説明

燃料圧力制御装置

【課題】燃料カット等の終了直後におけるトルクショックや回転数変動を抑えるとともに、希薄燃焼領域を拡大可能とする燃料圧力制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、燃料噴射が行なわれない燃料カット等の特定運転状態に移行する条件が成立したか否かを判定する条件成立判定手段101と、この条件成立判定手段により特定運転状態に移行する条件が成立したと判断されたとき、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、特定運転状態が終了した直後に要求される蓄圧配管部303の目標燃圧値を算出する目標燃圧値算出手段102と、特定運転状態に移行する条件が成立した時点から少なくともその特定運転状態に実際に移行するまでの間の任意の期間、蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、高圧燃料ポンプから蓄圧配管部への燃料供給を強制的に停止させる燃料供給制御手段103とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を高圧燃料ポンプから蓄圧配管部を介してインジェクタに供給するようにされた筒内噴射式エンジンにおける燃料圧力制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可変吐出量高圧燃料ポンプは、例えば特開平10−153157号では、ポンプ室に3つの通路が連通している。1つは燃料をポンプ室に低圧燃料を流入させる流入通路、1つはコモンレール(蓄圧配管部)に高圧燃料を送る供給通路、1つはスピル通路である。スピル通路にはスピル弁を接続し、スピル弁の開閉動作によって燃料タンクへのスピル量を制御することにより吐出量を調整するようになっている。また、例えば特開2000−8997号では、吸入弁の下流側(ポンプ側)の圧力が上流側(吸入口側)の圧力に対して同等又はそれ以上のときに前記吸入弁に閉弁力が発生するようにしたものにおいて、前記吸入弁が閉弁方向に移動した際に係合するように付勢力を与えられた係合部材、外部入力により前記付勢力と逆方向の付勢力を係合部材に作用させるアクチュエータを設け、吸入弁の開閉動作により燃料吐出量を調節している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来技術の高圧燃料ポンプシステムにおいて、燃料圧力の調整はインジェクタからの消費量(燃料噴射量)とポンプからの吐出供給量で目標燃圧値となるように上記のスピル弁及び吸入弁の開閉タイミングを制御している。ここで、供給量と消費量の釣り合いで燃料圧力を制御するが実質昇圧分はポンプ吐出量で、減圧分はインジェクタによる消費量によって行われており、一旦上昇した燃圧を低下させる場合には、ポンプからの吐出を停止させ、インジェクタからの消費量のみで行っている。このため、エンジン運転状態が燃料カット中で燃料消費が行われない間は、供給と消費の関係が成立しないため、直前まで昇圧された燃料圧力が保持されたままとなり、燃料圧力を調整(低下)できるのは燃料カットからのリカバー(燃料供給復帰)後となる(後述する図5参照)。
【0004】
ここで希薄(成層・リーン)燃焼に燃料圧力が与える影響は大きく、燃焼が成立する燃料圧力下で希薄燃焼を行う(許可する)必要がある。燃料カット中に運転状態が希薄燃焼許可域となったとしても、燃料圧力は前述のようにリカバー後でしか制御されないためそれが目標燃圧値となるには所定の遅れが発生する。よって、燃費向上を目的として運転領域としては希薄燃焼を実施したい領域であっても、燃料圧力の制限により実施できないという問題が発生する。また、リカバー後に燃料圧力が目標燃圧値値近傍になるのが定常安定領域であると、そこから燃焼切換えを行うことになる。均質燃焼と希薄燃焼では燃焼効率・トルク量に差があり、燃焼切換え時にトルクショック及び回転数変動が顕著に出る可能性が懸念される。
【0005】
ところで、前記の如くの、燃料を高圧燃料ポンプから蓄圧配管部を介してインジェクタに供給するようにされた筒内噴射式エンジンにおいては、燃料カットに移行する条件が成立したとき、直ちに燃料カットを行なうと、トルクショックが発生するおそれがあるため、通常は、トルクを漸減させるように、例えば燃料カット条件成立後、まず半分の気筒だけ燃料カットを行い、その後全気筒の燃料カットを行なうようにして、条件成立時点から所定期間遅らせて(全気筒の)燃料カットを開始させるようにされている。
【0006】
このように、実際に燃料カットを開始する時期を燃料カット条件成立時点から遅らせるようにした場合においても、前記リカバー(燃料供給復帰)直後の燃料圧力が目標燃圧値にならないという問題は発生するが、かかる問題を解消するための一つの方策として、特開2000−18067号公報には、燃料カット条件が成立した後、燃料圧力が目標燃圧値になるまで、燃料カットを開始する時期を遅らせるようにすることが提案されている。
【0007】
しかしながら、かかる提案の方策では、燃料カット条件成立時点から実際に燃料カットに移行するまでの期間が長くなるので、制御上好ましいことではない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、燃料カット等の燃料噴射が行なわれない特定の運転状態に移行する時期を予め推測し、燃料圧力をその特定の運転状態が終了した直後に要求される燃焼状態に見合った燃圧値となるように制御して、燃料カット等の終了直後におけるトルクショックや回転数変動を抑えるとともに、希薄燃焼領域を拡大可能とする燃料圧力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明に係る燃料圧力制御装置の一つは、燃料を高圧燃料ポンプから蓄圧配管部を介してインジェクタに供給するようにされた筒内噴射式エンジンに備えられる燃料圧力制御装置であって、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、燃料噴射が行なわれない燃料カット等の特定運転状態に移行する条件が成立したか否かを判定する条件成立判定手段と、この条件成立判定手段により前記特定運転状態に移行する条件が成立したと判断されたとき、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、前記特定運転状態が終了した直後に要求される前記蓄圧配管部の目標燃圧値を算出する目標燃圧値算出手段と、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点から少なくともその特定運転状態に実際に移行するまでの間の任意の期間、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を強制的に停止させる燃料供給制御手段と、を具備していることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る燃料圧力制御装置の他の一つは、燃料を高圧燃料ポンプから蓄圧配管部を介してインジェクタに供給するようにされた筒内噴射式エンジンに備えられる燃料圧力制御装置であって、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、燃料噴射が行なわれない燃料カット等の特定運転状態への移行を事前に予測する移行予測手段と、この移行予測手段により前記特定運転状態への移行が予測されたとき、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、前記特定運転状態が終了した直後に要求される前記蓄圧配管部の目標燃圧値を算出する目標燃圧値算出手段と、前記特定運転状態に移行することが予測された時点から少なくともその特定運転状態に実際に移行するまでの間の任意の期間、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を強制的に停止させる燃料供給制御手段と、を具備する。
【0011】
前記燃料供給制御手段は、好ましくは、前記高圧燃料ポンプの圧縮吐出行程においてポンプ室から燃料を燃料タンク側に戻すことにより、前記蓄圧配管部への燃料供給を停止するようにされる。
【0012】
より好ましい態様では、前記燃料供給制御手段は、前記高圧燃料ポンプのポンプ室に設けられた吸入弁と、該吸入弁を任意のタイミングで開成させ得るアクチュエーターと、該アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ駆動制御手段と、からなっている。
【0013】
本発明の燃料圧力制御装置の好ましい態様では、前記燃料供給制御手段は、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点又は前記特定運転状態に移行すると予測された時点で、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるようにされる。
【0014】
このような構成のもとでは、例えば、燃料カット条件成立時点で高圧燃料ポンプから蓄圧配管部への燃料供給が停止せしめられるので、その燃料カット条件成立時点以降、実際に燃料カットが開始されるまでは、蓄圧配管部の燃料圧力はインジェクタからの燃料噴射によって消費される分だけ低下せしめられる。このため、従来のように、燃料カット条件成立時点から実際に燃料カットが開始される時点まで蓄圧配管部への燃料供給が続行された場合には、燃料カット開始時点及び燃料カット終了直後の燃料圧力が、燃料カット終了直後に要求される目標燃圧値より相当高くなっているのに対し、本発明装置では、燃料カット開始時点及び燃料カット終了直後の燃料圧力が目標燃圧値に近づけられていることになる。
【0015】
これにより、燃料カットからのリカバー(燃料供給復帰)時において、希薄燃焼が成立する最適な燃料圧力を確保しておくことが可能となり、燃料カットからの復帰後、即希薄燃焼を行うことができ、希薄燃焼領域の拡大となり、燃費向上を図ることができる。また燃料カットからのリカバー(燃料供給復帰)を希薄燃焼で開始することで、定常域での燃焼の切換えを無くすことができ、燃焼違いによるトルクショック及び回転数変動を低減することが可能となる。
【0016】
本発明に係る燃料圧力制御装置の他の好ましい態様を以下に挙げる。
前記燃料供給制御手段は、好ましくは、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記特定運転状態に移行した時点において前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるタイミングを、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点又は前記特定運転状態に移行すると予測された時点からは遅延させるようにされる。
【0017】
この場合、前記燃料供給制御手段は、好ましくは、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるタイミングを、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点又は前記特定運転状態に移行すると予測された時点から実際に前記特定運転状態に移行するまでにおける、インジェクタからの燃料噴射による前記蓄圧配管部の燃料圧力の低下を見込んで決定するようにされる。
【0018】
さらに具体的な好ましい態様では、前記燃料供給制御手段は、インジェクタの1回の燃料噴射による前記蓄圧配管部の燃料圧力低下量と、前記蓄圧配管部の燃料圧力を前記目標燃圧値まで低下させるのに必要とされる噴射回数とを算出し、これらに基づいて、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるタイミングを決定するようにされる。
【0019】
このようにして、燃料供給を停止させるタイミングを遅延させることにより、燃料圧力が過剰に低下してしまうことが防止され、燃料圧力の制御精度が高められる。
【0020】
一方、前記移行予測手段は、好ましくは、パラメータとして少なくともエンジン回転数とその上昇率とを用いて、前記特定運転状態への移行を予測するようにされる。
【0021】
このようにして、燃料カット条件とは別の条件で移行予測手段により燃料カット等の特定運転状態への移行を推測して、燃料供給の停止タイミングを設定することにより、燃料圧力の制御を燃料カット条件成立時点より早期に開始でき、制御自由度が向上する。
【0022】
また、前記燃料供給制御手段は、好ましくは、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となったとき、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給の停止を解除するようにされる。
【0023】
さらに、前記燃料供給制御手段は、好ましくは、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となる前でも、車両の加速状態が検出されたときには、前記燃料供給の停止を解除するようにされる。
【0024】
以上のようにされることにより、燃料圧力が過剰に低下するのが防止され、運転状態に適応した燃圧値で維持される。
【0025】
また、前記目標燃圧値は、好ましくは、成層燃焼乃至リーン燃焼を可能とする燃圧値に設定される。
【0026】
これにより、希薄燃焼の早期実施、つまり、燃料カット終了時点から直ちに成層燃焼やリーン燃焼を開始することが可能となる。
【0027】
さらに好ましい態様では、前記インジェクタからの燃料噴射量(駆動パルス幅=デューティ比)を制御する燃料噴射量制御手段が付設され、前記燃料供給制御手段による高圧燃料ポンプから蓄圧配管部への燃料供給の停止と、前記燃料噴射量制御手段による燃料噴射量の制御とで、前記蓄圧配管部の燃料圧力を前記目標燃圧値とする制御を行なうようにされる。
これにより、制御自由度、制御精度が一層向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、予め次の運転状態を予測して、燃料圧力を所定値近傍で確保しておくことにより、例えば燃料カットからのリカバー時から希薄燃焼を実現することができ、希薄燃焼の運転領域の拡大が図られ、また従来のリカバー後一旦均質燃焼としてから希薄燃焼に切換える動作が不要となるため切換えによる回転数変動とトルクショックを無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る燃料圧力制御装置の一実施形態の基本構成を示す機能ブロック図。
【図2】筒内噴射エンジンとそれに備えられる燃料圧力制御装置を示す全体構成図。
【図3】高圧燃料ポンプの構成・動作の一例を示す図
【図4】高圧燃料ポンプの詳細構成を示す図。
【図5】コントロールユニットの主要部の一例を示す図。
【図6】従来における燃料カット発生時の燃料圧力変化の一例を示すタイムチャート。
【図7】目標燃圧値の設定例を示す図。
【図8】筒内噴射エンジンにおける燃焼安定領域の一例を示す図。
【図9】燃料圧力が成層燃焼に与える影響の説明に供される図。
【図10】本発明の燃料圧力制御の一例を示すタイムチャート。
【図11】燃料圧力確保要求中での燃料圧力制御の例を示すタイムチャート。
【図12】ディレイ付き燃料確保要求中での燃料圧力制御の例を示すタイムチャート。
【図13】図11,図12の制御を実現するプログラムの一例を示すフローチャート。
【図14】噴射パルス幅(噴射量)と燃圧低下量の関係を示すグラフ。
【図15】各燃焼運転状態における燃焼成立の燃料圧力範囲を示すグラフ。
【図16】本発明に係る燃料圧力制御装置の他の実施形態の基本構成を示す機能ブロック図。
【図17】燃料カット条件成立予測での燃料圧力制御の例を示すタイムチャート。
【図18】燃料カット予測による燃圧制御開始判定プログラムの例を示すフローチャート。
【図19】燃料カット予測による燃料圧力制御の終了判定プログラムの例を示すフローチャートの一例
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る燃料圧力制御装置の一実施形態の基本構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
図示実施形態の燃料圧力制御装置100は、燃料を高圧燃料ポンプ307から蓄圧配管部(コモンレール)303を介してインジェクタ304に供給するようにされた筒内噴射式エンジン200に備えられ、その基本構成は、エンジン回転数、運転負荷、アクセル開度、車両速度等の所定のパラメータに基づいて、燃料カットに移行する条件が成立したか否かを判定する条件成立判定手段101と、この条件成立判定手段101により燃料カットに移行する条件が成立したと判断されたとき、エンジン回転数、運転負荷等の所定のパラメータに基づいて、前記燃料カットが終了した直後(リカバー時)に要求される前記蓄圧配管部303の目標燃圧値を算出する目標燃圧値算出手段102と、燃料カットに移行する条件が成立した時点から少なくともその燃料カットに実際に移行するまでの間の任意の期間、前記蓄圧配管部303の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプ307から前記蓄圧配管部303への燃料供給を強制的に停止させる燃料供給制御手段103と、前記インジェクタ304に所要のデューティ比(パルス幅)の駆動信号を供給する燃料噴射量制御手段104と、を具備している。
【0032】
前記燃料供給制御手段103は、前記高圧燃料ポンプ307の圧縮吐出行程においてポンプ室315から燃料を燃料タンク320側に戻すことにより、前記蓄圧配管部303への燃料供給を停止するようにされており、前記高圧燃料ポンプ307のポンプ室315に設けられた吸入弁311と、該吸入弁311を任意のタイミングで開成させ得る電磁式のアクチュエータ309と、該アクチュエータ309の駆動を制御するアクチュエータ駆動制御手段105と、で構成されている。
【0033】
なお、条件成立判定手段101、目標燃圧値算出手段102、燃料供給制御手段103のアクチュエータ駆動制御手段105、及び燃料噴射量制御手段104は、コントロールユニット301に内蔵されるマイクロコンピュータが実行するプログラムの一部を機能ブロックにより具体的に表現したものである。
【0034】
図2は、筒内噴射エンジン200とそれに備えられる燃料圧力制御装置100の具体的な全体構成を示したものである。燃料圧力制御装置100は、エンジン200により駆動される高圧燃料ポンプ307を備えている。シリンダ229に導入される吸入空気は、エアクリーナ220の入口部219から取り入れられ、エンジンの運転状態計測手段の一つである空気流量計(エアフロセンサ)218を通り、吸気流量を制御する電制スロットル弁224が収容されたスロットルボディ221を通ってコレクタ223に入る。前記エアフロセンサ218からは、前記吸気流量を表す信号がエンジン制御装置であるコントロールユニット301に出力されている。
【0035】
また、前記スロットルボディ221には、電制スロットル弁224の開度を検出するエンジンの運転状態計測手段の一つであるスロットルセンサ217が取り付けられており、その信号もコントロールユニット301に出力されるようになっている。前記コレクタ223に吸入された空気は、エンジン200の各シリンダ229に接続された各吸気管225に分配された後、前記シリンダ229の燃焼室228に導かれる。
【0036】
一方、ガソリン等の燃料は、図2に加えて図3を参照すればよくわかるように、燃料タンク320から低圧燃料ポンプ319により一次加圧されて燃料圧力レギュレータ318により一定の圧力(例えば3kg/cm2)に調圧されるとともに、高圧燃料ポンプ307でより高い圧力に二次加圧( 例えば50kg/cm2) されて蓄圧配管部(コモンレール)303へ圧送される。前記高圧燃料は各シリンダ229に設けられているインジェクタ304から燃焼室228に噴射される。該燃焼室228に噴射された燃料は、点火コイル211で高電圧化された点火信号により点火プラグ215で着火される。また、排気弁のカムシャフト202に取り付けられたカム角センサ207は、カムシャフト202の位相を検出するための信号をコントロールユニット301に出力する。ここで、カム角センサは吸気弁側のカムシャフトに取り付けてもよい。また、エンジンのクランクシャフト240の回転と位相を検出するためにクランク角センサ230をクランクシャフト軸上に設け、その出力をコントロールユニット301に入力する。
【0037】
さらに、排気管209中の触媒210の上流に設けられたA/Fセンサ208は、排気ガスを検出し、その検出信号をコントロールユニット301に出力する。
【0038】
該コントロールユニット301の主要部は、図5に示すように、MPU402、ROM401、RAM403及びA/D変換器を含むI/OLSI404等で構成され、エンジンの運転状態を計測(検出)する手段の一つであるエアフローセンサ218、燃料圧力センサ302を含む各種のセンサ等からの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された各種の制御信号を出力し、各インジェクタ304、点火コイル211及び高圧ポンプ307の前記アクチュエータ309(のソレノイド309a)に所定の制御信号を供給して燃料供給量制御、点火時期制御及び燃料圧力制御を実行するものである。
【0039】
図2、図3により、高圧燃料ポンプ307の構成・動作の一例を説明する。ポンプ本体307Aには、燃料吸入通路313、吐出通路306、加圧室315が形成されている。加圧室315には、プランジャ314が摺動可能に保持されている。吸入通路313及び吐出通路306には、吸入弁311、吐出弁316が設けられており、それぞればね312、317にて一方向に保持され、燃料の流通方向を制限する逆止弁となっている。また、ソレノイド309a、吸引子309b、ばね308、及びプランジャ型の係合部材310からなる電磁式のアクチュエータ309がポンプ本体307Aに保持されている。前記係合部材310は、ソレノイド309aの通電がOFF時は、ばね308によって、吸入弁311を開く方向に付勢力がかけられている。ばね308の付勢力は、吸入弁ばね312の付勢力より大きくなっているため、ソレノイド309aの通電がOFF時は、吸入弁311は開成状態となっている。燃料は、タンク320から低圧ポンプ319にてポンプ本体307Aの燃料導入口へと、プレッシャレギュレータ318にて一定の圧力で調圧されて、導かれている。その後、ポンプ本体307Aにて加圧され、燃料吐出通路306を経て蓄圧配管部(コモンレール)303に圧送される。蓄圧配管部303には、インジェクタ304、リリーフ弁305、圧力センサ302が装着されている。インジェクタ304は、エンジンの気筒数にあわせて装着されており、エンジンのコントロールユニット301からの駆動信号にて燃料噴射量の制御が行われている。また、リリーフ弁305は、蓄圧配管部303内の圧力が所定値を超えた際開弁し、配管系の破損を防止する。
【0040】
以上の構成における動作を以下に説明する。
プランジャ314の下端に設けられたリフタ321は、ばね322にてカム202に圧接されている。プランジャ314は、エンジンの吸気弁または排気弁のカムシャフト等により回転されるカム202により、往復運動してポンプ室315内の容積を変化させる。プランジャ314が上昇するポンプ室315の圧縮行程中に吸入弁311が閉弁すると、ポンプ室315内圧力が上昇し、これにより吐出弁316が自動的に開弁し、燃料を蓄圧配管部303に圧送する。
【0041】
吸入弁311は、ポンプ室315の圧力が燃料導入口より低くなると自動的に開弁するが、閉弁に関しては、ソレノイド309aの動作により決定される。ソレノイド309aがON(通電)状態を保持した際は、ばね308の付勢力以上の電磁力を発生させ、係合部材310を吸引子309b側に引き寄せるため、係合部材310と吸入弁311は分離される。この状態であれば、吸入弁311はプランジャ314の往復運動に同期して開閉する自動弁となる。従って、圧縮行程中は、吸入弁311は閉塞し、ポンプ室315の容積減少分の燃料は、吐出弁316を押し開き蓄圧配管部303へ圧送される。よって、ソレノイド309aの応答性に関係せずに、ポンプの最大吐出を行うことができる。
【0042】
これに対し、ソレノイド309aがOFF(無通電)を保持した際は、ばね308の付勢力により、係合部材310は吸入弁311に係合し、吸入弁311を開弁状態に保持する。従って、圧縮行程時においても、ポンプ室315の圧力は燃料導入口部とほぼ同等の低圧状態を保つため、吐出弁316を開弁することができず、ポンプ室315の容積減少分の燃料は、吸入弁311と通り燃料導入口側(燃料タンク320側)へ戻される。よって、ポンプ吐出量を0とすることができる。
【0043】
また、圧縮行程の途中で、ソレノイド309aをON状態とすれば、このときから、蓄圧配管部303へ燃料圧送される。また、一度圧送が始まれば、ポンプ室315内の圧力は上昇するため、その後、ソレノイド309aをOFF状態にしても、吸入弁311は閉塞状態を維持し、吸入行程の始まりと同期して自動開弁する。よって、ソレノイド309aのONタイミングにより、吐出量(蓄圧配管部303への供給量)を調節することができる。
【0044】
以上により、圧縮行程におけるソレノイド309aのON時間又はONタイミングをコントロールすることにより、蓄圧配管部303への吐出量を可変制御することができる。また、圧力センサ302の信号に基づき、コントロールユニット301にて適切な吐出タイミングを演算しソレノイド309aをコントロールすることにより、蓄圧配管部303の燃料圧力を目標燃圧値にフィードバック制御することができる。
【0045】
図6に、従来の燃料圧力制御装置における燃料カット発生時の燃料圧力変化のタイムチャートを示す。
高圧燃料ポンプでは、前述のように吐出量を可変制御してインジェクタへの燃料供給を制御しているため、一旦昇圧されてしまった燃料圧力を低下させるのはインジェクタからの消費でしか行うことができない。通常噴射状態(図中a点まで)ではインジェクタからの消費(燃料噴射)があるため、ポンプから吐出量を制御することにより、蓄圧配管部内の燃料圧力が要求燃料圧力となるように調整される。
【0046】
燃料カット条件が成立している間(図中a−b間)は、インジェクタからの燃料噴射が停止されて消費が無くなるため、燃料カット直前の燃料圧力が保持される。目標の燃料圧力は図7に示すようにエンジン回転数と負荷といったパラメータによってマップ等により設定されているため、燃料カット中によりエンジン回転数が低下してくれば、運転域が変化し、目標の燃料圧力は自ずとその運転域で設定されている燃焼を満足する値へと変化する(図中A→B)。しかし、前述のように燃料圧力を低下させる術はインジェクタからの消費であり、燃料カットからの燃料供給復帰後からしか目標燃料圧力への制御できないため、実際の燃料圧力は破線で示す挙動となる。図中のb点では運転状態から見れば、成層燃焼を開始したくても燃焼が成立する燃料圧力となっていないため、実際に成層燃焼を開始できるのは図中c点以降となってしまう。
【0047】
成層燃焼は、インジェクタから噴射された燃料がシリンダ内で点火プラグ付近に輸送された時に点火を行うことで燃焼を成立させており、そのため点火時期と噴射タイミングの組み合わせで図8に示すような燃焼安定領域が決定される。許容される燃焼安定領域は狭く、例えば噴射タイミングだけを変化させても燃焼安定性は急激に悪化してしまうため、各運転状態においてはこれらを精密に制御する必要がある。ここで、燃料圧力が成層燃焼に与える影響も大きく、その例を図9に示す。アイドル状態やパーシャル等の各運転状態においてサージ限界以下となる燃料圧力範囲は異なっている。これはインジェクタから噴射される燃料の貫通力(ペネトレーション)と微粒化特性が燃料圧力により変化するためであり前述の点火時期と噴射タイミングと併せて、精密に制御を行う必要がある。仮に図6に示したb点において、燃料圧力が燃焼成立範囲外にあるような状態で成層燃焼を開始してしまうと、失火による排気悪化、回転変動,トルクショックといったさまざまな不具合が発生してしまう。この部分が本発明によると、出力トルクの面から成層燃焼を実現可能な運転領域において燃料圧力を常に最適値としておくことで、燃料圧力制御の応答性の制約を無くすことができ、本来燃費,排気性能向上を目的として実施される成層燃焼運転領域の拡大を図ることができる。
【0048】
本発明の実施形態における燃料圧力制御のタイムチャートの一例を図10に示す。
従来は燃料カット中の燃料圧力はその直前の圧力が保持されてしまうため、燃料カット復帰時に成層燃焼を実現したくても、燃焼要求の燃料圧力となっておらず、そのため所定時間S の遅れ後に成層燃焼が開始されることとなる。本発明実施形態においては、燃料カット条件が成立した時点で、燃料圧力確保要求を発生させて、燃料圧力が制御可能な状態のうちに燃料カットからの燃料供給復帰時の燃焼が成立する燃料圧力を確保し、図中の破線で示す燃料圧力の挙動を実現する。言い換えれば、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、前記燃料カットが終了した直後(燃料供給復帰時)に要求される前記蓄圧配管部303の目標燃圧値を算出し、燃料カット条件成立時点から実際に燃料カットに移行するまでの期間、前記蓄圧配管部303の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプ307から前記蓄圧配管部303への燃料供給を強制的に停止させる。これにより、燃料カットからの燃料供給復帰時に成層燃焼が可能となり、従来に比べ成層領域の拡大を図ることが可能となる。ここで実施する燃焼は成層燃焼に限らず、均質リーン燃焼でもよい。
【0049】
図11に燃料圧力確保要求中での制御タイムチャートの一例を示す。
燃料カット条件が成立した場合、トルクショック等の運転性要求により即燃料カットを開始するのではなく、条件成立後、所定時間や所定噴射回数の間は通常の燃料噴射を継続した後、必要であれば所定気筒のみの燃料カットを行い、その後全気筒燃料カットを開始させて出力トルクの急変を回避している。従来はインジェクタからの燃料消費が存在する間は、常に燃料圧力を目標値とするべく高圧燃料ポンプの吐出量制御ソレノイドへの駆動パルスを全気筒燃料カット直前まで出力していたが、本発明実施形態では、燃料カット条件が成立した時点でソレノイド駆動パルスを停止させる。燃料カット条件成立後の上記の通常噴射や所定気筒外の気筒への燃料噴射により燃料の消費は行われるため、図中C点の全気筒燃料カット開始時にはXの圧力低下となる。このように本発明実施形態ではポンプとインジェクタによる燃料の供給と消費の関係をくずすことで燃料圧力を低下させておき、燃料カットからの燃料供給復帰時の燃焼要求の燃料圧力を確保させておく。
【0050】
図12はディレイ(遅延)付き燃料圧力確保要求(蓄圧配管部303への燃料供給停止要求)中の制御タイムチャートの一例を示す。アクチュエータ309のソレノイド309aへの駆動パルス、言い換えれば、高圧燃料ポンプ307から蓄圧配管部303への燃料供給の停止を、燃料カット条件成立(図中A点)からではなく、所定時間遅延させて、図中A’点で停止させる例である。A点からソレノイド309aへの駆動パルスを停止させた場合、図中の破線のように燃料圧力が低下し、均質燃焼のサージ限界燃圧上限を下回ってしまう可能性がある。これでは、燃焼が不安定となってしまい、排気およびトルクショックの原因となってしまう。このため燃料カットが開始されるまでの燃焼の成立は最低限確保しておくことが必要である。ディレイを設けることにより全気筒カットまでに行われる燃料噴射により燃料圧力が低下しすぎて燃焼が成立しなくなるのを防ぐことが可能となる。
【0051】
図13に、図11,図12のタイムチャートで示される制御を実現するプログラムの一例をフローチャートで示す。
【0052】
ステップS11でまず燃料カット条件成立を判定し、燃料カット条件が成立していれば、次に現在インジェクタ304から噴射されている噴射パルス幅(噴射量)を基に1回の燃料噴射による燃圧低下量を算出する(ステップS12)。噴射パルス幅(噴射量)と燃圧低下量の関係はインジェクタの特性とコモンレールの配管容積等から決まるものであり、演算による算出ではなく、図14に示すようにテーブル値として予め設定しておくこともできる。次に目標低下燃圧量を算出しておく(ステップS13)。図14に示すように、各燃焼,運転状態において燃焼が成立する燃料圧力範囲は決まっているため、全気筒燃料カットを開始するまでの間はそれを確保しておく必要がある。そのため現在の燃料圧力から現燃焼を実現でき、且つ燃料カット復帰後の燃焼要求を満足する燃料圧力までを目標低下燃圧量として算出しておく。これら1回のインジェクタからの燃料噴射量による燃圧低下量で目標低下燃圧量を満たすのみ何回の噴射が必要かを示す必要噴射回数(A) をステップS14で算出する。次に燃料カット条件成立から全気筒燃料カット開始までに噴射される回数(B) をエンジン回転数を基に特定気筒燃料カット分等を考慮して算出する(ステップS15)。ステップS16において、上記(A) と(B) を比較し、全気筒カット開始までの噴射回数(B) が多ければ、所定ディレイA経過後から前記ソレノイド309aへの駆動パルスの停止、つまり、高圧燃料ポンプ307から蓄圧配管部303への燃料供給を強制的に停止させる処理を行う(ステップS17)。反対に必要噴射回数(A) が多ければ、即駆動パルスを停止して燃料圧力を低下させる(ステップS18)。ここで、ソレノイド309aの駆動パルスの停止だけでは全気筒カット開始までに目標とする燃料圧力まで低下させきれない場合が考えられるが、回数で賄いきれない分は、併せて燃料噴射量制御の中で1回毎の燃料噴射量を操作(増量)することも可能である。
【0053】
これにより、燃料カット条件成立から燃焼成立性を確保しながら、燃料圧力を低下させていくと同時に、燃料カットからの燃料供給復帰後の成層燃焼等の要求燃料圧力(目標燃圧値)を確保することが可能となる。ここで燃料カットからの燃料供給復帰後の燃焼が成層燃焼でない場合、例えば燃料カット中からドライバのアクセル操作による加速要求が発生した時などはトルクを要求されているため、リーン燃焼ではなく通常の均質燃焼で燃料カットを復帰するときなどは、本発明実施形態によると燃料カット直前の燃焼を成立させる燃料圧力は確保されており、さらに均質燃焼においては燃料圧力の燃焼に与える影響が小さい(感度が鈍い)ため、運転性および排気性能への問題は発生しない。
【0054】
図16は、本発明に係る燃料圧力制御装置の他の実施形態の基本構成を示す機能ブロック図である。
図示実施形態の燃料圧力制御装置150は、燃料を高圧燃料ポンプ307から蓄圧配管部(コモンレール)303を介してインジェクタ304に供給するようにされた筒内噴射式エンジン200に備えられ、その基本構成は、図1の条件成立判定手段101に代えて、移行予測手段107が備えられ、他は略同様な構成となっている。
【0055】
前記移行予測手段107は、エンジン回転数及びその上昇率、運転負荷、アクセル開度、車両速度、変速段等の所定のパラメータに基づいて、燃料カットへの移行を事前に予測するもので、この移行予測手段107により燃料カットへの移行が予測されたとき、目標燃圧値算出手段が、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、燃料カットが終了した直後に要求される前記蓄圧配管部303の目標燃圧値を算出し、燃料供給制御手段103が、燃料カットに移行することが予測された時点から燃料カットに実際に移行するまでの間の期間、前記蓄圧配管部303の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプ307から前記蓄圧配管部303への燃料供給を強制的に停止させる。
【0056】
かかる構成のもとで行なわれる、燃料カット条件成立予測での燃料圧力確保要求(蓄圧配管部303への燃料供給停止要求)のタイムチャート一例を図17に示す。
【0057】
運転条件は走行中にドライバのアクセルからの足離し状態(コースト)でのダウンシフト動作を例に挙げる。足離しによりアイドルSWはOFFからONとなる。その後、エンジンブレーキ等の目的にて変速段を3速から2速へとダウンシフトを行うと低速段となるため、エンジン回転数はA点以降上昇し始める。こう状態が連続して燃料カット条件で定める所定エンジン回転数以上となったとき、図中C点に示すように燃料カットが許可(開始)される。本実施形態ではこの燃料カット以前に運転状態等から燃料カットへの移行を予測し、燃料圧力制御(蓄圧配管部303への燃料供給停止)を行うことを可能としている。ダウンシフトが行われてから、燃料カット許可エンジン回転数を超えるまでの間(図中A―C間)において、エンジン回転数及びその上昇率(上昇速度),他の運転パラメータにより燃料カットを予測しておき、前記ソレノイド309aへの駆動パルスを停止、つまり、高圧燃料ポンプ307から蓄圧配管部303への燃料供給を停止させる(図中B点)。これにより燃料の供給は途絶え、インジェクタ304からの消費のみとなるため、消費量に見合って、燃料圧力は低下することになる。この動作で燃料カット開始時には、定常状態の燃料圧力Xに対してYの値まで低下させておき、燃料カット復帰時の燃焼要求の燃料圧力を確保、または要求近傍にしておくことが本発明の意図するところである。もちろん、低下させる燃料圧力の値は、燃料カット以前の燃焼が成立する範囲内で行う。
【0058】
図18に燃料カット予測による燃圧制御開始判定プログラムの一例をフローチャート例で示す。まず、ステップS21で、エンジン回転数,アクセル開度、エンジン水温,エンジン負荷等から燃料カット条件において、エンジン回転数以外の条件が成立していることを判定する。即ちエンジン回転数が上昇を続ければ必ず燃料カットが行われる状態であることを判定するのである。次に現在の燃焼を確保できる燃料圧力の最低許容値を判定するため、ここではエンジン回転数をしきい値として所定回転数以上であるかどうかを判断する(ステップS22)。次にエンジン回転数の上昇速度(Δ回転)が所定値以上であることを判定して、これから燃料カットが発生することを判定しておく(ステップ23)。これら条件を満たすとき、燃料圧力制御で燃料圧力を低下,確保を開始する(ステップ24)。
【0059】
図19は、燃料カット予測による燃料圧力制御の終了判定プログラムの一例をフローチャートで示す。基本は加速判定等により燃料カット条件が解除される状態を判定し、燃料圧力制御を終了する、つまり、高圧燃料ポンプ307から蓄圧配管部309への燃料供給の停止を解除する(ステップS31、S34)。また、本発明の燃料圧力制御で実際の燃料圧力が意図せず所定圧力以下まで下がってしまった場合も同様に燃焼の確保ができなくなるため、制御終了(燃料供給停止解除)とする(ステップS32、S34)。また、燃料カットを予測して燃料圧力制御を開始したが、エンジン回転数の上昇速度が所値以下となってしまった等で燃料カットがその後実施されないことを判定した場合も、燃料圧力制御を終了させる(ステップS33、S34)。
【0060】
以上、本発明の制御装置のいくつかの実施形態について詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0061】
100・・・燃料圧力制御装置
101・・・条件成立判定手段
102・・・目標燃圧値判定手段
103・・・燃料供給制御手段
104・・・燃料噴射量制御手段
105・・・アクチュエータ駆動制御手段
107・・・移行予測手段
200・・・筒内噴射エンジン
207・・・カム角センサ
208・・・A/Fセンサ
209・・・排気管
210・・・触媒
211・・・点火コイル
215・・・点火プラグ
217・・・スロットルセンサ
218・・・空気流量計(エアフローセンサ)
220・・・エアークリーナ
221・・・スロットルボディ
223・・・コレクタ
224・・・電制スロットル弁
225・・・吸気管
228・・・燃焼室
229・・・シリンダ
230・・・クランク角センサ
301・・・コントロールユニット
302・・・燃料圧力センサ
303・・・蓄圧配管部(コモンレール)
304・・・インジェクタ
305・・・リリーフ弁
306・・・燃料吐出通路
307・・・高圧燃料ポンプ
308,312,317・・・ばね
309・・・電磁式アクチュエータ
309a・・・ソレノイド
310・・・係合部材
311・・・吸入弁
313・・・燃料吸入通路
314・・・プランジャ
315・・・ポンプ室(加圧室)
316・・・吐出弁
318・・・燃料圧力レギュレータ
319・・・低圧燃料ポンプ
320・・・燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を高圧燃料ポンプから蓄圧配管部を介してインジェクタに供給するようにされた筒内噴射式エンジンに備えられる燃料圧力制御装置であって、
エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、燃料噴射が行なわれない燃料カット等の特定運転状態に移行する条件が成立したか否かを判定する条件成立判定手段と、この条件成立判定手段により前記特定運転状態に移行する条件が成立したと判断されたとき、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、前記特定運転状態が終了した直後に要求される前記蓄圧配管部の目標燃圧値を算出する目標燃圧値算出手段と、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点から少なくともその特定運転状態に実際に移行するまでの間の任意の期間、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を強制的に停止させる燃料供給制御手段と、を具備していることを特徴とする燃料圧力制御装置。
【請求項2】
燃料を高圧燃料ポンプから蓄圧配管部を介してインジェクタに供給するようにされた筒内噴射式エンジンに備えられる燃料圧力制御装置であって、
エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、燃料噴射が行なわれない燃料カット等の特定運転状態への移行を事前に予測する移行予測手段と、この移行予測手段により前記特定運転状態への移行が予測されたとき、エンジン回転数等の所定のパラメータに基づいて、前記特定運転状態が終了した直後に要求される前記蓄圧配管部の目標燃圧値を算出する目標燃圧値算出手段と、前記特定運転状態に移行することが予測された時点から少なくともその特定運転状態に実際に移行するまでの間の任意の期間、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を強制的に停止させる燃料供給制御手段と、を具備していることを特徴とする燃料圧力制御装置。
【請求項3】
前記燃料供給制御手段は、前記高圧燃料ポンプの圧縮吐出行程においてポンプ室から燃料を燃料タンク側に戻すことにより、前記蓄圧配管部への燃料供給を停止するようにされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項4】
前記燃料供給制御手段は、前記高圧燃料ポンプのポンプ室に設けられた吸入弁と、該吸入弁を任意のタイミングで開成させ得るアクチュエーターと、該アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ駆動制御手段と、からなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項5】
前記燃料供給制御手段は、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点又は前記特定運転状態に移行すると予測された時点で、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるようにされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項6】
前記燃料供給制御手段は、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記特定運転状態に移行した時点において前記目標燃圧値となるように、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるタイミングを、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点又は前記特定運転状態に移行すると予測された時点からは遅延させるようにされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項7】
前記燃料供給制御手段は、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるタイミングを、前記特定運転状態に移行する条件が成立した時点又は前記特定運転状態に移行すると予測された時点から実際に前記特定運転状態に移行するまでにおける、インジェクタからの燃料噴射による前記蓄圧配管部の燃料圧力の低下を見込んで決定するようにされていることを特徴とする請求項6に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項8】
前記燃料供給制御手段は、インジェクタの1回の燃料噴射による前記蓄圧配管部の燃料圧力低下量と、前記蓄圧配管部の燃料圧力を前記目標燃圧値まで低下させるのに必要とされる噴射回数とを算出し、これらに基づいて、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給を停止させるタイミングを決定するようにされていることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項9】
前記移行予測手段は、パラメータとして少なくともエンジン回転数とその上昇率とを用いて、前記特定運転状態への移行を予測するようにされていることを特徴とする請求項2に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項10】
前記燃料供給制御手段は、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となったとき、前記高圧燃料ポンプから前記蓄圧配管部への燃料供給の停止を解除するようにされていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項11】
前記燃料供給制御手段は、前記蓄圧配管部の燃料圧力が前記目標燃圧値となる前でも、車両の加速状態が検出されたときには、前記燃料供給の停止を解除することを特徴とする請求項10に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項12】
前記目標燃圧値は、成層燃焼乃至リーン燃焼を可能とする燃圧値に設定されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。
【請求項13】
前記インジェクタからの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段が付設され、前記燃料供給制御手段による高圧燃料ポンプから蓄圧配管部への燃料供給の停止と、前記燃料噴射量制御手段による燃料噴射量の制御とで、前記蓄圧配管部の燃料圧力を前記目標燃圧値とする制御を行なうようにされていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の燃料圧力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−14121(P2010−14121A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200572(P2009−200572)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【分割の表示】特願2007−179947(P2007−179947)の分割
【原出願日】平成13年7月26日(2001.7.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】