説明

画像形成装置自走システム

【課題】 ユーザが自分のデスク等から画像形成装置を呼び出すことにより、近くまで移動してきた画像形成装置の操作パネルが当該ユーザに対向して方向付けられるようにした、画像形成装置自走システムを提供する。
【解決手段】 画像形成装置100と、上記画像形成装置と一体的に構成され、当該画像形成装置の移動先に配置された呼出し手段からの呼出し指令311および移動先位置情報312に基づいて、移動先付近まで画像形成装置を移動させる移動手段110と、上記移動先付近に画像形成装置を移動させたとき、当該移動先の呼出し手段からの移動先属性情報313に基づいて、上記画像形成処理を当該移動先に対向させて配置させる方向変更手段150と、を設けて、画像形成装置自走システム10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置が要求発生場所に対して移動して印刷等を実行するようにした画像形成装置自走システムに関し、特に移動先にて操作パネルをユーザに対向させ得るようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、プリンタに関する自走システムが開示されている。
即ち、特許文献1において、送受信装置により印刷データ及び移動先識別情報をユーザ側端末から受信して、地図情報を参照することにより移動先位置情報を取得し、複数の移動先を効率的に巡回できる移動順路を計画し、この計画に基づいて駆動手段により移動すると共に、上記印刷データの印刷出力を行なうようにした移動型プリンタが開示されている。
【0003】
このような構成の移動型プリンタによれば、ユーザはプリンタの在る場所まで出向く必要がなく、移動型プリンタ自体がユーザの場所まで移動して印刷出力を行なうことにより、ユーザの無駄な労力を省略することができる。さらに、当該移動型プリンタが移動途中に印刷作業を行なうが可能であるため、印刷効率が向上することになる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、プリンタに限定されていることから、プリンタとは異なり原稿を必要とする複写機については考慮されていない。
また、地図情報と移動先であるユーザ側端末識別情報との連携方法についても考慮されていないが、導入時には地図情報取得に関して外部との通信が必要であると予想される。
【0005】
これに対して、特許文献2には、通信手段により受信した移動指令に含まれる行先の位置情報と現在位置情報から、位置情報を二次元座標で表わすマップ情報に基づいて、スケジュールを更新して、この更新されたスケジュールに従って駆動手段により各行先に移動して、複写作業を行なう移動型複写機が開示されている。
【0006】
このような構成の移動型複写機によれば、ユーザの要求に応じて、移動型複写機がユーザの場所に移動し、そこで原稿からの複写作業を行なうので、ユーザは原稿を持って複写機の場所まで移動する必要がなくなる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された技術は、複写機に限定されていることから、プリンタについては考慮されていない。
また、移動の際に現在位置情報及び行先の位置情報として、二次元座標によるマップ情報を利用していることから、導入時にマップ情報の作成に時間がかかると共に、レイアウト変更等により、各ユーザまたはユーザ側端末の位置が変更になった場合には、二次元座標によるマップ情報を作り直す必要があり、運用上の負荷が管理者にかかってしまう。
さらに、移動型プリンタまたは複写機の移動指令、即ち呼出しをユーザ側端末のみから行なうことができる場合には、各ユーザ側端末を互いに接続するLANが導入されていないと、移動型プリンタまたは複写機の導入が困難である。
【特許文献1】特開2001−125646号
【特許文献2】特開2003−110779号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した各特許文献1〜2に記載された技術では、プリンタまたは複写機が移動先に移動されるだけであり、プリンタまたは複写機の操作パネルをユーザに対して正しく方向付けすることは全く考慮されておらず、移動先まで移動してきた画像形成装置をユーザが使用しようとしたとき、操作パネルが反対側を向いているという事態が発生することがあり、ユーザは画像形成装置の反対側まで回り込んで使用しなければならなかった。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、画像形成装置が所定の移動範囲を移動可能な画像形成装置自走システムにおいて、ユーザが自分のデスク等から画像形成装置を呼び出すことにより、近くまで移動してきた画像形成装置の操作パネルが当該ユーザに対向して方向付けられるようにした、画像形成装置自走システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明の請求項1記載の画像形成装置自走システムは、画像形成装置と一体的に構成され、当該画像形成装置の移動先に配置された呼出し手段からの呼出し要求及び移動先位置情報に基づいて、移動先付近まで画像形成装置を移動させる移動手段と、上記移動先付近に画像形成装置を移動させたとき、当該移動先の呼出し手段からの移動先属性情報に基づいて、上記画像形成処理を当該移動先に対向させて配置させる方向変更手段とを設けた構成としてある。
【0011】
画像形成装置自走システムをこのような構成とすると、上記画像形成装置に一体的に構成された移動手段が、移動先からの呼出し要求及び移動先位置情報に基づいて、移動先付近まで移動する。
これにより、ユーザは、手元に在る呼出し手段を操作して、上記移動手段に対して呼出し要求及び移動先位置情報を送出することにより、画像形成装置が移動手段によって移動先付近まで自動的に移動されることになる。
【0012】
そして、このように画像形成装置が上記移動先まで移動すると、移動中または移動後に、方向変更手段が、移動先属性情報に基づいて、画像形成装置の操作パネルが移動先のユーザに対向するように、画像形成装置の方向を変更する。
従って、ユーザが画像形成装置を利用したいとき、画像形成装置の設置場所まで出向く必要はなく、画像形成装置がユーザの居場所付近まで出向くと共に、その操作パネルがユーザに対向することになる。
これにより、ユーザがその場で画像形成装置の操作パネルを操作して、印刷等の画像形成処理を容易に行なうことができる。
【0013】
また、請求項2記載の画像形成装置自走システムは、上記画像形成装置が移動手段により移動すべき軌道を提供する移動経路を設けて、上記移動経路の屈曲点及び分岐点の間の領域にて、固有の移動先識別情報が割り当てられた移動先ポイントを備え、上記移動先の呼出し手段が、移動先位置情報として最寄りの移動先ポイントの移動先識別情報を移動手段に送信すると共に、移動先属性情報を方向変更手段に送信する構成としてある。
画像形成装置自走システムをこのような構成とすると、画像形成装置の移動すべき軌道を前もって決定しておくことにより、移動手段の移動を容易に制御することができると共に、移動経路上の要所に設けられた移動先ポイントにより、画像形成装置の現在位置情報そして移動経路に対する移動先の方向が容易に取得され得ることになる。
【0014】
また、請求項3記載の画像形成装置自走システムは、上記方向変更手段が、上記移動先属性情報による方向管理テーブルを参照して、画像形成装置の現在位置情報及び移動先属性情報から方向情報を得て、この方向情報に基づいて、上記画像形成装置の方向を変更する構成としてある。
画像形成装置自走システムをこのような構成とすると、画像形成装置の移動先付近における現在位置情報と移動先属性情報とを対照させた方向管理テーブルを前もって用意しておくことにより、上記方向変更手段が、画像形成装置の現在位置情報及び移動先属性情報から迅速に方向情報を取得することができる。
【0015】
また、請求項4記載の画像形成装置自走システムは、上記方向変更手段が、画像形成装置を垂直な回転軸の周りに回動させる回動手段である構成としてある。
画像形成装置自走システムをこのような構成とすると、画像形成装置が移動先付近まで移動した後、または移動中に、上記回転手段によって画像形成装置が回動されることより、画像形成装置の方向を変更することができる。
【0016】
また、請求項5記載の画像形成装置自走システムは、上記方向変更手段が、移動手段により移動経路を移動させて、分岐点で方向転換させることにより、画像形成装置の方向を変更する構成としてある。
画像形成装置自走システムをこのような構成とすると、画像形成装置を回動させるための回動手段を設けることなく、移動手段を利用することによって、移動先付近における画像形成装置の方向が変更され得る。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、画像形成装置の移動範囲の各所に配置された複数個の移動先ポイントを利用して、移動手段が、移動先に配置された呼出し手段からの呼出し要求及び移動先位置情報に基づいて、画像形成装置を上記移動先付近に移動させる。
そして、画像形成装置が移動先付近まで移動した後、または移動中に、移動先属性情報に基づいて、方向変更手段により画像形成装置の方向を変更することによって、当該移動先即ちユーザの近くで操作パネルが当該ユーザに対向するように、画像形成装置が移動される。
従って、ユーザは楽に画像形成装置の操作パネルを操作して、画像軽形成装置によって、印刷等の画像形成処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施例]
以下、本発明の画像形成装置自走システムの第一の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本発明による画像形成装置自走システムの一実施形態の構成を示している。
図1に示すように、画像形成装置自走システム10は、画像形成装置100と、移動手段110と、方向変更手段150と、移動経路200と、ユーザデスク300と、を含んでいる。
尚、ユーザデスク300は、図示の場合、ただ一つのみが示されているが、実際には図2に示すように、移動経路200に隣接して複数配置されている。
【0019】
上記画像形成装置100は、公知の構成の画像形成装置であって、コピー機能,スキャナ機能,プリンタ機能,ファクシミリ機能の少なくとも一つの機能を備えている。
ここでは、上記画像形成装置100は、プリンタ機能を備えているものとする。
【0020】
上記移動手段110は、受信手段120,移動計画手段130および駆動手段140を設けてある。
ここで、上記移動手段110は、上記画像形成装置100と一体的に構成されており、画像形成装置100を移動させ得るようになっている。
尚、上記移動手段110は、画像形成装置100と別体に構成され、画像形成装置100に対して一体的に取り付けられていてもよく、また上記画像形成装置100に組み込まれて一体に構成されていてもよい。また、上記移動手段110は必ずしも止め具などで上記画像形成装置100に取り付けられていなくてもよく、例えば画像形成装置を載せて一体的に移動するものであっても良い。本発明においては、上記一体的な構成として、これらの構成が含まれるものとする。
【0021】
上記受信手段120は、ユーザデスク300の呼出し手段310からの呼出し要求311および移動先位置情報312を受信すると共に、移動手段110が移動経路200に沿って移動しているとき、最寄りの分岐・屈曲ポイントA〜I(図2参照)に設けられた何れかの識別情報送受信部210からのポイント識別情報211を受信し、また各分岐・屈曲ポイントA〜Iの間の領域に設けられた移動先ポイントに設けられた何れかの移動先識別情報送信部250からの移動先識別情報251を受信し、それぞれ移動計画手段130に転送する。
ここで、各分岐・屈曲ポイントA〜Iの識別情報送受信部210の送信部230は、例えばRFID,IrDA,Bluetooth等の何れかの方式によりポイント識別情報を送受信するようになっている。
【0022】
そして、上記受信手段120は、逐次ポイント検知信号121を送出しており、このポイント検知信号121に応答して、各分岐・屈曲ポイントA〜Iのポイント識別情報送受信部210の送信部230および各移動先ポイントの移動先識別情報送信部250の送信部260から送られてくるポイント識別情報211および移動先識別情報251を受信する。
その際、上記受信手段120は、上記ポイント識別情報211および移動先識別情報251について、唯一つのポイント識別情報211または移動先識別情報251が送られてきたときには、当該ポイント識別情報211または移動先識別情報251を現在位置情報122として、移動計画手段130に転送すると共に、複数の分岐・屈曲ポイントまたは移動先ポイントのポイント識別情報送受信部210の送信部230または移動先識別情報送信部250からポイント識別情報211または移動先識別情報251が送られてきたときには、例えばこれらの識別情報211,251の信号強度に対応して、現在位置情報122を生成して、移動計画手段130に転送する。
【0023】
上記移動計画手段130は、例えば画像形成装置100の起動時に各分岐・屈曲ポイントA〜Iのポイント識別情報211および隣接する分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報211と、各移動先ポイントの移動先識別情報251とが記憶されており、受信手段120から転送される上記移動先位置情報312および受信手段120で受信した現在位置情報122から、移動経路200を検索して、移動順路131を作成する。
ここで、上記移動計画手段130は、複数個の移動先位置情報312を受信したとき、これらの移動先位置情報312が表わす各移動先を順次に、あるいは各移動先の優先度または緊急度に応じて最適な移動先順序で、移動順路131を決定するようになっている。
【0024】
そして、上記移動計画手段130は、最先の移動先への移動順路131を駆動手段140に送出する。
尚、上記移動計画手段130は、この最先の移動先への駆動手段140による移動および画像形成装置100による印刷出力が完了した後、画像形成装置100からの処理完了通知101を受けて、上記最先の移動先を削除して、新たな最先の移動先、即ち次の移動先への移動順路131を駆動手段140に送出する。
【0025】
上記駆動手段140は、従来公知の構成であって、例えば駆動源,操舵手段等により駆動制御される車輪等から構成されており、無限軌道を備えていてもよい。
ここで、上記駆動手段140は、移動手段110が移動計画手段130から入力された最先の移動先への移動順路131に基づいて、移動手段110を当該移動先付近まで移動させるように、駆動制御される。これにより、移動手段110そして画像形成装置100が最先の移動先付近まで移動される。
【0026】
上記方向変更手段150は、図3に示すように、上記画像形成装置100と移動手段110の間に配置されており、移動手段110に取り付けられた下方回転台151と、画像形成装置100に取り付けられ且つ上記下方回転台151に対して垂直な回転軸153の周りに回動可能に支持された上方回転台152と、上方回転台152を回転軸153の周りに回動させる駆動手段154と、駆動手段154を駆動制御する制御部155と、から回転手段として構成されている。
【0027】
ここで、上記制御部155は、上方回転台152の方向を検出するための検出手段として、下方回転台151の周縁付近に、等角度間隔で配置された四つのセンサ151aと、上方回転台152の一側縁(図3の場合、例えば操作パネルの正面方向)に設けられた一つのセンサ152aと、を備えており、このセンサ152aが、下方回転台151の何れかのセンサ151aを検出することにより、上方回転台152そして画像形成装置100の現在の方向を検出することができるようになっている。
【0028】
そして、上記制御部155は、画像形成装置100および移動手段110が移動先付近に到着した後、移動先の呼出し手段310から送信されてくる移動先属性情報313に基づいて、画像形成装置100の操作パネル100a(図3参照)を移動先のユーザに対向させるように、回転手段150を駆動制御する。
これにより、画像形成装置100は、そのパネル操作面100aが移動先のユーザに対向するように配置されることになる。
【0029】
ここで、上記制御部155は、前もって登録された方向管理テーブル156(後述)にしたがって、画像形成装置100の現在位置情報122と移動先属性情報313に基づいて、方向情報157を読み出して、画像形成装置100の方向を決定するようになっている。
【0030】
その後、上記移動計画手段130は、処理開始命令132を画像形成装置100に送出する。
これにより、上記画像形成装置100は、その操作パネル100aを当該移動先のユーザが操作することより、所定の印刷出力を行なうと共に、印刷完了後に移動手段110に対して、処理完了通知101を送出するようになっている。
【0031】
上記移動経路200は、例えばオフィスのフロアに張り巡らされたレールにより構成されている。
尚、このレールは、オフィスのフロアに埋め込まれていてもよく、またフロア表面に貼り付けられていてもよい。
【0032】
ここで、上記移動経路200は、図2に示すように、例えばオフィス内にて、所謂島状に配置されたそれぞれ四つのユーザデスク300から成る部署、即ち1課,2課,3課,4課の周囲および間に沿って、所謂「田」字状にフロアに敷設されている。
これにより、上記移動手段110が、上述した移動経路200に沿って駆動手段140により任意の場所に、即ち各ユーザデスク300の近傍まで移動し得るようになっている。
その際、上記移動手段110は、各分岐ポイントにて任意の方向に移動し得るようになっている。
【0033】
そして、上記移動経路200は、図2において各屈曲部および分岐部にて、それぞれ分岐・屈曲ポイントA〜Iを備えている。これらの分岐・屈曲ポイントA〜Iには、それぞれ図1に示すように、ポイント識別情報送受信部210が備えられている。
さらに、上記移動経路200は、これらの分岐・屈曲ポイントA〜Iの間の領域に、それぞれ移動先ポイントを備えている。これらの移動先ポイントは、それぞれ図1に示すように、移動先識別情報送信部250が備えられている。
また、上記移動経路200は、上記各部署即ち1課,2課,3課,4課に、それぞれ移動先属性ポイントを備えている。これらの移動先属性ポイントは、それぞれ図1に示すように、属性情報送信部270が備えられている。
【0034】
各ポイント識別情報送受信部210は、それぞれ固有のポイント識別情報を、例えばICチップ,磁気カード等の記憶手段220により記憶しており、画像形成装置自走システム10の起動時に、それぞれ記憶手段220に記憶しているポイント識別情報211を、送信部230により、上記移動手段110に対して、そして移動経路200にて隣接する分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報送受信部210の受信部240に対して送信する。
【0035】
さらに、上記ポイント識別情報送受信部210は、上述したようにポイント識別情報211を送信する際に、受信部240で受信した隣接する分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報送受信部210の固有のポイント識別情報211を、同時に上記移動手段110に対して送信する。
【0036】
また、各ポイント識別情報送受信部210の送信部230は、画像形成装置100および移動手段110が当該分岐・屈曲ポイントを通過したとき、移動手段110の受信手段120からのポイント検知信号121に応答して、当該分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報送受信部210の固有のポイント識別情報211および進行方向前方の分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報211を、上記移動手段110に送信する。
これにより、上記移動手段110は、受信手段120で受信した最寄りの分岐・屈曲ポイントおよび進行方向前方の分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報211に基づいて、上記移動経路200における現在位置情報122および進行方向を取得することができる。
【0037】
上記各移動先識別情報送信部250は、それぞれ固有の移動先識別情報を、例えばICチップ,磁気カード等の記憶手段(図示せず)により記憶している。
そして、各移動先識別情報送信部250は、画像形成装置100および移動手段110が当該移動先ポイントを通過したとき、移動手段110の受信手段120からのポイント検知信号121に応答して、当該移動先ポイントの移動先識別情報送信部250の固有の移動先識別情報251を、上記移動手段110に送信する。
これにより、上記移動手段110は、受信手段120で受信した最寄りの移動先ポイントの移動先識別情報251に基づいて、上記移動経路200における現在位置情報122を取得することができる。
【0038】
上記各属性情報送信部260は、それぞれ固有の属性情報を、例えばICチップ,磁気カード等の記憶手段(図示せず)により記憶している。
そして、各属性情報送信部260は、ユーザデスク300の呼出し手段310が操作されたとき、呼出し手段310に対して固有の属性情報261を送信する。これにより、呼出し手段310は、この属性情報261を移動先属性情報313として方向変換手段150に対して送信する。
これにより、上記方向変換手段150の制御部155は、受信した最寄りの移動先ポイントの移動先識別情報251と上記移動先属性情報313に基づいて、方向管理テーブル156を参照して、移動先における画像形成装置100の方向を決定し、駆動手段154を駆動制御することにより、画像形成装置100の操作パネル100aを移動先のユーザに対向させることができる。
【0039】
上記ユーザデスク300は、画像形成装置100の呼出しを行なうための呼出し手段310を備えている。
ここで、上記呼出し手段310は、ユーザが操作することにより、呼出し要求311を生成し、移動先位置情報312と共に、画像形成装置100に対して送信すると共に、最寄りの属性情報送信部260から属性情報261を移動先属性情報131として取得して、これらの移動先位置情報312および移動先属性情報313を方向変換手段150に対して送信するようになっている。
【0040】
ここで、前述した方向管理テーブルは、図4に示すように、画像形成装置100の現在位置、即ちアクセスポイントA〜Iの間の各区間に対して、それぞれ対応する属性情報(呼出し元エリアID)313と方向情報(向き)157(LまたはR)の対照表として構成されている。
尚、属性情報313は、図4に示すテーブルでは、呼出し元エリアIDとして表わされており、図5に示すテーブルに示すように、属性情報313の1課〜4課に対して、それぞれ呼出し元エリアIDI,II,III ,IVが割り当てられ、1課〜4課以外では、圏外が割り当てられることになる。
【0041】
例えば図2に示すように、画像形成装置100が区間G〜Hにて移動方向が+である場合、対照表から、属性情報313が3課である場合には、方向情報157がLとなり、進行方向に対して左方に操作パネル100aが向くように、画像形成装置100を回転させればよいことが分かる。
ここで、上記移動方向は、図2にて右方および下方に向かって+となるように選定されていると共に、移動方向が逆向き−の場合には、方向情報157のLおよびRを入れ替えればよい。
また、属性情報313が圏外とは、周囲の移動経路200の外側を意味し、移動先が対象となる上記部署、即ち1課〜4課以外であることから、画像形成装置100の方向変換および印刷処理は行なわれない。
【0042】
次に、本実施形態の画像形成装置自走システム10の動作について、図6を参照して説明する。
図6は、画像形成装置自走システム10の動作の流れを示すシーケンス図である。
図6において、まず、符号A1で示すように、画像形成装置100の起動時に、各分岐・屈曲ポイントA〜Iのポイント識別情報送受信部210が、その固有のポイント識別情報と隣接する分岐・屈曲ポイントのポイント識別情報とを関連付けて、移動手段110に送信する。
これにより、移動手段110の移動計画手段130は、符号A2で示すように、各分岐・屈曲ポイントA〜Iの相互の隣接関係を取得することになる。
【0043】
そして、呼出し手段310(例えば図2にて分岐・屈曲ポイントEとFの間に位置し、2課に属するものとする)が、符号A3で示すように、呼出し要求311と、移動先位置情報312を移動手段110に対して送信すると共に、移動先属性情報313を方向変更手段150に対して送信する。
このとき、画像形成装置100および移動手段110は、図2に示すように、分岐・屈曲ポイントGからHに向かって移動中である。
【0044】
これにより、上記移動手段110の移動計画手段130は、符号A4で示すように、受信手段120から逐次入力される現在位置情報122と、上述した移動先位置情報312に基づいて、現在位置から移動先までの(例えば分岐・屈曲ポイントH→E→Fなる)移動順路131を作成し、符号A5で示すように、駆動手段140を駆動制御する。
【0045】
これにより、移動手段110そして画像形成装置100は、移動順路131に基づいて駆動制御される駆動手段140によって、符号A6で示すように、移動を開始して、移動先位置情報312が示す移動先、即ち分岐・屈曲ポイントEとFの間の移動先ポイント付近まで移動する。
その際、符号A7で示すように、移動手段110が各分岐・屈曲ポイントH,Eそしてこれらの間の移動先ポイントを通過する度に、その受信手段120が、符号A8で示すように、分岐・屈曲ポイント検知信号121に応答して、当該分岐・屈曲ポイントH,Eのポイント識別情報送受信部210の送信部230から送られてくるポイント識別情報211またはこれらの分岐・屈曲ポイントH,Eの間の移動先ポイントの移動先識別情報送信部250から送られてくる移動先識別情報251により、位置確認を行なって、現在位置情報122を更新して、上記移動計画手段130に転送する。
【0046】
これにより、上記移動計画手段130は、移動手段110および画像形成装置100の移動に伴って、常に最新の現在位置情報122により、移動状況を取得することができる。
そして、符号A9で示すように、移動手段110が移動先に到達すると、上記方向変更手段150の制御部155は、符号A10で示すように、当該ユーザデスク300の呼出し手段310から受信した移動先属性情報313に基づいて、方向管理テーブル156を参照して方向情報157を取得する。
この場合、分岐・屈曲ポイントE,F間で2課に属する移動先であることから、方向管理テーブル156を参照して、方向情報157はLとなる。
【0047】
続いて、上記方向変更手段150の制御部155は、符号A11で示すように、この方向情報157に基づいて駆動手段154を駆動制御して、画像形成装置100を旋回させて、その操作パネル100aを移動先のユーザデスク300に向けて配置する。
例えば、方向情報157のLにより、制御部155は、駆動手段154を駆動制御して、画像方向装置100の操作パネル100aを左側に向けて配置することになる。
【0048】
そして、上記移動手段110は、符号A12で示すように、画像形成装置100に対して処理開始命令132を送出する。
これを受けて、画像形成装置100は、符号A13で示すように、この処理開始命令132を受けて、印刷待機状態となる。
ここで、分岐・屈曲ポイントE,F間で2課に属するユーザは、符号A14で示すように、自分のユーザデスク300の近くまで移動してきた画像形成装置100により手動印刷を行なう。
その際、画像形成装置100の操作パネル100が当該ユーザに対向して配置されていることから、ユーザはその場で容易に操作パネル100を操作することができる。
【0049】
そして、画像形成装置100は、印刷出力が完了すると、符号A15で示すように、移動手段110に対して処理完了通知101を送出する。
これにより、移動手段110の移動計画手段130は、符号A16で示すように、当該移動先を削除して、次の最先の移動先までの移動順路131を作成し、符号A5に戻る。
尚、上記移動計画手段130は、次の最先の移動先がある限り、上記符号A5からA16までの動作を繰り返して移動順路131を作成すると共に、次の移動先がない場合には、動作を停止し、次に何れかの識別部400から呼出し要求401が送信されるまで、現在位置にて待機する。
以上で、呼出作業が完了する。
この場合、ユーザは、自分のユーザデスク300に在る呼出し手段310を操作することにより、画像形成装置100を自分のユーザデスク300付近まで移動させて、印刷出力等の画像形成を容易に行なうことができると共に、その際画像形成装置100の操作パネル100aがユーザ自身に対向していることから、画像形成装置100を回り込むようなことなく、その場で操作パネル100aを操作することができる。
【0050】
尚、上記シーケンス図では、画像形成装置100の方向変更は、移動手段110により画像形成装置100が移動先に到着してから行なわれるようになっているが、これに限らず、画像形成装置100が移動先まで移動する途中で行なわれるようにしてもよい。
【0051】
以上、本発明の画像形成装置自走システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る画像形成装置自走システムは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、方向変更手段150は、回転手段として構成されており、画像形成装置100を移動手段110に対して機械的に回転させるようになっているが、これに限らず、移動手段110が方向変更手段150の機能を備えるようにしてもよい。
【0052】
この場合、例えば前述したように画像形成装置100が分岐・屈曲ポイントG,Hの間の中間位置から、分岐・屈曲ポイントE,F間の2課に属するユーザデスク300の呼出し手段310から呼出し指令311を受けたとき、方向変更手段150の機能に基づいて、呼出し手段310からの移動先属性情報313に基づいて、方向情報157を取得した後、この方向情報157を参照しながら、移動計画手段130が移動順路131を決定する。
したがって、この移動順路131は、前述した分岐・屈曲ポイントH→E→Fなる順路ではなく、移動先での方向も考慮して、H→I→F→Eなる順路が選択される。これにより、移動先にて、画像形成装置100の操作パネル100aは、当該ユーザに対向することになる。
【0053】
また、上述した実施形態においては、移動経路200がレールにより構成されているが、これに限らず、移動手段110が移動経路200に沿って移動することができるものであれば、例えば単なるテープ等であってもよい。
また、各分岐・屈曲ポイントが適所に配置されており、各分岐・屈曲ポイント間の経路が明白である場合には、移動経路200が省略されてもよい。
【0054】
さらに、上述した実施形態においては、移動計画手段130は、移動手段110に設けられているが、これに限らず、例えばユーザ側端末310を相互接続するLAN等のネットワークの管理サーバ側に設けてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態においては、呼出し手段310は、単独で構成されているが、例えばユーザデスク300に設置されたコンピュータ等を利用することも可能であり、また例えば携帯可能なICカード,磁気カード等として構成されていてもよい。
【0056】
さらにまた、上述した実施形態においては、画像形成装置100は、プリンタとして印刷出力を行なうように構成されているが、これに限らず、コピー機能,スキャナ機能,プリンタ機能またはファクシミリ機能の少なくとも一つの機能を備えた画像形成装置に対して本発明を適用し得ることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自走式の画像形成装置において、画像形成装置を回転駆動させる構造等に関する発明であるため、装置類を回転させる機構などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による画像形成装置自走システムの一実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】図1の画像形成装置自走システムで使用される移動経路の構成例を示す概略平面図である。
【図3】図1の画像形成装置自走システムで使用される方向変更手段の構成例を示す分解図である。
【図4】図1の画像形成装置自走システムで使用される方向管理テーブルの一例を示す図である。
【図5】図1の画像形成装置自走システムで使用される属性情報対照表を示す図である。
【図6】図1の画像形成装置自走システムの動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0059】
10 画像形成装置自走システム
100 画像形成装置
101 処理完了通知
110 移動手段
120 受信手段
121 ポイント検知信号
122 現在位置情報
130 移動計画手段
131 移動順路
132 処理開始命令
140 駆動手段
150 方向変更手段
151 下方回転台
152 上方回転台
153 回転軸
154 駆動手段
155 制御部
200 移動経路
210 ポイント識別情報送受信部
211 ポイント識別情報
220 記憶手段
230 送信部
240 受信部
250 移動先識別情報送信部
251 移動先識別情報
260 属性情報送信部
261 属性情報
300 ユーザデスク
310 呼出し手段
311 呼出し要求
312 移動先位置情報
313 移動先属性情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置と一体的に構成され、当該画像形成装置の移動先に配置された呼出し手段からの呼出し要求及び移動先位置情報に基づいて、移動先付近まで画像形成装置を移動させる移動手段と、
上記移動先付近に画像形成装置を移動させたとき、当該移動先の呼出し手段からの移動先属性情報に基づいて、上記画像形成処理を当該移動先に対向させて配置させる方向変更手段とを設けた
ことを特徴とする画像形成装置自走システム。
【請求項2】
上記画像形成装置が移動手段により移動すべき軌道を提供する移動経路を設けて、
上記移動経路の屈曲点及び分岐点の間の領域にて、固有の移動先識別情報が割り当てられた移動先ポイントを備え、
上記移動先の呼出し手段が、移動先位置情報として最寄りの移動先ポイントの移動先識別情報を移動手段に送信すると共に、移動先属性情報を方向変更手段に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置自走システム。
【請求項3】
上記方向変更手段が、上記移動先属性情報による方向管理テーブルを参照して、画像形成装置の現在位置情報及び移動先属性情報から方向情報を得て、この方向情報に基づいて、上記画像形成装置の方向を変更する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置自走システム。
【請求項4】
上記方向変更手段が、画像形成装置を垂直な回転軸の周りに回動させる回動手段である
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置自走システム。
【請求項5】
上記方向変更手段が、移動手段により移動経路を移動させて、分岐点で方向転換させることにより、画像形成装置の方向を変更する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置自走システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−92361(P2006−92361A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278322(P2004−278322)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】