説明

画像記録装置、補正値算出装置及び方法、並びにプログラム

【課題】入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行う。
【解決手段】複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンを各記録素子により記録媒体上に出力する出力工程と、出力したテストパターンを測定する測定工程と、複数の階調値と複数の階調値に対する測定値とから、記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出工程と、特性関数の逆関数から、記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出工程と、基準特性関数の逆関数から任意の平均出力階調値を入力階調値として出力測定値を取得し、記録素子毎の特性関数の逆関数から取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、取得した記録素子毎の出力階調値を入力階調値における記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置、補正値算出装置及び方法、並びにプログラムに係り、特に記録素子の出力特性に応じて画像データを補正するための濃度ムラ補正値を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いて記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドに具備された多数のノズル(記録素子)が持つ吐出特性のばらつきによって、記録画像に濃度ムラ(濃度不均一)が生じ、画質上問題となる。
【0003】
この濃度ムラを補正するために、ノズルに入力信号を与え、ノズル毎にその特性バラツキによってムラのある濃度が出力される時、この出力濃度を測定し、測定値を元に補正した入力信号をノズルに与えることによって、ムラの無い濃度を出力できるようにする技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、所定方向に配列した複数の画像記録素子を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドにより記録されたテストパターンを読み取る読み取り手段と、該読み取り手段により読み取られたテストパターンの濃度むら分布に基づき濃度むらを補正する濃度むら補正手段とを備え、かつ、階調補正情報を入力する入力手段と、該入力手段により入力された階調補正情報に基づき階調を補正する階調補正手段とを備えた画像記録装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の装置によれば、短時間で濃度ムラ補正データを作成することができ、機械のダウンタイムを最小に抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−162976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、測定した濃度値を平均し、この値に対する差分に基づいて補正値を算出しているので、画像データの入力濃度値と濃度ムラ補正後の出力濃度値とに差異が生じる可能性がある。特に、複数ノズルの中に、他より濃度が薄い又は濃いノズル等の吐出特性が異なるノズルがある場合には、特にこの差異が大きくなるという問題点がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行う画像記録装置、補正値算出装置及び方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に記載の補正値算出方法は、複数の記録素子を有する記録ヘッドの各記録素子の特性に起因する出力画像の濃度ムラを補正するためのムラ補正値を算出する補正値算出方法において、複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力工程と、前記出力した濃度測定用テストパターンを測定する測定工程と、前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記測定工程により測定された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出工程と、前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出工程と、前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、濃度測定用テストパターンを出力し、出力した濃度測定用テストパターンを測定し、濃度測定用テストパターンの複数の階調値と測定された複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出し、特性関数の逆関数から測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出し、基準特性関数の逆関数及び記録素子毎の特性関数の逆関数から記録素子毎のムラ補正値を算出するようにしたので、入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行うことができる。
【0011】
前記目的を達成するために請求項2に記載の補正値算出装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドの各記録素子の特性に起因する出力画像の濃度ムラを補正するためのムラ補正値を算出する補正値算出装置において、前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力された複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンの測定結果であって、前記複数の階調値に対する測定値を取得する取得手段と、前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記取得手段により取得された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出手段と、前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出手段と、前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、濃度測定用テストパターンの複数の階調値と測定された複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出し、特性関数の逆関数から測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出し、基準特性関数の逆関数及び記録素子毎の特性関数の逆関数から記録素子毎のムラ補正値を算出するようにしたので、入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行うことができる。
【0013】
請求項3に示すように請求項2に記載の補正値算出装置において、前記補正値算出手段は、前記ムラ補正値をルックアップテーブルとして記憶手段に記憶することを特徴とする。
【0014】
これにより、記憶手段からルックアップテーブルから読み出すことにより、適切に出力画像の濃度ムラを補正することができる。
【0015】
請求項4に示すように請求項2又は3に記載の補正値算出装置において、前記特性関数算出手段は、前記取得手段により取得された測定結果から記録素子毎にプロットされる階調値と該階調値に対する測定値を示す座標であって、隣り合う2つの座標の間を直線で補間することで前記記録素子毎の特性関数を算出することを特徴とする。
【0016】
これにより、単純な演算で記録素子毎の特性関数を算出することができる。
【0017】
請求項5に示すように請求項2から4のいずれかに記載の補正値算出装置において、前記基準特性関数算出手段は、任意の複数の測定値として3つ以上の測定値を選択し、前記任意の複数の測定値の間隔は、前記出力階調値が高いほど小さいことを特徴とする。
【0018】
これにより、精度の良い基準特性関数を算出することができる。
【0019】
前記目的を達成するために請求項6に記載の画像記録装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段と、複数の入力階調値からなる濃度測定用テストパターンを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、前記出力した濃度測定用テストパターンを測定する測定手段と、前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記測定手段により測定された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出手段と、前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出手段と、前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出手段と、前記算出されたムラ補正値に基づいて、前記記録ヘッドによって記録すべき画像データを補正する補正手段と、前記補正された画像データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、濃度測定用テストパターンを出力し、出力した濃度測定用テストパターンを測定し、濃度測定用テストパターンの複数の階調値と測定された複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出し、特性関数の逆関数から測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出し、基準特性関数の逆関数及び記録素子毎の特性関数の逆関数から記録素子毎のムラ補正値を算出し、算出されたムラ補正値に基づいて記録すべき画像データを補正し、補正された画像データに基づいて記録ヘッドを駆動するようにしたので、入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行うことができる。
【0021】
前記目的を達成するために請求項7に記載の補正値算出プログラムは、複数の記録素子を有する記録ヘッドの各記録素子の特性に起因する出力画像の濃度ムラを補正するためのムラ補正値を算出する補正値算出プログラムにおいて、前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力された複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンの測定結果であって、前記複数の階調値に対する測定値を取得する取得機能と、前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記測定機能により測定された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出機能と、前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出機能と、前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出機能と、をコンピュータに実現させる。
【0022】
請求項7に記載の発明のように、補正値算出機能をコンピュータに実現させるプログラムも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図2】濃度測定用テストチャートを示す平面図
【図3】各ノズルの特性曲線を示す図
【図4】各ノズルの特性曲線の逆関数から基準特性曲線を算出する処理を示す図
【図5】基準特性曲線からノズル毎のムラ補正値を算出する処理を示す図
【図6】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図
【図7】図6に示したインクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の要部平面図
【図8】(a)ヘッドの構造例を示す平面透視図 (b)図8(a)の要部拡大図 (c)フルライン型ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図9】図8(a)の4−4線に沿う断面図
【図10】図8(a)に示したヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図11】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係るムラ補正値の算出処理を示すフローチャートである。
【0027】
最初に、濃度測定用テストチャート(テストパターン)を出力する(ステップS1)。図2は、ステップS1で出力する濃度測定用テストチャート100を示す平面図である。ここでは、各色ヘッドのうち、1色のヘッドによって印字された濃度測定用テストチャートを示している。
【0028】
図2に示すように、濃度測定用テストチャート100は、ノズル列方向に階調値が一定であり、用紙搬送方向に所定の幅を有する濃度パッチを、用紙搬送方向に複数段(図では入力階調値1〜入力階調値8の8段)印字したものである。ここでは、入力階調値が最も低い入力階調値8の濃度パッチから最も高い入力階調値1の濃度パッチまで、入力階調値が低い順に印字されるように各濃度パッチが配置されているが、濃度パッチの配置及び段数はこれに限定されるものではない。
【0029】
濃度測定用テストチャート100は、搬送方向に搬送される用紙に、長尺ヘッドの全てのノズルからインクを吐出して一度の走査において形成される。したがって、各濃度パッチの用紙搬送方向に直交する方向の長さは、ノズル列の幅と等しい。
【0030】
次に、出力した濃度測定用テストチャート100をスキャナにより測定(読み取り)する(ステップS2)。ここでは、濃度測定用テストチャート100の8段の濃度パッチに対して、ノズル毎のY値を測定する。
【0031】
この測定結果から、階調値を入力、測定値を出力とする各ノズルの特性曲線(特性関数)を算出する(ステップS3)。図3は、例として5つのノズル(ノズルa〜ノズルe)の測定結果から算出した各ノズルの特性曲線101を示す図である。図3では、5つのノズルの特性曲線を示しているが、実際には、全てのノズルについて特性曲線を算出する。
【0032】
特性曲線100の算出は、まず実際に測定した8段の濃度パッチに対応する8点の入力階調値と、当該8点の入力階調値に対する測定値(Y値)を、横軸を階調値、縦軸を測定値とした座標上にプロットする。次に、隣り合うプロット点間を直線で結ぶことにより、実際には測定を行っていない入力階調値における測定値を補間する。
【0033】
したがって、特性曲線は、実際には曲線ではなく折れ線で表されている。なお、折れ線ではなく、プロット点に基づいて算出した近似曲線を用いて補間してもよい。この処理を、ノズル毎に行う。
【0034】
図3に示すように、各ノズルの特性曲線101は、入力階調値に対して非線形な特性を有している。
【0035】
次に、各ノズルの特性曲線(特性関数)101の逆関数に基づいて、測定値を入力、階調値を出力とする基準特性曲線(基準特性関数)を算出する(ステップS4)。図4は、各ノズルの特性曲線101の逆関数から基準特性曲線102を算出する処理を示す図である。
【0036】
図4に示すように、基準特性曲線102は、特性曲線101の任意の複数の測定値に対するノズル毎の出力階調値の平均値(平均出力階調値)を示したものである。
【0037】
基準特性曲線102の算出は、各ノズルの特性曲線101の逆関数から、任意の測定値iを入力とした時の各ノズルの出力階調値fn(i)をそれぞれ求め(添え字nは各ノズルを示す)、この出力階調値fn(i)の平均値である平均入力階調値f(i)AVGを算出する。
【0038】
上記の測定値iを順次変更して、各測定値iに対する平均入力階調値f(i)AVGを算出し、縦軸を測定値i、横軸を平均出力階調値f(i)AVGとした座標上にプロットすることで、基準特性曲線102を算出する。ここでは、256個の測定値iとその平均入力階調値f(i)AVGを算出する。
【0039】
なお、測定値iを離散的に変更する間隔は、出力階調値が高い領域では細かく、出力階調値が低い領域では大きく変更することが好ましい。即ち、出力階調値の変化量が小さいほど測定値iの変化量も小さくなるように測定値iを選択する。各ノズルの特性曲線101は、出力階調値が高いほど各ノズルのばらつきが大きいからである。
【0040】
このように測定値iを選択することで、精度の良い基準特性曲線102を算出することができる。
【0041】
この基準特性曲線102に基づいて、ムラ補正値を算出する(ステップS5)。図5は、基準特性曲線102からノズル毎のムラ補正値を算出する処理を示す図である。
【0042】
同図に示すように、まず基準特性曲線102の逆関数から、任意の入力階調値gに対する出力測定値を取得する。そして、各ノズルの特性曲線101から、当該取得した出力測定値に対するノズル毎の出力階調値を算出する。この取得したノズル毎の出力階調値を、当該入力階調値gにおけるノズル毎のムラ補正値として取得する。
【0043】
上記の入力階調値gを順次変更して、複数の入力階調値gに対するムラ補正値を取得することで、全入力階調値における出力階調値の変換ルックアップテーブル(LUT)をノズル毎に生成する。生成したLUTは、装置内のメモリ等に記憶させておく。
【0044】
画像出力時、出力すべき画像データに対して、このLUTに基づいて濃度ムラ補正を行うことで、濃度ムラの無い画像を出力することができる(ステップS6)。
【0045】
このように、全ノズルの平均を示す基準特性曲線を算出する際に、各測定値におけるノズル毎の階調値を平均して基準特性曲線を算出することで、適切な基準特性曲線を算出することができる。
【0046】
即ち、従来は、各階調値におけるノズル毎の測定値を平均することにより、基準特性曲線を算出していた。しかし、ノズル毎の輝度やY値である測定値の平均値は、その物理的意義が必ずしも明確でない。
【0047】
これに対し、本実施形態に係る補正値算出方法によれば、ノズル毎のインク量に相当する階調値の平均値を算出することで基準特性曲線を算出している。このように、物理的なインク量を平均することで、適切な基準特性曲線を算出することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、この基準特性曲線を用いてノズル毎のムラ補正値を算出している。このように算出したムラ補正値によれば、入力階調値と出力階調値との差異が生じないムラ補正を行うことが可能となる。
【0049】
即ち、従来は、各階調値におけるノズル毎の測定値を平均していたため、濃度が薄いノズルや濃度が濃いノズルが存在していると、平均値がそのノズルによりシフトしてしまう。したがって、この平均値から算出した基準特性曲線を用いた場合には、ムラ補正は可能であるものの、ムラ補正後の出力階調値が入力階調値とはシフトしてしまい、所望の階調が出力されない場合があった。
【0050】
本実施形態では、測定値を基準として階調値の平均値を算出しているので、ムラ補正後の出力階調値は、全てのノズルにおいて基準とした測定値の濃度を出力することとなる。
【0051】
なお、本実施形態に係る補正値算出装置は、コンピュータであってもよい。即ち、複数のノズルを有する画像記録装置から出力された濃度測定用テストチャートをスキャナにより測定し、測定データをコンピュータに入力するようにしてもよい。この測定データに基づいて、コンピュータにおいてノズル毎のムラ補正値をLUTとして算出することができる。さらに、リムーバブルな記録媒体や有線・無線の通信を用いることにより、算出されたLUTを画像記録装置に入力することで、画像記録装置において各ノズルの濃度ムラ補正が可能となる。また、コンピュータにムラ補正値を算出させるためのプログラムも、本発明に含まれる。
【0052】
また、インラインスキャナを有する画像記録装置においては、全ての工程を一連の動作として処理することも可能である。例えば、電源投入時等のユーザが指示したタイミングにおいて、記録ヘッドにより濃度測定用テストチャートを出力し、インラインスキャナにより測定し、ノズル毎のムラ補正値をルックアップテーブルとして記憶手段に記憶してもよい。
【0053】
[インクジェット記録装置の構成]
次に、前述した濃度補正値の算出処理を行う画像記録装置の具体的な適用例としてのインクジェット記録装置について説明する。
【0054】
図6は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する記録ヘッド112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記記録ヘッド112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、記録ヘッド112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0055】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0056】
図6では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0057】
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0058】
給紙部118から送出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0059】
ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0060】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0061】
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図6に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
【0062】
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図11の符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図6上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図6の左から右へと搬送される。
【0063】
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0064】
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0065】
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において記録ヘッド112の上流側には、処理液付与部140が設けられている。処理液付与部140は、印字前の用紙の記録面に処理液を付与する機構であり、処理液は、後述するインク中の色材(顔料もしくは染料)を凝集又は増粘させる成分を含有している。処理液の付与方法としては、インクジェットヘッドによる打滴、ローラによる塗布、スプレーによる一様付与等、いずれでもよおい。
【0066】
記録ヘッド112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図7参照)。
【0067】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0068】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0069】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と記録ヘッド112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0070】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0071】
図6に示した印字検出部124は、記録ヘッド112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストチャート又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。前述した濃度測定用テストチャートの画像も、印字検出部124において読み取り(測定)が行われる。
【0072】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0073】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0074】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0075】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図6には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0076】
[ヘッドの構造]
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
【0077】
図8(a)は、ヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図8(b)は、図8(a)の一部の拡大図である。また、図8(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図であり、図9は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図8(a)の4−4線に沿う断面図)である。
【0078】
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図8(a)及び図8(b)に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0079】
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図8(a)の構成に代えて、図8(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0080】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図8(a)、図8(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0081】
図9に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0082】
圧力室152の一部の面(図9において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0083】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図10に示すように主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0084】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が一例で1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0085】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロック毎に片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0086】
特に、図10に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151−11、151−12、151−13、151−14、151−15、151−16を1つのブロックとし(他にはノズル151−21、…、151−26を1つのブロック、ノズル151−31、…、151−36を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151−11、151−12、…、151−16を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
【0087】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0088】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(あるいは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0089】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0090】
[制御系の説明]
図11は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。
【0091】
図11に示すように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0092】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0093】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0094】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0095】
また、システムコントローラ172は、印字検出部124から読み込んだ濃度測定用テストチャートの読取データから、各ノズルの濃度測定値を測定する。さらに、この測定した濃度測定値から各ノズルの濃度ムラ補正値を算出する。算出された濃度ムラ補正値は、濃度補正値記憶部190に記憶される。
【0096】
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(濃度測定用テストチャートのデータを含む)などが格納されている。ROM175は、書き換え不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段であってもよい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175を濃度補正値記憶部190として兼用する構成も可能である。
【0097】
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0098】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
【0099】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0100】
すなわち、プリント制御部180は、濃度データ生成部180Aと、濃度補正部180Bと、インク吐出データ生成部180Cと、駆動波形生成部180Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(180A〜180D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
【0101】
濃度データ生成部180Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
【0102】
濃度補正部180Bは、濃度補正値記憶部190に格納されている濃度ムラ補正値を用いて濃度ムラ補正の演算を行う処理手段である。
【0103】
インク吐出データ生成部180Cは、濃度補正部180Bで生成された補正後の濃度データから2値(又は多値)のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。インク吐出データ生成部180Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド150のインク吐出動作が制御される。
【0104】
駆動波形生成部180Dは、ヘッド150の各ノズル151に対応したアクチュエータ158(図9参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0105】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図11において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0106】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
【0107】
インクジェット記録装置110では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180の濃度データ生成部180A、濃度補正部180B、インク吐出データ生成部180Cを経てインク色毎のドットデータに変換される。
【0108】
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0109】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0110】
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0111】
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0112】
印字検出部124は、図6で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。なお、濃度測定用テストチャート読み取り用の印字検出部をインクジェット記録装置110とは別に設けるようにしてもよい。
【0113】
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0114】
なお、図11で説明した濃度データ生成部180A、濃度補正部180Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ186側に搭載する態様も可能である。
【0115】
また、上記の実施形態では、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。即ち、本発明は、インクジェット記録装置以外の形式の画像記録装置、例えば、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタについても適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
10…ラインヘッド、100…濃度測定用テストチャート、101…各ノズルの特性曲線、102…基準特性曲線、110…インクジェット記録装置、112…記録ヘッド、112K,112C,112M,112Y…ヘッド、114…インク貯蔵/装填部、116…記録紙、122…ベルト搬送部(搬送手段)、124…印字検出部、150…ヘッド、151…ノズル(記録素子)、172…システムコントローラ、180…プリント制御部、180B…濃度補正部、184…ヘッドドライバ、190…濃度補正値記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を有する記録ヘッドの各記録素子の特性に起因する出力画像の濃度ムラを補正するためのムラ補正値を算出する補正値算出方法において、
複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力工程と、
前記出力した濃度測定用テストパターンを測定する測定工程と、
前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記測定工程により測定された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出工程と、
前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出工程と、
前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出工程と、
を備えたことを特徴とする補正値算出方法。
【請求項2】
複数の記録素子を有する記録ヘッドの各記録素子の特性に起因する出力画像の濃度ムラを補正するためのムラ補正値を算出する補正値算出装置において、
前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力された複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンの測定結果であって、前記複数の階調値に対する測定値を取得する取得手段と、
前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記取得手段により取得された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出手段と、
前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出手段と、
前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出手段と、
を備えたことを特徴とする補正値算出装置。
【請求項3】
前記補正値算出手段は、前記ムラ補正値をルックアップテーブルとして記憶手段に記憶することを特徴とする請求項2に記載の補正値算出装置。
【請求項4】
前記特性関数算出手段は、前記取得手段により取得された測定結果から記録素子毎にプロットされる階調値と該階調値に対する測定値を示す座標であって、隣り合う2つの座標の間を直線で補間することで前記記録素子毎の特性関数を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の補正値算出装置。
【請求項5】
前記基準特性関数算出手段は、任意の複数の値として3つ以上の入力測定値を選択し、
前記任意の複数の測定値の間隔は、前記出力階調値が高いほど小さいことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の補正値算出装置。
【請求項6】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段と、
複数の入力階調値からなる濃度測定用テストパターンを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、
前記出力した濃度測定用テストパターンを測定する測定手段と、
前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記測定手段により測定された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出手段と、
前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出手段と、
前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出手段と、
前記算出されたムラ補正値に基づいて、前記記録ヘッドによって記録すべき画像データを補正する補正手段と、
前記補正された画像データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】
複数の記録素子を有する記録ヘッドの各記録素子の特性に起因する出力画像の濃度ムラを補正するためのムラ補正値を算出する補正値算出プログラムにおいて、
前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力された複数の階調値からなる濃度測定用テストパターンの測定結果であって、前記複数の階調値に対する測定値を取得する取得機能と、
前記濃度測定用テストパターンの複数の階調値と前記測定機能により測定された前記複数の階調値に対する測定値とから、階調値を入力、測定値を出力とする記録素子毎の特性関数を算出する特性関数算出機能と、
前記特性関数の逆関数から、任意の複数の値を入力測定値として記録素子毎の出力階調値を取得し、取得した記録素子毎の出力階調値の平均値である平均出力階調値を算出することで、測定値を入力、平均出力階調値を出力とする基準特性関数を算出する基準特性関数算出機能と、
前記基準特性関数の逆関数から任意の複数の値を入力階調値として出力測定値を取得し、前記記録素子毎の特性関数の逆関数から前記取得した出力測定値を入力として記録素子毎の出力階調値を取得することで、前記取得した記録素子毎の出力階調値を前記入力階調値における前記記録素子毎のムラ補正値として算出する補正値算出機能と、
をコンピュータに実現させるための補正値算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−66516(P2012−66516A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214104(P2010−214104)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】