画像複写装置および画像読み取り装置
【課題】原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置および画像読み取り装置を提供すること。
【解決手段】本発明の画像複写装置1は,挿入口11への原稿供給位置と,排出口12からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つの可動トレイ51…と,ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける操作パネルとを有している。そして,トレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる。原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が操作パネルに入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての処理を保留する。
【解決手段】本発明の画像複写装置1は,挿入口11への原稿供給位置と,排出口12からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つの可動トレイ51…と,ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける操作パネルとを有している。そして,トレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる。原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が操作パネルに入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての処理を保留する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿の画像を読み取り,その画像を用紙に複写する画像複写装置および画像読み取り装置に関する。さらに詳細には,自動原稿搬送装置を有する画像複写装置とその自動原稿搬送装置によって搬送される原稿を読み取る画像読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,自動原稿搬送装置を有する画像複写装置では,原稿給紙トレイに置かれた束原稿から1枚ずつ引き込まれて読み取られる。そして,読取の終わった原稿は,原稿排紙トレイに積み重ねられる。読み取られた画像データは記憶装置に一旦保管され,そのデータに基づいて複写画像が形成される。また,マルチジョブに対応した画像複写装置もある。このような装置では,前のジョブの処理が終了する以前に,別のジョブを入力することができる。例えば,前のジョブの画像形成中に次の原稿を読み込ませることができる。
【0003】
このような装置の例として,複数の給紙トレイと複数の排紙トレイを有して,複数のジョブをセットできる画像複写装置が提案されている(例えば,特許文献1参照。)。この画像複写装置では,第1の給紙トレイから1つのジョブの原稿給紙が終了すると,自動的に次のトレイの原稿の読取が開始される。これにより,マルチジョブの効率化を図っている。また,複数の排紙トレイを給紙用として利用した画像複写装置も提案されている(例えば,特許文献2参照。)。この文献に記載の画像複写装置では,複数の排紙トレイに複数の原稿セットを置くことができる。そして,その複数の原稿セットが,順次読み取りに供される。
【特許文献1】特開2000−238952号公報
【特許文献2】特開平5−24736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の画像複写装置では,原稿カバーが大型化および重量化するという問題点があった。複数の給紙トレイと複数の排紙トレイとがいずれも原稿カバー上に設けられるからである。その一方で,書籍等の複写を形成するために置き取りをするときには,ユーザは原稿カバーを持ち上げる必要がある。従って,原稿カバーの重量化は好ましくないという問題点があった。
【0005】
一方,特許文献2に記載の画像複写装置では,読み取りの終わった原稿は,一旦装置内部のスタッカに蓄積される。そして,1つのジョブの原稿が全て読み取られると,スタッカから排紙トレイへと原稿が排紙される。このため,前のジョブの原稿排紙がすべて終了してからでなければ,次のジョブの読取を開始できない。従って,原稿読取の効率があまり良くないという問題点があった。
【0006】
さらに,この特許文献2に記載の画像複写装置では,原稿搬送経路が長い。さらには,原稿はスイッチバック経路で上下反転されている。一般に原稿シートは,画像形成用紙に比較して,搬送の信頼性を確保することが難しい。これは,原稿では用紙の種類が幅広いことによる。例えば,用紙端部の折れや用紙全体のたわみなどが発生していることが多い。さらには,インクの有無等によって,紙面上の摩擦係数の分布も一定でないことも多い。万一,搬送経路中でジャム等が発生した場合には,大切な原稿を損なうおそれがある。このため,原稿搬送経路を短く単純なものとしたいという要望があった。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置および画像読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像複写装置は,読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,原稿引き込み口から原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像を媒体に複写する画像複写装置であって,原稿引き込み口への原稿供給位置と,原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有するものである。
【0009】
本発明の画像複写装置によれば,原稿は原稿引き込み口から原稿排出口へと搬送される。また,これらの間には画像読み取り部があればよく,原稿搬送経路は原稿を途中方向反転なく導く単純な経路となっている。さらに,少なくとも3つのトレイが,原稿引き込み口への原稿供給位置と,原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって,上下方向に移動可能に設けられているので,原稿カバー上に原稿トレイ等が設けられる必要はない。従って,原稿カバーを重量化することはない。また,読み取り開始時トレイ制御部を有するので,これらのトレイを適宜移動させて原稿の読み取りを実行させることができる。さらには,保留部を有するので,他のトレイに原稿を載置してそのジョブの開始指示を入力した場合においても,実行中の読み取りの終了まで保留される。この保留されたジョブについても,実行中の読み取りが終了すれば,同様にトレイを移動させて原稿の読み取りが実行されるので,効率よくジョブが処理される。これにより,原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置となっている。
【0010】
さらに本発明では,原稿の画像を複写した複写済媒体を受け取る複写済媒体専用トレイを有することが望ましい。
このようにすれば,原稿の読み取りが終了する以前に,複写済媒体の形成と排出を行うことができる。従って,さらに効率よくジョブを処理することができる。
【0011】
さらに本発明では,少なくとも3つのトレイの移動範囲内に設けられ,原稿の画像を複写した複写済媒体を排出する複写済媒体排出口と,画像の媒体上への形成開始の際に,少なくとも3つのトレイの1つを,複写済媒体排出口から媒体を受け取る媒体受け取り位置に移動させる画像形成開始時トレイ制御部とを有することが望ましい。
このようにすれば,少ない数のトレイでも,原稿供給用,原稿受け取り用,複写済媒体受け取り用と状況に応じて使い分けることができる。従って,さらに効率よくジョブを処理することができる。
【0012】
さらに本発明では,画像読み取り部で取得した画像データを蓄積する画像記憶部を有し,画像の媒体上への形成を,すべての原稿の読み取りが終了してから開始することが望ましい。
このようにすれば,原稿受け取り用として利用したトレイを移動させて,複写済媒体受け取り用として利用できる。
【0013】
さらに本発明では,原稿の読み取り開始の前に,読み取り開始時トレイ制御部による処理が可能か否かを判定し,可能な場合に限り読み取り開始時トレイ制御部による処理を実行させる判定部を有することが望ましい。
このようにすれば,読み取りの終わった原稿を確実にトレイに受け取ることができる。
【0014】
さらに本発明では,少なくとも3つのトレイは,原稿引き込み口および原稿排出口の側が低い傾斜配置とされており,原稿引き込み口および原稿排出口の側への載置物の落下を防ぐストッパをそれぞれ有しており,原稿供給位置のトレイのストッパを退避させる退避部材を有することが望ましい。
このようにすれば,各トレイに載置された原稿等は,自重によって,原稿引き込み口や原稿排出口の側へ移動する。このとき,ストッパによって落下が防止されているので,トレイの移動中等に原稿がトレイから落下するおそれはない。一方,原稿供給位置においては,退避部材によってストッパが退避される。従って,原稿は自重によって原稿引き込み口へ供給される。
【0015】
また,本発明は,読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,原稿引き込み口から原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像データを取得する画像読み取り装置であって,原稿引き込み口への原稿供給位置と,原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有する画像読み取り装置にも及ぶ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像複写装置および画像読み取り装置によれば,原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「第1の形態」
以下,本発明を具体化した第1の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,自動原稿搬送装置を備えた画像複写装置に本発明を適用したものである。
【0018】
本形態の画像複写装置1は,図1にその概略を示すように,上から順に,原稿搬送部10,原稿読取部20,画像形成部30,用紙供給部40の各部を有している。原稿搬送部10は,図中上方の挿入口11から図中下方の排出口12へと原稿搬送路13を通して原稿を1枚ずつ搬送する。原稿搬送路13は,途中でUの字型に曲げられており,その曲部の下流側で原稿読取部20の読取位置21に対面している。これにより,原稿を搬送しながら読み取る,いわゆる流し撮りを行うようになっている。この画像複写装置1では,この他に原稿カバー14と原稿ガラス15とを有し,原稿ガラス15上の平置きの原稿を読み取る置き撮りもできるようになっている。ここでは,挿入口11が原稿引き込み口に相当する。また,排出口12が原稿排出口に相当する。
【0019】
原稿読取部20は,照明装置22,複数のミラー23,イメージセンサ24を有している。これにより,読取位置21を通過する原稿の画像を読み取り,画像データとして取得する。画像形成部30は,原稿読取部20で取得した画像データを基に,用紙に画像を形成する。ここでは,帯電部31,露光部32,現像部33,転写部34,定着部35を有して,電子写真方式の画像形成を行うものを例示している。画像が形成された用紙は,用紙排出口36から画像複写装置1の外部に排出される。さらに,画像複写装置1全体の制御を司るコントローラ37も有している。用紙供給部40は,各種の用紙を格納できる用紙カセット41を有している。そして,画像形成部30の画像形成動作に同期して選択的に用紙を供給する。ここで,用紙排出口36が複写済媒体排出口に相当する。
【0020】
この画像複写装置1では,図1に示すように,原稿搬送部10の挿入口11と排出口12,及び画像形成部30の用紙排出口36は,いずれも同じ側面に配置されている。そして,その側面側の外部には,4つの可動トレイ51,52,53,54が配置されている。それらの可動トレイ51,52,53,54は,画像複写装置1の外側面に沿って上下に移動可能にされている。各トレイの移動のための構成としては,例えば従来よりフィニッシャに用いられているものと同様の構成を利用できる。また,可動トレイ51,52,53,54は,画像複写装置1の側面へ向かって低くなるように配置されている。このため,紙等の載置物は図中右下方向へ重力によって移動される。
【0021】
ここでは,最も上側に配置される可動トレイ51の移動可能範囲は,少なくとも次の範囲となっている。最も上昇した位置では,可動トレイ51の図中右端部が原稿搬送部10の挿入口11よりやや上方位置に配置される。これは,図1に示す位置である。最も下降した位置では,可動トレイ51の図中右端部が,画像形成部30の用紙排出口36に対向する位置に配置される。また,上から2番目に配置された可動トレイ52の移動可能範囲は,少なくとも,その図中右端部が原稿搬送部10の挿入口11に対向する位置から,可動トレイ51の下端位置よりやや下方の位置までである。
【0022】
また,可動トレイ53は,原稿搬送部10の排出口12に対向する位置から,可動トレイ52の下端位置よりやや下方の位置まで移動可能である。また,可動トレイ54は,用紙排出口36に対向する位置から,可動トレイ53の下端位置よりやや下方の位置まで移動可能である。すなわち,これら4つの可動トレイ51,52,53,54は,少なくとも,図1に示す位置から,後に示す図9の位置まで移動できる。
【0023】
また,可動トレイ51,52,53,54には,それぞれストッパ55,56,57,58が設けられている。ストッパ55,56,57,58は,図2に示すように,ほぼ水平に配置される基部とその両端部から図中上方へ突出した柵部とを有している。基部は,バネ等によって図中上方へ付勢されている。そのため自然状態では,図1に示すように,例えばストッパ55の柵部は可動トレイ51の上面より上方へ突出した状態となっている。従ってこの状態では,可動トレイ51に載せられた用紙は,ストッパ55に当接して停止される。これにより,トレイ上面に保持される。他のトレイについても同様である。
【0024】
一方,原稿搬送部10の挿入口11の近傍にはストッパ解除部60が設けられている。ストッパ解除部60は,図2に示すように,ソレノイド61とレバー62とを有している。さらに,レバー62の凸部が画像複写装置1に設けられた溝63に係合されている。可動トレイ52が挿入口11に配置された場合には,図1に示すように,ストッパ56はストッパ解除部60によって引き下ろされて解除されることになる。
【0025】
すなわち,その場合には,ソレノイド61によってレバー62を引き下げる。これにより,レバー62の凸部が溝63によって誘導される。従って,レバー62の先端部が図中奥方向へと傾く。さらに,レバー62の先端部がストッパ56の基部に係合する。その結果,ストッパ56が図中下方へ引き下げられる。従って,用紙の引き込みが可能な状態となる。このストッパ解除部60が退避部材に相当する。
【0026】
また,可動トレイ51,52,53,54の上面には,用紙センサ59が設けられている。用紙センサ59は,例えば図3に示すような,ツメ機構であっても良い。このトレイ上に用紙が置かれると,このツメが押し下げられる。従って,その下部に設けられた検知装置により検知可能である。この用紙センサ59は,1枚の用紙に対しても反応する。また,ツメ機構以外にも,光学的センサ,電気的遮断センサ,あるいは静電容量や抵抗値の変化によるセンサで構成することもできる。あるいは,可動トレイ51,52,53,54に用紙センサ59を設ける代わりに,押しボタン等によって,ユーザに原稿を置いたことを指示してもらうようにしても良い。
【0027】
また,この画像複写装置1は,図4と図5に示すように,装置手前側に操作パネル71を有している。これは,スタートボタン72,各種入力キーやタッチパネル等を備えた一般的なものである。さらに,画像複写装置1では,図4に示すように,原稿カバー14の上部にさらに,大画面の表示パネル73を備えている。このような表示パネル73を利用すれば,ユーザへのメッセージを大きい文字で表示したり,詳しく説明したりすることができる。あるいは,絵表示等を行うこともできる。このようにできるのは,原稿カバー14上にはトレイや原稿搬送路13等が設けられていないからである。あるいは,図5に示すように,原稿カバー14の奥側に隣接して大画面の表示パネル74を設けても良い。
【0028】
次に,この画像複写装置1の複写動作を説明する。ここでは,可動トレイを4個としたので,ジョブを同時に3つまで受け付けることができる。より多くのトレイを備えれば,より多くのジョブを受け付けることが可能となる。これらの可動トレイは,原稿給紙用,原稿排紙用,複写済用紙排紙用として使い分けることができるからである。
【0029】
ここで,2つのジョブが続けて入力された場合について,図6〜図9を利用して説明する。まず,ユーザによって,第1のジョブの原稿が載置される。ここでは,可動トレイ52に載置されることが望ましい。そうすれば,画像複写装置1は,可動トレイ52を原稿給紙用トレイとして設定する。可動トレイ53が空であれば,これを原稿排紙用トレイとして設定することができる。さらに,可動トレイ54を,複写済用紙排出用トレイとして設定することができる。このように3種のトレイを同時に設定できる場合には,原稿の読み取りと並行して画像形成を実行できる。そのために,ユーザが原稿を置きやすいように,可動トレイ52と可動トレイ51との間隔を広くして待機すると良い。
【0030】
この状態で,スタートボタン72の押下等によって複写開始指示が入力されると,画像複写装置1はまず,この3つのトレイの配置を調整する。すなわち,可動トレイ52を挿入口11に,可動トレイ53を排出口12に,可動トレイ54を用紙排出口36にそれぞれ対向させる。その結果,各可動トレイ51,52,53,54は,図1に示すように配置される。さらに,可動トレイ52のストッパ56を退避させる。このとき,可動トレイ53や可動トレイ54が空でない場合は,トレイ上の用紙の除去を要求するメッセージを操作パネル71に表示する。あるいは,既載の用紙の上に重ねて排紙することとしても良い。
【0031】
そして,図6に示すように,第1のジョブの原稿G1の読み取りを開始する。原稿G1を挿入口11から1枚ずつ引き込み,読取位置21でその画像を読み取る。読み取った画像データは,コントローラ37の記憶部に一旦記憶する。読み取りの終わった原稿は,排出口12から可動トレイ53に排出する。可動トレイ53のストッパ57は退避されていないので,原稿G1は可動トレイ53上に保持される。
【0032】
また,画像形成部30では,読み取った画像データを基に第1のジョブの複写済用紙C1を形成する。そして,図7に示すように,用紙排出口36から排出する。複写済用紙C1は,用紙排出口36に配置された可動トレイ54に載置される。可動トレイ54のストッパ58も退避されていない。
【0033】
これらの処理の途中において,画像複写装置1は,第2のジョブを受け付けることができる。ユーザは,第2のジョブの原稿G2を,このとき使われていない一番上の可動トレイ51に載置する。この状態で,スタートボタン72の押下等によって複写開始指示が入力されると,画像複写装置1は,直近に載置された可動トレイ51上の用紙を第2のジョブの原稿であると判断して,このジョブを受け付ける。排出用として使用中でないトレイに用紙が置かれた場合は,原稿であると判断する。この第2のジョブの処理は,第1のジョブの原稿G1の読み取りが終了するまで保留される。
【0034】
原稿G1を全て読み取り終わると,図7に示すように,可動トレイ52が空になる。このことは,可動トレイ52の用紙センサ59によって判断できる。そこで,次に第2のジョブの原稿G2の読み取りの準備を行う。そのために,図8に示すように,可動トレイ51,52,53を移動させる。すなわち,可動トレイ51を挿入口11に,空の可動トレイ52を排出口12に移動させる。また,第1のジョブの原稿G1が載置された可動トレイ53を,可動トレイ52の下部に配置させる。また,ストッパ55を退避させ,ストッパ56,57は退避させない。
【0035】
このように配置しておいて,原稿G2の読み取りを開始する。すなわち,可動トレイ51から1枚ずつ読み取って,可動トレイ52へ排出する。読み取った画像データは,第1のジョブのデータとは区別して,コントローラ37の記憶部に一旦記憶する。すなわち,この画像複写装置1では,第1のジョブの原稿G1の読み取りが終了すれば,第2のジョブの原稿G2の読み取りを開始することができる。このとき,第1のジョブの画像形成や複写済用紙C1の排出は完了していなくても良い。従って,マルチジョブが可能となっている。
【0036】
第1のジョブの複写処理が終了したときに,第2のジョブの原稿G2の読み取りがまだ終了していない場合がある。この場合,各可動トレイは次のようになっている。可動トレイ51と可動トレイ52とを使用して,第2のジョブの原稿G2の読み取りが行われている。可動トレイ53には第1のジョブの原稿G1が,可動トレイ54には第1のジョブの複写済用紙C1がそれぞれ載置された状態となっている。すなわち,第2のジョブの複写済用紙C2を排出できる空きトレイがない。そこで,可動トレイ54の複写済用紙C1の上に重ねて排出する。このとき,複写済用紙C1を少し横にずらしたり,複写済用紙C2の縦横を変えて排出したりするとよい。それまでに,原稿G1が除去されている場合は,可動トレイ53を複写済用紙C2の排出用として利用できる。
【0037】
あるいは,第1のジョブの複写処理が終了する前に,第2のジョブの原稿G2の読み取りが終了した場合は,可動トレイ51が空となる。この場合は,可動トレイ52には第2のジョブの原稿G2が,可動トレイ53には第1のジョブの原稿G1が,可動トレイ54には第1のジョブの複写済用紙C1がそれぞれ載置されている。そこで,第1のジョブの複写処理が終了した後,図9に示すように,可動トレイ51を画像形成部30の用紙排出口36に移動させる。そして,第2のジョブの複写済用紙C2を可動トレイ51に排出する。このとき,可動トレイ51のストッパ55は退避されていない状態とする。このように,4個の可動トレイ51,52,53,54があれば,続けて2つのジョブを受け付け,連続して処理することができる。
【0038】
次に,この画像複写装置1による原稿読み取り処理について,図10に示すフローチャートを利用して説明する。ここでは,原稿読み取りに関する部分のみを説明する。この処理は,コントローラ37によって実行される。この処理が開始されるとまず,読み取り開始段階であるかどうかを判断する(S101)。例えば,ユーザによるスタートボタン72の押下等によって複写処理の指示入力があった時に,すでに実行中あるいは待機中の処理がなければ,このジョブの読み取り開始段階であるといえる。あるいは,他に優先されるジョブの読み取りがあれば,このジョブの読み取り開始は保留される。保留された場合は(S101:No),読み取り開始段階となるまで待機する。
【0039】
読み取り開始段階となったら(S101:Yes),そのときの各可動トレイ51,52,53,54の状態を確認する(S102)。すなわち,このジョブの原稿の載置されているトレイを原稿給紙用トレイとした場合に,その下部に原稿排紙用のトレイが必要である。そこで,原稿給紙用トレイの下部に,原稿排紙用トレイに設定できるような空のトレイがあるかどうかを判断する(S103)。
【0040】
各トレイが適切に設定できる場合は(S103:Yes),原稿の置かれている可動トレイを原稿給紙用のトレイとする。そして,選択された空のトレイを原稿排紙用トレイとする。原稿給紙用トレイを挿入口11に,原稿排紙用トレイを排出口12にそれぞれ移動させる(S104)。
【0041】
一方,原稿排紙用として利用できるトレイがない場合には(S103:No),操作パネル71等にエラー表示をする(S105)。例えば,「上から2番目のトレイ上の用紙を除去して下さい」等と表示し,ユーザによって除去されるのを待つ(S106)。そして,用紙が除去されるか,またはスタートボタン72の押下等によって強行が指示された場合は(S106:Yes),次に進む。また,エラー表示後所定の時間が経過した場合もそのまま次に進む。
【0042】
すなわち,用紙が除去された場合は,そのトレイを原稿排紙用トレイとする。用紙が除去されない場合は,既に置かれている用紙の上に重ねて,今回の原稿を排紙することにする。可能であれば,既に置かれている用紙を少し横にずらしたり,用紙の縦横を変えるなどするとよい。そうすると,それらの境目がよく分かる。そして,原稿給紙用トレイを挿入口11に,原稿排紙用トレイを排出口12にそれぞれ移動させる(S104)。
【0043】
次に,挿入口11のストッパ解除部60を駆動させ,原稿給紙用トレイのストッパを退避させる。これにより,原稿給紙用トレイに載置された原稿は,自重によってその先端部が挿入口11に入り込む。これ以外のトレイのストッパは,退避させない。そして,原稿搬送部10と原稿読取部20によって原稿を1枚ずつ搬送して読み取る(S107)。読み取りの終わった原稿は,原稿排紙用トレイに1枚ずつ排紙する(S108)。例えば,図6に示すように,原稿を可動トレイ52から1枚ずつ搬送して読み取り,可動トレイ53へと排紙する。
【0044】
さらに,まだ原稿給紙用トレイに原稿があるかどうかを判断する(S109)。まだ原稿があれば(S109:No),さらに読み取りを続ける(S107,S108)。原稿が無くなるまで(S109:Yes),読み取りを継続する。このとき,複写済用紙排出用トレイの設定が可能であれば,読み取りと並行して画像形成を開始できる。
【0045】
原稿給紙用トレイに載置された全ての原稿を読み取ったら(S109:Yes),さらに次のジョブが入力され保留されているかどうかを判断する(S110)。入力されていなければ(S110:No),これで読み取り処理を終了する。複写済用紙排出用トレイの設定が可能でなかった場合には,この後に画像形成を開始する。この場合は,原稿給紙用トレイとされていたトレイが空になっているので,これを複写済用紙排出用トレイとして設定する。保留されている次のジョブがあれば,S102に戻って,次のジョブに関するトレイの設定から原稿読取処理を実行する。
【0046】
以上詳細に説明したように本形態の画像複写装置1は,4つの可動トレイ51,52,53,54を有している。従って,それらを原稿給紙用,原稿排紙用,あるいは画像形成済み用紙排紙用として使い分けることができる。従って,複数のジョブの原稿を複数のトレイにそれぞれ載置できる。また,これらのトレイの配置は,原稿カバー14の上ではない。従って,置き取りのために原稿カバー14を持ち上げることは容易である。また,原稿搬送部10の原稿搬送路13はごく単純な経路となっている。これにより,原稿カバー14を重量化せず,単純な原稿搬送路13で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置1となっている。
【0047】
「第2の形態」
次に,本発明を具体化した第2の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,第1の形態の可動トレイの他に,上下に移動しない固定トレイを備えた画像複写装置である。第1の形態と共通の構成部分については,同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
本形態の画像複写装置2は,図11に示すように,第1の形態の画像複写装置1の一番下方の可動トレイ54に代えて,1つの固定トレイ81を備えたものである。固定トレイ81は,用紙排出口36に隣接して配置されている。この固定トレイ81は動かす必要がないので,比較的重量のあるトレイであってもかまわない。そこで,固定トレイ81として,可動トレイ51等よりも強度が大きいものとする。また,トレイ深さの大きいものを使用する。
【0049】
固定トレイ81は,画像形成済みの用紙を積載するためのものである。この画像複写装置2では,固定トレイ81を有しているので,多数枚の出力を行う場合に適している。可動トレイ51,52,53は,固定トレイ81よりやや上方までの範囲で上下に移動させる。従って,第1の形態の画像複写装置1と同様に,2つのジョブを受け付けることができる。
【0050】
以上詳細に説明したように本形態の画像複写装置2によれば,第1の形態の画像複写装置1と同様に,原稿カバー14を重量化せず,単純な原稿搬送路13で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置2となっている。さらに,複数の可動トレイ51,52,53の他に1つの固定トレイ81を有するので,多数枚の出力にも適している。
【0051】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の第1の形態の画像複写装置1では,最も下側の可動トレイ54は常時排紙専用となる。従って,可動トレイ54では,退避可能なストッパ58に代えて,常時突出したものとしても良い。
【0052】
また例えば,上記の各形態において,複写処理終了後の各可動トレイ51,52,53,54に,載置されている用紙が原稿であるか複写済用紙であるかを区別する表示をするようにしても良い。あるいは,操作パネル71等に同様の内容の表示をしても良い。
また例えば,上記の各形態では,各可動トレイを4つ有しているとしたが,少なくとも3つの可動トレイがあれば,2つのジョブを処理することが可能である。その場合には,まず1つのジョブの原稿を全て読み取る。その後,原稿排紙用トレイを用紙排出口36へ移動させ,原稿の上に重ねて複写済用紙を排出する。このとき,排出位置を少しずらす等により,それらの境目をわかりやすくすると良い。
【0053】
また例えば,上記の各形態では,そのジョブの原稿読み取りを開始する直前に,各可動トレイの状態を確認している。これに代えて,スタートボタン72の押下等による複写指示の入力を受け付けたときに,前ジョブの終了時における各可動トレイの状態を予測するようにしても良い。このようにすれば,原稿排紙用トレイの設定が不可能であると予測される場合等に,ユーザに原稿を載置するトレイを変更するよう指示することもできる。
また例えば,図1では画像形成部30として各装置を1組備えたものを示しているが,異なる色のトナーを有する複数組の装置を備えたカラー画像複写装置に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の形態の画像複写装置を示す概略構成図である。
【図2】ストッパを示す説明図である。
【図3】用紙センサを示す説明図である。
【図4】操作パネルを示す説明図である。
【図5】操作パネルを示す説明図である。
【図6】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図7】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図8】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図9】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図10】画像複写装置の原稿読み取り処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の形態の画像複写装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 画像複写装置
11 挿入口(原稿引き込み口)
12 排出口(原稿排出口)
13 原稿搬送路(原稿搬送経路)
20 原稿読取部(画像読み取り部)
36 用紙排出口(複写済媒体排出口)
37 コントローラ(読み取り開始時トレイ制御部,保留部,画像形成開始時トレイ制御部,画像記憶部,判定部)
51,52,53,54 可動トレイ(トレイ)
55,56,57,58 ストッパ
60 ストッパ解除部(退避部材)
71,73,74 操作パネル(開始指示受付部)
72 スタートボタン(開始指示受付部)
81 固定トレイ(複写済媒体専用トレイ)
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿の画像を読み取り,その画像を用紙に複写する画像複写装置および画像読み取り装置に関する。さらに詳細には,自動原稿搬送装置を有する画像複写装置とその自動原稿搬送装置によって搬送される原稿を読み取る画像読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,自動原稿搬送装置を有する画像複写装置では,原稿給紙トレイに置かれた束原稿から1枚ずつ引き込まれて読み取られる。そして,読取の終わった原稿は,原稿排紙トレイに積み重ねられる。読み取られた画像データは記憶装置に一旦保管され,そのデータに基づいて複写画像が形成される。また,マルチジョブに対応した画像複写装置もある。このような装置では,前のジョブの処理が終了する以前に,別のジョブを入力することができる。例えば,前のジョブの画像形成中に次の原稿を読み込ませることができる。
【0003】
このような装置の例として,複数の給紙トレイと複数の排紙トレイを有して,複数のジョブをセットできる画像複写装置が提案されている(例えば,特許文献1参照。)。この画像複写装置では,第1の給紙トレイから1つのジョブの原稿給紙が終了すると,自動的に次のトレイの原稿の読取が開始される。これにより,マルチジョブの効率化を図っている。また,複数の排紙トレイを給紙用として利用した画像複写装置も提案されている(例えば,特許文献2参照。)。この文献に記載の画像複写装置では,複数の排紙トレイに複数の原稿セットを置くことができる。そして,その複数の原稿セットが,順次読み取りに供される。
【特許文献1】特開2000−238952号公報
【特許文献2】特開平5−24736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の画像複写装置では,原稿カバーが大型化および重量化するという問題点があった。複数の給紙トレイと複数の排紙トレイとがいずれも原稿カバー上に設けられるからである。その一方で,書籍等の複写を形成するために置き取りをするときには,ユーザは原稿カバーを持ち上げる必要がある。従って,原稿カバーの重量化は好ましくないという問題点があった。
【0005】
一方,特許文献2に記載の画像複写装置では,読み取りの終わった原稿は,一旦装置内部のスタッカに蓄積される。そして,1つのジョブの原稿が全て読み取られると,スタッカから排紙トレイへと原稿が排紙される。このため,前のジョブの原稿排紙がすべて終了してからでなければ,次のジョブの読取を開始できない。従って,原稿読取の効率があまり良くないという問題点があった。
【0006】
さらに,この特許文献2に記載の画像複写装置では,原稿搬送経路が長い。さらには,原稿はスイッチバック経路で上下反転されている。一般に原稿シートは,画像形成用紙に比較して,搬送の信頼性を確保することが難しい。これは,原稿では用紙の種類が幅広いことによる。例えば,用紙端部の折れや用紙全体のたわみなどが発生していることが多い。さらには,インクの有無等によって,紙面上の摩擦係数の分布も一定でないことも多い。万一,搬送経路中でジャム等が発生した場合には,大切な原稿を損なうおそれがある。このため,原稿搬送経路を短く単純なものとしたいという要望があった。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置および画像読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像複写装置は,読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,原稿引き込み口から原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像を媒体に複写する画像複写装置であって,原稿引き込み口への原稿供給位置と,原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有するものである。
【0009】
本発明の画像複写装置によれば,原稿は原稿引き込み口から原稿排出口へと搬送される。また,これらの間には画像読み取り部があればよく,原稿搬送経路は原稿を途中方向反転なく導く単純な経路となっている。さらに,少なくとも3つのトレイが,原稿引き込み口への原稿供給位置と,原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって,上下方向に移動可能に設けられているので,原稿カバー上に原稿トレイ等が設けられる必要はない。従って,原稿カバーを重量化することはない。また,読み取り開始時トレイ制御部を有するので,これらのトレイを適宜移動させて原稿の読み取りを実行させることができる。さらには,保留部を有するので,他のトレイに原稿を載置してそのジョブの開始指示を入力した場合においても,実行中の読み取りの終了まで保留される。この保留されたジョブについても,実行中の読み取りが終了すれば,同様にトレイを移動させて原稿の読み取りが実行されるので,効率よくジョブが処理される。これにより,原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置となっている。
【0010】
さらに本発明では,原稿の画像を複写した複写済媒体を受け取る複写済媒体専用トレイを有することが望ましい。
このようにすれば,原稿の読み取りが終了する以前に,複写済媒体の形成と排出を行うことができる。従って,さらに効率よくジョブを処理することができる。
【0011】
さらに本発明では,少なくとも3つのトレイの移動範囲内に設けられ,原稿の画像を複写した複写済媒体を排出する複写済媒体排出口と,画像の媒体上への形成開始の際に,少なくとも3つのトレイの1つを,複写済媒体排出口から媒体を受け取る媒体受け取り位置に移動させる画像形成開始時トレイ制御部とを有することが望ましい。
このようにすれば,少ない数のトレイでも,原稿供給用,原稿受け取り用,複写済媒体受け取り用と状況に応じて使い分けることができる。従って,さらに効率よくジョブを処理することができる。
【0012】
さらに本発明では,画像読み取り部で取得した画像データを蓄積する画像記憶部を有し,画像の媒体上への形成を,すべての原稿の読み取りが終了してから開始することが望ましい。
このようにすれば,原稿受け取り用として利用したトレイを移動させて,複写済媒体受け取り用として利用できる。
【0013】
さらに本発明では,原稿の読み取り開始の前に,読み取り開始時トレイ制御部による処理が可能か否かを判定し,可能な場合に限り読み取り開始時トレイ制御部による処理を実行させる判定部を有することが望ましい。
このようにすれば,読み取りの終わった原稿を確実にトレイに受け取ることができる。
【0014】
さらに本発明では,少なくとも3つのトレイは,原稿引き込み口および原稿排出口の側が低い傾斜配置とされており,原稿引き込み口および原稿排出口の側への載置物の落下を防ぐストッパをそれぞれ有しており,原稿供給位置のトレイのストッパを退避させる退避部材を有することが望ましい。
このようにすれば,各トレイに載置された原稿等は,自重によって,原稿引き込み口や原稿排出口の側へ移動する。このとき,ストッパによって落下が防止されているので,トレイの移動中等に原稿がトレイから落下するおそれはない。一方,原稿供給位置においては,退避部材によってストッパが退避される。従って,原稿は自重によって原稿引き込み口へ供給される。
【0015】
また,本発明は,読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,原稿引き込み口から原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像データを取得する画像読み取り装置であって,原稿引き込み口への原稿供給位置と,原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有する画像読み取り装置にも及ぶ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像複写装置および画像読み取り装置によれば,原稿カバーを重量化せず,単純な原稿搬送経路で複数のジョブを効率よく処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「第1の形態」
以下,本発明を具体化した第1の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,自動原稿搬送装置を備えた画像複写装置に本発明を適用したものである。
【0018】
本形態の画像複写装置1は,図1にその概略を示すように,上から順に,原稿搬送部10,原稿読取部20,画像形成部30,用紙供給部40の各部を有している。原稿搬送部10は,図中上方の挿入口11から図中下方の排出口12へと原稿搬送路13を通して原稿を1枚ずつ搬送する。原稿搬送路13は,途中でUの字型に曲げられており,その曲部の下流側で原稿読取部20の読取位置21に対面している。これにより,原稿を搬送しながら読み取る,いわゆる流し撮りを行うようになっている。この画像複写装置1では,この他に原稿カバー14と原稿ガラス15とを有し,原稿ガラス15上の平置きの原稿を読み取る置き撮りもできるようになっている。ここでは,挿入口11が原稿引き込み口に相当する。また,排出口12が原稿排出口に相当する。
【0019】
原稿読取部20は,照明装置22,複数のミラー23,イメージセンサ24を有している。これにより,読取位置21を通過する原稿の画像を読み取り,画像データとして取得する。画像形成部30は,原稿読取部20で取得した画像データを基に,用紙に画像を形成する。ここでは,帯電部31,露光部32,現像部33,転写部34,定着部35を有して,電子写真方式の画像形成を行うものを例示している。画像が形成された用紙は,用紙排出口36から画像複写装置1の外部に排出される。さらに,画像複写装置1全体の制御を司るコントローラ37も有している。用紙供給部40は,各種の用紙を格納できる用紙カセット41を有している。そして,画像形成部30の画像形成動作に同期して選択的に用紙を供給する。ここで,用紙排出口36が複写済媒体排出口に相当する。
【0020】
この画像複写装置1では,図1に示すように,原稿搬送部10の挿入口11と排出口12,及び画像形成部30の用紙排出口36は,いずれも同じ側面に配置されている。そして,その側面側の外部には,4つの可動トレイ51,52,53,54が配置されている。それらの可動トレイ51,52,53,54は,画像複写装置1の外側面に沿って上下に移動可能にされている。各トレイの移動のための構成としては,例えば従来よりフィニッシャに用いられているものと同様の構成を利用できる。また,可動トレイ51,52,53,54は,画像複写装置1の側面へ向かって低くなるように配置されている。このため,紙等の載置物は図中右下方向へ重力によって移動される。
【0021】
ここでは,最も上側に配置される可動トレイ51の移動可能範囲は,少なくとも次の範囲となっている。最も上昇した位置では,可動トレイ51の図中右端部が原稿搬送部10の挿入口11よりやや上方位置に配置される。これは,図1に示す位置である。最も下降した位置では,可動トレイ51の図中右端部が,画像形成部30の用紙排出口36に対向する位置に配置される。また,上から2番目に配置された可動トレイ52の移動可能範囲は,少なくとも,その図中右端部が原稿搬送部10の挿入口11に対向する位置から,可動トレイ51の下端位置よりやや下方の位置までである。
【0022】
また,可動トレイ53は,原稿搬送部10の排出口12に対向する位置から,可動トレイ52の下端位置よりやや下方の位置まで移動可能である。また,可動トレイ54は,用紙排出口36に対向する位置から,可動トレイ53の下端位置よりやや下方の位置まで移動可能である。すなわち,これら4つの可動トレイ51,52,53,54は,少なくとも,図1に示す位置から,後に示す図9の位置まで移動できる。
【0023】
また,可動トレイ51,52,53,54には,それぞれストッパ55,56,57,58が設けられている。ストッパ55,56,57,58は,図2に示すように,ほぼ水平に配置される基部とその両端部から図中上方へ突出した柵部とを有している。基部は,バネ等によって図中上方へ付勢されている。そのため自然状態では,図1に示すように,例えばストッパ55の柵部は可動トレイ51の上面より上方へ突出した状態となっている。従ってこの状態では,可動トレイ51に載せられた用紙は,ストッパ55に当接して停止される。これにより,トレイ上面に保持される。他のトレイについても同様である。
【0024】
一方,原稿搬送部10の挿入口11の近傍にはストッパ解除部60が設けられている。ストッパ解除部60は,図2に示すように,ソレノイド61とレバー62とを有している。さらに,レバー62の凸部が画像複写装置1に設けられた溝63に係合されている。可動トレイ52が挿入口11に配置された場合には,図1に示すように,ストッパ56はストッパ解除部60によって引き下ろされて解除されることになる。
【0025】
すなわち,その場合には,ソレノイド61によってレバー62を引き下げる。これにより,レバー62の凸部が溝63によって誘導される。従って,レバー62の先端部が図中奥方向へと傾く。さらに,レバー62の先端部がストッパ56の基部に係合する。その結果,ストッパ56が図中下方へ引き下げられる。従って,用紙の引き込みが可能な状態となる。このストッパ解除部60が退避部材に相当する。
【0026】
また,可動トレイ51,52,53,54の上面には,用紙センサ59が設けられている。用紙センサ59は,例えば図3に示すような,ツメ機構であっても良い。このトレイ上に用紙が置かれると,このツメが押し下げられる。従って,その下部に設けられた検知装置により検知可能である。この用紙センサ59は,1枚の用紙に対しても反応する。また,ツメ機構以外にも,光学的センサ,電気的遮断センサ,あるいは静電容量や抵抗値の変化によるセンサで構成することもできる。あるいは,可動トレイ51,52,53,54に用紙センサ59を設ける代わりに,押しボタン等によって,ユーザに原稿を置いたことを指示してもらうようにしても良い。
【0027】
また,この画像複写装置1は,図4と図5に示すように,装置手前側に操作パネル71を有している。これは,スタートボタン72,各種入力キーやタッチパネル等を備えた一般的なものである。さらに,画像複写装置1では,図4に示すように,原稿カバー14の上部にさらに,大画面の表示パネル73を備えている。このような表示パネル73を利用すれば,ユーザへのメッセージを大きい文字で表示したり,詳しく説明したりすることができる。あるいは,絵表示等を行うこともできる。このようにできるのは,原稿カバー14上にはトレイや原稿搬送路13等が設けられていないからである。あるいは,図5に示すように,原稿カバー14の奥側に隣接して大画面の表示パネル74を設けても良い。
【0028】
次に,この画像複写装置1の複写動作を説明する。ここでは,可動トレイを4個としたので,ジョブを同時に3つまで受け付けることができる。より多くのトレイを備えれば,より多くのジョブを受け付けることが可能となる。これらの可動トレイは,原稿給紙用,原稿排紙用,複写済用紙排紙用として使い分けることができるからである。
【0029】
ここで,2つのジョブが続けて入力された場合について,図6〜図9を利用して説明する。まず,ユーザによって,第1のジョブの原稿が載置される。ここでは,可動トレイ52に載置されることが望ましい。そうすれば,画像複写装置1は,可動トレイ52を原稿給紙用トレイとして設定する。可動トレイ53が空であれば,これを原稿排紙用トレイとして設定することができる。さらに,可動トレイ54を,複写済用紙排出用トレイとして設定することができる。このように3種のトレイを同時に設定できる場合には,原稿の読み取りと並行して画像形成を実行できる。そのために,ユーザが原稿を置きやすいように,可動トレイ52と可動トレイ51との間隔を広くして待機すると良い。
【0030】
この状態で,スタートボタン72の押下等によって複写開始指示が入力されると,画像複写装置1はまず,この3つのトレイの配置を調整する。すなわち,可動トレイ52を挿入口11に,可動トレイ53を排出口12に,可動トレイ54を用紙排出口36にそれぞれ対向させる。その結果,各可動トレイ51,52,53,54は,図1に示すように配置される。さらに,可動トレイ52のストッパ56を退避させる。このとき,可動トレイ53や可動トレイ54が空でない場合は,トレイ上の用紙の除去を要求するメッセージを操作パネル71に表示する。あるいは,既載の用紙の上に重ねて排紙することとしても良い。
【0031】
そして,図6に示すように,第1のジョブの原稿G1の読み取りを開始する。原稿G1を挿入口11から1枚ずつ引き込み,読取位置21でその画像を読み取る。読み取った画像データは,コントローラ37の記憶部に一旦記憶する。読み取りの終わった原稿は,排出口12から可動トレイ53に排出する。可動トレイ53のストッパ57は退避されていないので,原稿G1は可動トレイ53上に保持される。
【0032】
また,画像形成部30では,読み取った画像データを基に第1のジョブの複写済用紙C1を形成する。そして,図7に示すように,用紙排出口36から排出する。複写済用紙C1は,用紙排出口36に配置された可動トレイ54に載置される。可動トレイ54のストッパ58も退避されていない。
【0033】
これらの処理の途中において,画像複写装置1は,第2のジョブを受け付けることができる。ユーザは,第2のジョブの原稿G2を,このとき使われていない一番上の可動トレイ51に載置する。この状態で,スタートボタン72の押下等によって複写開始指示が入力されると,画像複写装置1は,直近に載置された可動トレイ51上の用紙を第2のジョブの原稿であると判断して,このジョブを受け付ける。排出用として使用中でないトレイに用紙が置かれた場合は,原稿であると判断する。この第2のジョブの処理は,第1のジョブの原稿G1の読み取りが終了するまで保留される。
【0034】
原稿G1を全て読み取り終わると,図7に示すように,可動トレイ52が空になる。このことは,可動トレイ52の用紙センサ59によって判断できる。そこで,次に第2のジョブの原稿G2の読み取りの準備を行う。そのために,図8に示すように,可動トレイ51,52,53を移動させる。すなわち,可動トレイ51を挿入口11に,空の可動トレイ52を排出口12に移動させる。また,第1のジョブの原稿G1が載置された可動トレイ53を,可動トレイ52の下部に配置させる。また,ストッパ55を退避させ,ストッパ56,57は退避させない。
【0035】
このように配置しておいて,原稿G2の読み取りを開始する。すなわち,可動トレイ51から1枚ずつ読み取って,可動トレイ52へ排出する。読み取った画像データは,第1のジョブのデータとは区別して,コントローラ37の記憶部に一旦記憶する。すなわち,この画像複写装置1では,第1のジョブの原稿G1の読み取りが終了すれば,第2のジョブの原稿G2の読み取りを開始することができる。このとき,第1のジョブの画像形成や複写済用紙C1の排出は完了していなくても良い。従って,マルチジョブが可能となっている。
【0036】
第1のジョブの複写処理が終了したときに,第2のジョブの原稿G2の読み取りがまだ終了していない場合がある。この場合,各可動トレイは次のようになっている。可動トレイ51と可動トレイ52とを使用して,第2のジョブの原稿G2の読み取りが行われている。可動トレイ53には第1のジョブの原稿G1が,可動トレイ54には第1のジョブの複写済用紙C1がそれぞれ載置された状態となっている。すなわち,第2のジョブの複写済用紙C2を排出できる空きトレイがない。そこで,可動トレイ54の複写済用紙C1の上に重ねて排出する。このとき,複写済用紙C1を少し横にずらしたり,複写済用紙C2の縦横を変えて排出したりするとよい。それまでに,原稿G1が除去されている場合は,可動トレイ53を複写済用紙C2の排出用として利用できる。
【0037】
あるいは,第1のジョブの複写処理が終了する前に,第2のジョブの原稿G2の読み取りが終了した場合は,可動トレイ51が空となる。この場合は,可動トレイ52には第2のジョブの原稿G2が,可動トレイ53には第1のジョブの原稿G1が,可動トレイ54には第1のジョブの複写済用紙C1がそれぞれ載置されている。そこで,第1のジョブの複写処理が終了した後,図9に示すように,可動トレイ51を画像形成部30の用紙排出口36に移動させる。そして,第2のジョブの複写済用紙C2を可動トレイ51に排出する。このとき,可動トレイ51のストッパ55は退避されていない状態とする。このように,4個の可動トレイ51,52,53,54があれば,続けて2つのジョブを受け付け,連続して処理することができる。
【0038】
次に,この画像複写装置1による原稿読み取り処理について,図10に示すフローチャートを利用して説明する。ここでは,原稿読み取りに関する部分のみを説明する。この処理は,コントローラ37によって実行される。この処理が開始されるとまず,読み取り開始段階であるかどうかを判断する(S101)。例えば,ユーザによるスタートボタン72の押下等によって複写処理の指示入力があった時に,すでに実行中あるいは待機中の処理がなければ,このジョブの読み取り開始段階であるといえる。あるいは,他に優先されるジョブの読み取りがあれば,このジョブの読み取り開始は保留される。保留された場合は(S101:No),読み取り開始段階となるまで待機する。
【0039】
読み取り開始段階となったら(S101:Yes),そのときの各可動トレイ51,52,53,54の状態を確認する(S102)。すなわち,このジョブの原稿の載置されているトレイを原稿給紙用トレイとした場合に,その下部に原稿排紙用のトレイが必要である。そこで,原稿給紙用トレイの下部に,原稿排紙用トレイに設定できるような空のトレイがあるかどうかを判断する(S103)。
【0040】
各トレイが適切に設定できる場合は(S103:Yes),原稿の置かれている可動トレイを原稿給紙用のトレイとする。そして,選択された空のトレイを原稿排紙用トレイとする。原稿給紙用トレイを挿入口11に,原稿排紙用トレイを排出口12にそれぞれ移動させる(S104)。
【0041】
一方,原稿排紙用として利用できるトレイがない場合には(S103:No),操作パネル71等にエラー表示をする(S105)。例えば,「上から2番目のトレイ上の用紙を除去して下さい」等と表示し,ユーザによって除去されるのを待つ(S106)。そして,用紙が除去されるか,またはスタートボタン72の押下等によって強行が指示された場合は(S106:Yes),次に進む。また,エラー表示後所定の時間が経過した場合もそのまま次に進む。
【0042】
すなわち,用紙が除去された場合は,そのトレイを原稿排紙用トレイとする。用紙が除去されない場合は,既に置かれている用紙の上に重ねて,今回の原稿を排紙することにする。可能であれば,既に置かれている用紙を少し横にずらしたり,用紙の縦横を変えるなどするとよい。そうすると,それらの境目がよく分かる。そして,原稿給紙用トレイを挿入口11に,原稿排紙用トレイを排出口12にそれぞれ移動させる(S104)。
【0043】
次に,挿入口11のストッパ解除部60を駆動させ,原稿給紙用トレイのストッパを退避させる。これにより,原稿給紙用トレイに載置された原稿は,自重によってその先端部が挿入口11に入り込む。これ以外のトレイのストッパは,退避させない。そして,原稿搬送部10と原稿読取部20によって原稿を1枚ずつ搬送して読み取る(S107)。読み取りの終わった原稿は,原稿排紙用トレイに1枚ずつ排紙する(S108)。例えば,図6に示すように,原稿を可動トレイ52から1枚ずつ搬送して読み取り,可動トレイ53へと排紙する。
【0044】
さらに,まだ原稿給紙用トレイに原稿があるかどうかを判断する(S109)。まだ原稿があれば(S109:No),さらに読み取りを続ける(S107,S108)。原稿が無くなるまで(S109:Yes),読み取りを継続する。このとき,複写済用紙排出用トレイの設定が可能であれば,読み取りと並行して画像形成を開始できる。
【0045】
原稿給紙用トレイに載置された全ての原稿を読み取ったら(S109:Yes),さらに次のジョブが入力され保留されているかどうかを判断する(S110)。入力されていなければ(S110:No),これで読み取り処理を終了する。複写済用紙排出用トレイの設定が可能でなかった場合には,この後に画像形成を開始する。この場合は,原稿給紙用トレイとされていたトレイが空になっているので,これを複写済用紙排出用トレイとして設定する。保留されている次のジョブがあれば,S102に戻って,次のジョブに関するトレイの設定から原稿読取処理を実行する。
【0046】
以上詳細に説明したように本形態の画像複写装置1は,4つの可動トレイ51,52,53,54を有している。従って,それらを原稿給紙用,原稿排紙用,あるいは画像形成済み用紙排紙用として使い分けることができる。従って,複数のジョブの原稿を複数のトレイにそれぞれ載置できる。また,これらのトレイの配置は,原稿カバー14の上ではない。従って,置き取りのために原稿カバー14を持ち上げることは容易である。また,原稿搬送部10の原稿搬送路13はごく単純な経路となっている。これにより,原稿カバー14を重量化せず,単純な原稿搬送路13で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置1となっている。
【0047】
「第2の形態」
次に,本発明を具体化した第2の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,第1の形態の可動トレイの他に,上下に移動しない固定トレイを備えた画像複写装置である。第1の形態と共通の構成部分については,同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
本形態の画像複写装置2は,図11に示すように,第1の形態の画像複写装置1の一番下方の可動トレイ54に代えて,1つの固定トレイ81を備えたものである。固定トレイ81は,用紙排出口36に隣接して配置されている。この固定トレイ81は動かす必要がないので,比較的重量のあるトレイであってもかまわない。そこで,固定トレイ81として,可動トレイ51等よりも強度が大きいものとする。また,トレイ深さの大きいものを使用する。
【0049】
固定トレイ81は,画像形成済みの用紙を積載するためのものである。この画像複写装置2では,固定トレイ81を有しているので,多数枚の出力を行う場合に適している。可動トレイ51,52,53は,固定トレイ81よりやや上方までの範囲で上下に移動させる。従って,第1の形態の画像複写装置1と同様に,2つのジョブを受け付けることができる。
【0050】
以上詳細に説明したように本形態の画像複写装置2によれば,第1の形態の画像複写装置1と同様に,原稿カバー14を重量化せず,単純な原稿搬送路13で複数のジョブを効率よく処理できる画像複写装置2となっている。さらに,複数の可動トレイ51,52,53の他に1つの固定トレイ81を有するので,多数枚の出力にも適している。
【0051】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の第1の形態の画像複写装置1では,最も下側の可動トレイ54は常時排紙専用となる。従って,可動トレイ54では,退避可能なストッパ58に代えて,常時突出したものとしても良い。
【0052】
また例えば,上記の各形態において,複写処理終了後の各可動トレイ51,52,53,54に,載置されている用紙が原稿であるか複写済用紙であるかを区別する表示をするようにしても良い。あるいは,操作パネル71等に同様の内容の表示をしても良い。
また例えば,上記の各形態では,各可動トレイを4つ有しているとしたが,少なくとも3つの可動トレイがあれば,2つのジョブを処理することが可能である。その場合には,まず1つのジョブの原稿を全て読み取る。その後,原稿排紙用トレイを用紙排出口36へ移動させ,原稿の上に重ねて複写済用紙を排出する。このとき,排出位置を少しずらす等により,それらの境目をわかりやすくすると良い。
【0053】
また例えば,上記の各形態では,そのジョブの原稿読み取りを開始する直前に,各可動トレイの状態を確認している。これに代えて,スタートボタン72の押下等による複写指示の入力を受け付けたときに,前ジョブの終了時における各可動トレイの状態を予測するようにしても良い。このようにすれば,原稿排紙用トレイの設定が不可能であると予測される場合等に,ユーザに原稿を載置するトレイを変更するよう指示することもできる。
また例えば,図1では画像形成部30として各装置を1組備えたものを示しているが,異なる色のトナーを有する複数組の装置を備えたカラー画像複写装置に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の形態の画像複写装置を示す概略構成図である。
【図2】ストッパを示す説明図である。
【図3】用紙センサを示す説明図である。
【図4】操作パネルを示す説明図である。
【図5】操作パネルを示す説明図である。
【図6】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図7】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図8】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図9】画像複写装置の動作を示す説明図である。
【図10】画像複写装置の原稿読み取り処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の形態の画像複写装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 画像複写装置
11 挿入口(原稿引き込み口)
12 排出口(原稿排出口)
13 原稿搬送路(原稿搬送経路)
20 原稿読取部(画像読み取り部)
36 用紙排出口(複写済媒体排出口)
37 コントローラ(読み取り開始時トレイ制御部,保留部,画像形成開始時トレイ制御部,画像記憶部,判定部)
51,52,53,54 可動トレイ(トレイ)
55,56,57,58 ストッパ
60 ストッパ解除部(退避部材)
71,73,74 操作パネル(開始指示受付部)
72 スタートボタン(開始指示受付部)
81 固定トレイ(複写済媒体専用トレイ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,前記原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,前記原稿引き込み口から前記原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,前記原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,前記原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像を媒体に複写する画像複写装置において,
前記原稿引き込み口への原稿供給位置と,前記原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,
ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,
前記少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,
原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が前記開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての前記読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像複写装置において,
原稿の画像を複写した複写済媒体を受け取る複写済媒体専用トレイを有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像複写装置において,
前記少なくとも3つのトレイの移動範囲内に設けられ,原稿の画像を複写した複写済媒体を排出する複写済媒体排出口と,
画像の媒体上への形成開始の際に,前記少なくとも3つのトレイの1つを,前記複写済媒体排出口から媒体を受け取る媒体受け取り位置に移動させる画像形成開始時トレイ制御部とを有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像複写装置において,
前記画像読み取り部で取得した画像データを蓄積する画像記憶部を有し,
画像の媒体上への形成を,すべての原稿の読み取りが終了してから開始することを特徴とする画像複写装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像複写装置において,
原稿の読み取り開始の前に,前記読み取り開始時トレイ制御部による処理が可能か否かを判定し,可能な場合に限り前記読み取り開始時トレイ制御部による処理を実行させる判定部を有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像複写装置において,
前記少なくとも3つのトレイは,
前記原稿引き込み口および前記原稿排出口の側が低い傾斜配置とされており,
前記原稿引き込み口および前記原稿排出口の側への載置物の落下を防ぐストッパをそれぞれ有しており,
原稿供給位置のトレイのストッパを退避させる退避部材を有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項7】
読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,前記原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,前記原稿引き込み口から前記原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,前記原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,前記原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像データを取得する画像読み取り装置において,
前記原稿引き込み口への原稿供給位置と,前記原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,
ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,
前記少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,
原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が前記開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての前記読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有することを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項1】
読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,前記原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,前記原稿引き込み口から前記原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,前記原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,前記原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像を媒体に複写する画像複写装置において,
前記原稿引き込み口への原稿供給位置と,前記原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,
ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,
前記少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,
原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が前記開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての前記読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像複写装置において,
原稿の画像を複写した複写済媒体を受け取る複写済媒体専用トレイを有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像複写装置において,
前記少なくとも3つのトレイの移動範囲内に設けられ,原稿の画像を複写した複写済媒体を排出する複写済媒体排出口と,
画像の媒体上への形成開始の際に,前記少なくとも3つのトレイの1つを,前記複写済媒体排出口から媒体を受け取る媒体受け取り位置に移動させる画像形成開始時トレイ制御部とを有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像複写装置において,
前記画像読み取り部で取得した画像データを蓄積する画像記憶部を有し,
画像の媒体上への形成を,すべての原稿の読み取りが終了してから開始することを特徴とする画像複写装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像複写装置において,
原稿の読み取り開始の前に,前記読み取り開始時トレイ制御部による処理が可能か否かを判定し,可能な場合に限り前記読み取り開始時トレイ制御部による処理を実行させる判定部を有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像複写装置において,
前記少なくとも3つのトレイは,
前記原稿引き込み口および前記原稿排出口の側が低い傾斜配置とされており,
前記原稿引き込み口および前記原稿排出口の側への載置物の落下を防ぐストッパをそれぞれ有しており,
原稿供給位置のトレイのストッパを退避させる退避部材を有することを特徴とする画像複写装置。
【請求項7】
読み取り前の原稿を引き込む原稿引き込み口と,前記原稿引き込み口の上方または下方に位置し,読み取り後の原稿を排出する原稿排出口と,前記原稿引き込み口から前記原稿排出口まで原稿を途中方向反転なく導く原稿搬送経路と,前記原稿搬送経路の途中に設けられた画像読み取り部とを有し,前記原稿引き込み口から引き込んだ原稿の画像データを取得する画像読み取り装置において,
前記原稿引き込み口への原稿供給位置と,前記原稿排出口からの原稿受け取り位置とを包含する範囲にわたって上下方向に移動可能な少なくとも3つのトレイと,
ユーザによるジョブの開始指示を受け付ける開始指示受付部と,
前記少なくとも3つのトレイの1つに載置された原稿についての読み取り開始の際に,当該トレイを原稿供給位置に移動させるとともに,残りのトレイの1つを原稿受け取り位置に移動させる読み取り開始時トレイ制御部と,
原稿供給位置のトレイの原稿についての読み取りの実行中に,他のトレイに載置された原稿についてのジョブの開始指示が前記開始指示受付部に入力されると,実行中の読み取りの終了まで,当該原稿についての前記読み取り開始時トレイ制御部による処理を保留する保留部とを有することを特徴とする画像読み取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−111413(P2006−111413A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301365(P2004−301365)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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