説明

画像の領域分割による物体の表面領域配置の取得

【課題】 物体の表面領域の配置を画像の領域分割により取得する。
【解決手段】 互いに異なる複数の照明条件の下で物体を撮影した、複数の画像を取得する。これらの複数の画像をそれぞれ領域分割することにより、物体の表面領域の配置とは異なる複数の画像領域配置を取得する。そして、複数の画像領域配置に基づいて、物体の表面領域の配置を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体の表面領域の配置を画像の領域分割により取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板などの検査装置として、検査対象となる製品の画像から、検査対象となる製品の表面の各領域の配置を、標準的な製品における各領域の配置と比較することにより検査対象製品の欠陥の有無を判定する画像検査装置が用いられる。このような画像検査装置では、物体の表面の各領域がどのように配置されているかを取得するため、物体の画像を複数の領域に分割する領域分割が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−259667号公報
【0004】
しかしながら、物体の表面には、金属と誘電体などのように、表面での反射特性が異なる領域が存在する場合がある。このような物体を撮影した画像を色や濃度などにより領域分割した場合、照明条件を工夫しても、物体の表面の領域の配置を画像の領域分割により取得し得ない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、物体の表面領域の配置を画像の領域分割により取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の方法は、複数の表面領域を有する物体を撮影した画像から、前記物体上での前記複数の表面領域の配置を取得する方法であって、(a)互いに異なる複数の照明条件の下で、前記物体の複数の画像を取得する工程と、(b)前記複数の画像をそれぞれ領域分割することにより、前記物体上での前記複数の表面領域の配置と異なる複数の画像領域配置を取得する工程と、(c)前記複数の画像領域配置に基づいて、前記複数の表面領域の配置を取得する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、単一の照明条件下で撮影された画像から取得できない物体の表面領域の配置を取得することができる。
【0008】
前記工程(a)は、第1の照明条件の下で前記物体を撮影することにより、前記複数の表面領域のうちの第1の表面領域の画像領域を領域分割処理により再現し得る第1の画像を取得する工程と、前記第1の照明条件とは異なる第2の照明条件の下で前記物体を撮影することにより、前記複数の表面領域のうち前記第1の表面領域とは異なる第2の表面領域の画像領域を領域分割処理により再現し得る第2の画像を取得する工程と、を含み、前記第2の表面領域は、前記第1の画像を領域分割した場合、2種以上の画像領域に分割される領域であって、前記工程(b)は、(b1)前記第1の画像の少なくとも一部を領域分割することにより、前記第1の表面領域を含む表面領域の画像領域の配置を取得する工程と、(b2)前記第2の画像を領域分割することにより、前記第2の表面領域を含む表面領域の画像領域の配置を取得する工程と、を含むものとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、第1の照明条件下で撮影された画像では2種以上の画像領域に分割される表面領域を、第2の照明条件下で撮影された画像を用いることにより1つの領域として再現することができる。
【0010】
前記工程(b1)は、前記工程(b2)における前記第2の画像の領域分割により取得された前記第2の表面領域に対応する画像マスクにより前記第1の画像をマスクする工程と、前記第1の画像のうち、前記画像マスクによりマスクされなかった部分を領域分割する工程を含むものとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、マスクされた領域の領域分割を省略できるので、処理時間を短縮することができる。
【0012】
前記第1の照明条件は斜光照明であり、前記第2の照明条件は落射照明であるものとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、反射特性の異なる表面領域を含む物体の表面領域の配置を取得することができる。
【0014】
前記第1の表面領域は金属光沢を有さず、前記第2の表面領域は金属光沢を有する、ものとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、金属光沢を有しない表面領域と、金属光沢を有する表面領域とのいずれの領域を含む物体の表面領域の配置を取得することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、物体の表面領域配置の取得方法および装置、その取得結果を用いた画像検査方法および装置、それらの各種の方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0018】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのプリント基板検査装置100の構成を示す説明図である。このプリント基板検査装置100は、プリント基板PCBを照明するための照明部200と、プリント基板PCBの画像を撮影する撮像部300と、装置全体の制御を行うコンピュータ400とを備えている。コンピュータ400には、各種のデータやコンピュータプログラムを格納する外部記憶装置500が接続されている。
【0019】
コンピュータ400は、代表色設定部610と、画像取得部620と、領域分割部630と、表面領域配置取得部640と、の機能を有している。これら各部の機能は、外部記憶装置500に格納されたコンピュータプログラムをコンピュータ400が実行することによって実現される。
【0020】
照明部200は、斜光照明用の2つの光源210と、落射照明用の光源220および半透鏡222と、を備えている。ここで「斜光照明」とは、観察物(プリント基板PCB)に撮像部300の方向とは異なる方向から来る光を照射する照明を意味する。また、「落射照明」とは、観察物に撮像部300の方向から来る光を照射する照明を意味する。なお、落射照明は「同軸落射照明」とも呼ばれる。
【0021】
図2は、プリント基板PCBの表面の状態を示す説明図である。プリント基板PCBの表面は、基板ベース上にレジストが塗布されたベースレジスト領域RBRと、銅配線のパターン上にレジストが塗布されたパターンレジスト領域RPRと、基板ベース上に黒色の文字がシルク印刷されたシルク印刷領域RSGと、金メッキが施された金メッキ領域RGPと、基板ベースが露出している基板ベース領域RSBと、を含んでいる。
【0022】
図3は、第1実施例におけるプリント基板の表面の領域の配置を取得する手順を示すフローチャートである。
【0023】
ステップS100では、画像取得部620(図1)が、斜光照明によるプリント基板PCBのカラー画像を取得する。具体的には、画像取得部620が、光源210(図1)を点灯させ、光源220(図1)を消灯させるための指示を、照明部200(図1)に供給する。光源210が点灯され、プリント基板PCBが斜光照明により照明された状態で、画像取得部620は、撮像部300(図1)からプリント基板PCBの第1の画像を取得する。
【0024】
なお、ステップS100では、取得された第1の画像に対して、画像取得部620が、必要に応じて平滑化処理(ぼかし処理)を実行する。平滑化処理では、メディアンフィルタや、ガウスフィルタ、移動平均などの種々の平滑化フィルタを用いることができる。この平滑化処理を行うことによって、画像データ内に存在する特異な画素を除去することができるので、ゴミ(雑音成分)の少ない画像データを得ることができる。また、予め取得された第1の画像に関してステップS110以降の処理を実行する場合には、ステップS100において、外部記憶装置500(図1)から画像データが読み出される。
【0025】
図4は、斜光照明状態で取得されたプリント基板PCB(図2)の第1の画像IM1を示す説明図である。この第1の画像IM1は、2つの緑色領域G1,G2と、2つの黒色領域K1,K2と、金色領域GLと、茶色領域BRと、を含んでいる。なお、本実施例では、これらの2つの緑色領域G1,G2を併せて「緑色領域GR」とも呼び、2つの黒色領域K1,K2を併せて「黒色領域BK」とも呼ぶ。
【0026】
第1の画像IM1では、プリント基板PCBのベースレジスト領域RBRは、第1の緑色領域G1で表され、パターンレジスト領域RPRは、第2の緑色領域G2で表されている。同様に、シルク印刷領域RSGと基板ベース領域RSBとは、それぞれ、第1の黒色領域K1と茶色領域BRとで表されている。一方、プリント基板PCBの金メッキ領域RGPは、その表面状態の差異により、第2の黒色領域K2と金色領域GLとの2つの領域で表される。このように金メッキ領域RGPが色の異なる2つの領域K2,GLで表されるのは、撮像部300(図1)に入射する金属表面からの反射光の光量がその金属表面の状態の影響を受けやすい斜光照明で第1の画像IM1を取得したためである。
【0027】
ステップS110(図3)では、画像取得部620が、落射照明によるプリント基板PCBのカラー画像を取得する。具体的には、画像取得部620が、光源220を点灯させ、光源210を消灯させるための指示を、照明部200に供給する。光源220が点灯されると、光源220からの光は半透鏡222でプリント基板PCBの方向に反射され、プリント基板PCBは撮像部300の方向から来る光によって照明される。このように、プリント基板PCBが落射照明により照明された状態で、画像取得部620は、撮像部300からプリント基板PCBの第2の画像を取得する。
【0028】
なお、ステップS110においても、取得された第2の画像に対して、画像取得部620が、必要に応じて平滑化処理を実行する。また、予め取得された第2の画像に関してステップS120以降の処理を実行する場合には、ステップS110において、外部記憶装置500(図1)から画像データが読み出される。
【0029】
図5は、落射照明状態で取得されたプリント基板PCB(図2)の第2の画像IM2を示す説明図である。この第2の画像IM2は、3つの明領域S1,S2,S3と、金属光沢領域MTと、暗領域DKと、を含んでいる。なお、本実施例では、これらの3つの明領域S1,S2,S3を併せて「明領域SH」とも呼ぶ。
【0030】
第2の画像IM2では、プリント基板PCBの金メッキ領域RGPは、図4に示す第1の画像IM1と異なり、1種類の金属光沢領域MTとして表される。また、基板ベース領域RSBは、第1の画像IM1と同様に、1種類の暗領域DKとして表される。一方、プリント基板PCBのベースレジスト領域RBRと、パターンレジスト領域RPRと、シルク印刷領域RSGとは、それぞれ、第1の明領域S1と、第2の明領域S2と、第3の明領域S3とで表される。このように、第1の画像IM1で異なる色で表されるプリント基板PCBの3つの領域RBR,RPR,RSGが、第2の画像IM2で明領域S1,S2,S3として表されるのは、これらの領域RBR,RPR,RSGが滑らかな表面を有するため、光源220(図1)が射出する光とほぼ同色の正反射光が撮像部300(図1)に入射するためである。
【0031】
図3のステップS120では、代表色設定部610(図1)が、第1の画像の領域分割に用いる代表色を取得する。具体的には、代表色設定部610は、第1の画像をコンピュータ400の表示部に表示する。ユーザは、表示された第1の画像上で、第1の画像および第2の画像から抽出する画像領域(以下、単に「抽出領域」とも呼ぶ)の代表点をマウスなどのポインティングデバイスを用いて指定する。代表色設定部610は、代表点位置の第1の画像の色に基づいて、第1の画像の領域分割に用いる代表色を決定する。
【0032】
図6は、第1の画像IM1の領域分割に用いる代表色の取得の様子を示す説明図である。ユーザは、4種類の抽出領域ER,ES,EG,EBの呼び名(例えば「レジスト領域」,「シルク領域」等)を画面上のダイアログボックスに入力し、また、各抽出領域の代表色を取得するための代表点(星印で示す)を第1の画像IM1上で指定する。代表点は、各抽出領域内に少なくとも1つずつ指定される。図6の例では、レジスト領域ERの代表点には、代表点PR1,PR2が指定されている。同様に、シルク領域ESの代表点には1つの代表点PSが、金領域EGの代表点には3つの代表点PG1,PG2,PG3が、ベース領域EBの代表点には1つの代表点PBが、それぞれ指定されている。
【0033】
同じ抽出領域において複数の代表点が指定されたときには、代表色設定部610が、複数の代表点のうちから色が安定している代表点を選択する。具体的には、代表色設定部610が、複数の代表点間の輝度差の最大値を算出する。この輝度差の最大値が予め定められた閾値以下の場合には、代表点の色が安定しているものと判断され、複数の代表点のすべてが選択される。一方、輝度差の最大値が予め定められた閾値より大きい場合には、代表点の色は安定していないものと判断される。代表点の色が安定していない場合には、輝度値が低い代表点が除外され、残りの代表点が選択される。抽出領域の代表色には、このように選択された代表点の平均的な色が設定される。なお、同じ抽出領域において1つの代表点が指定されたときには、その代表点の色が代表色に設定される。図6の例では、シルク領域ESの代表色は代表点PSの色K1に、ベース領域EBの代表色は代表点PBの色BRに、それぞれ設定される。
【0034】
図6の例では、複数の代表点が指定されている抽出領域は、レジスト領域ERと、金領域EGとなっている。レジスト領域ERの代表点PR1,PR2の色は輝度差が小さいため、レジスト領域ERの代表色は、代表点PR1の色G1と代表点PR2の色G2との平均的な色に設定される。一方、金領域EGの代表点PG1の色GLと代表点PG2の色GLとの輝度差は小さいが、これらの代表点PG1,PG2の色GLと代表点PG3の色K2との輝度差は大きくなっている。そのため、代表色設定部610は、輝度の小さい代表点PG3を除外し、残りの代表点PG1,PG2の色の平均的な色GLを金領域EGの代表色に設定する。
【0035】
第1実施例では、代表点の輝度値に基づいて代表色の設定に用いる代表点を選択しているが、一般には、領域分割に適した代表色が設定できるように代表点が設定できればよい。例えば、ある抽出領域のために設定された代表点の色と他の抽出領域の代表色との色の差を表す指標値(以下、「距離指標値」とも呼ぶ)が、予め定められた値以下である場合に、その代表点の色を除外するものとしてもよい。また、同じ抽出領域のために指定された複数の代表点間の距離指標値が予め定められた値よりも大きい場合に、ユーザに選択する代表点を指定させるものとしてもよい。なお、この距離指標値には、例えば、RGB色空間を3次元ユークリッド空間として見たときの2つの色を表す点の距離や、L*a*b*表色系における色差ΔEを用いることができる。
【0036】
ステップS130(図3)では、代表色設定部610(図1)が、第2の画像IM2の領域分割に用いる代表色を取得するとともに、表面領域配置の取得に使用する抽出領域を選択する。具体的には、ステップS120でユーザにより指定された複数の代表点位置における第2の画像IM2の色に基づいて、第2の画像IM2の領域分割に用いる代表色を決定する。単一の抽出領域において複数の代表点が指定されたときには、代表色設定部610が、複数の代表点の平均的な色をその抽出領域の代表色に設定する。一方、単一の抽出領域において1つの代表点が指定されたときには、その抽出領域の代表色は1つの代表点の色に設定される。
【0037】
図7は、第2の画像の領域分割に用いる代表色の取得の様子を示す説明図である。代表色を取得するための代表点としては、図6に示す代表点と同一の点が用いられている。ユーザは、第2の画像IM2から選択する領域を画面上のダイアログボックスを用いて指定する。図7の例では、表面領域配置の取得に使用する領域は金領域EGに設定される。図7の例では、金領域EGの代表色は代表点PG1,PG2,PG3の平均的な色MTに設定される。非金領域EXであるレジスト領域ERの代表色は、代表点PR1の色S1と代表点PR2の色S2との平均的な色に設定される。同様に、非金領域EXであるシルク領域ESとベース領域EBの代表色とは、代表点PSの色S3と代表点PBの色DKとにそれぞれ設定される。
【0038】
なお、第1実施例では、ユーザが、第2の画像IM2から選択する領域を指定しているが、第2の画像IM2を解析することにより、代表点の色が安定している領域を選択するものとしてもよい。この場合、4つの領域EG,ER,ES,EBのうち代表点の色が安定している領域は、金領域EGとシルク領域ESとベース領域EBとであるので、これらの領域EG,ES,EBとが選択される。
【0039】
ステップS140(図3)では、領域分割部630(図1)が、ステップS130において設定された代表色に基づいて第2の画像IM2を領域分割する。そして、領域分割によって生成された各領域のうち、ステップS130において選択された領域を抽出する。
【0040】
なお、ステップS140において行われる領域分割は、例えば、第2の画像IM2の各画素の色と複数の代表色との距離指標値を求め、距離指標値が最小の代表色に各画素を分類することにより行うことができる。また、ステップS150において行われる領域分割も同様に行うことができる。なお、ステップS140,S150において行われる領域分割方法は、予め定められた代表色に各画素を分類する領域分割方法であれば良く、例えば、上述した特許文献1に開示された方法によって行うことができる。
【0041】
図8は、ステップS140,S150における領域分割の結果を示す説明図である。図8(a)の第2の画像IM2の領域分割結果SR2に示されるように、表面領域配置の取得のために選択された抽出領域は金領域EGであるので、第2の画像IM2を領域分割した金領域EGと非金領域EXとのうち金領域EGが抽出されている。また、図8(b)の第1の画像IM1の領域分割結果SR1に示されるように、第1の画像IM1は、レジスト領域ERと、シルク領域ESと、金領域EGと、ベース領域EBとに分割されている。図8(b)に示す領域分割結果SR1では、本来金領域EGである黒色領域K2(図4)は、黒色領域K1と同一のシルク領域ESに分類されている。
【0042】
ステップS160(図3)では、表面領域配置取得部640(図1)が、第1の画像の領域分割結果と第2の画像の領域分割結果とを統合する。具体的には、表面領域配置取得部640が、第1の画像の領域分割結果に第2の画像の領域分割結果を重畳することにより、2つの領域分割結果を統合する。この2つの画像の統合結果である表面領域の配置は、第1の画像の領域分割結果に、第2の画像の領域分割結果で抽出された抽出領域EGを上書きしたものとなる。
【0043】
図9は、2つの領域分割結果SR1,SR2の統合結果SRXを示す説明図である。図9に示すように、領域分割結果SR1においてシルク領域ESに分類されていた本来金領域EGである領域が、領域分割結果SR1に領域分割結果SR2を重畳することにより、金領域EGに変更される。そのため、プリント基板PCB(図2)のベースレジスト領域RBRと、パターンレジスト領域RPRとは、ともにレジスト領域ERとして統合結果SRXから抽出される。同様に、シルク印刷領域RSGはシルク領域ESとして、金メッキ領域RGPは金領域EGとして、また、基板ベース領域RSBはベース領域EBとして、それぞれ統合結果SRXから抽出される。
【0044】
このように、第1実施例では、斜光照明と落射照明との2つの照明条件で撮影したプリント基板の2つの画像をそれぞれ領域分割し、その分割結果を統合することにより抽出された画像領域の配置から、プリント基板の各領域の配置を取得することができる。
【0045】
なお、本実施例では、単一の抽出領域に複数の代表点が設定された場合には、各代表点の色の平均的な色をその抽出領域の代表色としているが、個々の代表点のそれぞれの色を代表色としても良い。
【0046】
B.第2実施例:
図10は、第2実施例におけるプリント基板PCBの表面領域の配置を取得する手順を示すフローチャートである。図3に示す第1実施例のフローチャートとは、ステップS140の後にステップS142が付加されている点と、ステップS150,S160がそれぞれステップS152,S162に置き換えられている点で異なっており、他の点は第1実施例と同じである。
【0047】
ステップS142では、領域分割部630(図1)が、ステップS140において生成された第2の画像の領域分割結果を用いて第1の画像をマスクする。そして、ステップS152において、第1の画像のうちマスクされていない部分が、領域分割部630により領域分割される。
【0048】
図11(a)は、第2の画像IM2の領域分割結果SR2を示す説明図である。図11(a)の領域分割結果SR2と、第1実施例の領域分割結果SR2(図8)は同一である。図11(b)は、領域分割結果SR2を用いてマスクされた第1の画像IM1aを示す説明図である。図11(b)の例では、第1の画像IM1(図4)のうち、領域分割結果SR2の金領域EGに対応する部分MKがマスクされている。そのため、マスクされた第1の画像IM1aは、第1の画像IM1中の黒色領域K2と金色領域GLのいずれもがマスク領域MKに変更された画像となっている。
【0049】
図12(a)は、ステップS152の処理による、マスクされた第1の画像IM1aの領域分割結果SR1aを示す説明図である。画像IM1aの領域分割は、マスク領域MK以外の部分についてのみ行われる。そのため、領域分割結果SR1aは、マスクされない金領域EGとシルク領域ESとして分割された金メッキ領域がマスク領域MKとなっている点で第1の画像IM1の領域分割結果SR1(図8)と異なっている。他の点は、第1の画像IM1の領域分割結果SR1と同じである。
【0050】
ステップS162では、表面領域配置取得部640が、マスクされた第1の画像IM1aの領域分割結果SR1aのマスク領域MKを金領域EGに変更する。このようにマスク領域MKが金領域EGに変更されることにより、図12(b)に示すように、表面領域の配置SRXが取得される。この表面領域配置SRXと、第1実施例で取得した表面領域配置SRX(図9)とは同一である。
【0051】
このように、第2実施例によっても、第1実施例と同様に、斜光照明と落射照明との2つの照明条件で撮影したプリント基板の2つの画像から、プリント基板の各領域の配置を取得することができる。
【0052】
第2実施例は、第1の画像IM1をマスクする面積が大きい場合、マスクされた第1の画像IM1aの領域分割に必要な計算時間を短縮できる点で、第1実施例よりも好ましい。
【0053】
C.変形例:
なお、この発明は上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
C1.変形例1:
上記各実施例では、斜光照明と落射照明とでそれぞれ撮影された2つの画像を用いて表面領域の配置を取得しているが、一般には、互いに異なる照明条件下で取得された2以上の任意の数の画像を用いることができる。この場合、各画像から取得された抽出領域に対して適宜論理演算を施すことにより、表面領域の配置を取得することができる。また、互いに異なる照明条件としては、斜光照明と落射照明との組み合わせの以外の種々の組み合わせが利用可能である。例えば、照射方向や、偏光状態や、光源の波長が異なる照明を任意に組み合わせた複数の照明条件を利用することもできる。
【0055】
C2.変形例2:
上記各実施例では、物体を撮影した画像としてカラー画像を使用しているが、表面領域の取得にはモノクロ画像や特定の色成分からなる画像を使用することもできる。表面領域の取得に用いる画像には、一般に、適当な距離指標値を設定することにより、画像を複数の領域に分割可能な画像であれば使用することができる。表面領域の取得に用いる画像としては、例えば、2成分以上のカラー画像である第1の画像と、モノクロ画像である第2の画像とを使用することができる。
【0056】
C3.変形例3:
本発明による物体上の表面領域の取得は、プリント基板に限らず、照明条件によって撮影された画像の領域分割結果が異なる複数の表面領域を有する任意の物体に対して適用できる。例えば、パターンの形成された半導体ウェハや、複雑な形状を有する機械部品などの物体の表面領域の取得にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例としてのプリント基板検査装置100の構成を示す説明図。
【図2】プリント基板PCBの表面の状態を示す説明図。
【図3】第1実施例におけるプリント基板PCBの表面領域の配置を取得する手順を示すフローチャート。
【図4】斜光照明状態で取得されたプリント基板PCBの第1の画像IM1を示す説明図。
【図5】落射照明状態で取得されたプリント基板PCBの第2の画像IM2を示す説明図。
【図6】第1の画像IM1の領域分割に用いる代表色の取得の様子を示す説明図。
【図7】第2の画像IM2の領域分割に用いる代表色の取得の様子を示す説明図。
【図8】第1の画像IM1と第2の画像IM2の領域分割の結果を示す説明図。
【図9】2つの領域分割結果SR1,SR2の統合結果SRXを示す説明図。
【図10】第2実施例におけるプリント基板PCBの表面領域の配置を取得する手順を示すフローチャート。
【図11】第1の画像IM1を第2の画像領域分割結果SR2によりマスクする様子を示す説明図。
【図12】マスクされた第1の画像の領域分割結果SR1aから表面領域配置SRXaを取得する様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0058】
100…プリント基板検査装置
200…照明部
210…光源
220…光源
222…半透鏡
300…撮像部
400…コンピュータ
500…外部記憶装置
610…代表色設定部
620…画像取得部
630…領域分割部
640…表面領域配置取得部
PCB…プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表面領域を有する物体を撮影した画像から、前記物体上での前記複数の表面領域の配置を取得する方法であって、
(a)互いに異なる複数の照明条件の下で、前記物体の複数の画像を取得する工程と、
(b)前記複数の画像をそれぞれ領域分割することにより、前記物体上での前記複数の表面領域の配置とは異なる複数の画像領域配置を取得する工程と、
(c)前記複数の画像領域配置に基づいて、前記複数の表面領域の配置を取得する工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記工程(a)は、
第1の照明条件の下で前記物体を撮影することにより、前記複数の表面領域のうちの第1の表面領域の画像領域を領域分割処理により再現し得る第1の画像を取得する工程と、
前記第1の照明条件とは異なる第2の照明条件の下で前記物体を撮影することにより、前記複数の表面領域のうち前記第1の表面領域とは異なる第2の表面領域の画像領域を領域分割処理により再現し得る第2の画像を取得する工程と、
を含み、
前記第2の表面領域は、前記第1の画像を領域分割した場合に2種以上の画像領域に分割される領域であって、
前記工程(b)は、
(b1)前記第1の画像の少なくとも一部を領域分割することにより、前記第1の表面領域を含む表面領域の画像領域の配置を取得する工程と、
(b2)前記第2の画像を領域分割することにより、前記第2の表面領域を含む表面領域の画像領域の配置を取得する工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記工程(b1)は、
前記工程(b2)における前記第2の画像の領域分割により取得された前記第2の表面領域に対応する画像マスクにより前記第1の画像をマスクする工程と、
前記第1の画像のうち、前記画像マスクによりマスクされなかった部分を領域分割する工程を含む、方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の方法であって、
前記第1の照明条件は斜光照明であり、
前記第2の照明条件は落射照明である、方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の方法であって、
前記第1の表面領域は金属光沢を有さず、
前記第2の表面領域は金属光沢を有する、方法。
【請求項6】
複数の表面領域を有する物体を撮影した画像から、前記物体上での前記複数の表面領域の配置を取得する装置であって、
互いに異なる複数の照明条件の下で、前記物体の複数の画像を取得する画像取得部と、
前記複数の画像をそれぞれ領域分割することにより、前記物体上での前記複数の表面領域の配置とは異なり、互いに異なる複数の画像領域配置を取得する画像領域取得部と、
前記複数の画像領域配置に基づいて、前記複数の表面領域の配置を取得する表面領域配置取得部と、
を備える、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−30106(P2006−30106A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212537(P2004−212537)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】