説明

異方性粒子を使用したアクリル系材料における装飾的外観の調製方法

アクリル系材料における装飾的外観は、アスペクト比3を有する異方性粒子を含有する流動性の架橋可能なアクリル系材料を収縮性支持材に塗布し、続いて架橋して固体物品を形成することによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性粒子を使用したアクリルポリマー組成物における装飾的表面模様の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルポリマー組成物を含有する固体表面材料は、従来技術において知られている。そのアクリルポリマー組成物に関しては、異方性粒子の異なる配向により異なる外観を可能ならしめる異方性粒子を含有することもまた知られている。
【0003】
米国特許第6,203,911号明細書は、2種類の異なる熱開始剤を含むアクリル系成形組成物を含有するアクリル系成形組成物を開示している。
【0004】
米国特許第6,476,111号明細書は、ポリエステルなどの半結晶性ポリマーを含有するアクリル含有組成物を開示している。
【0005】
米国特許第6,702,967号明細書は、異方性粒子を使用したアクリル系材料における装飾模様の形成について開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アクリルポリマー組成物において装飾的表面模様を作り出す新しい方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)架橋性アクリル系材料および異方性粒子を含有し、それら異方性粒子の大部分が少なくとも3のアスペクト比を有する液状組成物を形成するステップと、
(b)この液状組成物を、少なくとも1%の収縮能力を有する支持材に塗布するステップと、
(c)この液状組成物を凝固させて固体物品を形成するステップと、
を含む、アクリル系材料における装飾的外観を調製する方法を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細な説明はまず、最終の固体物品になる出発材料に関する第I部と、最終の固体物品を生産する方法に関する第II部とを含む幾つかの部に分けて述べる。
【0009】
第I部−好適な出発材料
アクリル系材料
好適なアクリル系材料には、アクリル系モノマー、アクリル系部分重合体、およびアクリル系モノマー以外の共重合用ビニルモノマーが挙げられる。好ましいモノマーはメタクリル酸メチル(MMA)であり、また好ましいポリマーはポリ(メタクリル酸メチル)である。このアクリル含有材料は、架橋して固体の物品を形成することができる液体である。
【0010】
重合可能な成分として有用な他のモノマーは、炭素原子1〜18個、好ましくは炭素原子1〜4個のアルキル基を含むアクリル酸およびメタクリル酸アルキルである。好適なアクリルモノマーは、アクリル酸メチルと、アクリル酸およびメタクリル酸エチルと、アクリル酸およびメタクリル酸n−プロピルおよびi−プロピルと、アクリル酸およびメタクリル酸n−ブチル、2−ブチル、i−ブチルおよびt−ブチルと、アクリル酸およびメタクリル酸2−エチルヘキシルと、アクリル酸およびメタクリル酸シクロヘキシルと、アクリル酸およびメタクリル酸ω−ヒドロキシアルキルと、アクリル酸およびメタクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキルと、アクリル酸およびメタクリル酸N−[t−ブチル]アミノエチルである。
【0011】
アクリル系材料と共に他の不飽和モノマーを含むことができ、具体例としてはスチレンと、ビニルホスホン酸ビス−[β−クロロエチル]と、酢酸ビニルと、α−メチレンブチロラクトン(MBL)と、アクリロニトリルと、メタクリロニトリルと、アクリルおよびメタクリル酸と、2−ビニルおよび4−ビニルピリジンと、マレイン酸、無水マレイン酸、およびマレリン酸エステルと、アクリルアミドおよびメタクリルアミドと、イタコン酸、無水イタコン酸、およびイタコン酸エステルと、不飽和ポリエステルなどの架橋用の多官能性モノマー、すなわちジアクリル酸およびジメタクリル酸アルキレンと、アクリル酸およびメタクリル酸アリルと、N−ヒドロキシメチルアクリルアミドおよびN−ヒドロキシメチルメタクリルアミドと、N,N′−メチレンジアクリルアミドおよびジメタクリルアミドと、アクリル酸およびメタクリル酸グリシジルと、フタル酸ジアリルと、ジビニルベンゼンと、ジビニルトルエンと、トリアクリル酸およびトリメタクリル酸トリメチロールプロパンと、テトラアクリル酸およびテトラメタクリル酸ペンタエリトリトールと、クエン酸トリアリルおよびシアヌル酸トリアリルが挙げられる。
【0012】
異方性粒子
本方法において使用する出発配合物に必要な成分は異方性粒子である。異方性は、その普通の意味で使用され、様々な方向で軸に沿って測定した場合の様々な値により諸特性を表現する能力を示す。本発明の目的では異なる値は、物品の異なる外観に固有のものである。同じ粒子が、観察者が粒子を見る角度に応じて異なった外観を有する。本発明で使用する組成物中の多数の異方性粒子に関して、心地よい視覚効果をもたらす最終の固体物品中の粒子の向きにはある程度の不規則性が存在する。
【0013】
本明細書中で使用される異方性粒子の要件は、その異方性粒子の少なくとも大多数が、少なくとも3のアスペクト比を有することである。アスペクト比とは、その同一軸または同一平面にない最小寸法(通常は厚さを言う)と比べた場合の粒子の最大寸法(通常は長さまたは幅を言う)を意味する。この定義の範囲に入る粒子のグループは、第3の寸法よりも大きい2つの寸法を有すると考えることができる板状の外観を有する。繊維およびリボンがこの粒子の範囲内にあると解釈される。
【0014】
一般には、この異方性粒子のアスペクト比に対する上限は存在しない。しかしながら幾つかの用途ではその大部分の異方性粒子のアスペクト比が70を超えない。
【0015】
好適な異方性粒子のアスペクト比は、例えばアルミニウムフレーク(20〜100)、雲母(10〜70)、粉砕ガラス繊維(3〜25)、アラミド繊維(100〜500)、チョップド炭素繊維(800)、チョップドガラス繊維(250〜800)、および粉砕被覆炭素繊維(200〜1600)など、広範囲に及ぶことができる。これらの視覚効果は、角度依存性反射率、角度依存性色吸収/反射、または目に見える形状によるものであることができる。これらの粒子は、板状、繊維、またはリボンであることができる。板状材料は、第3の寸法よりも著しく大きい2つの寸法を有する。板状材料の例には、雲母と、合成雲母と、ガラスフレークと、金属フレークと、アルミナおよびシリカ基材と、ポリマーフィルムフレークと、超薄多層干渉フレーク(例えばFlex Productsから入手できるChromaflair(登録商標))および螺旋超構造葉巻型液晶分子(例えばWackerから入手できるHelicone(登録商標)HC)などの合成材料が挙げられる。好ましい粒子は金属フレークおよび雲母である。
【0016】
添加剤
アクリル系材料および異方性粒子を含有する配合は、当該分野でよく知られている他の添加剤を含有することができる。
【0017】
一般に使用される添加剤は、美的充填剤として使用される固体表面粒子である。当該業界で「クランチーズ(crunchies)」として知られるが、それらはABS樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、エチレンコポリマー、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアクリル酸、ポリジエン、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエステルなどのポリマーの様々な充填および非充填、顔料または染料で着色した、不溶性または架橋したチップである。
【0018】
添加剤の種類には、アルミナ三水和物(ATH)などの最終の固体物品に難燃性を付与する材料が含まれる。他の材料の例には、着色剤、充填剤、にじみ止め剤、耐衝撃性改良剤、擦傷防止剤(marring agent retarder)、紫外線安定剤、および固体物品の特性に影響を及ぼす他の材料が挙げられる。
【0019】
異方性粒子および全添加剤を含む出発アクリル系材料の粘度は、一般には800〜4000cp、より好ましくは1000〜2000cpのような広い範囲内にあることができる。下記理論中で述べるように、異方性粒子の再配向がある程度起こるため、出発材料のある程度の流動は必要である。
【0020】
凝固
出発材料として使用されるアクリル系材料は熱硬化性であり、2つの方法、すなわち架橋を引き起こすために熱を使用する熱硬化によるか、または過酸化物の使用によるなどの化学硬化によるいずれかによって架橋による凝固を行うことができる。架橋を得るためのこれら両方の方法は、従来の技術においてよく知られている。
【0021】
第II部−調製方法
支持材表面
本発明の重要な要件は、アクリル系材料が架橋のために液相から固相に変化するので、異方性粒子を含む出発材料用の支持材の種類である。
【0022】
この支持材の重要な要件は、高温で収縮する能力である。支持材の収縮の数値は、100℃の温度におけるその材料の表面積と比較した25℃の温度におけるその材料の表面積として表すことができる(支持材に関する両測定では、これらの温度に30分間保った)。
【0023】
支持材のこの収縮は、少なくとも1%、より好ましくは5〜15%であることが必要である。例示の目的で25℃における支持材の面積が100平方センチメートルであり、100℃におけるその同じ接触材料の面積が99平方センチメートルの場合、その収縮は1%であることになる。
【0024】
好適な支持材は、2つの基準、すなわち(1)少なくとも1%収縮する能力、および持続的支持のために100℃の温度(また、アクリル配合物の架橋を引き起こすために高温が使用される場合には、より高温)に耐える能力を有する。
【0025】
好適な接触材料の例には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロンなどの高分子フィルム、Tedlar(登録商標)などのポリフッ化ビニル(PVF)、およびポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられる。
【0026】
固体物品の様々な視覚上の効果は、(1)支持材の収縮、および(2)異方性粒子を含有するアクリル系材料の収縮に基づいて得ることができることが分かる。
【0027】
2つの異なる収縮が、最終の固体物品の製造の間に起こる。第1の収縮は、支持材中で、架橋中にアクリル系材料から熱が移動するされるために起こる。この熱の移動は、化学硬化および熱硬化の両方で起こる。第2の収縮は、液体から固体への相変化中にアクリル配合物の体積が減少するときに起こる。支持材とアクリル系材料の収縮の違いが、異方性粒子の異なる配向のために、独特の外観を付与する。
【0028】
最終の固体物品の様々な外観を、同一の支持材と、異方性粒子を含む同一のアクリル系材料とを使用して得ることができることが分かる。実例として第1の例では、異方性粒子を含むアクリル系材料を収縮性支持材上に注型して、1/4インチ(6.35mm)の厚さを有する最終の固体物品を形成することができる。第2の例では、異方性粒子を含むアクリル系材料を収縮性支持材上に注型して2インチ(50.8mm)(これは8倍の厚さを意味する)の厚さを有する固体物品にする。これら2つの例には試料厚さに起因する収縮の違いが存在し、それが直接、異なる外観の要因となる。
【0029】
異方性粒子を含むアクリル系材料の外観はまた、収縮性支持材への塗布方法によっても変えることができる。支持材が移動ベルト上に存在する連続工程ではアクリル系材料の流量が一定のため、似た配向の異方性粒子が生ずる。連続工程の例は、切断して調理台などで使用される1枚のシートの製造である。異方性粒子の配向がより少ないことによる別の効果は、台所の流しの製造の場合のようなバッチ工程で起こる可能性がある。
【0030】
しかしながら幾つかの状況においては、支持材の収縮と、異方性粒子を含めた全成分を含むアクリル配合物の収縮の相関関係を提供することが役立つと思われる。(全成分を含むアクリル配合物の収縮は、架橋前の体積対凝固後の体積に基づく。実例として、初期体積が100立方センチメートルであり、最終固体体積が99立方センチメートルである場合、その収縮は1%である。)
【0031】
例示の目的では、支持材の収縮(面積で表される)と、全成分を含むアクリル配合物の収縮(体積で表される)の数値の差は少なくとも0.1%であり、好ましくは1.0%を超える。実例として、支持材が1%収縮し、全成分を含むアクリル配合物が8%収縮する場合、その数値の差は7である。一般には全成分を含むアクリル配合物は支持材よりも収縮が大きいが、アクリル系材料よりも収縮の大きい高収縮性支持材を使用することも本発明の範囲内にある。
【0032】
先の段落の説明によれば最終の架橋固体物品における数値の違いがわずかであるか、またはまったく存在しないこともあるが、支持材と全添加剤を含むアクリル配合物との境界面でまだ収縮差を得ることができる。収縮差は、異方性粒子を含む出発アクリル系材料が支持体表面と接触した後、いつでも起こり得る。異方性粒子を含む出発アクリル系材料を架橋して硬化済み固体物品にした後にその収縮差が残留することは必要でない。境界面の面積は、最終の固体アクリル物品の厚さによっては著しく変わり得る。
【0033】
外観の違いを裏付ける理論
下記の節は、本明細書中で述べた方法が様々な外観をもたらす理由を裏付ける理論として提供される。
【0034】
収縮支持材(shrinkage support)が使用されない場合、全添加剤を含むアクリル系材料を移動ベルトに塗布するような連続工程における異方性粒子についてはある程度の配向が存在し得る。金型の使用を伴うようなバッチ工程では同一配向度の異方性粒子は存在し得ない。
【0035】
本発明において収縮は、支持材と、異方性粒子を含むアクリル系材料との境界面の2種類の異なる材料中に存在する。2種類の異なる材料のこの収縮は、高温において続く(化学架橋が使用されようと熱架橋が使用されようと)。
【0036】
境界面での2種類の異なる材料の収縮のために、液状のアクリル系材料が架橋して固体物品を形成するときにある程度の異方性粒子の再配向が起こると考えられる。それがアクリル系材料の硬化および凝固の間の異方性粒子の再配向であり、これが外観の変化の要因となる。
【0037】
さらに本理論は、境界面における2種類の異なる材料間の収縮の数値の差が大きければ大きいほどそれによる外観の大きな変化が起こるという原理を提供すると考えられる。外観のこの変化は、異方性粒子の再配向の度合いがより大きいことに基づく。したがって本理論は、連続工程によって製造される固体材料ではバッチ工程と比べて外観のより大きな変化を起こすことができるという立論を証拠立てると考えられる。さきに述べたように異方性粒子の配向のより大きな初期配向は連続工程で起こり、境界面での収縮が再配向を引き起こす。
【0038】
製造
最終の固体物品の製造は、収縮性支持材の使用を除けば従来のやり方で始めることができる。異方性粒子を全添加剤と共に含むアクリル系材料を配合物の形にし、例えば移動ベルト上または金型中で支持材に塗布する。凝固は、アクリル系材料の架橋によって起こる。
【0039】
収縮支持材の使用により、凝固済み材料の研摩などによる表面除去が一般に必要である。固体物品が形成されるときに起こる2つの収縮の影響のために、より高い表面平滑度が必要な場合もある。
【0040】
下記実施例では別段の指示がない限りすべての部および割合は重量単位であり、度は摂氏度である。
【実施例】
【0041】
実施例1
均質な金属的外見を得るためのPVAフィルム上の金属光沢のある配合物:
この実施例は、反射性、異方性、高アスペクト比のアルミニウムフレーク顔料と、無機充填剤としてアルミナ三水和物とを含有する装飾用表面材料の調製について述べる。
【0042】
配合物の構成
配合物は、下記の基本混合物および最終硬化用パッケージからなる。
【0043】
基本混合物:
Alcanから入手した590gのATH(アルミナ三水和物)
Penn Color Inc.から入手した33.33gの9Z1351(IBOMA中のアルミニウムフレーク顔料分散液)
53.10gのメタクリル酸メチル(MMA)
299.74gのSIRUP(予備重合メタクリル酸メチル)
Arkemaから入手した11.02gのtert−ブチルペルオキシマレイン酸(PMA−25)開始剤ペースト
Sartomerから入手した4.24gのトリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TRIMまたはSR350AA)架橋剤
Stepanから入手した0.65gのZelec(登録商標)PHカップリング剤
Cytecから入手した1.56gのAOT−S(Aerosol OT−S)界面活性剤
【0044】
最終硬化用パッケージ成分:
DuPontから入手した4.4gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)分散液
0.14gの脱イオン水
Evans Chemeticsから入手した1.73gのジメルカプト酢酸グリコール(GDMA)
【0045】
液状混合物の調製
小型容器中でMMA、SIRUP、PMA−25、AOT−S、TRIM、Zelec PH、および9Z1351を混ぜ合わせることによって液状混合物を調製した。成分を、エアモーターで駆動するインペラーを用いて2分間混合した。ATHを加え、混合を1200〜1400rpmの速度で30秒間続けた。全混合物を減圧排気装置に入れ、水銀24インチの減圧でエアモーター(500rpm)で駆動するインペラーを用いて撹拌した。真空に達した80秒後に、混合物に最終硬化用パッケージ成分(水酸化カルシウム、水、およびGDMA)をシリンジによって加えた。さらに40秒(合計で120秒)後に混合機を停止し、真空を解放した。反応を開始した混合物を直ちに注型キャビティに注入した。
【0046】
注型キャビティの準備
8インチ×8インチ×0.5インチ注型キャビティをPVAフィルムで裏打ちし、真空によって所定位置に保持した。この注型キャビティを35℃に予熱した。
【0047】
注型および仕上
減圧排気した混合物を注型キャビティに注入し、ポリエステルフィルムシートで覆った。硬化材料の熱損失をできるだけ少なくするためにポリエステルフィルムの上部に断熱カバーを置いた。
【0048】
ピーク温度まで混合物を硬化させ、次いで室温まで冷却した後、得られた固体表面試料を注型キャビティから取り出した。
【0049】
軽い研摩により材料の大部分を代表する表面が明らかになった。この試料は、はっきり目に見える肌理のない均質な銀白色の金属光沢のある材料と表現することができる。
【0050】
実施例2
地形的表面を覆ったPVAフィルム上の金属光沢のある配合物:
実施例1で述べた配合物を調製した。注入成形に先立って、直径約1/16インチの重なり合ったひもの地形形状の予備硬化充填ポリマー材料を、予熱した注型キャビティ内のPVAキャスティングフィルムの下に配置した。地形的注型表面を有するこの注型キャビティに硬化性混合物を注入し、硬化させた。フィルムを除去した後、得られた注型材料は、地形的注型表面を再現した表面溝模様を示した。注型溝を除去し平坦な仕上げ表面を得るために注型表面を研摩すると、地形的注型表面模様によく似た構成の反射勾配の模様が観察された。この反射勾配模様は、独特の立体的性質を示した。
【0051】
実施例3
地形的表面を覆ったポリプロピレン(PP)フィルム上の金属光沢のある配合物:
実施例1で述べた配合物を調製した。注入成形に先立って、直径約1/16インチの重なり合ったひもの地形形状の予備硬化充填ポリマー材料を、予熱した注型キャビティを裏打ちした二軸配向押出成形ポリプロピレンキャスティングフィルムの下に配置した。地形的注型表面を有するこの注型キャビティに硬化性混合物を注入し、硬化させた。フィルムを除去した後、得られた注型材料は、地形的注型表面を再現した表面溝模様と、ポリプロピレンフィルムの収縮により生ずる追加の溝とを示した。注型溝を除去し平坦な仕上げ表面を得るために材料表面を研摩すると、地形的注型表面模様とフィルムの皺模様の組合せに基づく複雑な反射勾配模様が観察された。この反射勾配模様は、実施例2で観察されたものよりも複雑な独特の立体的性質を示した。
【0052】
実施例4
ポリプロピレン(PP)フィルム上の金属光沢のある配合物:
実施例1で述べた配合物を調製した。注入成形に先立って、予熱した注型キャビティを二軸配向押出成形ポリプロピレンキャスティングフィルムで裏打ちした。この注型キャビティに硬化性混合物を注入し、硬化させた。フィルムを除去した後、得られた注型材料は、ポリプロピレンフィルムの不規則で自由な収縮により生ずる表面溝模様を示した。注型溝を除去し平坦な仕上げ表面を得るために材料表面を研摩すると、フィルムの皺模様に基づく複雑な反射勾配模様が観察された。この反射勾配模様は、独特の立体的性質を示した。
【0053】
実施例5
ポリプロピレン(PP)フィルムおよび紙/下敷き上の金属光沢のある配合物:
実施例1で述べた配合物を調製した。注入成形に先立って、予熱した注型キャビティを裏打ちする二軸配向押出成形ポリプロピレンキャスティングフィルムの下に、繰り返し1インチ六辺形打抜き模様を有するエンボス加工した紙下敷きを配置した。この注型キャビティに硬化性混合物を注入し、硬化させた。フィルムを除去した後、得られた注型材料は、紙の打抜き模様を再現した表面溝模様を示した。注型溝を除去し、また平坦な仕上げ表面を得るために材料表面を研摩すると、エンボス加工した紙の模様に基づく複雑な反射勾配模様が観察された。この反射勾配模様は、独特の立体的性質を示した。
【0054】
実施例6
PVAフィルム上の固体表面粒子を含む金属光沢のある配合物:
この実施例は、反射性、異方性、高アスペクト比のアルミニウムフレーク顔料と、美的充填剤として固体表面粒子と、無機充填剤としてアルミナ三水和物とを含有する装飾用表面材料の調製について述べる。
【0055】
液状配合物の構成
この液状配合物は、下記の基本混合物および最終硬化用パッケージからなる。
【0056】
基本混合物:
Alcanから入手した430gのATH(アルミナ三水和物)
250gのCORIAN(登録商標)4×12メッシュサイズ粒子
Penn Color Inc.から入手した33.33gの9Z1351(IBOMA中のアルミニウムフレーク顔料分散液)
69.21gのメタクリル酸メチル(MMA)
200.00gのSIRUP(予備重合メタクリル酸メチル)
Arkemaから入手した8.59gのtert−ブチルペルオキシマレイン酸(PMA−25)開始剤ペースト
Sartomerから入手した2.55gのトリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TRIMまたはSR350AA)架橋剤
Stepanから入手した0.64gのZelec(登録商標)PHカップリング剤
Cytecから入手した1.56gのAOT−S(Aerosol OT−S)界面活性剤
【0057】
最終硬化用パッケージ成分:
DuPontから入手した2.66gの水酸化カルシウム(Ca(OH)2)分散液
0.11gの脱イオン水
Evans Chemeticsから入手した1.35gのジメルカプト酢酸グリコール(GDMA)
【0058】
液状配合物の調製:
小型容器中で室温でMMA、SIRUP、PMA−25、AOT−S、TRIM、Zelec PH、および9Z1351を混ぜ合わせることによって液状配合物を調製した。成分を、エアモーターで駆動するインペラーを用いて2分間混合した。ATHおよびCORIAN(登録商標)粒子を加え、混合を1200から1400rpmの速度で30秒間続けた。全混合物を減圧排気装置に入れ、水銀24インチの減圧でエアモーター(500rpm)で駆動するインペラーを用いて撹拌した。真空に達した80秒後に、混合物に最終硬化用パッケージ成分(水酸化カルシウム、水、およびGDMA)をシリンジによって加えた。さらに40秒(合計で120秒)後に混合機を停止し、真空を解放した。この反応を開始した混合物を直ちに注型キャビティに注入した。
【0059】
注型キャビティの準備
8インチ×8インチ×0.5インチ注型キャビティをPVAフィルムで裏打ちし、真空によって所定位置に保持した。この注型キャビティを35℃に予熱した。
【0060】
注型および仕上
減圧排気した混合物を注型キャビティに注入し、ポリエステルフィルムシートで覆った。硬化材料の熱損失をできるだけ少なくするためにポリエステルフィルムの上部に断熱カバーを置いた。
【0061】
ピーク温度まで混合物を硬化させ、次いで室温まで冷却した後、得られた固体表面試料を注型キャビティから取り出した。
【0062】
固体表面粒子を露出させるために注型表面を研摩すると、大きなCORIAN(登録商標)粒子の周囲に配列した反射勾配の模様が観察された。この反射勾配模様は、大きな粒子を取り囲む独特の立体的ハローを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾用アクリル系材料における装飾的外観を調製する方法であって、
(a)架橋性アクリル系材料および異方性粒子を含有し、前記異方性粒子の大部分が少なくとも3のアスペクト比を有する液状組成物を形成するステップと、
(b)前記液状組成物を、少なくとも1%の収縮能力を有する支持材に塗布するステップと、
(c)前記液状組成物を凝固させて固体物品を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記支持材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリフッ化ビニル、およびポリエチレンテレフタラートの群から選択されるポリマーフィルムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異方性粒子が金属フレークである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液状組成物が、美的充填剤として使用される固体表面粒子をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記支持材の前記収縮が5〜15%の範囲内にある、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−532038(P2012−532038A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517908(P2012−517908)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040735
【国際公開番号】WO2011/002971
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】