説明

画像形成装置、および現像剤の補給方法。

【課題】現像装置の帯電能力を超えるほどの大量のトナーが一度に補給されることを抑制して、濃度ムラまたはトナー飛散などの好ましくない現象を抑制する。
【解決手段】画像形成装置は、形成される画像についての印字比率に基づいて、画像を形成する際に消費される現像剤の消費量を推定する推定手段と、画像ごとに推定された消費量を積算する積算手段とを含む。また、本装置は、ベタ画像を形成するときの現像剤の消費量である最大消費量以下に設定された閾値を、積算された消費量が超えたか否かを補給時期ごとに判定する判定手段を含む。とりわけ、本装置は、積算された消費量が閾値を超えると、閾値に相当する一定量の現像剤を現像容器へ補給する補給手段と、補給された現像剤によって現像容器内の現像剤に帯電不足が生じないよう閾値を調整する調整手段とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤を用いて画像を形成する画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーなどの現像剤を使用する画像形成装置では、画像形成により消費された分だけ現像器へトナーを補給する必要がある。また、形成される画像の品質を維持するには、現像器内のトナー量が略一定となるようにトナーを補給する必要もある。
【0003】
特許文献1や特許文献2によれば、ビデオカウントを利用したトナー補給方式が提案されている。この方式によれば、画素ごとにビデオ信号の出力レベルを積算することで画像の印字比率が求められ、印字比率に応じた量のトナーが補給される。
【特許文献1】特開平5−88554号公報
【特許文献2】特開平8−146736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のトナー補給方式では、ベタ画像などの高い印字比率の画像が形成されたときなどに以下のような問題が生じうる。すなわち、高い印字比率の画像が形成されると大量にトナーが消費されるため、それに伴って補給されるトナー量も多くなる。現像容器内へ大量の新しいトナーが補給されると、帯電作業が追いつかなくなり、帯電不足が発生する。帯電不足が発生すれば、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーが現像されてしまい、地汚れのように紙上に現れる画像不良、画像の濃度ムラまたはトナー飛散などの好ましくない現象が発生しうる。このような問題は、現像装置の使用が進んで各パーツが劣化してきたり、高温高湿環境によりトナーの帯電性が低下したりしているときに、とりわけ顕在化しやすい。
【0005】
なお、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーが現像されてしまい、地汚れのように紙上に現れる画像不良を抑制するために、一回あたりの補給量を少なくする方法も考えられる。しかしながらこの方法では、現像容器内の現像剤が急激に減少し、白抜け画像が形成されてしまうおそれがある。また、現像剤の急激な減少を防ぐために、現像剤の補給作業を頻繁に実行すれば、画像形成を実行できないダウンタイムが増加してしまい好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、現像装置の帯電能力を超えるほどの大量のトナーが一度に補給されることを抑制することを目的とする。また。本発明は、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーが現像されてしまい、地汚れのように紙上に現れる画像不良、画像の濃度ムラまたはトナー飛散などの好ましくない現象を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、現像剤を使用して画像を形成する画像形成装置において実現される。本装置は、形成される画像の印字比率に基づいて、画像を形成する際に消費される現像剤の消費量を推定する推定手段と、推定された前記消費量を積算する積算手段とを含む。さらに、本装置は、印字比率が最大となる場合の現像剤の消費量である最大消費量以下に設定された閾値を、積算された消費量が超えたか否かを判定する判定手段を備える。とりわけ、本装置は、積算された前記消費量が前記閾値を超えると、閾値に相当する一定量の現像剤を現像容器へ補給する補給手段と、閾値を調整する調整手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一度に補給される現像剤の量は、ベタ画像を形成するときの現像剤の消費量である最大消費量以下となるでだけでなく、補給された現像剤によって現像容器内の現像剤に帯電不足が生じないように調整される。そのため、現像装置の帯電能力を超えるほどの大量のトナーが一度に補給されることが抑制される。これにより、画像不良、画像の濃度ムラまたはトナー飛散などの好ましくない現象が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の一実施形態を示す。もちろん以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0010】
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。像担持体(以下、感光ドラムと称す。)1は、ドラム状の電子写真感光体である。帯電装置2は、感光ドラム1の表面を一様に帯電する。露光装置3は、画像情報に対応したレーザ光を感光ドラム1の表面に照射する。これにより、感光ドラム1上に静電潜像が形成される。
【0011】
現像装置4は、現像剤を補給する現像剤補給装置(以下、トナーホッパーと称す。)5と、現像剤の消費量に応じてトナーホッパー5からの現像剤の補給量を制御する制御ユニット10を備える。制御ユニット10としては、例えば、CPUや専用の電気回路を用いることができる。制御ユニット10は、画像形成装置本体に設けられていてもよいし、現像装置4に設けられていてもよい。また、制御ユニット10の各機能が、画像形成装置本体と現像装置4とに分離されて設けられていてもよい。
【0012】
本実施形態では、便宜上、感光ドラム1の帯電電荷を負極性とする。画像情報に対応した静電潜像は、露光装置3からのレーザ光による露光によって、負極性の帯電電荷が減衰した部分に形成される。静電潜像は、感光ドラム1の回転に伴って、現像装置4が供給する現像剤(例:トナー)により可視化されてトナー像となる。なお、本実施形態の現像方式としては、反転現像方式が採用されている。そのため、帯電電荷と同極性(負極性)のトナーが、感光ドラム1上で帯電電荷が減衰した部分(画像部)に付着する。
【0013】
一方、不図示のカセットに収納された記録材Pは、給紙ローラ9によって感光ドラム1と、転写ローラ6とが当接する転写領域へと搬送される。感光ドラム1上のトナー像と記録材Pとが転写領域に至ると、転写領域に形成される転写電界により、トナー像が記録材P上に転写される。記録材Pに担持された未定着トナー像は、定着装置8の備えるヒートローラ8aによる加熱、および、加圧ローラ8bによる加圧を受けて、記録材P上に永久画像として定着される。トナー像の転写を終了した感光ドラム1は、ブレード状のクリーニング装置7によって、残留トナーが除去される。
【0014】
[現像装置の概要]
図2は、本実施形態に係る現像装置の概略構成を示す断面図である。現像装置4は、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。この構成によれば、現像装置の交換を容易に行うことができる。なお、現像装置4と感光ドラム1などを一体化して、プロセスカートリッジとしてもよい。
【0015】
現像ローラ11は、トナーを担持搬送し、感光ドラム1上の静電潜像を現像する現像剤担持体である。なお、トナーは、現像ローラ11と供給ローラ13との摺擦により帯電される。ブレード12は、供給ローラ13により供給されたトナーを規制して感光ドラム1上にトナーの層を形成する現像剤規制ユニットである。供給ローラ13は、現像ローラ11へトナーを供給する現像剤供給ユニットである。なお、本実施形態で、供給ローラ13は、現像剤の供給ユニット及び回収ユニットとして機能するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、現像剤供給ユニットと現像剤回収ユニットとが、別個に設けられてもよい。撹拌パドル14は、トナーホッパー5から補給されたトナーと現像容器16内のトナーとを混合するために回動する現像剤撹拌ユニットである。
【0016】
トナー残量検知センサ15は、現像容器16内のトナーの残量を検知する現像剤残量検知ユニットである。トナー残量検知センサ15は、発光素子からなる発光部15a、光が透過する窓部15b、受光素子からなる受光部15cを有する。そして、撹拌パドル14の回転に伴ってトナーの剤面が変化する際に、撹拌パドル14が一回転する時間に対する光の透過時間の割合を測定し、撹拌領域における剤面の高さ情報を得ている。それゆえ、トナー残量検知センサ15は、剤面の高さを検知するセンサであると理解されてもよい。
【0017】
トナー残量検知センサ15は、予め定められた第1のレベルεから、第2のレベルδまでを検出可能範囲としている。この検出可能範囲がトナー面の制御レベルに対応している。第1のレベルεは、形成される画像の濃度が薄くなりすぎること原因で発生する画質の劣化(例:濃度ムラ)が生じない程度のレベルに設定されることが望ましい。また、第2のレベルδは、残量の過多が原因で発生する画質の劣化が生じない程度のレベルに設定されることが望ましい。ここでいう劣化とは、例えば、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーが現像されてしまい、地汚れのように紙上に現れる画像不良(カブリとも言う)、トナーぼた落ちなどをいう。各レベルは、画像形成装置ごとに経験的に決定されることになろう。
【0018】
現像容器16は、第1の容器であるトナーホッパー5から供給されたトナーを収納する第2の容器である。トナーホッパー5内には、トナーホッパー5から現像容器16にトナーを補給するための補給ローラ53と、トナーホッパー5内のトナーをほぐすための撹拌部材54とが配置されている。そして、制御ユニット10からの補給指令により、所定の駆動時間当たり一定量のトナーを現像装置4に補給できるように構成されている。
【0019】
現像装置4には、不揮発性の記憶装置40が設けられている。現像装置4が画像形成装置から取り外されると、記憶装置40に対する画像形成装置本体からの電力の供給が停止されるが、記憶装置40は、引き続き記憶内容を保持することができる。記憶装置40には、後述する各種の情報が保持される。記憶装置40は、非接触式のメモリタグ(ICタグ、RFIDタグ)などであってもよい。
【0020】
[制御ユニットの概要]
図3は、実施形態に係る制御ユニットの一例を示す図である。画像信号処理回路30は、静電潜像の元となる画像データを画像信号に変換する回路である。パルス幅変調回路31は、画像信号に応じて、画素ごとのレベルに対応した幅(時間長)のレーザ駆動パルスを発生する。レーザ駆動パルスは、露光装置3とANDゲート33に供給される。ANDゲート33の他端には、クロックパルス発振器32が接続されている。
【0021】
カウンタ34は、画像の印字比率に対応するビデオ信号をカウントする係数回路である。CPU35は、カウントされた値に応じて画像の印字比率を決定し、さらに、印字比率に基づいて、現像容器16に収納されている現像剤の消費量を推定する。CPU35は、推定された消費量に応じてトナーホッパー5における現像剤の補給量を制御する。
【0022】
とりわけ、CPU35は、現像剤が消費されたからといってすぐに現像剤を補給することはなく、消費量の積算値が閾値を超えると、閾値に相当する分の現像剤を補給する。CPU35は、ベタ画像を形成するときの現像剤の消費量である最大消費量よりも小さく、かつ、補給された現像剤によって現像容器内の現像剤に帯電不足が生じないように、閾値を調整する。
【0023】
図4は、実施形態に係るビデオカウント方式の原理を説明するための模式図である。図4(a)に示すように、パルス幅変調回路31は、相対的に高濃度の画素画像信号に対して、相対的に幅の広いレーザ駆動パルスWを生成する。また、パルス幅変調回路31は、相対的に低濃度の画素画像信号に対して、相対的に幅の狭いレーザ駆動パルスSを生成する。さらに、パルス幅変調回路31は、相対的に中濃度の画素画像信号に対して、中間の幅のレーザ駆動バルスIを生成する。
【0024】
パルス幅変調回路31から出力されたレーザ駆動パルスは露光装置3に供給される。露光装置3は、パルス幅に対応する時間だけ半導体レーザを発光させる。したがって、半導体レーザは高濃度画素に対してはより長い時間にわたり駆動され、低濃度画素に対してはより短い時間にわたり駆動される。そのため、感光ドラム1は、高濃度画素に対しては主走査方向においてより長い範囲が露光され、低濃度画素に対しては主走査方向においてより短い範囲が露光される。つまり、画素の濃度に対応して静電潜像のドットサイズが異なることになる。したがって、高濃度画素に対するトナー消費量は低濃度画素に対するトナー消費量よりも多くなる。なお、図4(d)は、低、中、高濃度画素の静電潜像の形状L、M、Hを模式的にそれぞれ示した。
【0025】
図4(b)は、ANDゲート33の他端に入力されるクロックパルスが示されている。クロックパルスは、クロックパルス発振器32により生成されたものである。図4(c)が示すように、ANDゲート33からは、レーザ駆動パルスS、I、Wの各々のパルス幅に対応した数のクロックパルス、即ち、各画素の濃度に対応した数のクロックパルスが出力される。クロックパルス数は、画像ごとにカウンタ34によって積算される。CPU35は、カウンタ34の積算値(ビデオカウント値またはピクセルカウント数)に応じて、画像印字比率を決定する。さらに、CPU35は、画像印字比率に基づいてトナーの消費量を算出する。なお、ビデオカウント値は、トナー像を形成するために現像装置4で消費されるトナーの消費量にほぼ対応しているため、CPU35は、ビデオカウント値に基づいてトナーの消費量を直接的に算出してもよい。この場合は、印字比率を決定する手間を省けるだろう。
【0026】
図5は、実施形態に係るCPUによって実現される機能のブロック図である。消費量推定部501は、カウンタ34のカウント値(印字比率に関連する。)に基づいて画像を形成する際に消費される現像剤の消費量を推定するユニットである。積算部502は、画像ごとに推定された各消費量を積算するユニットである。判定部503は、現像剤の補給時期ごとに、消費量の積算値が所定の閾値を超えたか否かを判定するユニットである。調整部504は、ベタ画像を形成するときの現像剤の消費量である最大消費量以下となり、かつ、補給された現像剤によって現像容器内の現像剤に帯電不足が生じないように、閾値を調整するユニットである。
【0027】
調整部504は、補給された各現像剤が現像容器内に滞留している時間が長くなればなるほど閾値を小さくし、短くなればなるほど閾値を大きくする閾値決定部505を備えていてもよい。また、閾値決定部505は、現像剤を帯電させるための現像容器内の帯電能力を推定するユニットと、現像容器に対して一度に補給される現像剤の補給量が帯電能力を超過しないよう、閾値を決定するユニットを備えてもよい。
【0028】
[トナー補給制御について]
まず、本実施形態で用いたパラメータの一覧を以下に示す。
【0029】
A :潜像担持体上に担持された単位面積あたりのトナー載り量(例:0.6mg/cm2)
S :記録剤の面積(例:A4紙サイズで21.0×29.7cm2)
R :ビデオカウントより算出される画像印字比率(0〜1.0)
t1 :記録剤1枚当りのトナー消費量(t1=A×S×R)
t1max :印字比率Rが最大となるときのトナー消費量(例:374mg)
t2 :トナー消費量の積算値
t2’ :メモリに格納される積算値t2
t0 :初期の補給閾値
α :トナー補給量の補正係数
t3 :補給量(補正された補給閾値(t3=t0×α))
Pa :総印刷枚数(CPUまたはカウンタによりカウントされる。)
β :新トナー比率。
【0030】
ここで、トナーの載り量Aや記録剤の面積Sは、使用される記録剤のサイズは、トナーパッチを検出することによる濃度調整によって随時修正されるが、本実施形態では影響因子を少なくするために固定値としている。
【0031】
本実施形態では、閾値決定部505が、過去のある時点から現時点までに補給された現像剤のうち、消費されずに現像容器内に滞留している現像剤の滞留量と、現像容器に存在する現像剤の総量との比率(新トナー比率β)を算出する。
【0032】
新トナー比率βは、帯電不足の発生確率に関連している。すなわち、現像容器に存在する現像剤の総量に対して、過去のある時点から現時点までに補給された現像剤(新トナー)の占める割合が相対的に高ければ、帯電不足は発生しにくい。一方で、現像装置の使用開始時間から過去のある時点までに補給された旧トナーの占める割合が相対的に高ければ、帯電不足が発生しやすい。よって、新トナー比率に応じて、補給量を制限すれば、帯電不足の発生を抑制できると考えられる。
【0033】
閾値決定部505は、算出された比率βに基づいて補正係数αを決定する。そして、閾値決定部505は、決定された補正係数αに基づいて閾値t0を補正して、補給量(補給閾値)t3を決定する。そして、消費量の積算値t2が閾値t3を超えると、閾値に相当するだけのトナーを補給する。消費量の積算値t2が閾値t3以下であれば、補給は実行されない。すなわち、新トナーの割合が高ければ、一度に補給される量t3も多くなる。一度に補給されるトナー量の最大値は、t1maxである。一方、新トナーの割合が低ければ、一度に補給される量t3は少なくなる。
【0034】
新トナー比率βを考慮するために、本実施形態では、所定の印刷枚数(例:100枚)ごとに区間を定義する。そして、CPU35が、各区間ごとに、トナーの消費量と補給量とに基づいてトナーの滞留量を監視するものとする。
【0035】
図6は、実施形態に係るトナー補給方法を示すフローチャートである。画像形成装置本体の電源がONにされる(S1)と、CPU35は、所定の立ち上げシーケンスを実行し、スタンバイ状態(S2)に移行する。スタンバイ状態において、プリント信号を受信すると、CPU35は、カートリッジに装着された記憶装置40から印刷枚数Paとトナーの積算値t2’を読みだす(S3)。
【0036】
S4において、CPU35は、過去の所定区間から現在の区間までにおいて補給された各現像剤が、現時点でどの程度残留しているかを表す滞留量(推定残量)を記憶装置40から読みだす。過去の所定区間から現在の区間とは、例えば、現在の印刷枚数から3000枚前までに相当する各区間をいう。
【0037】
S5において、CPU35は、読み出した滞留量の和を、現像容器に収納されているトナーの総量で除算することで、新トナー比率βを算出する。算出された新トナー比率βは、記憶装置40に格納されてもよい。
【0038】
S6において、CPU35は、新トナー比率βに基づいて補正係数αを決定する。例えば、補正係数αは、新トナーの占める割合が高ければ大きな値となり、新トナーの占める割合が低ければ小さな値となる。なお、新トナー比率βと補正係数αとの対応関係をテーブルにより保持してもよい。
【0039】
図7は、実施形態に係る新トナー比率βと補正係数αとの対応関係の一例を示す図である。新トナー比率βと補正係数αとが概ね反比例の関係にあることを理解できよう。なお、図7に示された各数値は単なる一例にすぎず、本発明が意図する効果が奏される限り、各数値はどのような値となってもよい。
【0040】
S7において、CPU35は、初期の補給閾値t0に対して補正係数αを乗算して、補正された閾値(t3=t0×α)を算出する。初期の補給閾値t0は、例えば、t1max以下の値に設定される。補正された閾値t3が、一回で補給されるトナー量に相当することは前述した通りである。
【0041】
その後、CPU35は、プリント動作を開始し(S8)、感光ドラム、帯電装置、露光装置などを順次起動させる。各装置の準備が整うと、CPU35は、露光装置3を作動させて潜像を形成させる(S9)。さらに、CPU35は、カウンタ34にビデオカウントを開始させる。CPU35は、潜像形成が終わると、露光装置3を停止させ(S10)、カウンタ34のビデオカウント値を取得する(S11)。
【0042】
CPU35は、ビデオカウント値を元にトナー消費量t1を算出し(S12)、消費量t1とこれまでの積算値t2’との和を新しい積算値t2とする(S13)。次いで、CPU35は、消費量の積算値t2が補給閾値t3を超えているか否かを判定する(S14)。積算値がt2が閾値t3超えていなければ、S17に進み、CPU35は、この時点での補給を禁止する。また、CPU35は、積算値t2をt2’として記憶装置40に格納する。なお、この際に、補給閾値t3が0に初期化されてもよい。
【0043】
一方、積算値t2が閾値t3を超えていれば、S15に進み、CPU35は、閾値t3に相当する量のトナーをトナーホッパー5に補給させる(S15)。また、CPU35は、積算値t2から補給量t3を減算し、減算結果t2’を記憶装置40に記憶する(S16)。なお、CPU35は、補給量t3に相当するだけ、トナーホッパー5の補給モーターを回転させる。例えば、補給モーターが1回転すると、200mgのトナーが補給される。また、0.2回転であれば、40mgのトナーが補給されることになる。ちなみに、本実施形態においては、補正係数αが1であれば、補給量は400mgとなる。
【0044】
S18において、CPU35は、各区間の滞留量を再計算する。CPU35は、画像を形成するために消費された総消費量のうち各区間の滞留量に応じた分の消費量を各滞留量からそれぞれ減算する。
【0045】
新・滞留量=旧・滞留量−今回の総消費量t2×(旧・滞留量÷現像容器内のトナーの総量)
ここで、現像容器内のトナーの総量は、全区間の滞留量の和である。この式からわかるように、各区間における個別の消費量は滞留量に比例するものと仮定されている。この仮定は、便宜上のものであり、本発明の効果が奏される限り、他の仮定が用いられてもよい。
【0046】
なお、現在の区間においてトナーの補給が実行されたときは、算出された現在の区間の滞留量に補給量t3が加算される。CPU35は、算出された各区間の滞留量を記憶装置40に記憶する。
【0047】
そして、CPU35は、ジョブが終了したかどうかを判断する(S20)。まだ終了していなければ、S3に戻る。終了していれば、S21に進み、CPU35は、画像形成動作を終了する(S21)。
【0048】
以上説明したように本実施形態によれば、一度に補給される現像剤の量t3は、最大消費量t1max以下となるだけでなく、補給された現像剤によって現像容器内の現像剤に帯電不足が生じないように調整される。そのため、現像装置の帯電能力を超えるほどの大量のトナーが一度に補給されることが抑制される。これにより、濃度ムラまたはトナー飛散などの好ましくない現象が抑制される。
【0049】
とりわけ、本実施形態によれば、補給された各現像剤が現像容器内に滞留している時間が長くなればなるほど、閾値t3が小さくされ、短くなればなるほど閾値t3を大きくされる。これは、一般に、現像容器に滞留している時間が短ければ、帯電不足の問題が顕在化しにくいからである。
【0050】
例えば、CPU35は、帯電不足の発生が予測される場合、高印字比率の画像によって消費された現像剤の全てを一度に全て補給することはなく、一部を、その後の低印字比率の画像が印刷されるときに上乗せして補給することも可能となる。これにより、現像容器内のトナー量が極端に減少してしまうこともない。
【0051】
なお、本実施形態の画像形成装置を用いて、現像装置の寿命(使用限度)である4万枚の印字試験を行ったところ、トナーの混合不良によるかぶり、濃度ムラおよびトナー飛散は発生しなかった。すなわち、本実施形態によれば、現像装置の寿命末期においても補給されたトナーを均一に帯電することが可能となったといえる。これにより、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーが現像されてしまい、地汚れのように紙上に現れる画像不良や画像の濃度ムラやトナー飛散を抑制することが可能となったといえよう。
【0052】
また、本実施形態では、現像装置の寿命を判断する手段として印刷枚数を用いているが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、CPU35は、現像ローラ11や感光ドラム1の回転数、現像バイアスまたは帯電バイアスなどのバイアス印加時間などを積算して寿命を判断してもよい。
【0053】
また、補正係数αを決定する際に、本実施形態では、現在の印刷枚数から過去3000枚分に相当する複数の区間を考慮したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、現像容器16内のトナー量などに応じて、考慮すべき区間の数を変更してもよい。同様に、枚数も他の好適な値にしてもよい。
【0054】
また、補正係数αを決定する際に、必ずしもテーブルを用いる必要はない。例えば、CPU35は、新トナー比率βと補正係数αの関係式を用いることによって、補正係数αを算出してもよい。
【0055】
なお、本発明を2成分補給方式に応用することも可能ではあろうが、実質的には、1成分補給方式において、より有効と考えられる。2成分補給方式では、そもそも現像装置内に存在するトナー量が少ないので、補給すべきトナーは直ちに補給しないと、すぐに濃度低下を起こしたり、チャージアップしたりしてしまうことが予想される。一方、1成分補給方式であれば、高印字比率の画像形成時に現像容器内のトナー量が一時的に減少しても、少し遅れて補給することが許容される。それゆえ、本発明は、1成分補給方式の現像装置に用いることで、好ましい結果が得られよう。
【0056】
[実施形態2]
上述した実施形態では、新トナー比率という概念を導入して、トナーの劣化を推定するものであった。本実施形態では、現時点の総印刷枚数とトナー補給が実行された時点の総印刷枚数との差分が大きいほど、トナーが劣化しているものと考える。この差分が大きければ大きいほど、帯電不足が生じやすくなるからである。
【0057】
具体的に、本実施形態は、トナー劣化の尺度を表すパラメータγと各区間の滞留量とを用いて、上述した補正係数αを決定することに特徴がある。γは、時間的な経過も意味しているため、経過(劣化)係数と呼ぶことができよう。ここでは、説明の便宜上、経過係数γの単位を印刷枚数とする。なお、γは、上記差分が大きくなればなるほど、大きな値をとり、差分が小さくなればなるほど、小さな値をとる。
【0058】
図8は、実施形態に係る他のトナー補給方法を示すフローチャートである。なお、既に説明した個所には、同一の参照符号を付すことで説明を簡潔にする。図4と比較すると、ステップS5およびS6が、S5’およびS6’に変更されているので、これらのステップを中心に説明する。
【0059】
S5’において、CPU35は、現時点の総印刷枚数Pcと、トナーが補給された時点の総印刷枚数Paとの差分を算出し、この差分に応じて経過係数γを決定する。
【0060】
図9は、実施形態に係る経過係数γを決定するためのテーブルの一例を示す図である。当該テーブルも記憶装置40に格納されていてもよい。図からわかるように、現在の印刷枚数とトナーが補給された時点の枚数との差分に対する経過係数γがテーブルに格納されている。よって、CPU35は、算出した差分に対応する係数γをこのテーブルから取得できる。テーブルに代えて、同等の算出式が採用されてもよい。
【0061】
S6’において、CPU35は、各区間についての滞留量と経過係数γを次式に代入して補正係数αを算出する。
【0062】
補正係数α=1−(Σ各区間の滞留量×経過係数γ÷現像容器内におけるトナーの総量)
その後、実施形態1と同様にS7以降の各処理を実行する。
【0063】
以上説明したように本実施形態によれば、現像剤が補給された時刻の総印刷枚数から現在時刻における総印刷枚数の差分を算出し、算出された差分に応じて閾値を決定することで、実施形態1と同様の効果が奏される。とりわけ、トナーの劣化を表す経過(劣化)係数γを用いて、補正係数αを決定することに特徴がある。
【0064】
実施形態2の画像形成装置を用いて、現像装置4の寿命である4万枚の印字試験を行った。その結果、濃度ムラ、本来印字しない白部(未露光部)においてトナーが現像されてしまい、地汚れのように紙上に現れる画像不良は発生せず、良好な画像が得られることを確認できた。
【0065】
例えば、現在の印刷枚数が10000枚で、0枚から10000枚までの画像印字率が2%であった場合、α=0.67となった。同様に、現在の印刷枚数が10000枚で、0枚から10000枚までの画像印字率が10%であった場合、α=0.83となった。このことからも、画像印字率が高く、かつ、現像容器内の劣化トナーが少ない場合の方が、高画像印字率の画像を印刷したときのトナー量の復帰を早く行うことが可能となることがわかる。補正係数αが大きくなればなるほど、一度に多くのトナーが現像容器へ補給されるからである。
【0066】
なお、本実施形態においては、テーブル(図8)を用いて経過係数γを決定する例を説明したが、算術式を用いて経過係数γを決定してもよい。本実施形態の場合、例えば、
γ=(現在の印刷枚数 − トナーが補給された時点での印刷枚数)÷2000
とすると、好適な結果が得られた。なお、具体的な数値は例示にすぎず、画像形成装置ごとに好適な値を経験的に決定することが望ましい。
【0067】
[他の実施形態]
実施形態2では、トナーの劣化を印刷枚数に関連して推定していた。もちろん、他のパラメータを採用してもよい。例えば、CPU35は、タイマーを用いて、現像剤が補給された時刻から現在時刻までの時間差を算出する。そして、CPU35は、時間差に応じて閾値t3を決定してもよい。その際に、時間差を経過係数γに変換してもよい。この場合にも、実施形態2と同様の効果が奏されよう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る現像装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る制御ユニットの一例を示す図である。
【図4】実施形態に係るビデオカウント方式の原理を説明するための模式図である。
【図5】実施形態に係るCPUによって実現される機能のブロック図である。
【図6】実施形態に係るトナー補給方法を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る新トナー比率βと補正係数αとの対応関係の一例を示す図である。
【図8】実施形態に係る他のトナー補給方法を示すフローチャートである。
【図9】実施形態に係る経過係数γを決定するためのテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 感光ドラム
2 帯電手段
3 露光装置(レーザ照射手段)
4 現像装置
5 トナーホッパー
8 定着装置
11 現像ローラ
12 ブレード
13 供給ローラ
14 撹拌パドル
15 トナー残量検知手段
16 現像容器
30 画像処理回路
31 パルス幅変調回路
32 クロックパルス発振器
33 ゲート
34 カウンタ
40 記憶装置
53 補給ローラ
54 撹拌部材
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を使用して画像を形成する画像形成装置であって、
形成される画像の印字比率に基づいて、該画像を形成する際に消費される現像剤の消費量を推定する推定手段と、
推定された前記消費量を積算する積算手段と、
前記印字比率が最大となる場合の現像剤の消費量である最大消費量以下に設定された閾値を、積算された前記消費量が超えたか否かを判定する判定手段と、
積算された前記消費量が前記閾値を超えると、前記閾値に相当する一定量の現像剤を現像容器へ補給する補給手段と、
前記閾値を調整する調整手段と
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
補給された各現像剤が前記現像容器内に滞留している時間に応じて、前記閾値を設定する閾値設定手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記閾値設定手段は、
過去のある時点から現時点までに補給された現像剤のうち、消費されずに前記現像容器内に滞留している現像剤の滞留量と、該現像容器に存在する現像剤の総量との比率を算出する手段と、
算出された前記比率に基づいて前記閾値を補正するための補正係数を決定する手段と、
決定された前記補正係数に基づいて前記閾値を補正する手段と
を含むことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記閾値設定手段は、
最後に現像剤が補給された時点の総印刷枚数から現時点における総印刷枚数の差分を算出する手段と、
算出された前記差分に応じて前記閾値を決定する手段と
を含むことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジを有し、
前記プロセスカートリッジが、潜像を担持する像担持体と、
前記潜像を現像する現像装置と
を一体に構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記プロセスカートリッジは、前記消費量の積算値、前記現像容器内に存在する現像剤の量、または一定の画像形成枚数ごとに定義される区間ごとの現像剤の滞留量を記憶する不揮発性の記憶手段をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
現像剤の補給方法であって、
形成される画像についての印字比率に基づいて、該画像を形成する際に消費される現像剤の消費量を推定する推定工程と、
推定された前記消費量を積算する積算工程と、
前記印字比率が最大となる場合の現像剤の消費量である最大消費量以下に設定された閾値を、積算された前記消費量が超えたか否かを判定する判定工程と、
積算された前記消費量が前記閾値を超えると、前記閾値に相当する一定量の現像剤を現像容器へ補給する補給工程と、
前記閾値を調整する調整工程と
を含むことを特徴とする現像剤の補給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−293128(P2007−293128A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122527(P2006−122527)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】