説明

画像処理装置

【課題】利用者の認証に対する煩わしい操作を不要とする。
【解決手段】操作のための画面を表示するとともに、画面上の物体を検出する機能を有する操作部4は、画面を表示する表示部6と、画面上の物体の画像を検出する読取部7とを有する。読取部7は、操作する利用者の手が指した箇所を検出し、この箇所に表示されている内容にしたがった指示を制御部5に入力するとともに、操作する利用者の手の画像を利用者情報として制御部5に入力する。制御部5の認証部8は、利用者情報に基づいて利用者の認証を行う。制御部5は、利用者を認証したとき、その利用者による画像処理装置の利用を許可する。認証できないとき、利用を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の認証を行って、画像の処理を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置では、不正使用による機密情報の漏洩を防止するために、利用者の認証を行う。特許文献1にも記載されているように、利用者の認証は利用開始前に行い、認証後に画像処理装置の利用が許可されるのが一般的である。この認証は、入力された利用者情報に基づいて行われる。利用者情報の入力は、パスワードの入力あるいは指紋の読み取りといったように、通常の操作とは別の特別な操作によって行われる。
【0003】
また、認証された利用者が画像処理装置を使用した後、ログアウトのための特別な操作が必要となる。利用者の認証により、部門単位の課金が行われたり、セキュリティ設定によるアクセス制限、送信制限等の解除が行われる。利用者が画像処理装置から離れたとき、ログアウトしていないと、次の利用者はログオンした状態の画像処理装置を利用することが可能となる。そのため、使用していないにもかかわらず課金される場合や、画像処理装置に保存されている機密情報が持ち出されるおそれがある。
【特許文献1】特開2006−13627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、利用者認証のために、通常の操作以外の特別な操作が必要であり、利用者にとって煩わしい。また、ログアウトするときにも、特別な操作をしなければならないが、この操作をし忘れるおそれがあり、セキュリティ上問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、利用者の認証に対する煩わしい操作を不要とした画像処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、操作のための画面を表示するとともに、画面上の物体を検出する機能を有する操作部と、操作部からの入力に応じて画像の処理を行う制御部とを備え、操作部は、利用者が画面を操作しているときに利用者から利用者情報を検出し、制御部は、利用者情報に基づいて利用者の認証を行うものである。
【0007】
利用者が画面を操作している間に、操作部は画面上にある利用者の手の一部を検出する。このとき検出した画像が利用者情報とされる。利用者情報は利用者に固有の情報である。この利用者情報を用いることにより、制御部は、操作中に利用者を特定でき、利用者を認証可能となる。利用者にとっては、通常の操作をしているだけであり、認証のための操作をしなくてよく、煩わしさがない。
【0008】
操作部は、画面に操作のための表示を行う表示部と、画面上の物体の画像を検出する読取部とを有し、ディスプレイおよびスキャナの機能を有するものである。操作部は、利用者の手が指した箇所を検出し、この箇所に表示されている内容にしたがった指示を制御部に入力するとともに、操作する利用者の手の画像を利用者情報として制御部に入力する。
【0009】
制御部は、利用者が操作するたびに認証を行う。1つのジョブの処理を設定するには、複数回の操作が必要とされる。そのため、複数回の認証が行われる。
【0010】
制御部は、入力された利用者情報に基づいて利用者が代わったことを検知したとき、代わった利用者に応じて、利用の許可あるいは禁止を決める。利用者が操作するたびに、操作部は、利用者情報を検出する。制御部は、異なった利用者情報が入力されたとき、利用者が代わったと判断する。このとき、制御部は、代わった利用者が認証できるかできないかを判断し、認証できるときは利用を許可し、認証できないときは利用を禁止する。なお、代わった利用者を認証できる場合であっても、利用を禁止してもよい。
【0011】
制御部は、利用者の認証をジョブ単位で行う。そのため、制御部は、ジョブの終了後にログアウトを行う。1つのジョブの終了後、次のジョブが行われるとき、新たに利用者の認証が行われる。他の利用者が前の利用者の認証を利用して、ジョブを実行させることを防げる。
【0012】
制御部は、最後の操作から所定時間経過したとき、操作部からの入力をキャンセルする。なお、制御部は、最後の操作から所定時間内にスタートキーが操作されたとき、処理を実行する。操作している利用者が画像処理装置から離れた場合、最後の操作から所定時間経過するといった状況が発生する。この場合、入力がキャンセルされることにより、これまでの利用者の認証は無効となる。これまでの認証に基づいて他の利用者が画像処理装置を利用するといったことを防げる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、利用者が画面を操作しているときに、利用者情報を検出して、認証を行うので、利用者は認証のための操作を意識することなく、画像処理装置を利用することができる。また、ジョブが終了すれば、自動的にログアウトするので、利用者がログアウトの操作を忘れてしまったときに起こる機密情報の漏洩の問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態の画像処理装置を図1に示す。本画像処理装置は、コピー、プリント、ファクシミリ通信、ドキュメントファイリングといった処理を行う複合機であり、原稿の画像を読み取る画像読取部1と、読み取って入力された画像に所定の画像処理を施す画像処理部2と、記録シートに画像を印刷する印刷部3と、利用者が操作して、処理の指示を行う操作部4と、画像に対する処理の実行を制御する制御部5とを備えている。なお、画像処理装置は、ネットワークに接続され、他の画像処理装置やパソコン等の情報処理装置といった外部装置と通信を行う。また、電話回線にも接続され、ファクシミリ通信を行う。
【0015】
操作部4は、ディスプレイとスキャナとを一体化したインプットディスプレイとされ、画面に操作のための表示を行う表示部6と、画面上の物体の画像を検出する読取部7とを有している。表示部6には、液晶ディスプレイが用いられる。読取部7は、画面上の物体に光を照射し、その反射光を光センサで検出して、物体の画像を読み取る。画面上の物体は、画面に接触している物体だけでなく、画面から少し離れた上方にある物体も含む。すなわち、読取部7は、画面の近くにある物体の画像を検出できる。なお、インプットディスプレイの詳細な説明は、例えば特開2004−153327号公報、特開2006−167039号公報に記載されている。
【0016】
操作部4の画面には、図2に示すように、表示部6により、各種の設定や操作指示を行うための操作キーが表示される。利用者が画面の操作キーを手でタッチすると、読取部7は、利用者の手の画像を検出する。画面に触れている指の画像から、利用者が指した箇所を検出する。そして、読取部7は、この箇所に対応する操作キーの内容を認識して、制御部5にこの内容にしたがった指令を入力する。このとき、読取部7は、検出した指の画像から利用者の指紋情報を抽出し、指紋情報を利用者情報として制御部5に入力する。
【0017】
制御部5は、利用者情報に基づいて利用者を認証する認証部8を有している。認証部8は、操作部4から入力された利用者情報を予め登録されている利用者情報と照合する。そして、特定の利用者であるかを判断して、利用者の認証を行う。特定の利用者は予め登録されている利用者である。認証部8は、2つの利用者情報が一致したとき、特定の利用者であると判断する。利用者情報が一致しないとき、特定の利用者でないと判断する。
【0018】
なお、登録された利用者情報は、特定の利用者の人差し指あるいは中指の指紋情報とされ、不揮発性メモリあるいはハードディスク装置といった記憶部に記憶される。また、特定の利用者に対するセキュリティレベルも登録されている。セキュリティレベルが高いほど、処理に対する制限が少なくなり、セキュリティレベルが低いほど、処理に対する制限が厳しくなる。最も高いセキュリティレベルでは、制限なしに各処理を行える。
【0019】
制御部5は、利用者による画像処理装置の利用を許可するか禁止するかを決める。特定の利用者であると認証されると、利用を許可し、特定の利用者であることが認証されないと、利用を禁止する。
【0020】
操作部4は、利用者が操作するたびに利用者の手から利用者情報を検出する。認証部8は、操作部4から利用者情報が入力されるたびに認証を行う。画面のスタートキーが操作されるまで、繰り返し認証が行われる。ここで、利用者が代わることによって、入力された利用者情報がすでに認証されている利用者の利用者情報と一致しなくなる。制御部5は、利用者が代わったことを検知したとき、代わった利用者に応じて、利用の許可あるいは禁止を決める
そして、制御部5は、ジョブ単位で利用者の認証を行う。ジョブが終了すると、制御部5はログアウトする。利用者が特別の操作をしなくても、自動的にログアウトされる。
【0021】
本画像処理装置における利用者の認証の手順を図3にしたがって説明する。1つのジョブが行われるとき、まず利用者は操作部4の画面の操作キーを指でタッチして、所望の指示を入力する(S1)。このとき、読取部7は、指の画像を読み取り、画像から指紋情報を取得する(S2)。読取部7は、指紋情報を利用者情報として制御部5に入力する。
【0022】
上記の操作が行われたとき、制御部5は、最後の操作から所定時間、例えば30秒経過したかをチェックする(S3)。経過していないとき、認証部8は、入力された利用者情報に基づき、利用者の特定を行う(S4)。制御部5は、利用を許可するか禁止するかを決める(S5)。
【0023】
特定の利用者でないとき、制御部5は、利用を禁止する。これにより、利用者の操作が受け付けられなくなる。一定時間経過したとき、制御部5は、操作を受け付け可能とする。
【0024】
また、クリアキーが操作されると、制御部5は、操作を受け付ける。利用者は再度操作を行える。すなわち、読取部7において、読取エラーが発生すると、正しく利用者情報を検出できない。このような場合、クリアキーの操作により、すぐに操作可能な状態にすることができる。
【0025】
特定の利用者であるとき、制御部5は、利用を許可する。制御部5は、スタートキーが操作されたかを確認する(S6)。操作が終了していないとき、利用者はスタートキーを操作せず、操作を続ける。利用者が操作するたびに、読取部7は指紋情報を取得し、認証部8は利用者の認証を行う。同じ利用者が操作している場合、当初の利用者が毎回特定される。
【0026】
その後、スタートキーが操作されたとき、制御部5は、操作によって設定された処理を実行する(S7)。このとき、特定された利用者のセキュリティレベルに応じて、コピー、ファクシミリ送信、データ送信、記憶されている画像の読み出し等の画像の出力が制限される。
【0027】
すべての処理の完了により、ジョブが終了する。制御部5は、自動的にログアウトする。新しいジョブを行う際には、改めて利用者の認証が行われる。このように、利用者が通常の操作を行うことにより、自動的に利用者の認証が行われるとともにログアウトも行われる。そのため、利用者の認証のための特別な操作が不要となり、操作性の向上を図れる。
【0028】
操作の途中で異なる指紋情報が検出されたとき、認証部8は、すでに認証した利用者の指紋情報と一致しないことを検知すると、このジョブに対する特定の利用者でないと判断する。制御部5は、即座に利用を禁止する。これ以後、利用者の操作は受け付けられなくなる。このような状況は、利用者が途中で代わった場合に発生する。すなわち、利用者が操作の途中に画像処理装置から離れた後、他の利用者が操作した場合である。他の利用者の利用者情報は認証された利用者の利用者情報とは異なるので、この利用者が認証されることはない。他の利用者は、画像処理装置を利用することができない。
【0029】
したがって、操作が終了するまで複数回認証することにより、途中で利用者が代わるという異常な状況に対処できる。これによって、不正使用を防止でき、セキュリティ性を高めることができる。
【0030】
なお、途中で代わった他の利用者が特定の利用者である場合、上記のように、利用を禁止するのではなく、利用を許可してもよい。すなわち、入力された指紋情報は今までの指紋情報とは異なるが、登録されている指紋情報である。代わった利用者も特定の利用者であるので、認証部8は、この利用者を認証して、利用を許可する。そして、制御部5は、処理を実行する。この場合、制御部5は、後で認証された利用者のセキュリティレベルに応じて、画像の出力を制限する。あるいは、特定された複数の利用者のセキュリティレベルのうち、最も低いセキュリティレベルに応じて、画像の出力を制限する。
【0031】
また、操作の途中、最後の操作から所定時間経過しても、新たな操作がないとき、制御部5は、操作部4からの入力をキャンセルする。すなわち、操作によって設定された内容をクリアする(S8)。利用者が画像処理装置から離れた場合、このような状況が発生する。これによって、次の利用者が無断で利用することを防止でき、機密情報の漏洩を防げる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。利用者情報として、利用者の指紋の代わりに、指の静脈情報を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の画像処理装置の概略構成を示すブロック図
【図2】インプットディスプレイに表示される操作のための画面を示す図
【図3】利用者の認証のフローチャート
【符号の説明】
【0034】
1 画像読取部
2 画像処理部
3 印刷部
4 操作部
5 制御部
6 表示部
7 読取部
8 認証部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作のための画面を表示するとともに、画面上の物体を検出する機能を有する操作部と、操作部からの入力に応じて画像の処理を行う制御部とを備え、操作部は、利用者が画面を操作しているときに利用者から利用者情報を検出し、制御部は、利用者情報に基づいて利用者の認証を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
操作部は、画面に操作のための表示を行う表示部と、画面上の物体の画像を検出する読取部とを有し、操作部は、利用者の手が指した箇所を検出し、この箇所に表示されている内容にしたがった指示を制御部に入力するとともに、操作する利用者の手の画像を利用者情報として制御部に入力することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
制御部は、利用者が操作するたびに認証を行うことを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
制御部は、入力された利用者情報に基づいて利用者が代わったことを検知したとき、代わった利用者に応じて、利用の許可あるいは禁止を決めることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
制御部は、利用者の認証をジョブ単位で行うことを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
制御部は、ジョブの終了後にログアウトを行うことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
制御部は、最後の操作から所定時間経過したとき、操作部からの入力をキャンセルすることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項8】
制御部は、最後の操作から所定時間内にスタートキーが操作されたとき、処理を実行することを特徴とする請求項7記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−10542(P2009−10542A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168319(P2007−168319)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】