説明

物体像表示装置

【課題】 物体の形状や寸法等の検査に係る作業効率を向上させる。
【解決手段】 XYZステージ20上に検査対象である物体が設置されると、この物体の光学像がLED光源装置22の中空部24および有効レンズ26を介して、ヘッド部14内に設けられたCCD型のカメラの受光部に入射される。カメラは、受光部に入射された光学像を電気信号に変換し、変換された電気信号は、パーソナルコンピュータ18を経由して、ディスプレイ32に入力される。これによって、当該ディスプレイ32の表示画面に、物体の拡大映像、言わば物体像が、表示される。さらに、この物体像に重畳されるように、当該物体の図面が、パーソナルコンピュータ18によって表示される。従って、これら物体像と図面とを比較しての検査が可能となり、作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体像表示装置に関し、特に例えば物体の形状や寸法等を検査するのに使用され、当該物体の像を拡大して表示する物体像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の物体像表示装置として、従来、例えば非特許文献1に開示された投影機がある。この従来技術によれば、表示対象となる物体が、ステージ上に設置される。そして、このステージ上に設置された物体に対し、その下方から光が照射される。この光の一部は、物体の外周縁(輪郭)を通過して、ステージの上方にあるレンズを通り、さらに適宜の光学系を介して当該レンズの上方にあるスクリーンに投射される。これによって、当該スクリーンに、物体の輪郭を拡大して表す投影像が、映し出される。そして、この投影像を基に、物体の形状や寸法等が検査される。また、このとき、物体の図面、例えば製作用図面が描かれたチャートシート(半透明紙)が、粘着テープ等によりスクリーンに貼り付けられ、この製作用図面と投影像との比較によって、当該物体の検査が行われることがある。このように物体の図面と投影像とを同じスクリーン上で比較することにより、当該物体の検査が容易になる。
【非特許文献1】神港精機株式会社製精密投影機“VS−305”カタログ、カタログ番号:03E.3000SS(平成17年 1月 6日現在発行済)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の如くスクリーンにチャートシートが貼り付けられると、当該チャートシートによる光の散乱や減衰作用によって、スクリーンが暗くなり、見難くなってしまう。また、上述した粘着テープ等の粘着力の低下、或いは外力の影響等によって、チャートシートがスクリーンから剥がれ落ちることもある。さらに、上述のレンズは、倍率の異なるものに交換可能とされているが、当該レンズが交換されたときは、交換されたレンズの倍率に合わせてチャートシートをも貼り換える必要があり、非常に面倒である。このように、従来技術では、チャートシートが利用されることで却って不都合が生じる場合があり、これによって作業効率が低下する、という問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、従来よりも作業効率を向上させることができる物体像表示装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、この発明の物体像表示装置は、表示画面を有する表示手段と、表示対象となる物体が設置される設置手段と、この設置手段に設置された物体の光学像がレンズを通して入射されると共に入射された光学像を電気信号に変換する撮像手段と、この撮像手段から出力される電気信号に基づいて物体の映像、言わば物体像を、表示手段の表示画面に表示する第1表示制御手段と、を具備する。さらに、物体の図面を表す図面データが記憶された記憶手段と、この記憶手段に記憶された図面データに基づいて当該図面を物体像に重畳させた状態で表示手段の表示画面に表示する第2表示制御手段と、を具備するものである。
【0006】
即ち、この発明では、設置手段に物体が設置されると、この物体の光学像がレンズを通して撮像手段に入射される。撮像手段は、入射された光学像を電気信号に変換する。そして、この電気信号に基づいて、第1表示制御手段が、表示手段の表示画面に物体像を表示する。さらに、記憶手段には、物体の図面を表す図面データが記憶されている。そして、この図面データに基づいて、第2表示制御手段が、当該図面を物体像に重畳させた状態で表示手段の表示画面に表示する。つまり、同一の表示画面に、物体像と図面とが、互いに重畳された状態で表示される。従って、例えばこれら物体像と図面とを比較することで、当該物体の形状や寸法等を容易に検査することができる。
【0007】
なお、この発明においては、複数のレンズと、これら複数のレンズのいずれかを任意に有効化する有効化手段と、をさらに備えてもよい。この場合、物体の光学像は、有効化手段によって有効化されたレンズを通して撮像手段に入射される。そして、第2表示制御手段は、有効化手段によって有効化されたレンズの倍率に応じた大きさで物体の図面を表示する。かかる構成によれば、有効化手段によって任意のレンズが有効化されると、有効化されたレンズの倍率に応じた大きさで物体像が表示画面に表示される。これと同様に、物体の図面もまた、当該有効化されたレンズの倍率に応じた大きさ、つまり物体像と同じ大きさで、表示画面に表示される。
【0008】
さらに、レンズは、ズームレンズであってもよい。この場合、第2表示制御手段は、当該ズームレンズの倍率に応じた大きさで物体の図面を表示する。この構成によれば、ズームレンズの倍率が任意の倍率に設定されると、その倍率に応じた大きさで物体像が表示画面に表示される。これと同様に、物体の図面も、当該ズームレンズの倍率に応じた大きさ、つまり物体像と同じ大きさで、表示画面に表示される。
【0009】
なお、ここで言う図面は、物体の公差を線図で表す公差図を含むものであってもよい。このようにすれば、物体の形状や寸法等が公差内に入っているか否かを直観的に把握することができる。
【0010】
さらに、レンズは設置手段の上方に位置し、表示画面は当該レンズの上方に位置するのが、望ましい。即ち、上述の従来技術においては、設置手段に対応するステージの上方にレンズが位置し、このレンズの上方に表示画面に対応するスクリーンが位置する。従って、設置手段の上方にレンズが位置し、レンズの上方に表示画面が位置するようにすれば、これら設置手段,レンズおよび表示画面の互いの位置関係が、従来技術における位置関係と同様になる。従って、従来技術と同様の感覚で、換言すれば違和感なく、この発明の物体像表示装置を取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、撮像手段から出力される電気信号に基づく物体像と、図面データに基づく図面とが、互いに重畳された状態で同一の表示画面に表示されるので、これら物体像と図面との比較が容易になり、ひいては物体の検査が容易になる。従って、例えば、これと同様の比較を行うのにチャートシートをスクリーンに貼り付ける必要のある上述した従来技術に比べて、物体を検査する際の作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態について、図1から図12を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、この実施形態の物体像表示装置10は、設置手段としての基台部12と、この基台部12の上方に設けられたヘッド部14と、これら基台部12とヘッド部14とを互いに連結する連結部16とを、備えている。
【0014】
基台部12は、概略直方体の形状をしており、その内部には、図1に点線18で示すように、画像処理装置、例えばパーソナルコンピュータ(厳密にはその本体)が収容されている。そして、この基台部12の上には、XYZステージ20が載置されており、このXYZステージ20の上に、表示対象となる図示しない物体が設置される。なお、物体の形状によっては、当該物体はXYZステージ20上で図示しない支持具によって支持される。また、XYZステージ20は、手動により直接操作することができるが、後述するようにパーソナルコンピュータ18によって操作することもできる。
【0015】
そして、XYZステージ20の上方、詳しくは略真上に、リング状のLED(Light Emitting Diode)光源装置22が、設けられている。このLED光源装置22は、白色LEDをリング状に並べたものであり、その中空部24の中心を後述する有効レンズ26の光軸に合わせ、かつ下方(XYZステージ20がある方向)に向けて投光するように、設けられている。また、このLED光源装置22は、上下方向(有効レンズ26の光軸方向)に沿って任意に移動可能とされている。なお、このLED光源装置22の明るさ(光度)は、図示しない光源用電源装置によって任意に調整可能とされている。
【0016】
さらに、LED光源装置22の上方に、有効レンズ26を含む複数本、例えば3本のレンズ26,26および26を備えたターレット式のレンズ交換機構28が、設けられている。このレンズ交換機構28は、ヘッド部14の下側部分に設けられており、各レンズ26,26および26は、それぞれの入射側を真下に向けた状態で取り付けられている。そして、各レンズ26,26および26のうち、この物体像表示装置10の最も前方寄りにあるものが、有効とされ、つまり有効レンズ26とされる。なお、この有効レンズ26は、レンズ交換機構28(手動による回転操作)によって任意に切り換えることができる。また、各レンズ26,26および26は、互いに拡大倍率の異なる単焦点形のものであり、それぞれの拡大倍率は、例えば10倍,20倍および50倍とされている。さらに、各レンズ26,26および26は、それぞれのピント面が互いに一致するように設計されている。そしてさらに、レンズ交換機構28は、図示しない昇降機構により上下方向に沿って任意に移動可能とされており、このレンズ交換機構28の上下動によって、有効レンズ26のフォーカス調整が行われる。
【0017】
このように、XYZステージ20の略真上にリング状のLED光源装置26が位置しており、このLED光源装置26のさらに上方に有効レンズ26が位置している。そして、LED光源装置26は、その中空部24の中心を有効レンズ26の光軸に合わせ、かつ下方に向けて投光するように、換言すれば当該中空部24の両開口端を上下方向に向けた状態で、設けられている。従って、XYZステージ20上に物体が設置されると、この物体の光学像が、LED光源装置22の中空部24を介して、有効レンズ26に入射される。
【0018】
有効レンズ26に入射された光学像は、当該有効レンズ26を通って、ヘッド部14内に設けられた撮像手段としての後述するCCD(Charge Coupled Device)型のカメラ30の受光部に入射される。このカメラ30は、受光部に入射された光学像を電気信号に変換し、変換された電気信号は、上述したパーソナルコンピュータ18を経由して、ヘッド部14内に設けられた液晶型のディスプレイ32に入力される。これによって、当該ディスプレイ32の表示画面に、物体の拡大映像、つまり物体像が、表示される。なお、ディスプレイ32は、その表示画面(前面)を物体像表示装置10の前方側に向けた状態で、有効レンズ26(レンズ交換機構28)の上方に設けられている。また、当該ディスプレイ32は、液晶型に限らず、CRT(Cathode
Lay Tube)型等の他の形式のものであってもよい。
【0019】
ところで、この実施形態の物体像表示装置10は、上述の如くディスプレイ32の表示画面に物体像を表示するという機能の他に、物体の図面、例えばCAD(Computer-Aided Design)で描かれた製作用図面を当該物体像に重畳(合成)させた状態で表示画面に表示するという言わば図面合成表示機能を、備えている。これを実現するために、この実施形態の物体像表示装置10は、電気的には例えば図2に示すような構成とされている。
【0020】
即ち、この実施形態の物体像表示装置10は、上述したようにパーソナルコンピュータ18を備えており、当該パーソナルコンピュータ18は、図2に示すようにカメラ30から出力される電気信号が入力される信号処理部50を有している。この信号処理部50は、入力された電気信号に対し、輝度調整処理やコントラスト調整処理等の所定のアナログ信号処理を施す。そして、この処理後の信号を、例えばビットマップ形式のディジタル画像データ、言わば物体像データに変換する。また、場合によっては、信号処理部50は、当該変換後の物体像データに対し、ディジタルフィルタリング処理等の所定のディジタル信号処理を施す。そして、この物体像データは、物体像メモリ52というフレームメモリに一時記憶された後、合成部54に入力される。
【0021】
パーソナルコンピュータ18はまた、図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えた制御部56を有している。そして、この制御部56には、入力装置58と記憶装置60とが接続されている。このうち、入力装置58は、制御部56に対し各種命令を与えるためのものであり、例えばキーボードおよびマウスから成る。一方、記憶装置60は、例えば磁気ディスク(ハードディスク)装置や光ディスク装置から成り、当該記憶装置60には、表示対象となる物体の製作用図面を表す例えばDXF(Drawing
Interchange Format)形式のCADデータが、記憶されている。
【0022】
ここで、入力装置58から制御部56に対し、表示対象となる物体(詳しくは、XYZステージ20に設置されている、またはこれから設置される物体)のCADデータを読み出す旨の命令が与えられると、当該制御部56は、与えられた命令に従ってそのCADデータを記憶手段60から読み出す。そして、読み出されたCADデータに基づいて、当該CADデータに従う図面を画像として表示するためのディジタル画像データ、言わば図面データを生成する。なお、この図面データは、製作用図面の点および線部分のみを色付きの(言わば不透明な)画素で表し、それ以外の部分を透明な画素で表すためのビットマップ形式のデータである。そして、この図面データは、図面メモリ62というフレームメモリに一時記憶された後、上述の合成部54に入力される。
【0023】
合成部54は、物体像メモリ52から入力される物体像データと、図面メモリ62から入力される図面データとを、合成する。そして、合成後の言わば合成画像データを、アナログ信号に変換する。変換された信号、言わば合成画像信号は、パーソナルコンピュータ18による処理後信号として出力され、ディスプレイ32に入力される。これによって、当該ディスプレイ32の表示画面に、物体像と製作用図面とが合成された言わば合成画像が表示される。
【0024】
図3に、当該合成画像の一表示例を示す。この図3は、図4に示すような軸受部品が物体とされ、この物体のうち点線70で囲まれた部分が表示対象とされたときの状態を示す。この図3に示すように、ディスプレイ32の表示画面には、その面積の大半を占める矩形の画像表示領域100が、当該表示画面の左上寄りの位置に表示される。そして、この画像表示領域100内に、合成画像が表示され、具体的には、実線102で示す物体像と、点線104で示す図面、厳密には公差を点線で表す公差図とが、互いに重畳された状態で表示される。
【0025】
このとき、上述した物体像メモリ52には、図5(a)に示すような物体像102を表示するための物体像データが記憶されており、図面メモリ62には、図5(b)に示すような図面(公差図)104を表示するための図面データが記憶されている。そして、これら物体像データと図面データとが互いに合成されることで、換言すれば図5(a)に示す言わば第1レイヤと図5(b)に示す言わば第2レイヤとが互いに合成されることで、図5(b)に示すような合成画像が構成される。なお、図5(b)に示す図面104については、上述したように点および線部分(図5(b)において点線で示す部分)のみが色付きの画素で表され、それ以外の部分は透明な画素で表される。従って、この図5(b)に示す図面104が図5(a)に示す物体像102に重畳されても、当該図面104によって物体像102が全面的に塗り潰されることはなく、図5(c)に示す如くこれら物体像102と図面104とが重畳された合成画像が構成される。
【0026】
このように、この実施形態の物体像表示装置10によれば、ディスプレイ32の表示画面に、物体像102と図面(公差図)104とが互いに重畳された状態で表示される。従って、これら物体像102と図面104とを比較することで、物体の形状や寸法等を容易に検査することができ、特に例えば当該形状や寸法等が公差(許容範囲)内に入っているか否かを容易に判定することができる。このことは、単に物体を検査するときのみならず、例えば図面(設計)に従って物体を加工するとき等にも、極めて有効である。また、上述した従来技術とは異なり、図面が描かれたチャートシートを別途表示画面に貼り付ける必要もないので、当該チャートシートにより表示画面が暗くなったり、或いは当該チャートシートが剥がれ落ちたりする、という不都合も生じない。
【0027】
さらに、この実施形態においては、基台部12の上に置かれたXYZステージ20の上方に、有効レンズ26が位置し、この有効レンズ26のさらに上方に、ディスプレイ32の表示画面が位置する。即ち、これらXYZステージ20,有効レンズ26およびディスプレイ32の表示画面の相対的な位置関係は、上述した従来技術におけるステージ,レンズおよびスクリーンの相対的な位置関係と同様である。このような位置関係とされているので、オペレータは、従来技術と同様の感覚で、換言すれば違和感なく、この実施形態の物体像表示装置10を取り扱うことができる。
【0028】
なお、上述の判定結果(検査結果)は、必要に応じて記憶装置60に記憶することができる。また、画像表示領域100に表示されている合成画像についても、当該記憶装置60に記憶することができる。さらに、物体像102のみを記憶することもできる。そして、これら記憶装置60に記憶された内容(判定結果,合成画像および物体像102)を、表示画面に表示(再生)させることもできる。また、詳しくは説明しないが、画像表示領域100に表示されている物体像102から、物体の任意箇所の寸法や角度,面積等を計測することもできる。さらに、物体が立体的なものである場合には、当該物体のZ軸方向の複数箇所に順次フォーカスを合わせるというフルフォーカス機能も、備えられている。これら記憶(再生),計測およびフルフォーカス機能に係る動作は、入力装置58からの命令に応じて制御部56により実行される。このため、図3に示すように、ディスプレイ32の表示画面の右側部分には、入力装置58によって操作可能なボタン(厳密にはボタンを模擬した図形)や入力欄等の各種操作子110,110,…が表示されている。即ち、これらの操作子110,110,…が入力装置58によって操作(クリック)されると、これに応答して、制御部56が適宜の動作(記憶(再生),計測またはフルフォーカス機能に係る動作)を実行する。
【0029】
また、上述の合成画像が表示された当初は、物体像102の位置と図面104の位置とがずれていることがある。この場合、上述したXYZステージ20によってこれら物体像102の位置と図面104の位置とが合わせられる。具体的には、図3に示すように、ディスプレイ32の表示画面の下側部分には、当該XYZステージ20をX軸,Y軸およびZ軸のそれぞれに移動させるための合計6つの矢印ボタン120,120,…が表示されている。そして、これらの矢印ボタン120,120,…が入力装置58によって操作(クリック)されると、これに応答して、制御部56が、XYZステージ20を制御するためのステージ制御信号を生成する。このステージ制御信号は、XYZステージ20に与えられ、XYZステージ20は、当該ステージ制御信号に従ってそのステージ部分(上面)をX軸,Y軸およびZ軸のそれぞれに適宜移動させる。このようにXYZステージ20が制御されることによって、物体像102の位置が調整され、ひいては当該物体像102の位置と図面104の位置とが合わせられる。
【0030】
さらに、図3に示すように、それぞれの矢印ボタン120の右横方には、当該矢印ボタン120が1回操作される毎にXYZステージ20(ステージ部分)をどれくらい移動させるのか、つまり移動量を入力するためのフィールド122が、設けられている。即ち、任意の矢印ボタン120が1回操作されると、その矢印ボタン120の右横方のフィールド122に入力されている数値(単位:[μm])分だけ、当該矢印ボタン120に対応する方向にXYZステージ20が移動する。従って、XYZステージ20を比較的に大きく(言わば大まかに)移動させたいときには、当該フィールド122に比較的に大きい数値を入力すればよい。一方、XYZステージ20を比較的に小さく(言わば少しずつ)移動させたいときには、当該フィールド122に比較的に小さい数値を入力すればよい。
【0031】
なお、上述した信号処理部50におけるアナログ信号処理およびディジタル信号処理もまた、制御部56によって制御される。即ち、入力装置58によって当該アナログ信号処理またはディジタル信号処理を行う旨の操作が成されると、これに応答して、制御部56が信号処理部50を制御するための処理制御信号を生成する。この処理制御信号は、信号処理部50に与えられ、信号処理部50は、当該処理制御信号に従ってアナログ信号処理またはディジタル信号処理を行う。
【0032】
さて、図3に示す状態において、例えばレンズ交換機構28により有効レンズ26が切り換えられた、とする。すると、当然に、画像表示領域100に表示されている物体像102は、新たな有効レンズ26の倍率に応じた大きさで表示される。なお、レンズ交換機構28は、有効レンズ26が切り換えられても、当該有効レンズ26の光軸位置は変わらないように設計されている。従って、物体像102は、その中心位置を不変としたまま、新たな有効レンズ26の倍率に応じた大きさで表示される。
【0033】
そして、このように有効レンズ26が切り換えられたとき、当該有効レンズ26が切り換わったことを表すレンズ切換信号が、レンズ交換機構28から制御部56に送られる。制御部56は、このレンズ切換信号に応じて、図面104の表示倍率を変更するべく、図面データを生成し直す。即ち、制御部56は、新たな有効レンズ26の倍率に応じた大きさで図面104を表示させるための図面データを生成する。このとき、図面104の中心部分は不変とされたまま、当該図面104の大きさのみが変更されるような図面データが生成される。なお、制御部56は、図6に示すようなテーブルを有しており、このテーブルには、各レンズ26,26および26(レンズ[1],[2]および[3])のそれぞれが有効とされたときの倍率、具体的には後述するように当該各レンズ26,26および26の倍率にディスプレイ32の表示画面のサイズが加味された言わば物体像表示装置10全体の総合的な倍率、に関するデータが記憶されている。そして、制御部56は、このテーブルを参照することで、新たな有効レンズ26に対応する倍率を認識し、この認識結果に基づいて、上述の如く図面データを生成し直す。生成し直された図面データは、図面メモリ62を経て、合成部54に入力される。この結果、画像表示領域100には、新たな有効レンズ26の倍率に応じた大きさ、つまり物体像102と同じ大きさの図面104が、当該物体像102に重畳された状態で表示される。
【0034】
図7に、例えば有効レンズ26が上述した図3のときよりも倍率の大きいものに切り換えられたときの、ディスプレイ32の表示画面の一表示例を示す。この図7に示すように、画像表示領域100に表示されている合成画像、つまり物体像102と図面104とは、新たな有効レンズ26に応じた大きさで表示される。そして、これら物体像102と図面104との位置関係、つまり中心位置は、不変である。
【0035】
このように有効レンズ26が切り換えられると、物体像102のみならず、図面104までも、新たな有効レンズ26の倍率に応じた大きさで表示される。しかも、これら物体像102と図面104との位置関係は、維持される。従って、上述した従来技術の如くレンズの交換に応じてチャートシートをも貼り換える必要がある、というような不都合も生じない。
【0036】
ここで、この実施形態の物体像表示装置10による実際の検査作業の手順について、詳しく説明する。
【0037】
まず、当該検査作業に先立ち、オペレータは、図8に示す手順に従って初期設定作業を行う。即ち、オペレータは、ステップS1として、XYZステージ20上に、所定寸法の図示しない参考用試料(例えば定規のようなもの)を設置する。これによって、当該参考用試料の物体像が、ディスプレイ32の表示画面(画像表示領域100)に表示される。
【0038】
そして、オペレータは、ステップS3において、表示画面に表示された物体像の寸法、具体的には当該物体像のうち実際の寸法が既知である部分の寸法を、測定(実測)する。そして、ステップS5において、当該ステップS3における測定結果と実際の参考用試料の寸法との比率を、計算する。これによって、現在の有効レンズ26の倍率にディスプレイ32の表示画面のサイズが加味された総合的な倍率が、求められる。さらに、ステップS7において、当該ステップS5における計算結果を入力装置58により入力する。入力された計算結果は、上述の図6に示すテーブルに記憶される。
【0039】
そして、オペレータは、ステップS9において、上述のステップS1〜ステップS7を全てのレンズ26,26および26について一通り行ったか否かを判断し、未だである場合には、ステップS11において、有効レンズ26を切り換えた後、当該ステップS1〜ステップS7を繰り返す。一方、全てのレンズ26,26および26についてステップS1〜ステップS7を実行し終えた場合には、この図8に示す一連の初期設定作業を終了する。
【0040】
かかる初期設定作業(言わば校正作業)を行うことによって始めて、正確な検査作業を行うことができる。即ち、検査作業においては、図9に示すように、オペレータは、まず、ステップS31として、入力装置58を操作することで、これから検査を行おうとする物体のCADデータを読み出す。これによって、例えば図10に示すように、当該CADデータに従う図面(公差図)104が、ディスプレイ32の表示画面(画像表示領域100)に表示される。
【0041】
続いて、オペレータは、ステップS33において、物体のどの部分を拡大して表示させたいのかを図面104上で選択する。具体的には、入力装置58の操作(例えばマウスのドラッグ操作)によって、例えば図10に一点鎖線130で示すように、当該図面104のうち希望の部分を矩形模様で指定する。すると、図11に示すように、図面104が、当該矩形模様130で指定された部分の中心を基準として、有効レンズ26の倍率に応じた大きさで拡大表示される。
【0042】
そして、オペレータは、ステップS35において、検査対象である物体をXYZステージ20上に設置する。これによって、当該物体の物体像が、ディスプレイ32の表示画面に表示される。そして、ステップS37において、XYZステージ20を操作することで、物体像の位置と図面の位置とを合わせる。これによって、上述した図3に示すように、物体像102と図面104とが重畳された合成画像が得られる。
【0043】
このステップS37において位置調整を行った後、オペレータは、ステップS39において、物体の形状や寸法等を検査する。具体的には、物体像102と図面104とを比較することで、物体の形状や寸法等が公差内に入っているか否かを検査する。そして、ステップS41において、ステップS39における検査結果を記憶し、この図9に示す一連の検査作業を終了する。
【0044】
なお、図9のステップS33において表示対象エリア(矩形模様)130が選択されたとき、パーソナルコンピュータ18内の制御部56は、自身の図示しないメモリに記憶された物体像表示プログラムに従って、図12に示す図面データ生成処理を実行する。なお、物体像表示プログラムは、フロッピディスクやCD−ROM(Compact Disc-ROM)、或いはDVD等の適宜の記録媒体によって提供される。
【0045】
図12に示すように、制御部56は、まず、ステップS51において、表示対象エリア130の中心位置を決定する。そして、ステップS53に進み、上述の図6に示すテーブルを参照し、現在の有効レンズ26に対応する倍率を認識する。そして、ステップS55に進み、当該ステップS53における認識結果、つまり現在の有効レンズ26に対応する倍率に基づいて、図面データを生成する。このとき、上述のステップS51で決定された中心位置を基準として当該図面データが生成される。そして、ステップS57において、当該図面データを図面メモリに転送する。このステップS57の実行を以て、制御部56は、一連の図面データ生成処理を終了する。
【0046】
また、図9のステップS39において有効レンズ26が切り換えられたとき、制御部56は、上述の物体像表示プログラムに従って、図13に示す倍率変更処理を実行する。
【0047】
即ち、まず、ステップS71において、図6のテーブルを参照し、現在の有効レンズ26に対応する倍率を認識する。そして、ステップS73において、当該ステップS71における認識結果に基づいて、図面データを生成し直す。このとき、上述した図面データ生成処理のステップS51で決定された中心位置を基準として、当該図面データが生成される。そして、ステップS75に進み、新たに生成し直された図面データを図面メモリに転送し、この図13に示す一連の倍率変更処理を終了する。
【0048】
なお、この実施形態においては、画像処理装置としてパーソナルコンピュータ18を用いたが、これに限らない。即ち、この実施形態を実現するための専用の画像処理装置を用いてもよい。そして、図2以外の構成によって、当該画像処理装置を実現してもよい。
【0049】
また、図3などに示す表示画面のデザインは、飽くまで一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図面(公差図)104を物体像102とは異なる色彩で表したり、当該図面104に代えてCG(Computer Graphics)画像等を表示させたりしてもよい。また、図面104とCG画像等とを重ねて同時に表示させてもよい。さらに、XYZステージ20の座標や、或る基準位置からの移動量等の情報を、表示画面に表示させてもよい。
【0050】
そして、各レンズ26,26および26の倍率は、ここで説明した値に限らない。また、当該レンズ26の本数は、3本に限定されるものでもない。カメラ30もまた、CCD型のものに限定されない。
【0051】
さらに、単焦点形のレンズ26,26および26に代えて、ズームレンズを用いてもよい。この場合、ズームレンズの倍率に応じて図面102の表示倍率を変更させるように構成すればよい。
【0052】
また、上述したLED光源装置22の明るさを、パーソナルコンピュータ18によって制御できるようにしてもよい。そして、当該LED光源装置22以外の光源装置を採用してもよい。
【0053】
そしてさらに、XYZステージ20に代えて、回転(θ調整)機能を備えたステージ等の他のステージを用いてもよい。
【0054】
また、物体像データおよび図面データは、ビットマップ形式に限らず、GIF(Graphics Interchange Format)やJPEG(Joint Photographic
Experts Group)形式等の他の形式のデータであってもよい。
【0055】
さらに、図面データの元となるCADデータは、DXF形式に限らず、これ以外の形式のデータであってもよい。また、この実施形態では、CADデータに基づいて図面データを生成し、この図面データに基づいて表示画面(画像表示領域100)に図面104を表示するようにしたが、これに限らない。例えば、CADデータに基づいて、直接、当該表示画面に図面104を表示(描画)するようにしてもよい。
【0056】
そして、上述した図9に示す検査作業を行う前に、一般に知られているパターンマッチング法等により或る程度の(言わば前置的な)良否判定を行ってもよい。
【0057】
さらに、上述した図9に示す検査作業のステップS33において、図10に示す如く表示対象エリアを矩形模様130で指定することとしたが、これに限らない。例えば、表示対象エリアの中心位置(中心点)のみを指定することで、指定された中心位置を基準として図面104が拡大表示されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】同実施形態の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態における表示画面の一表示例を示す図解図である。
【図4】同実施形態における物体の一例としての軸受部品の側面図である。
【図5】図3における合成画像の構成を概念的に示す図解図である。
【図6】同実施形態におけるテーブルの構成を概念的に示す図解図である。
【図7】図3とは別の表示例を示す図解図である。
【図8】同実施形態においてオペレータが行う初期設定作業の手順を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態においてオペレータが行う検査作業の手順を示すフローチャートである。
【図10】図7とはさらに別の表示例を示す図解図である。
【図11】図10とはさらに別の表示例を示す図解図である。
【図12】同実施形態において制御部が実行する図面データ生成処理の内容を示すフローチャートである。
【図13】同実施形態において制御回路が実行する倍率変更処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10 物体像表示装置
12 基台部
18 パーソナルコンピュータ
20 XYZステージ
26 レンズ
28 レンズ交換機構
30 カメラ
32 ディスプレイ
52 物体像メモリ
56 制御部
62 図面メモリ
54 合成部
60 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を有する表示手段と、
表示対象となる物体が設置される設置手段と、
上記設置手段に設置された上記物体の光学像がレンズを通して入射されると共に入射された該光学像を電気信号に変換する撮像手段と、
上記撮像手段から出力される上記電気信号に基づいて上記物体の映像を上記表示画面に表示する第1表示制御手段と、
上記物体の図面を表す図面データが記憶された記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された上記図面データに基づいて上記図面を上記映像に重畳させた状態で上記表示画面に表示する第2表示制御手段と、
を具備する、物体像表示装置。
【請求項2】
複数の上記レンズと、
上記複数のレンズのいずれかを任意に有効化する有効化手段と、
をさらに備え、
上記光学像は上記有効化手段によって有効化されたレンズを通して上記撮像手段に入射され、
上記第2表示制御手段は上記有効化されたレンズの倍率に応じた大きさで上記図面を表示する、
請求項1に記載の物体像表示装置。
【請求項3】
上記レンズはズームレンズであり、
上記第2表示制御手段は上記レンズの倍率に応じた大きさで上記図面を表示する、
請求項1に記載の物体像表示装置。
【請求項4】
上記図面は上記物体の公差を図で表す公差図を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の物体像表示装置。
【請求項5】
上記レンズは上記設置手段の上方に位置し、
上記表示画面は上記レンズの上方に位置する、
請求項1ないし4のいずれかに記載の物体像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−189318(P2006−189318A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1224(P2005−1224)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】