源からの照明光は、光量の損失なく、共通の対物レンズを用いて照射することができるので、当該計測ヘッドを、画像計測および膜厚計測に兼用することができ、しかも、膜厚計測用の光源からの照明光は、光量の損失がないので、効率的な膜厚計測が可能となる。
【0040】
本発明の計測装置によれば、計測ヘッドを兼用して画像計測および膜厚計測を効率的に行えるとともに、当該計測装置のコストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る計測装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の計測ヘッドの構成を示す図である。
【図3】図2の画像計測用ライトガイドの出射端の拡大図である。
【図4】図1の計測装置の構成を示すブロック図である。
【図5】比較例の構成を示す図2に対応する図である。
【図6】本発明の他の実施形態の図2に対応する図である。
【図7】分岐ライトガイドを示す図である。
【図8】図7のライトガイドの出射端の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る計測装置の概略構成を示す斜視図である。
【0044】
この実施形態の計測装置1は、画像計測および膜厚計測のためのデータを取り込む計測系3と、この計測系3に相互に情報伝送可能に接続されて、取り込んだデータを処理して計測を行なうとともに、各部の制御を行なう制御系4とを備えており、制御系4は、計測系3を制御する制御プログラムを実行するコンピュータを内蔵している。
【0045】
計測系3は、基台5と、その上に設置された一対のガイドレール6に沿って移動可能なステージ7と、このステージ7を跨ぐ形で基台5上の固定位置に架設された門型の架台8と、この架台8内に設けられた図示しないヘッド移動機構と、ヘッド移動機構に支持された計測ヘッド9とを備えている。ステージ7には、計測対象物である基板2が載置される。
【0046】
計測ヘッド9は、図示しない光ファイバやケーブルによって、制御系4に接続されている。
【0047】
矩形板状のステージ7は、図示しないリニアモータなどの駆動機構によって図のy方向に移動可能である。計測ヘッド9は、y方向に直交する図のx方向を可動方向とするヘッド移動機構によって、x方向に移動可能である。
【0048】
基台5上には、ステージ7の移動方向であるy方向に沿って延びるリニアスケール10が設けられる一方、ステージ7には、該ステージ7と一体的に移動する図示しないエンコーダヘッドが設置されており、リニアスケール10とエンコーダヘッドとによって、ステージ7のy方向の移動量を測定するリニアエンコーダが構成される。
【0049】
各エンコーダヘッドには、投光部と受光部とが備えられ、投光部から出射されてリニアスケール10で変調された反射光を受光部で受けることにより、ステージ7の移動量に応じた数のパルス信号を得ることができる。また、各リニアスケール10の1箇所には原点パターンが設けられていることにより、ステージ位置の原点信号を得ることもできる。
【0050】
架台8に内蔵されるヘッド移動機構は、ステージ7上に載置された基板2を撮像する一方、膜厚計測用の投受光を行う計測ヘッド9を、x方向に移動させるものである。このヘッド移動機構は、リニアエンコーダを備えており、このリニアエンコーダで計測ヘッド9のx方向の移動量を測定しながら、制御系4から指令されたx座標に計測ヘッド9を移動させる。
【0051】
計測ヘッド9は、顕微鏡のように対物レンズを有する構成となっており、対物レンズの交換により撮像倍率を変更できるようになっている。また、この計測ヘッド9には、後述のようにカメラが搭載されるとともに、オートフォーカス機構を備えている。
【0052】
制御系4は、膜厚計測のための膜の材質や光学定数などのデータを入力するとともに、画像計測のための計測位置などを特定するための計測レシピ等を入力するキーボードやマウスなどの入力装置20と、計測値などが表示されるディスプレイなどの表示装置21とを備えており、計測系3に対してリアルタイムに指令を送ったり、計測系3で撮像した画像を観察したり、計測系3を制御するプログラムを入力したりできるようになっている。計測系3を制御するプログラムは、ネットワークを経由して、外部からダウンロードすることもできる。
【0053】
図2は、図1の計測ヘッド9の概略構成図である。
【0054】
この実施形態の計測ヘッド9は、画像計測用の第1,第2の光源(図示せず)からの照明光を、二つに分岐された各入射端からそれぞれ入射して1つに結束された出射端から出射する画像計測用ライトガイド11と、膜厚計測用の第3の光源(図示せず)からの照明光を入射端から入射して出射端から出射する膜厚計測用ライトガイド12とを備えている。
【0055】
この実施形態では、画像計測用の第1,第2の光源は、例えば、白色LEDおよび青色LEDであり、膜厚計測用の第3の光源は、例えば、キセノンランプである。
【0056】
各ライトガイド11,12は、光ファイバを多数束ねて構成されており、画像計測用ライトガイド11は、入射端が2つに分岐された分岐ライトガイドである。
【0057】
図3は、第1,第2の光源から照明光を導光する画像計測用ライトガイド11の結束端、すなわち、出射端を拡大して示す図である。
【0058】
画像計測用ライトガイド11の出射端では、第1の光源に対応する第1の組の光ファイバ束を構成する複数の光ファイバ11−1と、第2の光源に対応する第2の組の光ファイバ束を構成する複数の光ファイバ11−2とが、円形に結束されている。
【0059】
各組の光ファイバ束を構成する各光ファイバ11−1,11−2は、各組が均一に混在して分布するように分散された状態で結束されている。各組の光ファイバ11−1,11−2が占める発光面積は、等しくなっており、出射端全体の発光面積(結束面積)の1/2となっている。
【0060】
このように各光源に個別的に対応する各組の光ファイバの発光面積が、1/2となっているので、一方の光源だけを点灯駆動した場合には、照明ムラが生じる。
【0061】
このため、画像計測用ライトガイド11の出射端には、上述の図2に示すように、照明ムラを解消するために、スリガラスなどからなる拡散板13が配置されている。
【0062】
一方、膜厚計測用の第3の光源からの照明光を導光する膜厚計測用ライトガイド12は、画像計測用ライトガイド11と結束することなく、分離しており、これによって、膜厚計測用の照明光を、拡散板13を通過させる必要がなく、拡散板13による光量の損失が生じないようにしている。
【0063】
各ライトガイド11,12の出射端が取り付けられた支持体14の内部には、全反射ミラー15およびビームスプリッタ16が配置されている。全反射ミラー15は、膜厚計測用ライトガイド12からの照明光をビームスプリッタ16へ全反射する。ビームスプリッタ16は、この全反射ミラー15からの反射光を、下方へ反射させる一方、上方の画像計測用ライトガイド11からの照明光を下方へ透過させる。
【0064】
この実施形態のビームスプリッタ16では、透過光と反射光との比率を、例えば、7:1としている。すなわち、画像計測用ライトガイド11からの、拡散板13を通過した照明光は、その7割がビームスプリッタ16を透過する一方、全反射ミラー15で全反射された膜厚計測用ライトガイド12からの照明光は、その3割がビームスプリッタ16で反射される。
【0065】
全反射ミラー15およびビームスプリッタ16が配置された支持体14は、対物レンズ17およびカメラ18を保持する保持体19に取り付けられ、この保持体19の内部には、全反射ミラー22および第1,第2のハーフミラー23,24が配置されている。全反射ミラー22は、ビームスプリッタ16からの照明光を、第2のハーフミラー24へ全反射する。第2のハーフミラー24は、全反射ミラー22からの照明光を、第1のハーフミラー23へ透過させる。また、この第2のハーフミラー24は、第1のハーフミラーからの反射光を、計測ヘッド9外の分光器25に接続された光ファイバ26側へ反射させる。第1のハーフミラー23は、第2のハーフミラー24からの照明光を、対物レンズ17へ反射する。また、この第1のハーフミラー23は、対物レンズ17からの反射光を、上方のカメラ18側へ透過させる一方、第2のハーフミラー24へ反射させる。
【0066】
かかる構成の計測ヘッド9では、膜厚の計測時には、膜厚計測用ライトガイド12からの照明光は、全反射ミラー15、ビームスプリッタ16、全反射ミラー22、第2,第1のハーフミラー24,23および対物レンズ17を介して計測対象物である基板2の計測領域に照射される。すなわち、画像計測用ライトガイド11から全反射ミラー15、ビームスプリッタ16、全反射ミラー22、第2,第1のハーフミラー24,23および対物レンズ17に至る膜厚計測用光路が構成される。
【0067】
照射された光による基板2からの反射光は、対物レンズ17および第1のハーフミラー23を介してカメラ18の2次元CCD撮像素子上に結像する。
【0068】
また、画像計測時には、画像計測用ライトガイド11からの照明光は、ビームスプリッタ16、全反射ミラー22、第2,第1のハーフミラー24,23および対物レンズ17を介して計測対象物である基板2の計測領域に照射される。すなわち、画像計測用ライトガイド11からビームスプリッタ16、全反射ミラー22、第2,第1のハーフミラー24,23および対物レンズ17に至る画像計測用光路が構成される。
【0069】
照射された光による基板2からの反射光は、対物レンズ17および第1,第2のハーフミラー23,24を介して分光器25に導かれる。
【0070】
図4は、計測ヘッド9を含む計測装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0071】
膜厚計測用の光源部27は、上述の第3の光源を備えており、膜厚計測時に、点灯駆動される。この第3の光源からの照明光が、上述の膜厚計測用ライトガイド12によって計測ヘッド9へ導光される。
【0072】
画像計測用の光源部28は、上述の第1,第2の光源を備えており、画像計測時に、これら光源の両方あるいは一方が点灯駆動される。これら光源からの照明光が、上述の画像計測用ライトガイド11によって計測ヘッド9へ導光される。
【0073】
膜厚計測時には、計測対象物である基板2からの反射光は、光ファイバ26を介して上述の分光器25に導かれ、分光器25で分光されて、波長単位の反射光の強度が取り出される。
【0074】
制御回路29は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、膜厚や寸法を算出するための演算処理を行なうとともに、カメラ18のフォーカス制御部30、ステージ7や計測ヘッド9の移動制御部31などの各部の制御処理を行なう。
【0075】
制御回路29は、分光器25からの反射光のスペクトルと、膜厚を所定値に想定したときの理論上の反射光のスペクトルとの比較を、膜厚の想定値を変えながら順に行い、膜厚毎の比較結果に基づいて、膜厚の値を特定する、いわゆる、カーブフィッティング法によって膜厚を計測する膜厚計測部32としての機能を備えている。
【0076】
また、制御回路29は、上述のカメラ18で撮像した画像を、画像入力部33を介して取り込み、画像処理して計測対象物である基板2上に形成されたパターンの線幅などの寸法を計測する寸法計測部34としての機能を有する。
【0077】
この寸法計測部34では、カメラ18で撮像した画像と、予め登録されているテンプレート画像とを、マッチングさせて計測位置を求めて計測を行う。
【0078】
ここで、この実施形態の計測装置の効率を、図5に示すように、画像計測用の第1,第2の光源および膜厚計測用の第3の光源の各光源からの照明光を、3つの入射端にそれぞれ入射させ、1つに結束された出射端から出射するライトガイド35を備えた構成の効率と比較する。なお、この図5において、図2に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0079】
ライトガイド35の出射端では、各光源に対応する光ファイバが占める面積は、等しくなっており、それぞれ出射端全体(結束面積)の発光面積の1/3となっている。
【0080】
この図5の構成では、画像計測用と膜厚計測用とを一つのライトガイド35で兼用するので、上述の全反射ミラー14およびビームスプリッタ16が不要となるが、第3の光源からの照明光も拡散板13を通過することになる。
図2の実施形態の構成を実施例とし、この図5の構成を比較例として、画像計測用の光源および膜厚計測用の光源としての効率の比較結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示すように、画像計測用の光源について、実施例では、結束面積に占める発光面積の割合が50%、拡散板13の透過率を50%とし、ビームスプリッタ16での損失が30%であるので、総合した効率は、17.5%(=0.5×0.5×0.7×100)となる。これに対して、比較例では、結束面積に占める発光面積の割合が33%、拡散板13の透過率を50%とすると、総合した効率は、16.5%(=0.33×0.5×100)となる。
【0083】
したがって、実施例の方が、画像計測用の光源としての光の利用効率が比較例よりも上回っている。
【0084】
膜厚計測用の光源については、実施例では、結束面積に占める発光面積の割合が100%、ビームスプリッタ16での損失が70%であるので、総合した効率は、30%(=1×0.3×100)となる。これに対して、比較例では、結束面積に占める発光面積の割合が33%、拡散板13の透過率を50%とすると、総合した効率は、16.5%(=0.33×0.5×100)となる。
【0085】
したがって、実施例の方が、膜厚計測用の光源としての光の利用効率が比較例の2倍近く上回っている。
【0086】
この例は、上述のように、ビームスプリッタ16での透過光と反射光との比率を、7:1とした場合であり、したがって、この比率を調整して、効率を調整することができる。
【0087】
以上のように計測ヘッド9を、画像計測および膜厚計測に兼用するので、複合機としての計測装置1のコストを抑制することができるとともに、スペース効率を高めることができる。しかも、複数の光源を同時に、あるいは、選択的に切換えて点灯駆動する画像計測用の複数の光源からの照明光は、拡散板13によって照明ムラを解消できる一方、膜厚計測用の光源からの照明光は、拡散板13を介さないので、光量の損失がなく、膜厚計測を効率的に行える。
【0088】
(実施形態2)
上述の実施形態1では、画像計測用ライトガイド11の照明光と膜厚計測用ライトガイド12の照明光とを、ビームスプリッタ16を介して共通の光路に導いたけれども、本発明の他の実施形態として、図6に示すように、拡散板13を含む画像計測用ライトガイド11と、膜厚計測用ライトガイド12とを、図示しないレールに沿ってスライド移動可能な移動体36に取り付け、いずれかのライトガイド11(12)の出射端を、全反射ミラー22に至る共通の光路の入射端に対向配置させて光源を切換えるようにしてもよい。
【0089】
この構成では、ビームスプリッタ16が不要となるので、ビームスプリッタでの光量損失がなくなり、効率が更に上昇する。
【0090】
(その他の実施形態)
光源の数や種類は、上述の実施の形態に限らないのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、基板等の計測対象物の寸法および膜厚の計測などに有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 計測装置
2 基板
9 計測ヘッド
11 画像計測用ライトガイド
12 膜厚計測用ライトガイド
13 拡散板
16 ビームスプリッタ
17 対物レンズ
18 カメラ
23,24 第1,第2のハーフミラー
25 分光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の光源からの照明光を、対物レンズを介して対象物に照射する照明装置であって、
前記3つ以上の光源の内の複数の光源からの照明光を、複数に分岐された各入射端にそれぞれ入射させて、1つに結束された出射端から出射する第1のライトガイドと、
前記複数の光源以外の光源からの照明光を、入射端に入射させて出射端から出射する第2のライトガイドと、
前記第1のライトガイドから出射される照明光を、拡散板を介して前記対物レンズに導く第1の光路と、
前記第2のライトガイドから出射される照明光を、前記拡散板を介することなく、前記対物レンズに導く第2の光路と、
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
画像計測用の複数の光源からの照明光を、複数に分岐された各入射端にそれぞれ入射させて、1つに結束された出射端から出射する画像計測用ライトガイドと、
膜厚計測用の光源からの照明光を、入射端に入射させて出射端から出射する膜厚計測用ライトガイドと、
前記画像計測用ライトガイドから出射される照明光を、拡散板を介して対物レンズに導く画像計測用光路と、
前記膜厚計測用ライトガイドから出射される照明光を、前記拡散板を介することなく、前記対物レンズに導く膜厚計測用光路と、
を備えることを特徴とする計測ヘッド。
【請求項3】
前記画像計測用の複数の光源は、同時に、または、選択的に切換えて点灯されるものであり、
前記膜厚計測用の光源は、1つである請求項2に記載の計測ヘッド。
【請求項4】
前記画像計測用光路と前記膜厚計測用光路とが交差する位置に配置されたビームスプリッタを備え、
前記ビームスプリッタは、前記画像計測用ライトガイドおよび前記膜厚計測用ライトガイドの一方のライトガイドから出射される照明光を透過させて前記対物レンズ側へ導き、他方のライトガイドから出射される照明光を反射させて前記対物レンズ側へ導く請求項2または3に記載の計測ヘッド。
【請求項5】
前記画像計測用ライトガイドの出射端または前記膜厚計測用ライトガイドの出射端のいずれかが、照明光を前記対物レンズに導く共通の光路の入射端に、対向するように相対移動させる移動機構を備える請求項2または3に記載の計測ヘッド。
【請求項6】
前記画像計測用ライトガイドの出射端は、前記画像計測用の複数の各光源に個別的に対応する複数組の光ファイバ束をそれぞれ構成する各光ファイバが、円形に、かつ、各組が混在して分布するように結束される請求項2ないし5のいずれか一項に記載の計測ヘッド。
【請求項7】
前記画像計測用光路または前記膜厚計測用光路からの照明光が、前記対物レンズを介して計測対象物に照射され、
前記画像計測用光路には、前記対物レンズを通過した前記計測対象物からの反射光を、撮像素子側へ導く第1のハーフミラーが配置され、前記膜厚計測用光路には、前記対物レンズを通過した前記計測対象物からの反射光を、分光器側へ導く第2のハーフミラーが配置される請求項2ないし6のいずれか一項に記載の計測ヘッド。
【請求項8】
前記請求項7に記載の計測ヘッドと、
前記撮像素子で撮像された画像を処理して前記計測対象物の寸法を計測する画像計測手段と、
前記分光器で分光された反射光に基づいて、前記計測対象物の膜厚を計測する膜厚計測手段とを備えることを特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203938(P2010−203938A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50282(P2009−50282)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】