説明

燃料電池車

【課題】大幅な重量増加を招くことなく燃料電池を保護することが可能な燃料電池車を提供する。
【解決手段】車室Q2内に配置される左右のシート3間のフロアパネル1が車室Q2内側に突出したセンタトンネル2内に燃料電池10を配置した燃料電池車Vにおいて、側面視において左右のシート3と重なる燃料電池10の左右の両側面および上面にかけて補強するプロテクタ30が設けられている。燃料電池10の後方には、燃料電池10に対して反応ガスを給排する燃料電池補機ユニット20が設けられ、プロテクタ30が燃料電池10と燃料電池補機ユニット20とに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池がセンタトンネル内に配置された燃料電池車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車では、左右のシート間に床面が車室内に突出するセンタトンネル内の床下に燃料電池を配置したものが種々提案されている。この種の燃料電池車では、側面衝突によってセンタトンネルがシートによる荷重を受けたとしても、燃料電池を保護することが要求されている。そこで、センタトンネルの壁面に荷重伝達部材を設けて、左右のいずれか一方に発生したシート荷重がセンタトンネルに作用したときに、そのシート荷重を他方のシートに分散させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−15588号公報(段落0025、図6および図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池は、衝突の影響が少ない車体中央に配置され、衝撃に対して守られてはいるが、側面衝突などの燃料電池に対する保護要求が高まっており、例えば、シートバックからの過大なシート荷重に対して十分な耐久性を確保しようとすると、車体側の対応では大幅な重量増加を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、大幅な重量増加を招くことなく燃料電池を保護することが可能な燃料電池車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車室内に配置される左右のシート間の床部が車室内側に突出し、前記突出した床部の床下に燃料電池を配置した燃料電池車において、側面視において前記左右のシートと重なる前記燃料電池の左右の両側面および上面にかけて補強する補強部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、燃料電池の左右の両側面と上面を覆う形状(略コ字形状)の補強部材を燃料電池に取り付けることにより、側面衝突によって過大なシート荷重を受けて、突出した床部(いわゆるセンタトンネル)が変形したとしても、補強部材によって燃料電池を保護することが可能になる。しかも、車体側(床部側)を補強する必要がないので、大幅な重量増加を招くことはない。このように、シート荷重を受ける領域に補強部材を設けることで、大幅な重量増加を招くことなく、燃料電池を保護することが可能になる。
【0008】
また、前記燃料電池の後方に、前記燃料電池に対して反応ガスを給排する燃料電池補機ユニットを備え、前記補強部材は、前記燃料電池と前記燃料電池補機ユニットに取り付けられることを特徴とする。
【0009】
これによれば、補強部材を燃料電池と燃料電池補機ユニットに取り付けて閉断面とすることで剛性を高めることが可能になる。しかも、補強部材を燃料電池補機ユニットに取り付けることで、燃料電池補機ユニット側にシート荷重を分散させることができ、燃料電池をより確実に保護することが可能になる。
【0010】
また、前記補強部材は、外パネル、内パネルおよびリブによって囲まれる中空部を有することを特徴とする。
【0011】
これによれば、過大なシート荷重が床部を介して補強部材に作用したとしても、中空部からなる断面が潰れることで、シート荷重(衝撃)を吸収して(緩和させて)、燃料電池を保護することが可能になる。
【0012】
また、前記補強部材は、前記燃料電池補機ユニットにボルトを介して固定され、前記外パネルには、前記ボルトを挿通可能な開口が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、プロテクタの取付時に、ボルトを中空部内に収容することが可能になるので、車室内に突出する床部(センタトンネル)のスペースの拡大を抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大幅な重量増加を招くことなく燃料電池を保護することが可能な燃料電池車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の燃料電池車の床下の構造を示す側面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】燃料電池を示す外観斜視図である。
【図4】燃料電池車に搭載される燃料電池システムの一例を示すシステム図である。
【図5】プロテクタを燃料電池に装着した状態を示す斜視図である。
【図6】燃料電池に装着する前のプロテクタの分解斜視図である。
【図7】図5のB−B線における断面図である。
【図8】燃料電池側のプロテクタの保持構造を示す切欠斜視図である。
【図9】側面衝突時のプロテクタの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の燃料電池車(以下、車両と略記する)Vは、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20(図1参照)にプロテクタ30を取り付けたものが車両Vの床下Q1に配置されている。すなわち、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20は、左右のシート3の間(運転席と助手席との間、図2参照)のフロアパネル(床部)1が車室Q2内に突出して形成されたセンタトンネル2内に配置されている。
【0017】
センタトンネル2は、フロアパネル1とともに、鋼板をプレス成型することによって構成され、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20を覆う突部2aと、突部2aの後方に上方に張り出した略四角箱型(側断面視で略山型)の突部2bとを有し、左右方向の中央部において前後方向に延びて形成されている。また、センタトンネル2は、燃料電池10の前方および後方が、燃料電池10の高さよりも低くなるように形成されている。よって、突部2bが、センタトンネル2内で最も高い位置となっている。
【0018】
このようなセンタトンネル2内には、前方に燃料電池10が配置され、その後方に燃料電池補機ユニット20が配置され、燃料電池10の後側の部分と燃料電池補機ユニット20の前側の部分にプロテクタ30が取り付けられている。プロテクタ30の前後方向の長さは、左右からの側面視において、例えば、シート3のシートバック3aと重なる位置になるように設定されている(図1参照)。つまり、側面衝突によって、シートバック3aに内蔵されている金属製のフレームによる荷重(シート荷重)が燃料電池10に作用する可能性のある領域を含むように設定されている。なお、プロテクタ30の前後方向の長さは、シート3の前後方向のスライド位置も考慮して設定される。
【0019】
また、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20は、サブフレーム4上にボルト(不図示)を介して固定され、サブフレーム4がフロアパネル1に固定されている。詳述すると、サブフレーム4は、例えば、車両の前後方向に延びるフレーム4a,4a(図2参照)と、左右方向(車幅方向)に延びるフレーム4b,4c,4dとが井桁状に組まれて構成され、サブフレーム4が、フロアパネル1のフレーム1a,1aにボルト(図示せず)を介して着脱可能に固定されている。
【0020】
なお、センタトンネル2の突部2b内の最も高い位置に水素センサ5が、ブラケットなどを介して取り付けられている。この水素センサ5は、燃料電池10およびその周辺の配管の接続部分からの水素漏れを検知するものであり、例えば、接触燃焼式や半導体式のセンサなどで構成されている。また、図示していないが、突部2b内には、水素センタ5とプロテクタ30との間に、燃料電池10のセル電圧を検出する検出装置などが設けられている。
【0021】
図3に示すように、燃料電池10は、複数の単セル11(図5参照)が厚み方向に積層されて、単セル11の積層方向(前後方向)の両端がアルミなどの金属性の一対のエンドプレート11a,11bで挟持されて構成されている。また、積層された単セル11の上面、下面、左側面および右側面には、サイドプレート11c,11d,11e,11fが設けられ、サイドプレート11c,11d,11e,11fがヒンジ部11s,11s,・・・を介してエンドプレート11a,11bと連結されることで、各単セル11がエンドプレート11a,11bによって押圧された状態で保持されている。
【0022】
各単セル11は、固体高分子からなる電解質膜がアノードとカソードとで挟持され、さらにその外側が、燃料ガス(水素、反応ガス)が流れるアノード流路10a(図4参照)及び酸化ガス(空気、反応ガス)が流れるカソード流路10b(図4参照)が設けられている一対のセパレータで挟まれて構成されている。
【0023】
また、燃料電池10は、一方(後方)のエンドプレート11aに、水素を導入する水素導入部11a1、空気を導入する空気導入部11a2、水素オフガスを導出する水素オフガス導出部11a3、空気オフガスを導出する空気オフガス導出部11a4を備えている。これら水素導入部11a1、空気導入部11a2、水素オフガス導出部11a3および空気オフガス導出部11a4が、燃料電池補機ユニット20と接続されている。なお、図示していないが、前記セパレータには、燃料電池10を冷却する冷媒が通流する冷媒流路が形成され、冷媒流路とラジエータとの間で冷媒が循環するように構成されている。
【0024】
例えば、図4に示す燃料電池システムF1では、燃料電池10の水素導入部11a1が、高圧水素タンク12と、配管a1、遮断弁13、配管a2、エゼクタ14および配管a3を介して接続されている。水素導出部11a3は、配管a4を介してエゼクタ14の吸気ポートと接続されている。また、配管a4は、配管a5を介してパージ弁15と接続されている。また、遮断弁13およびパージ弁15は、電磁作動式のものであり、ECU(Electronic Control Unit)19によって適宜開閉制御される。なお、パージ弁15は、例えば、定期的に開弁され、アノード循環系(配管a3,a4、アノード流路10a)に残留する不純物(窒素、生成水)を外部に排出するようになっている。
【0025】
また、燃料電池10の空気導入部11a2は、エアコンプレッサ16と、配管c1、加湿器17、配管c2を介して接続されている。空気導出部11a4は、配管c3、加湿器17、配管c4を介して背圧弁18と接続されている。エアコンプレッサ16は、例えばモータで駆動される機械式の過給器であり、ECU19によってモータの回転速度が制御される。加湿器17は、例えば、水透過性を有する複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束を備え、各中空糸膜の内側と外側の一方にエアコンプレッサ16からの低湿潤な(乾燥した)空気が、他方に燃料電池10のカソードから排出された空気オフガスに含まれる水蒸気(高湿潤な空気)によって加湿されるようになっている。背圧弁18は、ECU19によって、カソードに供給される空気の圧力(カソード圧)を制御する。例えば、アクセルペダルの踏み込み量(スロットル開度)に応じてカソード圧が制御される。
【0026】
なお、ECU19は、水素センサ5と接続され、例えば、水素センサ5から得られる検出値が所定の水素濃度を超えたと判断したときに、運転者に警告を発したり、燃料電池10の発電を停止して、燃料電池車Vを停止するように制御する。
【0027】
図5に示すように、燃料電池補機ユニット20においては、例えば、アルミニウム合金などの鋳物で形成された加湿器17(図4参照)のハウジング21が燃料電池補機ユニット20の外観をなしている。このハウジング21は、加湿器17の中空糸膜束の主要部分が収納される下部ハウジング21a、加湿器17で加湿された空気を空気導入部11a2に導入する上部ハウジング21bなどを有している。
【0028】
下部ハウジング21aは、複数のブラケット21c,21,21c(一部不図示)を介してサブフレーム4にボルト(不図示)を用いて固定されている。上部ハウジング21bの上端部には、後記するプロテクタ30をボルトB2で固定するためのボス21b1,21b1が左右に間隔を空けて上方に突出して形成されている。
【0029】
なお、ハウジング21は、加湿器17のハウジングに限定されるものではなく、例えば、加湿器17と背圧弁18の各ハウジングが組み合わされたものであってもよく、あるいは加湿器17、背圧弁18、エゼクタ14の各ハウジングが組み合わされたものであってもよく、あるいは加湿器17、背圧弁18、エゼクタ14、パージ弁15の各ハウジングが組み合わされたものであってもよい。
【0030】
プロテクタ30は、正面視(図2参照)または断面視において略コ字状に形成され、燃料電池10の後部の左側面、右側面および上面を覆うように形成されている。さらに、プロテクタ30は、燃料電池10よりも後方に延びて形成され、燃料電池補機ユニット20の前部を覆うように形成されている。このように、プロテクタ30の断面を略コ字状としたことにより、燃料電池10の上部から容易に組み付けることが可能になっている。
【0031】
また、燃料電池10から燃料電池補機ユニット20まで延びたプロテクタ30は、左右の両側からボルトB1,B1を介して下部ハウジング20aに後記する固定部材33を介して固定され、上部からボルトB2,B2を介して上部ハウジング20bに固定される。このように、プロテクタ30は、鋳物などのハウジング21からなる高剛性の部分にボルトB1,B2を介して固定されるようになっている。
【0032】
図6および図7に示すように、プロテクタ30は、左プレート31と、右プレート32と、固定部材33とで構成されている。
【0033】
左プレート31は、断面L字型に形成された外パネル31aおよび内パネル31bと、リブ31c1〜31c7とで構成され、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20の左側の上面および左側面に沿って配置されている。
【0034】
外パネル31aと内パネル31bとは所定の間隔を空けて配置され、リブ31c1〜31c7を介して外パネル31aと内パネル31bとが接合されている。また、内パネル31bは、その上側の内端部が外パネル31aよりも短く形成されている。また、内パネル31bは、そのL字型の角部が、上面部31b1と側面部31b2に対して傾斜して形成されている。
【0035】
リブ31c1は、外側に向けて上昇するように傾斜して形成されている。リブ31c2は、リブ31c1よりも上側に位置し、リブ31c1と同様な向きで傾斜して形成されている。リブ31c3は、リブ31c2よりも上側に位置し、リブ31c2とは逆に内側に向けて上昇するように傾斜して形成されている。リブ31c4は、角部の近傍に位置し、水平方向に延びて形成されている。リブ31c5は、角部の近傍に位置し、鉛直方向に延びて形成されている。リブ31c6は、リブ31c5よりも内方(右側)に位置し、外側が内側よりも内方(右側)に位置するように傾斜して形成されている。リブ31c7は、リブ31c6よりも内方(右側)に位置し、鉛直方向に延びて形成されている。
【0036】
このように、外パネル31aと内パネル31bとリブ31c1〜31c7とによって、外パネル31aと内パネル31bとの間に、中空部S1〜S6が形成されている(図7参照)。また、各中空部S1〜S6は、外パネル31aと内パネル31bとの間において、前後方向の前端部から後端部にかけて連続して(連通して)形成されている。
【0037】
また、外パネル31aの側面後端の下端部には、ボルトB1が挿通される大径の開口31dが形成されている(図6参照)。この開口31dは、ボルトB1の頭部を含めて全体を挿通でき、かつ、ボルトB1をハウジング21側に締め付けできる大きさ(直径)で形成されている。また、内パネル31bには、開口31dと対向する位置に、ボルトB1のねじ部を挿通可能な挿通孔31eが形成されている。なお、開口31dおよび挿通孔31eは、固定部材33のねじ孔33b1と対応する位置に形成されている。
【0038】
また、外パネル31aの上面には、ボルトB2が挿通される開口31fが形成されている(図6参照)。この開口31fは、ボルトB2の頭部を含めて全体を挿通でき、かつ、ボルトB2をボス21b1に締め付けできる大きさ(直径)で形成されている。また、内パネル31bには、開口31fと対向する位置に、ボルトB2のねじ部が挿通される挿通孔31gが形成されている(図6参照)。なお、開口31fおよび挿通孔31gは、上部ハウジング21bのボス21b1と対応する位置に形成されている。
【0039】
また、内パネル31bの側面には、前後方向に細長く形成された長孔(いわゆる、だるま穴)31i,31jが、前後方向に間隔を空けて形成されている。この長孔31i,31jは、燃料電池10のエンドプレート11aに固定されたスタッド41と、サイドプレート11eに固定されたスタッド42と対応する位置に設けられている。なお、スタッド41,42は、ヘッド部41a,42aと軸部41b,42b(図8参照)とで構成され、側面視においてT字状に形成され、軸部41b,42bがエンドプレート11aおよびサイドプレート11eの各側面に固定されている。
【0040】
また、長孔31i,31jは、図8に示すように、スタッド41,42のヘッド部41a,42aが挿通可能な径を有する円形部31i1,31j1と、軸部41b,42bに対して摺動可能なスライド部31i2,31j2とを有して構成されている。プロテクタ30を燃料電池10に取り付ける際には、図8(a)に示すように、スタッド41,42のヘッド部41a,42aを円形部31i1,31j1に挿通して、外パネル31aと内パネル31bとの間の中空部S3内に挿入した後、図8(b)に示すように、左プレート31を、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20に対して前方へ移動させて、スタッド41,42の軸部41b,42bをスライド部31i2,31j2内においてスライドさせることにより、左プレート31が燃料電池10と係止される。
【0041】
また、右プレート32についても左プレート31とほぼ対称に形成され、断面L字型の外パネル32aおよび内パネル32bと、リブ32c1〜32c7とで構成されている。外パネル32aは、外パネル31aと重なる部分が、外パネル32aの厚み寸法分低く(凹んで)形成されて、外パネル31aと外パネル32aの各外面が同一平面上に設定されるように構成されている。また、右プレート32には、左プレート31と同様にして、開口32d、挿通孔32e、開口32f、挿通孔32g、長孔32i,32jがそれぞれ形成されている。
【0042】
このように、プロテクタ30をスライドさせて燃料電池10に係止できるようにしたことで、燃料電池10を構成する単セル11を積層したときの積層方向(前後方向)のバラツキを吸収することができ、プロテクタ30を燃料電池10に確実に保持できるようになる。
【0043】
固定部材33は、例えば、金属板を折り曲げて形成され、水平方向に延びる矩形状の基部33aと、基部33aの左右両端において鉛直下方に延びる取付部33b,33bと、基部33aの前後方向の両端において鉛直下方に延びる折曲部33c(一方のみ図示)とを有している。各取付部33bには、ボルトB1が螺合されるねじ孔33b1が形成されている。また、折曲部33cは、その先端面(下端面)がハウジング21の表面形状に沿って形成されている。また、固定部材33の左右方向は、取付部33b,33bの面が、プロテクタ30の内パネル31b,32bの内壁面に当接する長さで形成されている。
【0044】
なお、本実施形態では、固定部材33を設けた場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、前記ボス21b1のように、下部ハウジング21a(ハウジング21)に直接にボスを設けて(ボスとハウジングとを鋳物などで一体に形成して)、ボルトB1を介してプロテクタ30を取り付けるようにしてもよい。
【0045】
このようにして形成された固定部材33を燃料電池補機ユニット20のハウジング21に固定した後、左プレート31の長孔31i,31jと右プレート32の長孔32i,32jとにそれぞれスタッド41,42を挿入して、左プレート31と右プレート32を後方にスライドさせることで、長孔31i,31j,32i,32jがスタッド41,42に係止される。
【0046】
また、左プレート31の上面の内端部と右プレート32の上面の内端部とを重ね合わせた状態において、ボルトB1を開口31d,32dから、挿通孔31e,32eに挿入して、ねじ孔33b1,33b1に螺合することにより、左プレート31および右プレート32の側面が固定部材33を介してハウジング21に固定される。
【0047】
また、ボルトB2を開口31f,32fから、挿通孔31g,32gに挿入して、ボス21b1,21b1に螺合することにより、左プレート31および右プレート32の上面がハウジング21に固定される。このようにして、プロテクタ30が燃料電池10の上面と左右の側面を覆うように取り付けられることで(図5参照)、燃料電池10が補強される。
【0048】
このようにして、サブフレーム4に取り付けられた燃料電池10および燃料電池補機ユニット20にプロテクタ30が取り付けられた後、サブフレーム4をフロアパネル1に取り付ける。これにより、プロテクタ30によって補強された燃料電池10がセンタトンネル2内の所定の位置に配置される。
【0049】
ところで、本実施形態に用いられる燃料電池10は、図3で説明したように、単セル11の積層方向の両端をエンドプレート11a,11bで挟み、サイドプレート11c〜11fによって保持する構成となっているので、燃料電池10の側方からのシート荷重に対して十分な耐久性を確保することが難しい。そこで、本実施形態では、前記したプロテクタ30を設けることにより、以下に示す効果を得ることができる。
【0050】
すなわち、本実施形態の燃料電池車Vでは、プロテクタ30を略コ字状に形成して、燃料電池10の左右の両側面と上面を覆うことで、側面衝突によってシートバック3a(シートバックの内部のフレーム)が移動してセンタトンネル2の側面に衝突したとしても、その内側に位置するプロテクタ30でシート荷重を受け止めることが可能になるので、燃料電池10を保護することが可能になる。しかも、耐久性の確保を従来のように車体側で対応するのではなく、シートバック3aからの荷重を受ける、限られた領域にプロテクタ30を設けるだけでよいので、省スペースで対応することができ、大幅な重量増加を招くことがない。
【0051】
また、本実施形態では、プロテクタ30を燃料電池10と燃料電池補機ユニット20の双方に保持または固定することで、略コ字状のプロテクタ30と燃料電池10のエンドプレート11aおよび燃料電池補機ユニット20のハウジング21とで閉断面が形成されるので、剛性を高めることができ、燃料電池10を効果的に保護することが可能になる。また、プロテクタ30を、燃料電池10から燃料電池補機ユニット20にかけて設けることで、つまり、燃料電池10と燃料電池補機ユニット20との境界の水素が通流する配管の接続部分をプロテクタ30で補強することができ、燃料電池補機ユニット20から燃料電池10に供給される水素(燃料)の接合部分(配管など)が他の補機に干渉したりして、水素漏れが生じるのを防止できる。
【0052】
また、本実施形態では、プロテクタ30を燃料電池10だけではなく、燃料電池補機ユニット20に固定することで、側面衝突によるシート荷重を燃料電池補機ユニット20側に分散させることが可能になるので、燃料電池10をさらに効果的に保護することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、外パネル31a,32aと内パネル31b,32bとリブ31c1〜31c7,32c1〜32c7によって中空部S1〜S6を備えたプロテクタ30を構成したので、図9に示すように、燃料電池車V(図1参照)に対する側面衝突によってセンタトンネル2の側面が過大なシート荷重Fを受けて、センタトンネル2が大きく変形したとしても、プロテクタ30のリブ31c2,31c3を含めて中空部S2,S3の断面が潰れることで、過大なシート荷重Fを吸収することができる。これにより、燃料電池10までシート荷重Fが及ぶのを防止することができ、燃料電池10を確実に保護することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態では、外パネル31a,32aに開口31d,32d,31f,32fを形成して、ボルト締結時に、中空部S1,S1,S6,S6にボルトB1,B1,B2,B2を収容することで、ボルトB1,B2がプロテクタ30から突出するのを防止でき、センタトンネル2内のスペースが拡大するのを抑えることが可能になる。その結果、車室内のスペースが狭まるのを防止できる。
【0055】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。例えば、本実施形態では、プロテクタ30を左プレート31と右プレート32とで分割して構成したが、これに限定されず、一体で形成されたプロテクタ30であってもよい。また、ボルトB1,B2で固定する位置や個数も、特に限定されるものではない。
【0056】
また、プロテクタ30を固定する場所は、ハウジング21に限定されるものではなく、加湿器17などの補機または補機全体を別体の金属製(高剛性)のケースで覆ってサブフレーム4に固定して、前記ケースにプロテクタ30を固定するものであってもよい。
【0057】
また、本実施形態では、プロテクタ30の形状について、シートバック3aからのシート荷重が作用する領域に対応した構成を例に挙げて説明したが、シート3の座面側の部分も考慮して、プロテクタ30の大きさ(側面視したときの前後方向の長さなど)を考慮してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 フロアパネル(床部)
2 センタトンネル
3 シート
3a シートバック
10 燃料電池
11a エンドプレート
20 燃料電池補機ユニット
21 ハウジング
30 プロテクタ(補強部材)
31 左プレート
32 右プレート
31a,32a 外パネル
31b,32b 内パネル
31c1〜31c7、32c1〜32c7 リブ
31d,31f,32d,32f 開口
31e,31g,32e,32g 挿通孔
33 固定部材
B1,B2 ボルト
Q1 床下
Q2 車室
S1〜S6 中空部
V 燃料電池車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配置される左右のシート間の床部が車室内側に突出し、前記突出した床部の床下に燃料電池を配置した燃料電池車において、
側面視において前記左右のシートと重なる前記燃料電池の左右の両側面および上面にかけて補強する補強部材を設けたことを特徴とする燃料電池車。
【請求項2】
前記燃料電池の後方に、前記燃料電池に対して反応ガスを給排する燃料電池補機ユニットを備え、
前記補強部材は、前記燃料電池と前記燃料電池補機ユニットに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項3】
前記補強部材は、外パネル、内パネルおよびリブによって囲まれる中空部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池車。
【請求項4】
前記補強部材は、前記燃料電池補機ユニットにボルトを介して固定され、
前記外パネルには、前記ボルトを挿通可能な開口が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−79346(P2011−79346A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230704(P2009−230704)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】