説明

熱処理装置及び熱処理方法

【課題】基板面内での熱処理温度のばらつきを抑制し、基板面内における配線パターンの線幅を均一化する。
【解決手段】基板搬送路2を形成し、被処理基板Gを基板搬送路に沿って平流し搬送する基板搬送手段20と、被処理基板に対する熱処理空間を形成する第一のチャンバ8Aと、第一のチャンバ内を加熱または冷却可能な第一の加熱・冷却手段17,18と、第一のチャンバの前段に設けられ、基板搬送路を搬送される被処理基板を検出する基板検出手段45と、基板検出手段の検出信号が供給されると共に、基板搬送手段による基板搬送速度を制御可能な制御手段40とを備え、制御手段は、基板検出手段の検出信号により被処理基板の搬送位置を取得し、基板搬送方向に沿って複数に分けられた被処理基板の領域ごとに、基板搬送手段による基板搬送速度を切り換え、第一のチャンバ内における滞在時間を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を平流し搬送しながら前記被処理基板に熱処理を施す熱処理装置及び熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
具体的には、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光し、これを現像処理するものである。
【0003】
ところで近年、このフォトリソグラフィ工程では、スループット向上の目的により、被処理基板を略水平姿勢の状態で搬送しながら、その被処理面に対しレジストの塗布、乾燥、加熱、冷却処理等の各処理を施す構成が多く採用されている。
例えば、基板を加熱し、レジスト膜の乾燥や現像処理後の乾燥を行う熱処理装置では、特許文献1に開示されるように、基板を水平方向に平流し搬送しながら、搬送路に沿って配置されたヒータによって加熱処理する構成が普及している。
このような平流し搬送構造を有する熱処理装置にあっては、複数の基板を搬送路上に連続的に流しながら熱処理を行うことができるため、スループットの向上を期待することができる。
【0004】
図7(a)〜(d)に一例を挙げて具体的に説明すると、図示する熱処理装置60は、複数の搬送コロ61が回転可能に敷設されてなる平流しの基板搬送路62を備え、この基板搬送路62に沿って熱処理空間を形成するチャンバ65が設けられている。チャンバ65には、スリット状の基板搬入口65aと基板搬出口65bとが設けられている。
即ち、基板搬送路62を搬送される基板G(G1,G2,G3,・・・)は、基板搬入口65aから連続的にチャンバ65内に搬入されて所定の熱処理が施され、基板搬出口65bから搬出されるようになっている。
【0005】
チャンバ65内には、基板G(G1,G2,G3,・・・)に対し予備加熱を行い、基板Gを所定温度まで昇温するプレヒータ部63と、基板温度を維持するための主加熱を行うメインヒータ部64とが連続して設けられている。
プレヒータ部63は、各搬送コロ61の間に設けられた下部ヒータ66と、天井部に設けられた上部ヒータ67とを備え、メインヒータ部64は、各搬送コロ61の間に設けられた下部ヒータ69と、天井部に設けられた上部ヒータ70とを備えている。
【0006】
このように構成された熱処理装置60にあっては、プレヒータ部63において、基板Gを所定温度(例えば100℃)まで加熱するために、下部ヒータ66及び上部ヒータ67が所定の設定温度(例えば160℃)となされる。
一方、メインヒータ部64にあっては、プレヒータ部63において加熱された基板Gの温度を維持し、熱処理を効率的に行うために、下部ヒータ69及び上部ヒータ70が所定の熱処理温度(例えば100℃)とされる。
【0007】
そして、図7(a)〜(d)に時系列に状態を示すように、ロット単位で複数の基板G(G1,G2,G3,・・・)が連続的に搬入口65aからプレヒータ部63に搬入され、そこで各基板Gは所定温度(例えば100℃)まで加熱される。
プレヒータ部63において昇温された各基板Gは、続けてメインヒータ部64に搬送され、そこで基板温度が維持されて所定の熱処理(例えば、レジスト中の溶剤を蒸発させる処理)が施され、搬出口65bから連続して搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−158088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図7(a)〜図7(d)に示した平流し搬送構造の熱処理装置にあっては、プレヒータ部63による予備加熱後の基板温度が、基板Gの前部領域及び後部領域と、中央部の領域とで異なる傾向があった。
具体的には、基板Gの前部領域は、前方に続く基板面(熱を吸収する面)が無いため、比較的、熱が籠もった状態のチャンバ内に搬入されることとなり、中央部領域よりも多くの熱量を受け、より高温になっていた。
一方、基板Gの後部領域にあっては、後方に続く基板面(熱を吸収する面)が無いため、比較的、熱が籠もった状態のチャンバ内を搬送されることとなり、中央部領域よりも多くの熱量を受け、より高温になっていた。
このため、プレヒータ部63で昇温された基板Gに対しメインヒータ部64において所定の加熱処理を施す際に、基板面内の温度ばらつきによって、配線パターンの線幅が不均一になるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板を平流し搬送しながら熱処理を施す熱処理装置であって、基板面内における熱処理温度のばらつきを抑制し、基板面内における配線パターンの線幅をより均一化することのできる熱処理装置及び熱処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するために、本発明に係る熱処理装置は、平流し搬送される被処理基板に対し熱処理を施す熱処理装置であって、基板搬送路を形成し、前記被処理基板を前記基板搬送路に沿って平流し搬送する基板搬送手段と、前記基板搬送路の所定区間を覆うと共に、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に対する熱処理空間を形成する第一のチャンバと、前記第一のチャンバ内を加熱または冷却可能な第一の加熱・冷却手段と、前記第一のチャンバの前段に設けられ、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板を検出する基板検出手段と、前記基板検出手段の検出信号が供給されると共に、前記基板搬送手段による基板搬送速度を制御可能な制御手段とを備え、前記制御手段は、前記基板検出手段の検出信号により被処理基板の搬送位置を取得し、基板搬送方向に沿って複数に分けられた被処理基板の領域ごとに、前記基板搬送手段による基板搬送速度を切り換え、前記第一のチャンバ内における滞在時間を制御することに特徴を有する。
尚、前記制御手段は、前記第一のチャンバ内における被処理基板の前部領域及び後部領域の滞在時間が、被処理基板の中央部領域よりも短くなるように制御することが望ましい。
【0012】
このような構成により、被処理基板を搬送する場合、例えば、その中央部は通常の搬送速度で第一のチャンバ内を搬送され、基板前部を第一のチャンバに搬入する間と基板後部を第一のチャンバから搬出する間は、通常の搬送速度よりも高速に搬送される制御が可能となる。
これにより、被処理基板の中央部が第一のチャンバに滞在する時間に対して、基板前部及び基板後部の滞在時間が短くなり、基板全体として受ける熱量が均一となって、基板面内における温度ばらつきが抑制される。その結果、基板面内における配線パターンの線幅をより均一化することができる。
【0013】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る熱処理方法は、被処理基板を基板搬送路に沿って平流し搬送し、前記被処理基板を所定温度に加熱または冷却された第一のチャンバ内に搬入すると共に、前記第一のチャンバ内に搬入された被処理基板に対し所定の熱処理を施す熱処理方法であって、前記基板搬送路を搬送される被処理基板を前記第一のチャンバへの搬入前に検出するステップと、前記被処理基板の検出により被処理基板の搬送位置を取得し、基板搬送方向に沿って複数に分けられた被処理基板の領域ごとに、基板搬送速度を切り換え、前記第一のチャンバ内における滞在時間を制御するステップとを含むことに特徴を有する。
尚、前記第一のチャンバ内における滞在時間を制御するステップにおいて、前記第一のチャンバ内における被処理基板の前部領域及び後部領域の滞在時間が、被処理基板の中央部領域よりも短くなるように制御することが望ましい。
【0014】
このような方法によれば、被処理基板を搬送する場合、例えば、その中央部は通常の搬送速度で第一のチャンバ内を搬送され、基板前部を第一のチャンバに搬入する間と基板後部を第一のチャンバから搬出する間は、通常の搬送速度よりも高速に搬送される制御が可能となる。
これにより、被処理基板の中央部が第一のチャンバに滞在する時間に対して、基板前部及び基板後部の滞在時間が短くなり、基板全体として受ける熱量が均一となって、基板面内における温度ばらつきが抑制される。その結果、基板面内における配線パターンの線幅をより均一化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理基板を平流し搬送しながら熱処理を施す熱処理装置であって、基板面内における熱処理温度のばらつきを抑制し、基板面内における配線パターンの線幅を均一化することのできる熱処理装置及び熱処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の熱処理装置の動作の流れを示すフローである。
【図4】図4(a)〜(c)は、図3のフローに対応する熱処理装置の動作を説明するための断面図である。
【図5】図5は、図3のフローに続いて実施される、本発明の熱処理装置の動作の流れを示すフローである。
【図6】図6(a)〜(c)は、図5のフローに対応する熱処理装置の動作を説明するための断面図である。
【図7】図7(a)〜(d)は、従来の熱処理装置の課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の熱処理装置にかかる実施形態を、図面に基づいて説明する。尚、この実施形態にあっては、熱処理装置を、被処理基板であるガラス基板(以下、基板Gと呼ぶ)に対し加熱処理する加熱処理ユニットに適用した場合を例にとって説明する。
また、以下の説明において用いる基板Gの前部(領域)とは、例えば基板全長に対して基板前端から四分の一程度(基板全長を2000mmとすれば500mm)までの領域とし、基板Gの後部(領域)とは、基板全長に対して基板後端から四分の一程度までの領域とする。また、基板Gの中央部(領域)とは、前記基板Gの前部及び後部を除く領域とする。
【0018】
図1は、加熱処理ユニット1の全体の概略構成を示す断面図、図2は、加熱処理ユニット1の(平面方向の断面を示す)平面図である。
この加熱処理ユニット1は、図1、図2に示すように、回転可能に敷設された複数のコロ20によって基板GをX方向に向かって搬送する基板搬送路2を具備する。この基板搬送路2に沿って、上流側から順に(X方向に向かって)、基板搬入部3と、予備加熱を行うプレヒータ部4と、主加熱を行うメインヒータ部5と、基板搬出部6とが配置されている。
【0019】
基板搬送路2は、図2に示すようにY方向に延びる円柱状のコロ20(基板搬送手段)を複数有し、それら複数のコロ20は、X方向に所定の間隔をあけて、それぞれ回転可能に配置されている。また、複数のコロ20によって基板搬入部3から基板搬出部6にかけて形成された基板搬送路2は、基板搬送方向に沿って複数のエリアに区切られている。
具体的には、基板搬入部3に設けられた複数のコロ20により第一の搬送部2aが形成される。
また、プレヒータ部4内の上流領域に設けられたコロ20により第二の搬送部2bが形成される。尚、この第二の搬送部2bの基板搬送方向の長さ、即ち、プレヒータ部4の開始位置からの長さは、少なくとも基板Gの前部の長さよりも長く設けられている。
【0020】
また、プレヒータ部4内の中央領域に設けられたコロ20により第三の搬送部2cが形成され、プレヒータ部4内の下流領域からメインヒータ部5内の中央領域にかけて設けられたコロ20により第四の搬送部2dが形成されている。
尚、第四の搬送部2dのプレヒータ部4内における基板搬送方向の長さは、少なくとも基板Gの後部の長さよりも長く設けられている。
更に、メインヒータ部5内の下流領域から基板搬出部6にかけて設けられたコロ20により第五の搬送部2eが形成されている。
【0021】
前記第一の搬送部2a〜第五の搬送部2eは、それぞれ駆動系が独立して設けられている。
即ち、図2に示すように、第一の搬送部2aにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22aによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10aに接続されている。
また、第二の搬送部2bにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22bによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10bに接続されている。
【0022】
また、第三の搬送部2cにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22cによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10cに接続されている。
また、第四の搬送部2dにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22dによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10dに接続されている。
また、第一の搬送部2eにおける複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22eによって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10eに接続されている。
【0023】
尚、各コロ20は、その周面が基板Gの全幅にわたって接するように設けられ、加熱された基板Gの熱が伝達しにくいように、外周面部が樹脂等の熱伝導率の低い材料、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で形成されている。また、コロ20の回転軸21は、アルミニウム、ステンレス、セラミック等の高強度かつ低熱伝導率の材料で形成されている。
【0024】
また、加熱処理ユニット1は所定の熱処理空間を形成するためのチャンバ8を備える。チャンバ8は、基板搬送路2の周りを覆う薄型の箱状に形成され、このチャンバ8内において、コロ搬送される基板Gに対しプレヒータ部4による予備加熱とメインヒータ部5による主加熱とが連続して行われる。尚、本実施形態においては、チャンバ8は、プレヒータ部4の熱処理空間を形成する第一のチャンバ8Aと、この第一のチャンバ8Aの後端から連続形成され、メインヒータ部5の熱処理空間を形成する第二のチャンバ8Bとからなるものとする。
【0025】
図1に示すようにチャンバ8の前部側壁には、Y方向に延びるスリット状の搬入口51が設けられている。この搬入口51を基板搬送路2上の基板Gが通過し、チャンバ8内に搬入されるように構成されている。
また、チャンバ8の後部側壁には、基板搬送路2上の基板Gが通過可能なY方向に延びるスリット状の搬出口52が設けられている。即ち、この搬出口52を基板搬送路2上の基板Gが通過し、チャンバ8から搬出されるように構成されている。
【0026】
また、チャンバ8の上下左右の壁部は、互いに空間をあけて設けられた内壁12及び外壁13を備えた二重壁構造を有しており、内壁12及び外壁13の間の空間14が、チャンバ8内外を断熱する空気断熱層として機能する。尚、外壁13の内側面には、断熱材15が設けられている。
また、図2に示すように、チャンバ8において、Y方向に対向する(前記内壁12と外壁13とからなる)側壁には、軸受け22が設けられ、その軸受け22によって、基板搬送路2のコロ20がそれぞれに回転可能に支持されている。
【0027】
また、図1に示すようにチャンバ8において、搬入口51付近の上壁部には排気口25が設けられ、下壁部には排気口26が設けられ、それぞれ排気量可変な排気装置31,32に接続されている。
さらに、チャンバ8の搬出口52付近の上壁部には排気口27が設けられ、下壁部には排気口28が設けられ、それぞれ排気量可変な排気装置33、34に接続されている。
即ち、前記排気装置31〜34が稼働することにより排気口25〜28を介してチャンバ8内の排気が行われ、チャンバ内温度をより安定化させる構成となされている。
【0028】
また、図1に示すようにプレヒータ部4は、第一の加熱手段として、基板搬送路2に沿ってチャンバ8内に配列された、複数の下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18を備える。これら下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18は、それぞれに駆動電流が供給されることにより発熱する構成となされている。
下部面状ヒータ17は、それぞれ短冊状のプレートからなり、各プレートは下方から基板Gを加熱するよう隣り合うコロ部材20の間に敷設されている。
また、上部面状ヒータ18は、それぞれ短冊状のプレートからなり、図1に示すように上方から基板Gを加熱するようチャンバ8の天井部に敷設されている。
また、下部面状ヒータ17と上部面状ヒータ18には、ヒータ電源36により駆動電流が供給され、ヒータ電源36は、コンピュータからなる制御部40(制御手段)によって制御される。
【0029】
一方、メインヒータ部5は、第二の加熱手段として、基板搬送路2に沿ってチャンバ8内に設けられた短冊状のプレートからなる下部面状ヒータ23と上部面状ヒータ24とを備える。このうち、下部面状ヒータ23は、基板Gの下方から加熱するよう隣り合うコロ部材20の間に敷設され、上部面状ヒータ24は、基板Gの上方から加熱するようチャンバ8の天井部に敷設されている。前記下部面状ヒータ23と上部面状ヒータ24には、ヒータ電源39により駆動電流が供給され、ヒータ電源39は制御部40によって制御されるよう構成されている。
【0030】
また、この加熱処理ユニット1にあっては、基板搬入部3の所定位置に、基板搬送路2を搬送される基板Gを検出するための基板検出センサ45(基板検出手段)が設けられ、その検出信号を制御部40に出力するようになされている。
この基板検出センサ45は、例えばチャンバ8の搬入口51より手前側に所定距離を空けて設けられ、センサ上を基板Gの所定箇所(例えば先端)が通過して所定時間の経過後に、基板Gが搬入口51からチャンバ8内(プレヒータ部4)に搬入されるようになされている。
【0031】
また、チャンバ8内においてメインヒータ部5の中央領域には、このメインヒータ部5に搬入される基板Gに対し、例えば赤外線照射により非接触に基板温度の検出を行う基板温度検出センサ46(基板温度検出手段)が設けられ、その検出信号を制御部40に出力するようになされている。即ち、制御部40は、基板温度検出センサ46の出力に基づき、プレヒータ部4によって加熱された基板Gの温度を取得することができる。
【0032】
続いて、このように構成された加熱処理ユニット1による一連の熱処理工程について、更に図3乃至図6を用いて説明する。尚、図3及び図5は、加熱処理ユニット1における基板搬送制御の流れを示すフローであり、図4及び図6は、加熱処理ユニット1における基板搬送状態を示す断面図である。
【0033】
先ず、ヒータ電源36からの駆動電流の供給により、プレヒータ部4の下部面状ヒータ17及び上部面状ヒータ18の温度が予備加熱温度(例えば160℃)に設定される。また、ヒータ電源39からの駆動電流の供給により、メインヒータ部5の下部面状ヒータ23及び上部面状ヒータ24の温度が、プレヒータ部4において加熱された基板Gの温度を維持するための熱処理温度(例えば100℃)に設定される。
【0034】
このヒータ温度の設定により、チャンバ8内の雰囲気はプレヒータ部4がメインヒータ部5よりも所定温度高い状態となされる。即ち、基板Gは、高温(160℃)の雰囲気となされたプレヒータ部4を通過することにより、その基板温度が所定の熱処理温度(例えば100℃)まで昇温され、メインヒータ部5を通過する間、基板温度が維持される構成となされている。
【0035】
前記のように基板搬入前においてチャンバ8内の雰囲気温度が調整された後、第一の搬送部2a〜第五の搬送部2eは通常速度(例えば50mm/sec)の駆動がなされ、被処理基板である基板Gは、基板搬入部3の基板搬送路2を搬送される。
そして、図4(a)に示すように基板検出センサ45によって基板Gが検出されると(図3のステップS1)、制御部40にその基板検出信号が供給される。
【0036】
制御部40は、前記基板検出信号と基板搬送速度とに基づいて、基板Gの搬送位置を取得(検出)開始する。そして、制御部40は、図4(a)に示すように、基板Gがチャンバ8の搬入口51からプレヒータ部4に搬入されるタイミングにおいて(図3のステップS2)、第一、第二の搬送部2a,2bの搬送速度が所定速度上昇するようコロ駆動装置10a,10bを制御する(図3のステップS3)。これにより基板Gの前部は、通常よりも速い搬送速度(例えば100mm/sec)でプレヒータ部4に搬入される。
【0037】
また、制御部40は、図4(b)に示すように、基板Gの中央部がプレヒータ部4に搬入されるタイミングにおいて(図3のステップS4)、第一、第二の搬送部2a,2bの搬送速度が通常速度(50mm/sec)に戻るようコロ駆動装置10a,10bを制御する(図3のステップS5)。これにより基板Gの中央部は、通常速度(50mm/sec)でプレヒータ部4に搬入される。
【0038】
また、制御部40は、図4(c)に示すように、基板Gの中央部がプレヒータ部4から搬出され、基板Gの後部のみがプレヒータ部4内に残るタイミングにおいて(図3のステップS6)、第四、第五の搬送部2d,2eの搬送速度が所定速度上昇するようコロ駆動装置10d,10eを制御する(図3のステップS7)。これにより基板Gの後部は、通常よりも速い搬送速度(例えば100mm/sec)でプレヒータ部4から搬出され、メインヒータ部5に搬入される(図3のステップS8)。
【0039】
また、制御部40は、前記のように基板Gの全体がメインヒータ部5に搬入されると、第四,第五の搬送速度が通常速度(50mm/sec)に戻るようコロ駆動装置10d,10eを制御する(図3のステップS9)。これにより基板Gは、通常の搬送速度(50mm/sec)でメインヒータ部5を搬送されることとなる。
【0040】
このように加熱処理ユニット1において基板Gを搬送する場合、その中央部は通常の搬送速度(50mm/sec)でプレヒータ部4を搬送されるが、基板前部をプレヒータ部4に搬入する間と基板後部をプレヒータ部4から搬出する間は、通常の搬送速度よりも高速(100mm/sec)で搬送される。
その結果、基板Gの中央部がプレヒータ部4に滞在する時間に対して、基板前部及び基板後部の滞在時間がより短くなり、基板全体として受ける熱量が均一となって基板面内における温度ばらつきが抑制される。
【0041】
また、制御部40は、図6(a)に示すように、メインヒータ部5においては、基板Gの中央部領域が基板温度検出センサ46の付近を通過するタイミングにおいて基板中央部の温度を取得する(図5のステップSt1)。
更に、制御部40は、図6(b)に示すように、基板Gの後部が基板温度検出センサ46の付近を通過するタイミングにおいて基板後部領域の温度を取得する(図5のステップSt2)。
【0042】
制御部40は、取得した基板中央部の温度と基板後部の温度とを比較し、基板後部の温度がより高い場合には(図5のステップSt3)、図6(c)に示す状態から、基板後部を通常の搬送速度よりも速くメインヒータ部5から搬出するようコロ駆動装置10eを制御する(図5のステップSt4)。これにより、基板Gは、第五の搬送部2eにおいて通常よりも所定速度高速(例えば100mm/sec)で搬送され、メインヒータ部5での熱処理時間がより短くなされる(図5のステップSt6)。
【0043】
一方、制御部40は、取得した基板中央部の温度が基板後部の温度よりも高い場合には、図6(c)に示す状態から、基板後部を通常の搬送速度よりも遅くメインヒータ部5から搬出するようコロ駆動装置10eを制御する(図5のステップSt5)。この場合には、基板Gは第五の搬送部2e上を通常よりも所定速度低速(例えば30mm/sec)で搬出され、メインヒータ部5での熱処理時間がより長くなされる(図5のステップSt6)。
【0044】
尚、取得した基板中央部の温度と基板後部の温度との差分が許容範囲内の場合はそのまま搬出される(図5のステップSt6)。
このようにメインヒータ部5における基板後部の滞在時間が調整可能となされることにより、基板面内温度がより均一化される。
【0045】
以上のように本発明に係る実施形態によれば、加熱処理ユニット1において基板Gを搬送する場合、その中央部は通常の搬送速度でプレヒータ部4を搬送され、基板前部をプレヒータ部4に搬入する間と基板後部をプレヒータ部4から搬出する間は、通常の搬送速度よりも高速に搬送される。
これにより、基板Gの中央部がプレヒータ部4に滞在する時間に対して、基板前部及び基板後部の滞在時間が短くなり、基板全体として受ける熱量が均一となって、基板面内における温度ばらつきが抑制される。その結果、基板面内における配線パターンの線幅をより均一化することができる。
【0046】
尚、前記実施の形態においては、プレヒータ部4における基板中央部の搬送速度に対して基板前部及び基板後部の搬送速度が高速となる期間を設けるものとしたが、その制御方法に限定されるものではない。
即ち、基板中央部の搬送速度に対して基板前部及び基板後部の搬送速度が相対的に高速となればよく、例えば、プレヒータ部4内において少なくとも基板中央部の搬送時は通常よりも低速搬送となるよう制御を行ってもよい。
【0047】
また、前記実施の形態においては、本発明に係る熱処理装置を、被処理基板Gに対し加熱処理を施す加熱処理ユニット1に適用するものとしたが、それに限定されず、基板Gに対し冷却処理を施す基板冷却装置に適用してもよい。その場合、冷却手段として、例えばペルチェ素子により冷却されたプレートを用いることができる。
また、その場合、従来の課題として、基板Gの前部領域及び後部領域の温度が、中央部領域の温度よりも低くなることが考えられる。そのため、前記実施の形態と同様にチャンバ内における基板Gの前部領域及び後部領域の搬送速度が、中央部領域の搬送速度よりも速くなるよう制御することにより、基板面内における熱処理(冷却)温度のばらつきを抑制することができる。
【0048】
また、前記実施の形態においては、基板搬送手段としてコロ20を用いるものとしたが、それに限定されるものではなく、他の搬送手段を用いるものであってもよい。例えば、基板Gを保持しつつ基板搬送方向に沿って設けられたレールをスライド移動する手段を設け、第一の搬送部2a〜第五の搬送部2での搬送速度をそれぞれ制御する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 加熱処理ユニット(熱処理装置)
2 基板搬送路
8 チャンバ
8A 第一のチャンバ
8B 第二のチャンバ
17 下部面状ヒータ(第一の加熱・冷却手段)
18 上部面状ヒータ(第二の加熱・冷却手段)
20 コロ(基板搬送手段)
40 制御部(制御手段)
45 基板検出センサ(基板検出手段)
G 基板(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平流し搬送される被処理基板に対し熱処理を施す熱処理装置であって、
基板搬送路を形成し、前記被処理基板を前記基板搬送路に沿って平流し搬送する基板搬送手段と、前記基板搬送路の所定区間を覆うと共に、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に対する熱処理空間を形成する第一のチャンバと、前記第一のチャンバ内を加熱または冷却可能な第一の加熱・冷却手段と、前記第一のチャンバの前段に設けられ、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板を検出する基板検出手段と、前記基板検出手段の検出信号が供給されると共に、前記基板搬送手段による基板搬送速度を制御可能な制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記基板検出手段の検出信号により被処理基板の搬送位置を取得し、基板搬送方向に沿って複数に分けられた被処理基板の領域ごとに、前記基板搬送手段による基板搬送速度を切り換え、前記第一のチャンバ内における滞在時間を制御することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第一のチャンバ内における被処理基板の前部領域及び後部領域の滞在時間が、被処理基板の中央部領域よりも短くなるように制御することを特徴とする請求項1に記載された熱処理装置。
【請求項3】
前記基板搬送路に沿って前記第一のチャンバの後段に設けられ、前記基板搬送路の所定区間を覆うと共に、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に対する熱処理空間を形成する第二のチャンバと、
前記第二のチャンバ内を加熱または冷却可能な第二の加熱・冷却手段と、
前記第二のチャンバ内を搬送される前記被処理基板の中央部領域と後部領域の温度をそれぞれ検出可能し、検出信号を前記制御手段に供給する基板温度検出手段とを更に備え、
前記制御部は、前記基板温度検出手段から取得した前記被処理基板における中央部領域の温度と後部領域の温度とを比較し、その比較結果に基づいて、被処理基板の後部領域を前記第二のチャンバから搬出する基板搬送速度を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された熱処理装置。
【請求項4】
被処理基板を基板搬送路に沿って平流し搬送し、前記被処理基板を所定温度に加熱または冷却された第一のチャンバ内に搬入すると共に、前記第一のチャンバ内に搬入された被処理基板に対し所定の熱処理を施す熱処理方法であって、
前記基板搬送路を搬送される被処理基板を前記第一のチャンバへの搬入前に検出するステップと、
前記被処理基板の検出により被処理基板の搬送位置を取得し、基板搬送方向に沿って複数に分けられた被処理基板の領域ごとに、基板搬送速度を切り換え、前記第一のチャンバ内における滞在時間を制御するステップとを含むことを特徴とする熱処理方法。
【請求項5】
前記第一のチャンバ内における滞在時間を制御するステップにおいて、
前記第一のチャンバ内における被処理基板の前部領域及び後部領域の滞在時間が、被処理基板の中央部領域よりも短くなるように制御することを特徴とする請求項4に記載された熱処理方法。
【請求項6】
更に、前記基板搬送路に沿って前記第一のチャンバの後段に設けられた第二のチャンバにおいて、前記被処理基板に所定の熱処理を施しながら前記被処理基板を搬送するステップと、
前記第二のチャンバ内を搬送される前記被処理基板の中央部領域と後部領域の温度をそれぞれ検出するステップと、
取得した前記被処理基板における中央部領域の温度と後部領域の温度とを比較し、その比較結果に基づいて、被処理基板の後部領域を前記第二のチャンバから搬出する基板搬送速度を決定するステップとを含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載された熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−254057(P2011−254057A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128917(P2010−128917)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】