説明

画像形成装置

【課題】広い範囲にわたる表面凹凸をもった多種の用紙について、その表面凹凸に応じた適切なトナー付着量を制御することである。
【解決手段】同じ記録用紙を互いに異なる圧力でそれぞれ挟持する2つの金属ローラ対21a,21bそれぞれに電圧を印加したときに各金属ローラ対を流れる電流値を検知し、検知した各電流値の差から各金属ローラ対を通過した記録用紙の表面凹凸を特定する。そして、特定した表面凹凸に対してトナー付着量が最適になるように潜像形成用の画像データをγ補正することで、その記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置で使用される記録用紙は多種多様であり、大別すれば、キャストコート紙、アート紙、微塗工紙などの塗工紙、あるいは、上質紙、中質紙、下級紙などの非塗工紙、又は、OA用紙(普通紙)とよばれる情報用紙などが存在する。これらの多種多様な用紙に対して同一の作像条件により電子写真方式で画像形成を行う場合、用紙の種類によって画像品質にかなりの差が見られることは広く知られている。その理由は、用紙を構成する繊維の形状や製造工程が用紙の種類によって異なることにより、用紙の表面凹凸の度合いが異なるためである。用紙の表面凹凸が大きい非塗工紙などの用紙に画像を形成する場合、用紙上に転写されたトナー像を構成するトナーの多くが凹の部分に深くまで浸透する。そのため、用紙上に転写されたトナー像を構成するトナーの量が少ないと、本来であればトナーが付着すべき凸の部分(地肌)が見えてしまい、画質が低下する。一方、用紙の表面凹凸が小さい塗工紙などの用紙に画像を形成する場合、用紙上に転写されたトナー像を構成するトナーが用紙の深くまで浸透するようなことはない。よって、用紙上に転写されたトナー像を構成するトナーの量が少なくても、トナーが付着すべき地肌が見えてしまうということはなく、画質低下は生じない。しかし、逆に、用紙の表面凹凸が小さい用紙に画像を形成する場合に、用紙上に転写されたトナー像を構成するトナーの量が多いと、トナー像を形成すべき領域の外側までトナーが広がってしまう。そのため、画像部のエッジがシャープではなくなってしまい、かえって画質を低下させることになる。
【0003】
従来の画像形成装置の中には、標準的な用紙の表面凹凸に適したトナー付着量となるように作像条件を固定するものがある。この画像形成装置では、標準的な用紙とは異なる表面凹凸をもった用紙に画像形成を行う場合に画質低下が生じる。
また、従来の画像形成装置の中には、複数種類の用紙に対応した作像条件(用紙モード)をメモリ上に記憶しておき、画像形成に使用する用紙の種類に応じた作像条件を使用者に選択させるものがある。この画像形成装置によれば、使用者が適切な選択を行うことで、複数種類の用紙に対して高画質な画像を形成することができる。しかし、この画像形成装置では、作像条件を選択させる作業を使用者に強いるため利便性が悪いという不具合が生じるし、また、メモリに記憶された作像条件に適合しない用紙に対して画像形成を行う場合には画質が低下するという不具合も生じる。
【0004】
一方、従来の画像形成装置の中には、用紙の表面凹凸を検知する検知手段を有し、その検知結果を利用して記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するものが知られている(特許文献1、特許文献2)。このような画像形成装置によれば、作像条件を使用者に選択させる必要はないし、あらゆる用紙に対して高画質な画像を形成することが可能であるので、上述した不具合は生じない。
【0005】
【特許文献1】特許第3406507号公報
【特許文献2】特開2005−257847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の画像形成装置では、二次元CCD素子で用紙の表面凹凸により生じる陰影の画像情報を読み取り、その画像情報から用紙表面の反射率分布(二次元)を解析、演算することで用紙表面の凹凸の度合いを検知する。また、上記特許文献2に記載の画像形成装置では、反射型光学センサを使って反射光の受光量の違いにより用紙表面の凹凸の度合いを検知する。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の画像形成装置では、二次元CCD素子で1回だけ読み取った画像情報だけから当該記録用紙の表面凹凸を特定する。また、上記特許文献2に記載の画像形成装置では、固定配置された1つの反射型光学センサが検知した反射光の受光量だけから当該記録用紙の表面凹凸を特定する。いずれの画像形成装置においても、1つの検知結果から記録用紙の表面凹凸を特定するので、ある特定の狭い範囲内では表面凹凸を高精度に特定することは可能であるものの、広い範囲にわたって表面凹凸を高精度に特定することができないという問題があった。
【0008】
具体的に説明すると、上記特許文献1及び上記特許文献2には用紙の表面凹凸を検知する際の光学条件の詳細までは記載されていないが、これらの文献の図を見る限り正反射光に基づいて用紙の表面凹凸を特定していると推測される。しかし、本発明者らの研究の結果、正反射光の強度のみから用紙の表面凹凸を検知する場合、表面凹凸が異なる用紙であっても正反射光の強度がほとんど変化しないような表面凹凸の範囲が存在することが判明した。詳しくは、光の入射角度を小さくした場合、光沢度が大きな用紙に対しては正反射光だけから表面凹凸を精度よく特定することができるが、光沢度が小さな用紙に対しては正反射光だけから表面凹凸を精度よく特定することができない。また、光の入射角度を大きくした場合、光沢度が小さな用紙に対しては正反射光だけから表面凹凸を精度よく特定することができるが、光沢度が大きな用紙に対しては正反射光だけから表面凹凸を精度よく特定することができない。
【0009】
なお、上記問題は、このように正反射光だけから記録用紙の表面凹凸を特定する場合に限らず、記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知するに際して1つの検知条件で検知した検知結果だけから記録用紙の表面凹凸を特定する場合に生じ得る。すなわち、検知条件が1つであると、表面凹凸の特定に際してその検知条件が適している範囲であれば表面凹凸を精度よく特定できるが、その検知条件が表面凹凸の特定に適さない範囲の表面凹凸については精度よく特定できない場合があり、広い範囲にわたって表面凹凸を高精度に特定できないという問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、広い範囲にわたって表面凹凸を高精度に特定することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像にトナーを付着させることで得られるトナー像を像担持体上に形成し、このトナー像を記録用紙へ転写することにより記録用紙上に画像を形成する画像形成装置において、同じ記録用紙に対して互いに異なる2以上の検知条件で該記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知する検知手段と、該検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報に基づいて該記録用紙の表面凹凸を特定する表面凹凸特定手段と、該表面凹凸特定手段が特定した結果に基づき、該記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するトナー付着量制御手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記検知手段は、上記同じ記録用紙を互いに異なる圧力でそれぞれ挟持する2以上の挟持部それぞれに電圧を印加したときに各挟持部を流れる電流値を上記各表面凹凸情報として検知するものであり、上記表面凹凸特定手段は、該検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報を互いに比較して該記録用紙の表面凹凸を特定することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記検知手段は、同一の発光部から照射されて上記同じ記録用紙で反射した光を互いに異なる位置に配置された2以上の受光部で受光したときの各受光量を上記各表面凹凸情報として検知するものであり、上記表面凹凸特定手段は、該検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報を互いに比較して該記録用紙の表面凹凸を特定することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の画像形成装置において、上記像担持体上に形成した潜像にトナーを付着させることで該像担持体上にトナー像を形成し、このトナー像を記録用紙へ転写することにより記録用紙上に画像を形成するものであり、上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該像担持体から記録用紙への転写条件を変更することにより、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する転写条件変更手段を含むことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2又は3の画像形成装置において、潜像担持体上に形成した潜像にトナーを付着させて得たトナー像を上記像担持体に一次転写することで該像担持体上にトナー像を形成し、このトナー像を記録用紙へ二次転写することにより記録用紙上に画像を形成するものであり、上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて、該潜像担持体から該像担持体への一次転写条件及び該像担持体から記録用紙への二次転写条件の少なくとも一方を変更することにより、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する転写条件変更手段を含むことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5の画像形成装置において、画像データに基づいて潜像を形成する潜像形成手段を有し、上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該画像データをγ補正することにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する画像データ補正手段を含むことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4又は5の画像形成装置において、画像データに基づいて繰り返しパルス状の書き込み光を照射することによりドット状の潜像を形成する潜像形成手段を有し、上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該書き込み光をパルス幅変調制御することにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するパルス幅変調制御手段を含むことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1、2、3、4、5、6又は7の画像形成装置において、現像剤担持体に現像バイアスを印加することで該現像剤担持体と潜像との間に現像電界を形成して該現像剤担持体上に担持されている現像剤中のトナーを該潜像に付着させる現像手段を有し、上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該現像バイアスを変化させることにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するパルス幅変調制御手段を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、同じ記録用紙に対して互いに異なる2以上の検知条件で該記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知し、その各表面凹凸情報に基づいて記録用紙の表面凹凸を特定する。これにより、表面凹凸の特定に際して各検知条件が適している範囲で互いの不適な範囲を補完するように各検知条件を設定することで、広い範囲にわたって表面凹凸を高精度に特定することが可能となる。あるいは、各検知条件での検知結果を複合的に判断することで、1つの検知条件での検知結果だけからは精度よく表面凹凸を特定できない範囲であっても、表面凹凸を精度よく特定することが可能となる。
したがって、本発明によれば、広い範囲にわたって表面凹凸を高精度に特定することが可能となるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、画像形成装置であるフルカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す説明図である。
このプリンタは、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の色成分画像を記録用紙上で重ね合わせて画像を形成する画像形成装置である。本実施形態では、Y、C、M、Kの各色に対応して、4つの画像形成ユニット20Y,20C,20M,20Kが図1のように配置されている。各画像形成ユニット20Y,20C,20M,20Kに設けられた潜像担持体である感光体ドラム上に形成される各色トナー像は、これらの感光体ドラムに当接して配置されているベルト状の像担持体(中間転写ベルト)10へ互いに重なり合うように順次転写される。中間転写ベルト10は、不図示の駆動手段によって所定のタイミングで回転しているため、中間転写ベルト10上において、各色トナー像が所定の位置で重ね合わされるようになっている。中間転写ベルト10上で重ね合された各色成分トナー像は、一括して記録用紙上へ転写され、用紙上の画像となる。
【0014】
本実施形態においては、各色画像形成ユニット20Y,20C,20M,20Kは共通の構成となっているため、その1組について説明を行う。
画像形成ユニットは、感光体ドラム1と、この感光体ドラム1を所望の電位に帯電する帯電器2、所望の電位に帯電された感光体ドラム1に対して出力用画像データ(後述する画像処理を施した画像データ)に対応した各色成分ごとの潜像書き込みを行う潜像形成手段としてのレーザ光学ユニット3、レーザ光学ユニット3による潜像書き込みによって感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーによって現像する現像手段としての現像器4、この現像器によって感光体ドラム上に現像されたトナー像を中間転写ベルト10上へと転写する転写手段としての転写器(一次転写器)5、中間転写ベルト10へ転写されずに感光体ドラム1上に残った転写残トナーをクリーニングするクリーナー6とから構成される。
【0015】
帯電器2は、ローラ形状の導電性弾性体から構成される帯電ローラに対して直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する構成になっている。この帯電ローラと感光体ドラム1との間で直接放電を起こすことで、本実施形態では感光体ドラム表面を−500Vに帯電する。
レーザ光学ユニット3は、後述する構成になっており、レーザーダイオード(LD)素子から光変調を施されたレーザ光が感光体ドラム表面上で結像するようになっている。このレーザ光を走査することで所望する画像に対応して感光体ドラム1に潜像書き込みを行い、感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。
現像器4は、磁性キャリアと後述のトナーとから構成される二成分現像剤を内包している。また、現像器4は、現像スリーブと攪拌部材及びトナー補給装置を有する構成になっている。現像スリーブは、表面が回転自在に支持された非磁性材料から構成される筒状の部材であり、その内部には永久磁石から構成されているマグネットローラが配置された構成になっている。現像スリーブの表面に保持された二成分現像剤は、マグネットローラの磁力により磁気ブラシとなって感光体ドラム1に接触することになる。また、攪拌部材では、二成分現像剤を攪拌することによりトナーを所定の帯電量まで帯電させる役割を持っている。また、現像スリーブには現像バイアスである直流電圧(−350V)を印加することで、現像剤中のトナーを感光体ドラム1へと付着させる。
一次転写器5は、ローラ形状の導電性弾性ローラであり、中間転写ベルト10の裏面から感光体ドラム1に対して押し当てられるように配置されている。この弾性ローラには一次転写バイアスとして定電流制御(22μA)されたバイアスが印加されている。
【0016】
また、二次転写器11は、中間転写ベルト10を支持するローラのうちの1つと、これに対向配置される導電性弾性ローラからなる二次転写ローラとを備え、二次転写ローラを用紙裏面から中間転写ベルト10に対して押し当てられるように配置されている。この二次転写器11の二次転写ローラには二次転写バイアスとして定電流制御(40μA)されたバイアスが印加される。記録用紙は、用紙バンク(不図示)から搬送手段によって搬送された後に、レジストローラ対12で所定のタイミングを取り、二次転写器11へと搬送される。二次転写器11では、上述した中間転写ベルト10上のトナー像(4色分のトナー像)が用紙上の所望の位置に一括して転写される。トナー像が転写された用紙は、搬送ベルト13によって定着器14へ搬送され、定着器14において加熱・加圧され、機外へと排出される。
【0017】
次に、本実施形態におけるトナーについての説明を行う。
本実施形態で使用するトナーは、重合法によって作製したいわゆる重合トナーであり、トナーの体積平均粒径は5.5μmとなるように製造されたものである。トナーの体積平均粒径は、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」を用い、アパーチャー径100μmで測定したものである。4色のトナーはそれぞれほぼ同一の製法により作製した。なお、本実施形態に使用可能なトナーはこれに限定されることはなく、このような重合トナーのほか、例えば分散重合法あるいは粉砕法などによって作製したトナーを用いてもよい。
【0018】
次に、本実施形態において、画像データ入力から出力用画像データを得るまでの画像処理部を説明する。
図2は、画像処理部30を含む本プリンタの制御系を示すブロック図である。
パーソナルコンピュータ(PC)等の画像入力部などからの入力データは、RGB多値(多くの場合8bit)画像のデータである。このデータは、画像処理部30内のMTFフィルタ処理部31において強調処理された後、色分解処理部32によりRGB色空間からY、C、M、Kの色空間へと分解される。次いで、トナー付着量制御手段を構成する画像データ補正手段としての階調補正処理部33により予め設定されている階調を実現するためにγ変換処理がなされ、記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量の制御がなされる。その後、擬似中間調処理部34によりプリンタ特性に合うように擬似中間調処理が施され、出力用画像データ(600dpi、4bitデータ)としてビデオ信号処理部40へと引き渡される。なお、MTFフィルタ処理、色補正処理、γ補正処理、擬似中間調処理の内容については、広く知られた技術であり、ここでは詳細の説明は省略する。
【0019】
次に、ビデオ信号処理部40でのデータの流れの説明を行う。ただし、以下の説明では1色分(Y色)のデータの流れだけの説明を行うが、他のC、M、Kについてもそれぞれ別個のビデオ信号処理部40を有し、同様の処理が施される。
ビデオ信号処理部40は、上述の出力画像用データ(画像処理の結果)を受け取り、発光点となるレーザーダイオード(LD)3aの個数分のデータをラインメモリ上に記憶し、ポリゴンミラーの回転に同期した信号(いわゆる同期信号)に合わせて、各画素に対応する上記ラインメモリ状のデータを所定のタイミング(画素クロック)で、PWM制御部へと引き渡す。なお、本実施形態では、レーザーダイオード3aすなわち発光点の個数は各色とも1つである。PWM制御部では、このデータがパルス幅変調(PWM)信号へと変換され、LDドライバへと引き渡される。LDドライバでは、このパルス幅変調信号に対応して所定の光量でレーザーダイオード3aを光変調駆動する。本実施形態では、各色成分の出力用画像データに対応してパルス幅変調(PWM)制御を行い、レーザ(書込光)の光変調駆動を行うようになっている。
【0020】
レーザーダイオード3aからの光は、コリーメートレンズにおいて平行光を形成するようになり、アパーチャにより所望のビーム径に対応する光束に切り取られる。アパーチャ通過後の光束はシリンドリカルレンズを通過し、ポリゴンミラーへと入射される。ポリゴンミラーで反射された光束は、走査レンズ(f−θレンズ)によって集光されて、折り返しミラーで折り返した後に、感光体ドラム1の表面上で結像するようになっている。これにより、感光体ドラム1の表面には静電潜像が形成され、その静電潜像にはトナーが付着してトナー像となる。
【0021】
次に、記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知する本実施形態の検知手段について説明する。
本実施形態における検知手段は、図1に示すように、2組の金属ローラ対21a,21bを備えている。用紙バンクから搬送手段によって搬送された記録用紙は、これらの金属ローラ対21a,22aを通過してレジストローラ対12へと送られる。金属ローラの材質はSUS301製であり、その直径は12mmである。また、金属ローラの軸方向長さは30mmである。また、検知手段は、これらの金属ローラ対21a,21bに電圧(0.9kV)を印加するための電源部22a,22bと、金属ローラ対21a,21bに流れる電流値を検知する電流検知部23a,23bとを備えている。
【0022】
本実施形態においては、同じ記録用紙に対して互いに異なる2つの検知条件でその記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報(金属ローラ対21a,21bに流れる電流値)を検知する。具体的には、各金属ローラ対21a,21bがそれぞれ用紙を挟持する圧力(検知条件)を互いに異なるようにし、各金属ローラ対21a,21bに流れる電流値を表面凹凸情報として検知する。本実施形態では、用紙搬送方向上流側に配置される第1金属ローラ対21aには全体で1kN(キロニュートン)の大過重を付加し、用紙搬送方向下流側に配置される第2金属ローラ対21bには全体で20N(ニュートン)の小過重を付加するようにした。
【0023】
本実施形態では、このようにして検知した大過重付加時の電流値(Ih)と小過重付加時の電流値(Il)がCPU24に送られる。そして、CPU24は、ROM25内に記憶されている所定の表面凹凸特定プログラムを実行することにより表面凹凸特定手段である表面凹凸分類特定部として機能し、これらの電流値の差(ΔI=Ih−Il)から金属ローラ対21a,21bを通過した用紙の表面凹凸を特定する。
【0024】
本発明者らは、表面凹凸が互いに異なる複数種類の用紙について、その表面凹凸と電流差ΔIとの関係を求める実験を行った。その実験結果を下記の表1に示す。なお、用紙の表面凹凸を測定する手法は今までにもいくつか提案されているが、確立された手法が存在するとは言いがたい状況であるので、表1に挙げられる各用紙の表面凹凸は、肉眼による観察及び顕微鏡による観察から表面凹凸の程度を類推し、表面凹凸が小さい順に並べたものを上記表1に示した。
【表1】

【0025】
上記表1に示すように、用紙の表面凹凸が大きいほど電流差ΔIが大きくなるという傾向があることがわかる。そこで、本実施形態では、本発明者らが行った実験に基づき、下記の表2に示すように、電流差ΔIの範囲を5つに分割して各範囲にそれぞれ用紙の表面凹凸を対応づけて用紙の表面凹凸を5つに分類することとした。
【表2】

【0026】
このように、大荷重の金属ローラ対21aを流れる電流値Ihと小荷重の金属ローラ対21bを流れる電流値Ilとを比較し、その差ΔIと上記表2とから、金属ローラ対21a,21bを通過した用紙の表面凹凸の分類を特定することができる。その後、このようにして特定した表面凹凸の分類に基づき、その記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する。具体的には、トナー付着量の制御を、上述した画像処理工程におけるγ変換部分において実施する。すなわち、本実施形態では、用紙の表面凹凸が大きいほどトナー付着量が増加するようにγ補正を行って、出力用画像データを生成する。
【0027】
図3は、特定した表面凹凸の分類に基づいてトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段の動作を示す説明図である。
本実施形態において、CPU24は、上述したように各金属ローラ対21a,21bを流れる電流値Ih,Ilから用紙の表面凹凸の分類を特定したら、ROM25内のトナー付着量制御プログラムを実行することによりLUT判定部として機能し、階調補正処理部33とともにトナー付着量制御手段を構成する。具体的に説明すると、上述した5つの表面凹凸の分類と、各分類ごとに最適なトナー付着量(M/A)とするためのγ補正テーブル(gam1,gam2,gam3,gam4,gam5)とを互いに対応付けたγ補正用のLUT(Look up table)を予めRAM26内に記憶しておく。そして、上述したように用紙の表面凹凸の分類を特定したら、その分類に対応するγ補正テーブルをγ補正用LUTを参照して決定する。なお、本実施形態におけるγ補正用LUTに登録されている各γ補正テーブル(gam1,gam2,gam3,gam4,gam5)は、それぞれの目標トナー付着量(M/A)が下記の表3の値となるように画像データを変換するように設定されたものである。
【表3】

【0028】
以上、本実施形態によれば、トナー像を付着させる記録用紙の表面凹凸を事前に検知し、その表面凹凸に適したトナー付着量でトナー像が形成されるようにレーザ光学ユニット3の書込光が調整され、感光体ドラム1上のトナー付着量が制御される。これにより、その記録用紙には、その表面凹凸に適したトナー付着量で構成されたトナー像が転写されることになる。この結果、対応するγ補正テーブルが予め用意されている表面凹凸をもった用紙に画像を形成するのであれば、どのような用紙に対しても安定して高画質の画像を形成することができる。
【0029】
〔比較実験〕
次に、本発明者らが行った比較実験について説明する。
本比較実験では、表面凹凸の程度が互いに異なる7種類の用紙に対し、後述する実験機を用いて画像形成を行い、その出力画像の粒状性(ざらつき)及び鮮鋭性(エッジのシャープさ)を目視により評価した。この粒状性及び鮮鋭性の目視評価方法は、標準テストチャートであるSCID No.1のチャートを使用して画像形成し、その出力画像について、非常に良好である場合を◎とし、良好である場合を○とし、わずかに不良である場合を△とし、明らかに不良である場合を×とする4段階評価を行った。
【0030】
本比較実験に使用した実験機は上述した実施形態で説明したプリンタの構成を具現化したもの、具体的にはリコー製ImadioNeoC455をベースにして改造した実験機を使用した。この実験機の主な仕様は次に通りである。
・書き込み解像度:600dpi
・発光点数(半導体レーザ数):Y、C、M、Kともに各1つ
・半導体レーザ波長:655nm
・プロセススピード(感光体ドラム1周速):125mm/sec
・1画素あたりのPWM制御:8bit
・転写方式:中間転写ベルト方式
【0031】
本比較実験では、上述した実施形態で説明したように、事前に特定した記録用紙の表面凹凸の分類に応じてトナー付着量を制御した場合を実施例1とし、目標トナー付着量(M/A)を0.50に固定した場合を比較例1とし、目標トナー付着量(M/A)を0.41に固定した場合を比較例2とした。本比較実験の結果は、下記の表4に示す。
【表4】

【0032】
上記表4に示した結果から分かるように、実施例1の構成では7種類の用紙すべてについて粒状性及び鮮鋭性が非常に良好である。これに対し、比較例1及び比較例2のように目標トナー付着量を固定した場合には、その目標トナー付着量が適している表面凹凸をもった一部の用紙については良好な画像が得られるが、7種類の用紙すべてについて良好な画像を得ることはできなかった。
【0033】
〔変形例1〕
次に、上述した実施形態の変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
本変形例1における基本的な構成は上述した実施形態と同様であるが、本変形例1では記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知する検知手段が上記実施形態とは異なっている。
【0034】
図4は、本変形例1における検知手段の構成を示す説明図である。
本変形例1の検知手段は、図4に示すように、同一の発光部121から照射され、図4の紙面垂直方向に搬送される記録用紙で反射した光を互いに異なる位置に配置された2以上の受光部122a,122bで受光したときの各受光量を各表面凹凸情報として検知する。発光部121は、タングステンフィラメントランプで構成されており、記録用紙の表面に対して入射角度θが75°となるように配置されている。第1受光部122aは、記録用紙で反射した正反射光(出射角度θが75°)を受光する位置に配置されている。また、第2受光部122bは、出射角度θ‘が60°である反射光を受光する位置に配置されている。本変形例1においては、いずれの受光部122a,122bもフォトダイオード素子から構成されている。
【0035】
一般に、正反射光の受光量が発光部から照射された光の光量の10%以下となるような光沢度の低い記録用紙については、正反射光の受光量から表面凹凸を特定することが難しい。このような光沢度の低い用紙には、上質紙、中質紙、オフィス用途の情報用紙などが含まれるが、これらの用紙間には表面凹凸に差異があるにも関わらず、正反射光の受光量はほぼ同じである。本発明者らの研究の結果、これらの用紙間においても拡散反射光の受光量に違いがあり、拡散反射光の受光量に基づいて表面凹凸を特定できることが判明した。
【0036】
そこで、本変形例1では、同じ記録用紙に対して互いに異なる2つの検知条件(受光位置)で記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報(反射光の受光量)を検知する。具体的には、同一の発光部121から照射された光が用紙表面で反射した反射光のうち、正反射光(入射角度と同じ出射角度で反射した光)を第1受光部122aで受光し、拡散反射光の一部を第2受光部122bで受光する。そして、第1受光部122aと第2受光部122bの出力結果に基づき、上述した実施形態の場合と同様に、5つの表面凹凸の分類の中から、これらの出力結果に対応する表面凹凸の分類を特定する。なお、特定した分類に基づくトナー付着量制御については、上述した実施形態と同じであるので説明を省略する。
なお、本変形例1では、互いに異なる2つの受光位置で用紙からの反射光を受光する場合を例に挙げたが、3以上の受光位置で反射光を受光するようにすれば、用紙の表面凹凸の検知精度を高めることができる。
【0037】
〔変形例2〕
次に、上述した実施形態の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
本変形例2における基本的な構成は上述した実施形態と同様であるが、本変形例2では特定した表面凹凸の分類に応じたトナー付着量の制御手法が上記実施形態とは異なっている。表面凹凸の分類の特定手法は上記実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、表面凹凸の分類の特定手法として上記変形例1の手法を採用してもよい。
【0038】
本変形例2において、CPU24は、上述したように各金属ローラ対21a,21bを流れる電流値Ih,Ilから用紙の表面凹凸の分類を特定したら、ROM25内のトナー付着量制御プログラムを実行することによりLUT判定部として機能し、トナー付着量制御手段を構成する。具体的に説明すると、上述した5つの表面凹凸の分類と、各分類ごとに最適な一次転写バイアス及び二次転写バイアスとするためのプロセスコントロールテーブルとを互いに対応付けた転写バイアス補正用のLUT(Look up table)を予めRAM26内に記憶しておく。そして、上述したように用紙の表面凹凸の分類を特定したら、その分類に対応するプロセスコントロールテーブルを転写バイアス補正用LUTを参照して決定する。なお、本変形例2における転写バイアス補正用LUTに登録されている各プロセスコントロールテーブルは、それぞれ目標とする一次転写バイアス及び二次転写バイアスが下記の表5の値とするように設定されたものである。
【表5】

【0039】
以上、本変形例2によれば、トナー像を付着させる記録用紙の表面凹凸を事前に検知し、その表面凹凸に適したトナー付着量でトナー像が形成されるように一次転写バイアス及び二次転写バイアスが調整され、記録用紙上のトナー付着量が制御される。これにより、その記録用紙には、その表面凹凸に適したトナー付着量で構成されたトナー像が転写されることになる。この結果、対応するプロセスコントロールテーブルが予め用意されている表面凹凸をもった用紙に画像を形成するのであれば、どのような用紙に対しても安定して高画質の画像を形成することができる。
【0040】
〔変形例3〕
次に、上述した実施形態の変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
本変形例3においては、記録用紙を搬送ベルトで搬送しながら感光体ドラム1上のトナー像を用紙上に直接転写する直接転写方式の画像形成装置である点を除き、その他の構成は上述した実施形態と同様である。
【0041】
図5は、本変形例3におけるプリンタの概略構成を示す説明図である。
このプリンタは、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の色成分画像を記録用紙上で重ね合わせて画像を形成する画像形成装置である。本変形例3では、Y、C、M、Kの各色に対応して、4つの画像形成ユニット20Y,20C,20M,20Kが図5のように配置されている。各画像形成ユニット20Y,20C,20M,20Kに設けられた像担持体である感光体ドラム1上に形成される各色トナー像は、これらの感光体ドラム1に当接して配置されているベルト状の用紙搬送部材(搬送ベルト)13上の記録用紙へ互いに重なり合うように順次転写される。
【0042】
各転写器5は、導電性の材質から構成された転写ローラを備え、転写ローラを搬送ベルト13の裏面から感光体ドラム1に対して押し当てられるように配置されている。これらの転写器5の転写ローラには転写バイアスとして定電流制御(40μA)されたバイアスが印加される。記録用紙は、用紙バンク(不図示)から搬送手段によって搬送された後に、レジストローラ対12で所定のタイミングを取り、搬送ベルト13に送られ、搬送ベルト13の表面に静電的に吸着して搬送される。各転写器5は、感光体ドラム1上のトナー像(4色分のトナー像)を用紙上の所望の位置に一括して転写する。トナー像が転写された用紙は、搬送ベルト13によって定着器14へ搬送され、定着器14において加熱・加圧され、機外へと排出される。
【0043】
本変形例3においても、上述した実施形態と同様に2組の金属ローラ対21a,21bを備え、各金属ローラ対21a,21bがそれぞれ用紙を挟持する圧力(検知条件)を互いに異なるようにし、各金属ローラ対21a,21bに流れる電流値Ih,Ilを表面凹凸情報として検知する。そして、これらの電流値Ih,Ilの差ΔIと上記表2とから用紙の表面凹凸の分類を特定し、特定した表面凹凸の分類に基づいてトナー付着量を制御する。本変形例3におけるトナー付着量の制御方法は、上述した実施形態と同様に、用紙の表面凹凸が大きいほどトナー付着量が増加するようにγ補正を行ってレーザ光学ユニット3の書込光を調整する方法である。ただし、トナー付着量の制御方法は、この方法に限定されることはなく、上記実施形態のプリンタで利用可能な制御方法についてはほぼ同様の方法を適用できる。なお、上述した変形例2と同様に、転写バイアスを調整してトナー付着量を制御する方法を採用する場合、転写バイアス補正用LUTに登録されている各プロセスコントロールテーブルは、それぞれ目標とする転写バイアスが下記の表6の値とするように設定される。
【表6】

【0044】
なお、本変形例3では、記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知する検知手段が上記実施形態と同じものであるが、上述した変形例1のような検知手段を採用してもよい。
【0045】
〔変形例4〕
次に、上述した実施形態の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
本変形例4における基本的な構成は上述した実施形態と同様であるが、本変形例4では特定した表面凹凸の分類に応じたトナー付着量の制御手法が上記実施形態とは異なっている。表面凹凸の分類の特定手法は上記実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、表面凹凸の分類の特定手法として上記変形例1の手法を採用してもよい。
【0046】
本変形例4において、CPU24は、上述したように各金属ローラ対21a,21bを流れる電流値Ih,Ilから用紙の表面凹凸の分類を特定したら、ROM25内のトナー付着量制御プログラムを実行することによりLUT判定部として機能し、トナー付着量制御手段を構成する。具体的に説明すると、上述した5つの表面凹凸の分類と、各分類ごとに最適な現像バイアスとするためのプロセスコントロールテーブルとを互いに対応付けた現像バイアス補正用のLUT(Look up table)を予めRAM26内に記憶しておく。そして、上述したように用紙の表面凹凸の分類を特定したら、その分類に対応するプロセスコントロールテーブルを現像バイアス補正用LUTを参照して決定する。なお、本変形例4における現像バイアス補正用LUTに登録されている各プロセスコントロールテーブルは、それぞれ目標とする現像バイアスが下記の表7の値とするように設定されたものである。
【表7】

【0047】
以上、本変形例4によれば、トナー像を付着させる記録用紙の表面凹凸を事前に検知し、その表面凹凸に適したトナー付着量でトナー像が形成されるように現像バイアスが調整され、感光体ドラム1上のトナー付着量が制御される結果、記録用紙上のトナー付着量が制御される。これにより、その記録用紙には、その表面凹凸に適したトナー付着量で構成されたトナー像が転写されることになる。この結果、対応するプロセスコントロールテーブルが予め用意されている表面凹凸をもった用紙に画像を形成するのであれば、どのような用紙に対しても安定して高画質の画像を形成することができる。
【0048】
〔変形例5〕
次に、上述した実施形態の変形例(以下、本変形例を「変形例5」という。)について説明する。
本変形例5における基本的な構成は上述した実施形態と同様であるが、本変形例5では特定した表面凹凸の分類に応じたトナー付着量の制御手法が上記実施形態とは異なっている。表面凹凸の分類の特定手法は上記実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、表面凹凸の分類の特定手法として上記変形例1の手法を採用してもよい。
【0049】
本変形例5において、CPU24は、上述したように各金属ローラ対21a,21bを流れる電流値Ih,Ilから用紙の表面凹凸の分類を特定したら、ROM25内のトナー付着量制御プログラムを実行することによりLUT判定部として機能し、トナー付着量制御手段を構成する。具体的に説明すると、上述した5つの表面凹凸の分類と、各分類ごとに最適なPWM値とするためのプロセスコントロールテーブルとを互いに対応付けたPWM値補正用のLUT(Look up table)を予めRAM26内に記憶しておく。なお、PWM値を変更することにより、レーザーダイオード3aが1画素あたりに点灯する時間を調整することができる。本変形例5において、用紙の表面凹凸の分類を特定したら、その分類に対応するプロセスコントロールテーブルをPWM値補正用LUTを参照して決定する。なお、本変形例5におけるPWM値補正用LUTに登録されている各プロセスコントロールテーブルは、それぞれ目標とするPWM値が下記の表8の値とするように設定されたものである。
【表8】

【0050】
以上、本変形例5によれば、トナー像を付着させる記録用紙の表面凹凸を事前に検知し、その表面凹凸に適したトナー付着量でトナー像が形成されるようにPWM値が調整され、感光体ドラム1上のトナー付着量が制御される結果、記録用紙上のトナー付着量が制御される。これにより、その記録用紙には、その表面凹凸に適したトナー付着量で構成されたトナー像が転写されることになる。この結果、対応するプロセスコントロールテーブルが予め用意されている表面凹凸をもった用紙に画像を形成するのであれば、どのような用紙に対しても安定して高画質の画像を形成することができる。
【0051】
以上、上記実施形態や各変形例におけるプリンタは、潜像にトナーを付着させることで得られるトナー像を像担持体上に形成し、このトナー像を記録用紙へ転写することにより記録用紙上に画像を形成する画像形成装置であり、同じ記録用紙に対して互いに異なる2以上の検知条件で記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知する検知手段と、この検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報に基づいて記録用紙の表面凹凸を特定する表面凹凸特定手段と、表面凹凸特定手段が特定した結果に基づき、記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するトナー付着量制御手段とを有する。
特に、上記実施形態では、検知手段として、同じ記録用紙を互いに異なる圧力でそれぞれ挟持する2以上の金属ローラ対(挟持部)21a,21bそれぞれに電圧を印加したときに各金属ローラ対21a,21bを流れる電流値Ih,Ilを各表面凹凸情報として検知し、各電流値Ih,Ilを互いに比較して得た電流差ΔIから記録用紙の表面凹凸を特定する。表面凹凸が大きな用紙はその紙繊維が多くの空気を取り込んだような構造になっているため、機械的圧力を加えたときの変形量(押し潰される程度)が大きい。これに対し、表面凹凸が小さな用紙の場合には、機械的な圧力を加えても変形量は小さい。そして、互いに異なる圧力で用紙を変形させたときの変形量は、各圧力付加時に用紙を流れる電流量から間接的に把握できる。つまり、本実施形態によれば、電流差ΔIから用紙の変形量を間接的に把握し、用紙の表面凹凸を検知するような動作原理になっている。しかも、表面凹凸情報を検知して表面凹凸を特定する構成は、二次元CCD素子が必要で演算処理も複雑な上記特許文献1に記載の構成に比べてはるかに安価に構成できる。さらに、表面凹凸情報(反射光)を光学センサで検知する構成では、画像形成装置の内部で長期間使用した場合、装置内部を滞留するトナーなどが発光部や受光部に付着して光センサの出力値が変化してしまい、表面凹凸を精度よく特定できないといった不具合がある。これに対し、上記実施形態の構成であれば長期間使用しても表面凹凸を精度よく特定できる。
また、上記変形例1においては、検知手段として、同一の発光部121から照射されて同じ記録用紙で反射した光を互いに異なる位置に配置された2以上の受光部122a,122bで受光したときの各受光量を各表面凹凸情報として検知し、各受光量を互いに比較して記録用紙の表面凹凸を特定する。従来の1つの受光部から出力値から表面凹凸を特定する構成では、特定の入射角度(例えば60°程度)に対する正反射光の光強度から表面凹凸を特定していたが、入射角度が60°の場合、中程度の光沢度をもつ用紙の表面凹凸については比較的精度よく特定できるものの、高光沢な用紙や低光沢な用紙については精度が十分ではなかった。より具体的に記載すると、入射角度が60°では光沢度が70%以上(高光沢)の場合や光沢度が10%以下(低光沢)の場合には、表面凹凸が異なっていても正反射光の受光量がほとんど変化せず、用紙の表面凹凸を精度よく特定することは困難であった。なお、高光沢の用紙に対しては入射角度を小さく(20°程度)し、低光沢の用紙に対しては入射角度を大きく(85°程度)すれば、表面凹凸の特定精度を高めることができる。上記変形例1によれば、高光沢及び低光沢の用紙であっても上述したように用紙の表面凹凸を精度よく検知できる。
また、上記変形例3で説明したように、感光体ドラム1上に形成した潜像にトナーを付着させることで感光体ドラム1上にトナー像を形成し、このトナー像を記録用紙へ転写することにより記録用紙上に画像を形成する直接転写方式の画像形成装置において、表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて感光体ドラム1から記録用紙への転写条件である転写バイアスを変更することにより、同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する転写条件変更手段を用いてもよい。用紙の表面凹凸に応じてトナー付着量を制御する方法としては、書き込み光の強度を変化させる方法、感光体ドラム1の表面電位を変化させる方法、現像バイアスを変化させる方法が考えられる。これらの方法によれば感光体ドラム1上に形成されるトナー像を構成するトナーの付着量を制御できるものの、記録用紙上のトナー像を構成するトナー付着量に関しては制御が十分ではない。用紙の表面凹凸に応じて転写条件をも制御することで、記録用紙上のトナー像を構成するトナー付着量を十分に制御することが可能となる。
また、上記変形例2においては、感光体ドラム1上に形成した潜像にトナーを付着させて得たトナー像を中間転写ベルト10に一次転写することで中間転写ベルト10上にトナー像を形成し、このトナー像を記録用紙へ二次転写することにより記録用紙上に画像を形成する中間転写方式の画像形成装置において、表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて、感光体ドラム1から中間転写ベルト10への一次転写条件及び中間転写ベルト10から記録用紙への二次転写条件の少なくとも一方を変更することにより、同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する転写条件変更手段を用いる。用紙の表面凹凸に応じて転写条件をも制御することで、記録用紙上のトナー像を構成するトナー付着量を十分に制御することが可能となる。さらに、中間転写方式においては、記録用紙と感光体ドラム1とが直接接触することがないため、用紙の構成成分が感光体ドラム1へと移行することが抑制され、フィルミングや画像ボケといった不具合の発生も抑制される。
また、上記実施形態においては、画像データに基づいて潜像を形成する潜像形成手段としてのレーザ光学ユニット3を設け、表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて画像データをγ補正することにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する画像データ補正手段を用いて、トナー付着量を制御する。これにより、簡易な構成で、特定した表面凹凸に基づき、記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御することができる。
また、上記変形例5においては、画像データに基づいて繰り返しパルス状の書き込み光を照射することによりドット状の潜像を形成する潜像形成手段としてのレーザ光学ユニット3を設け、表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて書き込み光をパルス幅変調(PWM)制御することにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するパルス幅変調制御手段を用いて、トナー付着量を制御する。これにより、簡易な構成で、特定した表面凹凸に基づき、記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御することができる。
また、上記変形例4においては、現像剤担持体に現像バイアスを印加することで現像剤担持体と潜像との間に現像電界を形成して現像剤担持体上に担持されている現像剤中のトナーを潜像に付着させる現像手段としての現像器4を設け、表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて現像バイアスを変化させることにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するパルス幅変調制御手段を用いて、トナー付着量を制御する。これにより、簡易な構成で、特定した表面凹凸に基づき、記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態に係るプリンタの概略構成を示す説明図。
【図2】画像処理部を含む同プリンタの制御系を示すブロック図。
【図3】特定した表面凹凸の分類に基づいてトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段の動作を示す説明図。
【図4】変形例1における検知手段の構成を示す説明図。
【図5】変形例3におけるプリンタの概略構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0053】
1 感光体ドラム
3 レーザ光学ユニット
4 現像器
10 中間転写ベルト
12 レジストローラ対
13 搬送ベルト
20Y,20C,20M,20K 画像形成ユニット
21a,21b 金属ローラ対
22a,22b 電源部
23a,23b 電流検知部
30 画像処理部
33 階調補正処理部
40 ビデオ信号処理部
121 発光部
122a,122b 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像にトナーを付着させることで得られるトナー像を像担持体上に形成し、このトナー像を記録用紙へ転写することにより記録用紙上に画像を形成する画像形成装置において、
同じ記録用紙に対して互いに異なる2以上の検知条件で該記録用紙の表面凹凸に関する表面凹凸情報を検知する検知手段と、
該検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報に基づいて該記録用紙の表面凹凸を特定する表面凹凸特定手段と、
該表面凹凸特定手段が特定した結果に基づき、該記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するトナー付着量制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記検知手段は、上記同じ記録用紙を互いに異なる圧力でそれぞれ挟持する2以上の挟持部それぞれに電圧を印加したときに各挟持部を流れる電流値を上記各表面凹凸情報として検知するものであり、
上記表面凹凸特定手段は、該検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報を互いに比較して該記録用紙の表面凹凸を特定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
上記検知手段は、同一の発光部から照射されて上記同じ記録用紙で反射した光を互いに異なる位置に配置された2以上の受光部で受光したときの各受光量を上記各表面凹凸情報として検知するものであり、
上記表面凹凸特定手段は、該検知手段が各検知条件で検知した各表面凹凸情報を互いに比較して該記録用紙の表面凹凸を特定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3の画像形成装置において、
上記像担持体上に形成した潜像にトナーを付着させることで該像担持体上にトナー像を形成し、このトナー像を記録用紙へ転写することにより記録用紙上に画像を形成するものであり、
上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該像担持体から記録用紙への転写条件を変更することにより、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する転写条件変更手段を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2又は3の画像形成装置において、
潜像担持体上に形成した潜像にトナーを付着させて得たトナー像を上記像担持体に一次転写することで該像担持体上にトナー像を形成し、このトナー像を記録用紙へ二次転写することにより記録用紙上に画像を形成するものであり、
上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて、該潜像担持体から該像担持体への一次転写条件及び該像担持体から記録用紙への二次転写条件の少なくとも一方を変更することにより、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する転写条件変更手段を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5の画像形成装置において、
画像データに基づいて潜像を形成する潜像形成手段を有し、
上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該画像データをγ補正することにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御する画像データ補正手段を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5の画像形成装置において、
画像データに基づいて繰り返しパルス状の書き込み光を照射することによりドット状の潜像を形成する潜像形成手段を有し、
上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該書き込み光をパルス幅変調制御することにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するパルス幅変調制御手段を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7の画像形成装置において、
現像剤担持体に現像バイアスを印加することで該現像剤担持体と潜像との間に現像電界を形成して該現像剤担持体上に担持されている現像剤中のトナーを該潜像に付着させる現像手段を有し、
上記トナー付着量制御手段は、上記表面凹凸特定手段が特定した結果に基づいて該現像バイアスを変化させることにより潜像に付着するトナーの付着量を変更することで、上記同じ記録用紙上のトナー像を構成するトナーの付着量を制御するパルス幅変調制御手段を含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−304492(P2007−304492A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135192(P2006−135192)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】